(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118770
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20240826BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H02G3/04 062
B60R16/02 620A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025246
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山内 浩揮
(72)【発明者】
【氏名】大橋 政貴
(72)【発明者】
【氏名】田上 耕太郎
【テーマコード(参考)】
5G357
【Fターム(参考)】
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DD05
5G357DD10
5G357DG01
(57)【要約】
【課題】電線部材を筒状部材に通すときの通線作業性を向上できるワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス1は、筒状部材6、電線部材10、被覆部材24、及びホルダ29を備える。電線部材10は、芯線13の周囲を絶縁被覆14で覆った複数の電線15を接続することにより構成されている。被覆部材24は、複数の電線15の接続部位16を周囲から被覆する。筒状部材6は、電線部材10が内部に通される。筒状のホルダ29は、筒状部材6の端部に配置されるとともに、被覆部材24が設けられた部位において電線部材10を保護する。電線部材10は、芯線13を絶縁被覆14と被覆部材24とで覆った二重絶縁部26を有する。ホルダ29は、二重絶縁部26が配置される部位において肉抜き部33を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線の周囲を絶縁被覆で覆った複数の電線を接続することにより構成された電線部材と、前記複数の電線の接続部位を周囲から被覆する被覆部材と、前記電線部材が内部に通される筒状部材と、前記筒状部材の端部に配置されるとともに、前記被覆部材が設けられた部位において前記電線部材を保護する筒状のホルダと、を備えたワイヤハーネスであって、
前記電線部材は、前記芯線を前記絶縁被覆と前記被覆部材とで覆った二重絶縁部を有し、
前記ホルダは、前記二重絶縁部が配置される部位において肉抜き部を有する、ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記複数の電線は、第1電線と、前記第1電線に接続された第2電線と、を有し、
前記二重絶縁部は、前記第1電線の第1電線芯線を前記第1電線の第1電線絶縁被覆と前記被覆部材とで覆った第1二重絶縁部と、前記第2電線の第2電線芯線を前記第2電線の第2電線絶縁被覆と前記被覆部材とで覆った第2二重絶縁部と、を有し、
前記肉抜き部は、前記ホルダにおいて前記第1二重絶縁部が配置される部位、及び、前記ホルダにおいて前記第2二重絶縁部が配置される部位、の2つのうち、少なくとも一方に設けられている、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記電線部材は、前記第1電線絶縁被覆から露出された前記第1電線芯線の端部を、前記第2電線絶縁被覆から露出された前記第2電線芯線の端部に接合することによって形成された接合部を有し、
前記接合部は、前記第1電線芯線及び前記第2電線芯線よりも薄い厚さで形成され、
前記電線部材は、少なくとも前記接合部を前記被覆部材のみで覆った一重絶縁部を有する、請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記第1電線芯線は、複数の金属素線を有し、
前記第2電線芯線は、単芯線であり、
前記接合部は、前記複数の金属素線の端部を、前記単芯線の端部の平板部に接合することにより構成されている、請求項3に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記ホルダは、軸方向から見て多角形状に形成されることにより、周方向に複数の角部を有し、
前記肉抜き部は、前記複数の角部の少なくとも1つに配置されている、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記肉抜き部は、前記ホルダの軸方向に延びる前記肉抜き部の両端に一対の肉抜き開口端を有し、
前記肉抜き部の開口長さは、前記電線部材が前記ホルダの内部で前記ホルダの軸方向に移動しても、前記二重絶縁部が前記肉抜き開口端に接触しないような長さに設定されている、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記ホルダは、前記電線部材が前記ホルダの内部において周方向に回転しないようにするための回転規制部を有する、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
前記ホルダは、前記筒状部材の端部において前記筒状部材に対する取付け位置を位置決めするための係合部を有する、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項9】
