(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118760
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ドリルガイドスリーブ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/17 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
A61B17/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025225
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】513083761
【氏名又は名称】株式会社イトー医科器械
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100118094
【弁理士】
【氏名又は名称】殿元 基城
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 薫央
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏秀
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 貴博
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL12
4C160LL27
4C160LL29
4C160LL44
(57)【要約】
【課題】施術を容易にするドリルガイドスリーブを提供する。
【解決手段】ガイド軸11と、ガイド軸11の一端側にある先端12と、ガイド軸11の他端側にある後端13と、を有し、ガイド軸11に沿って後端13から先端12に向けて細長部材を案内する案内路16を形成する、X線透過性を有するガイド筒10と、ガイド筒10に配置され、ガイド軸11に直交する少なくとも一の直交面内に配置されるX線不透過性を有するマーカーであって、ガイド軸11と所定の軸とが一致しているか否かをX線透視画像上で判別させるマーカー40、50と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド軸と、前記ガイド軸の一端側にある先端と、前記ガイド軸の他端側にある後端と、を有し、前記ガイド軸に沿って前記後端から前記先端に向けて細長部材を案内する案内路を形成する、X線透過性を有するガイド筒と、
前記ガイド筒に配置され、前記ガイド軸と所定の軸とが一致しているか否かをX線透視画像上で判別させる一致判定構造と、を有するドリルガイドスリーブ。
【請求項2】
前記一致判定構造は、前記ガイド軸に直交する少なくとも一の直交面内に配置されるX線不透過性を有するマーカーである、請求項1記載のドリルガイドスリーブ。
【請求項3】
前記マーカーは、前記ガイド軸に直交する少なくとも一の直交面内であって前記ガイド筒の内部に配置され、所定の基準長さ分延びる少なくとも二つのピン状部材である、請求項2記載のドリルガイドスリーブ。
【請求項4】
前記マーカーは、
同一の前記直交面内に配置され、前記ガイド軸を通る第一の方向に沿って前記ガイド軸に関して対称に配置される第一の一対のマーカーと、
前記第一の一対のマーカーが配置される前記直交面よりも前記後端側の前記直交面内に配置され、前記第一の方向に直交する第二の方向に沿って前記ガイド軸に関して対称に配置される第二の一対のマーカーと、を有する、請求項3記載のドリルガイドスリーブ。
【請求項5】
前記マーカーは、
同一の前記直交面内に配置され、前記ガイド軸を通る直交する二方向に沿って配置される、第一の一対のマーカーと、
前記第一の一対のマーカーが配置される前記直交面よりも前記後端側の前記直交面内に配置され、前記二方向に沿って配置され、かつ各前記第一の一対のマーカーと前記ガイド軸に関して対称に配置される、第二の一対のマーカーと、を有する、請求項3記載のドリルガイドスリーブ。
【請求項6】
前記マーカーは、前記ガイド軸に直交する少なくとも一の直交面内であって前記ガイド筒外に配置され、所定の基準長さ分延びる少なくとも二つのピン状部材のマーカーである、請求項2記載のドリルガイドスリーブ。
【請求項7】
前記マーカーは、前記ガイド軸と同軸を有するリング状部材のマーカーである、請求項2記載のドリルガイドスリーブ。
【請求項8】
前記一致判定構造は、前記ガイド筒の前記先端から前記後端の少なくとも一部に前記ガイド軸に平行に形成され、前記ガイド軸方向視において前記ガイド筒の周縁から前記案内路に向って形成される四つの切欠きである、請求項1記載のドリルガイドスリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリルガイドスリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
