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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118762
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】X線厚み測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 15/02 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
G01B15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025227
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】小林 章宏
【テーマコード(参考)】
2F067
【Fターム(参考)】
2F067AA27
2F067BB11
2F067EE04
2F067EE13
2F067FF06
2F067GG04
2F067HH04
2F067JJ03
2F067KK06
2F067LL00
2F067NN03
2F067PP03
2F067PP11
2F067PP19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】校正時間の短縮と校正精度の信頼性の向上とを図ることができるX線厚み測定装置を提供する。
【解決手段】X線厚み測定装置は、X線発生器と、X線発生器から照射されたX線が入射し、入射したX線の強度に応じた検出信号を出力するX線検出部と、X線発生器とX線検出部との間に設けられ、複数の基準板と、複数の基準板のそれぞれに対して設けられ、X線発生器から照射されたX線が透過する位置に、基準板を移動可能な第1の移動部とを有する校正装置と、校正装置に設けられた第1の加速度センサと、X線発生器、X線検出部、第1の移動部、および第1の加速度センサに電気的に接続され、X線検出部から出力された検出信号の値と、測定対象物の厚みとの関係を規定する検量線のデータと、複数の基準板のそれぞれの厚みのデータとが格納されたコントローラとを備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射可能なX線発生器と、
前記X線発生器から照射された前記X線が入射し、入射した前記X線の強度に応じた検出信号を出力可能なX線検出部と、
前記X線発生器と、前記X線検出部と、の間に設けられ、複数の基準板と、前記複数の基準板のそれぞれに対して設けられ、前記X線発生器から照射された前記X線が透過する位置に、前記基準板を移動可能な第1の移動部と、を有する校正装置と、
前記校正装置に設けられた第1の加速度センサと、
前記X線発生器、前記X線検出部、前記第1の移動部、および前記第1の加速度センサに電気的に接続され、前記X線検出部から出力された検出信号の値と、測定対象物の厚みとの関係を規定する検量線のデータと、前記複数の基準板のそれぞれの厚みのデータと、が格納されたコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記基準板を透過したX線が前記X線検出部に入射することで、前記X線検出部から出力された検出信号の値と、前記X線が透過した前記基準板の厚みのデータと、を用いて前記検量線のデータを校正可能であり、
前記第1の加速度センサから出力された検出信号の値と、予め求められた第1の閾値と、に基づいて、前記X線が透過する位置にある前記基準板の振動が収束したと判定した場合には、前記検量線のデータの校正を開始するX線厚み測定装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記検量線のデータの校正の開始後に、前記X線が透過する位置にある前記基準板の振動が増加したと判定した場合には、前記検量線のデータの校正を中止する請求項1記載のX線厚み測定装置。
【請求項3】
前記X線発生器、前記X線検出部、および前記校正装置が設けられるフレームと、
前記X線発生器、前記X線検出部、および前記フレームの少なくともいずれかに設けられ、前記コントローラと電気的に接続された第2の加速度センサと、
をさらに備え、
前記コントローラは、前記第2の加速度センサから出力された検出信号の値と、予め求められた第2の閾値と、に基づいて、前記X線厚み測定装置に所定の大きさの外部振動が加えられたと判定した場合には、前記検量線のデータの校正を開始しない、または、前記検量線のデータの校正を中止する請求項1または2に記載のX線厚み測定装置。
【請求項4】
前記校正装置は、前記X線を遮蔽可能な遮蔽板と、前記X線が透過する位置に、前記遮蔽板を移動可能な第2の移動部と、
をさらに備え、
