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特開2024-118779メラニン産生促進剤およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118779
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】メラニン産生促進剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20240826BHJP
   A61K 36/488 20060101ALI20240826BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240826BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240826BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240826BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240826BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/488
A61P17/00
A61K8/9789
A61Q19/00
A61Q19/08
A61Q5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025264
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000119472
【氏名又は名称】一丸ファルコス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅和
(72)【発明者】
【氏名】小島 弘之
(72)【発明者】
【氏名】宇都 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】太田 智絵
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD01
4B018MD07
4B018MD48
4B018ME14
4B018MF01
4C083AA111
4C083AA112
4C083BB51
4C083BB53
4C083CC02
4C083CC31
4C083EE11
4C083EE12
4C083EE21
4C083EE28
4C083FF01
4C088AB59
4C088BA08
4C088CA09
4C088CA10
4C088CA14
4C088NA14
4C088ZA89
(57)【要約】
【課題】葛葉抽出物から新規のメラニン産生促進剤を製造する方法および葛葉抽出物を有効成分として含有する当該メラニン産生促進剤を提供する。
【解決手段】本発明は、葛葉に含まれる成分を有機溶媒で抽出する工程を含み、前記抽出工程に少なくともヘキサン抽出を含む、メラニン産生促進剤の製造方法または葛葉に含まれる成分を、二酸化炭素を抽出溶媒とする超臨界抽出法で抽出する工程を含む、メラニン産生促進剤の製造方法に関する。
【選択図】図7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
葛葉に含まれる成分を有機溶媒で抽出する工程を含み、
前記抽出工程に少なくともヘキサン抽出を含む、メラニン産生促進剤の製造方法。
【請求項2】
前記抽出工程で得られた有機溶媒抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、メラニン産生促進活性を有する画分を回収する工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
葛葉に含まれる成分を、二酸化炭素を抽出溶媒とする超臨界抽出法で抽出する工程を含む、メラニン産生促進剤の製造方法。
【請求項4】
