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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118778
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】円錐ハブユニット軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/58 20060101AFI20240826BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20240826BHJP
   F16C 43/04 20060101ALI20240826BHJP
   B60B 35/14 20060101ALI20240826BHJP
   B60B 35/18 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
F16C33/58
F16C19/38
F16C43/04
B60B35/14 V
B60B35/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025261
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】横山 ナンシー 尚子
【テーマコード(参考)】
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3J117HA02
3J117HA04
3J701AA05
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA09
3J701BA53
3J701BA56
3J701BA57
3J701BA69
3J701BA78
3J701FA02
3J701FA46
3J701GA03
3J701XB03
3J701XB17
3J701XB23
3J701XB24
3J701XB26
(57)【要約】
【課題】ハブ輪に小鍔部を設ける構成としつつも、スキューが発生した場合であっても、該スキューが増長されるのを抑制して、焼付きや小鍔部の破損を防止でき、かつハブ輪の組み付けが容易であり、さらに、製造コストも抑えることができる円錐ハブユニット軸受を提供する。
【解決手段】ハブ輪31は、内輪軌道33aと小径段部36との間にハブ輪側小鍔部35を備える。ハブ輪側小鍔部35の外径D1は、内輪41の内輪側小鍔部42の外径D2より小径であり、かつアウトボード側の円すいころ11が外輪軌道22aに接触するとともに、前記アウトボード側の前記円すいころを保持する保持器が封止部材12に接触する状態において、アウトボード側の円すいころ11の尾部11aの最大内接円径D3より小径である。ハブ輪側小鍔部35のアウトボード側側面35aの傾きは、アウトボード側の円すいころ11の尾部11aの端面の傾きより大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に複列の外輪軌道を有する外輪と、
外周面に、アウトボード側からインボード側に向かって、アウトボード側に車輪を支持固定する為の回転側フランジ、一方の列の内輪軌道、及び小径段部を少なくとも有するハブ輪と、アウトボード側端面を前記小径段部の段差面に突き当てた状態で前記小径段部の外周面に外嵌されて前記ハブ輪に固定され、外周面に他方の列の内輪軌道を有する内輪と、を備えるハブと、
前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数の円すいころと、
前記外輪と前記ハブとの間を封止する封止部材と、
を備える円錐ハブユニット軸受であって、
前記ハブ輪は、前記一方の列の内輪軌道と前記小径段部との間にハブ輪側小鍔部を備え、
前記ハブ輪側小鍔部の外径は、前記内輪の内輪側小鍔部の外径より小径であり、かつアウトボード側の前記円すいころが前記外輪軌道に接触するとともに、前記アウトボード側の前記円すいころを保持する保持器が前記封止部材に接触する状態において、アウトボード側の前記円すいころの尾部の最大内接円径より小径であり、
前記ハブ輪側小鍔部のアウトボード側側面の傾きは、アウトボード側の前記円すいころの尾部の端面の傾きより大きい、
円錐ハブユニット軸受。
【請求項2】
前記内輪のインボード側端面は、前記ハブ輪のインボード側端面よりインボード側に位置しており、
アウトボード側の前記円すいころの尾部と前記ハブ輪側小鍔部の側面との隙間Δ2>インボード側の前記円すいころの尾部と前記内輪側小鍔部の側面との隙間Δ1である、
請求項1に記載の円錐ハブユニット軸受。
