(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118725
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】回転電機の冷却構造
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
H02K9/19 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025164
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 修平
(72)【発明者】
【氏名】久保田 敦
(72)【発明者】
【氏名】高野 将吾
(72)【発明者】
【氏名】二村 圭哉
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB03
5H609PP07
5H609QQ05
5H609QQ11
5H609RR27
5H609RR37
(57)【要約】
【課題】アウターリングの遠心方向の強度低下を抑制すると共にロータとステータ間のエアギャップに冷媒を流入し難くし、かつ、ロータの冷却性能を向上可能な回転電機の冷却構造を提供すること。
【解決手段】アウターリング(23)は、ロータコア(22)の軸方向に延びる外周部(23G)と、ロータコア(22)の軸方向端面(22T)から離れた位置で外周部(23G)から内周側に延びる端面部(23T)と、を有し、冷媒は、ロータコア(22)の軸方向端面(22T)と端面部(23T)との間に供給され、端面部(23T)には、冷媒を排出する冷媒排出孔(53)が設けられ、冷媒排出孔(53)は、外周部(23G)よりも内周側に位置する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータとステータとを備え、前記ロータが、ロータ軸と、前記ロータ軸に固定されるロータコアと、前記ロータコアの軸方向外側に配置されるアウターリングとを有する回転電機を、冷媒を利用して冷却する回転電機の冷却構造において、
前記アウターリングは、前記ロータコアの軸方向に延びる外周部と、前記ロータコアの軸方向端面から離れた位置で前記外周部から内周側に延びる端面部と、を有し、前記冷媒は、前記ロータコアの軸方向端面と前記端面部との間に供給され、
前記端面部には、前記冷媒を排出する冷媒排出孔が設けられ、
前記冷媒排出孔は、前記外周部よりも内周側に位置する、
回転電機の冷却構造。
【請求項2】
前記冷媒排出孔は、前記ロータ軸の軸心を基準にして所定の角度間隔で設けられる、
請求項1に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項3】
前記冷媒排出孔は、円断面の孔であり、前記端面部を前記ロータの軸線に沿って貫通する孔である、
請求項1に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項4】
前記冷媒排出孔は、前記外周部の内周面よりも所定の距離だけ内周側にオフセットした位置に設けられる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項5】
前記回転電機は、前記ロータに界磁巻線を有する巻線界磁式であり、
前記冷媒排出孔は、前記界磁巻線の外周端よりも内周側に設けられる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項6】
前記アウターリングは、金属製であって、前記ロータコアに当接する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の回転電機の冷却構造。
【請求項7】