葛葉抽出物を有効成分として含有するメラニン産生促進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニン産生促進剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メラニンは、人の皮膚や毛髪に存在する色素であり、メラノサイトでチロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質1および2(TRP-1およびTRP-2)等によって産生され、紫外線による生体組織の損傷から皮膚や毛髪を守ると共に、皮膚や毛髪の色調にも関与している。近年、紫外線照射を伴わずに肌を褐色化する需要が高まっており、セルフタンニング剤の利用などが従来から行われている。また、肌の褐色化や美白などに広く応用するため、細胞内のメラニン量制御に対して関心が高まっており、メラノサイトにおいてメラニン量を制御する物質の簡易的な探索方法が研究されている(特許文献1)。
【0003】
葛は、マメ科クズ属のつる性多年生植物として知られている。その葉である葛葉は、各種のビタミン、ミネラル、タンパク質とともに葉緑素が豊富に含まれることから、健康食品、例えば手延べ有色麺への利用がされている(特許文献2)。しかし、化粧品・医薬品の分野では、葛の花の抽出物から強いテストステロン5α-レダクターゼ阻害作用があるという報告がなされているが、葛葉抽出物においては有用な作用が見出されていない(特許文献3)。また、葛葉抽出物は上述のようなメラニン産生促進活性を有するというような報告も未だなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6650240号公報
【特許文献2】特開2011-125234号公報
【特許文献3】特開2011-219462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、葛葉抽出物から新規のメラニン産生促進剤を製造する方法および葛葉抽出物を有効成分として含有する当該メラニン産生促進剤を提供すること、などである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係るメラニン産生促進剤の製造方法は、
葛葉に含まれる成分を有機溶媒で抽出する工程を含み、
前記抽出工程に少なくともヘキサン抽出を含む。好ましくは、メタノール抽出とヘキサン抽出を逐次的に行う。
(2)別の実施形態に係るメラニン産生促進剤の製造方法において、好ましくは、
前記抽出工程で得られた有機溶媒抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、メラニン産生促進活性を有する画分を回収する工程を含む。
(3)上記目的を達成するための一実施形態に係るメラニン産生促進剤の製造方法は、
葛葉に含まれる成分を、二酸化炭素を抽出溶媒とする超臨界抽出法で抽出する工程を含む。
(4)上記目的を達成するための一実施形態に係るメラニン産生促進剤は、葛葉抽出物を有効成分として含有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、葛葉抽出物から新規のメラニン産生促進剤を製造する方法および葛葉抽出物を有効成分として含有する当該メラニン産生促進剤、などを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、製造例1において、葛葉部乾燥粉末をメタノールおよび各種有機溶媒によって抽出する工程のフロー図を示す。
図2図2は、製造例2において、葛葉部乾燥粉末のヘキサン抽出画分をシリカゲルクロマトグラフィーによって分画する工程のフロー図を示す。
図3A図3Aは、製造例1におけるメタノール抽出エキスで処理した際の、マウスメラノーマ細胞内のメラニン含有量を示す。細胞内メラニン含有量の相対値は、Cntを1.00として、メタノール抽出物エキスの20μg/mLが1.87、同40μg/mLが2.17、α-MSHが1.92であった。
図3B図3Bは、製造例1における各種有機溶媒による抽出画分で処理した際の、マウスメラノーマ細胞内のメラニン含有量を示す。細胞内メラニン含有量の相対値は、Cntを1.00として、ヘキサン画分の5μg/mLが2.67、同10μg/mLが4.96、同20μg/mLが7.67、酢酸エチル画分の5μg/mLが1.42、同10μg/mLが1.80、同20μg/mLが2.50、ブタノール画分の5μg/mLが1.02、同10μg/mLが0.96、同20μg/mLが1.15、水画分の5μg/mLが1.03、同10μg/mLが1.05、同20μg/mLが0.99、Magが1.94であった。
