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特開2024-1187乳がんの処置のためのヒト化抗LIV1抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001187
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】乳がんの処置のためのヒト化抗LIV1抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20231226BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231226BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20231226BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231226BHJP
   C07K 14/535 20060101ALI20231226BHJP
   C07K 5/10 20060101ALI20231226BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K39/395 L
A61K38/07
A61P35/00
A61P15/00
A61P35/04
A61K38/19
A61K47/68
A61K47/65
C07K16/28
C07K14/535
C07K5/10
C07K7/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173950
(22)【出願日】2023-10-06
(62)【分割の表示】P 2020529281の分割
【原出願日】2018-11-30
(31)【優先権主張番号】62/593,660
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503188759
【氏名又は名称】シージェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ,ダナ
(72)【発明者】
【氏名】コスティック,アナ
(72)【発明者】
【氏名】コーウィン,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ドラクマン,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ホーニー,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,バイテン
(72)【発明者】
【氏名】ガーフィン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】パランカ-ウェセルス,コリンナ
(72)【発明者】
【氏名】アビドーイ,オエウェイル オー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】乳がん、特に末期乳がんに有効な処置を提供する。
【解決手段】LIV-1を発現する細胞の増殖を抑制するための、並びにLIV-1を発現する細胞に関連する疾患又は障害の1以上(例えば、LIV-1に関連する乳がん)の処置のための、抗LIV1抗体(抗LIV1抗体にコンジュゲートした薬物を含む)を使用する方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月1日に出願された米国仮特許出願第62/593,660号に対する優先権を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルに関する以下の提出の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ読み取り可能なフォーム(CRF)(ファイル名:761682001440SEQLIST.TXT、記録された日付:2018年11月30日、サイズ:3KB)。
【0003】
発明の分野
本発明は、抗体ベースの乳がん治療の分野に関する。特に、本発明は、LIV-1を発現するがん、例えば、乳がん(例えば、局所的に進行した又は転移性の乳がん)の処置のためのヒト化抗LIV1抗体及びその抗原結合断片又はそれらのコンジュゲート(例えば、LIV1-抗体-薬物コンジュゲート(LIV1-ADC))の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
乳がんは、3つのタンパク質発現マーカー:エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)、及び増殖因子受容体HER2/neuの過剰発現に基づいて分類される。タモキシフェン及びアロマターゼ阻害剤を含むホルモン療法は、ホルモン受容体ER及びPgRを発現する腫瘍の処置に効果的であり得る。HER2に対して方向付けられた療法は、HER2/neuを発現する腫瘍に有用であり、これらの腫瘍は、現在、免疫療法に適格である乳がんの唯一のクラスである。これらの患者に対しては、コンジュゲートされていない抗体、例えば、ハーセプチン(Herceptin)又はパージェタ(Perjeta)が、一般的に、化学療法と組み合わせて使用される。
【0005】
ER、PgR、又はHER2/neuを発現しないトリプルネガティブ乳房腫瘍の処置選択肢は、化学療法、放射線及び外科手術に限定される。さらに、ステージIIIの患者の生存率(52%)が比較的低く、ステージIVの患者の生存率(15%)がかなり低い、進行期の疾患を有する患者に利用可能である有効な治療選択肢は限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乳がん、特に末期乳がんに有効な処置が大いに必要とされているのは明らかである。
【0007】
LIV-1(SLC39A6)は、溶質担体ファミリーのメンバーであって、推定の亜鉛輸送体及びメタロプロテイナーゼ活性を有するマルチスパン膜貫通タンパク質である。LIV-1は、乳がん細胞株ZR-75-1のエストロゲン誘導性遺伝子として最初に同定された。LIV-1は、転移性乳がんのほとんどのサブタイプにおいて発現される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、不治の、切除不可能な、局所的に進行した又は転移性の乳がんを、本明細書に記載される抗LIV1抗体及びその抗原結合断片を用いて処置することができるという驚くべき発見に基づいている。
【0009】
一態様では、LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップを含み、投与される用量は、処置サイクルあたり約200mg未満の抗体又はその抗原結合断片であり、並びに抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域(HCVR)、及び配列番号2と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む、方法が提供される。
【0010】
別の態様では、LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップを含み、投与される用量は、処置サイクルあたり約250mg以下の抗体又はその抗原結合断片であり、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域(HCVR)、及び配列番号2と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含み、投与される用量が、処置サイクルあたり約200mg以上の抗体又はその抗原結合断片である場合、本方法は、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を対象に投与するステップをさらに含む、方法が提供される。ある特定の例示的な実施形態では、投与される場合、GCSFは予防的に投与される。
【0011】
別の態様では、LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、対象に顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を投与するステップ、ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップを含み、投与される用量は、処置サイクルあたり約200mg以上であり、約250mg以下の抗体又はその抗原結合断片であり、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域(HCVR)、及び配列番号2と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む、方法が提供される。ある特定の例示的な実施形態では、GCSFは予防的に投与される。
【0012】
ある特定の例示的な実施形態では、LIV-1関連がんは、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、転移性乳がん、トリプルネガティブ転移性乳がん、又はホルモン受容体陽性の転移性乳がんである。
【0013】
ある特定の例示的な実施形態では、処置サイクルは約3週間ごと(Q3W)である。
【0014】
ある特定の例示的な実施形態では、用量は、対象の体重1kgあたり約2.5mgである。
【0015】
ある特定の例示的な実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE):
【0016】
【化1】

にコンジュゲートされている。
【0017】
ある特定の例示的な実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、バリン-シトルリン-モノメチルアウリスタチンE(vcMMAE):
【0018】
【化2】

にコンジュゲートされている。
【0019】
ある特定の例示的な実施形態では、vcMMAEと抗体又はその抗原結合断片との比は、約1から約8又は約4である。
【0020】
ある特定の例示的な実施形態では、HCVRは、配列番号1と少なくとも97%の配列同一性を有し、LCVRは、配列番号2と少なくとも97%の配列同一性を有する。
【0021】
ある特定の例示的な実施形態では、HCVRは、配列番号1と少なくとも99%の配列同一性を有し、LCVRは、配列番号2と少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0022】
ある特定の例示的な実施形態では、対象はヒトである。
【0023】
別の態様では、LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップを含み、投与される用量は、処置サイクルあたり約200mg未満の抗体又はその抗原結合断片であり、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有するHCVR、及び配列番号2と少なくとも95%の同一性を有するLCVRを含み、並びに抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【0024】
【化3】

にコンジュゲートされている、方法が提供される。
【0025】
別の態様では、LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップを含み、投与される用量は、処置サイクルあたり約250mg以下の抗体又はその抗原結合断片であり、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有するHCVR、及び配列番号2と少なくとも95%の同一性を有するLCVRを含み、抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【0026】
【化4】

にコンジュゲートされており、並びに投与される用量が、処置サイクルあたり約200mg以上の抗体又はその抗原結合断片である場合、本方法は、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を対象に投与するステップをさらに含む、方法が提供される。ある特定の例示的な実施形態では、投与される場合、GCSFは予防的に投与される。
【0027】
別の態様では、LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、対象に顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を投与するステップ、ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップを含み、投与される用量は、処置サイクルあたり約200mg以上であり、約250mg以下の抗体又はその抗原結合断片であり、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有するHCVR、及び配列番号2と少なくとも95%の同一性を有するLCVRを含み、並びに抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【0028】
【化5】

にコンジュゲートされている、方法が提供される。ある特定の例示的な実施形態では、GCSFは予防的に投与される。
【0029】
ある特定の例示的な実施形態では、用量は、対象の体重1kgあたり約2.5mgの濃度で投与される。
【0030】
ある特定の例示的な実施形態では、各処置サイクルは、対象にQ3Wで投与される。
【0031】
ある特定の例示的な実施形態では、vcMMAEと抗体又はその抗原結合断片との比は、約1から約8又は約4である。
【0032】
ある特定の例示的な実施形態では、LIV-1関連がんは、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、転移性乳がん、トリプルネガティブ転移性乳がん、又はホルモン受容体陽性の転移性乳がんである。
【0033】
ある特定の例示的な実施形態では、対象はヒトである。
【0034】
別の態様では、LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップを含み、投与される用量は、Q3Wの処置サイクルあたり約200mg未満の抗体又はその抗原結合断片であり、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1のHCVR、及び配列番号2のLCVRを含み、並びに抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【0035】
【化6】

にコンジュゲートされている、方法が提供される。
【0036】
別の態様では、LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップを含み、投与される用量は、Q3Wの処置サイクルあたり約250mg以下の抗体又はその抗原結合断片であり、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1のHCVR、及び配列番号2のLCVRを含み、抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【0037】
【化7】

にコンジュゲートされており、並びに投与される用量が、処置サイクルあたり約200mg以上の抗体又はその抗原結合断片である場合、本方法は、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を対象に投与するステップをさらに含む、方法が提供される。ある特定の例示的な実施形態では、投与される場合、GCSFは予防的に投与される。
【0038】
別の態様では、LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、対象に顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を投与するステップ、ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップを含み、投与される用量は、Q3Wの処置サイクルあたり約200mg以上であり、約250mg以下の抗体又はその抗原結合断片であり、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1のHCVR、及び配列番号2のLCVRを含み、並びに抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【0039】
【化8】

にコンジュゲートされている、方法が提供される。ある特定の例示的な実施形態では、GCSFは予防的に投与される。
【0040】
ある特定の例示的な実施形態では、LIV-1関連がんは、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、転移性乳がん、トリプルネガティブ転移性乳がん、又はホルモン受容体陽性の転移性乳がんである。
【0041】
ある特定の例示的な実施形態では、vcMMAEと抗体又はその抗原結合断片との比は約4である。
【0042】
ある特定の例示的な実施形態では、用量は、対象の体重1kgあたり約2.5mgである。
【0043】
ある特定の例示的な実施形態では、対象はヒトである。
【0044】
別の態様では、LIV-1関連乳がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、対象に、対象の体重1kgあたり約2.5mgの用量で、ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を投与するステップを含み、投与される用量は、Q3Wの処置サイクルあたり約200mg未満の抗体又はその抗原結合断片であり、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1のHCVR、及び配列番号2のLCVRを含み、並びに抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【0045】
【化9】

にコンジュゲートされている、方法が提供される。
【0046】
別の態様では、LIV-1関連乳がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、対象に、対象の体重1kgあたり約2.5mgの用量で、ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を投与するステップを含み、投与される用量は、Q3Wの処置サイクルあたり約250mg以下の抗体又はその抗原結合断片であり、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1のHCVR、及び配列番号2のLCVRを含み、抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【0047】
【化10】

にコンジュゲートされており、並びに投与される用量が、処置サイクルあたり約200mg以上の抗体又はその抗原結合断片である場合、本方法は、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を対象に投与するステップをさらに含む、方法が提供される。ある特定の例示的な実施形態では、投与される場合、GCSFは予防的に投与される。
【0048】
別の態様では、LIV-1関連乳がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、対象に顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を投与するステップ、対象に、対象の体重1kgあたり約2.5mgの用量で、ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を投与するステップを含み、投与される用量は、Q3Wの処置サイクルあたり約200mg以上であり、約250mg以下の抗体又はその抗原結合断片であり、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1のHCVR、及び配列番号2のLCVRを含み、並びに抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【化11】

