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特開2024-118788異常検知処理装置、異常検知処理方法及び異常検知処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118788
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】異常検知処理装置、異常検知処理方法及び異常検知処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20240826BHJP
【FI】
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025280
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】大場 博之
(72)【発明者】
【氏名】越川 博昭
(72)【発明者】
【氏名】林 育実
(57)【要約】
【課題】データの一部を用いた学習処理により適切な分類モデルを生成し得るようにする。
【解決手段】異常検知処理装置1は、学習処理及び分類処理のそれぞれにおいて、教師データ及び評価データをそれぞれ複数の周波数帯WBに分割し、分割された各教師データ及び各評価データに対しNMFをそれぞれ適用し、得られた複数の係数行列を連結してから、その後の処理を行う。これにより異常検知処理装置1は、教師データ及び評価データに関し、分割された各周波数帯WB内において相対的に高い周波数を確実に抽出できるので、学習処理において生成する分類モデルパラメータの精度を高め得ると共に、分類処理において生成する特徴量の精度を高めることができ、最終的に良好な分類結果を得ることができる。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象から複数のデータを取得するデータ取得部と、
前記データを時間領域から周波数領域に変換する変換部と、
周波数領域に変換された前記データを複数の周波数帯に分割する周波数分割部と、
前記複数の周波数帯に分割された前記データそれぞれを基に、行列により表される複数の特徴量を生成する特徴量生成部と、
前記複数の特徴量を互いに連結させる特徴量連結部と、
連結された前記特徴量を基に学習処理を行い、分類モデルパラメータを生成するパラメータ生成部と、
前記データを基に生成され連結された前記特徴量と、前記分類モデルパラメータとを基に、分類処理を行う分類部と
を具えることを特徴とする異常検知処理装置。
【請求項2】
前記周波数分割部は、前記複数の周波数帯において少なくとも一部の周波数を互いに重複させる
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検知処理装置。
【請求項3】
前記特徴量連結部により連結された前記特徴量に対し圧縮処理を行う特徴量圧縮部
をさらに具え、
前記パラメータ生成部は、前記圧縮処理が行われた前記特徴量を基に前記分類モデルパラメータを生成し、
前記分類部は、前記データを基に生成され前記圧縮処理が行われた前記特徴量と、前記分類モデルパラメータとを基に、前記分類処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検知処理装置。
【請求項4】
前記圧縮処理は、前記特徴量の次元数を削減する処理である
ことを特徴とする請求項3に記載の異常検知処理装置。
【請求項5】
前記変換部は、時間及び周波数の少なくとも一方を複数の領域に分割し、前記領域毎の評価値を基に選択された特定領域の前記データを抽出する
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検知処理装置。
【請求項6】
前記特徴量生成部は、前記複数の周波数帯に分割されたそれぞれの前記データについて、周波数領域に変換してなる非負の観測ベクトルを複数並べて非負の観測行列をそれぞれ生成し、さらに非負値行列因子分解によりそれぞれの前記観測行列を基底行列及び係数行列にそれぞれ分解する
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検知処理装置。
【請求項7】
学習完了条件を設定する条件設定部と、
前記学習完了条件を満たすか否かを判定する学習完了判定部と、
をさらに具え、
前記パラメータ生成部は、前記学習完了条件を満たす場合、前記特徴量を基に前記分類モデルパラメータを生成し、