前記電線部材は、複数本設けられている、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、ハイブリッド車両等に使用されるワイヤハーネスが周知である。このワイヤハーネスは、例えば、車両の床下に配置された金属製のシールドパイプに複数の電線が通されて構成されている。シールドパイプの両端には、パイプ端において電線の絶縁被覆が損傷されるのを防ぐために樹脂製のホルダが取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の車両においては、電装機能の多様化により、シールドパイプに挿入される電線の本数が多くなる可能性がある。また、電装品の種類によっては、大電流が必要なものもあるため、電線の径が大きくなることもある。そうなると、シールドパイプ内において電線が占める割合、いわゆる、電線占有率が高くなってしまうことになる。よって、電線をシールドパイプ内に通すときの通線作業性が悪化してしまう可能性があった。
【0005】
本開示の目的は、電線部材を筒状部材に通すときの通線作業性を向上できるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するワイヤハーネスは、芯線の周囲を絶縁被覆で覆った複数の電線を接続することにより構成された電線部材と、前記複数の電線の接続部位を周囲から被覆する被覆部材と、前記電線部材が内部に通される筒状部材と、前記筒状部材の端部に配置されるとともに、前記被覆部材が設けられた部位において前記電線部材を保護する筒状のホルダと、を備えた構成であって、前記電線部材は、前記芯線を前記絶縁被覆と前記被覆部材とで覆った二重絶縁部を有し、前記ホルダは、前記二重絶縁部が配置される部位において肉抜き部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、電線部材を筒状部材に通すときの通線作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、車両に対するワイヤハーネスの搭載図である。
【
図8】
図8(a)、
図8(b)は、電線部材がホルダ内で移動することを図示する説明図である。
【
図12】
図12は、ワイヤハーネスの曲げ加工を図示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示のワイヤハーネスは、芯線の周囲を絶縁被覆で覆った複数の電線を接続することにより構成された電線部材と、前記複数の電線の接続部位を周囲から被覆する被覆部材と、前記電線部材が内部に通される筒状部材と、前記筒状部材の端部に配置されるとともに、前記被覆部材が設けられた部位において前記電線部材を保護する筒状のホルダと、を備えた構成であって、前記電線部材は、前記芯線を前記絶縁被覆と前記被覆部材とで覆った二重絶縁部を有し、前記ホルダは、前記二重絶縁部が配置される部位において肉抜き部を有する。
【0010】
本構成によれば、ホルダには、二重絶縁部が配置される部位に、電線占有率を低下するための肉抜き部が形成される。このため、筒状部材の内部において電線部材が密集する箇所を、肉抜き部によって開放することが可能となる。よって、電線部材を筒状部材に通すときの通線作業性の向上が可能となる。
【0011】
[2]上記[1]において、前記複数の電線は、第1電線と、前記第1電線に接続された第2電線と、を有し、前記二重絶縁部は、前記第1電線の第1電線芯線を前記第1電線の第1電線絶縁被覆と前記被覆部材とで覆った第1二重絶縁部と、前記第2電線の第2電線芯線を前記第2電線の第2電線絶縁被覆と前記被覆部材とで覆った第2二重絶縁部と、を有し、前記肉抜き部は、前記ホルダにおいて前記第1二重絶縁部が配置される部位、及び、前記ホルダにおいて前記第2二重絶縁部が配置される部位、の2つのうち、少なくとも一方に設けられている。この構成によれば、電線の接続部位の2箇所に第1二重絶縁部及び第2二重絶縁部が設けられた電線部材に対しても、電線占有率の低下の対策をとることが可能となる。
【0012】
[3]上記[2]において、前記電線部材は、前記第1電線絶縁被覆から露出された前記第1電線芯線の端部を、前記第2電線絶縁被覆から露出された前記第2電線芯線の端部に接合することによって形成された接合部を有し、前記接合部は、前記第1電線芯線及び前記第2電線芯線よりも薄い厚さで形成され、前記電線部材は、少なくとも前記接合部を前記被覆部材のみで覆った一重絶縁部を有する。この構成によれば、接合部を覆う一重絶縁部をホルダの軸中心寄りの位置に配置すれば、一重絶縁部を筒状部材から離した位置に配置することが可能となる。よって、一重絶縁部が筒状部材に接触し難くなるので、一重絶縁部の損傷を生じ難くすることが可能となる。
【0013】
[4]上記[3]において、前記第1電線芯線は、複数の金属素線を有し、前記第2電線芯線は、単芯線であり、前記接合部は、前記複数の金属素線の端部を、前記単芯線の端部の平板部に接合することにより構成されている。この構成によれば、電線部材の構成を、第1電線が可撓性を有し、第2電線が剛性を有する、という構成とすることが可能となる。
【0014】
[5]上記[1]から[4]のいずれかにおいて、前記ホルダは、軸方向から見て多角形状に形成されることにより、周方向に複数の角部を有し、前記肉抜き部は、前記複数の角部の少なくとも1つに配置されている。この構成によれば、多角形状のホルダの場合、電線部材は、ホルダの角部の内面に沿うようにして配置される。よって、ホルダにおいて電線部材が密着して配置される部位に肉抜き部を設けることにより、電線占有率を下げることが可能となる。
【0015】
[6]上記[1]から[6]のいずれかにおいて、前記肉抜き部は、前記ホルダの軸方向に延びる前記肉抜き部の両端に一対の肉抜き開口端を有し、前記肉抜き部の開口長さは、前記電線部材が前記ホルダの内部で前記ホルダの軸方向に移動しても、前記二重絶縁部が前記肉抜き開口端に接触しないような長さに設定されている。この構成によれば、電線部材がホルダの内部において軸方向に移動したとしても、二重絶縁部を肉抜き開口端に接触し難くすることが可能となる。よって、二重絶縁部に損傷を生じ難くすることが可能となる。