前記コントローラは、前記X線厚み測定装置に所定の大きさの前記外部振動が加えられたと判定した場合には、前記第2の移動部を制御して、前記X線が透過する位置に、前記遮蔽板を移動させる請求項3記載のX線厚み測定装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記X線厚み測定装置に所定の大きさの前記外部振動が加えられたと判定した場合には、前記X線発生器からの前記X線の照射を停止させる請求項3記載のX線厚み測定装置。
【請求項6】
前記校正装置に設けられた温度センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記温度センサからの検出信号の値に基づいて、前記複数の基準板のそれぞれの厚みのデータを補正する請求項1または2に記載のX線厚み測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線厚み測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、24時間稼働している鉄や非鉄などの圧延ラインにおいて、圧延された板材の厚みをオンラインで測定するX線厚み測定装置がある。この様なX線厚み測定装置は、測定対象である板材にX線を照射するX線発生器と、板材を透過することで減衰したX線を検出するX線検出部とを備えている。
【0003】
ここで、X線検出部からの検出信号の値と、板材の厚みとの関係は非線形となる。そのため、X線厚み測定装置のコントローラには、X線検出部からの検出信号の値と、板材の厚みとの関係を規定する検量線のデータが予め格納されている。しかしながら、X線検出部からの検出信号の値は、外乱要因などによって変動する場合がある。そのため、X線厚み測定装置には、検量線を校正するために校正装置が設けられている。
【0004】
校正装置には、複数の基準板が設けられている。検量線の校正を行う際には、X線発生器から照射されたX線が透過する位置に、基準板を適宜選択して移動させる。この場合、X線が透過する位置に、厚みが異なる基準板を適宜選択して重ね合わせれば、検量線の複数の点を校正することができる。
【0005】
ところが、基準板を移動させると基準板が振動する。基準板が振動していると、基準板におけるX線の透過長が変化するので、校正精度の信頼性が低下することになる。そのため、一般的には、基準板の振動が収束することが予想される時間(見込み時間)の経過後に、校正を行う様にしている。
【0006】
しかしながら、基準板の振動が収束するまでの時間は、基準板の厚み(質量)により変化する。例えば、厚みの厚い(質量の大きい)基準板の振動が収束するまでの時間は、厚みの薄い(質量の小さい)基準板の振動が収束するまでの時間よりも長くなる。この場合、厚みの厚い基準板の振動が収束するまでの時間を用いて校正を行うと、校正時間が長くなる。厚みの薄い基準板の振動が収束するまでの時間を用いて校正を行うと、校正精度の信頼性が低下するおそれがある。
そこで、校正時間の短縮と、校正精度の信頼性の向上とを図ることができるX線厚み測定装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4-198708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、校正時間の短縮と、校正精度の信頼性の向上とを図ることができるX線厚み測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係るX線厚み測定装置は、X線を照射可能なX線発生器と、前記X線発生器から照射された前記X線が入射し、入射した前記X線の強度に応じた検出信号を出力可能なX線検出部と、前記X線発生器と、前記X線検出部と、の間に設けられ、複数の基準板と、前記複数の基準板のそれぞれに対して設けられ、前記X線発生器から照射された前記X線が透過する位置に、前記基準板を移動可能な第1の移動部と、を有する校正装置と、前記校正装置に設けられた第1の加速度センサと、前記X線発生器、前記X線検出部、前記第1の移動部、および前記第1の加速度センサに電気的に接続され、前記X線検出部から出力された検出信号の値と、測定対象物の厚みとの関係を規定する検量線のデータと、前記複数の基準板のそれぞれの厚みのデータと、が格納されたコントローラと、を備えている。前記コントローラは、前記基準板を透過したX線が前記X線検出部に入射することで、前記X線検出部から出力された検出信号の値と、前記X線が透過した前記基準板の厚みのデータと、を用いて前記検量線のデータを校正可能であり、前記第1の加速度センサから出力された検出信号の値と、予め求められた第1の閾値と、に基づいて、前記X線が透過する位置にある前記基準板の振動が収束したと判定した場合には、前記検量線のデータの校正を開始する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係るX線厚み測定装置のブロック図である。
