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特開2024-118700通信回線交換装置、2線式通信線路の異常判定方法、プログラム、及び通信システム
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  • 特開-通信回線交換装置、2線式通信線路の異常判定方法、プログラム、及び通信システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118700
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】通信回線交換装置、2線式通信線路の異常判定方法、プログラム、及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04M 3/22 20060101AFI20240826BHJP
   H04Q 3/58 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H04M3/22 Z
H04Q3/58 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025129
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花井 孝之
【テーマコード(参考)】
5K049
【Fターム(参考)】
5K049AA09
5K049BB04
5K049FF01
5K049FF22
5K049FF51
(57)【要約】
【課題】
低コストでかつ簡単な構成で2線式通信線路に異常があるか否かを判定することができる通信回線交換装置を提供する。
【解決手段】
通信端末と2線式通信線路を介して接続され、通信端末との通信を可能にするインターフェース機能を有する回線収容部と、2線式通信線路間に直流電圧を印加する電源と、回線収容部を制御する制御部と、を備える通信回線交換装置であって、制御部は、通信端末において2線式通信線路間を短絡させるための短絡指令信号の2線式通信線路を介した通信端末への送出を回線収容部に指令する指令手段と、短絡指令信号の送出からの所定の設定時間内に2線式通信線路に流れる電流の絶対値が過電流閾値を越えたか否かを判別し、その判別結果を出力する判別手段と、を含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末と2線式通信線路を介して接続され、前記通信端末との通信を可能にするインターフェース機能を有する回線収容部と、
前記2線式通信線路間に直流電圧を印加する電源と、
前記回線収容部を制御する制御部と、を備える通信回線交換装置であって、
前記制御部は、
前記通信端末において前記2線式通信線路間を短絡させるための短絡指令信号の前記2線式通信線路を介した前記通信端末への送出を前記回線収容部に指令する指令手段と、
前記短絡指令信号の送出からの所定の設定時間内に前記2線式通信線路に流れる電流の絶対値が過電流閾値を越えたか否かを判別し、その判別結果を出力する判別手段と、を含むことを特徴とする通信回線交換装置。
【請求項2】
前記回線収容部は、前記2線式通信線路に流れる電流の大きさを検出し、当該検出電流値の絶対値が前記過電流閾値を越えると過電流発生を前記制御部に通知する過電流保護回路を有することを特徴とする請求項1記載の通信回線交換装置。
【請求項3】
前記制御部は、操作部を有し、前記操作部への入力操作に応答して前記指令手段が前記短絡指令信号の前記2線式通信線路を介した前記通信端末への送出を前記回線収容部に指令することを特徴とする請求項1記載の通信回線交換装置。
【請求項4】
前記通信端末は、前記2線式通信線路によって供給される前記直流電圧を電源電圧として動作し、
両端が前記2線式通信線路間に接続された常開のリレースイッチを有するリレーと、
前記短絡指令信号に応答して前記リレーを励磁駆動して前記リレースイッチをオン状態とせしめ、前記2線式通信線路間を短絡させる端末制御部と、含むことを特徴とする請求項1記載の通信回線交換装置。
【請求項5】
前記通信端末は、前記リレースイッチがオン状態となると、前記2線式通信線路間の短絡によって動作を停止することにより、前記リレースイッチがオフとなることを特徴とする請求項4記載の通信回線交換装置。
【請求項6】
前記通信端末は、アナログ電話機であることを特徴とする請求項1又は5記載の通信回線交換装置。
【請求項7】
通信端末と2線式通信線路を介して接続され、前記通信端末との通信を可能にするインターフェース機能を有する回線収容部と、前記2線式通信線路間に直流電圧を印加する電源と、を備える通信回線交換装置における前記2線式通信線路の異常判定方法であって、
前記通信端末において前記2線式通信線路間を短絡させるための短絡指令信号の前記2線式通信線路を介した前記通信端末への送出を前記回線収容部に指令する指令ステップと、