【0016】
[7]上記[1]から[6]のいずれかにおいて、前記ホルダは、前記電線部材が前記ホルダの内部において周方向に回転しないようにするための回転規制部を有する。この構成によれば、ホルダの内部に挿入された電線部材は、ホルダに形成された回転規制部によって周方向に位置決めされる。このため、筒状部材の曲げ内面への電線の当たり方に個体差が生じ難くなる。よって、絶縁被覆に損傷を生じ難くすることができる。
【0017】
[8]上記[1]から[7]のいずれかにおいて、前記ホルダは、前記筒状部材の端部において前記筒状部材に対する取付け位置を位置決めするための係合部を有する。この構成によれば、ホルダを係合部によって筒状部材に位置決めするので、ホルダや、ホルダに通された電線部材を、正規位置で保持しておくことが可能となる。よって、絶縁被覆の損傷の抑制に一層寄与する。
【0018】
[9]上記[1]から[8]のいずれかにおいて、前記電線部材は、複数本設けられている。この構成によれば、電線部材が複数本設けられた場合、ホルダの内部が密集し易くなるが、ホルダに肉抜き部を設けることにより、電線占有率が高くなってしまう状況が回避される。よって、この点で効果が高いと言える。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。
【0020】
(ワイヤハーネス1)
図1に示すように、車両2は、車両2の電気配線の一種としてワイヤハーネス1を備える。ワイヤハーネス1は、車両2に設けられた第1電装品3と第2電装品4とを電気接続する。ワイヤハーネス1は、第1電装品3及び第2電装品4を電気的に繋ぐ電線群5と、電線群5が挿入された筒状部材6と、筒状部材6の端部から引き出された電線群5を包囲する複数の外装部材7と、を備える。筒状部材6は、一部が車体床面の外側に配置されるように配策されている。
【0021】
ワイヤハーネス1は、例えば、二次元状または三次元状に屈曲された経路に構成されている。ワイヤハーネス1は、例えば、直線状の筒状部材6に電線群5を通し、その後、内部に収容された電線群5ごと筒状部材6を曲げることにより、所望の屈曲した形状に形成される。外装部材7は、例えば、コルゲートチューブや防水カバーなどが使用されている。筒状部材6及び外装部材7は、内部に収容した電線群5を飛翔物や水滴から保護する。車両2は、例えば、電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車などである。
【0022】
図3及び
図4に示すように、電線群5は、電線部材10と、電線部材10よりも径が小さくなった小径電線11と、を有する。電線部材10は、例えば、高圧電線である。小径電線11は、例えば、交流電線である。電線部材10及び小径電線11は、それぞれ複数本(本例は、2本ずつ)設けられている。2本の電線部材10は、一方を第1電線部材10aとし、他方を第2電線部材10bとする。第1電線部材10a及び第2電線部材10bは、一方がプラス線であり、他方がマイナス線である。2本の小径電線11は、一方を第1小径電線11aとし、他方を第2小径電線11bとする。電線部材10及び小径電線11は、例えば、シールド電線、又はノンシールド電線のいずれでもよい。
【0023】
第1電線部材10a及び第2電線部材10bは、筒状部材6の内部において密着させて配置されている。第1小径電線11aは、筒状部材6の内部において、第1電線部材10a及び第2電線部材10bの群の一方の側方(
図3及び
図4の紙面右側)に配置されている。第2小径電線11bは、筒状部材6の内部において、第1電線部材10a及び第2電線部材10bの群の他方の側方(
図3及び
図4の紙面左側)に配置されている。
【0024】
筒状部材6は、例えば、複数箇所で曲げられた細長い筒状に形成されている。筒状部材6は、例えば、円筒状に形成されている。筒状部材6は、例えば、電線群5の中間部分を内部に収容する。筒状部材6としては、例えば、金属製のパイプ、樹脂製のパイプ、樹脂製のコルゲートチューブ、ゴム製の防水カバー、又は、これらの組み合わせ、などが挙げられる。本例の筒状部材6は、金属製のパイプである。
【0025】
(電線部材10)
図2に示すように、電線部材10は、芯線13の周囲を絶縁被覆14で覆った複数の電線15を接続することにより構成されている。本例の場合、電線15は、第1電線15aと、第1電線15aに接続された第2電線15bと、を有する。本例の場合、電線15は、例えば、第2電線15bの両端に、それぞれ第1電線15aを接続することにより、1本の線として構成されている。なお、第1電線15a及び第2電線15bの接続部位16は、電線部材10の両側に存在するが、
図2の場合、片側のみ図示する。
【0026】
第1電線15aは、例えば、可撓電線である。第1電線15aは、第1電線芯線13aと、第1電線芯線13aの周囲を被覆する第1電線絶縁被覆14aと、を有する。第1電線芯線13aは、例えば、複数の金属素線を有した線である。第1電線芯線13aとしては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせて形成される撚り線、複数の金属素線が筒状に編み込まれた編組線などが挙げられる。第1電線芯線13aの材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料が使用される。第1電線芯線13aは、断面円形状に形成されている。
【0027】
第1電線絶縁被覆14aは、例えば、第1電線芯線13aの外周面を周方向全周において被覆する。第1電線絶縁被覆14aは、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。第1電線絶縁被覆14aの材料としては、例えば、架橋ポリエチレンや架橋ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が使用される。