前記分類部は、前記学習完了条件が満たされ前記分類モデルパラメータが生成された後に、残りの前記データを基に生成され連結された前記特徴量と、前記分類モデルパラメータとを用いて、前記分類処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検知処理装置。
【請求項8】
測定対象から複数のデータを取得するデータ取得ステップと、
前記データを時間領域から周波数領域に変換する変換ステップと、
前記周波数領域に変換された前記データを複数の周波数帯に分割する周波数分割ステップと、
前記複数の周波数帯に分割された前記データそれぞれを基に、行列により表される複数の特徴量を生成する特徴量生成ステップと、
前記複数の特徴量を互いに連結させる特徴量連結ステップと、
連結された前記特徴量を基に学習処理を行い、分類モデルパラメータを生成するパラメータ生成ステップと、
前記データを基に生成され連結された前記特徴量と、前記分類モデルパラメータとを基に、分類処理を行う分類ステップと
を具えることを特徴とする異常検知処理方法。
【請求項9】
情報処理装置に対し、
測定対象から複数のデータを取得するデータ取得ステップと、
前記データを時間領域から周波数領域に変換する変換ステップと、
前記周波数領域に変換された前記データを複数の周波数帯に分割する周波数分割ステップと、
前記複数の周波数帯に分割された前記データそれぞれを基に、行列により表される複数の特徴量を生成する特徴量生成ステップと、
前記複数の特徴量を互いに連結させる特徴量連結ステップと、
連結された前記特徴量を基に学習処理を行い、分類モデルパラメータを生成するパラメータ生成ステップと、
前記データを基に生成され連結された前記特徴量と、前記分類モデルパラメータとを基に、分類処理を行う分類ステップと
を実行させるための異常検知処理プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異常検知処理装置、異常検知処理方法及び異常検知処理プログラムに関し、例えば工作機械から得られる音響信号を基に、当該工作機械における消耗部品の交換時期を判断する場合に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械から得られる音響信号のような連続的に発生する時系列データを基に、学習処理及び分類処理を行うことにより複数のクラスに分類する技術が知られている。具体的には、例えば時系列データの一部を教師データとして学習処理を行うことにより分類モデルを生成し、残りの時系列データを評価データとして、この分類モデルを用いて分類処理を行うことができる。
【0003】
また、例えば学習処理や分類処理において、時系列データを時間領域から周波数領域に変換し、次元数の削減や行列の演算処理等を利用して特徴量を抽出することにより、演算量を適切に削減しながら、分類処理の一形態である異常検知等の処理を適切に行い得るものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-135892号公報(図8等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上述した学習処理や分類処理では、周波数領域に変換したデータにおいて、所定の周波数において比較的大きい特徴が表れると共に、他の周波数において異常を表す比較的小さい特徴が表れる場合がある。このような場合、学習処理や分類処理では、次元数の削減に伴い、当該比較的大きい特徴を特徴量として抽出できる一方、当該比較的小さい特徴が埋もれてしまうため、適切な分類処理ができず異常を検知できない恐れがある、という問題があった。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、データを基に異常を精度良く検知し得る異常検知処理装置、異常検知処理方法及び異常検知処理プログラムを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明の異常検知処理装置においては、測定対象から複数のデータを取得するデータ取得部と、データを時間領域から周波数領域に変換する変換部と、周波数領域に変換されたデータを複数の周波数帯に分割する周波数分割部と、複数の周波数帯に分割されたデータそれぞれを基に、行列により表される複数の特徴量を生成する特徴量生成部と、複数の特徴量を互いに連結させる特徴量連結部と、連結された特徴量を基に学習処理を行い、分類モデルパラメータを生成するパラメータ生成部と、データを基に生成され連結された特徴量と、分類モデルパラメータとを基に、分類処理を行う分類部とを設けるようにした。
【0008】
