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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118739
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ガバナ装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 1/04 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
F02D1/04 J
F02D1/04 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025185
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】317019683
【氏名又は名称】株式会社Willbe
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】仲出川 大補
(72)【発明者】
【氏名】上野山 和之
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利明
(72)【発明者】
【氏名】小牧 真也
(57)【要約】
【課題】汎用エンジンの大型化を抑制しつつ、汎用エンジンの回転数の調整精度を向上させることができる。
【解決手段】汎用エンジンの回転数を調整するためのガバナ装置は、汎用エンジンのクランク軸に摺動可能に配置されるベアリングと、クランク軸の回転数に応じた押圧力でベアリングをクランク軸の軸線方向の一方側に押圧するように構成されるフライウェイトと、軸線方向に移動可能にベアリングに接続されるスライダと、スライダの軸線方向の一方側の端面に接続され、スライダを軸線方向の他方側へと付勢するための付勢部材と、軸線方向におけるスライダの位置に応じて、汎用エンジンの燃焼室内の空燃比を調整可能に構成される空燃比調整手段と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汎用エンジンの回転数を調整するためのガバナ装置であって、
前記汎用エンジンのクランク軸に摺動可能に配置されるベアリングと、
前記クランク軸の回転数に応じた押圧力で前記ベアリングを前記クランク軸の軸線方向の一方側に押圧するように構成されるフライウェイトと、
前記軸線方向に移動可能に前記ベアリングに接続されるスライダと、
前記スライダの前記軸線方向の一方側の端面に接続され、前記スライダを前記軸線方向の他方側へと付勢するための付勢部材と、
前記軸線方向における前記スライダの位置に応じて、前記汎用エンジンの燃焼室内の空燃比を調整可能に構成される空燃比調整手段と、を備える、
ガバナ装置。
【請求項2】
前記ベアリングは、前記クランク軸の表面に摺動する内周面を含む内輪を有し、
前記フライウェイトは、前記内輪を前記軸線方向の一方側に押圧するように構成されている、
請求項1に記載のガバナ装置。
【請求項3】
前記ベアリングよりも前記軸線方向の他方側に前記クランク軸の前記表面に摺動可能に配置される中間材をさらに備え、
前記フライウェイトは、前記中間材を介して、前記内輪を前記軸線方向の一方側に押圧するように構成されている、
請求項2に記載のガバナ装置。
【請求項4】
前記ベアリングは、前記クランク軸の表面に摺動する内周面を含む内輪と、前記内輪の径方向の外側に配置される外輪と、前記内輪と前記外輪との間に設けられた転動体と、を有し、
前記スライダは、前記ベアリングよりも前記軸線方向の一方側に位置する本体部と、前記本体部から前記軸線方向の他方側に突出する突出部と、を有し、
前記外輪が前記突出部に固定されている、
請求項1から3の何れか一項に記載のガバナ装置。
【請求項5】
前記汎用エンジンは、前記クランク軸に回転力を付与可能なリコイルスタータであって、前記クランク軸に設けられた駆動プーリを収容するリコイルケーシングを含むリコイルスタータを含み、
前記ベアリングは、前記リコイルケーシングに収容されている、
請求項1から3の何れか一項に記載のガバナ装置。
【請求項6】
前記フライウェイトは、基端部に形成される回動中心を中心として回動可能に構成され、前記基端部から前記クランク軸に向かって延びるアーム部と、前記アーム部の先端部から前記軸線方向の一方側に突出する凸部と、を含む、