大腿骨、上腕骨、脛骨などの四肢管状骨骨折をはじめとする骨折に施される髄内釘固定手術において、髄内釘回旋防止のためにロッキングスクリューが用いられる。このスクリューは、ドリルで骨を穿孔して下穴を形成し、この下穴を介して髄内釘の挿入口に締結される。ドリルによる穿孔の際、ドリルの軸方向を案内するためドリルの軸方向に一致する方向に貫通したドリルガイドスリーブ(ターゲットデバイス)が用いられる。穿孔される骨や髄内釘は目視できないため、施術者は、穿孔箇所のX線透視画像を確認しながら、ドリルガイドスリーブの軸の位置や向きなどを調整し穿孔位置を決定し、施術する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドリル軸の角度がずれると、骨に形成される孔軸は髄内釘の挿入口の軸に対してずれてしまう。このような孔にスクリューが締結されると、スクリューが髄内釘に接触してしまい、スクリューが術中または術後に破損するおそれもある。このため、ドリルガイドスリーブによる穿孔位置の決定は重要である。
【0005】
上述したとおり、X線透視画像を確認しながらドリルガイドスリーブの姿勢が決定されるが、X線は金属を透過しないことから、金属部分は画像上では黒く表れ、確認が困難である。このため、金属からなるドリルの配置を決定することは経験数に依存する技量や感覚を要するものであった。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、施術を容易にするドリルガイドスリーブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るドリルガイドスリーブは、上述した課題を解決するために、ガイド軸と、前記ガイド軸の一端側にある先端と、前記ガイド軸の他端側にある後端と、を有し、前記ガイド軸に沿って前記後端から前記先端に向けて細長部材を案内する案内路を形成する、X線透過性を有するガイド筒と、
前記ガイド筒に配置され、前記ガイド軸と所定の軸とが一致しているか否かをX線透視画像上で判別させる一致判定構造と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るドリルガイドスリーブにおいては、施術を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ドリルガイドスリーブの一実施形態を示す図。
【
図2】ドリルガイドスリーブの先端側からガイド軸に沿って示す図。
【
図5】ドリルガイドスリーブが適切に配置された場合のX線透視画像を示す図。
【
図6】ドリルガイドスリーブが適切に配置されていない場合のX線透視画像を示す図。
【
図8】ドリルガイドスリーブに取り付けられる拡大マーカーを示す説明図。
【
図10】変形例としてのドリルガイドスリーブのガイド筒を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るドリルガイドスリーブの実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、ドリルガイドスリーブ1の一実施形態を示す図である。
図2は、ドリルガイドスリーブ1の先端12側からガイド軸11に沿って示す図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4は、
図3のIV-IV線に沿う断面図である。
【0012】
本実施形態においては、ドリルガイドスリーブが横止スクリューとしてのロッキングスクリューを挿入するための孔を骨に形成する際に使用される例を用いて説明する。本発明に係るドリルガイドスリーブは、この他にも、骨折治療で、中空スクリューを骨内に挿入する、例えば鎖骨骨折、烏口突起固定、舟状骨骨折、仙腸関節固定術などの施術にも用いられ得る。
【0013】
ドリルガイドスリーブ1は、ガイド筒10と、アウタースリーブ20と、グリップ30と、一対の先端側ピン40と、一対の後端側ピン50と、を有する。
【0014】
ガイド筒10は、X線透過性を有し、径に対して軸方向に長い筒状部材である。ガイド筒10は、ガイド軸11の一端側にある先端12と、ガイド軸11の他端側にある後端13と、を有する。ガイド筒10は、ガイド軸11に沿って、後端13側を入口、先端12側を出口として、後端13から先端12にドリル、ガイドピンなどの細長部材を案内する案内路16を形成する。案内路16は、例えば1.2から2mm程度の直径を有し、ドリルなどをガイド軸11方向に案内する。案内路16は、ドリルなどの挿入時の作業性を考慮して、後端13側が漏斗状に広くなるように形成されている。