また本発明の異常検知処理方法においては、測定対象から複数のデータを取得するデータ取得ステップと、データを時間領域から周波数領域に変換する変換ステップと、周波数領域に変換されたデータを複数の周波数帯に分割する周波数分割ステップと、複数の周波数帯に分割されたデータそれぞれを基に、行列により表される複数の特徴量を生成する特徴量生成ステップと、複数の特徴量を互いに連結させる特徴量連結ステップと、連結された特徴量を基に学習処理を行い、分類モデルパラメータを生成するパラメータ生成ステップと、データを基に生成され連結された特徴量と、分類モデルパラメータとを基に、分類処理を行う分類ステップとを有するようにした。
【0009】
さらに本発明の異常検知処理プログラムにおいては、情報処理装置に対し、測定対象から複数のデータを取得するデータ取得ステップと、データを時間領域から周波数領域に変換する変換ステップと、周波数領域に変換されたデータを複数の周波数帯に分割する周波数分割ステップと、複数の周波数帯に分割されたデータそれぞれを基に、行列により表される複数の特徴量を生成する特徴量生成ステップと、複数の特徴量を互いに連結させる特徴量連結ステップと、連結された特徴量を基に学習処理を行い、分類モデルパラメータを生成するパラメータ生成ステップと、データを基に生成され連結された特徴量と、分類モデルパラメータとを基に、分類処理を行う分類ステップとを実行させるようにした。
【0010】
本発明は、周波数領域に変換されたデータを複数の周波数帯に分割してから、分割後の各データを基にそれぞれの特徴量を生成し、連結した後に学習処理や分類処理を行う。このため本発明では、各周波数帯において相対的に信号成分の強度が高い特徴的な箇所を埋もれさせることなく抽出でき、その結果として分類の精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、データを基に異常を精度良く検知し得る異常検知処理装置、異常検知処理方法及び異常検知処理プログラムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】学習分類装置の基本構成を示す略線的ブロック図である。
図2】第1の実施の形態による学習分類装置の機能構成を示す略線的ブロック図である。
図3】区間特定部による対象区間の特定を示す略線図である。
図4】周波数帯の分割を示す略線図である。
図5】NMFによる行列の分解を示す略線図である。
図6】次元の削減による処理量の抑制を示す略線図である。
図7】周波数及び時間に関する領域の分割を示す略線図である。
図8】第1の実施の形態による学習分類処理手順を示すフローチャートである。
図9】第1の実施の形態による学習処理手順を示すフローチャートである。
図10】第1の実施の形態による分類処理手順を示すフローチャートである。
図11】第2の実施の形態による学習分類装置の機能構成を示す略線的ブロック図である。
図12】第2の実施の形態による学習処理手順を示すフローチャートである。
図13】第2の実施の形態による分類処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0014】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.異常検知処理装置の基本構成]
図1に示すように、第1の実施の形態による異常検知処理装置1は、一般的なコンピュータ装置と類似した情報処理装置であり、制御部2、記憶部3、通信部4、表示部5及び操作部6がバス8を介して相互に接続された構成となっている。
【0015】
制御部2は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有している。この制御部2は、RAMをワークエリアとして使用しながら、ROMや記憶部3等から読み出したプログラムをCPUによって実行することにより、様々な処理を行うことができる。記憶部3は、例えばSSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)等のような不揮発性の記憶媒体であり、種々のプログラムや種々の情報を記憶する。
【0016】
通信部4は、例えばIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.3u/ab/an/ae等の規格に準拠した有線LAN(Local Area Network)、又はIEEE802.11a/b/g/n/ac/ax等の規格に準拠した無線LANのインタフェースである。この通信部4は、図示しないサーバ装置等との間で種々の情報を送受信することができる。
【0017】
