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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118785
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】薬剤撮影装置及び薬剤鑑別システム
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
A61J3/00 310E
A61J3/00 310K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025277
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】櫻木谷 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】飯野 和樹
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047JJ01
4C047JJ26
4C047JJ27
4C047JJ40
4C047KK03
4C047KK13
4C047KK28
4C047KK40
(57)【要約】
【課題】薬剤をより正確に鑑別できるようにする。
【解決手段】トレイを装置筐体外部に排出して当該トレイ上に薬剤を袋に収納した一包化薬が載置された後、当該トレイを装置筐体内部に収納して当該一包化薬を撮影する撮影装置において、前記トレイ上に載置された前記一包化薬の前記袋内の薬剤を当該袋の一端側に片寄せる片寄手段を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイを装置筐体外部に排出して当該トレイ上に薬剤を袋に収納した一包化薬が載置された後、当該トレイを装置筐体内部に収納して当該一包化薬を撮影する撮影装置において、
前記トレイ上に載置された前記一包化薬の前記袋内の薬剤を当該袋の一端側に片寄せる片寄手段を備える
ことを特徴とする薬剤撮影装置。
【請求項2】
前記片寄手段は、
前記トレイ上に載置された前記一包化薬の前記袋の他端側を、前記トレイとの間に挟み込んで押しつぶし、そのまま前記袋の前記他端側から前記一端側に向かう第1の方向に移動することにより、前記袋内の薬剤を当該袋の前記一端側に片寄せる
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤撮影装置。
【請求項3】
前記トレイには、
前記一包化薬を載置する載置部が設けられ、
前記片寄手段は、
前記載置部上に載置された前記一包化薬の前記袋内の薬剤を当該袋の前記一端側に片寄せる
ことを特徴とする請求項2に記載の薬剤撮影装置。
【請求項4】
前記載置部は、
薬剤を載置すべきでない奥側の非鑑別領域と、薬剤を載置すべき手前側の鑑別領域とに分けられていて、
前記載置部には、
前記袋の前記他端側が、前記非鑑別領域内に位置する向きで前記一包化薬が載置され、
前記片寄手段は、
前記非鑑別領域から前記鑑別領域まで移動することにより、前記袋内の薬剤を前記鑑別領域側に片寄せる
ことを特徴とする請求項3に記載の薬剤撮影装置。
【請求項5】
前記片寄手段は、
前記載置部における前記第1の方向と直交する幅方向に延びる回転軸を有する円柱状のローラである
ことを特徴とする請求項3に記載の薬剤撮影装置。
【請求項6】
前記片寄手段は、
前記載置部における前記第1の方向と直交する幅方向に延び、前記第1の方向を厚さ方向とする薄板状のスキージである
ことを特徴とする請求項3に記載の薬剤撮影装置。
【請求項7】
前記片寄手段が前記トレイ上に載置された前記一包化薬の前記袋の前記他端側を前記トレイとの間に挟み込んで押しつぶす際に、前記トレイを下側から支持する支持部を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の薬剤撮影装置。
【請求項8】
前記装置筐体に設けられた吸気口から吸気して前記装置筐体内部の圧力を高める吸気部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤撮影装置。
【請求項9】
前記吸気部は、
前記トレイを前記装置筐体内部に収納して前記片寄手段により前記袋内の薬剤を当該袋の前記一端側に片寄せる際に、前記吸気口から吸気して前記装置筐体内部の圧力を高める
ことを特徴とする請求項8に記載の薬剤撮影装置。
【請求項10】
前記装置筐体は、
前記トレイを収納した際に、前記トレイの周辺が密閉空間となる構造を有し、
前記吸気部は、
前記吸気口から前記密閉空間に吸気して当該密閉空間内部の圧力を高める
ことを特徴とする請求項8に記載の薬剤撮影装置。
【請求項11】
請求項1又は請求項8に記載の薬剤撮影装置と、
薬剤の特徴を蓄積した薬剤データベースと、
前記薬剤撮影装置により撮影された薬剤の特徴と、前記薬剤データベースに蓄積された薬剤の特徴とを比較することで、前記撮影された薬剤を鑑別する薬剤鑑別装置と
を備える
ことを特徴とする薬剤鑑別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤撮影装置及び薬剤鑑別システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、錠剤やカプセル剤などの薬剤を薬剤撮影装置により撮影して得られた画像をもとに、薬剤を鑑別する薬剤鑑別装置がある。この種の薬剤鑑別装置では、例えば、透明部材上に載置された薬剤を上方のカメラで撮影して得られた画像と下方のカメラで撮影して得られた画像とから、薬剤に印刷又は刻印された薬剤識別情報などの特徴を抽出し、抽出した特徴を用いて薬剤を鑑別するようになっていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2015/152225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、薬剤撮影装置では、1以上の薬剤を分包紙と呼ばれる透明な袋に収納してまとめた一包化薬をそのまま透明部材上に載置して撮影することもできる。この場合、分包紙には患者名や服用時間などが印刷された印刷帯が設けられている為、当該印刷帯の裏側に薬剤が入ってしまわないように、薬剤鑑別装置の操作者が分包紙内の薬剤を分包紙の一端側(つまり印刷帯が設けられていない部分)に寄せた状態で一包化薬を透明部材上に載置しなければならない。
【0005】
しかしながら、手作業で、薬剤を分包紙の一端側に寄せた状態で一包化薬を透明部材上に載置することは難しく、一包化薬を透明部材上に載置した際に薬剤が印刷帯の裏側に入ってしまう場合があり、この場合に薬剤鑑別精度が低下してしまう。
【0006】