前記冷媒排出孔の出口は、複数の孔に分割した分割構造である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の回転電機の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータ、及びステータを有する回転電機には、冷媒を利用した冷却構造が採用される場合がある。この種の回転電機には、インナーロータのロータコアの軸方向端面にアウターリングを備え、アウターリングのうちの軸方向に延びる外周部に、径方向に貫通する冷媒排出孔を設けた構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成は、アウターリングの外周部に冷媒排出孔を設けるので、外周部の強度が低下し、遠心方向の強度低下を招く懸念や、冷媒排出孔を通過した冷媒がロータとステータとの間のエアギャップに流入し、回転抵抗が増大する懸念がある。また、従来の構成は、遠心力によって冷媒が速やかに冷媒排出孔を通過するので、冷媒によるロータの冷却効率を高くすることが難しかった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、アウターリングの遠心方向の強度低下を抑制すると共にロータとステータ間のエアギャップに冷媒を流入し難くし、かつ、ロータの冷却性能を向上可能な回転電機の冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ロータとステータとを備え、前記ロータが、ロータ軸と、前記ロータ軸に固定されるロータコアと、前記ロータコアの軸方向外側に配置されるアウターリングとを有する回転電機を、冷媒を利用して冷却する回転電機の冷却構造において、前記アウターリングは、前記ロータコアの軸方向に延びる外周部と、前記ロータコアの軸方向端面から離れた位置で前記外周部から内周側に延びる端面部と、を有し、前記冷媒は、前記ロータコアの軸方向端面と前記端面部との間に供給され、前記端面部には、前記冷媒を排出する冷媒排出孔が設けられ、前記冷媒排出孔は、前記外周部よりも内周側に位置する、回転電機の冷却構造を提供する。
【発明の効果】
【0006】
アウターリングの遠心方向の強度低下を抑制すると共にロータとステータ間のエアギャップに冷媒を流入し難くし、かつ、ロータの冷却性能を向上可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の回転電機の実施形態に係るモータの構造を示す概略図である。
【
図2】アウターリングを周辺構成と共に示す概略断面図である。
【
図3】
図2のIII方向からアウターリングを周辺構成と共に示す概略図である。
【
図4】オイル吐出孔をモータの軸方向から周辺構成と共に示す概略図である。
【
図5】
図2のモータ断面視におけるオイル経路を示す図である。
【
図6】ロータコア両側のオイル経路を示す図である。
【
図8】オイル排出孔の変形例の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
[実施形態]
図1は、本発明の回転電機の実施形態に係るモータの構造を示す概略図である。
モータ10は、モータケースを構成するハウジング11内にステータ12が固定され、ステータ12の内周側にエアギャップGPを空けてロータ13が回転可能に配置される。このモータ10は、電動車両、又はハイブリッド車両の駆動源等として利用されるインナーロータ型のモータである。
図1中の符号LCは、ロータ軸21の軸心を示す。ロータ軸21の軸心LCは、ロータ軸21の中心軸、モータ10の軸心及び中心軸と一致する。
【0010】
本実施形態のモータ10は、ロータ13が永久磁石の代わりにロータ巻線13Wを備える巻線界磁式である。そのため、このモータ10は、ロータ巻線13Wを有するロータ13と、ステータ巻線12Wを有するステータ12と、を備えた構成である。ロータ巻線13Wは界磁巻線とも称され、ステータ巻線12Wは電気子巻線とも称される。なお、
図1及び後述する各図においては、ロータ巻線13W及びステータ巻線12W等を模式的に示している。
【0011】
ロータ13には、不図示のロータ給電用のスリップリングが固定され、このスリップリングとブラシを介して電流がロータ巻線13Wに供給される。なお、本実施形態では、モータ10が巻線界磁式の場合を説明するが、巻線界磁式に限定されず、例えば、ロータ13に永久磁石を有する永久磁石式でもよい。
【0012】