表示部5は、例えば液晶や有機EL(Electro Luminescence)等の表示デバイスを有しており、種々の情報を表す文字や図形等を適宜組み合わせた表示画面を表示する。操作部6は、例えばキーボードやマウス、或いはタッチパネル等であり、ユーザの操作指示を受け付ける。
【0018】
この異常検知処理装置1は、例えば工作機械から得られる音響信号のような連続的に発生する時系列のデータを順次取得し、後述する学習処理及び分類処理を行うことにより、例えば当該工作機械における異常の発生を検知する、といった用途での使用が想定されている。
【0019】
[1-2.学習分類装置の機能構成]
ところで制御部2は、例えば記憶部3から各種プログラムを読み出して実行することにより、図2に示すような種々の機能ブロックを形成する。
【0020】
データ取得部11は、時系列のデータを取得して区間特定部12へ供給する。このデータ取得部11は、例えば工作機械に取り付けられる切削工具を測定対象物とし、当該切削工具の使用時に発生する音をマイクロホン等により集音し、得られた音響信号をディジタル化したものを時系列のデータとして取得する。以下、このとき取得されたデータを時系列データと呼ぶ。
【0021】
区間特定部12は、時系列データのうち、後述する分類モデルパラメータの生成処理や分類処理において処理対象とする時間区間を対象区間として特定し、これを時系列データと共に前処理部13へ供給する。
【0022】
例えば区間特定部12は、図3(A)及び(B)に示すように、時間の経過に応じて振幅が変化する時系列データD1に加えて、予め用意された所定の参照信号D2を使用する。参照信号D2は、その振幅が矩形状に変化する信号であり、区間Tにおいて他の区間よりも相対的に大きい振幅値Pとなっている。区間特定部12は、時系列データD1及び参照信号D2を基に、該参照信号D2において振幅が振幅値Pとなる区間Tに対応する時系列データD1の区間を対象区間とする。
【0023】
前処理部13(図2)は、区間特定部12から供給される時系列データのうち対象区間に相当する部分に対し、前処理と呼ばれる演算処理を行い、周波数領域に変換された非負の観測ベクトル、又はこの観測ベクトルを複数並べた観測行列でなる周波数データを生成する(詳しくは後述する)。
【0024】
また前処理部13は、この周波数データを複数の周波数帯に分割することにより、複数の分割データを生成する。図4(A)は、周波数データをスペクトログラムとして表したものであり、縦軸が周波数を表すと共に横軸が時間を表しており、信号成分の強度を色によって表している。ここでは、周波数の全範囲が0~2000[Hz]であるものとする。また図4(A)では、信号成分の強度が比較的弱い部分を白に近い明るい色(薄い色)で表し、比較的強い部分を黒に近い暗い色(濃い色)で表している。
【0025】
この図4(A)では、様々な周波数において、信号成分の強度が局所的に高くなっている。また、周囲に対し局所的に信号成分の強度が高い周波数であっても、その信号成分の強度(すなわち図4(A)における色の明るさ)は一様でなく、様々な強度であることが分かる。
【0026】
図4(B)は、周波数データを分割する際における、各周波数帯の範囲を模式的に表したものである。この図4(B)に示したように、前処理部13では、周波数が低い側から高い側へ向けて8個の周波数帯WB(WB1~WB8)が設けられている。各周波数帯WBは、何れも帯域幅が約320[Hz]であり、且つ複数の周波数帯WBの間において一部の周波数を互いに重複させるように設定されている。例えば、周波数帯WB1の帯域は0~320[Hz]であり、周波数帯WB2の帯域は240~560[Hz]である。このため周波数帯WB1及び周波数帯WB2の間では、240~320[Hz]の部分が重複している。
【0027】
ここで、改めて図4(A)及び(B)を参照すると、例えば周波数帯WB1には、信号成分の強度が極めて高い周波数が多く含まれている。一方、例えば周波数帯WB6には、信号成分の強度が十分に高い周波数は含まれておらず、信号成分の強度が相対的にやや高い程度の周波数が散見されるに過ぎない。
【0028】
そのうえで前処理部13は、このように周波数帯WBごとに分割された複数の分割データを、教師データとして教師データ処理部21へ供給し、又は評価データとして特徴抽出部26へ供給する。
【0029】
ここで教師データとは、時系列データのうち後の学習処理において使用されるものであり、当該学習処理において、当該教師データを基に分類モデルパラメータが生成されることになる。また評価データとは、時系列データのうち後の分類処理(判定処理とも呼ばれる)において使用されるものであり、当該分類処理において、分類モデルパラメータを用いて複数のクラスの何れかに分類されることになる。