【0028】
第2電線15bは、例えば、第1電線15aよりも高い剛性を有する。第2電線15bは、第2電線芯線13bと、第2電線芯線13bの周囲を被覆する第2電線絶縁被覆14bと、を有する。第2電線芯線13bは、例えば、単芯線である。第2電線芯線13bは、例えば、内部が中実状をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体、内部が中空状をなす筒状導体などである。第2電線芯線13bの材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料が使用される。また、第2電線芯線13bは、第1電線芯線13aと同じ材料が使用されてもよい。第2電線芯線13bは、例えば、端部を除き、断面円形状に形成されている。
【0029】
第2電線絶縁被覆14bは、例えば、第2電線芯線13bの外周面を周方向全周において被覆する。第2電線絶縁被覆14bは、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。第2電線絶縁被覆14bの材料としては、例えば、架橋ポリエチレンや架橋ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が使用される。また、第2電線絶縁被覆14bとしては、例えば、熱収縮チューブやゴム製チューブを使用してもよい。
【0030】
(接合部19)
図2に示す通り、電線部材10は、2本の電線15の接続部位16に接合部19を有する。本例の場合、接合部19は、第1電線絶縁被覆14aから露出された第1電線芯線13aの端部を、第2電線絶縁被覆14bから露出された第2電線芯線13bの端部に接合することによって形成されている。なお、接合部19は、1本の電線部材10において両側に存在するが、
図2の場合、これらの片側のみ図示する。
【0031】
接合部19は、電線部材10の長手方向(
図2のX軸方向)に対して直交する方向(
図2のZ軸方向)において第1電線芯線13aと第2電線芯線13bとを重ね合わせて接合することにより構成されている。接合方法は、例えば、超音波溶着やレーザ溶着などが使用されている。
【0032】
図5に、ワイヤハーネス1の内部構造を図示する。なお、
図5は、筒状部材6の両端のうち、車体前側の断面図である。また、
図5の場合、紙面左側を車体前側(Fr側)とし、紙面右側を車体後側(Rr側)とする。
【0033】
接合部19は、複数の金属素線(第1電線芯線13a)の端部を、単芯線(第2電線芯線13b)の柱状部20の先端に設けられた平板部21に接合することにより構成されている。接合部19は、第1電線芯線13a及び第2電線芯線13bよりも薄い厚さの「W1」で形成されている。柱状部20は、例えば、細長い円柱状に形成されている。柱状部20は、大部分が第2電線絶縁被覆14bの覆われるとともに、先端の所定量のみが第2電線絶縁被覆14bから露出されている。平板部21は、例えば、ホルダ29の軸中心寄りの位置に配置されている。
【0034】
接合部19は、例えば、第1電線部材10aに設けられた接合部19である第1接合部19aと、第2電線部材10bに設けられた接合部19である第2接合部19bと、を有する。第1接合部19a及び第2接合部19bは、電線部材10の束ね方向(
図5のZ軸方向)に重ならないように、電線部材10の長さ方向(
図5のX軸方向)において互いにずれた位置に配置されている。第1接合部19a及び第2接合部19bは、ともに、筒状部材6の軸中心寄りの位置に配置されている。
【0035】
(被覆部材24)
図3から
図5に示す通り、ワイヤハーネス1は、複数の電線15の接続部位16を周囲から被覆する被覆部材24を備える。被覆部材24は、例えば、長尺の筒状に形成されている。被覆部材24は、例えば、接合部19及びその周囲を被覆する。具体的には、被覆部材24は、第1電線絶縁被覆14aの端部、第1電線絶縁被覆14aの端部から露出した第1電線芯線13a、第2電線絶縁被覆14bの端部、第2電線絶縁被覆14bの端部から露出した第2電線芯線13b、を被覆する。
【0036】
被覆部材24は、例えば、接合部19の電気的絶縁、第1電線芯線13aの電気的絶縁、第2電線芯線13bの電気的絶縁など、のために設けられている。また、被覆部材24は、接合部19、第1電線芯線13a、及び第2電線芯線13bの防水のために設けられている。被覆部材24は、例えば、収縮チューブ、ゴムチューブ、樹脂モールド、ホットメルト溶着剤、テープ部材などが使用されている。本例の場合、被覆部材24は、熱収縮チューブである。被覆部材24は、例えば、架橋ポリエチレンや架橋ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を主成分とする合成樹脂が使用される。
【0037】
(二重絶縁部26)
図5に示す通り、電線部材10は、芯線13を絶縁被覆14と被覆部材24とで覆った二重絶縁部26を有する。本例の場合、二重絶縁部26は、第1電線芯線13aを第1電線絶縁被覆14a及び被覆部材24で覆った第1二重絶縁部26aと、第2電線芯線13bを第2電線絶縁被覆14b及び被覆部材24で覆った第2二重絶縁部26bと、を有する。第1二重絶縁部26aは、第1電線15aの端部において、第1電線芯線13aの外周面が第1電線絶縁被覆14a及び被覆部材24で覆われた箇所を言う。第2二重絶縁部26bは、第2電線15bの端部において、第2電線芯線13bの外周面が第2電線絶縁被覆14b及び被覆部材24で覆われた箇所を言う。
【0038】