【0015】
ガイド筒10は、耐熱性を有する医療用途に適した樹脂材料であり、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニルスルホン(PPSU)を使用することができる。
【0016】
アウタースリーブ20は、ガイド筒10の外周を覆う外装部材である。アウタースリーブ20は、後端13側に、グリップ固定部21を有する。アウタースリーブ20は、ガイド筒10と同様にX線透過性を有し、ガイド筒10と同様の材料からなる。アウタースリーブ20は、ガイド筒10を着脱可能に支持してもよい。
【0017】
グリップ30は、アウタースリーブ20のグリップ固定部21にボルト31などにより固定されている。グリップ30は、施術者がドリルガイドスリーブ1を使用する際などに把持される。グリップ30は、特に材料は問わないが、所要の強度を有する、例えばSUS630などの金属などからなる。
【0018】
先端側ピン40および後端側ピン50は、ガイド軸11(ドリルなどの細長部材の軸など)と所定の軸とが一致しているか否かをX線透視画像上で判別させる、一致判定構造の一例としてのマーカーである。一対の先端側ピン40および一対の後端側ピン50は、ガイド筒10の内部に、例えばガイド筒10の樹脂成形時に埋め込まれるようにして配置される。先端側ピン40および後端側ピン50は、ガイド軸11に直交する二つの直交面内で、等しい所定の基準長さ分延びた二つのピン状部材である。具体的には、先端側ピン40および後端側ピン50は、径に対して長さ方向が長い、同一形状の二つの一対の円筒形状のピン状部材である。ガイド筒10はアウタースリーブ20により覆われているため、先端側ピン40および後端側ピン50は、ドリルガイドスリーブ1の外観上は視認されない。先端側ピン40および後端側ピン50は、X線不透過性を有する材料からなり、例えばSUS304などの金属からなる。
【0019】
二つのピンからなる先端側ピン40(第一の一対のマーカー)は、先端12側のガイド軸11に対する直交面内の、ガイド軸11を通る第一の方向に沿ってガイド軸11に関して対称に配置される。
図3においては、先端側ピン40は、第一の方向を図の手前・奥方向に沿う方向として、手前・奥方向に沿って配置されている。
図4においては、先端側ピン40は、第一の方向を図の左右方向として、左右方向に沿って配置されている。
【0020】
二つのピンからなる後端側ピン50(第二の一対のマーカー)は、先端側ピン40が配置される直交面よりも後端13側のガイド軸11に対する直交面内の、ガイド軸11を通る第一の方向に直交する第二の方向に沿って配置される。
図3においては、後端側ピン50は、第二の方向を図の上下方向に沿う方向として、上下方向に沿って配置されている。
【0021】
次に、ドリルガイドスリーブ1の作用について説明する。
【0022】
ロッキングスクリューを挿入口に挿入するためには、挿入口へとつながる孔を骨に形成する必要がある。この穿孔対象の骨への穿孔のために、ドリルガイドスリーブ1が施術箇所に設置される。このとき、髄内釘に形成されているロッキングスクリューなどのスクリューの挿入口の軸方向と、案内路16に挿入されたドリルの軸方向、すなわちガイド軸11の方向とを一致させることにより、適切に穿孔することが求められる。髄内釘の挿入口は目視できないため、X線透視画像を用いて挿入口の軸に対するドリルガイドスリーブ1の位置や傾き、姿勢を調整し、ガイド軸11の軸方向を一致させる。画像上では、X線を透過しない髄内釘およびマーカーは黒く表れる。一方、X線を透過する骨や髄内釘のスクリューの挿入口、ガイド筒10、アウタースリーブ20は、白く、または髄内釘や先端側ピン40、後端側ピン50に対して明色で表れる。
【0023】
髄内釘のスクリューの挿入口の軸方向に直交する、髄内釘の長さ方向におけるドリルガイドスリーブ1の適切な位置は、施術対象者(患者)の前後方向のX線透視画像により確認が可能である。しかしながら、スクリューの挿入口の軸方向に沿う、施術対象者の側方からのX線透視画像については、髄内釘とドリルガイドスリーブ1とが重なり合うため、X線透視画像上では黒く写り、適切な位置を判断することが困難となるのが一般的である。
【0024】
そこで、本実施形態におけるドリルガイドスリーブ1は、ガイド筒10およびアウタースリーブ20がX線透過性を有する材料からなること、および先端側ピン40および後端側ピン50を有することにより、ガイド軸11を挿入口の軸と好適に一致させることができる。すなわち、先端側ピン40および後端側ピン50はガイド軸11に対して直交して配置され、かつ同一長さを有するため、ガイド軸11と挿入口の軸とが一致しているか否かを画像上の先端側ピン40および後端側ピン50の長さに基づいて容易に判断させることができる。