【0030】
一方、条件設定部15は、異常検知処理装置1において学習処理を完了して分類処理に移行するための条件である学習完了条件を、学習完了判定部16に設定する。この第1の実施の形態では、学習完了条件を「100個の時系列データを取り込んだ」こと、すなわち「100個の時系列データに対して前処理を行い、教師データとして教師データ処理部21へ供給した」こととして、学習完了判定部16に設定する。
【0031】
学習完了判定部16は、学習処理を完了して分類処理に移行するか否かを判定すると共に、その判定結果を基に前処理部13を制御する。具体的に学習完了判定部16は、前処理部13により生成された観測行列を基に、学習完了条件が満たされたか否かを判定する。そのうえで学習完了判定部16は、学習完了条件が満たされていなければ学習処理を継続させ、当該学習完了条件が満たされていれば分類処理に移行するよう、前処理部13における処理内容や観測行列の供給先を制御する。
【0032】
教師データ処理部21は、前処理部13から供給される観測行列である教師データ(以下これを教師観測行列と呼ぶ)に対し、非負値行列因子分解(Non-negative Matrix Factorization、以下NMFと呼ぶ)を行うことにより、教師基底行列及び教師係数行列を生成する。また教師データ処理部21は、前処理部13から供給される教師データが、
複数の周波数帯WBとそれぞれ対応する複数の分割データであるため、当該分割データそれぞれに対し、NMFの処理をそれぞれ行うことになる。
【0033】
ここでは、1個の分割データに関して行われるNMFについて説明する。NMFは、1つの非負の行列Yを2つの非負の行列W及び行列Hの積(例えばWH)に分解するアルゴリズムである。一般に、2つの非負の行列W及び行列Hを解析的に求めることは困難であるため、初期値を与えてYとWHの誤差が局所最適解になるよう、反復的に近似解を求める手法が知られている。なお、局所最適解は初期値に依存して変化する。
【0034】
図5は、本実施の形態に係るNMFの処理例を模式的に示している。この図5に示すように、NMFにより、例えば非負の観測行列Y(教師観測行列又は評価観測行列)が、非負の係数行列W及び非負の基底行列Hの積に分解される。
【0035】
例えば観測行列Yは、m次元の観測ベクトルyが行ベクトルとなり、時系列データにおける対象区間の数nだけの行で構成された、n行m列の行列である。一方、基底行列Hは、例えば観測行列YにNMFを適用し、分解されたm次元の基底ベクトルhが行ベクトルとなり、基底ベクトルの数kだけの行で構成されたk行m列の行列である。
【0036】
また係数行列Wは、例えばk次元の係数ベクトルwが行ベクトルとなり、観測ベクトルの数nだけの行で構成されたn行k列の行列である。ここで係数ベクトルwは、ある観測ベクトルにおいて、基底行列Hに含まれる各基底ベクトルの成分がどれだけ含まれるか、という加重値を示す行ベクトルである。
【0037】
図5に示すように、上記の各行列の間には、次式の関係がある。
【0038】
【数1】
【0039】
なお、以下では教師観測行列Yを分解して得られる基底行列及び係数行列を、それぞれ教師基底行列H及び教師係数行列Wと呼ぶ。
【0040】
教師データ処理部21は、この教師観測行列YにNMFを適用して、教師基底行列H及び教師係数行列Wを得る。具体的に教師データ処理部21は、まず教師観測行列YのデータセットにNMFを適用する。次に教師データ処理部21は、当該データセットが分解されて得られたベクトルまたは行列Hにより、教師基底行列Hを生成する。
【0041】
教師基底行列Hに基づいて、教師観測行列Yから生成される係数行列を教師係数行列Wとすると、数式(1)より、教師観測行列Y、教師係数行列W、及び教師基底行列Hの関係は、以下の(2)式のように表される。
【0042】
【数2】
【0043】
上記の(2)式により、教師係数行列Wを得るためには、教師基底行列Hの逆行列を用いる必要がある。しかし、教師基底行列Hは、一般に正則行列とは限らないため、逆行列を持たない場合がある。そこで、教師データ処理部21は、例えば教師基底行列の疑似逆行列(ムーア・ペンローズの疑似逆行列)に基づいて、教師係数行列Wを生成しても良い。教師基底行列Hの疑似逆行列H は、k×mの行列であり、一般にk<mである。このため擬似逆行列H は、次の(3)式により得られる。
【0044】
【数3】
【0045】
上記数式(3)で得られた疑似逆行列H を用いると、教師係数行列Wは次の(4)式のように表される。
【0046】
【数4】
【0047】