【請求項3】
前記内輪は、前記ハブ輪のインボード側端部を外径側に折り曲げることで前記ハブ輪に加締め固定され、
アウトボード側の前記円すいころの尾部と前記ハブ輪側小鍔部の側面との隙間Δ2<インボード側の前記円すいころの尾部と前記内輪側小鍔部の側面との隙間Δ1である、
請求項1に記載の円錐ハブユニット軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するために使用される円錐ハブユニット軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
小型トラック、大型乗用車等、比較的重量が嵩む自動車のハブユニット軸受では、従来、転動体として円すいころを複列で備えるものが使用されている。
また、ハブユニット軸受としては、内輪軌道をそれぞれ有する一対の内輪がハブに組み込まれる、いわゆる第一世代や第二世代のハブユニット軸受のほか、近年、信頼性向上と自動車への取り付けの容易化などを目的として、片側の内輪軌道をハブ輪の外周面に直接形成した、いわゆる第三世代と呼ばれるハブユニット軸受が使用されている。
【0003】
第三世代のハブユニット軸受は、一般には、外輪の外側列に組込まれ、外側シールにより抜け止めされたころと保持器の組立体の中にハブ輪を通し、さらに、内輪ところと保持器の他の組立体(いわゆる、コーンの状態)をハブ輪の小径部に嵌合させる工順で製造される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
内側列のコーンは、内輪の小鍔部の外径を、保持器に組付けられたころの尾部の最大内接径より大きくすることによりコーンの状態が保たれるが、外側列はコーンの状態になることがなく、また、ころと保持器の組立体の中にハブ輪を通し易くする目的で、外側列の小鍔部が省略されることがある。
また、ハブ輪は、熱間鍛造後、旋削で成形(その後、熱処理→研削)されるので、ハブ輪に小鍔部が存在すると、鍛造材からの旋削量が増加し、コスト高となる虞がある。
【0005】
特許文献2には、図7に示すように、まず、軸方向外側の円すいころ301aと、該円すいころ301aが内径側に脱落しないタイプの保持器302aとの組立体を、外輪303に軸方向外側から挿入し、その後、外輪303の軸方向外端部に、外側密封部材304を装着する。次いで、ハブ輪305を、外輪303の内径側に挿入し、さらに、軸方向内側の円すいころ301bと、該円すいころ301bが外径側に脱落しないタイプの保持器302bと、内輪306との他の組立体を、外輪303に軸方向内側から挿入した円錐ハブユニット軸受300が開示されている。
この場合も、ハブ輪305に小鍔部が存在しないが、軸方向外側の円すいころ301aの尾部側(小径部側)には、内輪306の小鍔部306aの正面側端部が対向しているので、外側列の円すいころ301aを整列させることができ、ころ整列のためのなじませ回転を短くすることができる。
なお、なじませ回転とは、特許文献3にも記載されているように、円すいころを整列させる、即ち、円すいころが安定状態(各円すいころの頭部側端面と大鍔部の内側面とが当接する状態)に達するように、本組立を行う前に、外輪とハブ輪とを相対的に回転させるものをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-35458号公報
【特許文献2】特開2003-113841号公報
【特許文献3】特開平10-205529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の円すいころ軸受ユニット300では、円すいころ301aがスキューして内輪306の小鍔部306aの正面側端部と接触する場合、相対速度の大きい円すいころ301aの中心側で接触するので、スキューを増長させたり、焼付きに発展する、或いは、ころ整列のためのなじませ回転が多くなる可能性がある。
【0008】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハブ輪に小鍔部を設ける構成としつつも、スキューが発生した場合であっても、該スキューが増長されるのを抑制して、焼付きや小鍔部の破損を防止でき、かつハブ輪の組み付けが容易であり、さらに、製造コストも抑えることができる円錐ハブユニット軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の上記目的は、円錐ハブユニット軸受に係る下記[1]の構成により達成される。
[1] 内周面に複列の外輪軌道を有する外輪と、