ロータ13は、ロータ軸21と、ロータ軸21に固定されるロータコア22と、ロータコア22の軸方向両側に配置されるアウターリング23と、を備える。アウターリング23は、ロータ軸21に固定されており、エンドプレートとも称されるモータ構成部品である。
ロータコア22とアウターリング23との間には、絶縁材からなるインシュレータ27が配置される。なお、モータ10は、
図1及び
図2に記載するモータ構造に限定されず、ステータ12、ロータ13及びアウターリング23を有する任意のモータ構造を適用してもよい。
【0013】
図2は、アウターリング23を周辺構成と共に示す概略断面図である。
図3は、一方のアウターリング23側の構造を示しているが、他方のアウターリング23側の構造も同構造である。
アウターリング23は、ロータコア22の軸方向に延びる筒状の外周部23Gと、外周部23Gから内周側に延びる端面部23Tと、を備えている。アウターリング23は、剛性を有する材料で形成され、本実施形態では金属材で形成される。外周部23Gは、ロータコア22の軸方向両側に位置する軸方向端面22Tに当接し、又は隣接する。また、外周部23Gは、インシュレータ27を外周から覆う。
【0014】
図2中、符号PTは、ロータ巻線13Wの端部位置を示し、距離LTは、ロータコア22の軸方向端面22Tからロータ巻線13Wの端部位置PTまでの距離を示している。
アウターリング23の端面部23Tは、端部位置PTよりもロータコア22から軸方向に離間する位置に設けられ、外周部23Gの軸方向一端から内周側、つまり、軸心LC側に延出する。
図3中の距離L1は、ロータコア22の軸方向端面22Tから端面部23Tまでの距離であり、距離L1>距離LTである。
【0015】
端面部23Tは、外周部23Gから内周側に延びることによって、インシュレータ27及びロータ巻線13Wのそれぞれと軸方向で重なる。本構成では、端面部23Tが、ロータ巻線13Wの外周側半分の領域と軸方向に重なる長さである。端面部23Tの最内周に位置する端部23Vは、ロータ軸21から径方向に離れている。
【0016】
図3は、
図3のIII方向からアウターリング23を周辺構成と共に示す概略図である。
図3に示すように、端面部23Tは、軸心LCの周方向に沿って連続する環形状に形成される。そのため、端面部23Tによって、ロータコア22、インシュレータ27及びロータ巻線13Wの少なくとも外周部分が、軸心LCを中心とする周方向全体に渡って覆われる。
【0017】
アウターリング23は、インシュレータ27及びロータ巻線13Wのそれぞれと軸方向で重なるので、ロータコア22からのロータ巻線13W、及びインシュレータ27の抜けを防止できる。また、アウターリング23は、インシュレータ27を径方向外側から覆うので、インシュレータ27の径方向等へのずれを規制できる。
図2及び
図3に示すように、ロータ13及びアウターリング23の外周側には、ステータ巻線12Wが配置される。
【0018】
次にモータ10の冷却構造について説明する。
図2に示すように、ロータ軸21には、オイルが供給されるオイル供給通路51が軸心LCに沿って形成される。オイルは、モータ10を搭載する車両の動力伝達系の潤滑を行うものであるが、モータ10の各部を冷却する冷媒を兼用する流体である。
ロータ軸21の周壁には、オイル供給通路51内のオイルを、ロータ軸21の外周側に吐出するオイル吐出孔52が形成される。オイル吐出孔52は、ロータ軸21の周壁のうち、ロータコア22の軸方向端面22Tと、アウターリング23の端面部23Tとの間の領域に設けられる。
【0019】
図4は、オイル吐出孔52をモータ10の軸方向から周辺構成と共に示す概略図である。
図4には、オイル吐出孔52からのオイルの流れを矢印で示している。
図4に示すように、オイル吐出孔52は、軸心LCを基準にして周方向に間隔を空けて設けられ、遠心方向に延出する。そのため、ロータ13の回転による遠心力を利用して、各オイル吐出孔52からオイルが遠心方向に吐出される。
【0020】
ロータ巻線13Wで構成されるコイルは、周方向に間隔を空けて設けられるので、コイル間に隙間13Sが等角度間隔で形成される。オイル供給通路51は、コイル間の隙間13Sの隙間に対し、所定の角度θvだけオフセットした位置に設けられている。この角度θvは、