にコンジュゲートされている、方法が提供される。ある特定の例示的な実施形態では、GCSFは予防的に投与される。
【0049】
ある特定の例示的な実施形態では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がん、転移性乳がん、トリプルネガティブ転移性乳がん、又はホルモン受容体陽性の転移性乳がんである。
【0050】
ある特定の例示的な実施形態では、vcMMAEと抗体又はその抗原結合断片との比は約4である。
【0051】
ある特定の例示的な実施形態では、対象はヒトである。
【0052】
上記の開示の要約は、非限定的であり、開示された抗体並びにそれらを作製及び使用する方法の他の特徴及び利点は、詳細な説明、実施例及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明をより容易に理解できるように、特定の技術的及び科学的用語を以下に具体的に定義する。本明細書の他の箇所で具体的に定義されない限り、本明細書で使用される他のすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0054】
I.定義
添付の特許請求の範囲を含めて本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」などの単数形の単語は、文脈から明らかに指示されない限り、それらの対応する複数形の参照を含む。
【0055】
「抗体-薬物コンジュゲート」又は「ADC」は、細胞傷害性薬又は細胞増殖抑制薬にコンジュゲートされた抗体を指す。典型的には、抗体-薬物コンジュゲートは、細胞表面上の標的抗原(例えば、LIV1)に結合した後、抗体-薬物コンジュゲートを細胞の中に内在化させ、その後細胞へ薬物を放出する。いくつかの例示的な実施形態において、抗体-薬物コンジュゲートはLIV1-ADCである。
【0056】
「ポリペプチド」又は「ポリペプチド鎖」は、天然産生か合成産生かにかかわらず、ペプチド結合によって接合されるアミノ酸残基の重合体である。アミノ酸残基約10個未満のポリペプチドは、一般に「ペプチド」と称される。
【0057】
「タンパク質」は、1つ以上のポリペプチド鎖を含む高分子である。タンパク質はまた、炭水化物群等の非ペプチド性成分を含んでもよい。炭水化物及び非ペプチド性置換基は、タンパク質が産生される細胞によってタンパク質に添加され得、細胞の種類によって異なることになる。タンパク質は、そのアミノ酸骨格構造の観点から本明細書では定義される。炭水化物群等の置換基は、概して指定はされないが、それでも存在し得る。
【0058】
「アミノ末端」及び「カルボキシル末端」という用語は、ポリペプチド内の位置を表す。文脈が許す場合、これらの用語は、近接性又は相対的位置を表すためにポリペプチドの特定の配列又は部分に関して使用される。例えば、ポリペプチド内で参照配列に対してカルボキシル末端に位置するある特定の配列は、参照配列のカルボキシル末端に近接して位置着けられるが、必ずしも完全ポリペプチドのカルボキシル末端にある必要はない。
【0059】
アミノ酸置換を保存的又は非保存的として分類する目的で、以下のアミノ酸置換が保存的置換とみなされる:トレオニン、アラニン、又はアスパラギンによって置換されるセリン;プロリン又はセリンによって置換されるトレオニン;アスパラギン酸、ヒスチジン、又はセリンによって置換されるアスパラギン;グルタミン酸又はアスパラギンによって置換されるアスパラギン酸;グルタミン、リジン、又はアスパラギン酸によって置換されるグルタミン酸;アルギニン、リジン、又はグルタミン酸によって置換されるグルタミン;チロシン又はアスパラギンによって置換されるヒスチジン;リジン又はグルタミンによって置換されるアルギニン;イソロイシン、ロイシン、又はバリンによって置換されるメチオニン;ロイシン、バリン、又はメチオニンによって置換されるイソロイシン;バリン、イソロイシン、又はメチオニンによって置換されるロイシン;チロシン又はトリプトファンによって置換されるフェニルアラニン;トリプトファン、ヒスチジン、又はフェニルアラニンによって置換されるチロシン;トレオニンによって置換されるプロリン;セリンによって置換されるアラニン;グルタミン酸、グルタミン、又はアルギニンによって置換されるリジン;メチオニン、イソロイシン、又はロイシンによって置換されるバリン;及びフェニルアラニン又はチロシンによって置換されるトリプトファン。保存的置換は、同じクラスのアミノ酸間の置換も意味し得る。クラスは以下の通りである:グループI(疎水性側鎖):met、ala、val、leu、ile;グループII(中性親水性側鎖):cys、ser、thr;グループIII(酸性側鎖):asp、glu;グループIV(塩基性側鎖):asn、gln、his、lys、arg;グループV(鎖配向に影響を及ぼす残基):gly、pro;及びグループVI(芳香族側鎖):trp、tyr、phe。
【0060】
2つのアミノ酸配列は、2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基が、最大限の対応を求めてアライメントさせたときに同じである場合に、「100%のアミノ酸配列同一性」を有する。配列比較は、DNASTAR(Madison,Wisconsin)によって生産されるLASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイートに含まれるものなどの標準的なソフトウェアプログラムを使用して行われ得る。最適なアライメントの決定によって2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列を比較するための他の方法は、当該技術分野で周知である。(例えば、Peruski and Peruski,The Internet and the New Biology:Tools for Genomic and Molecular Research(ASM Press,Inc.1997)、Wu et al.(eds.),“Information Superhighway and Computer Databases of Nucleic Acids and Proteins,”Methods in Gene Biotechnology 123-151(CRC Press,Inc.1997)、Bishop(ed.),Guide to Human Genome Computing(2nd ed.,Academic Press,Inc.1998)を参照されたい。)。2つのアミノ酸配列は、2つの配列が、互いに対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の配列同一性を有する場合に「実質的な配列同一性」を有するとみなされる。
【0061】
配列同一性パーセントは、Kabat番付規則により最大限にアライメントされた抗体配列により決定される。アライメント後、対象抗体領域(例えば、重鎖又は軽鎖の可変ドメイン全体)が参照抗体の同じ領域と比較される場合、対象と参照抗体領域との間のパーセント配列同一性は、対象及び参照抗体領域の両方において同じアミノ酸により占められる位置の数を、2つの領域のアライメントされた位置の総数で除し(ギャップは数えられない)、100を乗じてパーセントに変換する。
【0062】
1つ以上の列挙される要素を「含む」組成物又は方法は、具体的に列挙されない他の要素を含み得る。例えば、抗体を含む組成物は、抗体のみを含むか、又は他の成分との組み合わせであり得る。
【0063】
値の範囲の表示は、範囲内の又は範囲を定義する全ての整数を含む。
【0064】
本明細書に記載される抗体又は他のタンパク質において、配列番号によって特定されるものに対応するアミノ酸残基の参照は、かかる残基の翻訳後修飾を含む。
【0065】
「抗体」という用語は、抗原の存在に応答して体内で産生され、抗原に結合する免疫グロブリンタンパク質、並びにその抗原結合部分及び操作された変異型を表す。したがって、「抗体」という用語は、例えば、無傷モノクローナル抗体(例えば、ハイブリドーマ技術を使用して産生される抗体)、並びに抗原結合抗体断片、例えば、F(ab’)、Fv断片、ダイアボディ、一本鎖抗体、scFv断片、又はscFv-Fcを含む。概して、操作された無傷抗体及び断片、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖Fv断片、単鎖抗体、ダイアボディ、ミニボディ、線形抗体、多価又は多特異性(例えば、二重特異性)ハイブリッド抗体なども含まれる。よって、「抗体」という用語は、抗体の抗原結合部位を含み、その抗原に特異的に結合することができるいずれのタンパク質も含むように広義に使用される。
【0066】
抗体又はその抗原結合断片という用語には、「コンジュゲートした」抗体又はその抗原結合断片、あるいはその抗体又はその抗原結合断片が共有結合又は非共有結合で医薬薬剤、例えば細胞増殖抑制薬又は細胞傷害性薬に結合している「抗体-薬物コンジュゲート(ADC)」が含まれる。
【0067】
「遺伝子操作された抗体」という用語は、アミノ酸配列を天然の又は親の抗体のものとは異ならせた抗体を意味する。可能性のある変形は多数あり、1つ又は少数のアミノ酸だけを変化させることから、例えば可変又は定常領域の完全な再設計まで多岐にわたる。概して、定常領域を変化させることで、例えば、補体結合、及び他のエフェクター機能といった特徴を改善又は改変する。典型的には、可変領域を変化させることで、抗原結合特徴を改善し、可変領域の安定性を改善し、並びに/あるいは免疫原性の危険を低減する。
【0068】
「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種(例えば、ヒト)由来の抗体又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同であり、一方、鎖の残りの部分は、他の種(例えば、マウス)由来の抗体又は他の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同である抗体、並びにかかる抗体の断片を意味する(但し、それらが所望の生物学的活性を示す限り)。
【0069】
「抗体の抗原結合部位」は、その抗原に結合するのに十分な抗体の部分である。最低限のかかる領域は、典型的には、可変ドメイン又はその遺伝子操作された変異型である。単一ドメイン結合部位は、ラクダ化抗体(Muyldermans and Lauwereys,Mol.Recog.12:131-140,1999、Nguyen et al.,EMBO J.19:921-930,2000参照)、又は単一ドメイン抗体を産生させるための他の種のVHドメイン(「dAb」、Ward et al.,Nature 341:544-546,1989、Winterらの米国特許第6,248,516号参照)から生成され得る。一般に、抗体の抗原結合部位は、共通エピトープに結合する、重鎖可変(VH)ドメイン及び軽鎖可変(VL)ドメインの両方を含む。本発明の背景の中で、抗体は、抗原結合部位に加えて、例えば、抗体の第2の抗原結合部位(同じエピトープ若しくは異なるエピトープ、又は同じ抗原若しくは異なる抗原に結合し得る)、ペプチドリンカー、免疫グロブリン定常領域、免疫グロブリンヒンジ、両親媒性ヘリックス(Pack and Pluckthun,Biochem.31:1579-1584,1992参照)、非ペプチドリンカー、オリゴヌクレオチド(Chaudri et al.,FEBS Letters 450:23-26,1999参照)、細胞増殖抑制薬又は細胞傷害性薬といった1つ以上の構成要素を含んでもよく、単量体又は多量体タンパク質であってもよい。抗体の抗原結合部位を含む分子の例は当該技術分野で既知であり、例えば、Fv、単鎖Fv(scFv)、Fab、Fab’、F(ab’)、F(ab)c、ダイアボディ、ミニボディ、ナノボディ、Fab-scFv融合物、二重特異性(scFv)-IgG、及二重特異性(scFv)-Fabが含まれる。(例えば、Hu et al.,Cancer Res.56:3055-3061,1996、Atwell et al.,Molecular Immunology 33:1301-1312,1996、Carter and Merchant,Curr.Op.Biotechnol.8:449-454,1997、Zuo et al.,Protein Engineering 13:361-367,2000、及びLu et al.,J.Immunol.Methods 267:213-226,2002を参照されたい。)
【0070】
「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリン遺伝子(複数可)によって実質的にコードされる1つ以上のポリペプチドからなるタンパク質を指す。免疫グロブリンの一形態は、脊椎動物における天然(即ち、天然又は親)の抗体の基本構造単位を構成する。この形態は、四量体であり、免疫グロブリン鎖の2つの同一の対からなり、各対は、1本の軽鎖と1本の重鎖とを有する。各対において、軽鎖及び重鎖可変領域(VL及びVH)は、一緒になって、抗原への結合の中心的役割を果たし、定常領域は、抗体エフェクター機能の中心的役割を果たす。免疫グロブリンタンパク質の5つのクラス(IgG、IgA、IgM、IgD、及びIgE)が高等脊椎動物において特定されている。IgGが主要なクラスを構成し、通常、血漿中に見い出される2番目に豊富なタンパク質として存在する。ヒトでは、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4と表される4つのサブクラスからなる。各免疫グロブリン重鎖は、種における所与のサブクラスに関して本質的に不変である定常領域タンパク質ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3;IgG3はCH4ドメインも含む)からなる定常領域を有する。
【0071】
ヒト及び非ヒト免疫グロブリン鎖をコードするDNA配列は当該技術分野で既知である。(例えば、Ellison et al.,DNA 1:11-18,1981、Ellison et al.,Nucleic Acids Res.10:4071-4079,1982、Kenten et al.,Proc.Natl.Acad.Set USA 79:6661-6665,1982、Seno et al.,Nucl.Acids Res.11:719-726,1983、Riechmann et al.,Nature 332:323-327,1988、Amster et al.,Nucl.Acids Res.8:2055-2065,1980、Rusconi and Kohler,Nature 314:330-334,1985、Boss et al.,Nucl.Acids Res.12:3791-3806,1984、Bothwell et al.,Nature 298:380-382,1982、van der Loo et al.,Immunogenetics 42:333-341,1995、Karlin et al.,J.Mol.Evol.22:195-208,1985、Kindsvogel et al.,DNA 1:335-343,1982、Breiner et al.,Gene 18:165-174,1982、Kondo et al.,Eur.J.Immunol.23:245-249,1993、及びGenBankアクセッション番号J00228を参照されたい)。免疫グロブリンの構造及び機能の概説については、Putnam,The Plasma Proteins,Vol V,Academic Press,Inc.,49-140,1987、及びPadlan,Mol.Immunol.31:169-217,1994を参照されたい。「免疫グロブリン」という用語は、その一般的な意味で本明細書で使用され、文脈に応じて、無傷抗体、その構成要素鎖、又は鎖の断片を表す。
【0072】
完全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25kDa又は214個のアミノ酸)は、アミノ末端で可変領域遺伝子によって(約110個のアミノ酸をコードする)、及びカルボキシル末端でカッパ又はラムダ定常領域遺伝子によってコードされる。完全長免疫グロブリン「重鎖」(約50kDa又は446個のアミノ酸)は、可変領域遺伝子(約116個のアミノ酸をコードする)、及びガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はイプシロン定常領域遺伝子(約330個のアミノ酸をコードする)によってコードされ、後者は、抗体のアイソタイプを、それぞれ、IgG、IgM、IgA、IgD、又はIgEとして規定する。軽鎖及び重鎖内で、可変及び定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域により結合され、重鎖も約10個以上のアミノ酸の「D」領域を含む。(概して、Fundamental Immunology(Paul,ed.,Raven Press,N.Y.,2nd ed.1989),Ch.7を参照されたい)。
【0073】
免疫グロブリン軽鎖可変領域又は重鎖可変領域(本明細書では、それぞれ、「軽鎖可変ドメイン」(「VLドメイン」)又は「重鎖可変ドメイン」(「VHドメイン」)とも称される)は、3つの「相補性決定領域」又は「CDR」によって遮られる「フレームワーク」領域からなる。フレームワーク領域は、抗原のエピトープへの特異的結合のためにCDRを整合させる働きをする。よって、「CDR」という用語は、抗原結合に中心的役割を果たす抗体のアミノ酸残基を指す。アミノ末端からカルボキシル末端まで、VLドメインとVHドメインとの両方は、以下のフレームワーク(FR)及びCDR領域を含む:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0074】
各可変領域ドメインへのアミノ酸の割当は、Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,MD,1987 and 1991)の定義に従う。Kabatは、異なる重鎖可変領域間又は異なる軽鎖可変領域間の対応する残基が同じ番号を割り当てられる、広く使用されている番付規則(Kabat番付)も提供する。VLドメインのCDR1、2、及び3は、本明細書では、それぞれ、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3と称され、VHドメインのCDR1、2、及び3は、同様に、本明細書では、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3と称される。そのように記述されている場合には、CDRの割当は、Kabatの代わりにIMGT(登録商標)(Lefranc et al.,Developmental & Comparative Immunology 27:55-77;2003)に従う。
【0075】
重鎖定常領域の番付は、Kabat(Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health,Bethesda,MD,1987及び1991)に記載されているように、EUインデックスを介して行う。
【0076】
文脈により別途示されない限り、「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術によって産生された抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語には、真核生物クローン、原核生物クローン、又はファージクローンを含む単一のクローンに由来する抗体が含まれる。特定の実施形態において、本明細書に記載される抗体は、モノクローナル抗体である。
【0077】
「ヒト化VHドメイン」又は「ヒト化VLドメイン」という用語は、非ヒトドナー免疫グロブリン(例えば、マウス又はラット)に完全に又は実質的に由来する一部又は全てのCDRと、ヒト免疫グロブリン配列に完全に又は実質的に由来する可変ドメインフレームワーク配列とを含む、免疫グロブリンVH又はVLドメインを指す。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」と呼ばれる。場合によっては、ヒト化抗体は、適当な結合特徴を強化するために、ヒト可変ドメインフレームワーク領域内にいくつかの非ヒト残基を保持することになる(例えば、フレームワーク中の突然変異は、抗体がヒト化されるときに結合親和性を保存する必要があり得る)。
【0078】
「ヒト化抗体」は、ヒト化VHドメイン及びヒト化VLドメインの一方又は両方を含む抗体である。免疫グロブリン定常領域(複数可)は、存在する必要はないが、存在する場合には、ヒト免疫グロブリン定常領域に完全に又は実質的に由来する。
【0079】
ヒト化抗体は、非ヒト「ドナー」抗体からのCDRがヒト「アクセプター」抗体配列にグラフトされる遺伝子組換えされた抗体である(例えば、Queen,US5,530,101及び5,585,089、Winter,US5,225,539、Carter,US6,407,213、Adair,US5,859,205、並びにFoote,US6,881,557を参照されたい)。アクセプター抗体配列は、例えば、成熟ヒト抗体配列、かかる配列の複合体、ヒト抗体配列のコンセンサス配列、又は生殖系列領域配列であり得る。
【0080】
ヒトアクセプター配列は、他の基準の中でも、アクセプターCDRとドナーCDRとの間で通常型が一致するように、可変領域フレームワークにおけるドナー配列との高い配列同一性を求めて選択され得る。よって、ヒト化抗体は、完全に又は実質的にドナー抗体並びに可変領域フレームワーク配列及び定常領域に由来し、存在する場合、完全に又は実質的にヒト抗体配列に由来するCDRを有する抗体である。同様に、ヒト化重鎖は、完全に又は実質的にドナー抗体重鎖並びに重鎖可変領域フレームワーク配列及び重鎖定常領域に由来し、存在する場合、実質的にヒト重鎖可変領域フレームワーク及び定常領域配列に由来する通常3つ全てのCDRを有する。同様に、ヒト化軽鎖は、完全に又は実質的にドナー抗体軽鎖並びに軽鎖可変領域フレームワーク配列及び軽鎖定常領域に由来し、存在する場合、実質的にヒト軽鎖可変領域フレームワーク及び定常領域配列に由来する通常3つ全てのCDRを有する。
【0081】
ヒト化抗体におけるCDRは、対応する残基(Kabat番付により定義される通り)の少なくとも約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%若しくは約99%、又は対応する残基(Kabat番付により定義される通り)の少なくとも約100%がそれぞれのCDR間で同一であるとき、非ヒト抗体において対応するCDRに実質的に由来する。抗体鎖の可変領域フレームワーク配列又は抗体鎖の定常領域は、(可変領域についてKabat番付により、定常領域についてEU番付により定義される)対応する残基の少なくとも約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%若しくは約99%、又は(可変領域についてKabat番付により、定常領域についてEU番付により定義される)対応する残基の約100%が同一であるとき、それぞれ、実質的にヒト可変領域フレームワーク配列又はヒト定常領域に由来する。