本発明は以上の点を考慮したものであり、薬剤をより正確に鑑別できるようにする薬剤撮影装置及び薬剤鑑別システムを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明の薬剤撮影装置においては、トレイを装置筐体外部に排出して当該トレイ上に薬剤を袋に収納した一包化薬が載置された後、当該トレイを装置筐体内部に収納して当該一包化薬を撮影する撮影装置において、前記トレイ上に載置された前記一包化薬の前記袋内の薬剤を当該袋の一端側に片寄せる片寄手段を備える。
【0008】
これにより、トレイ上に載置された一包化薬の袋内の薬剤を当該袋の一端側に自動で片寄せることができる。
【0009】
さらに本発明の薬剤鑑別システムにおいては、上述した本発明の薬剤撮影装置と、薬剤の特徴を蓄積した薬剤データベースと、前記薬剤撮影装置により撮影された薬剤の特徴と、前記薬剤データベースに蓄積された薬剤の特徴とを比較することで、前記撮影された薬剤を鑑別する薬剤鑑別装置とを備える。
【発明の効果】
【0010】
かくして本発明は、薬剤をより正確に鑑別できるようにする薬剤撮影装置及び薬剤鑑別システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態による持参薬鑑別システムの全体構成を示す図である。
図2】第1の実施の形態による撮影装置の外観を示す斜視図である。
図3】第1の実施の形態による撮影装置内部に設けられた撮影機構の構成を示す部分断面図である。
図4】一包化薬の構成を示す図である。
図5】第1の実施の形態によるトレイの受け皿にセットされた一包化薬を示す図である。
図6】第1の実施の形態によるトレイユニット及び片寄ユニットの構成を示す図である。
図7】第1の実施の形態による持参薬鑑別システムのシステム構成を示す図である。
図8】第1の実施の形態による片寄ローラの動作を示す図である。
図9】第1の実施の形態によるトレイの片寄ローラの停止位置を示す図である。
図10】第1の実施の形態による吸気動作を示す図である。
図11】第2の実施の形態による片寄スキージの構成を示す図である。
図12】他の実施の形態による支持ローラの構成を示す図である。
図13】他の実施の形態によるトレイを傾ける機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態(以下、これを実施の形態と呼ぶ)について、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.持参薬鑑別システムの全体構成]
まず図1を用いて、第1の実施の形態による薬剤鑑別システムとしての持参薬鑑別システム1の全体構成について簡単に説明する。この持参薬鑑別システム1は、病院や薬局などの医療機関に導入され、患者が持参した他の医療機関で処方された薬(以下、これを持参薬と呼ぶ)を鑑別するシステムである。この持参薬鑑別システム1は、USBなどのインタフェースで接続された薬剤鑑別装置としての制御装置2と薬剤撮影装置としての撮影装置3とで構成される。
【0014】
制御装置2は、持参薬鑑別システム1全体を制御するコンピュータであり、本体部20と、本体部20に接続された表示部21と操作部22とを有している。表示部21は液晶ディスプレイなどであり、操作部22はキーボードやマウスなどである。
【0015】
撮影装置3は、持参薬としての薬剤を撮影する装置であり、箱型の装置筐体30を有している。装置筐体30の前面には、上下方向の中央部にトレイ排出口31が設けられている。撮影装置3は、このトレイ排出口31からトレイ(図1では省略)を前方に排出することで、トレイを装置筐体30外部に露出することができ、また前方に排出したトレイを後方に引き戻すことで、トレイを装置筐体30内部に収容できるようになっている。尚、トレイ排出口31には、トレイ排出時には開き、トレイ収容時には閉じるシャッタ32が設けられている。持参薬鑑別システム1の構成は、以上のようになっている。尚、本実施の形態では、持参薬鑑別システム1を、制御装置2と撮影装置3とで実現しているが、これに限らず、制御装置2と撮影装置3の両方の機能を備える1台の装置により持参薬鑑別システム1を実現してもよい。
【0016】
ここで、持参薬鑑別システム1の大まかな動作について簡単に説明する。まず薬剤師などの操作者(オペレータ)が、制御装置2を操作して撮影装置3のトレイの排出を指示すると、制御装置2は、この指示に従って撮影装置3にトレイの排出を指示する。撮影装置3は、この指示に従ってトレイ排出口31からトレイを排出する。ここで操作者は、装置筐体30外部に露出しているトレイ上に鑑別したい薬剤(つまり患者の持参薬)を載置する。
【0017】
その後、操作者が、制御装置2を操作して薬剤の鑑別を指示すると、制御装置2は、この指示に従って撮影装置3に薬剤の撮影を指示する。撮影装置3は、この指示に従ってトレイを後方に引き戻して装置筐体30内部に収容し、装置筐体30内部に有するカメラ(図1では省略)でトレイ上の薬剤を撮影する。このようにして撮影装置3により撮影された画像は制御装置2へ送られる。制御装置2は、撮影装置3から送られてきた画像に写っている薬剤の特徴(形状、大きさ、色、印刷又は刻印された薬剤識別情報など)をもとに薬剤の鑑別を行い、鑑別結果を表示部21に表示する。持参薬鑑別システム1の大まかな動作は、以上のようになっている。
【0018】
[1-2.撮影装置の外観構成]
次に、撮影装置3の外観構成について、図2(A)、(B)を用いて説明する。尚、図2(A)、(B)は、それぞれ撮影装置3の外観を装置筐体30の前面側から見た斜視図であり、図2(A)はトレイ収容時、図2(B)はトレイ排出時の斜視図となっている。ここで、装置筐体30の前面から後面への方向を後方向、後面から前面への方向を前方向、装置筐体30の下側から上側への方向を上方向、装置筐体30の上側から下側への方向を下方向、装置筐体30の右側から左側への方向を左方向、装置筐体30の左側から右側への方向を右方向と定義する。
【0019】
図2(A)、(B)に示すように、撮影装置3の装置筐体30は、前面中央にトレイ排出口31とシャッタ32が設けられていて、図2(B)に示すように、シャッタ32が開いてトレイ排出口31からトレイ40の一部が排出されるようになっている。トレイ40は、透明な板状部材(例えば透過率が高いガラス板)でなる受け皿41を有していて、トレイ排出口31から排出されたときに、少なくともこの受け皿41を装置筐体30外部に露出させ、この受け皿41上に薬剤を載置できるようになっている。尚、詳しくは後述するが、撮影装置3では、薬剤を透明な分包紙と呼ばれる袋に収納してまとめた一包化薬をそのままトレイ40上にセット(載置)することで、当該一包化薬に含まれている薬剤を分包紙から出さずに鑑別できるようになっている。また、装置筐体30の内部には後述する撮影機構50が設けられていて、トレイ40はこの撮影機構50の一部となっている。
【0020】
さらに装置筐体30は、右側面に開閉可能な吸気口33が設けられている。装置筐体30は、トレイ40を内部に収納してシャッタ32と吸気口33を閉じることで内部が密閉空間となる構造となっている。また装置筐体30内部には図示しないコンプレッサーが設けられている。そして装置筐体30は、シャッタ32を閉じたまま吸気口33を開けてコンプレッサーで吸気することにより装置筐体30内部の圧力を制御可能なチャンバー構造となっている。撮影装置3の外観構成は、以上のようになっている。