【0025】
具体的には、まず、ドリルガイドスリーブ1がX線透視画像を確認しながら施術対象箇所に設置される。その後、ドリルをガイドするためのガイドピン(ガイドワイヤ)を案内路16に挿入し、先端12から突出したガイドピンが画像上で挿入口の中心位置に対応する骨上の位置に接触するよう、ガイドピンの先端位置を調整する。ピンの先端位置が適切に配置されると、ピンの軸方向、すなわちこれとほぼ一致するガイド軸11が挿入口の軸に対して一致し傾いていないかどうかを、画像上の先端側ピン40および後端側ピン50を用いて確認しながら調整する。
【0026】
ここで、
図5は、ドリルガイドスリーブ1が適切に配置された場合のX線透視画像を示す図である。
図6は、ドリルガイドスリーブ1が適切に配置されていない場合のX線透視画像を示す図である。
図5および6は、髄内釘3のスクリューの挿入口4の軸方向視の画像である。
【0027】
髄内釘3のスクリューの挿入口4の軸に対してガイド軸11が一致していると、
図5に示すように、画像上では、明るく写る挿入口4と重畳する先端側ピン40および後端側ピン50の長さが黒く均一に表れることになる。一方、髄内釘3のスクリューの挿入口4の軸に対してガイド軸11が一致していない場合には、
図6に示すように、ガイド軸11の傾きに応じて先端側ピン40および後端側ピン50の長さが不均一に表れる。例えば、ガイド軸11が挿入口4の軸に対して
図6の右下方に傾斜している場合には、先端側ピン40が傾き、左右の先端側ピン40が不均一に表れる。このように、施術者は、先端側ピン40および後端側ピン50の長さが画像上均一に表れているか否かにより、ガイド軸11が適切に配置されているか否か、すなわちガイドピンが適切に配置されているか否かを容易に確認することができる。
【0028】
ガイドピンが適切に配置された後、ガイドピンを受け入れる軸孔を有するドリルやリーマなどを用いて、骨を穿孔する。その後、スクリューを穿孔された骨の孔に沿って挿入し、髄内釘の挿入口にねじ込む。
【0029】
このような本実施形態におけるドリルガイドスリーブ1は、施術者の技量や経験に左右される作業を、簡易な構造を有するドリルガイドスリーブ1により容易に行わせることができる。
【0030】
なお、先端側ピン40および後端側ピン50は、上述したとおり画像上で黒く表れることによりその様子を確認することができるが、術野から離れた場合には先端側ピン40および後端側ピン50は小さく、視認性が悪くなるため施術者に認識させることが困難となるおそれがある。この場合、オプションとして、先端側ピン40および後端側ピン50に代えて、拡大マーカーを用いてもよい。
【0031】
図7は、拡大マーカー60を示す外観図である。
図8は、ドリルガイドスリーブ1に取り付けられる拡大マーカー60を示す説明図である。
【0032】
拡大マーカー60は、ガイド軸11に直交する一の直交面内であってガイド筒10外に配置される、X線不透過性を有するマーカーの一例である。拡大マーカー60は、本体61と、4本のピン62、63と、リング65と、を有する。
【0033】
本体61は、ガイド筒10同様のX線透過性を有する材料からなり、外径に比べて高さの小さい円筒状(ドーナツ状)を有する。
【0034】
ピン62、63は、先端側ピン40および後端側ピン50同様、ガイド軸11とドリルなどの細長部材の軸などとが一致しているか否かをX線透視画像上で判別させるマーカーである。ピン62、63は、先端側ピン40および後端側ピン50同様の構成を有するピン状部材であり、本体61の中心軸に直交する所定の直交面内に配置される、第一の一対のピン62と、第二の一対のピン63と、である。第一の一対のピン62は、中心軸を通る第一の方向(
図7、8のほぼ左右方向)に沿って本体61の中心軸に関して対称に配置される、二つのピンである。第二の一対のピン63は、第一の方向に直交する第二の方向(
図7、8のほぼ上下方向)に沿って本体61の中心軸に関して対称に配置される、二つのピンである。すなわち、ピン62、63は、周方向に90度の間隔を空けて均等に配置されている。
【0035】
リング65は、本体61の外径よりも小さく内径よりも大きい径を有するリング状部材であり、いわゆるOリングである。リング65は、ピン62、63同様の材料からなる。
【0036】
拡大マーカー60は、
図8に示すように、ガイド筒10の後端13側に本体61の中心軸をガイド軸11に一致させて固定される。ドリルガイドスリーブ1が髄内釘のスクリューの挿入口に配置された際に、髄内釘よりも外側に4本のピン62、63およびリング65が位置し、X線透視画像上で視認されるように、拡大マーカー60の寸法、ピン62、63およびリング65の寸法は髄内釘の幅よりも大きく設定される。
【0037】