外周面に、アウトボード側からインボード側に向かって、アウトボード側に車輪を支持固定する為の回転側フランジ、一方の列の内輪軌道、及び小径段部を少なくとも有するハブ輪と、アウトボード側端面を前記小径段部の段差面に突き当てた状態で前記小径段部の外周面に外嵌されて前記ハブ輪に固定され、外周面に他方の列の内輪軌道を有する内輪と、を備えるハブと、
前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数の円すいころと、
前記外輪と前記ハブとの間を封止する封止部材と、
を備える円錐ハブユニット軸受であって、
前記ハブ輪は、前記一方の列の内輪軌道と前記小径段部との間にハブ輪側小鍔部を備え、
前記ハブ輪側小鍔部の外径は、前記内輪の内輪側小鍔部の外径より小径であり、かつアウトボード側の前記円すいころが前記外輪軌道に接触するとともに、前記アウトボード側の前記円すいころを保持する保持器が前記封止部材に接触する状態において、アウトボード側の前記円すいころの尾部の最大内接円径より小径であり、
前記ハブ輪側小鍔部のアウトボード側側面の傾きは、アウトボード側の前記円すいころの尾部の端面の傾きより大きい、
円錐ハブユニット軸受。
【発明の効果】
【0010】
本発明の円錐ハブユニット軸受によれば、ハブ輪に小鍔部を設ける構成としつつも、スキューが発生した場合であっても、該スキューが増長されるのを抑制して、焼付きや小鍔部の破損を防止でき、かつハブ輪の組み付けが容易であり、さらに、製造コストも抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る円錐ハブユニット軸受の断面図である。
図2図1の円Aで囲む部分の拡大図である。
図3図1に示す外輪組立体をハブ輪に組み付ける工程を説明する断面図である。
図4図3と異なる封止部材を用いた場合の、ハブ輪に組み付ける工程の外輪組立体の部分拡大断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る円錐ハブユニット軸受の断面図である。
図6図5の円Bで囲む部分の拡大図である。
図7】従来の円錐ハブユニット軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る円錐ハブユニット軸受10について、図1及び図2を用いて詳細に説明する。尚、本明細書及び特許請求の範囲の全体で、軸方向に関して「外」とは、自動車への組み付け状態で車体の幅方向外側となる、図1の左側を言い、「アウトボード側」とも称す。また、反対に車体の幅方向中央側となる、図1の右側を、軸方向に関して「内」と言い、「インボード側」とも称す。
【0013】
本実施形態の円錐ハブユニット軸受10は、駆動輪用であり、外輪20と、ハブ30と、複数の円すいころ11、11と、一対の封止部材12、12と、を主に備える。
【0014】
外輪20は、外周面に静止側フランジ21を、内周面に複列(2列)の外輪軌道22a、22bを、それぞれ有している。外輪20は、使用時に、静止側フランジ21を、懸架装置のナックルに結合固定する事により、この懸架装置に支持された状態で回転しない。
【0015】
ハブ30は、ハブ輪31と内輪41とにより構成されており、外輪20の内径側に外輪20と同軸(同芯)に配置されている。
【0016】
ハブ輪31には、外輪20の軸方向外側(アウトボード側)開口から軸方向外方に突出した部分に、外径側に延出して、車輪(駆動輪)及びディスクロータ等の制動用回転部材を支持固定する為の円輪状の回転側フランジ32が設けられている。具体的に、回転側フランジ32には複数の挿通孔32aが設けられ、各挿通孔32aが雌ねじの場合には、それぞれ図示しないハブボルトが螺合されており、各挿通孔32aが円筒孔の場合には、スタッドボルト13がセレーション嵌合されている。
【0017】
また、ハブ輪31の外周面には、外輪20の内周面に設けられた軸方向外側列の外輪軌道22aと対向する部分に、軸方向外側列(アウトボード側)の内輪軌道33aが設けられている。また、内輪軌道33aのアウトボード側にはハブ輪側大鍔部34が、インボード側にはハブ輪側小鍔部35が、いずれも逃げを介して外径側に突出して形成されている。
【0018】
さらに、ハブ輪31の外周面のうち、外輪20の内周面に設けられた軸方向内側(インボード側)列の外輪軌道22bと対向する軸方向内端部には、小径段部36が設けられている。従って、ハブ輪31は、アウトボード側からインボード側に向かって、回転側フランジ32、一方の列の内輪軌道33a、及び小径段部36を少なくとも有する。
【0019】
内輪41の外周面には、軸方向内側列(他方の列)の内輪軌道33bが設けられている。内輪軌道33bの軸方向両側には、アウトボード側に内輪側小鍔部42が形成され、インボード側に内輪側大鍔部43が設けられている。
【0020】
