(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118729
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】車両のサイドフレーム及びそれを備えた車両
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20240826BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B62D25/08 E
B60K11/04 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025171
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】図師 康宏
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 圭悟
(72)【発明者】
【氏名】大嶌 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】金子 聡子
【テーマコード(参考)】
3D038
3D203
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AB01
3D038AC03
3D038AC06
3D038AC23
3D203AA02
3D203BA02
3D203CB30
3D203CB34
(57)【要約】
【課題】エンジン搭載状態での整備作業性を効率化すると共に、エンジン房外へ積極的に熱排出が可能な、車両のサイドフレーム及びそれを備えた車両を提供する。
【解決手段】車体に形成されたエンジンルーム内における車幅方向の両側に設けられ、車体前後方向に延びる左右一対のサイドフレームにおいて、左右一対の前記サイドフレームのうち少なくとも一方の前記サイドフレームに設けられ、前記エンジンルームの内側と外側とを連通させる貫通孔と、前記貫通孔に対して、前記エンジンルームの内側又は外側の少なくとも一方に設けられ、前記エンジンルームの内側と外側との連通を遮断することが可能な蓋部材と、を備えることを特徴とする、車両のサイドフレーム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に形成されたエンジンルーム内における車幅方向の両側に設けられ、車体前後方向に延びる左右一対のサイドフレームにおいて、
左右一対の前記サイドフレームのうち少なくとも一方の前記サイドフレームに設けられ、前記エンジンルームの内側と外側とを連通させる貫通孔と、
前記貫通孔に対して、前記エンジンルームの内側又は外側の少なくとも一方に設けられ、前記エンジンルームの内側と外側との連通を遮断することが可能な蓋部材と、
を備えることを特徴とする、車両のサイドフレーム。
【請求項2】
前記蓋部材は、前記貫通孔における車長方向の端部よりも中央部が肉厚な形状を有する負圧発生部材を含む、請求項1に記載の車両のサイドフレーム。
【請求項3】
前記サイドフレームは中空管状に構成されると共に、前記エンジンルームの内側に配置されるインナーフレーム、及び、前記エンジンルームの外側に配置されるとアウターフレームとを含み、
前記貫通孔は、前記インナーフレームに形成されるインナーホール、及び、前記アウターフレームに形成されるアウターホールにより構成される、請求項1に記載の車両のサイドフレーム。
【請求項4】
前記インナーホール、及び、前記アウターホールが、車長方向に対して異なる位置に形成される、請求項3に記載の車両のサイドフレーム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の車両のサイドフレームを備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両のサイドフレーム及びそれを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体フレーム内にエンジンが取り付けられた車両の構成が開示されている。例えば、特許文献1には、フロントにエンジンが配置される車両において、フロントサイドフレームの開口を介してサイドフレームの中空部に入り込んだエンジン排熱を伴った走行風が、ホイールハウス内に導かれるようにした構成が開示されている。
【0003】
特許文献2には、前後方向に延在する左右のサイドフレーム間にエンジンルームが形成され、そのエンジンルームの上面を覆うようにキャビンが搭載される車両において、キャビンをサイドフレームの上方にマウントブラケットを介して一定間隔を置いて配置される構成が開示されている。
【0004】
特許文献3には、サイドフレームの中空部がエンジン本体に空気を供給する空気吸入経路として機能する車両用シャシフレーム構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-188927号公報
【特許文献2】特開平11-240469号公報