図2】校正装置の外観を例示するための模式斜視図である。
図3図2における校正装置のA-A線方向の模式断面図である。
図4】移動部の動作を例示するための模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係るX線厚み測定装置100のブロック図である。
図1に示すように、X線厚み測定装置100は、例えば、X線発生器1、X線検出部2、フレーム3、X線電源4、回路部5、校正装置6、およびコントローラ7を備えている。
【0013】
X線発生器1は、回路部5を介して、X線電源4と電気的に接続されている。X線発生器1は、X線電源4から電力が供給されるとX線14を発生させる。X線発生器1は、発生させたX線14を、測定対象物200に照射する。測定対象物200は、例えば、鉄や非鉄などの金属を含む板材である。X線発生器1の種類には特に限定がない。例えば、X線発生器1は、固定陽極X線管、回転陽極X線管などとすることができる。図1に例示をしたX線発生器1は、固定陽極X線管である。以下においては、一例として、X線発生器1が固定陽極X線管である場合を説明する。
【0014】
X線発生器1は、例えば、X線管11、フィラメント12、およびターゲット13を有する。
X線管11は、例えば、内部の雰囲気を真空状態に維持可能な管状体とすることができる。フィラメント12、およびターゲット13は、X線管11の内部に設けられている。フィラメント12は、X線管11の一方の端部の近傍に設けられている。ターゲット13は、X線管11の他方の端部の近傍に設けられている。フィラメント12とターゲット13は、互いに対向している。フィラメント12、およびターゲット13は、例えば、タングステンを用いて形成される。例えば、フィラメント12は陰極とされる。例えば、ターゲット13は銅を用いて形成された陽極の端部に埋め込まれる。
【0015】
フィラメント12は、回路部5に設けられた加熱回路51に電気的に接続されている。フィラメント12、およびターゲット13は、回路部5に設けられた高圧回路52に電気的に接続されている。加熱回路51によりフィラメント12に電流が流れると、フィラメント12が加熱されて熱電子が発生する。高圧回路52により、加熱されたフィラメント12と、ターゲット13とに高圧電圧が印加されると、フィラメント12において発生した熱電子が加速されてターゲット13に衝突する。熱電子がターゲット13に衝突することでX線14が発生し、発生したX線14が測定対象物200に照射される。
【0016】
X線検出部2は、校正装置6を挟んで、X線発生器1と対向する位置に設けられている。例えば、X線発生器1、および校正装置6は、測定対象物200が搬送される位置の下方に設けることができる。例えば、X線検出部2は、測定対象物200が搬送される位置の上方に設けることができる。
【0017】
測定対象物200を透過したX線14は、X線検出部2に入射する。X線検出部2は、測定対象物200を透過することで減衰したX線14の強度に応じて、検出電圧、および検出電流の少なくともいずれかの値を検出信号として出力する。X線検出部2から出力された検出信号は、変換部21を介して、コントローラ7に入力される。変換部21は、例えば、AD変換器である。AD変換器である変換部21は、アナログ信号である検出信号をデジタル信号に変換して、コントローラ7に入力する。なお、変換部21は、必ずしも必要ではなく、コントローラ7において、検出信号をデジタル信号に変換してもよい。X線検出部2は、入射したX線14の強度を電気信号に変換できるものであれば特に限定はない。X線検出部2は、例えば、電離箱とすることができる。
【0018】
フレーム3は、例えば、基部31、アーム32、および支持部33を有する。基部31は、箱状を呈し、例えば、X線厚み測定装置100が設置される場所の床などに設けられる。アーム32は、箱状を呈し、基部31と対向する位置に設けられている。基部31と、アーム32との間には測定対象物200が搬送される空間が設けられている。支持部33は、柱状を呈し、一方の端部が基部31の一方の端部の近傍に接続されている。支持部33の他方の端部は、アーム32の一方の端部の近傍に接続されている。すなわち、支持部33は、アーム32を片持ち支持する。
【0019】
なお、一対の支持部33を設け、アーム32の両側の端部の近傍を支持することもできる。ただし、アーム32が片持ち支持されていれば、フレーム3、ひいてはX線厚み測定装置100の小型化を図ることができる。また、測定対象物200を搬送する装置の側方から、X線厚み測定装置100を測定対象物200を搬送する装置に設置することができる。そのため、X線厚み測定装置100の設置が容易となる。