電線部材10は、電線部材10の芯線13において被覆部材24でのみ覆われた部位である一重絶縁部27を有する。一重絶縁部27は、例えば、第1電線絶縁被覆14aから露出した第1電線芯線13aと、第2電線絶縁被覆14bから露出した第2電線芯線13bと、において、被覆部材24でしか覆われていない箇所を言う。一重絶縁部27は、接合部19の周囲を被覆する第1一重絶縁部27aと、第2電線絶縁被覆14bから露出した柱状部20を被覆する第2一重絶縁部27bと、を有する。
【0039】
(ホルダ29)
図5及び
図6に示すように、ワイヤハーネス1は、筒状部材6の端部に配置された筒状のホルダ29を備える。ホルダ29は、被覆部材24が設けられた部位において電線部材10を保護する。ホルダ29の内部には、電線群5が挿入されている。すなわち、ホルダ29の内部には、第1電線部材10a、第2電線部材10b、第1小径電線11a、及び第2小径電線11bの4本が挿入されている。なお、ホルダ29は、筒状部材6の両端に各々設けられているが、
図5や
図6の場合、片側のみ図示する。
【0040】
ホルダ29は、例えば、両端が開口した筒状に形成されている。ホルダ29は、筒状部材6の筒端(筒状部材6の開口のエッジ)における電線群5の保護と、第1電線15a及び第2電線15bを繋ぐ接合部19の保護と、のために設けられる。ホルダ29は、例えば、合成樹脂製である。ホルダ29の材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ABS樹脂などの、合成樹脂が使用されている。
【0041】
図3及び
図4に示す通り、ホルダ29は、軸方向(
図3及び
図4のX軸方向)から見て多角形状(本例は、四角形状)に形成されることにより、周方向の複数の角部30を有する。本例の場合、角部30は、例えば、紙面上側に位置する第1角部30aと、第1角部30aに対して紙面時計回り90度の位置に配置された第2角部30bと、第1角部30aの対向位置に配置された第3角部30cと、第1角部30aに対して紙面反時計回り90度の位置に配置された第4角部30dと、を有する。本例の場合、第1電線部材10aは、ホルダ29の内部において第1角部30aの内面に配置されている。第2電線部材10bは、ホルダ29の内部において第3角部30cの内面に配置されている。
【0042】
(ホルダ29の肉抜き部33)
図3から
図6に示す通り、ホルダ29は、二重絶縁部26が配置される部位において肉抜き部33を有する。本例の場合、肉抜き部33は、ホルダ29において開口した孔である。肉抜き部33は、例えば、平面視において長方形状に形成されることにより、長手方向と短手方向とを有する。肉抜き部33は、ホルダ29の内部において、電線部材10の占有率が高い箇所、すなわち、電線部材10の二重絶縁部26が配置される箇所に設けられている。このように、肉抜き部33は、ホルダ29の内部空間において電線群5が占める割合を低くすること、すなわち電線占有率を低くするために設けられている。
【0043】
図3及び
図4に示す通り、肉抜き部33は、ホルダ29の周方向に並ぶ複数の角部30のうち、二重絶縁部26が配置される部位に形成されている。具体的には、第1電線部材10aが密着して配置される第1角部30aと、第2電線部材10bが密着して配置される第3角部30cと、に肉抜き部33が形成されている。肉抜き部33は、第1角部30aに形成されるものが第1電線部材10a用であり、第3角部30cに形成されるものが第2電線部材10b用である。
【0044】
図5及び
図6に示す通り、肉抜き部33は、ホルダ29において第1二重絶縁部26aが配置される部位、及び、ホルダ29において第2二重絶縁部26bが配置される部位、の2つのうち、少なくとも一方に設けられている。本例の場合、第1電線部材10aに対しては、第1二重絶縁部26aが配置される部位、及び、第2二重絶縁部26bが配置される部位、の両方に肉抜き部33が設けられている。すなわち、ホルダ29は、第1電線部材10aに対し、第1二重絶縁部26aが配置される位置に第1肉抜き部33aが形成され、第2二重絶縁部26bが配置される位置に第2肉抜き部33bが形成されている。
【0045】
一方、
図5及び
図7に示すように、第2電線部材10bに対しては、第1二重絶縁部26aが配置される部位にのみ形成されている。すなわち、ホルダ29は、第2電線部材10bに対し、第1二重絶縁部26aが配置される位置に第3肉抜き部33cが形成されている。なお、第2電線部材10bに対する肉抜き部33を1つのみとするのは、第2電線芯線13bの径が小さめであるため、第1電線部材10a側にのみ肉抜き部33を設ければ、それで足りるからである。
【0046】
(肉抜き部33の開口長さL)
図5から
図7に示す通り、肉抜き部33は、開口の長手方向(
図5等のX軸方向)の両端において、一対の肉抜き開口端34を有する。本例の場合、肉抜き開口端34は、ホルダ29の先端寄りに位置した第1肉抜き開口端34aと、ホルダ29の基端寄りに位置した第2肉抜き開口端34bと、を有する。
【0047】
図8(a)、(b)に示すように、肉抜き部33の開口長さL(
図8(a)に図示)は、電線部材10がホルダ29の内部でホルダ29の軸方向(
図8のX軸方向)に移動しても、二重絶縁部26が肉抜き開口端34に接触しないような長さに設定されている。本例の場合、開口長さLは、例えば、二重絶縁部26が開口中央に位置するときを初期位置として、電線部材10が飛出方向(
図8(a)の矢印A1方向)及び引込方向(
図8(b)の矢印A2方向)のどちらに動いても、二重絶縁部26が肉抜き開口端34に接触してしまうことを生じ難くする長さに設定されている。開口長さLは、例えば、肉抜き部33の長手方向の長さである。
【0048】
(ホルダ29の回転規制部35)
図9及び