請求項1から3の何れか一項に記載のガバナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、汎用エンジンの回転数を調整するためのガバナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガバナ装置は、汎用エンジンの回転数に応じた力(ガバナ力)を発生させ、このガバナ力を汎用エンジンの燃焼室内の空燃比を調整可能な空燃比調整手段(例えば、スロットルバルブ)に伝達することで、汎用エンジンの回転数を調整する。例えば、特許文献1に記載のガバナ装置は、フライウェイトのガバナ力を、ガバナスリーブを介して、ガバナレバーのガバナ力入力部に伝達させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-116437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガバナ装置には、ガバナ力と対向する方向に付勢する付勢部材が設けられている。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ガバナ力の作用方向に対して付勢力の作用方向が大きくずれている。このため、ガバナレバーやガバナスプリング(付勢部材)の移動や変形が安定せず、汎用エンジンの回転数の調整精度を低下させる虞がある。また、ガバナ装置は、汎用エンジンを大型化させないように設計されていることが望ましい。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、汎用エンジンの大型化を抑制しつつ、汎用エンジンの回転数の調整精度を向上可能なガバナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係るガバナ装置は、汎用エンジンの回転数を調整するためのガバナ装置であって、前記汎用エンジンのクランク軸に摺動可能に配置されるベアリングと、前記クランク軸の回転数に応じた押圧力で前記ベアリングを前記クランク軸の軸線方向の一方側に押圧するように構成されるフライウェイトと、前記軸線方向に移動可能に前記ベアリングに接続されるスライダと、前記スライダの前記軸線方向の一方側の端面に接続され、前記スライダを前記軸線方向の他方側へと付勢するための付勢部材と、前記軸線方向における前記スライダの位置に応じて、前記汎用エンジンの燃焼室内の空燃比を調整可能に構成される空燃比調整手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示のガバナ装置によれば、汎用エンジンの大型化を抑制しつつ、汎用エンジンの回転数の調整精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るガバナ装置を備える汎用エンジンの構成を概略的に示す図である。
図2】一実施形態に係るガバナ装置の構成を概略的に示す図である。
図3】一実施形態に係るフライウェイトのレイアウトを説明するための図である。
図4】幾つかの実施形態に係るガバナ装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態によるガバナ装置について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
本開示に係るガバナ装置1は、汎用エンジン100の回転数を調整する。汎用エンジン100は、燃料の燃焼によって動力を出力可能であれば特に限定されず、例えば、2サイクルのレシプロエンジンである。汎用エンジン100は、例えば、草刈機や刈払機のような利用者によって携行可能な作業機の動力源として用いられる。図1は、一実施形態に係るガバナ装置1を備える汎用エンジン100の構成を概略的に示す図である。
【0011】
図1に例示するように、汎用エンジン100は、内部に燃焼室103が形成されているシリンダ102と、燃焼室103内のピストン(不図示)と接続されているクランク軸105を収容しているクランクケース104と、燃料が貯蔵されている燃料タンク106と、吸入された空気である吸気A1から異物を除去するエアクリーナ108と、燃焼室103に供給する吸気A1に燃料を気化して混合するキャブレータ110と、断熱のためにシリンダ102とキャブレータ110との間に配置される管状のインシュレータ112と、燃焼室103から排出される排気A2の騒音を低減させるマフラ114と、汎用エンジン100を始動させるリコイルスタータ116と、ガバナ装置1と、を含む。
【0012】
一実施形態では、リコイルスタータ116は、クランク軸105に回転力を付与可能に構成されている。このリコイルスタータ116は、駆動プーリ118を収容するリコイルケーシング120を含む。駆動プーリ118は、クランク軸105に接続されている。具体的には、駆動プーリ118は、クランク軸105の先端を含む先端部117に接続されている(図2を参照)。駆動プーリ118は、不図示のレバーとも接続されている。作業機の利用者は、レバーを操作することでクランク軸105を回転させて、汎用エンジン100を始動させる。一実施形態では、リコイルスタータ116は、汎用エンジン100の駆動中にクランク軸105の回転力がレバーに伝達されないように構成されている。具体的には、リコイルスタータ116は、汎用エンジン100が駆動していないときに駆動プーリ118に接続され、汎用エンジン100が駆動しているときに駆動プーリ118に接続されないように構成されるツメ119をさらに含む(図1及び図3を参照)。この場合、駆動プーリ118は、ツメ119を介してレバーに接続されている。