図3C図3Cは、製造例2におけるPMH1~PMH7画分で処理した際の、マウスメラノーマ細胞内のメラニン含有量を示す。細胞内メラニン含有量の相対値は、Cntを1.00として、PMH1の10μg/mLが2.26、同20μg/mLが4.64、PMH2の10μg/mLが1.35、同20μg/mLが2.72、PMH3の10μg/mLが1.75、同20μg/mLが3.87、PMH4の10μg/mLが1.40、同20μg/mLが1.95、PMH5の10μg/mLが1.33、同20μg/mLが1.91、PMH6の10μg/mLが1.38、同20μg/mLが2.21、PMH7の10μg/mLが1.07、同20μg/mLが1.21、Magが1.74であった。
図4図4は、製造例3における超臨界抽出物で処理した際の、マウスメラノーマ細胞内のメラニン含有量を示す。細胞内メラニン含有量の相対値は、Cntを1.00として、メタノール抽出物エキスの20μg/mLが1.58、同40μg/mLが2.32、超臨界抽出物の20μg/mLが1.62、同40μg/mLが2.55、α-MSHが1.29であった。
図5図5は、PMH1~PMH3画分の、細胞内チロシナーゼ活性評価の結果を示す。活性評価に用いた吸光度の値は、Cntが0.173、Magが0.259、PMH1が0.298、PMH2が0.322、PMH3が0.252であった。
図6図6は、PMH1~PMH3画分の、細胞内チロシナーゼ発現評価の結果を示す。
図7図7は、超臨界抽出物とヘキサン画分の、皮膚三次元モデルによる試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
(葛葉)
本発明に用いられる葛葉は、マメ科(Leguminosae)クズ属(Pueraria)クズ(Pueraria lobata)の葉である。葉は、葉身だけでなく、例えば、葉柄、托葉も含む。本発明において葛葉は、例えば生のまま又は乾燥物でもよく、粉砕して用いることもできる。
【0011】
(有機溶媒抽出)
本発明の一実施形態は、葛葉に含まれる成分を有機溶媒で抽出する工程を含み、前記抽出工程に少なくともヘキサン抽出を含む。本発明の実施形態に係る抽出工程の回数は、1回のみの操作に限定されない。抽出工程を複数回行う際の抽出工程での有機溶媒は、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコール或いは含水低級アルコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,3,5-ペンタントリオール、グリセリン、ポリエチレングリコール(分子量100~10万)等の多価アルコール或いは含水多価アルコール、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、キシレン、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、フェノール、トルエン、ヘキサン等の各種有機溶媒から選ばれる1種、もしくは2種以上の混液が挙げられる。上記の有機溶媒の中では、メタノール、ヘキサンが好ましく、ヘキサンが特に好ましい。また、メタノール抽出とヘキサン抽出を逐次的に行うことが好ましい。抽出後の残渣に再度新鮮な溶媒を添加し、抽出操作を施すこともできるし、抽出溶媒を複数回抽出原料に接触させることも可能である。必要ならば、その効果に影響のない範囲で更に脱臭、脱色等の精製処理を加えても良く、エバポレーターのような減圧濃縮装置や加熱による溶媒除去等により、濃縮することができる。
【0012】
抽出方法については、その溶媒の温度や原料に対する溶媒の重量比率、又は抽出時間についても、種々の原料及び使用する溶媒に対しそれぞれを任意に設定することができる。溶媒の温度としては-4℃から100℃の範囲で任意に設定できるが、原料中に含まれる成分の安定性の点から、10~40℃付近が好ましい。又、原料に対する溶媒の重量比率も、例えば原料:溶媒が、4:1~1:100の範囲内で任意に設定することができ、特に1:1~1:20の重量比率が好ましい。
【0013】
(シリカゲルカラムクロマトグラフィー)
本発明の別の実施形態は、上記抽出工程で得られた有機溶媒抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、メラニン産生促進活性を有する画分を回収する工程を含む。シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、種々の方法を利用可能であるが、順相のシリカゲルカラムクロマトグラフィーが好ましい。シリカゲルカラムクロマトグラフィーの移動相に用いる溶媒は、種々のものを利用可能であるが、ヘキサン、酢酸エチル、メタノールなどの各種有機溶媒およびそれらの混合液が好ましく、ヘキサン又はヘキサンと酢酸エチルの混合液がより好ましく、ヘキサンと酢酸エチルの容量比10:1の混合液が特に好ましい。画分の回収は、条件を変更して複数回行ってもよい。また、その他のクロマトグラフィー技術(逆相シリカゲルクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィー)や、分液洗浄、再沈殿、再結晶、粉体の懸濁洗浄、減圧乾燥などの精製操作を必要に応じて施すことができる。