ハブ輪側小鍔部35は、内輪軌道33aに沿って相対移動する円すいころ11が当接面35aに当接できるように、内輪軌道33aの最小外径寸法よりも大きい。ただし、本実施形態では、ハブ輪側小鍔部35の外径D1は、内輪側小鍔部42の外径D2より小さく形成されている(D1<D2)。
【0021】
内輪41は、そのアウトボード側端面41aを小径段部36の段差面36aに突き当てた状態で、ハブ輪31の小径段部36の外周面に締め代を持って圧入により外嵌されている。
【0022】
ハブ輪31の中心部には、軸方向に貫通したスプライン孔37が形成されている。スプライン孔37には、図示しないが、ハブユニット軸受を車体に組み付ける際に、等速ジョイントの外輪に結合したスプライン軸が係合され、ナットを螺合することでハブ30に固定される。
【0023】
その際、内輪41の内輪側大鍔部43のインボード側端面には、図示しない等速ジョイントの外輪の端面、或いは図示しない駆動軸の端部に形成した段部等が突き当たり、内輪41のアウトボード側端面41aが小径段部36の段差面36aと当接することで、内輪41が、ハブ輪31に軸方向に位置決め固定される。したがって、内輪41のインボード側端面41bは、ハブ輪31のインボード側端面38よりインボード側に位置しており、内輪41はハブ輪31に加締められていない。
【0024】
円すいころ11、11は、軸方向外側列の外輪軌道22aと内輪軌道33aとの間部分、及び、軸方向内側列の外輪軌道22bと内輪軌道33bとの間部分に、それぞれ複数ずつ、各列の円すいころ11、11の尾部11a,11aが向かい合うようにして、保持器14、14により保持された状態で転動自在に設けられている。
【0025】
一対の封止部材12,12は、外輪20の軸方向外端部とハブ輪31の軸方向中間部との間、及び外輪20の軸方向内端部と内輪41の内輪側大鍔部43との間に配置された状態で、複数の円すいころ11、11が設けられた内部空間15を塞いでいる。
【0026】
次に、図2及び図3も参照して、円すいころ11、11、ハブ輪側小鍔部35及び内輪側小鍔部42の関係について詳述する。
【0027】
本実施形態の円錐ハブユニット軸受10は、軸方向外側の円すいころ11と保持器14との組立体を外輪20にアウトボード側から挿入し、さらに外輪20の軸方向外端部に、封止部材12を装着した後、ハブ輪31を外輪20の内径側に挿入する。そして、軸方向内側の円すいころ11と保持器14と内輪41との他の組立体を、外輪20にインボード側から挿入して組み付けられる。
【0028】
上述の仮組みされた、軸方向外側の円すいころ11、保持器14、封止部材12、及び外輪20(外輪組立体)がハブ輪31に挿入される際、図3に示すように、ハブ輪31のハブ輪側小鍔部35の外径D1は、アウトボード側の円すいころ11が外輪軌道22aに接触するとともに、アウトボード側の円すいころ11を保持する保持器14がアウトボード側の封止部材12に接触する状態において、アウトボード側の円すいころ11の尾部11aの最大内接円径D3より小さく形成されている。これにより、ハブ輪31は、軸方向外側の円すいころ11と保持器14との組立体(円すいころ11の尾部11a)と干渉することなく外輪20に軸方向外側から容易に挿入可能となる。
なお、外輪組立体は、ハブ輪31がその軸方向が重力方向に一致するようにして、ハブ輪31の軸方向上側から挿入して同芯に組み付けられる。
【0029】
また、封止部材12や保持器14の構成によっては、図4に示すように、アウトボード側の円すいころ11が外輪軌道22aとアウトボード側の封止部材12に接触するとともに、アウトボード側の円すいころ11を保持する保持器14がアウトボード側の封止部材12に接触する状態において、ハブ輪31のハブ輪側小鍔部35の外径D1は、アウトボード側の円すいころ11の尾部11aの最大内接円径D3より小さく形成されてもよい。
【0030】
また、図2に示すように、ハブ輪側小鍔部35の外径D1は、内輪41の内輪側小鍔部42の外径D2より小さく、ハブ輪側小鍔部35の当接面(アウトボード側側面)35aの傾きを、アウトボード側の円すいころ11の尾部11aの端面の傾きより大きくしている(即ち、円錐ハブユニット軸受10の中心軸Xに対する当接面35aの傾き角度θa<中心軸Xに対する尾部11aの端面の傾き角度θb)。これにより、円すいころ11がスキューしてハブ輪側小鍔部35と接触したとしても、相対速度の大きい円すいころ11の尾部11aの中心側でハブ輪側小鍔部35と接触することが回避され、スキューを増長させたり、焼付きに発展したりすることを防止している。
【0031】