【0082】
ヒト化抗体は、マウス抗体由来の6つ全てのCDR(好ましくはKabat又はIMGT(登録商標)により定義されるように)を組み込むことが多いが、それらは、マウス抗体からの全てより少ないCDR(例えば、少なくとも3つ、4つ、又は5つ)でも作製され得る(例えば、Pascalis et al.,J.Immunol.169:3076,2002、Vajdos et al.,Journal of Molecular Biology,320:415-428,2002、Iwahashi et al.,Mol.Immunol.36:1079-1091,1999、Tamura et al,Journal of Immunology,164:1432-1441,2000)。
【0083】
ヒト化抗体におけるCDRは、対応する残基(Kabat(又はIMGT)により定義される通り)の少なくとも60%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%がそれぞれのCDR間で同一であるとき、非ヒト抗体において対応するCDRに「実質的に由来」する。CDRが非ヒト免疫グロブリンに実質的に由来するヒト化VH又はVLドメインの特定の変形において、ヒト化VH又はVLドメインのCDRは、対応する非ヒトVH又はVL CDRに対して、3つ全てのCDRにわたって、6個以下(例えば、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、又は1個以下)のアミノ酸置換(好ましくは保存的置換)を有する。抗体VH若しくはVLドメインの可変領域フレームワーク配列、又は存在する場合には免疫グロブリン定常領域の配列は、(可変領域についてKabat番付により、定常領域についてEU番付により定義される)対応する残基の少なくとも約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%若しくは約99%、又は(可変領域についてKabat番付により、定常領域についてEU番付により定義される)対応する残基の約100%が同一であるとき、それぞれ、ヒトVH若しくはVLフレームワーク配列又はヒト定常領域に「実質的に由来」する。したがって、ヒト化抗体のCDRを除いた全ての部分は、通常、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分に完全に又は実質的に由来する。
【0084】
抗体は、典型的には、単離された形態で提供される。これは、抗体が典型的には、その産生又は精製から生じる妨害タンパク質及び他の汚染物の少なくとも約50%w/w純粋であることを意味するが、その抗体がその使用を容易にすることを意図した過剰の薬学的に許容される担体(複数可)又は他のビヒクルと組み合わされる可能性を除外しない。抗体は、産生又は精製からの妨害タンパク質及び汚染物から少なくとも約60%、約70%、約80%、約90%、約95、又は約99%w/w純粋である場合がある。単離された抗体を含む抗体は、細胞傷害性薬とコンジュゲートされ、抗体薬物コンジュゲートとして提供され得る。
【0085】
抗体の、その標的抗原への特異的結合は、典型的に、少なくとも約10、約10、約10、約10、又は約1010-1の親和性を意味する。特異的結合は、検出可能に規模が高く、少なくとも1つの非特異的標的に生じる非特異的結合から区別可能である。特異的結合は、特定の官能基間の結合の形成又は特定の空間的適合(例えば、ロック・アンド・キータイプ)の結果であり得るが、非特異的結合は典型的に、ファンデルワース力の結果である。
【0086】
「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、隣接するアミノ酸、又は1つ以上のタンパク質の3次折り畳みが並置される隣接しないアミノ酸に由来し得る。隣接するアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、変性剤、例えば溶媒への曝露で保持され、一方で3次折り畳みによって形成されるエピトープは、典型的には、変性剤、例えば溶媒による処理で失われる。エピトープは、典型的には、少なくとも約3個、更に通常は少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、又は約8~10個のアミノ酸を、固有の空間的構造で含む。エピトープの空間的構造を決定するための方法としては、例えば、X線結晶学及び2次元核磁気共鳴が挙げられる。例えば、Epitope Mapping Protocols,in Methods in Molecular Biology,Vol.66,Glenn E.Morris,Ed.(1996)を参照されたい。
【0087】
同じであるか又は重複しているエピトープを認識する抗体は、一方の抗体が標的抗原への他方の抗体の結合と競合する能力を示す単純な免疫アッセイにおいて特定することができる。抗体のエピトープも、接触残基を特定するためのその抗原に結合した抗体のX線結晶学によって定義することができる。
【0088】
あるいは、2つの抗体は、一方の抗体の結合を低下させるか又は排除する抗原におけるアミノ酸突然変異が、他方の結合を低下させるか又は排除する場合に(かかる突然変異が抗原構造の全体的な改変をもたらさないことを条件とする)、同じエピトープを有する。2つの抗体は、一方の抗体の結合を低下させるか又は排除するいくつかのアミノ酸突然変異が他方の抗体の結合を低下させるか又は排除する場合に、重複しているエピトープを有する。
【0089】
抗体間の競合は、試験抗体が参照抗体の共通抗原への特異的結合を阻害するアッセイによって決定し得る(例えば、Junghans et al.,Cancer Res.50:1495,1990)。試験抗体は、過剰な試験抗体が参照抗体の結合を阻害する場合に、参照抗体と競合する。
【0090】
競合アッセイによって特定された抗体(競合抗体)は、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、及び立体障害が生じるように参照抗体に結合するエピトープの十分近位にある隣接するエピトープに結合する抗体を含む。競合アッセイによって特定される抗体は、標的タンパク質における構造変化を引き起こすことで、参照抗体が試験抗体と結合するエピトープとは異なるエピトープに結合することを防止することによって参照抗体と間接的に競合する抗体も含む。
【0091】
抗体エフェクター機能は、IgのFc領域が寄与する機能を指す。かかる機能は、例えば、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、又は補体依存性細胞傷害性(CDC)であり得る。かかる機能は、例えば、食作用若しくは溶解作用を有する免疫細胞上のFc受容体へのFc領域の結合によって、又はFc領域の補体系の構成要素への結合によって引き起こされ得る。典型的には、Fc結合細胞又は補体成分が媒介する作用(複数可)により、LIV1標的化細胞の阻害及び/又は欠乏がもたらされる。抗体のFc領域は、Fc受容体(FcR)発現細胞を動員(リクルート)し、それらを抗体で被覆された標的細胞と並置し得る。FcγRIII(CD16)、FcγRII(CD32)、及びFcγRIII(CD64)を含む、IgGに対する表面FcRを発現している細胞は、IgGで被覆された細胞を破壊するためのエフェクター細胞として作用し得る。かかるエフェクター細胞としては、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及び好酸球が挙げられる。IgGによるFcγRの会合(engagement)により、ADCC又はADCPが活性化される。ADCCは、膜孔形成タンパク質及びプロテアーゼの分泌を通してCD16エフェクター細胞によって媒介され、一方で食作用は、CD32及びCD64エフェクター細胞によって媒介される(Fundamental Immunology,4th ed.,Paul ed.,Lippincott-Raven,N.Y.,1997,Chapters 3,17及び30、Uchida et al., J.Exp. Med.199:1659-69,2004、Akewanlop et al.,Cancer Res.61:4061-65,2001、Watanabe et al.,Breast Cancer Res.Treat.53:199-207,1999を参照されたい)。
【0092】
ADCC及びADCPに加えて、細胞に結合した抗体のFc領域も、補体古典的経路を活性化して、CDCを誘起することができる。補体系のC1qは抗体のFc領域に結合し、この結合は、それらが抗原と複合体化されるときに生じる。C1qが細胞に結合した抗体に結合することで、C4及びC2のタンパク質分解活性化に関与する事象のカスケードが始動し、C3転換酵素を生成し得る。C3転換酵素によってC3がC3bに切断されることにより、C5b、C6、C7、C8、及びC9を含む末端補体成分の活性化が可能となる。まとめて、これらのタンパク質は、抗体で被覆された細胞上に膜攻撃複合体孔を形成する。これらの孔が、細胞膜の統合性を分断して、標的細胞を殺滅する(Immunobiology,6thed.,Janeway et al.,Garland Science,N.Y.,2005,Chapter 2)。
【0093】
「抗体依存性細胞傷害性」又は「ADCC」という用語は、抗体で被覆された標的細胞と溶解活性を有する免疫細胞(エフェクター細胞とも称される)との相互作用に依存する細胞死を誘導するための機序を指す。かかるエフェクター細胞としては、ナチュラルキラー細胞、単球/マクロファージ、及び好中球が挙げられる。エフェクター細胞は、標的細胞に結合したIgのFc領域に、それらの抗原結合部位を介して結合する。抗体で被覆された標的細胞の死滅は、エフェクター細胞活性の結果として生じる。いくつかの例示的な実施形態では、本発明の抗LIV1 IgG1抗体は、親抗体と比較して、及び/又は抗LIV1 IgG3抗体と比較して、同等又は増加したADCCを媒介する。
【0094】
「抗体依存性細胞食作用」又は「ADCP」という用語は、抗体で被覆された細胞が、IgのFc領域に結合する食作用免疫細胞(例えば、マクロファージ、好中球、及び/又は樹状細胞)によって全て又は部分的に内在化されるプロセスを指す。いくつかの例示的な実施形態では、本発明の抗LIV1 IgG1抗体は、親抗体と比較して、及び/又は抗LIV1 IgG3抗体と比較して、同等又は増加したADCPを媒介する。
【0095】
「補体依存性細胞傷害性」又は「CDC」という用語は、標的に結合した抗体のFc領域が一連の酵素反応を活性化して標的細胞膜における孔の形成をもたらす、細胞死を誘導するための機序を指す。
【0096】
典型的には、抗原-抗体複合体、例えば、抗体で被覆された標的細胞上にあるものが、補体成分C1qに結合してそれを活性化し、今度はこのC1qが標的細胞死につながる補体カスケードの活性化する。補体の活性化により、白血球上の補体受容体(例えば、CR3)の結合によってADCCを促進する、標的細胞表面上の補体成分の堆積も生じ得る。
【0097】
「細胞傷害性作用」は、標的細胞の枯渇、排除、及び/又は殺滅を指す。「細胞傷害性薬」は、細胞に対して細胞傷害作用を有し、それにより標的細胞の枯渇、排除及び/又は殺滅を媒介する化合物を指す。いくつかの実施形態において、細胞傷害性薬は、抗体にコンジュゲートされるか、又は抗体と組み合わせて投与され得る。好適な細胞傷害性薬はさらに本明細書に記載する。
【0098】
「細胞増殖抑制作用」は、細胞増殖の阻害を指す。「細胞増殖抑制薬」は、細胞に対して細胞増殖抑制作用を有することで、特定の細胞型及び/又は細胞の特定のサブセットの増殖及び/又は拡大の阻害を媒介する化合物を指す。好適な細胞増殖抑制薬はさらに本明細書に記載する。
【0099】
「患者」又は「対象」という用語は、予防的又は治療的処置のいずれかを受ける、ヒト及び他の哺乳動物対象、例えば非ヒト霊長類、ウサギ、ラット、マウスなど、及びそれらのトランスジェニック種を含む。
【0100】
本明細書に記載の抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)の投与によるLIV1発現障害の処置の背景における「有効量」という用語は、LIV1関連障害(例えば、LIV1発現がん)の1つ以上の症状の発現を阻害するか又はそれを緩和するのに十分なかかる抗体又はその抗原結合断片の量を指す。有効量の抗体は、「有効なレジメン」で投与される。「有効なレジメン」という用語は、その障害の予防的又は治療的処置(例えば、LIV1発現がんの予防的又は治療的処置)を達成するのに十分な抗体の投与量及び投薬頻度の組み合わせを指す。
【0101】
「薬学的に許容される」という用語は、米国の連邦若しくは州政府の規制機関により承認された若しくは承認可能である、又は動物、より具体的にはヒトにおいて使用するための米国薬局方若しくは他の一般的に認識されている薬局方に列記されていることを意味する。「薬学的に相溶性の成分」という用語は、抗LIV1抗体(例えば、LIV1-ADC)と共に製剤化される薬学的に許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。
【0102】
「薬学的に許容される塩」という句は、薬学的に許容される有機塩又は無機塩を指す。例示的な塩には、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩(saccharate)、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、pトルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩(即ち、1,1’メチレンビス-(2ヒドロキシ3ナフトエート)塩)が含まれる。薬学的に許容される塩は、別の分子、例えば酢酸イオン、コハク酸イオン又は他の対イオンなどをさらに含んでもよい。対イオンは、親化合物上の電荷を安定させる任意の有機又は無機の部分であり得る。更に、薬学的に許容される塩は、その構造内に2つ以上の荷電原子を有し得る。複数の荷電原子が薬学的に許容される塩の一部である場合は、複数の対イオンを有し得る。したがって、薬学的に許容される塩は、1つ以上の荷電原子及び/又は1つ以上の対イオンを有し得る。
【0103】
文脈から別途明らかでない限り、値が「約」X又は「およそ」Xと表されるとき、Xの表示値は、±10%の精度を持つと理解される。
【0104】
本発明の文脈における溶媒和物は、溶媒分子との配位を通して固体又は液体状態において複合体を形成する本発明の化合物の形態である。水和物は、溶媒和物の1つの特定の形態であり、配位は水と行われる。いくつかの例示的な実施形態において、本発明の文脈における溶媒和物は、水和物である。
【0105】
II.抗LIV1抗体及びその抗原結合断片
本発明は、単離された、組換え及び/又は合成された抗LIV1ヒト、霊長類、げっ歯類、哺乳類、キメラ、ヒト化及び/又はCDRグラフト化された抗体及びその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)、並びに1つの抗LIV1抗体分子の少なくとも一部をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物及び核酸分子を提供する。本発明は、診断及び治療用組成物、方法及びデバイスを含む、そのような核酸及び抗体の製造方法及び使用方法をさらに含むが、これらに限定されない。いくつかの例示的な実施形態において、ヒト化抗LIV1 IgG1抗体が提供される。他の例示的な実施形態において、ヒト化抗LIV1 IgG1抗体-薬物コンジュゲートが提供される。
【0106】
別段の指示がない限り、抗LIV1抗体薬物コンジュゲート(すなわち、LIV1-ADC)は、細胞傷害性薬にコンジュゲートされたヒトLIV-1タンパク質に特異的な抗体を含む。
【0107】
SGN-LIV1Aは、プロテアーゼ切断可能なリンカー(すなわち、バリン-シトルリンリンカー)を介してモノメチルアウリスタチンE(MMAE)にコンジュゲートされた抗LIV-1ヒト化抗体(hLIV22とも称する)である。LIV-1発現細胞に結合すると、SGN-LIV1Aは内在化され、MMAEを放出し、このMMAEはマイクロチューブリンを破壊し、アポトーシスを誘導する。
【0108】
SGN-LIV1Aは、米国特許第9,228,026号に記載されたマウスBR2-22a抗体のヒト化形態である。SGN-LIV1A抗体は、実験誤差の範囲内でBR2-22aと本質的に同じであり、7つの復帰変異(back mutation)を含む。SGN-LIV1A抗体を作製する方法もまた、米国特許第9,228,026号に開示されており、これはすべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
SGN-LIV1Aの重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号1として本明細書に提供される。SGN-LIV1Aの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号2として本明細書に提供される。薬物リンカーvcMMAE(以下に示す。1006とも称する)の合成及びコンジュゲーションは、米国特許第9,228,026号及び米国特許公開第2005/0238649号にさらに記載されており、これらはそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
表1:SGN-LIV1AのHCVR(配列番号1)
【表1】
【0111】
表2:SGN-LIV1AのLCVR(配列番号2)
【表2】
【0112】
いくつかの例示的な実施形態において、LIV1-ADCは、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)(PubChem CID:53297465)を含む:
【化12】
【0113】
いくつかの例示的な実施形態において、LIV1-ADCは、それにコンジュゲートされたvcMMAEを含む。vcMMAEは、リソソーム切断性ジペプチドであるバリン-シトルリン(vc)を介して結合した抗有糸分裂薬MMAEを含む強力な抗腫瘍活性を有するADC用薬剤リンカーコンジュゲートである:
【化13】
【0114】
米国特許第9,228,026号は、vcMMAEをhLIV22にコンジュゲートする方法を開示している。
【0115】
特定の例示的な実施形態によるvcMMAE-抗体コンジュゲート(例えば、LIV1-ADC)は、以下に記載される。
【化14】
【0116】
いくつかの例示的な実施形態において、vcMMAE抗体コンジュゲート(例えば、LIV1-ADC)は、上記のように提供され、ここでAbは、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、hLIV22)を含むことができ、pは約1から約8までの任意の整数であり得る。いくつかの実施形態では、vcMMAE抗体コンジュゲート(例えば、LIV1-ADC)は、上記のように提供され、ここでAbは、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、hLIV22)を含むことができ、pは1であり、vcMMAEと抗体又はその抗原結合断片の比が1であることを表す。いくつかの実施形態では、vcMMAE抗体コンジュゲート(例えば、LIV1-ADC)は上記のように提供され、ここでAbは、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、hLIV22)を含むことができ、pは、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり、vcMMAEと抗体又はその抗原結合断片の比(「薬物対抗体比」又は「DAR」としても知られている)が2、3、4、5、6、7、8、9又は10であることを表す。従って、いくつかの実施形態では、vcMMAE抗体コンジュゲート(例えば、LIV1-ADC)は上記のように提供され、ここで、vcMMAEと抗体又は抗原結合断片の比は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である。いくつかの例示的な実施形態において、vcMMAE抗体コンジュゲート(例えば、LIV1-ADC)は上記のように提供され、ここでAbは抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、hLIV22)を含むことができ、pは4であり、vcMMAEと抗体又はその抗原結合断片の比が4であることを表す。したがって、いくつかの例示的な実施形態において、vcMMAE抗体コンジュゲート(例えば、LIV1-ADC)は上記のように提供され、ここで、vcMMAEと抗体又はその抗原結合断片の比は4である。
【0117】
SGN-LIV1Aは、乳がん細胞の増殖を阻害し、同時に対象が許容するレベルで対象に投与することができる。
【0118】
いくつかの例示的な実施形態において、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、配列番号1に記載されたHCVRからのCDR及び/又は配列番号2に記載されたLCVRからのCDRを含む。いくつかの例示的な実施形態において、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、配列番号1に記載されたHCVR及び/又は配列番号2に記載されたLCVRを含む。他の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、HCVR/LCVR対の配列番号1/配列番号2を含む。他の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、配列番号1に対して少なくとも約80%の相同性又は同一性(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%)を有するHCVRを含む、並びに/あるいは配列番号2に対して少なくとも約80%の相同性又は同一性(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%)を有するLCVRを含む。
【0119】
本明細書に記載の抗LIV1抗体及びその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、改変形態で発現してもよい。例えば、追加のアミノ酸、特に荷電アミノ酸の領域を、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)のN末端に付加して、宿主細胞内での、精製中、又はその後の取り扱い及び貯蔵中の、安定性及び持続性を改善することができる。また、精製を容易にするために、本発明の抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)にペプチド部分を付加することができる。そのような領域は、抗体分子又はその少なくとも1つの断片の最終調製に先立って除去することができる。そのような方法は、Sambrook,前掲;Ausubel,et al.編,Current Protocols In Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,NY,N.Y.(1987-2001)などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載されている。