【0014】
(超臨界抽出)
本発明の一実施形態は、葛葉に含まれる成分を、二酸化炭素を抽出溶媒とする超臨界抽出法で抽出する工程を含む。超臨界抽出法としては、圧力変化による分離法(定温下で超臨界流体を減圧、膨張させ、溶媒ガスの密度を下げて分離)、温度変化による分離法(定圧下で昇温或いは降温して超臨界流体と溶質を分離)、吸着分離法(分離槽中に抽出された溶質を吸着するような吸着剤を充填)等を採用できる。これらを単操作、複合操作として利用することで、高度な精製工程なしで、純度の高い葛葉抽出物を得ることができる。
【0015】
本発明において、超臨界状態にある流体(超臨界流体)は、超臨界状態にある二酸化炭素(超臨界二酸化炭素)を用いる。超臨界二酸化炭素とは、温度が31℃以上、圧力が7MPa以上の条件下で流体状態になった二酸化炭素をいい、本発明において、超臨界状態にはその近傍の状態も含むものとする。
【0016】
超臨界状態にある二酸化炭素による抽出条件として、温度の下限は超臨界流体として存在するために約31℃であり、35℃が好ましく、40℃が特に好ましい。上限はコスト的な観点から100℃であり、80℃が好ましく、60℃が特に好ましい。温度の範囲は、31~100℃であり、35~80℃が好ましく、40~60℃が特に好ましい。また、圧力の下限は超臨界流体として存在するために約7.4MPaであり、20MPaが好ましく、40MPaが特に好ましい。圧力の上限は、コスト的な観点から100MPaであり、80MPaが好ましく、50MPaが特に好ましい。圧力の範囲は7.4~100MPaであり、20~80MPaが好ましく、40~50MPaが特に好ましい。なかでも、温度が40~60℃で、かつ圧力が40~50MPaであることが特に好ましい。抽出の際の超臨界二酸化炭素の供給量の下限は、例葛葉1重量部に対して、5質量部であり、10質量部が好ましく、50質量部が特に好ましい。上限は、葛葉1重量部に対して500質量部であり、300質量部が好ましく、200質量部が特に好ましい。超臨界二酸化炭素の供給量の範囲は、5~500重量部が好ましく、10~300重量部がより好ましく、50~200重量部が特に好ましい。また、抽出時間の下限は、30分であり、1時間が好ましく、2時間が特に好ましい。上限は、24時間であり、10時間がより好ましく、5時間が特に好ましい。抽出時間の範囲は、30分~24時間が好ましく、1~10時間がより好ましく、2~5時間が特に好ましい。
【0017】
本発明の他の側面では、葛葉抽出物を有効成分として含有するメラニン産生促進剤を提供する。
【0018】
(メラニン産生促進剤)
本発明において「メラニン産生促進」とは、ヒトなどの生体内において、メラノサイトでのメラニン産生を促進させることを意味し、「メラニン産生促進活性」とは、上記のメラニン産生促進を引き起こす活性を意味する。また、「メラニン産生促進剤」とは、ヒトなどの生体内において、メラノサイトでのメラニン産生を促進させる薬剤又は組成物を意味する。
【0019】
本発明におけるメラニン産生促進剤の形態は、例えば皮膚外用剤の形態、経口組成物の形態が挙げられる。皮膚外用剤は、アンプル、カプセル、粉末、顆粒、液体、ゲル、気泡、エマルジョン、シート、ミスト、スプレー剤等利用上の適当な形態の1)医薬品類、2)医薬部外品類、3)局所用又は全身用の皮膚外用剤類(例えば、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、ローション、オイル、パック等の基礎化粧料、固形石鹸、液体ソープ、ハンドウォッシュ等の洗顔料や皮膚洗浄料、マッサージ用剤、クレンジング用剤、除毛剤、脱毛剤、髭剃り処理料、アフターシェーブローション、プレショーブローション、シェービングクリーム、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ等のメークアップ化粧料、香水類、美爪剤、美爪エナメル、美爪エナメル除去剤、パップ剤、プラスター剤、テープ剤、シート剤、貼付剤、エアゾール剤等)、4)頭皮・頭髪に適用する薬用又は/及び化粧用の製剤類(例えば、シャンプー剤、リンス剤、ヘアートリートメント剤、プレヘアートリートメント剤、パーマネント液、染毛料、整髪料、ヘアートニック剤、育毛・養毛料、パップ剤、プラスター剤、テープ剤、シート剤、エアゾール剤等)、5)浴湯に投じて使用する浴用剤、6)その他、腋臭防止剤や消臭剤、制汗剤、衛生用品、衛生綿類、ウエットティシュ等が挙げられる。経口組成物は、例えば、飲料、食品、医薬品、医薬部外品が挙げられる。