【0021】
[1-3.撮影機構の構成]
次に、図3を用いて、撮影装置3の内部に設けられた撮影機構50の構成について説明する。尚、図3は、撮影機構50を装置筐体30の前面側から見た図であり、一部を省略又は簡略化した模式図となっている。また図3は、ハッチングで示す一部分が断面となっている部分断面図である。
【0022】
この図3に示すように、撮影機構50は、前後方向に移動可能なトレイ40と、装置筐体30内部に収容されたトレイ40の上方に配置された、上側カメラ51、当該上側カメラ51に取り付けられたレンズ52、上側第1照明53、上側第2照明54と、当該トレイ40の下方に配置された、下側カメラ55、当該下側カメラ55に取り付けられたレンズ56、下側第1照明57、下側第2照明58とを有している。
【0023】
トレイ40は、厚さ方向に貫通する上方及び下方から見て四角形状の孔40hが設けられていて、この孔40hを塞ぐようにして、トレイ40よりも薄い四角形状のガラス板で形成された受け皿41が取り付けられている。この受け皿41は、上面がトレイ40の上面よりも1段低くなるように取り付けられている。この為、トレイ40は、受け皿41の部分が窪みとなっていて、受け皿41上に載置した一包化薬がこの窪みに収まることで、トレイ40の移動時などに受け皿41上に載置した一包化薬が受け皿41から外れたりすることを防いでいる。
【0024】
トレイ40は、この受け皿41を水平に保った状態で前後方向に移動可能となっている。このトレイ40は、撮影装置3内部の最も奥まで引き込まれてトレイ40全体が装置筐体30内部に収納される位置(これを収納位置と呼ぶ)と、図2(B)に示す装置筐体30外部に最も引き出されてトレイ40の少なくとも受け皿41の部分が撮影装置3外部に露出する位置(これを排出位置)との間で前後方向に移動可能となっている。撮影機構50では、このトレイ40を例えば収納位置よりも前方で且つトレイ40全体が撮影装置3内部に収納されている所定の撮影位置(収納位置と同位置でもよい)まで移動させ、受け皿41上に載置された薬剤を撮影するようになっている。尚、このトレイ40は、トレイ40とトレイ40を前後方向に移動させる図示しない駆動部などとで構成されるトレイユニット70として、撮影機構50に組み込まれている。またこのトレイ40の受け皿41以外の部分は、非透過性の光学特性を有していて例えば黒色の材料で形成されている(つまり不透明な部材である)。
【0025】
このトレイ40の上方には、トレイ40に1番近い位置に上側第2照明54が配置され、その上方に上側第1照明53が配置され、さらにその上方に、上側カメラ51がレンズ52を下方(つまりトレイ40の上面部側)に向けて配置されている。
【0026】
一方、トレイ40の下方には、トレイ40に1番近い位置に下側第2照明58が配置され、その下方に下側第1照明57が配置され、さらにその下方に、下側カメラ55がレンズ56を上方(つまりトレイ40の下面部側)に向けて配置されている。
【0027】
上側カメラ51は、トレイ40の透明な受け皿41に載置された薬剤を上方から撮影するカメラであり、レンズ52から延びる光軸A1が水平な受け皿41に対して垂直となる向きで、装置筐体30内部の図示しない内部フレームに固定されている。この上側カメラ51は、例えばUSBケーブル60により制御装置2と接続されていて、制御装置2からの指示に従って撮影を実行し、その結果得られた画像を制御装置2に送信するようになっている。
【0028】
一方、下側カメラ55は、トレイ40の透明な受け皿41に載置された薬剤を下方から撮影するカメラであり、レンズ56から延びる光軸A2が受け皿41に対して垂直となる向きで、装置筐体30内部の図示しない内部フレームに固定されている。この下側カメラ55も、上側カメラ51と同様、例えばUSBケーブル61により制御装置2と接続されていて、制御装置2からの指示に従って撮影を行い、その結果得られた画像を制御装置2に送信するようになっている。これら上側カメラ51と下側カメラ55は、それぞれの光軸A1、A2が一致する(重なる)ようにして固定されている。
【0029】
上側カメラ51及び下側カメラ55は、それぞれレンズ52及びレンズ56を介して、受け皿41の上面側にピントが合うように(つまり受け皿41の上面に載置された薬剤にピントが合うように)高さ方向の位置が調整されている。
【0030】
上側第1照明53は、上側カメラ51の撮影範囲の外側に位置するリング状の照明であり、装置筐体30内部の図示しない内部フレームに固定されている。この上側第1照明53は、例えばLEDを光源とするフラット照明であり、撮影時にトレイ40の受け皿41に対して、上方から垂直方向(つまり上側カメラ51の光軸A1と平行な方向である図中矢印B1で示す方向)に光を照射するようになっている。
【0031】
上側第2照明54は、上側カメラ51の撮影範囲の外側に位置するとともに、上側第1照明53の外径より大きな内径を有するリング状の照明であり、装置筐体30内部の図示しない内部フレームに固定されている。この上側第2照明54は、例えばLEDを光源とするローアングル照明であり、トレイ40の受け皿41に対して、上方から上側カメラ51の光軸A1へと向かう斜め方向(図中矢印B2で示す方向)に光を照射するようになっている。
【0032】
一方、下側第1照明57は、下側カメラ55の撮影範囲の外側に位置するリング状の照明であり、装置筐体30内部の図示しない内部フレームに固定されている。この下側第1照明57も、例えばLEDを光源とするフラット照明であり、撮影時にトレイ40の受け皿41に対して、下方から垂直方向に(つまり下側カメラ55の光軸A2と平行な方向である図中矢印B3で示す方向)に光を照射するようになっている。
【0033】
下側第2照明58は、下側カメラ55の撮影範囲の外側に位置するとともに、下側第1照明57の外径より大きな内径を有するリング状の照明であり、装置筐体30内部の図示しない内部フレームに固定されている。この下側第2照明58は、例えばLEDを光源とするローアングル照明であり、トレイ40の受け皿41に対して、下方から下側カメラ55の光軸A2へと向かう斜め方向(図中矢印B4で示す方向)に光を照射するようになっている。
【0034】
さらに撮影機構50は、装置筐体30内部に収容されたトレイ40の受け皿41と上側第2照明54との間に、受け皿41上に載置された一包化薬の分包紙内の薬剤を分包紙の後端側から前端側に片寄せる片寄ローラ80が設けられている。この片寄ローラ80は、左右方向に延びる円柱状のローラであり上下方向及び前後方向への移動が可能となっている。詳しくは後述するが、この片寄ローラ80は、受け皿41上に載置された一包化薬の分包紙の後端部分を上方から受け皿41に押し付け、受け皿41との間に分包紙を挟み込んだまま受け皿41上を前方に移動することにより分包紙内の薬剤を分包紙の前端側に片寄せるようになっている。尚、この片寄ローラ80は、片寄ローラ80と当該片寄ローラ80を上下方向及び前後方向に移動させる図示しない駆動部などとで構成される片寄ユニット90として、撮影機構50に組み込まれている。