【0120】
本明細書に記載の抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、典型的には、標準的な結合アッセイ、例えばBiacoreベースの結合アッセイを用いて測定されるように、約≦1μM、例えば、約≦100nM、約≦10nM、又は約≦1nMの平衡結合定数でLIV-1と結合する。
【0121】
本発明の抗体分子は、参照抗LIV-1抗体、例えば抗体BR2-22aと相対的に特徴付けることができる。抗体BR2-22aは、米国特許第8,591,863号に記載されており、American Type Culture Collectionから市販されている。
【0122】
抗体-薬物コンジュゲート
いくつかの実施形態において、本発明の抗LIV1抗体は、抗体薬物コンジュゲート(ADC)と組み合わせ得る。抗LIV1抗体の例はSGN-LIV1Aである。特定のADCは、細胞傷害性薬(例えば、化学療法薬)、プロドラッグ変換酵素、放射性同位体若しくは化合物、又は毒素(治療薬と総称されるこれらの部分)を含み得る。例えば、ADCは、化学療法薬などの細胞傷害性薬、又は毒素(例えば、細胞増殖抑制若しくは殺細胞薬、例えば、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素、又はジフテリア毒素)とコンジュゲートされ得る。細胞傷害性薬の有用なクラスの例は、例えば、DNA小溝結合、DNAアルキル化剤、及びチューブリン阻害剤を含む。例示的な細胞傷害性薬としては、例えば、アウリスタチン、カンプトテシン、カリケアマイシン、デュオカルマイシン、エトポシド、マイタンシノイド(例えば、DM1、DM2、DM3、DM4)、タキサン、ベンゾジアゼピン(例えば、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン二量体、インドリノベンゾジアゼピン二量体、及びオキサゾリジノベンゾジアゼピン二量体を含む、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン、インドリノベンゾジアゼピン、及びオキサゾリジノベンゾジアゼピン)、及びビンカアルカロイドが挙げられる。
【0123】
ADCは、プロドラッグ変換酵素にコンジュゲートされ得る。プロドラッグ変換酵素は、既知の方法を使用して、抗体に組換えによって融合されるか、又は抗体に化学的にコンジュゲートされ得る。例示的なプロドラッグ変換酵素は、カルボキシペプチダーゼG2、ベータ-グルクロニダーゼ、ペニシリン-V-アミダーゼ、ペニシリン-G-アミダーゼ、β-ラクタマーゼ、β-グルコシダーゼ、ニトロレダクターゼ、及びカルボキシペプチダーゼAである。
【0124】
治療薬をタンパク質、特に抗体とコンジュゲートするための技法は周知である。(例えば、Alley et al.,Current Opinion in Chemical Biology 2010 14:1-9;Senter,Cancer J.,2008,14(3):154-169を参照されたい)。治療薬は、抗体から切断されない限り(例えば、加水分解、タンパク質分解、又は切断剤によって)、その活性を低減する様式でコンジュゲートされ得る。いくつかの態様では、コンジュゲートが、LIV-1発現がん細胞によって内在化されるときに抗体から切断されるように(例えば、エンドソーム環境において、又は例えば、pH感受性若しくはプロテアーゼ感受性により、リソソーム環境において、又はカベオラ(caveolear)環境において)、LIV-1発現がん細胞の細胞内環境における切断に感受性であるが、細胞外環境に実質的に感受性ではない切断可能なリンカーによって治療薬は抗体に結合される。いくつかの実施形態では、治療薬はまた、切断不可能なリンカーによって抗体に結合され得る。
【0125】
いくつかの例示的な実施形態において、ADCは、細胞傷害性薬又は細胞増殖抑制薬と抗体との間のリンカー領域を含み得る。上記のように、典型的には、リンカーは、リンカーの切断が細胞内環境(例えば、リソソーム又はエンドソーム又はカベオラ(caveolea)内)において抗体から治療薬を放出するように、細胞内条件下で切断可能であり得る。リンカーは、例えば、リソソーム又はエンドソームプロテアーゼを含む、細胞内ペプチダーゼ又はプロテアーゼ酵素により切断されるペプチジルリンカーであり得る。切断剤は、カテプシンB及びD、並びにプラスミンを含み得る(例えば、Dubowchik and Walker,Pharm.Therapeutics 83:67-123,1999を参照されたい)。最も典型的なのは、LIV-1発現細胞に存在する酵素により切断可能であるペプチジルリンカーである。例えば、癌性組織において高度に発現されるチオール依存性プロテアーゼカテプシンBにより切断可能であるペプチジルリンカー(例えば、Phe-Leu又はVal-Citペプチドを含むリンカー)を使用することができる。
【0126】
切断可能なリンカーは、pH感受性、即ち、ある特定のpH値での加水分解に感受性である。典型的には、pH感受性リンカーは、酸性条件下で加水分解性である。例えば、リソソーム中で加水分解性である酸に不安定なリンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、シスアコニックアミド、オルトエステル、アセタール、ケタールなど)を使用することができる。(例えば、米国特許第5,122,368号、第5,824,805号、第5,622,929号、Dubowchik and Walker,Pharm.Therapeutics 83:67-123,1999、Neville et al.,Biol.Chem.264:14653-14661,1989を参照されたい)。かかるリンカーは、血液中などの中性pH条件下で比較的安定しているが、リソソームのおよそのpHであるpH5.5又は5.0未満で不安定である。
【0127】
他のリンカーは還元条件下で切断可能である(例えば、ジスルフィドリンカー)。ジスルフィドリンカーには、SATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート)、SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)及びSMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-アルファ-メチル-アルファ-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)、SPDB、及びSMPTを使用して形成され得るものが挙げられる。(例えば、Thorpe et al.,Cancer Res.47:5924-5931,1987、Wawrzynczak et al.,Immunoconjugates:Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer(C.W.Vogel ed.,Oxford U.Press,1987、また米国特許第4,880,935号を参照されたい。)
【0128】
リンカーは、マロネートリンカー(Johnson et al.,Anticancer Res.15:1387-93,1995)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lau et al.,Bioorg-Med-Chem.3:1299-1304,1995)、又は3’-N-アミド類似体(Lau et al.,Bioorg-Med-Chem.3:1305-12,1995)であり得る。
【0129】
リンカーは、治療薬に直接結合され、抗体のタンパク質分解により放出されるマレイミド-アルキレン又はマレイミド-アリールリンカーなどの切断不可能なリンカーでもあり得る。
【0130】
典型的には、リンカーは、細胞外環境に実質的に感受性ではなく、これは、ADCが細胞外環境(例えば、血漿中)に存在するときに、ADCの試料中のリンカーの約20%以下、典型的には約15%以下、より典型的には約10%以下、更により典型的には約5%以下、約3%以下、又は約1%以下が切断されることを意味する。リンカーが細胞外環境に実質的に感受性でないかは、例えば、(a)ADC(「ADC試料」)及び(b)等モル量のコンジュゲートされていない抗体又は治療薬(「対照試料」)の両方を、所定の期間(例えば、2、4、8、16、又は24時間)、個別に血漿と共にインキュベートした後、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定して、ADC試料中に存在するコンジュゲートされていない抗体又は治療薬の量を、対照試料中に存在するものと比較することによって決定され得る。
【0131】
リンカーはまた、細胞内在化を促進し得、例えば治療薬とコンジュゲートされたときに(即ち、本明細書に記載のADC又はADC誘導体のリンカー-治療薬部分の環境において)、細胞内在化を促進することができる。あるいは、リンカーは、治療薬及び抗体の両方とコンジュゲートされたときに(即ち、本明細書に記載のADCの環境において)、細胞内在化を促進することができる。
【0132】
抗LIV-1抗体は、抗体のヘテロ原子を介してリンカーとコンジュゲートされ得る。これらのヘテロ原子は、その天然の状態で抗体上に存在し得るか、又は抗LIV-1抗体に導入され得る。いくつかの態様では、抗LIV-1抗体は、システイン残基の硫黄原子を介してリンカーとコンジュゲートされる。抗体とリンカー及び薬物リンカーをコンジュゲートする方法は、当該技術分野において既知である。
【0133】
例示的な抗体-薬物コンジュゲートは、アウリスタチン系抗体-薬物コンジュゲートを含む(つまり、薬物成分がアウリスタチン薬物である)。アウリスタチンは、チューブリンに結合し、微小管の動態並びに核及び細胞分裂に干渉することが示されており、抗がん活性を有する。典型的に、アウリスタチン系抗体-薬物コンジュゲートは、アウリスタチン薬物と抗LIV-1抗体との間のリンカーを含む。リンカーは、例えば、切断可能なリンカー(例えば、ペプチジルリンカー)又は切断不可能なリンカー(例えば、抗体の分解により放出されるリンカー)であり得る。アウリスタチンは、MMAF及びMMAEを含む。例示的なアウリスタチンの合成及び構造は、米国特許第7,659,241号、第7,498,298号、第7,968,687号、米国公開第2009/0111756号及び第2009/0018086号に記載されており、それらの各々は、その全体が参照により、及び全ての目的に関して、本明細書に組み込まれる。
【0134】
特定の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片は、抗体薬物コンジュゲート(ADC)と組み合わせることができ、抗体あたり約1から約8の薬物部分の比を有することができる。特定の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片は、ADCと組み合わせることができ、抗体当たりの薬物部分の比は約2から約5である。いくつかの実施形態では、抗体当たりの薬物部分の比は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である。いくつかの例示的な実施形態において、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片をADCと組み合わせて、抗体当たりの薬物部分の比を4とすることができる。ADCの抗体又はその抗原結合断片当たりの薬物部分の比を決定する方法は、当業者には容易に知られている。
【0135】
III.治療用途
本発明は、LIV-1を発現する細胞に関連する障害、例えば、がん(例えば、乳がん、例えば、局所進行性乳がん又は転移性乳がん)を処置する方法を提供する。結果として、本発明は、本明細書に記載される抗LIV1抗体及びその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)を使用して、対象、例えば乳がんを有する対象を処置する方法を提供する。本方法は、抗LIV1抗体又は抗LIV1抗体若しくはその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)を含む組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0136】
本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、本発明の方法によって処置される生物を指す。このような生物は、好ましくは、限定されないが、哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)を含み、より好ましくはヒトを含む。本明細書で使用される場合、「処置する」、「処置」及び「処置すること」という用語には、状態、疾患、障害などの向上をもたらす任意の効果、例えば、軽減、減少、調節、改善又は排除、或いはそれらの兆候の改善、例えば、がん細胞数の減少、腫瘍サイズの減少、末梢器官へのがん細胞浸潤速度の減少、又は腫瘍転移若しくは腫瘍成長速度の減少が含まれる。
【0137】
がんにおける肯定的な治療効果は、多数の方法で測定することができる(W.A.Weber、J.Null.Med.50巻:1S~10S(2009年);Eisenhauerら、前掲を参照されたい)。ある特定の例示的な実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)に対する応答は、RECIST 1.1基準を使用して評価される。一部の実施形態では、治療有効量によって達成される処置は、部分応答(PR)、完全応答(CR)、無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間(DFS)、客観的応答(OR)又は全生存(OS)のいずれかである。乳がん患者を処置するのに有効である本明細書に記載される治療の投薬レジメンは、因子、例えば、患者の病状、年齢、及び体重、並びに対象における抗がん応答を誘発する治療の能力によって変動し得る。本発明の処置方法、医薬及び使用の実施形態は、すべての対象において肯定的な治療効果を達成するのに有効ではない場合があるが、当該技術分野において公知である任意の統計的試験、例えば、スチューデントt検定、カイ検定、Mann及びWhitneyによるU検定、Kruskal-Wallis検定(H検定)、Jonckheere-Terpstra検定、及びWilcoxon検定によって決定される統計的に有意な数の対象において肯定的な治療効果を達成する必要がある。
【0138】
本明細書で使用される場合、「RECIST 1.1応答基準」は、反応が測定される状況に基づいて、必要に応じて、標的病変又は非標的病変に対する、Eisenhauerら、E.A.ら、Eur.J Cancer 45巻:228~247頁(2009年)に記載されている定義を意味する。
【0139】
がん(例えば、乳がん)と診断された、又はそれを有する疑いがある対象に適用される「腫瘍」とは、任意のサイズの悪性若しくは潜在的に悪性の新生物又は組織の塊を指す。固形腫瘍は、通常、嚢胞及び液体領域を含有しない異常な成長又は組織の塊である。異なるタイプの固形腫瘍は、それらを形成する細胞のタイプにちなんで名付けられる。固形腫瘍の例としては、肉腫、癌腫、及びリンパ腫がある。白血病(血液のがん)は通常、固形腫瘍を形成しない(National Cancer Institute、Dictionary of Cancer Terms)。
【0140】
「腫瘍量」とも呼ばれる「腫瘍組織量」とは、全身に分布する腫瘍物質の総量を指す。腫瘍量とは、リンパ節及び骨狭窄を含む、全身のがん細胞の総数又は腫瘍(複数可)の合計サイズを指す。腫瘍量は、当該技術分野において公知である様々な方法によって、例えば、キャリパーを使用して、例えば、対象からの除去時に腫瘍(複数可)の寸法を測定することによって、又は、一方で、生体内では、画像化技術、例えば、超音波、骨スキャン、コンピュータ断層撮影(CT)若しくは磁気共鳴画像(MRI)スキャンを使用することによって決定することができる。
【0141】
用語「腫瘍サイズ」とは、腫瘍の長さ及び幅として測定することができる腫瘍の合計サイズを指す。腫瘍の大きさは、当該技術分野において公知である様々な方法によって、例えば、キャリパーを使用して、例えば、対象からの除去時に腫瘍(複数可)の寸法を測定することによって、又は、一方で、生体内では、画像化技術、例えば、骨スキャン、超音波、CT若しくはMRIスキャンを使用することによって決定することができる。
【0142】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」とは、有益な又は所望の結果をもたらすのに十分な化合物(例えば、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片)の量を指す。有効量の抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、1回以上の投与、適用又は投薬で投与することができ、特定の製剤又は投与経路に限定されることを意図しない。一般的に、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)の治療有効量は、約200mgの最大用量で0.5mg/kgから2.8mg/kgの範囲である。投与される投薬量は、公知の因子、例えば、特定の薬剤の薬力学的特徴、並びにその投与様式及び投与経路、レシピエントの年齢、健康状態、及び体重、処置される疾患又は症状の種類及び程度、兆候の性質及び程度、併用処置の種類、処置の頻度、及び望ましい効果に依存して変動し得る。最初の投薬量は、望ましい血中レベル又は組織レベルを迅速に達成するために、上限レベルを超えて増加させることができる。或いは、最初の投薬量は、最適値よりも少なくすることができ、毎日の投薬量は、処置の過程で徐々に増加させることができる。投薬頻度は、因子、例えば、投与経路、投薬量、抗体の血清半減期、及び処置する疾患に依存して変動し得る。例示的な投薬頻度は、1日に1回、週に1回、2週間ごとに1回、及び3週間ごとに1回である。モノクローナル抗体ベースの薬物の製剤は、当該技術分野における通常の技術の範囲内である。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、凍結乾燥され、次に、投与時に緩衝生理食塩水において復元される。
【0143】
一部の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、以前の治療後に(例えば、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)ではない全身性抗がん治療に失敗した又は無効な治療後に)、持続的応答を達成できなかった患者、すなわち、がんの処置経験がある患者に投与される。
【0144】
一部の実施形態では、上記のように、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)を含む医薬は、液体製剤として提供され得るか、又は使用前に注射用の滅菌水で凍結乾燥された粉末を復元することによって調製され得る。
【0145】
ある特定の実施形態では、投薬レジメンは、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)を、対象の体重1kgあたり約2.5mgの用量で、処置の経過全体で約21日(±2日)の間隔で投与することを含む。ある特定の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、3週間ごとに約200mg未満の用量で使用される。
【0146】
ある特定の実施形態では、投薬レジメンは、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)を、対象の体重1kgあたり約2.5mgの用量で、処置の経過全体で約21日(±2日)の間隔で投与することを含む。ある特定の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、3週間ごとに約250mg以下の用量で使用される。ある特定の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、3週間ごとに250mg以下の用量で使用される。ある特定の実施形態では、対象は、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)をさらに投与される。ある特定の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)が、3週間ごとに約200mg以上であり、約250mg以下の用量で使用される場合、対象は、GCSFをさらに投与される。ある特定の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)が、3週間ごとに200mg以上であり、250mg以下の用量で使用される場合、対象は、GCSFをさらに投与される。ある特定の実施形態では、GCSFは予防的に投与される。ある特定の実施形態では、GCSFは、組換えヒトGCSFである。ある特定の実施形態では、GCSFは、フィルグラスチム(filgrastim)(NEUPOGEN(登録商標))である。ある特定の実施形態では、GCSFは、PEG-フィルグラスチム(NEULASTA(登録商標))である。ある特定の実施形態では、GCSFは、レノグラスチム(lenograstim)(GRANOCYTE(登録商標))である。ある特定の実施形態では、GCSFは、tbo-フィルグラスチム(GRANIX(登録商標))である。
【0147】
ある特定の実施形態では、対象は、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)を含む医薬を非経口投薬で、例えば、静脈内(IV)注入で投与される。
【0148】
本発明の特定の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、3週間ごと(Q3W)若しくは21日ごと(Q21D)の約0.5mg/kg体重、Q3W若しくはQ21Dの約1.0mg/kg体重、Q3W若しくはQ21Dの約1.5mg/kg体重、Q3W若しくはQ21Dの約2.0mg/kg体重、Q3W若しくはQ21Dの約2.5mg/kg体重、又はQ3W若しくはQ21Dの約2.8mg/kg体重からなる群から選択される用量で、例えば、Q3W又はQ21Dの約200mg未満などのこれらの用量のいずれかの最大相当量で、液体医薬において対象に投与される。