【0020】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。なお、以下の実施例において、各種成分の添加量を示す数値の単位%は、質量%を意味する。
【実施例0021】
(製造例1)葛葉成分の有機溶媒抽出
図1は、製造例1において、葛葉部乾燥粉末をメタノールおよび各種有機溶媒によって抽出する工程のフロー図を示す。葛葉部乾燥粉末799.89gを、メタノール10L中にて40℃、12時間の条件下で熱時抽出した。この工程を3回繰り返した。得られた抽出液を濾過し、濾液を減圧下溶媒留去してメタノール抽出エキス135.68gを得た。得られたメタノール抽出エキス130.43gに対し、ヘキサン2L、水2L中で分配抽出した。この工程を6回繰り返し、ヘキサン画分28.89gを得た。さらに水層に酢酸エチル2Lを加え分配抽出した。この工程を3回繰り返し、酢酸エチル画分5.92gを得た。同様に水層にn-ブタノール2Lを加え分配抽出した。この工程を3回繰り返し、n-ブタノール画分25.40gおよび水画分71.26gを得た。
【0022】
(製造例2)シリカゲルカラムクロマトグラフィーによるヘキサン画分の分画
図2は、製造例2において、葛葉部乾燥粉末のヘキサン抽出画分をシリカゲルクロマトグラフィーによって分画する工程のフロー図を示す。製造例1で得られたヘキサン画分18.8gを、順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー[移動相(v/v):ヘキサン-酢酸エチル(10:1→5:1→2:1→1:1)→酢酸エチル→酢酸エチル-メタノール(2:1)→メタノール]で分画し、PMH1(2.9235g)、PMH2(2.7273g)、PMH3(1.6714g)、PMH4(0.6842g)、PMH5(1.0200g)、PMH6(1.1662g)、PMH7(6.0442g)の各画分を得た。
【0023】
(製造例3)葛葉成分の超臨界抽出
葛葉30.03gを原料、二酸化炭素を用いて、二酸化炭素流量25g/min、温度40℃、圧力40MPa、抽出時間3時間の条件下で、超臨界抽出を行った。以下の表1に示した通り、原料の葛葉30.03gから、超臨界抽出物0.28gと抽出残渣27.97gが得られ、仕込み量からの回収率は94.07%であった。このうち超臨界抽出物を、後述の試験に供した。表1においてS/Fは、溶媒比を示し、葛葉を1重量部とした場合の抽出の際の超臨界二酸化炭素の供給量を示す。溶媒比は二酸化炭素共有量(g)/原料仕込み量(g)で算出され、本製造例では150になるように行った。したがって、本製造例では葛葉1重量部に対して臨界二酸化炭素150重量部が供給された。
【0024】
【表1】
【0025】
(試験例1)メラノーマ細胞中のメラニン含有量の測定
マウスメラノーマ細胞B16-F1(B16-F1((凍結))、EC92101203-F0、株式会社ケー・エー・シー)を用いて、製造例1~3に係る各種サンプルについて、細胞中のメラニン含有量の測定を行った。
【0026】
(1-1)細胞の培養方法と各検体の処理方法
マウスメラノーマ細胞B16-F1の培養は、10%FBS(Gibco社)を含むDMEM(日水製薬株式会社製)を使用して行った。各細胞を24ウェルプレートに2×10個/ウェルで播種し、37℃、5%CO下で培養した。24時間後、培地に各サンプルを10、20又は40μg/mL、もしくは5、10又は20μg/mL、の濃度で添加した。48時間後、新しい培地に交換し、再度各サンプルを同量添加し、24時間培養した。また、ポジティブコントロールは、1μMのα-メラニン細胞刺激ホルモン(以下、α-MSHと記載)(Sigma-Aldrich社製)、または20μMのマグノリン(以下、Magと記載)(Toronto Research Chemicals社製)を用いた。ここでMは、体積モル濃度でmol/Lのことを指す。以下も同様である。
【0027】
(1-2)細胞中のメラニン量測定法