図10に示すように、ホルダ29は、電線部材10がホルダ29の内部において周方向に回転しないようにするための回転規制部35を有する。回転規制部35は、電線部材10に近づく方向に突出するとともに、電線部材10を両側から挟み込むように形成された一対のリブである。回転規制部35は、例えば、ホルダ29の内部において所定位置に局所的に形成されている。
【0049】
回転規制部35は、ホルダ29の内部においての第1電線15aの回転を規制する第1回転規制部36(
図9に図示)と、ホルダ29の内部においての第2電線15bの回転を規制する第2回転規制部37(
図10に図示)と、を有する。第1回転規制部36は、ホルダ29の内部において先端寄りの位置に配置されている。第2回転規制部37は、ホルダ29の内部において基端寄りの位置に配置されている。回転規制部35には、小径電線11を収容するための凹状部38が形成されている。
【0050】
(ホルダ29の係合部40)
図11に示すように、ホルダ29は、筒状部材6の端部において筒状部材6に対する取付け位置を位置決めするための係合部40を有する。係合部40は、例えば、レバー状の突起であって、ホルダ29の外周面先端寄りの位置において、互いに対向する位置に配置されている。係合部40は、ホルダ29が筒状部材6に挿入されたとき、筒状部材6に形成された凹部41に係合することにより、ホルダ29を筒状部材6に対して位置決めする。ホルダ29が係合部40で筒状部材6に位置決めされたとき、ホルダ29が筒状部材6の内部で回転することが規制される。
【0051】
次に、本実施形態のワイヤハーネス1の作用について説明する。
(ホルダ29による電線群5の損傷防止)
図5に示す通り、ホルダ29は、筒状部材6の端部から所定量飛び出すようにして配置されている。このため、例えば、電線部材10に曲げの負荷がかかっても、ホルダ29が緩衝材となって電線群5が筒状部材6のエッジに直接接触することがない。よって、電線群5をホルダ29によって筒状部材6のエッジから保護することが可能となるので、電線群5に損傷を生じ難くすることが可能となる。ひいては、電線群5の絶縁不良も生じ難くすることが可能となる。
【0052】
(電線部材10の回転規制)
図9及び
図10に示す通り、ホルダ29の内周面には、ホルダ29の内部において電線群5が周方向に回転してしまうことを防ぐ回転規制部35が設けられている。これにより、内部に電線群5が挿入された筒状部材6を折り曲げ加工するとき、電線群5に回転の負荷がかかっても、回転規制部35によって電線群5が正規位置で保持される。このため、筒状部材6の曲げ内面への第2電線15b(本例は、単芯線)の当たり方に個体差が生じ難くなる。よって、第2電線絶縁被覆14bに損傷を生じ難くすることが可能となる。
【0053】
また、
図11に示す通り、ホルダ29は、一対の係合部40が筒状部材6の凹部41に係合することにより、筒状部材6に対して固定されている。このため、筒状部材6に対するホルダ29の回転も抑制することが可能となる。よって、このことからも、第2電線絶縁被覆14bの損傷の抑制に寄与する。また、ホルダ29が筒状部材6に対して軸方向に意図せず動いてしまうことも、係合部40及び凹部41の係合によって、生じ難くなる。
【0054】
(接合部19に対する外力印加抑制)
図5に示す通り、第1電線15a及び第2電線15bの接続部位16の周辺は、例えば、接合部19の両側においてホルダ29で支持されている。具体的には、接続部位16の両側が、ホルダ29に形成された回転規制部35の厚みによって、しっかりと保持される。よって、接合部19に剥がれの外力が印加され難いので、接合部19に接続不良を生じ難くすることが可能となる。
【0055】
(電線部材10の被覆部分における変形抑制)
図5に示す通り、第1電線15a及び第2電線15bの接続部位16の周辺は、筒状部材6の内部において、ホルダ29を介して取付けられている。従って、この接続部位16の周辺は、ホルダ29によって隙間なく配置されることになるため、動きが抑制される。よって、電線部材10の被覆部分、具体的に言うと、接合部19に対し、変形の原因となる負荷が印加され難くなる。よって、電線部材10の被覆部分の変形を抑制することが可能となる。
【0056】
(電線部材10の通線作業性)
図5等に示す通り、電線部材10は、芯線13の周囲を絶縁被覆14及び被覆部材24で二重被覆した二重絶縁部26を有している。このため、電線部材10は、この二重絶縁部26の部位において、他の部位に比べ、相対的に径方向の厚みが大きくなる。従って、ホルダ29の内部空間における電線占有率が高くなってしまうので、ワイヤハーネス1の製造時、電線群5をホルダ29の内部にスムーズに挿入できない状況となってしまう。よって、二重絶縁部26を有するワイヤハーネス1の場合、製造時における通線作業性がよくない実状があった。
【0057】
そこで、
図3等に示す通り、本例においては、ホルダ29に対し、電線部材10の二重絶縁部26が配置される部位に肉抜き部33を形成した。これにより、ホルダ29の内部空間において、二重絶縁部26が配置される部位の電線占有率を下げることが可能となる。このため、ホルダ29の内部へ電線群5を楽に通すことが可能となるので、ワイヤハーネス1を製造するときの通線作業性が向上する。
【0058】
(肉抜き開口端34と被覆部材24との干渉)
図12に示すように、筒状部材6を曲げ加工したとき、曲がる筒状部材6に引っ張られて、筒状部材6の内部の電線部材10が飛出方向又は引込方向に移動してしまう。このため、本例のように、ホルダ29に肉抜き部33を形成した場合、電線部材10が動いたとき、肉抜き開口端34と接触してしまう可能性が生じる。これは、電線部材10の損傷に繋がるため、接触不良等のことを考えると、何らかの対策が必要である。
【0059】
そこで、本例の場合、