【0020】
基部31の内部には、例えば、X線発生器1、回路部5、および校正装置6を設けることができる。アーム32の内部には、X線検出部2を設けることができる。アーム32が片持ち支持されている場合には、アーム32の自由端の近傍にX線検出部2を設けることができる。
【0021】
X線電源4は、例えば、フィラメント電源41、および高圧電源42を有する。フィラメント電源41は、フィラメント12を加熱して熱電子を発生させるために設けられている。高圧電源42は、フィラメント12において発生させた熱電子を加速させるために設けられている。例えば、高圧電源42の陽極側をターゲット13に電気的に接続し、高圧電源42の陰極側をフィラメント12に電気的に接続することができる。この場合、高圧電源42は、フィラメント12、またはターゲット13に電気的に接続することもできる。ただし、高圧電源42が、フィラメント12、およびターゲット13に電気的に接続されていれば、管電圧(加速電圧)を大きくすることができるので、発生するX線14の強度を大きくすることができる。X線電源4は、例えば、商用電源などの外部電源に電気的に接続される。
【0022】
回路部5は、加熱回路51、および高圧回路52を有する。加熱回路51は、X線電源4のフィラメント電源41と、X線発生器1のフィラメント12とを電気的に接続する。加熱回路51は、トランス51aを有する。トランス51aの一次側は、X線電源4のフィラメント電源41に電気的に接続されている。トランス51aの二次側は、X線発生器1のフィラメント12に電気的に接続されている。
【0023】
高圧回路52は、X線電源4の高圧電源42と、X線発生器1のフィラメント12およびターゲット13と、を電気的に接続する。高圧回路52は、トランス52a、昇圧回路52b、および昇圧回路52cを有する。トランス52aの一次側は、X線電源4の高圧電源42に電気的に接続されている。トランス52aの二次側は、X線発生器1のフィラメント12およびターゲット13に電気的に接続されている。昇圧回路52bは、トランス52aの二次側とフィラメント12との間に電気的に接続されている。昇圧回路52cは、トランス52aの二次側とターゲット13との間に電気的に接続されている。
【0024】
ここで、測定対象物200を透過したX線14の減衰量と、測定対象物200の厚みとの関係は非線形となる。そのため、X線検出部2からの検出信号の値と、測定対象物200の厚みとの関係を規定する検量線が予め求められている。そのため、X線検出部2からの検出信号の値を、検量線に適用すれば、測定対象物200の厚みを求めることができる。
【0025】
しかしながら、X線検出部2からの検出信号の値は、外乱要因などによって変動する場合がある。外乱要因は、例えば、X線発生器1を冷却する冷却媒体の温度変化、X線発生器1およびX線検出部2が設けられる雰囲気の温度変化や湿度変化、X線発生器1とX線検出部2との間への異物(例えば、水、油、スケールなど)の侵入などである。そのため、必要に応じて、あるいは定期的に、予め求められた検量線を校正する必要がある。
【0026】
校正装置6は、検量線を校正するために設けられている。校正装置6は、X線発生器1と、X線検出部2との間に設けられている。校正装置6は、例えば、厚みが異なる複数の基準板63を有することもできる。校正装置6による校正は、X線発生器1(校正装置6)と、X線検出部2との間に測定対象物200が無い時に行う。また、校正装置6による校正を行う際には、校正装置6の基準板63を、X線発生器1と、X線検出部2との間に移動させる。例えば、校正装置6の基準板63を、X線発生器1から照射されたX線14が透過する位置6aに移動させる。X線発生器1から照射されたX線14は、基準板63を透過してX線検出部2に入射する。基準板63の厚みは既知であるため、X線検出部2からの検出信号の値と、基準板63の厚みとの関係を求めることができる。以上の様な手順を、基準板63の厚みを変えて行えば、予め求められた検量線の複数の点を校正することができる。 なお、校正装置6の構成、作用、および効果に関する詳細は後述する。
【0027】
コントローラ7は、X線厚み測定装置100に設けられた各要素の動作を制御する。コントローラ7は、例えば、CPU(Central Processing Unit)や、GPU(Graphics Processing Unit)などの演算装置、および半導体メモリや、ハードディスクドライブなどの記憶装置を備えている。コントローラ7は、例えば、コンピュータである。コントローラ7の記憶装置には、制御プログラム、厚みの演算プログラム、検量線の校正プログラム、予め求められた検量線、基準板63やフレーム3の振動状態の判定に用いる閾値(第1の閾値、および第2の閾値の一例に相当する)、基準板63の厚みのデータなどが格納されている。制御プログラムは、例えば、X線厚み測定装置100に設けられた各要素の動作を制御するためのプログラムである。厚みの演算プログラムは、例えば、X線検出部2からの検出信号の値と、検量線とにより測定対象物200の厚みを演算するためのプログラムである。検量線の校正プログラムは、校正装置6を用いて校正を行う際に、検出部2からの検出信号の値と、基準板63の厚みとの関係を用いて、記憶装置に格納されている検量線を校正するためのプログラムである。