前記短絡指令信号の送出からの所定の設定時間内に前記2線式通信線路に流れる電流の絶対値が過電流閾値を越えたか否かを判別し、その判別結果を出力する判別ステップと、を含むことを特徴とする2線式通信線路の異常判定方法。
【請求項8】
通信端末と2線式通信線路を介して接続され、前記通信端末との通信を可能にするインターフェース機能を有する回線収容部と、前記2線式通信線路間に直流電圧を印加する電源と、を備える通信回線交換装置に用いられるプログラムであって、
コンピュータを、
前記通信端末において前記2線式通信線路間を短絡させるための短絡指令信号の前記2線式通信線路を介した前記通信端末への送出を前記回線収容部に指令する指令手段と、
前記短絡指令信号の送出からの所定の設定時間内に前記2線式通信線路に流れる電流の絶対値が過電流閾値を越えたか否かを判別し、その判別結果を出力する判別手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
通信端末と、前記通信端末に2線式通信線路を介して接続された通信回線交換装置とを備えた通信システムであって、
前記通信回線交換装置は、
前記通信端末との通信を可能にするインターフェース機能を有する回線収容部と、
前記2線式通信線路間に直流電圧を印加する電源と、
前記回線収容部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記通信端末において前記2線式通信線路間を短絡させるための短絡指令信号の前記2線式通信線路を介した前記通信端末への送出を前記回線収容部に指令する指令手段と、
前記短絡指令信号の送出からの所定の設定時間内に前記2線式通信線路に流れる電流の絶対値が過電流閾値を越えたか否かを判別し、その判別結果を出力する判別手段と、を含み、
前記通信端末は、前記2線式通信線路によって供給される前記直流電圧を電源電圧として動作し、
前記短絡指令信号に応答して前記2線式通信線路間を短絡させる手段を含むことを特徴とする通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信端末と2線式通信線路を介して接続される通信回線交換装置、2線式通信線路の異常判定方法、プログラム、及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電話機等の通信端末と通信回線交換装置との間の接続に2線式通信線路を用いた通信は従来から行われている。この2線式通信線路を用いた通信では、2線式通信線路には通信回線交換装置から直流電圧(例えば、48V)が通常印加され、その直流電圧に音声信号やパルス信号を重畳させることにより双方向通信が可能にされている。
【0003】
通信回線交換装置の保守を行う保守者は通常、2線式通信線路も保守対象としている。例えば、2線式通信線路に接続されている通信端末が正常に動作しなくなった場合に、その原因を探索するために2線式通信線路に異常があるかどうかを確認することが求められる。
【0004】
特許文献1には、2線式通信線路に異常があるかどうかを判定する試験装置が開示されている。特許文献1の試験装置は、遠隔操作により2線式通信線路をループ状の閉回路に形成せしめてそのループ抵抗を測定し得るものである。具体的には、2線式通信線路の一端の側に、直流電圧を通信線路の一方の心線と接地間に印加する第1のリレー機構と、該電圧の印加を解除した直後に、通信線路のループ抵抗を測定する抵抗計とを設けると共に、通信線路の他端側に当該直流電圧の印加された側の心線と接地間の電圧で動作する遅緩復旧形の継電器(リレー)を設け当該継電器の接点により線路を短絡する第2のリレー機構により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6-13228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の試験装置では、2線式通信線路の一端が接続される通信回線交換装置側に抵抗計と共に直流電圧を通信線路の一方の心線に印加のための第1のリレー機構を設け、2線式通信線路の他端に通信線路を短絡する第2のリレー機構を設ける必要があった。
【0007】
しかしながら、特許文献1の試験装置では、通信回線交換装置側で必要だった抵抗計と第1のリレー機構は、通信を行う通常運用時には不必要な装備であり、通信回線交換装置側のコストが上がってしまう課題があった。