【0149】
本発明の特定の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、3週間ごと(Q3W)若しくは21日ごと(Q21D)の約0.5mg/kg体重、Q3W若しくはQ21Dの約1.0mg/kg体重、Q3W若しくはQ21Dの約1.5mg/kg体重、Q3W若しくはQ21Dの約2.0mg/kg体重、Q3W若しくはQ21Dの約2.5mg/kg体重、又はQ3W若しくはQ21Dの約2.8mg/kg体重からなる群から選択される用量で、例えば、Q3W又はQ21Dの約250mg以下などのこれらの用量のいずれかの最大相当量で、液体医薬において対象に投与される。ある特定の実施形態では、対象は、GCSFをさらに投与される。ある特定の実施形態では、用量が、Q3W又はQ21Dで約200mg以上であり、約250mg以下である場合、対象は、GCSFをさらに投与される。ある特定の実施形態では、対象は、GCSFをさらに投与される。ある特定の実施形態では、用量が、Q3W又はQ21Dで200mg以上であり、250mg以下である場合、対象は、GCSFがさらに投与される。ある特定の実施形態では、GCSFは、予防的に投与される。ある特定の実施形態では、GCSFは組換えヒトGCSFである。ある特定の実施形態では、GCSFは、フィルグラスチム(NEUPOGEN(登録商標))である。ある特定の実施形態では、GCSFは、PEG-フィルグラスチム(NEULASTA(登録商標))である。ある特定の実施形態では、GCSFは、レノグラスチム(GRANOCYTE(登録商標))である。ある特定の実施形態では、GCSFは、tbo-フィルグラスチム(GRANIX(登録商標))である。
【0150】
一部の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約191mg、約192mg、約193mg、約194mg、約195mg、約196mg、約197mg、約198mg、約199mg又は約200mgの投薬量で提供される。ある特定の例示的な実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、約200mg未満の投薬量で、例えば、約200mgの投薬量で、約199mg、約198mg、約197mg、約196mg、約195mg、約190mg、約185mg、約180mg、約175mg、約170mg、約165mg、約160mg、約155mg、約150mg、約145mg、約140mg、約135mg、約130mg、約125mg、約120mg、約115mg、約110mg、約105mg、又は約100mgの投薬量で提供される。
【0151】
一部の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約245mg又は約250mgの投薬量で提供される。ある特定の例示的な実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、約250mg以下の投薬量で、例えば、約250mgの投薬量で、約245mg、約240mg、約235mg、約230mg、約225mg、約220mg、約215mg、約210mg、約205mg、約200mg、約195mg、約190mg、約185mg、約180mg、約175mg、約170mg、約165mg、約160mg、約155mg、約150mg、約145mg、約140mg、約135mg、約130mg、約125mg、約120mg、約115mg、約110mg、約105mg、又は約100mgの投薬量で提供される。
【0152】
ある特定の例示的な実施形態では、本発明は、細胞、組織、器官、動物又は患者におけるがんを処置する方法を提供する。特定の実施形態では、本発明は、ヒトにおける乳がんを処置する方法を提供する。
【0153】
ある特定の乳がんは、タンパク質(例えば、例示された抗体の1つを使用するイムノアッセイによる)又はmRNAレベルのいずれかで測定されたLIV-1の検出可能なレベルを示す。ある特定の実施形態では、乳がんは、同じタイプの非がん性組織又は細胞、例えば、同じ患者由来の他の乳房細胞又は乳房組織と比較して、高レベルのLIV-1を示す。他の実施形態では、乳がんは、例えば、同じ患者由来の同じタイプの非がん性乳房組織又は乳房細胞と比較して、類似したレベルのLIV-1を示す。
【0154】
より高い又はより低いレベルに関連する乳がんを処置することができるが、処置に適した乳がん細胞上のLIV-1タンパク質の例示的なレベルは、細胞あたり5,000~150,000のLIV-1タンパク質である。任意選択で、対象由来の乳がんにおけるLIV-1レベル(例えば、LIV-1タンパク質レベル)は、処置を行う前に測定される。
【0155】
例示的な乳がんは、がんを発現する細胞においてLIV-1を発現するもの(すなわち、LIV1を発現するがん)である。ある特定の例示的な実施形態では、乳がんは、癌腫、肉腫、葉状体、パジェット病、及び血管肉腫からなる群から選択される。乳がんは、非浸潤性(in situ)(例えば、非浸潤性乳管癌(DCIS)、非浸潤性小葉癌(LCIS)など)又は侵襲性/浸潤性(例えば、侵襲性乳管癌(IDC)、侵襲性小葉癌(ILC)、炎症性乳がん(IBC)など)であり得る。
【0156】
乳がんは、以下の特徴:エストロゲン受容体陽性(ER+)、プロゲステロン受容体陽性(PR+)、ホルモン受容体陰性(HR-)、HER2遺伝子過剰発現(HER2+)、HER2遺伝子の野生型又は低発現(HER2-)、グループ1(管腔A)、すなわち、ER+/PR+/HER2-、グループ2(管腔B)、すなわち、ER+/PR-/HER2+、グループ3(HER2+)、すなわち、ER-/PR-/HER2+、及びグループ4(基底細胞様又はトリプルネガティブ(TN))、すなわち、ER-/PR-/HER2-を有することができる。
【0157】
乳がんは、グレード1、2又は3にさらに分類され得る。グレード1又は十分に分化した(スコア3、4、若しくは5)乳がんは、より高いグレードの乳がんよりも成長が遅く、正常な乳房組織により似ている細胞を含む。グレード2又は中程度に分化した(スコア6、7)乳がんは、グレード1~3の間のどこかにある細胞の速度で成長し、その細胞のように見える細胞を有する。グレード3又は低程度に分化した(スコア8、9)乳がんには、正常細胞と非常に異なるように見え、典型的には、グレード1又は2よりも早く成長及び拡散する細胞を有する。
【0158】
ある特定の例示的な実施形態では、乳がんは、不治の、切除不可能な、局所的に進行した又は転移性の乳がん(LA/MBC)である。ある特定の実施形態では、乳がんは、トリプルネガティブ(TN)(ER-/PR-/HER2-)乳がん、ER-及び/又はPR+/HER2-乳がん、並びにLA/MBC乳がんのいずれかである。ある特定の例示的な実施形態では、乳がんは、HER2+及びLA/MBCである。ある特定の例示的な実施形態では、乳がんは、TN及びLA/MBCである。ある特定の例示的な実施形態では、乳がんは、TN乳がん、転移性乳がん、及び転移性TN乳がんからなる群から選択される。
【0159】
明細書全体を通じて、組成物及びキットが特定の構成要素を有する、含む(include)、若しくは含む(comprise)と記載されている場合、又はプロセス及び方法が特定のステップを有する、含む(include)、若しくは含む(comprise)と記載されている場合、さらに、列挙された構成要素から本質的になる又はそれからなる本発明の組成物及びキットがあること、並びに列挙された処理及び方法ステップから本質的になる又はそれからなる本発明のプロセス及び方法があることが企図される。
【0160】
IV.医薬組成物及び製剤
治療使用のために、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)は、薬学的に許容される担体と組み合わされる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」とは、合理的な効果/リスク比に見合う、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴わないで、ヒト及び動物の組織との接触における使用に適した緩衝剤、担体、及び賦形剤を意味する。担体(複数可)は、製剤の他の成分と適合し、レシピエントに有害ではないという意味で「許容できる」ものでなければならない。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、溶媒、分散媒体、被覆剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれ、これらは薬剤投与に適合する。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野において公知である。
【0161】
したがって、本発明の抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)組成物は、任意の適切な賦形剤の少なくとも1つ、例えば、限定されないが、希釈剤、結合剤、安定化剤、緩衝液、塩、親油性溶媒、防腐剤、アジュバントを含み得る。薬学的に許容される賦形剤が好ましい。このような滅菌溶液の非限定的な例及びそれを調製する方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、限定されないが、Gennaro編、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18版、Mack Publishing Co.(Easton,Pa.)1990年に記載されているものが挙げられる。当該技術分野において周知であるか又は本明細書に記載されている、抗体分子、断片又は変異体組成物の投与様式、溶解度及び/又は安定性に適した薬学的に許容される担体を、日常的に選択することができる。
【0162】
本発明に係る抗体分子組成物における使用に適した医薬賦形剤及び/又は添加剤は、当該技術分野において公知であり、例えば、「Remington:The Science&Practice of Pharmacy」、19版、Williams&Williams,(1995年)、及び「Physician’s Desk Reference」、52版、Medical Economics、Montvale,N.J.(1998年)に列挙されている。
【0163】
本明細書に開示される抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)を含有する医薬組成物は、投与単位剤形で提示され得、任意の適切な方法によって調製され得る。医薬組成物は、その意図された投与経路に適合するように製剤化される必要がある。投与経路の例は、静脈内(IV)、皮内、吸入、経皮、局所、経粘膜、及び直腸投与である。モノクローナル抗体の好ましい投与経路はIV注入である。有用な製剤は、製薬業界において公知である方法によって調製することができる。例えば、前掲のRemington’s Pharmaceutical Sciences(1990年)を参照されたい。非経口投与に適した製剤の構成要素としては、滅菌希釈剤、例えば、注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒、抗菌剤、例えば、ベンジルアルコール又はメチルパラベン、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム、キレート剤、例えば、EDTA、緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩、及び等張性を調整するための薬剤、例えば、塩化ナトリウム又はデキストロースが挙げられる。
【0164】
静脈内投与の場合、適切な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany,N.J.)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。担体は、製造及び保存の条件下で安定である必要があり、微生物に対して保護される必要がある。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、及びそれらの適切な混合物を含有する溶媒又は分散媒体であり得る。
【0165】
医薬製剤は、好ましくは滅菌である。滅菌は、任意の適切な方法、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって達成することができる。組成物が凍結乾燥される場合、凍結乾燥及び復元の前又は後に、フィルター滅菌を行うことができる。
【0166】
本発明の組成物は、様々な形態であり得る。これらには、例えば、液体、半固体及び固体剤形、例えば、液体溶液(例えば、注射可能及び注入可能な溶液)、分散剤又は懸濁剤、及びリポソームが挙げられる。特定の形態は、意図される投与様式及び治療用途に依存する。例示的な実施形態では、提供される組成物は、注射可能又は注入可能な溶液の形態である。例示的な投与は、非経口(例えば、静脈内、皮下、眼内、腹腔内、筋肉内)である。例示的な実施形態では、調製物は、静脈内注入又は注射によって投与される。別の好ましい実施形態では、調製物は、筋肉内又は皮下注射によって投与される。
【0167】
本明細書で使用される場合、「非経口投与」及び「非経口に投与される」という語句は、通常は注射による経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、皮下、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、硝子体内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、吸入、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内注射及び注入が挙げられる。
【0168】
抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)の例示的な投薬量は、対象の体重1kgあたり約0.5mg、対象の体重1kgあたり約1.0mg、対象の体重1kgあたり約1.5mg、対象の体重1kgあたり約2.0mg、対象の体重1kgあたり約2.5mg、又は対象の体重1kgあたり約2.8mg/kgである。特定の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)の例示的な用量は、対象の体重1kgあたり約2.5mgである。別の特定の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)の最大の例示的な用量は、サイクルあたり約200mgである。別の特定の実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)の最大の例示的な用量は、サイクルあたり約250mgである。
【0169】
ある特定の例示的な実施形態では、対象は、約2.5mg/kgの用量、約200mgの最大用量で、3週間ごとに1回投与される。ある特定の例示的な実施形態では、対象は、約2.5mg/kgの静脈内用量、約200mgの最大用量で、3週間ごとに1回投与される。
【0170】
ある特定の例示的な実施形態では、対象は、約2.5mg/kgの用量、約250mgの最大用量で、3週間に1回投与される。ある特定の例示的な実施形態では、対象は、約2.5mg/kgの静脈内用量、約250mgの最大用量で、3週間ごとに1回を投与される。ある特定の例示的な実施形態では、対象は、GCSFをさらに投与される。特定の例示的な実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)が、約200mg以上であり、約250mg以下の用量で、3週間ごとに1回使用される場合、対象は、さらにGCSFを投与される。ある特定の例示的な実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)が、200mg以上であり、250mg以下の用量で、3週間ごとに1回使用される場合、対象は、GCSFをさらに投与される。ある特定の実施形態では、GCSFは、予防的に投与される。ある特定の実施形態では、GCSFは、組換えヒトGCSFである。ある特定の実施形態では、GCSFは、フィルグラスチム(NEUPOGEN(登録商標))である。ある特定の実施形態では、GCSFは、PEG-フィルグラスチム(NEULASTA(登録商標))である。ある特定の実施形態では、GCSFは、レノグラスチム(GRANOCYTE(登録商標))である。ある特定の実施形態では、GCSFは、tbo-フィルグラスチム(GRANIX(登録商標))である。
【0171】
本発明は、包装材料と、少なくとも1つの抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)の溶液を含む少なくとも1つのバイアルと、規定の緩衝剤及び/又は防腐剤(任意選択で、水性希釈剤中である)を含むキットを提供する。製剤に使用される防腐剤の濃度は、抗菌効果を生み出すのに十分な濃度である。このような濃度は、選択された防腐剤に依存し、当業者により容易に決定される。
【0172】
様々な送達系を使用して、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片を対象に投与することができる。ある特定の例示的な実施形態では、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)の投与は、静脈内注入による。
【0173】
上記の製剤のいずれも、液体又は凍結形態で保存することができ、任意選択で保存プロセスに供することができる。一部の実施形態では、上記の製剤は凍結乾燥され、すなわち、それらは凍結乾燥に供される。一部の実施形態では、上記の製剤は、保存プロセス、例えば、凍結乾燥に供され、その後、適切な液体、例えば、水で復元される。凍結乾燥とは、組成物が、真空下で凍結乾燥されていることを意味する。凍結乾燥は、典型的には、溶質が溶媒(複数可)から分離されるように、特定の製剤を凍結することにより達成される。次に、溶媒は、昇華(すなわち、一次乾燥)により、続いて、脱着(すなわち、二次乾燥)により除去される。
【0174】
本発明の製剤は、本明細書に記載される方法とともに、又は疾患を処置する他の方法とともに使用することができる。抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)製剤は、対象への投与前にさらに希釈され得る。一部の実施形態では、製剤は、生理食塩水で希釈され、対象への投与前にIVバッグ又はシリンジに保持される。したがって、一部の実施形態では、対象におけるLIV-1を発現するがんを処置する方法は、それを必要とする対象に、抗LIV1抗体又はその抗原結合断片(例えば、LIV1-ADC)を含む医薬組成物を週1回の用量で投与することを含む。
【0175】
本明細書に開示される実施形態の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される方法の他の適切な改変及び適合が適切な均等物を用いて行われ得ることが当業者には容易に明らかになる。ここである特定の実施形態を詳細に説明してきたが、これは、例示のみを目的として含まれ、限定することを意図しない、以下の実施例を参照することによってより明確に理解される。本明細書に記載されているすべての特許、特許出願、及び参考文献は、すべての目的で参照によりそれらの全体が組み込まれる。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、
ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップを含み、
投与される用量は、処置サイクルあたり約200mg未満の抗体又はその抗原結合断片であり、並びに
抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域(HCVR)、及び配列番号2と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む、方法。
[実施形態2]LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、
ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップを含み、
投与される用量は、処置サイクルあたり約250mg以下の抗体又はその抗原結合断片であり、
抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域(HCVR)、及び配列番号2と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含み、並びに
投与される用量が、処置サイクルあたり約200mg以上の抗体又はその抗原結合断片である場合、方法は、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を対象に投与するステップをさらに含む、方法。
[実施形態3]投与される場合、GCSFが予防的に投与される、実施形態2に記載の方法。
[実施形態4]LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、
対象に顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を投与するステップ、
ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップ
を含み、
投与される用量は、処置サイクルあたり約200mg以上であり、約250mg以下の抗体又はその抗原結合断片であり、
抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有する重鎖可変領域(HCVR)、及び配列番号2と少なくとも95%の同一性を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む、方法。
[実施形態5]GCSFが予防的に投与される、実施形態4に記載の方法。
[実施形態6]LIV-1関連がんが乳がんである、実施形態1から5のいずれかに記載の方法。
[実施形態7]乳がんがトリプルネガティブ乳がんである、実施形態6に記載の方法。
[実施形態8]乳がんが転移性乳がんである、実施形態6に記載の方法。
[実施形態9]乳がんがトリプルネガティブ転移性乳がんである、実施形態6に記載の方法。
[実施形態10]乳がんがホルモン受容体陽性の転移性乳がんである、実施形態6に記載の方法。
[実施形態11]処置サイクルが約3週間ごと(Q3W)である、実施形態1から10のいずれかに記載の方法。
[実施形態12]用量が、対象の体重1kgあたり約2.5mgである、実施形態1から11のいずれかに記載の方法。
[実施形態13]抗体又はその抗原結合断片が、モノメチルアウリスタチンE(MMAE):
【化15】