【0028】
また、コントローラ7は、外部の機器のコントローラ300と電気的に接続することができる。例えば、コントローラ300が圧延機の動作を制御する制御装置の場合には、コントローラ300は、コントローラ7により演算された測定対象物200の厚みに基づいて、圧延機の動作をフィードバック制御する。
なお、制御プログラム、厚みの演算プログラム、検量線の校正プログラム、および検量線には既知の技術を適用することができるので詳細な説明は省略する。
【0029】
次に、校正装置6についてさらに説明する。
図2は、校正装置6の外観を例示するための模式斜視図である。
なお、煩雑となるのを避けるために、図2においては校正装置6の外観のみを描いている。
図3は、図2における校正装置6のA-A線方向の模式断面図である。
図4は、移動部65の動作を例示するための模式斜視図である。
なお、煩雑となるのを避けるために、図4においては2つの移動部65のみを描いている。
【0030】
図2、および図3に示すように、校正装置6は、例えば、筐体61、透過窓62、基準板63、遮蔽板64、移動部65、回路部66、加速度センサ67、および温度センサ68を備えている。
【0031】
筐体61は、箱状を呈し、内部に、基準板63、遮蔽板64、移動部65、回路部66、および加速度センサ67(第1の加速度センサの一例に相当する)を収納する空間を有する。図2に示すように、筐体61の外観形状は、例えば、直方体とすることができる。ただし、筐体61の外観形状は直方体に限定されるわけではない。筐体61は、X線14を遮蔽可能な材料から形成することができる。X線14を遮蔽可能な材料は、例えば、鉛などである。この場合、筐体61は、鉄などの金属から形成された箱状体と、箱状体の内壁および外壁の少なくともいずれかを覆い、鉛などを含む遮蔽板と、を有するものとしてもよい。筐体61は、内部の雰囲気を維持可能な気密構造を有することができる。気密構造を有する筐体61の内部空間には、窒素ガスを充填することができる。
【0032】
透過窓62は、一対設けることができる。図2に示すように、X線発生器1からX線検出部2に向かう方向(X線14の照射方向)において、一対の透過窓62は、互いに対向する位置に設けられている。例えば、一方の透過窓62を、筐体61の、X線発生器1側の面に設けることができる。例えば、他方の透過窓62を、筐体61の、X線検出部2側の面に設けることができる。また、一対の透過窓62は、X線発生器1からX線検出部2に向かうX線14が通過する位置に設けられている。一対の透過窓62は、板状を呈し、X線14を透過可能な材料から形成することができる。X線14を透過可能な材料は、例えば、ベリリウムなどである。
【0033】
基準板63は、板状を呈し、測定対象物200の材料と同じ材料から形成することができる。基準板63は、複数設けることができる。基準板63の数には特に限定はないが、基準板63の数が多くなれば、検量線を校正する点を多くすることができる。そのため、検量線の精度や信頼性を向上させることができる。複数の基準板63の厚みは同じとすることもできるし、少なくとも1つの基準板63の厚みが他の基準板63の厚みと異なるものとすることもできる。異なる厚みを有する基準板63が設けられていれば。検量線を校正する点の間隔を任意に設定するのが容易となる。基準板63の厚みは、例えば、0.1mm以上、5mm以下の範囲で適宜選択することができる。
【0034】
X線発生器1からX線検出部2に向かう方向(X線14の照射方向)から見た場合に、基準板63の寸法は、X線14が基準板63に入射する領域の寸法(X線14のスポット径)よりも大きくすることができる。
【0035】
遮蔽板64は、板状を呈し、X線14を遮蔽可能な材料から形成することができる。X線14を遮蔽可能な材料は、例えば、鉛などである。遮蔽板64の厚みは、X線14が遮蔽可能であれば、特に限定はない。X線発生器1からX線検出部2に向かう方向(X線14の照射方向)から見た場合に、遮蔽板64の寸法は、例えば、透過窓62の寸法と同じか、透過窓62の寸法よりも大きくすることができる。
【0036】
移動部65は、複数設けることができる。移動部65は、基準板63および遮蔽板64のそれぞれに対して1つ設けることができる(第1の移動部および第2の移動部の一例に相当する)。図3、および図4に示すように、X線14が透過する位置6aと、X線14が透過する位置6aから離隔した位置(退避位置)6bとの間において、移動部65は、基準板63および遮蔽板64の位置を移動させる。