また、ループ抵抗測定が必要な場面は、2線式通信線路が仕様の最長以上かを判定すれば良いことが多く、具体的な抵抗値までが必要な機会は少なった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、このような課題に着目し、低コストでかつ簡単な構成で2線式通信線路に異常があるか否かを判定することができる通信回線交換装置、2線式通信線路の異常判定方法、プログラム、及び通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の通信回線交換装置は、通信端末と2線式通信線路を介して接続され、前記通信端末との通信を可能にするインターフェース機能を有する回線収容部と、前記2線式通信線路間に直流電圧を印加する電源と、前記回線収容部を制御する制御部と、を備える通信回線交換装置であって、前記制御部は、前記通信端末において前記2線式通信線路間を短絡させるための短絡指令信号の前記2線式通信線路を介した前記通信端末への送出を前記回線収容部に指令する指令手段と、前記短絡指令信号の送出からの所定の設定時間内に前記2線式通信線路に流れる電流の絶対値が過電流閾値を越えたか否かを判別し、その判別結果を出力する判別手段と、を含むことを特徴としている。
【0010】
本発明の2線式通信線路の異常判定方法は、通信端末と2線式通信線路を介して接続され、前記通信端末との通信を可能にするインターフェース機能を有する回線収容部と、前記2線式通信線路間に直流電圧を印加する電源と、を備える通信回線交換装置における前記2線式通信線路の異常判定方法であって、前記通信端末において前記2線式通信線路間を短絡させるための短絡指令信号の前記2線式通信線路を介した前記通信端末への送出を前記回線収容部に指令する指令ステップと、前記短絡指令信号の送出からの所定の設定時間内に前記2線式通信線路に流れる電流の絶対値が過電流閾値を越えたか否かを判別し、その判別結果を出力する判別ステップと、を含むことを特徴としている。
【0011】
本発明のプログラムは、通信端末と2線式通信線路を介して接続され、前記通信端末との通信を可能にするインターフェース機能を有する回線収容部と、前記2線式通信線路間に直流電圧を印加する電源と、を備える通信回線交換装置に用いられるプログラムであって、コンピュータを、前記通信端末において前記2線式通信線路間を短絡させるための短絡指令信号の前記2線式通信線路を介した前記通信端末への送出を前記回線収容部に指令する指令手段と、前記短絡指令信号の送出からの所定の設定時間内に前記2線式通信線路に流れる電流の絶対値が過電流閾値を越えたか否かを判別し、その判別結果を出力する判別手段として機能させることを特徴としている。
【0012】
本発明の通信システムは、通信端末と、前記通信端末に2線式通信線路を介して接続された通信回線交換装置とを備えた通信システムであって、前記通信回線交換装置は、前記通信端末との通信を可能にするインターフェース機能を有する回線収容部と、前記2線式通信線路間に直流電圧を印加する電源と、前記回線収容部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記通信端末において前記2線式通信線路間を短絡させるための短絡指令信号の前記2線式通信線路を介した前記通信端末への送出を前記回線収容部に指令する指令手段と、前記短絡指令信号の送出からの所定の設定時間内に前記2線式通信線路に流れる電流の絶対値が過電流閾値を越えたか否かを判別し、その判別結果を出力する判別手段と、を含み、前記通信端末は、前記2線式通信線路によって供給される前記直流電圧を電源電圧として動作し、前記短絡指令信号に応答して前記2線式通信線路間を短絡させる手段を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の通信回線交換装置、2線式通信線路の異常判定方法、プログラム、及び通信システムによれば、通信回線交換装置の通常運用時に必要な構成を利用しているので、低コストでかつ簡単な構成で2線式通信線路に異常があるか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の通信回線交換装置としてのPBXと、そのPBXに接続された専用端末とを備えた通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】PBX内の中央制御部によるループ抵抗測定動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明が適用されたPBX(構内交換機)11と、PBX11に接続された専用端末21とを備えた通信システムの概略構成を示している。PBX11と専用端末21と間には通信回線として2線式通信線路3が設けられている。すなわち、PBX11と専用端末21とは2線式通信線路3によって互いに接続された通信システムを構成している。
【0017】
PBX11は、図1に示すように、中央制御部12と、回線収容部13と、端末給電用電源部15とを有している。中央制御部12はマイクロコンピュータ等の制御回路から構成することができる。回線収容部13は、アナログ電話回線、ISDN回線等の各種の通信回線をPBX11内に収容するためのインターフェースを備えている。
【0018】
回線収容部13には上述した2線式通信線路3が接続されている。2線式通信線路3はメタルの線路3a、3bからなるアナログ電話回線である。
【0019】