にコンジュゲートされている、実施形態1から12のいずれかに記載の方法。
[実施形態14]抗体又はその抗原結合断片が、バリン-シトルリン-モノメチルアウリスタチンE(vcMMAE):
【化16】

にコンジュゲートされている、実施形態1から13のいずれかに記載の方法。
[実施形態15]vcMMAEと抗体又はその抗原結合断片との比が約1から約8である、実施形態14に記載の方法。
[実施形態16]vcMMAEと抗体又はその抗原結合断片との比が約4である、実施形態15に記載の方法。
[実施形態17]HCVRが配列番号1と少なくとも97%の配列同一性を有し、LCVRが配列番号2と少なくとも97%の配列同一性を有する、実施形態1から16のいずれかに記載の方法。
[実施形態18]HCVRが配列番号1と少なくとも99%の配列同一性を有し、LCVRが配列番号2と少なくとも99%の配列同一性を有する、実施形態1から17のいずれかに記載の方法。
[実施形態19]LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、
ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップを含み、
投与される用量は、処置サイクルあたり約200mg未満の抗体又はその抗原結合断片であり、
抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有するHCVR、及び配列番号2と少なくとも95%の同一性を有するLCVRを含み、並びに
抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【化17】

にコンジュゲートされている、方法。
[実施形態20]LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、
ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップを含み、
投与される用量は、処置サイクルあたり約250mg以下の抗体又はその抗原結合断片であり、
抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有するHCVR、及び配列番号2と少なくとも95%の同一性を有するLCVRを含み、
抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【化18】