【0035】
トレイユニット70と片寄ユニット90は、装置筐体30内部に設けられたトレイコントロール基板を介して制御装置2に接続され、上側第1照明53、上側第2照明54、下側第1照明57、及び下側第2照明58は、装置筐体30内部に設けられた照明コントロールユニットを介して制御装置2に接続されている。撮影機構50の構成は、以上のようになっている。
【0036】
[1-4.一包化薬の構成]
ここで、図4を用いて、一包化薬100について説明する。一包化薬100は、長方形状の透明又は半透明の分包紙101の中に、1回に服用する薬剤Dgをまとめて収納したものである。この一包化薬100の多くは、分包紙101の表面に、患者名や服用時間などが印刷(もしくは記入)された印刷帯102が設けられている。この印刷帯102は、患者名や服用時間などが見易くなるように、例えば他の部分と比較して透明度が低くなっている。図4に示す一包化薬100は、表面を縦方向に分割した場合の2つの領域Ar1、Ar2のうちの一方の領域Ar1に印刷帯102が設けられ、この印刷帯102に「XX様 朝用」と印刷された例である。一包化薬100の構成は、以上のようになっている。
【0037】
[1-5.トレイユニット及び片寄ユニットの構成]
つづけてトレイユニット70及び片寄ユニット90の構成についてさらに詳しく説明する。これらの構成を説明するにあたり、まず一包化薬100の受け皿41へのセット(載置)の仕方について図5を用いて説明する。尚、図5は、一包化薬100がセットされた状態のトレイ40の一部(受け皿41周り)を上方から見た図である。この図5に示すように、撮影装置3では、操作者が、一包化薬100を、印刷帯102が奥側となる向きで、トレイ40の受け皿41にセット(載置)するようになっている。尚、この一包化薬100は、サイズ及び印刷帯102の位置が規定されている。
【0038】
ここで、受け皿41は、前後方向の長さが、受け皿41にセットしたときの一包化薬100の前後方向の長さとほぼ等しくなっている。
【0039】
ところで、一包化薬100を上側カメラ51及び下側カメラ55で撮影して得られる画像に、薬剤Dg以外のものである印刷帯102や印刷帯102の文字が写り込んでいると、印刷帯102の裏側に薬剤Dgが隠れたり、印刷帯102の文字を薬剤Dgに印刷されている薬剤識別情報と誤認識したりして、薬剤Dgの鑑別精度が低下してしまう。尚、一包化薬100を上側カメラ51及び下側カメラ55で撮影して得られる画像には、トレイ40の一部も写り込むが、トレイ40は上述したように黒色となっている為、当該画像では黒色背景となり、薬剤Dgの鑑別精度に影響を与えないようになっている。
【0040】
そこで、持参薬鑑別システム1では、受け皿41を、印刷帯102が入らない手前側の領域Ar10と、印刷帯102が入る奥側の領域Ar11とに分け、手前側の領域Ar10を鑑別対象となる鑑別領域(つまり薬剤Dgを載置すべき領域)に設定し、奥側の領域Ar11を鑑別対象外となるマスク領域(つまり薬剤Dgを載置すべきでない非鑑別領域)に設定している。
【0041】
つまり、持参薬鑑別システム1では、上側カメラ51及び下側カメラ55で撮影して得られた一包化薬100全体の画像のうち、奥側のマスク領域Ar11に配置されている部分の画像は鑑別対象外とし、手前側の鑑別領域Ar10内に配置されている部分の画像のみを用いて鑑別するようになっている。
【0042】
一方で、このようにマスク領域Ar11を設定した場合、図5に示すように、薬剤Dgの全部分もしくは一部分がマスク領域Ar11内に入ったままだと、当該薬剤Dgについては鑑別できない、もしくは鑑別精度が著しく低下してしまう。
【0043】
そこで、本実施の形態の撮影装置3では、片寄ローラ80により、分包紙101内の薬剤Dgを分包紙101の手前側の端(つまり前端)に片寄せることで、マスク領域Ar11内に入っていた薬剤Dgを鑑別領域Ar10内に移動させることができるようになっている。
【0044】
ここで、図6を用いて、トレイユニット70及び片寄ユニット90の構成についてさらに詳しく説明する。尚、図6は、トレイ40が装置筐体30内部に収容された状態のトレイユニット70及び片寄ユニット90を前方ななめ上から見た場合の斜視図である。
【0045】
この図6に示すように、トレイユニット70は、主要部として、トレイ40と、トレイ駆動モータ71と、左シャフト72Lと、右シャフト72Rと、駆動ベルト73とを有している。
【0046】
トレイ40は、全体として薄板状の部材であり、長方形板状のトレイ本体部40Cと、トレイ本体部40Cの左右両側面部の後端部から、左右両側面部に対して直交する左右方向に突出する突起部40L、40Rとを有している。
【0047】
トレイ本体部40Cは、左右の突起部40L、40Rよりも前側に、トレイ本体部40Cを厚さ方向に貫通する上方及び下方から見て四角形状の孔40hが設けられている。さらにトレイ本体部40Cには、この孔40hを塞ぐようにして、トレイ本体部40Cよりも薄い四角形状のガラス板で形成された受け皿41が取り付けられている。
【0048】
またトレイ40は、左右の突起部40L、40Rに、前後方向に貫通するシャフト用孔40Lh、40Rhが設けられている。トレイ40は、左側のシャフト用孔40Lhと、右側のシャフト用孔40Rhとに、図示しない内部フレームに固定された前後方向に延びる左シャフト72Lと、右シャフト72Rとが挿通されていて、これら左シャフト72L及び右シャフト72Rにより、水平な一方向及び他方向である前後方向に移動可能な状態で支持されている。
【0049】
さらにトレイ40は、左側の突起部40Lの上面部が、図示しない内部フレームに組付けられた前後方向に走行する環状の駆動ベルト73に固定されている。駆動ベルト73は、左シャフト72Lの上方近傍に位置していて、図示しない内部フレームに組み付けられたトレイ駆動モータ71の駆動により前後方向に走行することで、トレイ40を前後方向に移動させるようになっている。
【0050】
具体的に、トレイ40は、装置筐体30内部で最も奥まで引き込まれたときの収納位置と、装置筐体30から排出されたときの排出位置との間で、前後方向に移動できるようになっている。尚、撮影装置3では、薬剤撮影時、トレイ40を収納位置と排出位置との間に位置する撮影位置に移動させてから撮影を行うようになっている。尚、撮影位置は、トレイ40全体を装置筐体30内部に収納している状態で撮影する位置であり、図6は、撮影位置にあるトレイ40を示している。
【0051】