図8(a)、(b)に示す通り、肉抜き部33の開口長さLを、電線部材10が飛出方向や引込方向に移動しても、二重絶縁部26が肉抜き開口端34に接触しない長さに設定している。これにより、
図8(a)に示す通り、電線部材10が飛出方向に移動したとしても、飛び出し側の第1肉抜き開口端34aの肉抜き部33に二重絶縁部26を接触し難くすることが可能となる。また、
図8(b)に示すように、電線部材10が引込方向に移動したとしても、引き込み側の第2肉抜き開口端34bに二重絶縁部26を接触し難くすることが可能となる。
【0060】
(被覆部材24と筒状部材6との干渉)
図8(a)、(b)に示す通り、ホルダ29に肉抜き部33を形成した場合、被覆部材24がホルダ29から露出するため、電線部材10の第1一重絶縁部27aが筒状部材6の内周面と接触してしまう可能性が生じる。第1一重絶縁部27aは、接合部19の周囲の絶縁が一層であるため、例えば、摩耗、押し付け、叩き付けのことを考慮に入れると、筒状部材6の内周面に接触させないようにすることが好ましい。
【0061】
そこで、本例の場合、
図8(a)に示す通り、筒状部材6と第1一重絶縁部27aとの間の距離は、十分に離れた距離である「W2」となっている。具体的には、第1一重絶縁部27aを電線部材10の他部位よりも薄い形状とし、かつ、第1一重絶縁部27aをホルダ29の軸中心寄りの位置に配置することにより、第1一重絶縁部27aを筒状部材6の内周面から離した位置に配置している。よって、第1一重絶縁部27aが筒状部材6の内周面に接触する状況を生じ難くすることが可能となる。ひいては、接合部19の接触不良の抑制にも寄与する。
【0062】
また、
図4に示す通り、第1一重絶縁部27aの幅方向(
図4のY軸方向)の両端は、ホルダ29の内部に隠れている。このため、ホルダ29の肉抜き部33の縁部が壁となって、第1一重絶縁部27aの幅方向の両端が筒状部材6の内面に接触し難くなる。よって、このことは、第1一重絶縁部27aの接触不良の抑制に一層寄与する。
【0063】
図8(a)に示す通り、電線部材10が飛出方向(矢印A1方向)に移動した場合、第1一重絶縁部27aは、肉抜き部33から大きく露出した状態をとる。しかし、本例の場合、第1一重絶縁部27aは、筒状部材6の内周面との間の距離が、十分に離れた値の「W2」となっているため、筒状部材6の内周面に接触し難い。よって、電線部材10が飛出方向に移動しても、第1一重絶縁部27aを筒状部材6に接触し難くすることが可能となる。
【0064】
図8(b)に示す通り、電線部材10が引込方向(矢印A2方向)に移動した場合、第1一重絶縁部27aは、ホルダ29の内部に隠れる。このため、第1一重絶縁部27aは、ホルダ29が壁になって、筒状部材6の内周面に接触し難くなる。
【0065】
一方、第2一重絶縁部27bは、第2肉抜き部33bから大きく露出した状態をとる。しかし、本例の場合、第2一重絶縁部27bは、筒状部材6の内周面との間の距離が、十分に離れた値の「W3」となっているため、筒状部材6の内周面に接触し難い。よって、電線部材10が引込方向に移動しても、第2一重絶縁部27bの接触不良も抑制することが可能となる。
【0066】
(実施形態の効果)
上記実施形態の構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ワイヤハーネス1は、筒状部材6、電線部材10、被覆部材24、及びホルダ29を備える。電線部材10は、芯線13の周囲を絶縁被覆14で覆った複数の電線15を接続することにより構成されている。被覆部材24は、複数の電線15の接続部位16を周囲から被覆する。筒状部材6は、電線部材10が内部に通される。ホルダ29は、筒状をなす。ホルダ29は、筒状部材6の端部に配置されるとともに、被覆部材24が設けられた部位において電線部材10を保護する。電線部材10は、芯線13を絶縁被覆14と被覆部材24とで覆った二重絶縁部26を有する。ホルダ29は、二重絶縁部26が配置される部位において肉抜き部33を有する。
【0067】
本構成によれば、ホルダ29には、二重絶縁部26が配置される部位に、電線占有率を低下するための肉抜き部33が形成される。このため、筒状部材6の内部において電線部材10が密集する箇所を、肉抜き部33によって開放することが可能となる。よって、電線部材10を筒状部材6に通すときの通線作業性を向上できる。
【0068】
(2)複数の電線15は、第1電線15aと、第1電線15aに接続された第2電線15bと、を有する。二重絶縁部26は、第1電線15aの第1電線芯線13aを第1電線15aの第1電線絶縁被覆14aと被覆部材24とで覆った第1二重絶縁部26aと、第2電線15bの第2電線芯線13bを第2電線15bの第2電線絶縁被覆14bと被覆部材24とで覆った第2二重絶縁部26bと、を有する。肉抜き部33は、ホルダ29において第1二重絶縁部26aが配置される部位、及び、ホルダ29において第2二重絶縁部26bが配置される部位、の2つのうち、少なくとも一方に設けられている。この構成によれば、電線15の接続部位16の2箇所に第1二重絶縁部26a及び第2二重絶縁部26bが設けられた電線部材10に対しても、電線占有率の低下の対策をとることができる。
【0069】
(3)電線部材10は、第1電線絶縁被覆14aから露出された第1電線芯線13aの端部を、第2電線絶縁被覆14bから露出された第2電線芯線13bの端部に接合することによって形成された接合部19を有する。接合部19は、第1電線芯線13a及び第2電線芯線13bよりも薄い厚さで形成されている。電線部材10は、少なくとも接合部19を被覆部材24のみで覆った一重絶縁部27を有する。この構成によれば、接合部19を覆う一重絶縁部27をホルダ29の軸中心寄りの位置に配置すれば、一重絶縁部27を筒状部材6から離した位置に配置することが可能となる。よって、一重絶縁部27が筒状部材6に接触し難くなるので、一重絶縁部27の損傷を生じ難くすることができる。