教師データ処理部21は、各周波数帯WBの教師データに対しこのような演算処理を行い、各周波数帯WBの教師基底行列Hをそれぞれ生成する。そのうえで教師データ処理部21は、生成した各周波数帯WBの教師基底行列Hを、図2に示す教師データ記憶部22に記憶させると共に教師係数行列Wを特徴量連結部23に供給する。特徴量連結部23は、各周波数帯の教師係数行列Wを順次並べるようにして連結させることにより、1個の教師係数行列Wを生成し、これをパラメータ生成部24へ供給する。
【0048】
パラメータ生成部24は、教師係数行列Wに基づき、時系列データを分類するための分類モデルパラメータを生成する。パラメータ生成部24が生成する分類モデルパラメータは、後述する分類部27における分類モデルに応じたパラメータとすることができる。例えば、分類部27が閾値判別を行う場合、分類モデルパラメータは閾値であっても良い。また、分類部27が線形判別を行う場合、分類モデルパラメータはクラスの境界を決定する線形判別関数の係数であっても良い。さらに、分類部27が二次判別を行う場合、分類モデルパラメータはクラスの境界を決定する二次判別関数の係数であっても良い。
【0049】
パラメータ生成部24は、このようにして生成した分類モデルパラメータを、パラメータ記憶部25に記憶させる。
【0050】
特徴抽出部26は、教師データ記憶部22に記憶された教師基底行列Hに基づき、前処理部13から供給された評価データ(以下これを評価観測行列と呼ぶ)から評価係数行列を生成する。以下、特徴抽出部26による評価係数行列の具体的な生成例について説明する。
【0051】
教師基底行列Hに基づいて、評価観測行列Yから生成される係数行列を評価係数行列Wとすると、上述した(1)式より、評価観測行列Y、評価係数行列W及び教師基底行列Hの関係は、次の(5)式のように表される。
【0052】
【数5】
【0053】
また、上述した(3)式と同様の方法で得られた疑似逆行列H を用いると、評価係数行列Wは、次の(6)式のように表される。
【0054】
【数6】
【0055】
特徴抽出部26は、前処理部13において分割された分割データごとに、すなわち周波数帯ごとに、このような評価係数行列Wを生成し、これらを特徴量連結部23に供給する。特徴量連結部23は、各周波数帯の評価係数行列Wを順次並べるようにして連結させることにより、1個の評価係数行列Wを生成し、これを分類部27へ供給する。
【0056】
分類部27は、評価係数行列Wを、パラメータ記憶部25に記憶された分類モデルパラメータに基づいて分類する。ここで分類部27は、評価係数行列Wに含まれる係数ベクトルを特徴ベクトルとし、例えば分類モデルとして閾値判別を用い、当該分類モデルに応じた分類モデルパラメータに基づいて分類する。なお、分類部27による分類結果は、評価係数行列Wに含まれる係数ベクトルの分類結果であると共に、各係数ベクトルに対応する、時系列データにおける対象区間の分類結果でもある。すなわちこの分類結果は、当該時系列データが得られた時点における測定対象物の状態を、正常な状態に対する差異の度合い(すなわち異常度)に応じて分類した結果を表している。
【0057】
異常検知処理装置1では、以上のように基底行列に対する重みを示す係数ベクトルを特徴ベクトルとして用いて分類することにより、例えば特定周波数のパワーの大きさに基づいて分類する場合よりも、分類精度を向上させることが可能である。
【0058】
また異常検知処理装置1では、評価データ自体を用いて分類処理を行った場合と比較して、評価データから生成される評価係数行列Wを用いて分類処理を行うことにより、分類処理における特徴ベクトルの次元を削減できるため、分類処理の処理量を抑制することが可能となる。
【0059】
図6は、次元の削減を説明する模式図である。図6に示すように、NMF、または特徴抽出部26の処理により、パワースペクトルである評価データD10は、基底ベクトルD11及び係数w1の積と、基底ベクトルD12及び係数w2の積との和で表される。図6の例において、評価データD10を特徴ベクトルとして分類処理を行う場合には、評価データD10における周波数分解能に応じた次元での処理が必要となる。一方、図6の例において、係数ベクトルの次元は2である。上述したように、評価データD10の次元よりも係数ベクトルの次元数の方が小さいため、評価係数行列WTを用いて分類処理を行うことで、分類処理における特徴ベクトルの次元が削減され、分類処理の処理量を抑制することが可能となる。
【0060】
出力部28(図2)は、分類部27による分類結果を出力する。この出力部28は、例えば測定対象物における異常の発生に関する文字や図形による情報等、分類結果を表す所定の表示画面を構成して表示部5(図1)に表示させ、ユーザに通知する。