【0013】
以下、クランク軸105の軸線Oが延びる方向を軸線方向D1とする。軸線方向D1のうちクランク軸105の先端部117側(リコイルスタータ116側)を軸線方向D1の他方側とし、リコイルスタータ116側とは反対側を軸線方向D1の一方側とする。
【0014】
(構成)
一実施形態に係るガバナ装置1の構成について説明する。図2は、一実施形態に係るガバナ装置1の構成を概略的に示す図である。図2に例示するように、ガバナ装置1は、ベアリング2と、フライウェイト4と、スライダ6と、付勢部材8と、空燃比調整手段10と、を含む。
【0015】
ベアリング2は、汎用エンジン100のクランク軸105に摺動可能に配置される。一実施形態では、図2に例示するように、ベアリング2は、クランク軸105の表面107に摺動する内周面13を含む内輪12と、内輪12の径方向D2の外側に配置される外輪14と、内輪12と外輪14との間に設けられた転動体16と、を有する。つまり、ベアリング2は、転がり軸受である。内輪12および外輪14のそれぞれは、円筒形状を有している。転動体16は、球形状を有している。
【0016】
本開示では、内輪12の中心がクランク軸105の軸線O上に位置しているとする。径方向D2のうち軸線Oに近づく方向を径方向D2の内側とし、軸線Oから離れる方向を径方向D2の外側としている。
【0017】
一実施形態では、図2に例示するように、ベアリング2は、リコイルケーシング120に収容されている。そして、内輪12の内周面13には、潤滑油が塗布されている。
【0018】
フライウェイト4は、クランク軸105の回転数に応じた押圧力F1でベアリング2を軸線方向D1の一方側に押圧するように構成される。フライウェイト4の押圧力F1は、予め設定された最大値に到達するまでクランク軸105の回転数の増加とともに大きくなる。一実施形態では、図2に例示するように、フライウェイト4は、クランク軸105の回転時に発生する遠心力を利用して押圧力F1を発生させるものであり、アーム部18と、凸部20と、ウェイト部22と、を含む。
【0019】
アーム部18は、棒状形状を有しており、基端部24に形成される回動中心Cを中心として回動可能に構成されている。このアーム部18は、基端部24からクランク軸105に向かって延びている。具体的には、図2に例示するように、基端部24には、ピン25が挿通される孔26が形成されている。アーム部18は、ピン25によって回動可能に支持されている。アーム部18の先端部28は、基端部24よりも径方向D2の内側に位置している。
【0020】
凸部20は、アーム部18の先端部28から軸線方向D1の一方側に突出している。一実施形態では、図2に例示するように、アーム部18が回動した際に、凸部20が通過する軌道を凸部ライン32とする。ベアリング2は、内輪12の軸線方向D1の他方側の端面30が凸部ライン32上に位置するように、クランク軸105に配置されている。つまり、フライウェイト4は、内輪12を軸線方向D1の一方側に押圧するように構成されている。
【0021】
ウェイト部22は、アーム部18の基端部24に取り付けられている。図2に例示する形態では、基端部24は折り曲げられており、ウェイト部22は基端部24よりも軸線方向D1の一方側に位置している。一実施形態では、ウェイト部22は、凸部20が凸部ライン32の軸線方向D1の一方側の限界位置に到達した場合に、駆動プーリ118に当接するように構成されている。このような構成によれば、限界位置を超えるアーム部18の回動を阻止する。つまり、内輪12の軸線方向D1の一方に向かう過剰な移動が規制される。
【0022】
一実施形態では、ガバナ装置1は、一対のフライウェイト4、4を含んでいる。図3は、一実施形態に係るフライウェイト4のレイアウトを説明するための図であって、フライウェイト4を軸線方向D1の他方側から視ている。図3に例示するように、一方のフライウェイト4が内輪12を押圧する領域を第1領域R1とし、他方のフライウェイト4が内輪12を押圧する領域を第2領域R2とする。第1領域R1及び第2領域R2のそれぞれは、軸線Oを挟んで互いに反対側に位置する。第1領域R1及び第2領域R2のそれぞれは、軸線Oに対して互いに点対称となっている。フライウェイト4およびツメ119は、内輪12の周方向D3に沿って互いに間隔を空けてリコイルケーシング120内に配置されている。図3に例示する形態では、リコイルスタータ116は、リコイルケーシング120内にフライウェイト4およびツメ119の両方が収容される駆動プーリ118をさらに含む。
【0023】