【0037】
移動部65は、例えば、駆動部65a、およびアーム65bを有する。
駆動部65aは、基準板63および遮蔽板64の位置を移動可能であれば特に限定はない。駆動部65aは、例えば、ソレノイド、エアシリンダ、ロータリーソレノイド、ロータリーエアシリンダ、ステッピングモータなどの制御モータなどとすることができる。図3、および図4に例示をした駆動部65aは、ロータリーソレノイドである。駆動部65aをロータリーソレノイドとすれば、駆動部65aの制御の容易化や、校正装置6の小型化を図ることができる。
【0038】
アーム65bは、板状を呈し、一方向に延びた形状を有する。アーム65bは、例えば、長方形の板状体とすることができる。アーム65bの一方の端部の近傍は、駆動部65aに接続されている。アーム65bの他方の端部の近傍には、基準板63または遮蔽板64が設けられている。基準板63が設けられるアーム65bは、例えば、X線14を透過可能な材料から形成することができる。X線14を透過可能な材料は、例えば、ベリリウムなどである。また、基準板63が設けられるアーム65bは、鉄などの金属から形成され、基準板63が設けられる位置にX線14が透過する孔を有することもできる。遮蔽板64が設けられるアーム65bは、基準板63が設けられるアーム65bと同じとすることもできるし、X線14の透過が抑制される材料や構成を有するものとすることもできる。
【0039】
図3、および図4に示すように、X線発生器1からX線検出部2に向かう方向(X線14の照射方向)において、複数のアーム65bのそれぞれは、互いに離隔した位置に設けられている。例えば、図4に示すように、複数の駆動部65a毎に駆動軸65a1の長さを変えることで、アーム65bの位置を変えることができる。また、アーム65bの駆動軸65a1への取り付け位置を変えたり、筐体61と駆動部65aとの間に厚みの異なるスペーサを設けたりすることで、アーム65bの位置を変えることができる。
【0040】
隣接するアーム65b同士の間の寸法は、基準板63の厚み、および遮蔽板64の厚みよりも大きい。そのため、X線14が透過する位置6aに複数の基準板63を選択的に移動させることができる。この様にすれば、校正の際に、複数の基準板63を組み合わせて用いることができるので、検量線の複数の点を校正することができる。
【0041】
また、基準板63を退避させることなく、遮蔽板64をX線14が透過する位置6aに移動させることができる。この場合、遮蔽板64は、最もX線発生器1側に設けられるアーム65b、および最もX線検出部2側に設けられるアーム65bの少なくともいずれかに設けることができる。この様にすれば、X線14が筐体61の内部に侵入するのを抑制したり、筐体61の内部に侵入したX線14が筐体61の外部に漏れるのを抑制することができる。
【0042】
回路部66は、例えば、筐体61の内部に設けることができる。回路部66には、複数の移動部65を個別的に制御する制御回路が設けられている。回路部66は、例えば、基板と、制御回路を構成する電気部品などを有している。回路部66は、複数の移動部65と、コントローラ7とに電気的に接続されている。
【0043】
ここで、移動部65により、基準板63をX線14が透過する位置6aに移動させると、アーム65bおよび基準板63に振動が発生する。基準板63が振動すると、基準板63が傾くので、基準板63におけるX線14の透過長が変化することになる。X線14の透過長が変化すると、X線14の減衰量が変化するので校正精度が低下することになる。そのため、一般的には、基準板63の振動が収束することが予想される時間(見込み時間)の経過後に、校正を行う様にしている。
【0044】
ところが、基準板63の振動が収束するまでの時間は、基準板63の厚み(質量)により変化する。例えば、厚みが5mmの基準板63の振動が収束するまでの時間は、厚みが0.1mmの基準板63の振動が収束するまでの時間よりも長くなる。この場合、厚みが5mmの基準板63の振動が収束するまでの時間を用いて校正を開始すると、校正時間が長くなる。厚みが0.1mmの基準板63の振動が収束するまでの時間を用いて校正を開始すると、校正精度の信頼性が低下するおそれがある。
【0045】
そこで、X線厚み測定装置100には、加速度センサ67が設けられている。加速度センサ67は、コントローラ7に電気的に接続されている。加速度センサ67は、例えば、筐体61の内部に設けることができる。加速度センサ67が筐体61の内部に設けられていれば、移動部65において発生した振動が加速度センサ67に伝わり易くなる、そのため、基準板63の振動状態を検出するのが容易となる。この場合、図3に示すように、加速度センサ67が、回路部66に設けられていれば、加速度センサ67を、コントローラ7に電気的に接続するのが容易となる。