【0061】
次に、前処理部13の構成について説明する。前処理部13は、その内部に変換部31、データ分割部32、分離度評価部33及び周波数分割部34といった複数の機能ブロックを有している。
【0062】
変換部31は、時系列データのうち対象区間に含まれる部分を、時間表現から周波数表現に変換する。例えば変換部31は、取得データのうち対象区間に含まれる部分に対し、フーリエ変換処理、高速フーリエ変換処理やウェーブレット変換処理等の変換処理を行うことにより、非負の観測ベクトルを生成する。また変換部31は、この非負の観測ベクトルを複数並べることにより、非負の観測行列を生成する。
【0063】
なお以下では、時系列データから、フーリエ変換により得られるパワースペクトル、スペクトログラムや、ウェーブレット変換によって得られるスカログラム等、時間、周波数、及び振幅の関係を表したデータを総称して時間・周波数・振幅データと呼ぶ。時間・周波数・振幅データは、例えば、周波数領域、及び時間領域における振幅の値を示すデータとして表現されても良い。
【0064】
データ分割部32は、変換部31により変換された時間・周波数・振幅データ(すなわち非負の観測ベクトル又は非負の観測行列)を、周波数領域及び時間領域それぞれにおいて分割する。分離度評価部33は、分割されたデータごとに非負値行列因子分解(NMF)を適用して各領域を評価し、評価結果が良好であった領域のデータを選択する。すなわち分離度評価部33は、学習処理の実行中であれば、当該領域のデータを選択して教師データとし、また分離処理の実行中であれば、当該領域のデータを選択して評価データとする。
【0065】
ここで、データ分割部32による時間・周波数・振幅データの分割と分離度評価部33による領域の選択(特定)について、図7を参照しながら説明する。図7は、横軸が時間を表し、縦軸が周波数を表しており、全体を表す領域A0が時間及び周波数に関してそれぞれ2分割されることにより、4つの領域A1、A2、A3及びA4に分割されている。分離度評価部33は、分割されたそれぞれのデータに対して、NMFを適用し、ある複数のランクで基底行列及び係数行列を取得する。なお、時間・周波数・振幅データは、NMFを適用するために、1次元の列ベクトルに変換されても良い。
【0066】
以下では、事前に予備実験が行われ、いわゆる教師あり学習によりクラスC1とクラスC2の2つのクラスが設定されているものとする。まずデータ分割部32は、クラスC1に属する複数の時間・周波数・振幅データの領域A1、A2、A3、A4から、基底行列HC1,A1、HC1,A2、HC1,A3、HC1,A4並びに係数行列WC1,A1、WC1,A2、WC1,A3、WC1,A4をそれぞれ生成する。続いてデータ分割部32は、クラスC2に属する複数の時間・周波数・振幅データの領域A1、A2、A3、A4から、同様に基底行列HC2,A1、HC2,A2、HC2,A3、HC2,A4並びに係数行列WC2,A1、WC2,A2、WC2,A3、WC2,A4をそれぞれ生成する。なお、分解される基底の数を示すランクは、1から元のデータの次元数までの範囲である。
【0067】
続いて、分離度評価部33は、それぞれの分割された時間領域、及び周波数領域で、各領域での分類能力を示す分離度(評価値とも呼ぶ)を特定する。分離度を示す指標として、例えばクラスの分類(判別)正解率が用いられてもよい。
【0068】
以下では、領域A0において、クラスC1またはクラスC2の分離度を示す指標として、クラスC1またはクラスC2の分類正解率が用いられる例を説明する。まず、分離度評価部33は、クラスC1、C2のそれぞれから得られた基底行列HC1,A1、HC2,A1を組み合わせた共通の基底行列HC1-C2,A1={HC1,A1,HC2,A1}を求める。元のクラスC1のデータYC1,A0、クラスC2のデータYC2,A0にHC1-C2,A1の擬似逆行列HC1-C2,A1 をかけることにより、各クラスの係数行列WC1,A0、WC2,A0は、次の(7)式及び(8)式のように得られる。
【0069】
【数7】
【0070】
【数8】
【0071】
分離度評価部33は、係数行列WC1,A0、WC2,A0を、それぞれクラスC1、クラスC2の特徴ベクトルとして、分類して、分類正解率を求める。ここで分離度評価部33が行う分類の方式は、例えば図2を参照して説明した分類部27の分類方式と同様であっても良い。
【0072】
また、分離度を示す他の指標として、クラス内・クラス間分散比が用いられても良い。クラス内分散σ 及びクラス間分散σ は、以下の(9)式及び(10)式のように表される。