にコンジュゲートされており、並びに
投与される用量が、処置サイクルあたり約200mg以上の抗体又はその抗原結合断片である場合、方法は、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を対象に投与するステップをさらに含む方法。
[実施形態21]投与される場合、GCSFが予防的に投与される、実施形態20に記載の方法。
[実施形態22]LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、
対象に顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を投与するステップ、
ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップ
を含み、
投与される用量は、処置サイクルあたり約200mg以上であり、約250mg以下の抗体又はその抗原結合断片であり、
抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有するHCVR、及び配列番号2と少なくとも95%の同一性を有するLCVRを含み、並びに
抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【化19】

にコンジュゲートされている、方法。
[実施形態23]GCSFが予防的に投与される、実施形態22に記載の方法。
[実施形態24]用量が、対象の体重1kgあたり約2.5mgの濃度で投与される、実施形態19から23のいずれかに記載の方法。
[実施形態25]各処置サイクルが対象にQ3Wで投与される、実施形態19から24のいずれかに記載の方法。
[実施形態26]vcMMAEと抗体又はその抗原結合断片との比が約1から約8である、実施形態19から25のいずれかに記載の方法。
[実施形態27]vcMMAEと抗体又はその抗原結合断片との比が約4である、実施形態26に記載の方法。
[実施形態28]LIV-1関連がんが乳がんである、実施形態19から27のいずれかに記載の方法。
[実施形態29]乳がんがトリプルネガティブ乳がんである、実施形態28に記載の方法。
[実施形態30]乳がんが転移性乳がんである、実施形態28に記載の方法。
[実施形態31]乳がんがトリプルネガティブ転移性乳がんである、実施形態28に記載の方法。
[実施形態32]乳がんがホルモン受容体陽性の転移性乳がんである、実施形態28に記載の方法。
[実施形態33]LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、
ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップを含み、
投与される用量は、Q3Wの処置サイクルあたり約200mg未満の抗体又はその抗原結合断片であり、
抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1のHCVR、及び配列番号2のLCVRを含み、並びに
抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【化20】

にコンジュゲートされている、方法。
[実施形態34]LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、
ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップを含み、
投与される用量は、Q3Wの処置サイクルあたり約250mg以下の抗体又はその抗原結合断片であり、
抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1のHCVR、及び配列番号2のLCVRを含み、
抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【化21】