図4中のオイルの流れを示すように、オイル吐出孔52からのオイルがコイル間の隙間13Sに流入する角度に設定されている。より具体的には、モータ10が所定の回転数、又は回転範囲のときに、オイル吐出孔52からのオイルがコイル間の隙間13Sに効率良く流入する角度に設定されている。これにより、オイルを、ロータ巻線13Wの周囲に行き渡らせたり、ロータコア22の広い範囲に接触させたりしやすくなり、ロータ13の冷却に有利となる。なお、所定の回転数、又は回転範囲は、モータ10の仕様や、車両の仕様等に応じて適宜に設定すればよい。
【0021】
図5には、
図2のモータ断面視におけるオイル経路Kを示している。
図5に示すように、オイル吐出孔52からのオイルは、ロータコア22の軸方向端面22Tと、アウターリング23とによって囲まれる領域αに流入する。
領域αに流入したオイルは、アウターリング23の端面部23Tに設けられたオイル排出孔53を通ることによって領域α外に流出する。
【0022】
図5に示すように、オイル排出孔53の中心位置PXは、アウターリング23の外周部23Gよりも内周側にオフセットしている。
図5には、オイル排出孔53のオフセット量を符号STで示している。このオフセット量STは、アウターリング23の外周部23Gの内周面に対し、オイル排出孔53の中心位置PXの内周側へのオフセット量である。
本構成では、オイル排出孔53がアウターリング23の外周部23Gよりも内周側にオフセットしているので、外周部23Gの内周側にオイルが溜まるオイル溜まりαを形成できる。オイル溜まりαが形成されることによって、オイルがロータコア22の軸方向端面22Tやロータ巻線13Wに接触する時間を長くしたり、軸方向端面22Tやロータ巻線13Wに接触する範囲を拡大したりすることができ、ロータコア22やロータ巻線13Wを効率良く冷却できる。
【0023】
また、オイル溜まりαによって、アウターリング23とオイルとの接触範囲が増大し、アウターリング23に伝わった熱を効率良く冷却できる。しかも、オイル溜まりαには、インシュレータ27が存在するので、インシュレータ27に伝わった熱も効率良く冷却できる。これらにより、ロータ13を効率良く冷却することが可能になる。
なお、オイル溜まりαのオイルは、オイル吐出孔52からのオイルによって攪拌されながら、一部がオイル排出孔53から流出するので、オイル溜まりαの温度上昇は抑えられる。
【0024】
オイル溜まりαのオイル量は、アウターリング23の外周部23Gに作用する遠心圧力を許容範囲に抑える量に設定される。オイル溜まりαのオイル量は、オイル排出孔53のオフセット量ST、オイル排出孔53の開口面積、及び、オイル排出孔53の数の少なくともいずれかを調整することによって容易に調整可能である。
上記したように、オイル排出孔53は円断面であるので、オイル排出孔53の孔加工が容易であり、オイル排出孔53の開口面積の調整も容易である。但し、オイル排出孔53は円断面に限定されず、楕円断面や矩形断面等の適宜な断面形状にしてもよい。
【0025】
本構成では、
図6に示すように、ロータコア22の両側に、オイル溜まりαを含むオイル経路Kが形成される。そのため、ロータ13等を均等に冷却しやすくなる。
また、
図2及び
図3に示すように、オイル排出孔53から流出したオイルは、ロータの回転に伴う遠心力によって、外周側へと流れ、ステータ巻線12Wを冷却する。オイル排出孔53は、軸心LCを基準にして所定の角度間隔で設けられるので、アウターリング23から広い範囲にオイルを排出でき、ステータ巻線12Wを効率良く冷却できる。
【0026】
図7は、オイル供給系の一例を示す図である。
オイルは、オイルパン等のオイル貯留部61に貯留され、オイルポンプ62によって吸引され、冷却器63に向けて吐出される。オイルポンプ62は、例えば電動式のオイルポンプである。冷却器63は、車両が備える空調装置の冷媒や外気を利用してオイルを冷却する構成であり、オイルクーラとも称される。
オイルポンプ62下流のオイル経路は複数のオイル経路に分岐する。分岐した一つのオイル経路は、オイル供給通路51、オイル吐出孔52、オイル排出孔53を含むオイル経路Kであり、ロータ軸21、ロータ巻線13W、及びステータ巻線12W等を冷却した後、重力等を利用してオイル貯留部61に回収される。