スライダ6は、軸線方向D1に移動可能にベアリング2に接続される。一実施形態では、図2に例示するように、スライダ6は、ベアリング2よりも軸線方向D1の一方側に位置する本体部34と、本体部34から軸線方向D1の他方側に突出する突出部36と、を有する。一実施形態では、スライダ6は、クランク軸105の外周回りに配置されている。幾つかの実施形態では、スライダ6は、筒形状を有している。
【0024】
本体部34は、一方側部38と、一方側部38よりも軸線方向D1の他方側に位置する他方側部40と、を含む。一方側部38は、スライダ6の軸線方向D1の一方側の端面42を含み、この端面42から軸線方向D1の他方側に向かって凹む凹部44を有している。凹部44は、ベアリング2よりも径方向D2の外側に位置している。他方側部40は、一方側部38よりも径方向D2の長さが短い。一方側部38および他方側部40のそれぞれは、径方向D2の内側の内面39、41の位置が互いに同じであり、それぞれの内面39、41は互いに面一となっている。
【0025】
突出部36は、他方側部40の径方向D2の外側部と一体的に接続されている。突出部36および他方側部40のそれぞれは、径方向D2の外側の外面37、43の位置が互いに同じであり、それぞれの外面37、43は互いに面一となっている。突出部36は、凹部44よりも径方向D2の内側に位置している。
【0026】
上述した外輪14は、突出部36に固定されている。一実施形態では、突出部36の内径及び外輪14の外径が略同一であり、突出部36に外輪14が嵌め込まれている。このため、フライウェイト4がベアリング2の内輪12を軸線方向D1の一方側に押圧すると、押圧力F1が転動体16を介して外輪14に伝達される。そして、スライダ6には軸線方向D1の一方側に向かうガバナ力F2が作用する。以下、ガバナ力F2が付勢力F3よりも小さい状態において、スライダ6が静止している軸線方向D1の位置を基準位置と記載する。尚、外輪14を突出部36に固定する方法は、図2に例示して説明した方法に限定されない。幾つかの実施形態では、外輪14は、ボルトやクランプのような締結具によって突出部36と固定されている。
【0027】
付勢部材8は、スライダ6の軸線方向D1の一方側の端面42に接続されている。一実施形態では、付勢部材8はスプリングであり、軸線方向D1の一方側の一端46が固定壁45に接続され、軸線方向D1の他方側の他端48が凹部44の底面47に接続されている。このため、スライダ6には軸線方向D1の他方側に向かう付勢力F3が作用する。ところで、固定壁45は、スプリングの一端46の軸線方向D1の位置を固定するものであれば特に限定されない。固定壁45は、例えば、クランクケース104と一体的に接続されているクランクケース104内の内壁である。幾つかの実施形態では、凹部44はクランク軸105の周方向の全体に亘って延びており、1つの付勢部材8(スプリング)が凹部44に嵌め込まれている。
【0028】
空燃比調整手段10は、軸線方向D1におけるスライダ6の位置に応じて、汎用エンジン100の燃焼室103内の空燃比を調整可能に構成される。一実施形態では、空燃比調整手段は、吸気A1が流通する吸気経路に配置されるバルブ122と、バルブシャフト124と、ワイヤー126と、を含む。
【0029】
バルブ122は、キャブレータ110よりも吸気経路の上流側(燃焼室103側とは反対側)に配置されている。バルブシャフト124は、バルブ122に接続されている。バルブシャフト124は、回転することでバルブ122を回転させて開弁または閉弁させる。ワイヤー126は、スライダ6とバルブシャフト124とを接続している。ワイヤー126は、スライダ6の移動によって発生する引張力によってバルブシャフト124を回転させる。
【0030】
一実施形態では、図2に例示するように、ワイヤー126は、本体部34の一方側部38に接続されている。ワイヤー126が一方側部38に接続される接続ポイントPは、凹部44よりも径方向D2の外側に位置している。つまり、接続ポイントPは付勢力F3が作用する位置よりも径方向D2の外側に位置している。
【0031】
一実施形態では、ワイヤー126は、スライダ6が基準位置よりも軸線方向D1の一方側に移動するとバルブシャフト124を一方向に回転させるように構成されている。さらに、ワイヤー126は、スライダ6が軸線方向D1の他方側に移動するとバルブシャフト124を一方向とは反対側の方向に逆回転させるように構成されている。そして、バルブシャフト124は、一方向に回転することでバルブ122を閉弁させ、且つ逆回転することでバルブ122を開弁させるように構成されている。
【0032】
(作用・効果)
一実施形態に係るガバナ装置1の作用・効果について説明する。ベアリング2は、クランク軸105の表面107と内輪12の内周面13との間に潤滑油が継続的に供給されていなくても、クランク軸105に対して摺動可能である。つまり、ガバナ装置1は、ベアリング2をクランクケース104以外の筐体に収容させることができる。一実施形態によれば、ベアリング2は、リコイルケーシング120に収容されているので、汎用エンジン100のクランクケース104の大型化を抑制して、汎用エンジン100にガバナ装置1を設けることができる。