さらに、ハブ輪側小鍔部35の外径D1は、内輪41の内輪側小鍔部42の外径D2より小さいので、ハブ輪31を熱間鍛造後に旋削して製作する際、ハブ輪側小鍔部35を内輪側小鍔部42と同じ外径とする場合と比較して、鍛造材からの旋削量が低減されて製造コストを抑制することができる。
【0032】
なお、潤滑性(列間グリースの軌道面への引き込み)の観点から、ハブ輪側小鍔部35の当接面35aの傾きθaは、円すいころ11の尾部11aの端面の傾きθbに対して15°以下でより大きく傾斜させることが好ましく、8°以上、12°以下で傾斜させることがより好ましい。
【0033】
また、図示の例では、内輪側小鍔部42の当接面42aの傾きは、インボード側の円すいころ11の尾部11aの端面の傾きと平行であるが、円すいころ11の尾部11aの端面の傾きに対して15°以下でより大きく傾斜させればよく、8°以上、12°以下で傾斜させることが好ましい。
【0034】
両列の円すいころ11、11は、熱処理後に尾部11aを基準に頭部11bが研削加工されるため、各円すいころ11の軸方向長さのばらつきは少ないが、尾部11aに機械加工を施せば、さらにばらつきを抑えることができる。これにより、各円すいころ11の長さを揃えることができ、アウトボード側の円すいころ11の頭部11bがハブ輪側大鍔部34に接触した状態における該円すいころ11の尾部11aとハブ輪側小鍔部35の当接面35aとの隙間Δ2、及びインボード側の円すいころ11の頭部11bが内輪41の内輪側大鍔部43に接触した状態におるインボード側の円すいころ11の尾部11aと内輪側小鍔部42の当接面42aとの隙間Δ1を小さくすることができる。
なお、アウトボード側での隙間Δ2は、当接面35aと内輪軌道33aとの交点と、円すいころ11の尾部11aに沿った平面との距離として与えられる。また、インボード側での隙間Δ1は、当接面42aと内輪軌道33bとの交点と、円すいころ11の尾部11aに沿った平面との距離として与えられる。
【0035】
具体的に、上記隙間Δ1、Δ2を0.15~0.30mmにすれば、円すいころ11を整列させる為のなじませ回転が少なくなり、起動トルクによる予圧測定が容易になるし、車両運転中の荷重負荷の変化に伴う円すいころ11の再整列にも迅速に対応でき、剛性感が向上する。
【0036】
また、隙間Δ1、Δ2を0.15~0.30mmに制御するには、各円すいころ11の軸方向長さを管理するだけでは不十分であり、内輪軌道33aの幅であるハブ輪側小鍔部35の当接面35aとハブ輪側大鍔部34の内側面との間隔、及び内輪軌道33bの幅である内輪側小鍔部42の当接面42aと内輪側大鍔部43の内側面との間隔を管理する必要がある。
【0037】
また、アウトボード側の円すいころ11の尾部11aとハブ輪側小鍔部35の当接面35aとの隙間Δ2>インボード側の円すいころ11の尾部11aと内輪側小鍔部42の当接面42aとの隙間Δ1とすれば(Δ2>Δ1)、アウトボード側のモーメント荷重変化の許容度を向上することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の円錐ハブユニット軸受10では、ハブ輪側小鍔部35の外径D1は、内輪41の内輪側小鍔部42の外径D2より小さく、ハブ輪側小鍔部35の当接面35aの傾きは、アウトボード側の円すいころ11の尾部11aの端面の傾きより大きいので、スキューが発生した場合であっても、該スキューが増長されるのを抑制して、焼付きや小鍔部の破損を防止できる。
【0039】
また、ハブ輪側小鍔部35の外径D1は、アウトボード側の円すいころ11が外輪軌道22aに接触するとともに、アウトボード側の円すいころ11を保持する保持器14が封止部材12に接触する状態において、アウトボード側の円すいころ11の尾部11aの最大内接円径D3より小径であるので、円錐ハブユニット軸受10の組付けが容易になる。
【0040】
さらに、ハブ輪側小鍔部35の外径D1は、内輪41の内輪側小鍔部42の外径D2より小径であるので、ハブ輪側小鍔部35を内輪側小鍔部42と同じ外径に形成する場合と比較して、ハブ輪31の鍛造素材からの加工代を削減することができる。
本実施形態の上記構成は、駆動輪用円錐ハブユニット軸受の例であるが、従動輪用円錐ハブユニット軸受にも適用可能である。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る円錐ハブユニット軸受について図5及び図6を参照して説明する。本実施形態の第三世代のハブユニット軸受10は、駆動輪用であり、内輪41がハブ輪31のインボード側端部を外径側に折り曲げた加締め部39によってハブ輪31に加締め固定されている点において、第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同一又は同等部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0042】