一方、片寄ユニット90は、主要部として、片寄ローラ80と、ローラ移動部81とを有している。片寄ローラ80は、受け皿41の幅方向(左右方向)に延びる回転軸を有する円柱状のローラであり、円筒状のゴム部材である本体部80mと、当該本体部80mの回転軸となるシャフト80sとで構成されている。この片寄ローラ80は、本体部80mの幅が、受け皿41の幅よりもわずかに短くなっていて、本体部80mが受け皿41の幅内に収まるようになっている。また片寄ローラ80のシャフト80sは、本体部80mの右端から右方に延びていて、先端が受け皿41の右端のさらに外側まで延びている。また本体部80mとシャフト80sは、例えば、非透過性の光学特性を有していて例えば黒色となっている(つまり不透明な部材である)。
【0052】
ローラ移動部81は、シャフト80sと直交する方向に伸縮可能な棒状であり一端側にシャフト80sの先端部分を回転可能に支持する伸縮部81tと、当該伸縮部81tの他端側を支持するとともにシャフト80sと平行な回転軸を中心に回転可能な回転部81rとで構成されている。
【0053】
このローラ移動部81は、図示しないアクチュエータにより伸縮部81tを伸縮させ、また回転部81rを回転させるようになっている。そしてこのローラ移動部81は、伸縮部81tの伸縮(主に前後方向への移動)と回転部80rの回転(主に上下方向の移動)とを組み合わせることで、片寄ローラ80を受け皿41上で上下方向及び前後方向に移動させることができるようになっている。尚、このローラ移動部81は、トレイ40及び上側第2照明54とは接触しないように回転部81rの回転範囲が制限されている。トレイユニット70及び片寄ユニット90の構成は、以上のようになっている。
【0054】
[1-6.持参薬鑑別システムのシステム構成]
次に、図7に示すブロック図を用いて、持参薬鑑別システム1のシステム構成について簡単に説明する。制御装置2は、制御部200、記憶部201、薬剤鑑別部202、表示部21及び操作部22を有している。一方、撮影装置3は、上側カメラ51、下側カメラ55、照明コントロールユニット110、上側第1照明53、上側第2照明54、下側第1照明57、下側第2照明58、トレイコントロール基板111、トレイ駆動モータ71、ローラ移動アクチュエータ82、吸気コントロール基板112、吸気口開閉モータ83、コンプレッサー84を有している。
【0055】
制御装置2の制御部200は、持参薬鑑別システム1全体を制御するようになっている。この制御部200は、例えば、CPUとメモリからなり、記憶部201から読み出したプログラムをメモリに展開して実行することにより動作する。具体的に、この制御部200は、記憶部201から薬剤鑑別アプリケーションのプログラムを読み出して実行することにより薬剤鑑別アプリケーションを起動する。そして、制御部200は、操作部22に対する操作者の操作に応じて、薬剤鑑別部202に薬剤の鑑別を行わせ、その鑑別結果を薬剤鑑別アプリケーションの画面上に表示させるようになっている。
【0056】
記憶部201は、各種プログラムにくわえて、患者に関する患者データと、薬剤に関する薬剤データが蓄積されている薬剤データベースDbとを記憶している。薬剤データベースDbに蓄積されている薬剤データには、薬剤ごとのデータとして、少なくとも、薬剤の名前と、薬剤を識別可能な薬剤識別情報、成分名、効果効能、規格、種別(錠剤又はカプセル剤)などを示す薬剤詳細情報と、薬剤の画像と、薬剤の外観の特徴を示す特徴量情報とが含まれている。薬剤鑑別部202は、制御部200から、上側カメラ51及び下側カメラ55で撮影された薬剤の画像を受け取り、この画像と記憶部201に記憶されている薬剤データベースDbとを用いて薬剤の鑑別を行い、その鑑別結果を制御部200に出力する。具体的には、薬剤鑑別部202は、画像に写っている薬剤(つまり撮影された薬剤)の特徴と、薬剤データベースDbに蓄積されている薬剤の特徴とを比較することで、撮影された薬剤を鑑別するようになっている。尚、制御部200が、この薬剤鑑別部202の機能を兼ね備えていてもよい。また薬剤データベースDbについては、記憶部201に記憶していてもよいが、制御装置2とは別の装置に設けてもよい。
【0057】
撮影装置3の上側カメラ51及び下側カメラ55は、所定のインタフェース(例えばUSB)を介して制御装置2の制御部200と接続され、制御部200により制御される。撮影装置3の上側第1照明53、上側第2照明54、下側第1照明57、下側第2照明58は、照明コントロールユニット110と接続され、照明コントロールユニット110により制御される。照明コントロールユニット110は、所定のインタフェースを介して制御装置2の制御部200と接続され、制御部200からの指示にしたがって動作する。
【0058】
撮影装置3のトレイ駆動モータ71は、トレイコントロール基板111に接続され、トレイコントロール基板111により制御される。また撮影装置3には、片寄ユニット90のローラ移動部81を駆動するローラ移動アクチュエータ82が設けられている。このローラ移動アクチュエータ82もトレイコントロール基板111に接続され、トレイコントロール基板111により制御される。トレイコントロール基板111は、所定のインタフェースを介して制御装置2の制御部200と接続され、制御部200からの指示にしたがって動作する。またトレイコントロール基板111は、例えば、図示しない位置センサの出力及びトレイ駆動モータ71の駆動信号などをもとに、トレイ40の位置を取得して、これを制御部200に送信するようにもなっている。
【0059】
また撮影装置3には、吸気口33を開閉する吸気口開閉モータ83と、吸気口33から吸気するコンプレッサー84が設けられている。これらはそれぞれ吸気コントロール基板112に接続され、吸気コントロール基板112により制御される。吸気コントロール基板112は、所定のインタフェースを介して制御装置2の制御部200と接続され、制御部200からの指示にしたがって動作する。持参薬鑑別システム1のシステム構成は、以上のようになっている。
【0060】
尚、本実施の形態では、上側カメラ51及び下側カメラ55による撮影と、トレイ40の移動と、片寄ローラ80の移動と、吸気口33からの吸気を、制御装置2側の制御部200により制御するようにしたが、これに限らず、例えば、制御部200からの指示にしたがって、上側カメラ51及び下側カメラ55による撮影と、トレイ40の移動と、片寄ローラ80の移動と、吸気口33からの吸気を制御する制御部を、撮影装置3側に設けてもよい。
【0061】
[1-7.片寄ローラの動作と吸気動作]
次に、撮影装置3における片寄ローラ80の動作と吸気動作について説明する。尚、この動作は、制御装置2の制御部200によって制御される。
【0062】
上述したように、薬剤撮影時、制御部200は、トレイ40を排出位置まで移動させる。ここで操作者は、図5に示したように、トレイ40の受け皿41上に、分包紙101の印刷帯102が奥側(つまりマスク領域Ar11側)となる向きで一包化薬100を載置する。その後、制御部200は、トレイ40を撮影位置まで移動させる。このようにトレイ40を移動させる際、制御部200は、片寄ローラ80を、トレイ40の上面よりわずかに上方に位置させる。これにより、片寄ローラ80が、トレイ40の移動を防げないようになっている。
【0063】