【0033】
さらに、一実施形態によれば、ガバナ力F2の作用方向と付勢力F3の作用方向とは軸線方向D1において互いに反対向きであるため、スライダ6の移動を安定させることができる。スライダ6の移動が安定することで、クランク軸105の回転数に応じて決定されるバルブ122の開度を高精度に調整することができる。つまり、燃焼室103に供給する吸気A1の量が正確に調整される。よって、汎用エンジン100の回転数の調整精度を向上させることができる。
【0034】
一実施形態によれば、ガバナ力F2の作用方向は、付勢力F3の作用方向に対して傾斜していない。このため、スライダ6に対して所望のガバナ力を作用させ、スライダ6の移動量のばらつきを抑制することができる。また、ガバナ力F2の作用方向を付勢力F3の作用方向に対して傾斜させる場合と比較して、ガバナ装置1の組立を容易化することできる。
【0035】
一実施形態によれば、ベアリング2が転がり軸受であるので、フライウェイト4がベアリング2を押圧した際に、クランク軸105に対して内輪12を摺動させることでベアリング2を軸線方向D1の一方側にスムーズに移動させることができる。また、外輪14が突出部36に固定されているので、スライダ6に対してガバナ力F2を作用させ、スライダ6をベアリング2の移動とともに軸線方向D1の一方側に移動させることができる。このように、ベアリング2(転がり軸受)をクランク軸105に配置するだけで、スライダ6に対してガバナ力F2を容易に作用させることができる。
【0036】
一実施形態によれば、アーム部18の先端部28に凸部20が設けられることで、凸部が設けれていない場合と比較して、押圧力F1をベアリング2に効率的に伝達することができる。
【0037】
一実施形態では、軸線方向D1におけるスライダ6の位置に応じて、バルブ122の開度を調整していたが、本開示はこの形態に限定されない。空燃比調整手段10は、軸線方向D1におけるスライダ6の位置に応じて、汎用エンジン100の燃焼室103内の空燃比を調整可能に構成されるのであれば、特に限定されない。
【0038】
一実施形態では、フライウェイト4がベアリング2の内輪12を直接押圧していたが、本開示はこの形態に限定されない。図4は、幾つかの実施形態に係るガバナ装置1の構成を概略的に示す図である。幾つかの実施形態では、図4に例示するように、ガバナ装置1は、ベアリング2よりも軸線方向D1の他方側にクランク軸105に摺動可能に配置される中間材50をさらに含む。フライウェイト4は、中間材50を介して、内輪12を軸線方向D1の一方側に押圧するように構成されている。
【0039】
図4に例示する形態では、中間材50は、クランク軸105を外周から囲うリングであり、大径部52と、小径部54と、を含む。大径部52は、小径部54よりも肉厚である。また、大径部52は、小径部54よりも軸線方向D1の他方側に位置する。大径部52は、中間材50の軸線方向D1の他方側の端面56を含む。この端面56は、内輪12の端面30よりも面積が大きい。中間材50は、端面56が凸部ライン32上に位置するように、クランク軸105に配置されている。このような構成によれば、肉厚の薄い内輪12であっても、フライウェイト4で容易に押圧することができる。
【0040】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0041】
[1]本開示に係るガバナ装置(1)は、
汎用エンジン(100)の回転数を調整するためのガバナ装置であって、
前記汎用エンジンのクランク軸(105)に摺動可能に配置されるベアリング(2)と、
前記クランク軸の回転数に応じた押圧力(F1)で前記ベアリングを前記クランク軸の軸線方向(D1)の一方側に押圧するように構成されるフライウェイト(4)と、
前記軸線方向に移動可能に前記ベアリングに接続されるスライダ(6)と、
前記スライダの前記軸線方向の一方側の端面(42)に接続され、前記スライダを前記軸線方向の他方側へと付勢するための付勢部材(8)と、
前記軸線方向における前記スライダの位置に応じて、前記汎用エンジンの燃焼室(103)内の空燃比を調整可能に構成される空燃比調整手段(10)と、を備える。
【0042】
ベアリングは、潤滑油が継続的に供給されていなくても、クランク軸に対して摺動可能である。上記[1]に記載の構成によれば、ガバナ装置は、ベアリングをクランクケース以外の筐体に収容させることができる。よって、汎用エンジンの大型化を抑制して、汎用エンジンにガバナ装置を設けることができる。
【0043】