この実施形態では、アウトボード側の円すいころ11の尾部11aとハブ輪側小鍔部35の当接面35aとの隙間Δ2は、インボード側の円すいころ11の尾部11aと内輪側小鍔部42の当接面42aとの隙間Δ1より小さくなっている(Δ2<Δ1)。
【0043】
内輪41の加締め固定は、揺動加締め加工で外輪20を回転しながら行われるが、揺動加締め加工では、円周上の1点に加工荷重が入るため、内輪側大鍔部43の弾性変形が大きくなる。このため、上記寸法関係に規定することにより、加締め回転荷重による内輪41の内輪側大鍔部43の変形に対する許容度を向上することができる。
【0044】
即ち、内輪41を加締め固定する円錐ハブユニット軸受10の場合には、加締め荷重により倒れた内輪側大鍔部43の弾性変形分を加味して、隙間Δ1を大きくすることが好ましい。
【0045】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、円錐ハブユニット軸受10を従動輪用とする場合には、外輪20の軸方向内端部を塞ぐ部材として、封止部材12の代わりに、エンドキャップを適用してもよい。
【0046】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 内周面に複列の外輪軌道を有する外輪と、
外周面に、アウトボード側からインボード側に向かって、アウトボード側に車輪を支持固定する為の回転側フランジ、一方の列の内輪軌道、及び小径段部を少なくとも有するハブ輪と、アウトボード側端面を前記小径段部の段差面に突き当てた状態で前記小径段部の外周面に外嵌されて前記ハブ輪に固定され、外周面に他方の列の内輪軌道を有する内輪と、を備えるハブと、
前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数の円すいころと、
前記外輪と前記ハブとの間を封止する封止部材と、
を備える円錐ハブユニット軸受であって、
前記ハブ輪は、前記一方の列の内輪軌道と前記小径段部との間にハブ輪側小鍔部を備え、
前記ハブ輪側小鍔部の外径は、前記内輪の内輪側小鍔部の外径より小径であり、かつアウトボード側の前記円すいころが前記外輪軌道に接触するとともに、前記アウトボード側の前記円すいころを保持する保持器が前記封止部材に接触する状態において、アウトボード側の前記円すいころの尾部の最大内接円径より小径であり、
前記ハブ輪側小鍔部のアウトボード側側面の傾きは、アウトボード側の前記円すいころの尾部の端面の傾きより大きい、
円錐ハブユニット軸受。
この構成によれば、ハブ輪に小鍔部を設ける構成としつつも、スキューが発生した場合であっても、該スキューが増長されるのを抑制して、焼付きや小鍔部の破損を防止でき、かつハブ輪の組み付けが容易であり、さらに、製造コストも抑えることができる。
【0047】
(2) 前記内輪のインボード側端面は、前記ハブ輪のインボード側端面よりインボード側に位置しており、
アウトボード側の前記円すいころの尾部と前記ハブ輪側小鍔部の側面との隙間Δ2>インボード側の前記円すいころの尾部と前記内輪側小鍔部の側面との隙間Δ1である、
(1)に記載の円錐ハブユニット軸受。
この構成によれば、アウトボード側のモーメント荷重変化の許容度が向上する。
【0048】
(3) 前記内輪は、前記ハブ輪のインボード側端部を外径側に折り曲げることで前記ハブ輪に加締め固定され、
アウトボード側の前記円すいころの尾部と前記ハブ輪側小鍔部の側面との隙間Δ2<インボード側の前記円すいころの尾部と前記内輪側小鍔部の側面との隙間Δ1である、
(1)に記載の円錐ハブユニット軸受。
この構成によれば、加締め回転荷重による内輪側大鍔部の変形に対する許容度が向上する。
【符号の説明】
【0049】
10 円錐ハブユニット軸受
11 円すいころ
11a 尾部
12 封止部材
20 外輪
22a,22b 外輪軌道
30 ハブ
31 ハブ輪
32 回転側フランジ
33a 内輪軌道(一方の列の内輪軌道)
33b 内輪軌道(他方の列の内輪軌道)
35 ハブ輪側小鍔部
35a 当接面(アウトボード側側面)
36 小径段部
36a 段差面
38 ハブ輪のインボード側端面
39 加締め部(インボード側端部)
41 内輪
41b インボード側端面
42 内輪側小鍔部
D1 ハブ輪側小鍔部の外径
D2 内輪側小鍔部の外径
D3 円すいころの尾部の最大内接円径
Δ1 インボード側の円すいころの尾部と内輪側小鍔部の側面との隙間
Δ2 アウトボード側の円すいころの尾部とハブ輪側小鍔部の側面との隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7