【0027】
また、分岐した他のオイル通路は、モータ10の駆動力を伝達する動力伝達系に利用されるベアリング65にオイルを供給する経路と、その動力伝達系に含まれるギヤ66にオイルを供給経路とである。これによって、ベアリング65及びギヤ66が潤滑される。ベアリング65及びギヤ66を潤滑したオイルは、重力等を利用してオイル貯留部61に回収される。
【0028】
以上説明したように、本実施の形態のアウターリング23は、ロータコア22の軸方向に延びる外周部23Gと、ロータコア22の軸方向端面22Tから離れた位置で外周部23Gから内周側に延びる端面部23Tと、を有している。モータ冷却用の冷媒を兼ねるオイルは、ロータコア22の軸方向端面22Tと端面部23Tとの間に供給される。また、端面部23Tには、オイルを排出するオイル排出孔53が設けられ、オイル排出孔53は、外周部23Gよりも内周側に位置する。
この構成によれば、アウターリング23の外周部23Gにオイル排出孔53を設けないので、アウターリング23の外周部23Gの強度低下を抑制できると共に、ロータ13とステータ12間のエアギャップGPにオイルを流入し難くできる。また、オイル排出孔53は、外周部23Gよりも内周側に位置するので、外周部23Gの内周側にオイルを留めることができ、ロータコア22等のロータ構成部品を効率良く冷却できる。
これにより、アウターリング23の遠心方向の強度低下を抑制すると共に、ロータ13とステータ12間のエアギャップGPに冷媒を流入し難くし、かつ、ロータ13の冷却性能を向上できる。
【0029】
また、オイル排出孔53は、ロータ軸21の軸心LCを基準にして所定の角度間隔で設けられる。この構成によれば、アウターリング23から周方向に間隔を空けてオイルを排出でき、アウターリング23外周に位置するステータ12を効率良く冷却できる。
また、オイル排出孔53は、円断面の孔であるので、オイル排出孔53の孔加工が容易であり、かつ、オイル排出孔53の開口面積を容易に調整できる。また、オイル排出孔53は、端面部23Tを軸方向に貫通する孔であるので、これによってもオイル排出孔53の孔加工が容易である。また、オイルをエアギャップGPに流入させずにアウターリング23外へスムーズに排出できる。
【0030】
また、オイル排出孔53は、外周部23Gの内周面よりも所定の距離に相当するオフセット量STだけ内周側にオフセットした位置に設けられる。この構成によれば、オフセット量STに対応するオイル溜まりαを設けることができる。オイル溜まりαを設けることによって、ロータコア22等のロータ構成部品とオイルとの接触時間及び接触範囲を増やすことができ、ロータ構成部品を効率良く冷却できる。
【0031】
また、モータ10は、ロータ13に界磁巻線からなるロータ巻線13Wを有する巻線界磁式であり、オイル排出孔53は、ロータ巻線13Wの外周端よりも内周側に設けられる。この構成によれば、アウターリング23の外周部23Gの内周側に留まるオイルによって、ロータ巻線13Wを効率良く冷却できる。
【0032】
また、アウターリング23は金属製であって、ロータコア22に当接する。これにより、アウターリング23の外周部23Gの内周側に留まるオイルによって、ロータコア22を直接冷却すると共に、アウターリング23を介してロータコア22を冷却できる。
【0033】
上記の実施形態は、あくまでも本発明の一実施の態様であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
例えば、各オイル排出孔53の出口を、複数の孔に分割した分割構造にしてもよい。
図8では、各オイル排出孔53内に格子体を設けることによって、各オイル排出孔53の出口を複数の孔に分割している。この構成によれば、ロータ13の回転に伴う遠心力によって、オイル排出孔53を通過したオイルを拡散して排出することが可能になる。これにより、オイルを、ステータ巻線12Wを含むステータ構成部品の広い範囲に吹き付け易くなり、ステータ12の冷却性能を向上しやすくなる。
【0034】