さらに、上記[1]に記載の構成によれば、フライウェイトがベアリングをクランク軸の軸線方向の一方側に押圧すると、スライダには軸線方向の一方側に向かうガバナ力が作用する。一方で、付勢部材がスライダの軸線方向の一方側の端面に接続されているので、スライダには軸線方向の他方側に向かう付勢力が作用する。ガバナ力の作用方向と付勢力の作用方向とは軸線方向において互いに反対向きであるため、スライダの移動を安定させることができる。このため、軸線方向におけるスライダの位置に応じた空燃比調整手段による空燃比の調整精度を高めることができる。よって、汎用エンジンの回転数の調整精度を向上させることができる。
【0044】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記ベアリングは、前記クランク軸の表面(107)に摺動する内周面(13)を含む内輪(12)を有し、
前記フライウェイトは、前記内輪を前記軸線方向の一方側に押圧するように構成されている。
【0045】
上記[2]に記載の構成によれば、ベアリングを軸線方向の一方側にスムーズに移動させることができる。
【0046】
[3]幾つかの実施形態では、上記[2]に記載の構成において、
前記ベアリングよりも前記軸線方向の他方側に前記クランク軸の前記表面に摺動可能に配置される中間材(50)をさらに備え、
前記フライウェイトは、前記中間材を介して、前記内輪を前記軸線方向の一方側に押圧するように構成されている。
【0047】
上記[3]に記載の構成によれば、中間材が配置されていることで、肉厚の薄い内輪であっても。フライウェイトで容易に押圧することができる。
【0048】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]から[3]の何れか1つに記載の構成において、
前記ベアリングは、前記クランク軸の表面(107)に摺動する内周面(13)を含む内輪(12)と、前記内輪の径方向(D2)の外側に配置される外輪(14)と、前記内輪と前記外輪との間に設けられた転動体(16)と、を有し、
前記スライダは、前記ベアリングよりも前記軸線方向の一方側に位置する本体部(34)と、前記本体部から前記軸線方向の他方側に突出する突出部(36)と、を有し、
前記外輪が前記突出部に固定されている。
【0049】
上記[4]に記載の構成によれば、フライウェイトがベアリングをクランク軸の軸線方向の一方側に押圧すると、ベアリングをクランク軸の軸線方向の一方側に移動させるとともに、スライダを軸線方向の一方側に移動させる。このため、内輪、外輪、及び転動体を有するベアリングをクランク軸に配置するだけで、スライダに対して軸線方向の一方側に向かうガバナ力を容易に作用させることができる。
【0050】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]から[4]の何れか1つに記載の構成において、
前記汎用エンジンは、前記クランク軸に回転力を付与可能なリコイルスタータ(116)であって、前記クランク軸に設けられた駆動プーリ(118)を収容するリコイルケーシング(120)を含むリコイルスタータを含み、
前記ベアリングは、前記リコイルケーシングに収容されている。
【0051】
ベアリングは、潤滑油が継続的に供給されていなくても、クランク軸に対して摺動可能である。上記[5]に記載の構成によれば、ベアリングは、リコイルケーシングに収容されているので、汎用エンジンの大型化を抑制して、汎用エンジンにガバナ装置を設けることができる。
【0052】
[6]幾つかの実施形態では、上記[1]から[5]の何れか1つに記載の構成において、
前記フライウェイトは、基端部(24)に形成される回動中心(C)を中心として回動可能に構成され、前記基端部から前記クランク軸に向かって延びるアーム部(18)と、前記アーム部の先端部(28)から前記軸線方向の一方側に突出する凸部(20)と、を含む。
【0053】
上記[6]に記載の構成によれば、凸部が設けれていない場合と比較して、フライウェイトの押圧力をベアリングに効率的に伝達することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 ガバナ装置
2 ベアリング
4 フライウェイト
6 スライダ
8 付勢部材
10 空燃比調整手段
12 内輪
13 内輪の内周面
14 外輪
16 転動体
18 アーム部
20 凸部
22 ウェイト部
24 アーム部の基端部
26 孔
28 アーム部の先端部
34 本体部
36 突出部
42 スライダの端面
44 凹部
50 中間材
100 汎用エンジン
102 シリンダ
103 燃焼室
104 クランクケース
105 クランク軸
106 燃料タンク
107 クランク軸の表面
108 エアクリーナ
110 キャブレータ
112 インシュレータ
114 マフラ
116 リコイルスタータ
118 駆動プーリ
119 ツメ
120 リコイルケーシング
122 バルブ
124 バルブシャフト
126 ワイヤー
A1 吸気
A2 排気
C 回動中心
D1 軸線方向
D2 径方向
D3 周方向
F1 押圧力
F2 ガバナ力
F3 付勢力
O 軸線
P 接続ポイント
R1 第1領域
R2 第2領域
図1
図2
図3
図4