上記のように培養後、培地を除去し、ウェル中に1N NaOHを120μL加え細胞を溶解した。細胞溶解液を超音波処理し、細胞およびメラニンを溶解させた。その後、得られた細胞溶解液を96ウェルプレートに移し、マイクロプレートリーダーを用いて吸光度(415nm)を測定することでメラニン含有量を評価した。各サンプルのメラニン含有量はコントロール(サンプル非処理)群の吸光度の平均を1とした倍率で算出した。メラニン含有量の評価は、すべて3回ずつ行った(n=3)。統計学的有意差は、Studentのt検定を用いて、p値を算出した。図中の*及び**は、Studentのt検定でp<0.05及びp<0.01の有意差を示す。
【0028】
(2)結果
図3Aは、製造例1におけるメタノール抽出エキスで処理した際の、マウスメラノーマ細胞内のメラニン含有量を示す。以後、図中のCntおよびControlはコントロール群を示す。図3AないしC、および図4において、グラフの縦軸はコントロール群の吸光度の平均を1とした場合の各サンプルの吸光度の平均の倍率を示し、横軸はサンプルの種類および添加濃度を示す。図3Aに示したように、葛葉のメタノール抽出エキスで処理した細胞は、濃度依存的にメラニン含有量が増加し、ポジティブコントロールであるα-MSHと比較しても有意に高いメラニン含有量を示した。この結果から、メタノール抽出エキスにメラニン産生促進活性があると考えられたため、メタノール抽出エキスを各種有機溶媒で抽出し、各画分を得た。
【0029】
図3Bは、製造例1における各種有機溶媒による抽出画分で処理した際の、マウスメラノーマ細胞内のメラニン含有量を示す。図3Bに示したように、各種有機溶媒抽出後の各画分の中では、ヘキサン画分で処理した細胞が、他の画分やポジティブコントロールであるα-MSHと比較して、コントロール群に対して有意に高いメラニン含有量を示した。このことから、ヘキサン画分にメラニン産生促進活性を有する有効成分が存在すると考えられたため、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いてヘキサン画分の分画を行った。
【0030】
図3Cは、製造例2におけるPMH1~PMH7画分で処理した際の、マウスメラノーマ細胞内のメラニン含有量を示す。図3Cに示したように、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分画後の画分の中では、PMH1、PMH2、PMH3で処理した細胞がそれぞれコントロール群に対して有意に高いメラニン含有量を示した。このことから、上記三つの画分のいずれかにメラニン産生促進活性を有する有効成分が存在すると考えられたため、細胞内でのメラニン合成酵素チロシナーゼの活性およびタンパク質発現について、後述の試験を行った。
【0031】
図4は、製造例3における超臨界抽出物で処理した際の、マウスメラノーマ細胞内のメラニン含有量を示す。図4に示したように、葛葉の超臨界抽出物で処理した細胞は、製造例1のメタノール抽出エキスで処理したものと同等のメラニン含有量を示した。この結果から、葛葉の超臨界抽出物は、製造例1のメタノール抽出エキスと同等のメラニン産生促進活性を有すると考えられる。
【0032】
(試験例2)メラノーマ細胞内のチロシナーゼ活性評価
(1-1)細胞の培養方法と各検体の処理方法
B16-F1細胞を6ウェルプレートに1.2×10個/ウェルで播種し、37℃、5%CO下で培養した。24時間後、培地にPMH1~3をそれぞれ添加(培地中最終濃度40μg/mL)した。また、ポジティブコントロールとしてMag20μMを用いた。48時間後、新しい培地に交換し、再度各サンプルを同量添加し、24時間培養した。培養後、培養液を除去しリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を洗浄した。600μLの1%TritonTM X-100(Sigma-Aldrich社製)含有0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)をディッシュに加え、細胞を溶解し溶解液をマイクロチューブに移した。12000rpmで15分間遠心後、上清を細胞溶解液とした。得られた細胞溶解液のタンパク質濃度は、プロテインアッセイキット(バイオ・ラッド社)を用いて測定した。
【0033】
(1-2)細胞内チロシナーゼ活性評価法