【0070】
(4)第1電線芯線13aは、複数の金属素線を有する。第2電線芯線13bは、単芯線である。接合部19は、複数の金属素線の端部を、単芯線の端部の平板部21に接合することにより構成されている。この構成によれば、第1電線15aが可撓性を有し、第2電線15bが剛性を有する。この構成によれば、電線部材10の構成を、第1電線15aが可撓性を有し、第2電線15bが剛性を有する、という構成とすることができる。
【0071】
(5)ホルダ29は、軸方向から見て多角形状に形成されることにより、周方向に複数の角部30を有する。肉抜き部33は、複数の角部30の少なくとも1つに配置されている。この構成によれば、多角形状のホルダ29の場合、電線部材10は、ホルダ29の角部30の内面に沿うようにして配置される。よって、ホルダ29において電線部材10が密着して配置される部位に肉抜き部33を設けることにより、電線占有率を下げることができる。
【0072】
(6)肉抜き部33は、ホルダ29の軸方向に延びる肉抜き部33の両端に一対の肉抜き開口端34を有する。肉抜き部33の開口長さLは、電線部材10がホルダ29の内部でホルダ29の軸方向に移動しても、二重絶縁部26が肉抜き開口端34に接触しないような長さに設定されている。この構成によれば、電線部材10がホルダ29の内部において軸方向に移動したとしても、二重絶縁部26を肉抜き開口端34に接触し難くすることが可能となる。よって、二重絶縁部26に損傷を生じ難くすることができる。
【0073】
(7)ホルダ29は、電線部材10がホルダ29の内部において周方向に回転しないようにするための回転規制部35を有する。この構成によれば、ホルダ29の内部に挿入された電線部材10は、ホルダ29に形成された回転規制部35によって周方向に位置決めされる。このため、筒状部材6の曲げ内面への第2電線15b(本例は、単芯線)の当たり方に個体差が生じ難くなる。よって、第2電線絶縁被覆14bに損傷を生じ難くすることができる。
【0074】
(8)ホルダ29は、筒状部材6の端部において筒状部材6に対する取付け位置を位置決めするための係合部40を有する。この構成によれば、ホルダ29を係合部40によって筒状部材6に位置決めするので、ホルダ29や、ホルダ29に通された電線部材10を、正規位置で保持しておくことが可能となる。よって、第2電線絶縁被覆14bの損傷の抑制に一層寄与する。
【0075】
(9)電線部材10は、複数本設けられている。この構成によれば、電線部材10が複数本設けられた場合、ホルダ29の内部が密集し易くなるが、ホルダ29に肉抜き部33を設けることにより、電線占有率が高くなってしまう状況が回避される。よって、この点で効果が高いと言える。
【0076】
(他の実施形態)
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0077】
・二重絶縁部26は、1箇所の接続部位16において2つ設けられることに限らず、1つのみとしてもよい。
・二重絶縁部26は、絶縁が3層以上の多層絶縁部を含む。
【0078】
・一重絶縁部27は、例えば、柱状部20が省略されている場合、接合部19にのみ設けられてもよい。
・一重絶縁部27は、省略してもよい。
【0079】
・肉抜き部33をホルダ29に複数設ける場合、それぞれ異なる形状としてもよい。
・肉抜き部33の配置位置、形状、大きさは、実施例以外のものに適宜変更できる。
・肉抜き部33は、貫通した孔に限定されず、例えば「凹み」でもよい。
【0080】
・接合部19の形状は、略平板状に限定されず、例えば円柱状などの他の形状に変更してもよい。
・ホルダ29は、筒状部材6の一方の端部にのみ設けられてもよい。
【0081】
・ホルダ29は、断面四角形状に限定されず、多角形状であればよい。また、ホルダ29は、軸方向から見た断面形状が、例えば、円形(真円)や楕円形でもよい。
・ホルダ29に通される電線部材10や小径電線11の数は、適宜変更できる。
【0082】
・ワイヤハーネス1は、車載用に限定されず、他の製品や装置に使用してもよい。
・本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本開示において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【0083】
・本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0084】
1 ワイヤハーネス
2 車両
3 第1電装品
4 第2電装品
5 電線群
6 筒状部材
7 外装部材
10 電線部材
10a 第1電線部材
10b 第2電線部材
11 小径電線
11a 第1小径電線
11b 第2小径電線
13 芯線
13a 第1電線芯線
13b 第2電線芯線
14 絶縁被覆
14a 第1電線絶縁被覆
14b 第2電線絶縁被覆
15 電線
15a 第1電線
15b 第2電線
16 接続部位
19 接合部
19a 第1接合部
19b 第2接合部
20 柱状部
21 平板部
22 肉抜き部
24 被覆部材
26 二重絶縁部
26a 第1二重絶縁部
26b 第2二重絶縁部
27 一重絶縁部
27a 第1一重絶縁部
27b 第2一重絶縁部
29 ホルダ
30 角部
30a 第1角部
30b 第2角部
30c 第3角部
30d 第4角部
33 肉抜き部
33a 第1肉抜き部
33b 第2肉抜き部
33c 第3肉抜き部
34 肉抜き開口端
34a 第1肉抜き開口端
34b 第2肉抜き開口端
35 回転規制部
36 第1回転規制部
37 第2回転規制部
38 凹状部
40 係合部
41 凹部
L 開口長さ
W1 厚さ
W2 距離
W3 距離