回線収容部13は、端末給電用電源部15の出力を専用端末21へ供給する機能を有している。
【0020】
線路3a、3bの各々の一端は、PBX11内では内部線路16a、16bに接続されている。内部線路16a、16bは回線収容部13を介して端末給電用電源部15に接続されている。具体的には内部線路16aは端末給電用電源部15の電源端子15aに接続され、内部線路16bは端末給電用電源部15の電源端子15bに接続されている。端末給電用電源部15は電源端子15a、15b間に電源電圧として直流電圧-48Vを供給する。電源端子15aには0Vのグランド電位が与えられ、電源端子15bに-48Vが与えられる。
【0021】
回線収容部13は過電流保護回路14を有している。過電流保護回路14は過電流保護機能を有している。過電流保護回路14は、内部線路16aを流れる電流値Idを2線式通信線路3の線路電流値として検出し、その検出した線路電流値Idが過電流閾値Ithを越えたか否かを判断する。過電流閾値Ithは、2線式通信線路3がその仕様の最長となる場合の電流値に設定される。具体的には、過電流閾値Ithは仕様の最長となる場合の2線式通信線路3の線路長の抵抗値と電源電圧-48Vとから設定される。2線式通信線路3の線路長の抵抗値とはループ抵抗値であり、2つの線路3a、3bの抵抗値の合計である。ループ抵抗値が仕様の最長の線路長においては150Ωであるとすると、過電流閾値Ithは48V/150Ω=320mAに設定される。
【0022】
過電流保護回路14は、例えば、電流検出用抵抗(図示せず)を内部線路16aの一部に有し、その電流検出用抵抗の両端電圧として内部線路16aを流れる電流値を検出することができる。電流検出用抵抗は2線式通信線路3の線路長の抵抗値に比べて非常に低い抵抗値である。また、電流検出用抵抗はループ抵抗測定動作時にだけ内部線路16aに切替回路(図示せず)により挿入されるようにしても良い。なお、本発明では過電流保護回路14の電流検出方法はこれに限定されず、ホール素子を用いる等の他の方法を用いても良い。
【0023】
過電流保護回路14は、線路電流値Idが過電流閾値Ithを越えた場合には内部線路16aの抵抗を増大させることにより線路電流値Idを低下させる保護動作を行う。内部線路16aの抵抗増大は、例えば、上述した電流検出用抵抗の抵抗値の増大により行っても良い。また、線路電流値Idが過電流閾値Ithを越えた場合には保護動作として内部線路16aを遮断させても良い。
【0024】
中央制御部12と回線収容部13とは通信線17によって互いに接続され、情報交換可能にされている。例えば、回線収容部13内の過電流保護回路14による過電流であるか否かの判断結果は通信線17を介して中央制御部12に供給される。
【0025】
2線式通信線路3の他端は通信端末である専用端末21に接続されている。例えば、専用端末21はアナログ電話機である。2線式通信線路3は専用端末21内の通信部24に接続される。通信部24は、電話機である場合には送受話器を含む。
【0026】
専用端末21は、図1に示すように、通信部24の他に、中央制御部22(端末制御部)と、リレー23とを有している。中央制御部22は、マイクロコンピュータ等の制御回路から構成することができ、通信部24に接続され、PBX11の中央制御部12と2線式通信線路3を介して通信可能にされている。
【0027】
リレー23のリレースイッチ23aには2線式通信線路3が接続されている。リレースイッチ23aはオンオフスイッチであり、常開である。リレースイッチ23aの一端には線路3aが接続され、リレースイッチ23aの他端には線路3bが接続されている。中央制御部22とリレー23とは接続され、リレー23のリレースイッチ23aのオンオフは中央制御部22によって制御される。リレースイッチ23aはリレー23内部の図示しないリレーコイルが非励磁である時には常開、すなわちオフ状態である。中央制御部22の制御によってそのリレーコイルへの給電が行われると、リレーコイルが励磁してリレースイッチ23aはオン状態となる。リレー23のリレーコイルへの給電には2線式通信線路3によって専用端末21に供給される電源電圧が用いられる。
【0028】
次に、上記した構成を有するPBX11及び専用端末21における2線式通信線路3のループ抵抗測定動作について説明する。
【0029】
PBX11の通常運用時、すなわち専用端末21を含む端末間の交換動作時或いは外線と中継動作時にはリレースイッチ23aはオフ状態にある。
【0030】
PBX11の通常運用中にPBX11の図示しない操作部への保守者等のユーザの操作によって中央制御部12は2線式通信線路3のループ抵抗測定動作を開始する。
【0031】