【0046】
コントローラ7は、加速度センサ67からの検出信号の値に基づいて、基準板63の振動状態を判定する。例えば、コントローラ7は、加速度センサ67からの検出信号の値が、予め定められた閾値以上となった場合には、基準板63の振動が収束していないと判定することができる。例えば、コントローラ7は、加速度センサ67からの検出信号の値が、閾値未満となった場合には、基準板63の振動が収束したと判定することができる。基準板63の振動状態の判定に用いる閾値は、予め実験やシミュレーションを行うことで求めることができる。求められた閾値は、コントローラ7の記憶装置に格納することができる。
【0047】
加速度センサ67からの検出信号の値に基づいて校正を開始すれば、基準板63の振動の収束が保証されるので、校正精度の信頼性を向上させることができる。また、校正に用いる基準板63の厚みが変わり基準板63の振動状態が変化したとしても、余分な待ち時間を設ける必要がない。そのため、校正時間の短縮を図ることができる。
【0048】
コントローラ7は、X線14が透過する位置6aにある基準板63の振動が収束したと判定した場合には、検量線のデータの校正を開始する。コントローラ7は、基準板63を透過したX線14がX線検出部2に入射することで、X線検出部2から出力された検出信号の値と、X線14が透過した基準板63の厚みのデータと、を用いて記憶装置に格納されている検量線のデータを校正する。
【0049】
またさらに、加速度センサ67からの検出信号の値に基づいて、基準板63の振動状態を判定すれば、外部振動(例えば、地震など)による影響を除くこともできる。例えば、コントローラ7は、検量線のデータの校正の開始後に、X線14が透過する位置6aにある基準板63の振動が増加したと判定した場合には、検量線のデータの校正を中止することができる。
【0050】
例えば、コントローラ7は、校正の開始後に、加速度センサ67からの検出信号の値が、予め定められた閾値以上となった場合には、校正を中止することができる。校正を中止した場合には、得られたデータを破棄してもよい。また、コントローラ7は、校正の中止後に、加速度センサ67からの検出信号の値が閾値未満となった場合には、例えば、校正を再開させたり、校正を最初からやり直したりすることもできる。以上の様にして外部振動による影響を除けば、校正精度の信頼性を向上させることができる。
【0051】
校正の中止の判定に用いる閾値は、予め実験やシミュレーションを行うことで求めることができる。求められた閾値は、コントローラ7の記憶装置に格納することができる。なお、校正の中止の判定に用いる閾値は、前述した校正の開始の判定に用いる閾値と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0052】
ここで、外部振動がX線厚み測定装置100に加わると、X線発生器1、校正装置6、およびX線検出部2の少なくともいずれかが振動する場合がある。これらが振動すると、X線発生器1、校正装置6、およびX線検出部の位置関係が変化するので、基準板63におけるX線14の透過方向が変化するおそれがある。基準板63におけるX線14の透過方向が変化すると、X線14の透過長が変わるので、校正精度の信頼性が低下するおそれがある。
【0053】
そのため、加速度センサ67は、X線発生器1、X線検出部2、およびフレーム3の少なくともいずれかに、さらに設けることもできる(第2の加速度センサの一例に相当する)。加速度センサ67が、X線発生器1、X線検出部2、およびフレーム3の少なくともいずれかに設けられていれば、X線厚み測定装置100の振動状態を検出することができる。この場合、図1に示すように、X線検出部2は、アーム32の自由端の近傍に設けられている。そのため、加速度センサ67がX線検出部2に設けられていれば、外部振動を検出するのが容易となる。
【0054】
加速度センサ67をフレーム3に設ける場合には、加速度センサ67を、基部31の、校正装置6が設けられる部分、あるいは、アーム32の、X線検出部2が設けられる部分に設けることが好ましい。この様にすれば、校正装置6に伝わる外部振動を検出するのが容易となったり、X線発生器1、校正装置6、およびX線検出部2の位置関係の変化を検出するのが容易となったりする。
【0055】
加速度センサ67が、X線発生器1、X線検出部2、およびフレーム3の少なくともいずれかに設けられていれば、外部振動による影響を除くことができるので、校正精度の信頼性を向上させることができる。
【0056】