にコンジュゲートされており、並びに
投与される用量が、処置サイクルあたり約200mg以上の抗体又はその抗原結合断片である場合、方法は、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を対象に投与するステップをさらに含む、方法。
[実施形態35]投与される場合、GCSFが予防的に投与される、実施形態34に記載の方法。
[実施形態36]LIV-1関連がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、
対象に顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を投与するステップ、
ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の治療有効用量を対象に投与するステップ
を含み、
投与される用量は、Q3Wの処置サイクルあたり約200mg以上であり、約250mg以下の抗体又はその抗原結合断片であり、
抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1のHCVR、及び配列番号2のLCVRを含み、並びに
抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【化22】

にコンジュゲートされている、方法。
[実施形態37]GCSFが予防的に投与される、実施形態36に記載の方法。
[実施形態38]LIV-1関連がんが乳がんである、実施形態33から37のいずれかに記載の方法。
[実施形態39]乳がんがトリプルネガティブ乳がんである、実施形態38に記載の方法。
[実施形態40]乳がんが転移性乳がんである、実施形態38に記載の方法。
[実施形態41]乳がんがトリプルネガティブ転移性乳がんである、実施形態38に記載の方法。
[実施形態42]乳がんがホルモン受容体陽性の転移性乳がんである、実施形態38に記載の方法。
[実施形態43]vcMMAEと抗体又はその抗原結合断片との比が約4である、実施形態33から42のいずれかに記載の方法。
[実施形態44]用量が対象の体重1kgあたり約2.5mg/kgである、実施形態33から43のいずれかに記載の方法。
[実施形態45]LIV-1関連乳がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、
対象に、対象の体重1kgあたり約2.5mgの用量で、ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を投与するステップを含み、
投与される用量は、Q3Wの処置サイクルあたり約200mg未満の抗体又はその抗原結合断片であり、
抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1のHCVR、及び配列番号2のLCVRを含み、並びに
抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【化23】

にコンジュゲートされている、方法。
[実施形態46]LIV-1関連乳がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、
対象に、対象の体重1kgあたり約2.5mgの用量で、ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を投与するステップを含み、
投与される用量は、Q3Wの処置サイクルあたり約250mg以下の抗体又はその抗原結合断片であり、
抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1のHCVR、及び配列番号2のLCVRを含み、
抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【化24】

にコンジュゲートされており、並びに
投与される用量が、処置サイクルあたり約200mg以上の抗体又はその抗原結合断片である場合、方法は、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を対象に投与するステップをさらに含む、方法。
[実施形態47]投与される場合、GCSFが予防的に投与される、実施形態46に記載の方法。
[実施形態48]LIV-1関連乳がんを有するか又はその危険性がある対象を処置する方法であって、
対象に顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を投与するステップ、
対象に、対象の体重1kgあたり約2.5mgの用量で、ヒトLIV-1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を投与するステップ
を含み、
投与される用量は、Q3Wの処置サイクルあたり約200mg以上であり、約250mg以下の抗体又はその抗原結合断片であり、
抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1のHCVR、及び配列番号2のLCVRを含み、並びに
抗体又はその抗原結合断片は、vcMMAE:
【化25】

にコンジュゲートされている、方法。
[実施形態49]GCSFが予防的に投与される、実施形態48に記載の方法。
[実施形態50]乳がんがトリプルネガティブ乳がんである、実施形態45から49のいずれかに記載の方法。
[実施形態51]乳がんが転移性乳がんである、実施形態45から50のいずれかに記載の方法。
[実施形態52]乳がんがトリプルネガティブ転移性乳がんである、実施形態51に記載の方法。
[実施形態53]乳がんがホルモン受容体陽性の転移性乳がんである、実施形態45から50のいずれかに記載の方法。
[実施形態54]vcMMAEと抗体又はその抗原結合断片との比が約4である、実施形態45から53のいずれかに記載の方法。
[実施形態55]対象がヒトである、実施形態1から54のいずれかに記載の方法。
【0176】
[実施例]
[実施例1]
高度に前処置されたトリプルネガティブ転移性乳がん患者における抗体-薬物コンジュゲートSGN-LIV1Aの第1相試験
方法
この進行中の第1相試験は、LIV-1陽性の、切除不可能な、局所進行性又は転移性の乳がん(LA/MBC)を有する女性におけるSGN-LIV1A(q3wks IV)の安全性、忍容性、薬物動態、及び抗腫瘍活性を評価した(NCT01969643)。LA/MBCの測定可能な疾患を有し2つ以上の細胞毒性レジメンを以前に受けた患者が適格であった。グレード2以上のニューロパシーを有する患者は除外された。応答は、RECIST v1.1に従って評価され、安定疾患(SD)又はより良好な患者は、疾患の進行又は耐え難い毒性まで処置を継続することができた。ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)及びトリプルネガティブ(TN)患者の用量漸増の完了時に、拡張コホートが、TN患者における単剤療法の安全性及び抗腫瘍活性をさらに評価するために開始された。腫瘍生検は、LIV1発現について評価された。
【0177】
結果
今日までに、69人の患者(18人のHR+/HER2-、51人のTN)は、0.5~2.8mg/kgの用量で3サイクルの中央値(範囲、1~12)のSGN-LIV1Aを受けた。患者の年齢の中央値は、56歳であった。患者は、LA/MBCについて以前に受けた細胞毒性レジメンの数の中央値は3であった。58人の患者は内臓疾患があり、37人の患者は骨転移があった。用量制限毒性(DLT)は、DLTで評価可能な19人の患者において生じなった。最大耐量は、2.8mg/kgを超えなかった。TN患者の拡張コホートは、2.0及び2.5mg/kgで開始した。
【0178】
患者の25%以上で報告された処置に現れる有害事象(AE)は、疲労(59%)、悪心(51%)、末梢神経障害(44%)、脱毛症(36%)、食欲低下(33%)、便秘(30%)、腹痛(25%)、下痢(25%)、及び好中球減少症(25%)であった。ほとんどのAEはグレード1/2であった。グレード3以上のAEには、好中球減少症(25%)及び貧血(15%)が含まれた。発熱性好中球減少症は、総用量がサイクルあたり200mgを超えた2人の患者で生じ、敗血症による1人の処置関連死を含む。試験中に他の処置関連死は生じなかった。7人の患者は、AEのために処置を中止した。
【0179】
用量漸増では、17人の有効性評価可能(EE)なHR+/HER2-患者で活動が観察され、疾患制御率(DCR=CR+PR+SD)が59%(10SD)であり、SDが24週間以上の患者1人を含む。44人のEE TN患者(用量漸増+拡張コホート)のうち、客観的な奏効率(ORR)は32%(14PR)であり、確認されたPR率は21%であり、DCRは64%(14PR、14SD)であり、及び臨床的有効率(CBR=CR+PR+SD≧24週間)は36%(16人の患者)であった。TN患者について、PFSの中央値は11.3週間であった(95%CI:6.1、17.1)。10人の患者が処置を続けている。
【0180】
LIV-1について評価されたすべての臨床サブタイプの631個のMBC腫瘍試料のうち、91%が陽性であり、75%が中~高までの発現を示した(Hスコア≧100)。
【0181】
用量漸増の完了時に、SGN-LIV1A単剤療法(パートA)処置のための複数の拡張コホートが開始され、安全性及び抗腫瘍活性をさらに定義するために推奨用量レベルで、各々特定の乳がんサブタイプを有する最大15人の患者を登録した。2.0mg/kg対2.5mg/kg用量コホートにおける安全性及び活性の分析の結果により、推奨される第2相用量は、2.5mg/kg(最大用量200mg/サイクル)であることが決定された。
【0182】
これまでに利用可能な安全性データの検討により、パートAの2.5mg/kg用量レベルにおけるグレード3以上の好中球減少症AEの発生率(57%)は、単剤療法試験集団全体の発生率(39%)より高かった。さらに、2.5mg/kgグループにおける好中球減少症の1例は、敗血症による死亡をもたらした。結果として、拡張コホートにおける2mg/kg用量レベルを評価することが決定された。この決定日又はそれ以降に登録された患者は、2mg/kgの開始用量を受け、以前に、初期サイクルにおいて2.5mg/kgのSGN-LIV1Aを受けていた患者については、患者の用量は、その後の用量について2mg/kgに減少された。
【0183】
mTNBC 2.0mg/kgの拡張コホートにおける登録は、データカットの時点で10人の患者が処置を続けていて、終わりに近づいている。2.0mg/kg(N=26)と2.5mg/kg(用量≦200mg)(N=18)の安全性を比較すると、発熱性好中球減少事象及び好中球減少症関連のSAEは示されなかった。対照的に、2.5mg/kg>200mg(N=11)の用量では、好中球減少症がより一般的であり、SAEを経験した患者11人中5人が、好中球減少症に関連付けられた。発熱性好中球減少症は、11人の患者のうち2人で生じ、敗血症による1人の処置関連死が含まれた。試験では、他の処置関連死は生じなかった。
【0184】
[実施例2]
高度に前処置されたトリプルネガティブ転移性乳がん患者における抗体-薬物コンジュゲートSGN-LIV1Aの第1相試験
方法
この試験は、実施例1に記載された第1相試験のSGN-LIV1A単剤療法(パートA)の用量拡張コホート試験の続きであり、SGN-LIV1Aの22回の追加投与(q3wks IV)からのデータを含む。患者は、実施例1に記載された通りであった。これらの追加の投与は、1サイクルあたり250mgの最大総用量の安全性を評価するために行われた。患者は、2.5mg/kgで投薬され、これらの22回の追加投与は各々、患者の体重が80kg以上であるため、1サイクルあたり200mg以上であった。
【0185】
結果
1サイクルあたり200mg以上であり、最大用量250mgまでの22回の追加投与のうち、7回のSGN-LIV1A投与は、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)との同時投与であり、15回のSGN-LIV1A投与は同時投与ではなかった。GCSFと同時投与されなかったSGN-LIV1Aの15回の投与のうち、5回は好中球減少症の発症をもたらした(33.3%)。しかしながら、GCSFと同時投与されたSGN-LIV1Aの7回の投与のいずれも、好中球減少症の発症をもたらさなかった。これらの結果は、1サイクルあたり200mg以上であり、250mgの最大用量までの投薬量を受けた患者における好中球減少症の発生率が、GCSFの使用を通じて有意に減少し得ることを示す。
【0186】
[配列表]

SEQUENCE LISTING

<110> SEAGEN INC.

<120> HUMANIZED ANTI-LIV1 ANTIBODIES FOR THE TREATMENT OF
BREAST CANCER

<130> PA23-498

<150> US 62/593,660
<151> 2017-12-01

<160> 2

<170> FastSEQ for Windows Version 4.0

<210> 1
<211> 120
<212> PRT
<213> Artificial Sequence

<220>
<223> Synthetic Construct

<400> 1
Gln Val Gln Leu Val Gln Ser Gly Ala Glu Val Lys Lys Pro Gly Ala
1 5 10 15
Ser Val Lys Val Ser Cys Lys Ala Ser Gly Leu Thr Ile Glu Asp Tyr
20 25 30
Tyr Met His Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Gln Gly Leu Glu Trp Met
35 40 45
Gly Trp Ile Asp Pro Glu Asn Gly Asp Thr Glu Tyr Gly Pro Lys Phe
50 55 60
Gln Gly Arg Val Thr Met Thr Arg Asp Thr Ser Ile Asn Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Met Glu Leu Ser Arg Leu Arg Ser Asp Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Val His Asn Ala His Tyr Gly Thr Trp Phe Ala Tyr Trp Gly Gln
100 105 110
Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser
115 120


<210> 2
<211> 113
<212> PRT
<213> Artificial Sequence

<220>
<223> Synthetic Construct

<400> 2
Asp Val Val Met Thr Gln Ser Pro Leu Ser Leu Pro Val Thr Leu Gly
1 5 10 15
Gln Pro Ala Ser Ile Ser Cys Arg Ser Ser Gln Ser Leu Leu His Ser
20 25 30
Ser Gly Asn Thr Tyr Leu Glu Trp Tyr Gln Gln Arg Pro Gly Gln Ser
35 40 45
Pro Arg Pro Leu Ile Tyr Lys Ile Ser Thr Arg Phe Ser Gly Val Pro
50 55 60
Asp Arg Phe Ser Gly Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Lys Ile
65 70 75 80
Ser Arg Val Glu Ala Glu Asp Val Gly Val Tyr Tyr Cys Phe Gln Gly
85 90 95
Ser His Val Pro Tyr Thr Phe Gly Gly Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys
100 105 110
Arg
【配列表】
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