チロシナーゼの活性は、メラニン生成の中間体である3,4-dihydroxy-L-phenylalanine(L-DOPA)を基質として、チロシナーゼによるDOPAクロム産生量を測定することで評価した。96ウェルプレートにL-DOPA(5mM)10μL及び細胞溶解液90μLを添加した。15分後、DOPAクロム産生量を算出するためマイクロプレートリーダーにて吸光度(415nm)を測定した。
【0034】
(2)結果
図5は、PMH1~PMH3画分の、細胞内チロシナーゼ活性評価の結果を示す。図5において、グラフの縦軸は、DOPAクロム産生量を意味する吸光度の平均値を示し、横軸はサンプルの種類および添加濃度を示す。PMH1およびPMH2で処理した細胞は、ポジティブコントロールであるMagで処理したものよりも顕著にDOPAクロム産生量が上昇した。PMH3で処理したものは、PMH1およびPMH2で処理したものほどDOPAクロム産生量が上昇しなかった。
【0035】
(試験例3)メラノーマ細胞内のチロシナーゼ発現評価
(1-1)細胞の培養方法と各検体の処理方法
B16-F1細胞を6cmディッシュに3×10個/ディッシュで播種し、37℃、5%CO下で培養した。24時間後、培地にヘキサン画分、PMH1を添加(培地中最終濃度20μg/mL)した。また、ポジティブコントロールとしてMagを用いた。48時間後、培養液を除去しリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を洗浄した。200μLのRIPA Lysis Buffer(サンタクルズ社)をディッシュに加え、細胞を溶解し溶解液をマイクロチューブに移した。12000rpmで15分間遠心後、上清を細胞溶解液とした。得られた細胞溶解液のタンパク質濃度は、プロテインアッセイキット(バイオ・ラッド社)を用いて測定した。
【0036】
(1-2)細胞内チロシナーゼ発現評価法
上記細胞溶解液中のチロシナーゼの検出を、ウエスタンブロット法で行った。チロシナーゼに対する抗体は、サンタクルズ社から入手した。
【0037】
(2)結果
図6は、PMH1~PMH3画分の、細胞内チロシナーゼ発現評価の結果を示す。PMH1は、コントロールと比較して特に強くチロシナーゼのタンパク質発現を誘導した。PMH2およびPMH3は、PMH1ほどチロシナーゼのタンパク質発現を誘導しなかった。
【0038】
上記試験例2および3の結果から、双方で顕著な結果を示したPMH1を、メラニン産生促進活性を有する画分であると推定した。
【0039】
(試験例4)皮膚三次元モデルを用いたメラニン産生能の評価
(1)皮膚三次元モデルに対する各検体の処理方法
皮膚三次元モデルは、MEL-300-B(クラボウ社製)を用い、EPI-100NMM(クラボウ社製)培地中で培養した。培養開始を0日目として、1,3,5,7日目にサンプル処理を行い、9日目に肉眼および顕微鏡観察を行った。サンプル処理では、培地中において、超臨界抽出物、ヘキサン画分を100μg/mLもしくは300μg/mLの濃度(最終濃度)となるように添加した。なお、当該超臨界抽出物(製造例3により作製された超臨界抽出物)及び当該ヘキサン画分(製造例1により作製されたヘキサン画分)を培地中に添加する際は、当該超臨界抽出物の粉末及び当該ヘキサン画分の粉末をそれぞれ、エタノール及びPBSとの混合液により溶解した溶解液を用いることにより添加した。また、この試験例4では、サンプル非処理のものをコントロールとした。顕微鏡観察は、培養倒立顕微鏡(Nikon社製、型式TS-100、倍率100倍)で行った。
【0040】
(2)結果
図7は、超臨界抽出物とヘキサン画分の、皮膚三次元モデルによる試験の結果を示す。上段の写真は、皮膚三次元モデルの培養カップ表面を1倍の倍率で撮影したものであり、下段の写真は、上段の培養カップの細胞を培養倒立顕微鏡で100倍の倍率で撮影したものである。超臨界抽出物およびヘキサン画分は、コントロールと比較して、より皮膚三次元モデルの黒化を誘導した。このことから、葛葉の超臨界抽出物およびヘキサン画分は皮膚の角層が存在する状態でもメラニン産生促進活性を有すると考えられる。
【0041】
以上の結果より、葛葉から製造例1ないし3に記載の方法で抽出したヘキサン画分および超臨界抽出物は、メラニン産生促進活性を有していることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は例えば、ヒトなどの皮膚においてメラニンの産生を促進するための組成物(化粧品等)などに利用可能である。

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7