トレイ40を撮影位置まで移動させた後、制御部200は、図8の斜視図に示すように、片寄ローラ80を、受け皿41の上面に押し当たる位置まで下方に移動させる。このとき、片寄ローラ80は、受け皿41の後端部上方に位置している為、この位置から下方に移動する。これにより、受け皿41上に載置されている一包化薬100の後端部が、片寄ローラ80と受け皿41との間に挟み込まれて押しつぶされた状態となる。
【0064】
このようにして片寄ローラ80を下方に移動させた後、制御部200は、つづけて片寄ローラ80を前方に移動させる。具体的には、図9の上面図に示すように、片寄ローラ80の中心軸が一包化薬100の印刷帯102を通過して鑑別領域Ar10とマスク領域Ar11の境界に到達するまで前方に移動させる。尚、図8図9については、受け皿41、片寄ローラ80、一包化薬100以外の部分については省略している。
【0065】
このとき、片寄ローラ80は、受け皿41との間に、一包化薬100の分包紙101を挟み込んで押しつぶしながら前方に移動する。この為、分包紙101内に収納されている薬剤Dgは、片寄ローラ80により前方に押し出されるように移動する。そして片寄ローラ80が、鑑別領域Ar10とマスク領域Ar11の境界に到達するまで移動することにより、分包紙101内に収納されている薬剤Dgは、印刷帯102よりも前方(つまり鑑別領域Ar10内)に移動する。
【0066】
制御部200は、このように片寄ローラ80を移動させることで、一包化薬100の分包紙101内に収納されている薬剤Dgを鑑別領域Ar10側の前端に片寄せるようになっている。尚、ここでは、片寄ローラ80の中心軸が鑑別領域Ar10とマスク領域Ar11の境界に到達するまで、片寄ローラ80を前方に移動させるようにしたが、これに限らず、例えば、上方から見て片寄ローラ80の本体部80m全体が鑑別領域Ar10内に入る位置まで片寄ローラ80を前方に移動させるようにしてもよい。つまり少なくとも片寄ローラ80の一部が鑑別領域Ar10内に入る位置まで片寄ローラ80を前方に移動させるようにすればよい。
【0067】
制御部200は、このようにして薬剤Dgを鑑別領域Ar10側の前端に片寄せした状態で、一包化薬100を上側カメラ51及び下側カメラ55で撮影する。尚、このとき撮影した画像には、片寄ローラ80の前端部が写ることになるが、上述したように片寄ローラ80は黒色となっている為、撮影した画像では、黒色背景となり、薬剤Dgの鑑別に影響を与えないようになっている。これに限らず、制御部200が、片寄ローラ80を鑑別領域Ar10とマスク領域Ar11の境界まで移動させた後、片寄ローラ80全体が鑑別領域Ar10から退避するように片寄ローラ80を後方に移動させてから撮影するようにしてもよい。
【0068】
ところで、このように片寄ローラ80と受け皿41との間に一包化薬100の分包紙101を挟み込みながら片寄ローラ80を前方に移動させると、分包紙101内の空気が分包紙101の前側に押し出されることで分包紙101の前側(つまり片寄ローラ80よりも前側)が膨らんでしまい、分包紙101内の空気の量によっては分包紙101に穴が開いて破裂してしまう可能性が出てくる。
【0069】
そこで、本実施の形態の撮影装置3では、コンプレッサー84で装置筐体30内部に吸気することにより装置筐体30内部の圧力を高めて、分包紙101の破裂を防ぐようになっている。
【0070】
このときの動作を図10(A)~(C)に示す。尚、図10(A)~(C)は、装置筐体30内部の受け皿41周辺の様子を側面側から見た場合の簡易的な模式図である。図10(A)は、片寄ローラ80を下方に移動させて、受け皿41との間に一包化薬100の後端部を挟み込んだ状態である。このとき、吸気口33は開いている状態となっている。
【0071】
その後、図10(B)及び図10(C)に示すように、片寄ローラ80を前方の所定位置まで(すなわち図9に示す鑑別領域Ar10とマスク領域Ar11の境界まで)移動させる。このとき、制御部200は、コンプレッサー84を動作させてあらかじめ設定された所定時間だけ吸気を行う。これにより装置筐体30内の圧力が高まっていく。ここで、分包紙101内の圧力は、片寄ローラ80を前方の所定位置まで移動させたときに最大となる。したがって、分包紙101内の最大圧力と、装置筐体30内の圧力がほぼ一致する、もしくは装置筐体30内の圧力の方が大きくなるように、吸気を行う所定時間が設定されている。
【0072】
こうすることで、撮影装置3では、片寄ローラ80を前方の所定位置まで移動させる際に、分包紙101内部の圧力が高まって膨らもうとしても、装置筐体30内の圧力を高めることでこれを抑えることができ、分包紙101の破裂を防ぐことができる。
【0073】
そして制御部200は、吸気を所定時間行うと、吸気口33を閉じることで装置筐体30内部を密閉するとともにコンプレッサー84による吸気を終了する。これにより、装置筐体30内部の圧力は高まったままの状態で維持される。
【0074】
こうすることで、撮影装置3では、一包化薬100の撮影時も、引き続き分包紙101の破裂を防ぐことができる。
【0075】
[1-8.まとめと効果]
ここまで説明したように、第1の実施の形態では、トレイ40を装置筐体30外部に排出して当該トレイ40の載置部である受け皿41上に薬剤Dgを袋としての分包紙101に収納した一包化薬100が載置された後、当該トレイ40を装置筐体30内部に収納して一包化薬100を撮影する薬剤撮影装置としての撮影装置3に、トレイ40の受け皿41上に載置された一包化薬100の分包紙101内の薬剤Dgを分包紙101の一端側(印刷帯102が設けられていない側であり、受け皿41に載置されたときの手前側)に片寄せる片寄手段として片寄ローラ80を設けた。
【0076】
すなわち、撮影装置3は、トレイ40の受け皿41に載置されたときに一包化薬100の分包紙101の他端側(受け皿41に載置されたときの奥側)に位置する印刷帯102に薬剤Dgが隠れてしまわないように、片寄ローラ80と受け皿41との間に分包紙101の他端側を挟み込んで押しつぶした状態で、片寄ローラ80を分包紙101の他端側から一端側に向かう第1の方向である前方に移動させることにより、分包紙101内の薬剤Dgを分包紙101の一端側に片寄せるようにした。
【0077】
これにより、撮影装置3は、操作者が薬剤Dgを分包紙101の一端側に寄せた状態で一包化薬100を受け皿41上に載置する手間を省いて、分包紙101の他端側に位置する印刷帯102に薬剤Dgが隠れてしまわないように、トレイ40の受け皿41上に載置された一包化薬100の分包紙101内の薬剤Dgを分包紙101の一端側に確実に片寄せることができる。かくして撮影装置3は、制御装置2側で薬剤Dgをより正確に鑑別できるようにすることができる。
【0078】
また撮影装置3では、操作者が薬剤Dgを分包紙101の一端側に寄せた状態で一包化薬100を受け皿41上に載置する作業を省略することができるので、操作者が一包化薬100を受け皿41上にセットする際の要する時間を短縮することができる。
【0079】