拡大マーカー60が取り付けられたドリルガイドスリーブ1の使用時においては、拡大マーカー60は、髄内釘の幅方向外側であって、骨と重畳する位置に配置されるため、画像上で明るく写る骨と重畳されて黒く表れることになる。このため、先端側ピン40および後端側ピン50が髄内釘と重畳することにより画像上で視認しづらい場合には、拡大マーカー60を取り付けることにより、先端側ピン40および後端側ピン50に代えてピン62、63で適切にドリルガイドスリーブ1の姿勢を確認でき、ガイドピン、ドリルの骨への配置、姿勢の調整を容易に行わせることができる。
【0038】
以上説明した、先端側ピン40および50、拡大マーカー60のピン62、63、リング65は、ガイド軸11とドリルなどの軸とが一致しているか否かをX線透視画像上で確認可能なマーカーの一例である。このため、少なくともガイド軸11の姿勢をX線透視画像上で認識させることができれば、マーカーが種々の態様で配置されていてもよい。
【0039】
すなわち、マーカーが、ガイド軸11に直交する少なくとも一の直交面内であってガイド筒10の内部に配置され、所定の基準長さ分延びる少なくとも二つのピン(ピン状部材のマーカー)であればよい。例えば、ピンは、少なくとも二つあればガイド軸11の傾きを認識できるため、
図9(a)、(b)に示すように、二つのピンが、同一の直交面内または先端12側および後端13側の二つの直交面内に配置されていてもよい。また、二つのピンは、
図9(a)、(b)に示すように、ガイド軸方向視において同一直線上に配置されていてもよいし、
図9(c)に示すように直交する二方向に沿って配置されていてもよい。
【0040】
また、ドリルガイドスリーブ1の姿勢を判別させるためにはピンが直交する二方向に沿って延びた四つのピンからなることがより好ましいが、四つのピンは
図9(d)に示すように同一直交面内に配置されていてもよいし、
図9(e)に示すように二つの直交面内に配置されていてもよいし、三つ、四つの直交面内に配置されていてもよい。
【0041】
さらに、
図9(f)に示すように、ピンの延びる方向はガイド軸11を通る直線上である必要はなく、少なくとも二つの等しい長さの一対のピンが任意の箇所に配置されていてもよい。さらにまた、ガイド筒10の内部にリング65のようなリング状のマーカーを有していてもよい。ピンの数は、4つに限らずそれ以上有していてもよい。
【0042】
拡大マーカー60のリング65は省略してもよい。また、拡大マーカー60のピン62、63の数やピン62、63が配置される直交面の数はこれに限らない。また、複数の拡大マーカー60がドリルガイドスリーブ1に取り付けられるようにしてもよい。
【0043】
また、一致判定構造が、X線不透過性を有するマーカーである例を用いて説明したが、これに代えて、ガイド筒に形成される四つの切欠きであってもよい。ここで、
図10は変形例としてのドリルガイドスリーブのガイド筒110を示す図であり、(a)は外観図、(b)は
図10(a)のb-b線に沿う断面図、(c)は
図10(a)のc-c線に沿う断面図である。
【0044】
切欠き140は、先端112から後端113の全域に亘って、ガイド軸に平行に四つ形成されている。また、切欠き140は、ガイド軸方向視において、ガイド筒110の周縁110aから案内路116に向って、案内路116の手前まで(案内路116とは非接続に)形成される。ガイド軸方向視においては、ガイド筒110の切欠き140は十字方向に沿って形成されており、挿入口の軸とガイドピンの軸とが一致している場合には、X線透視画像上で全ての切欠き140は同一の矩形状に視認される。具体的には、X線は切欠き140を通過するため、ガイド筒110の切欠き140以外の領域に比べて明るく写ることになる。この4つの切欠き140が、均一な明るさで均一な矩形として認識された場合には、ガイド軸(ガイドピンの軸)と挿入口の軸とが一致していると判定できる。
【0045】
このガイド筒110を備えるドリルガイドスリーブも同様に、施術者の技量や経験に左右される作業を、簡易な構造を有するドリルガイドスリーブにより容易に行わせることができる。
【0046】
なお、切欠き140は、先端112から後端113の全域に亘って形成される必要はなく、X線透視画像上で明暗が区別可能であれば、ガイド軸方向の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、特許請求の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 ドリルガイドスリーブ
10、110 ガイド筒
11 ガイド軸
12、112 先端
13、113 後端
16、116 案内路
20 アウタースリーブ
40 先端側ピン
50 後端側ピン
61 本体
62、63 ピン
65 リング
140 切欠き