また、上記の実施形態では、車両の動力伝達系の潤滑に使用するオイルを、モータ冷却用の冷媒としても使用する場合を説明したが、これに限定されず、冷却専用の冷媒を使用してもよい。なお、オイル供給通路51は、本発明の「冷媒供給通路」に相当し、オイル吐出孔52は、本発明の「冷媒吐出孔」に相当し、オイル排出孔53は、本発明の「冷媒排出孔」に相当している。
【0035】
また、上記の実施形態では、モータ10の冷却構造に本発明を適用する場合を説明したが、発電機の冷却構造に本発明を適用してもよい。本発明は、モータ及び発電機を含む任意の回転電機の冷却構造に適用することが可能である。
【0036】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0037】
(構成1)ロータとステータとを備え、前記ロータが、ロータ軸と、前記ロータ軸に固定されるロータコアと、前記ロータコアの軸方向外側に配置されるアウターリングとを有する回転電機を、冷媒を利用して冷却する回転電機の冷却構造において、前記アウターリングは、前記ロータコアの軸方向に延びる外周部と、前記ロータコアの軸方向端面から離れた位置で前記外周部から内周側に延びる端面部と、を有し、前記冷媒は、前記ロータコアの軸方向端面と前記端面部との間に供給され、前記端面部には、前記冷媒を排出する冷媒排出孔が設けられ、前記冷媒排出孔は、前記外周部よりも内周側に位置する、回転電機の冷却構造。
この構成によれば、アウターリングの外周部に冷媒排出孔を設けないので、アウターリングの遠心方向の強度低下を抑制すると共に、ロータとステータ間のエアギャップに冷媒を流入し難くできる。また、冷媒排出孔は、外周部よりも内周側に位置するので、外周部の内周側に冷媒を留め、ロータの冷却性能を向上できる。
【0038】
(構成2)前記冷媒排出孔は、前記ロータ軸の軸心を基準にして所定の角度間隔で設けられる、構成1に記載の回転電機の冷却構造。
この構成によれば、アウターリングから周方向に間隔を空けて冷媒を排出でき、アウターリング外周に位置するステータを効率良く冷却できる。
【0039】
(構成3)前記冷媒排出孔は、円断面の孔であり、前記端面部を前記ロータの軸線に沿って貫通する孔である、構成1又は2に記載の回転電機の冷却構造。
この構成によれば、冷媒排出孔の孔加工が容易であり、冷媒排出孔の開口面積を容易に調整でき、冷媒をアウターリング外へスムーズに排出できる。
【0040】
(構成4)前記冷媒排出孔は、前記外周部の内周面よりも所定の距離だけ内周側にオフセットした位置に設けられる、構成1から3のいずれか一項に記載の回転電機の冷却構造。
この構成によれば、オフセット量に対応する冷媒溜まりを設けることができる。冷媒溜まりを設けることによって、ロータコア等のロータ構成部品と冷媒との接触時間及び接触範囲を増やすことができ、ロータ構成部品を効率良く冷却できる。
【0041】
(構成5)前記回転電機は、前記ロータに界磁巻線を有する巻線界磁式であり、前記冷媒排出孔は、前記界磁巻線の外周端よりも内周側に設けられる、構成1から4のいずれか一項に記載の回転電機の冷却構造。
この構成によれば、アウターリングの外周部の内周側に留まる冷媒によって、界磁巻線を効率良く冷却できる。
【0042】
(構成6)前記アウターリングは、金属製であって、前記ロータコアに当接する、構成1から5のいずれか一項に記載の回転電機の冷却構造。
この構成によれば、アウターリングの外周部の内周側に留まる冷媒によって、ロータコアを直接冷却すると共に、アウターリングを介してロータコアを冷却できる。
【0043】
(構成7)前記冷媒排出孔の出口は、複数の孔に分割した分割構造である、構成1から6のいずれか一項に記載の回転電機の冷却構造。
この構成によれば、冷媒排出孔から冷媒を拡散して排出でき、冷媒をステータ構成部品の広い範囲に吹き付け易くなる。
【符号の説明】
【0044】
10…モータ(回転電機)、12…ステータ、12W…ステータ巻線、13…ロータ、13W…ロータ巻線(界磁巻線)、21…ロータ軸、22…ロータコア、22T…軸方向端面、23…アウターリング、23G…外周部、23T…端面部、27…インシュレータ、51…オイル供給通路(冷媒供給通路)、52…オイル吐出孔(冷媒吐出孔)、53…オイル排出孔(冷媒排出孔)、K…オイル経路、LC…軸心。