中央制御部12はループ抵抗測定動作では、先ず専用端末21に対する通信線路3の短絡指令を生成する(ステップS11)。ステップS11は指令ステップである。短絡指令は中央制御部12から回線収容部13に供給され、回線収容部13が短絡指令を所定形式の送信信号(短絡指令信号)として通信線路3を介して専用端末21に向けて送信する。所定形式の送信信号は短絡指令を示す例えば、パルス列信号でも良い。専用端末21では、通信部24が短絡指令を示す送信信号を受信し、送信信号が示す短絡指令を中央制御部22に供給する。中央制御部22は短絡指令に応答してリレー23のリレーコイルを励磁させることによりリレースイッチ23aをオン状態とする。リレースイッチ23aのオン状態は2つの線路3a、3bを短絡させるので、専用端末21自身が端末給電用電源部15からの電源電圧を失うこととなる。よって、リレー23のリレーコイルへの給電停止となるのでリレーコイルの励磁を維持することができなくなり、リレースイッチ23aはオフとなる。この結果、リレースイッチ23aのオン状態は瞬間的である。
【0032】
リレースイッチ23aのオン時には2線式通信線路3の2つの線路3a、3bを流れる電流量が上昇する。電流は端末給電用電源部15の電源端子15aから内部線路16a、通信線路3a、リレースイッチ23a、通信線路3b、内部線路16b、そして端末給電用電源部15の電源端子15bへと流れる。この電流値は内部線路16bの一部が通過する過電流保護回路14によって検出電流値Id(絶対値)として測定される。
【0033】
過電流保護回路14は、内部線路16aを流れる電流値Idが過電流閾値Ithを越えたか否か判断する。過電流閾値Ithは上述したように2線式通信線路3が仕様の最長となる場合の電流値に設定される。過電流保護回路14は、電流値Idが過電流閾値Ithを越えた場合には過電流発生を中央制御部12に通知する。
【0034】
中央制御部12はステップS11の実行後、過電流保護回路14から過電流発生通知があったか否かを判別する(ステップS12)。ステップS12は判別ステップである。ステップS12は、ステップS11の実行後、予め定められた設定時間内において過電流発生通知があったか否かを判別すれば良い。かかる設定時間はリレースイッチ23aがオンとなる期間より若干長ければ良い。
【0035】
中央制御部12は、過電流保護回路14から過電流発生通知があった場合には2線式通信線路3のループ抵抗値が小さいので、正常を示す出力を生成する(ステップS13)。一方、中央制御部12は、過電流保護回路14から過電流発生通知がなかった場合には2線式通信線路3のループ抵抗値が大きいので、異常を示す出力を生成する(ステップS14)。ステップS13、S14ではPBX11において図示しないディスプレイにループ抵抗測定結果として表示しても良い。
【0036】
ステップS13で正常の出力が生成された場合には、2線式通信線路3の線路長が仕様の最長以下の短い状態であることが判断される。ステップS14で異常の出力が生成された場合には、2線式通信線路3の線路長が仕様の最長より長い状態であることが判断される。よって、保守者はステップS13、S14の出力結果から2線式通信線路3に異常があるか否かを確認することができる。
【0037】
このように本発明によるPBX11においては、特に新規のハード構成を設けることなく、通常運用時に必要な構成である中央制御部12と回線収容部13の過電流保護回路14とを利用し、中央制御部12の制御によって2線式通信線路3に異常があるか否かを判定することができるので、2線式通信線路3の異常判定を低コストでかつ簡単な構成で実現することができる。
【0038】
なお、上記した実施例では、過電流保護回路14が電流値Idと過電流閾値Ithとを比較する機能を有し、その比較結果が情報として中央制御部12に供給されるが、過電流保護回路14は電流値Idだけを情報として中央制御部12に供給し、中央制御部12が短絡指令信号の送出からの所定の設定時間内において電流値Idと過電流閾値Ithとを比較しても良い。
【0039】
また、上記した実施例では、PBX11の操作部への入力操作によって中央制御部12がループ抵抗測定動作を開始するが、PBX11に外部接続されたPC(パーソナルコンピュータ)のキーボード等の操作部への入力操作によって中央制御部12がループ抵抗測定動作を開始するようにしても良い。また、PBX11に接続された外部の通信端末から中央制御部12にアクセスして2線式通信線路3のループ抵抗測定動作が開始されるようにしても良い。すなわち、ループ抵抗測定動作の遠隔操作を可能にしても良い。
【0040】
また、上記した実施例では、通信端末として1つの専用端末21が2線式通信線路3に接続されているが、複数の通信端末が2線式通信線路3に接続されている場合には、その複数の通信端末のうちのいずれか1つの通信端末がPBX11からの短絡指令信号に応答して2線式通信線路3間を短絡させれば良い。
【符号の説明】
【0041】
3 2線式通信線路
3a、3b 通信線路
11 PBX
12、22 中央制御部
13 回線収容部
14 過電流保護回路
15 端末給電用電源部
15a、15b 電源端子
16a、16b 内部線路
17 通信線
21 専用端末
23 リレー
23a リレースイッチ
24 通信部
図1
図2