この場合、コントローラ7は、校正の開始前、あるいは校正の開始後に、X線発生器1、X線検出部2、およびフレーム3の少なくともいずれかに設けられた加速度センサ67からの検出信号の値と、予め求められた閾値と、に基づいて、X線厚み測定装置に加わえられた外部振動を判定することができる。例えば、コントローラ7は、加速度センサ67から出力された検出信号の値が閾値以上となった場合には、X線厚み測定装置100に所定の大きさの外部振動が加えられたと判定して、検量線のデータの校正を開始しない、または、検量線のデータの校正を中止することができる。
【0057】
外部振動の判定に用いる閾値は、予め実験やシミュレーションを行うことで求めることができる。求められた閾値は、コントローラ7の記憶装置に格納することができる。なお、外部振動の判定に用いる閾値は、前述した校正の開始の判定に用いる閾値、および校正の中止の判定に用いる閾値と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
ここで、校正装置6による校正を行う際には、X線発生器1からX線14が照射されている。そのため、地震などの外部振動でフレーム3が傾くと、X線14が意図しない方向に照射されるおそれがある。
【0059】
この場合、コントローラ7は、X線発生器1、X線検出部2、およびフレーム3の少なくともいずれかに設けられた加速度センサ67からの検出信号の値が、予め定められた閾値以上となった場合には、X線厚み測定装置100に所定の大きさの外部振動が加えられたと判定することができる。コントローラ7は、X線厚み測定装置100に所定の大きさの外部振動が加えられたと判定した場合には、校正装置6の移動部65を制御して、X線14が透過する位置6aに、遮蔽板64を移動させる。この様にすれば、X線発生器1から照射されたX線14が遮蔽板64により遮蔽されるので、X線14が意図しない方向に照射されるのを抑制することができる。そのため、X線厚み測定装置100の安全性を向上させることができる。
【0060】
また、コントローラ7は、X線厚み測定装置100に所定の大きさの外部振動が加えられたと判定した場合には、X線電源4を制御して、X線検出部2からのX線14の照射を停止することができる。この様にすれば、X線14が意図しない方向に照射されるのを抑制することができる。そのため、X線厚み測定装置100の安全性を向上させることができる。
【0061】
ここで、筐体61の内部に設けられた駆動部65aを動作させると、駆動部65aや回路部66において熱が発生する。また、X線厚み測定装置100が設けられた雰囲気と、筐体61との間で熱の伝達が行われる。そのため、筐体61の内部温度が変化する場合がある。筐体61の内部には基準板63が設けられているので、筐体61の内部温度が変化すると、基準板63の温度が変化する。基準板63の温度が変化すると、基準板63の厚みが変化して、基準板63におけるX線14の減衰量が変化する。X線14の減衰量が変化すると、校正精度が低下するおそれがある。
【0062】
そこで、校正装置6には、温度センサ68を設けることができる。温度センサ68は、筐体61の内部温度を測定可能なものであれば特に限定はない。温度センサ68は、例えば、熱電対、測温抵抗体、サーミスタなどとすることができる。温度センサ68は、コントローラ7に電気的に接続されている。温度センサ68は、例えば、筐体61の内部に設けることができる。温度センサ68が筐体61の内部に設けられていれば、筐体61の内部温度を検出するのが容易となる。この場合、図3に示すように、温度センサ68が、回路部66に設けられていれば、温度センサ68を、コントローラ7に電気的に接続するのが容易となる。
【0063】
コントローラ7は、温度センサ68からの検出信号の値に基づいて、コントローラ7の記憶装置に格納されている基準板63の厚みのデータを補正する。
例えば、コントローラ7は、以下の式を用いて基準板63の厚みのデータを補正することができる。
Tx’=Tx・{1+α(t-t0)}
この場合、Tx’は、温度補正後の基準板63の厚み(mm)である。
Txは、温度補正前の基準板63の厚み(mm)である。
αは、基準板63の材料の線膨張係数(10-6/℃)である。
tは、温度センサ68により検出された温度(℃)である。
t0は、記憶装置に格納されている基準板63の厚みのデータを取得した際の温度(℃)である。
温度センサ68からの検出信号の値に基づいて、基準板63の厚みのデータを補正すれば、校正精度の信頼性を向上させることができる。
【0064】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 X線発生器、2 X線検出部、3 フレーム、4 X線電源、6 校正装置、6a 位置、6b 位置、7 コントローラ、14 X線、31 基部、32 アーム、61 筐体、62 透過窓、63 基準板、64 遮蔽板、65 移動部、65a 駆動部、65b アーム、66 回路部、67 加速度センサ、68 温度センサ、100 X線厚み測定装置、200 測定対象物
図1
図2
図3
図4