【特許文献3】特開2000-203448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の文献に開示された車両に限られず、車体前部又は後部にエンジンを搭載した車両において、エンジンのメンテナンスを行う際は、従来は、まず車体前部の上面又は車体後部の上面に設けられたエンジンフードを開ける。そして、その上方向から作業者が車体フレームとエンジンとの隙間部に手や工具を入れて作業を行うことが行われている。
【0007】
特に水平対向エンジンと呼ばれるエンジンの場合、車体フレームとエンジン側面のスペースを大きく取ることが困難である。そのため、エンジンが搭載された状態での整備作業性の向上が求められている。具体的には、例えばスパークプラグ交換等の作業を行う際には、作業スペースを確保するために周辺部品の脱着を行う必要があり、作業効率の向上が求められている。
【0008】
また、上述のようなスペースの少なさから、エンジンの排ガスによって生ずる熱をエンジン房外へ積極的に排出させる構造の開発も進められている。
【0009】
本開示は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、エンジンが搭載された状態での整備作業性を効率化すると共に、エンジン房外へ積極的に熱排出が可能な、車両のサイドフレーム及びそれを備えた車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本開示の一実施形態における車両のサイドフレームは、車体に形成されたエンジンルーム内における車幅方向の両側に設けられ、車体前後方向(車長方向)に延びる左右一対のサイドフレームにおいて、前記左右一対のサイドフレームのうち少なくとも一方のサイドフレームに設けられエンジンルームの内側と外側とを連通させる貫通孔と、前記貫通孔に対して、エンジンルームの内側又は外側の少なくとも一方に設けられ、前記エンジンルームの内側と外側との連通を遮断することが可能な蓋部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、エンジンが搭載された状態での整備作業性を効率化すると共に、エンジン房外へ積極的に熱排出が可能な、車両のサイドフレーム及びそれを備えた車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示が適用され得る車両のフレームの一例を模式的に示す図である。
【
図2】本開示の車両のサイドフレームを模式的に示す斜視図である。
【
図3】本開示の車両のサイドフレームを模式的に示す上面図である。
【
図4】本開示の車両のサイドフレームに取り付けられる蓋部材の一例を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本開示を実施するための好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明では、それぞれ便宜的に車両の車高方向をZ方向、車長方向をX方向、これらZ方向及びX方向と直交する車幅方向をY方向として定義して説明する。しかしながら本開示は上述した方向の規定に左右されるものではなく、特許請求の範囲を不当に減縮するものでないことは言うまでもない。
【0014】
また、以下で詳述する以外の構成については、上記した特許文献を含む公知の車両に関するフレーム構造及び車載装備並びにその要素技術を適宜補完してもよい。本開示では、車両フロント部にエンジン搭載した形態を例として説明するが、それに限られず、車両リア部にエンジン搭載した場合にも本開示内容を適用可能である。また、本開示では、モノコックボディを有する車両を例として説明したが、それに限られず、ラダーフレームを有する車両に対しても適用可能である。
【0015】
[車両100]
実施形態の車両100の構成について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1に示すように、車両100は、モノコックボディ10のうち、車両前方に配置された前部空間FS(エンジンルーム)を有して構成されている。かような前部空間FS内には、エンジンEG、ラジエータRD、冷却ファンFNなどが搭載されている。
【0016】
モノコックボディ10のうち、エンジンEGに対して車幅方向の両側には、左右一対のフロントサイドフレーム11(11a及び11b)が配置される。フロントサイドフレーム11は、車両の前後方向に延在し、車両100全体の強度や剛性を確保する機能などを有する。また前部空間FS内において、エンジンEGの前方には、冷却ファンFN、及びラジエータRDが配置されている。
【0017】
図2などに示すように、フロントサイドフレーム11には、エンジンルームの内側と外側とを連通させる貫通孔13(13a及び13b)が形成される。なお、貫通孔13は、左右一対のフロントサイドフレーム11(11a及び11b)の両方に形成されることが必須はではなく、少なくともその一方に形成されていればよい。
【0018】
このように本開示の車両100では、上記した貫通孔13を備えることにより、エンジンルームの内部の熱気を外部に排出することが可能となる。また貫通孔13により、エンジンルームの外部から内部に工具を挿入することが可能となるため、仮に車体フレームとエンジンとの隙間が狭い場合でも、作業スペースを確保するために周辺部品の脱着を行う必要がなくなり、作業効率の向上が期待できる。