さらに操作者が手作業で薬剤Dgを分包紙101の一端側に寄せようとすると、薬剤Dg同士が擦れて薬剤Dgが破損したり薬剤Dgの粉が分包紙101に付着したりしてしまう。そして薬剤Dgの粉が付着した状態で撮影すると、制御装置2側での薬剤Dgの鑑別精度が低下する要因となってしまう。これに対して、撮影装置3では、このような作業を省略して、薬剤Dgの破損や粉の付着を極力防止した上で撮影することができるので、制御装置2側で薬剤Dgをより正確に鑑別することができる。
【0080】
さらに撮影装置3は、トレイ40の受け皿41上に載置された一包化薬100の分包紙101内の薬剤Dgを片寄ローラ80により片寄せる際に、装置筐体30に設けられた吸気口33から吸気して装置筐体30内部の圧力を高める吸気部としてのコンプレッサー84を有するとした。
【0081】
これにより、撮影装置3は、分包紙101内の薬剤Dgを片寄ローラ80により片寄せる際に、分包紙101内の圧力が高まっても、装置筐体30内部の圧力を高めることで、分包紙101の膨らみを抑えることができ、分包紙101の破裂を防ぐことができる。
【0082】
また撮影装置3では、装置筐体30内部の圧力を高めることで、分包紙101の膨らみを抑えて、分包紙101の上面に薬剤Dgを近づけることができるので、薬剤Dgがより鮮明に写った画像を撮影することができる。かくして撮影装置3は、制御装置2側で薬剤Dgをより正確に鑑別できるようにすることができる。
【0083】
[2.第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態は、片寄ユニット90の構成が、第1の実施の形態とは異なる実施の形態である。ゆえに、ここでは、主に、片寄ユニット90の構成及び動作について説明する。尚、第1の実施の形態と区別する為に、第2の実施の形態の片寄ユニット90を、片寄ユニット90xとする。
【0084】
[2-1.片寄ユニットの構成及び動作]
図11(A)、(B)の斜視図に片寄ユニット90xの一部分を示す。この片寄ユニット90xは、図6に示す片寄ユニット90の片寄ローラ80を、図11(A)、(B)に示す片寄スキージ300に付け替えたものである。この為、図11(A)、(B)では、片寄ユニット90xのうち、片寄スキージ300以外の部品については省略している。
【0085】
つまり片寄ユニット90xは、図6に示すローラ移動部81と、図11(A)、(B)に示す片寄スキージ300とで構成され、ローラ移動部81をスキージ移動部として利用するものである。ゆえにここではローラ移動部81をスキージ移動部81と呼ぶ。
【0086】
図11(A)に示すように、片寄スキージ300は、受け皿41の幅方向(左右方向)に延び、受け皿41の前後方向を厚さ方向とする薄板状の部材であり、角棒状の支持部300mと、当該支持部300mの下端から下方に延びる薄板状のゴム部材であるヘラ部300sとで構成されている。この片寄スキージ300は、ヘラ部300sの幅が、受け皿41の幅よりもわずかに短くなっていて、ヘラ部300sが受け皿41の幅内に収まるようになっている。また片寄スキージ300の支持部300mは、右端が受け皿41の右端のさらに外側まで延びていて、スキージ移動部81により支持されている。また支持部300mとヘラ部300sは、例えば、非透過性の光学特性を有していて例えば黒色となっている(つまり不透明な部材である)。
【0087】
この片寄スキージ300は、片寄ローラ80と同様、スキージ移動部81により上下方向及び前後方向に移動することができるようになっている。片寄ユニット90xの構成は、以上のようになっている。
【0088】
つづけて、片寄スキージ300の動作について簡単に説明する。制御部200(図7参照)は、片寄スキージ300についても、片寄ローラ80と同様に動作させる。すなわち、トレイ40を撮影位置まで移動させた後、制御部200は、図11(A)に示すように、片寄スキージ300を、受け皿41の上面に押し当たる位置まで下方に移動させる。これにより、受け皿41上に載置されている一包化薬100の後端部が、片寄スキージ300の受け皿41との間に挟み込まれた状態となる。
【0089】
このようにして片寄スキージ300を下方に移動させた後、制御部200は、つづけて図11(B)に示すように、片寄スキージ300を前方に移動させる。具体的には、片寄スキージ300が鑑別領域Ar10とマスク領域Ar11の境界(図9参照)に到達するまで前方に移動させる。
【0090】
制御部200は、このように片寄スキージ300を移動させることで、一包化薬100の分包紙101内に収納されている薬剤Dgを鑑別領域Ar10側の前端に片寄せるようになっている。
【0091】
尚、このとき、制御部200は、第1の実施の形態と同様、コンプレッサー84を動作させて所定時間だけ吸気を行うことにより、分包紙101の破裂を防ぐようになっている。
【0092】
[2-2.まとめと効果]
ここまで説明したように、第2の実施の形態では、薬剤Dgを袋としての分包紙101に収納した一包化薬100をトレイ40上に載置し、一包化薬100を撮影する薬剤撮影装置としての撮影装置3が、トレイ40上に載置された一包化薬100の分包紙101内の薬剤Dgを分包紙101の一端側に片寄せる片寄手段として片寄スキージ300を有するとした。
【0093】
すなわち、撮影装置3は、トレイ40の受け皿41に載置されたときに一包化薬100の分包紙101の他端側(トレイ40の受け皿41に載置されたときの奥側)に位置する印刷帯102に薬剤Dgが隠れてしまわないように、片寄スキージ300と受け皿41との間に分包紙101の他端部を挟み込んだ状態で、片寄スキージ300を分包紙101の一端側に向かって移動させることにより、分包紙101内の薬剤Dgを分包紙101の一端側に片寄せるようにした。
【0094】
これにより、撮影装置3は、第1の実施の形態と同様、操作者が薬剤Dgを分包紙101の一端側に寄せた状態で一包化薬100を受け皿41上に載置する手間を省いて、分包紙101の他端側に位置する印刷帯102に薬剤Dgが隠れてしまわないように、トレイ40の受け皿41上に載置された一包化薬100の分包紙101内の薬剤Dgを分包紙101の一端側に確実に片寄せることができる。かくして撮影装置3は、制御装置2側で薬剤Dgをより正確に鑑別できるようにすることができる。
【0095】
また第2の実施の形態では、円柱状の片寄ローラ80の代わりに薄板状の片寄スキージ300を使用して、分包紙101内の薬剤Dgを片寄せるようにしたことにより、片寄ローラ80を使用する場合と比較して、薬剤Dgへの加重が低減される為、薬剤Dgがより一層破損し難くなるという効果も得られる。
【0096】
[3.他の実施の形態]
[3-1.他の実施の形態1]
尚、上述した第1の実施の形態では、受け皿41の上方に位置する片寄ローラ80を、受け皿41の上面に押し当たる位置まで下方に移動させることにより、受け皿41上に載置された一包化薬100を、片寄ローラ80と受け皿41との間に挟み込むようにした。
【0097】
このとき、図12に示すように、撮影位置にあるトレイ40の受け皿41の下面に接触して当該受け皿41を下側から支える支持部として例えば支持ローラ400を設けるようにしてもよい。このようにすれば、受け皿41が片寄ローラ80により下方へ押し込まれても、支持ローラ400が受け皿41を下側から支える為、トレイ40が片寄ローラ80により下方へと押し込まれる力を低減することができる。尚、図12では、支持ローラ400を片寄ローラ80の下面側の所定位置に設けているが、これに限らず、支持ローラ400を前後方向に移動可能として、常に片寄ローラ80の下方に位置するように支持ローラ400を移動させるようにしてもよい。第2の実施の形態についても同様である。
【0098】
[3-2.他の実施の形態2]
また上述した第1の実施の形態では、水平に保たれた受け皿41上に載置した一包化薬100の分包紙101を受け皿41と片寄ローラ80との間に挟み込み、そのまま片寄ローラ80を前方に移動させることにより、分包紙101内の薬剤Dgを分包紙101の前端に片寄せるようにした。
【0099】
このとき、図13(A)、(B)の側面図に示すように、受け皿41を後側よりも前側が下方に位置するように傾けて、受け皿41の上面を傾斜させるようにしてもよい。このようにすれば、分包紙101内の薬剤Dgを分包紙101の前端に片寄せし易くなる。尚、図13(A)、(B)では、分包紙101及び薬剤Dgについては省略している。
【0100】
この場合、図13(A)、(B)に示すように、トレイユニット70(一部を省略)及び片寄ユニット90(一部を省略)を、トレイユニット70の左側に設けられた回転盤500により支持する。この回転盤500は、トレイ40の幅方向である左右方向に延びる図示しない回転軸を中心に回転可能な円盤であり、装置筐体2内部の図示しない内部フレームに取り付けられている。この回転盤500は、図示しない回転盤駆動モータにより図中時計回り方向及び図中反時計回り方向に回転するようになっている。
【0101】
撮影装置3の制御部200は、トレイコントロール基板111を介して回転盤駆動モータの動作を制御するようになっていて、分包紙101内の薬剤Dgを分包紙101の前端に片寄せる際には、回転盤500を図中反時計回り方向に所定量回転させることにより、受け皿41を後側よりも前側が下方に位置するように傾けて、受け皿41の上面を傾斜させる。そして制御部200は、片寄終了後、そのまま撮影を行う、もしくは回転盤500を図中時計回り方向に所定量回転させることにより、受け皿41を水平に戻してから撮影を行う。第2の実施の形態についても同様に、片寄時に受け皿41を傾けるようにしてもよい。
【0102】
[3-3.他の実施の形態3]
さらに上述した第1の実施の形態では、装置筐体30内部の全体を密閉空間として、装置筐体30内部に吸気するようにしたが、これに限らず、例えば、装置筐体30内部のうち、トレイ40周辺部のみを密閉空間として、当該密閉空間に吸気するようにしてもよい。第2の実施の形態についても同様である。
【0103】
[3-4.他の実施の形態4]
さらに上述した第1及び第2の実施の形態では、分包紙101内の薬剤Dgを分包紙101の前端に片寄せる片寄手段として、片寄ローラ80及び片寄スキージ300を用いたが、これに限らず、同様に機能するものであれば、ローラやスキージ以外の片寄手段を用いてもよい。例えば、毛束状のブラシを片寄手段として用いてもよい。この場合も、受け皿41上に載置した一包化薬100の分包紙101を受け皿41とブラシとの間に挟み込み、そのままブラシを前方に移動させることにより、分包紙101内の薬剤Dgを分包紙101の前端に片寄せることができる。
【0104】
[3-5.他の実施の形態5]
さらに上述した第1の実施の形態では、片寄ローラ80を受け皿41上で上下方向及び前後方向に移動させる機構として、伸縮部81tと回転部80rを有し、伸縮と回転とを組み合わせることで、片寄ローラ80を受け皿41上で上下方向及び前後方向に移動させるローラ移動部81を用いた。これに限らず、片寄ローラ80を受け皿41上で上下方向及び前後方向に移動させることができる機構であれば、ローラ移動部81とは異なる構成の機構を用いてもよい。第2の実施の形態についても同様である。
【0105】
[3-6.他の実施の形態6]
さらに上述した第1の実施の形態では、片寄ローラ80を、鑑別領域Ar10とマスク領域Ar11の境界まで移動させることで、マスク領域Ar11側に位置している印刷帯102に薬剤Dgが隠れてしまうことを防止するようにした。これに限らず、例えば、制御部200が、トレイ40を撮影位置まで移動させたら、まず一包化薬100を上側カメラ51及び下側カメラ55で撮影し、得られた画像を解析することにより受け皿41上の印刷帯102の位置を特定する。その後、制御部200は、片寄ローラ80により片寄する際に、特定した印刷帯102の位置よりも前方の位置まで(つまり印刷帯102を通り過ぎるまで)片寄ローラ80を移動させるようにしてもよい。このようにすれば、印刷帯102に薬剤Dgが隠れてしまうことをより確実に防止することができる。第2の実施の形態についても同様である。
【0106】
またこのように印刷帯102の位置を特定する場合、受け皿41を、鑑別領域Ar10とマスク領域Ar11に分けるのではなく、印刷帯102の部分のみをマスク領域に設定するなどしてもよい。
【0107】
[3-7.他の実施の形態7]
さらに上述した各実施の形態では、薬剤鑑別装置の具体例である制御装置2と、薬剤撮影装置の具体例である撮影装置3とを別々に設けた。これに限らず、例えば、撮影装置3に制御装置2の機能を持たせることで、制御装置2と撮影装置3とを一体の薬剤鑑別装置としてもよい。
【0108】
[3-8.他の実施の形態8]
さらに、本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した第1及び第2の実施の形態と他の実施の形態の一部または全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、薬剤鑑別システムに組み込まれた薬剤撮影装置などで広く利用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1……持参薬鑑別システム、2……制御装置、3……撮影装置、20……本体部、21……表示部、22……操作部、30……装置筐体、31……トレイ排出口、32……シャッタ、33……吸気口、40……トレイ、41……受け皿、50……撮影機構、51……上側カメラ、53……上側第1照明、54……上側第2照明、55……下側カメラ、57……下側第1照明、58……下側第2照明、70……トレイユニット、80……片寄ローラ、81……ローラ移動部、82……ローラ移動アクチュエータ、83……吸気口開閉モータ、84……コンプレッサー、90、90x……片寄ユニット、100……一包化薬、101……分包紙、102……印刷帯、200……制御部、300……片寄スキージ、Dg……薬剤、Ar10……鑑別領域、Ar11……マスク領域。
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