【0019】
なお、
図3に示されるように、フロントサイドフレーム11は、中空管状の鋼材等により構成されていてもよい。その場合、フロントサイドフレーム11は、エンジンルームの内側に配置されるインナーフレーム111と、前記エンジンルームの外側に配置されるアウターフレーム113とを含む。そして、インナーフレーム111とアウターフレーム113の両方に、それぞれインナーホール111h及びアウターホール113hとを形成することにより、インナーホール111h及びアウターホール113hとの両方が連通して、フロントサイドフレーム11の内外を連通するひとつの貫通孔13を形成することができる。
【0020】
インナーホール111h及びアウターホール113hとの位置関係としては、車長方向に対して同じ位置に形成されていてもよいし、
図3に示すように、車長方向に対して異なる位置に形成されていてもよい。例えば、
図3に示されるように、インナーホール111hが車両の前方に形成されるとともに、アウターホール113hはインナーホール111hよりも車両後方に形成されてもよい。
【0021】
この場合、タイヤハウスから取り込まれた走行風や、ラジエータRD後方の冷却ファンFNによる熱が、車両前方のインナーフレーム111のインナーホール111hからフロントサイドフレーム11の中空部分に流入する。そして、フロントサイドフレーム11の中空部分でさらに周囲の熱を奪いながら、アウターフレーム113のアウターホール113hより排出される。そのため、インナーホール111h及びアウターホール113hとの位置関係を車両前後に配置することで、車両の冷却性能をより向上させることができる。
【0022】
さらに、インナーフレーム111には、上記したインナーホール111h(第一インナーホール)よりも車長方向の後ろ側に配置される第二インナーホール111mが形成されていてもよい。第二インナーホール111mは、車両整備作業のための貫通孔であり、走行時は図示しない蓋体により閉塞されていてもよい。
【0023】
例えば車両の部品交換や点検時などに第二インナーホール111mを開放することにより、アウターホール113h及び第二インナーホール111mから車両整備作業のための工具を差し入れることができる。このような構成とすることにより、作業性と放熱性とを同時に兼ね備えた車両100とすることができる。
【0024】
図2~
図5などから理解されるとおり、貫通孔13には、エンジンルームの内側と外側との連通の少なくとも一部を遮断可能な蓋部材15が備えられてもよい。蓋部材15は、フロントサイドフレーム11の内側又は外側の少なくとも一方に設けられていればよく、両方に設けられていてもよい。蓋部材15は、貫通孔13の外側に突出するように配置されてもよい。本開示において蓋部材15は、貫通孔13における空気の流れを完全に遮断する必要はない。
【0025】
換言すれば、蓋部材15は、貫通孔13における空気の流れの少なくとも一部を妨げることができればよい。
図4は、蓋部材15の一例を模式的に示す正面図であり、
図5は、
図4におけるA-A’断面図である。
図4に示されるように、蓋部材15は、例えばメッシュやパンチングメタル等の材質を用いて形成されていてもよい。
【0026】
図4及び
図5に示されるように、蓋部材15における車高方向の上側および下側には、負圧発生部材151(151a及び151b)が備えられてもよい。負圧発生部材151は、貫通孔13(例えばアウターホール113h)の開口部形状に合致する横幅を有している。一方で、貫通孔13の高さに対して、負圧発生部材151のZ方向に占める割合は、1/3~1/4程度とすることができる。
【0027】
図4に示されるように、負圧発生部材151(151a及び151b)は、車長方向における端部に比べて、車長方向における中央部が肉厚な形状を有していてもよい。このような形状により、
図4中の矢印により示される走行風が、上下の負圧発生部材151の間を通り抜ける際に、負圧を生じる。そのため、
図5に示されるように、フロントサイドフレーム11の内側から、貫通孔13を経由して、フロントサイドフレーム11の外側へ熱をより積極的に排出することができる(
図5中の矢印参照)。
【0028】
なお
図4に示す形態では蓋部材15における車高方向の上側および下側に負圧発生部材151が備えられているが、本開示はこの形態に限定されない。すなわち負圧発生部材151は、上記作用効果を発揮する限りにおいて、例えば蓋部材15における車高方向の上側および下側の少なくとも一方に備えられていてもよい。
【0029】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、上述した実施形態に対して更なる修正を試みることは明らかであり、これらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0030】
10 モノコックボディ;11、11a、11b フロントサイドフレーム;13、13a、13b 貫通孔;111 インナーフレーム;113 アウターフレーム;111h インナーホール;113h アウターホール;111m 第二インナーホール; 蓋部材15;EG エンジン;FS 前部空間;100 車両