【0073】
【数9】
【0074】
【数10】
【0075】
ただし、上記の(9)式及び(10)式において、nは全データ数、nはクラスiのデータ数、xは特徴ベクトル、mはクラスiの特徴量ベクトルの平均、mは全特徴量ベクトルの平均である。上記クラス内分散σ 及びクラス間分散σ を用いると、クラス内・クラス間分散比Jは以下の(11)式のように表される。
【0076】
【数11】
【0077】
上記のクラス内・クラス間分散比Jが大きい程、分離度が大きく、良い特徴量であると考えられる。なお、分離度を示す指標は、上記に限定されず、例えばマハラノビス距離が用いられてもよい。
【0078】
分離度評価部33は、上述のように、4つの領域A1、A2、A3、A4でそれぞれ分離度を求め、分離度の値が予め設定された閾値L以上の場合は、それらの領域を組み合わせた時間領域・周波数領域のデータで同様に分離度を求める。例えば、領域A1とA3で分離度が閾値L以上であった場合、分離度評価部33は、領域A1及びA3の時間領域・周波数領域のそれぞれで得られた特徴量で分離度を求める。上述のように、分離度の高い複数の領域から得られたデータを用いることで、より高い分離度の特徴量が得られる効果がある。
【0079】
分離度評価部33は、学習処理において、分離度が最も高くなる時間領域・周波数領域のデータを教師データ(教師観測行列)として特定する。また、分離度評価部33は、教師データとして特定した時間領域・周波数領域のデータを、評価データ(評価観測行列)とする。以下、このとき特定された領域を特定領域と呼ぶ。
【0080】
周波数分割部34は、分離度評価部33において特定された教師データ又は評価データを、図4に周波数帯WB1~WB8として示した周波数帯WBごとに分割し、複数の分割データを生成する。その上で周波数分割部34は、生成した各分割データを、教師データとして教師データ処理部21へ供給し、又は評価データとして特徴抽出部26へ供給する。
【0081】
[1-3.処理手順]
次に、異常検知処理装置1(図1及び図2)において、時系列のデータを用いて学習処理を行った上で分類処理を行う学習分類処理について説明する。なお異常検知処理装置1は、運用前に実験が行われることにより、適切なクラスが設定され、適切な特定領域が特定され、また時間領域及び周波数領域それぞれにおける適切な分割数や分割位置(時間及び周波数)がそれぞれ選択されているものとする。
【0082】
[1-3-1.学習分類処理]
異常検知処理装置1の制御部2は、学習分類処理の開始に先立ち、ユーザにより操作部6を介して所定の操作がなされると、学習完了条件を記憶部3に記憶させる。この学習完了条件は、ユーザが学習処理を完了させるための条件を予め設定しておくものであり、ここでは、例えば「100個の時系列データ取り込んだこと」が設定されたものとする。
【0083】
その後、制御部2は、ユーザから学習分類処理の開始が指示されると、記憶部3から学習分類プログラムを読み出して実行することにより、図2に示した各機能ブロックを形成すると共に、図8に示す学習分類処理手順RT1を開始して最初のステップSP1に移る。
【0084】
ステップSP1において制御部2は、条件設定部15により、記憶部3から学習完了条件である「100個の時系列データ取り込んだこと」を読み出して学習完了判定部16に設定し、次のステップSP2に移る。
【0085】
ステップSP2において制御部2は、後述するようにサブルーチンとして学習処理を行い、次のステップSP3に移る。このとき制御部2は、この学習処理において、学習完了条件を満たすまでの間、時系列データを取得する処理を繰り返し行う。そのうえで制御部2は、この時系列データを基に教師基底行列H及び教師係数行列Wを生成し、教師基底行列Hを教師データとして教師データ記憶部22(図2)に記憶させると共に、教師係数行列Wを基に分類モデルパラメータを生成し、これをパラメータ記憶部25に記憶させた状態となる。
【0086】
ステップSP3において制御部2は、後述するようにサブルーチンとして分類処理を行い、次のステップSP4に移る。このとき制御部2は、1回の分類処理において、1件の時系列データを取得し、この時系列データに前処理を施して得られた評価データに対する分類結果を得て出力する。
【0087】
ステップSP4において制御部2は、学習処理に用いられなかった全ての時系列データに対する分類処理を完了したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは分類処理を行うべき時系列データが残っていることを表している。このとき制御部2は、再度ステップSP3に戻ることにより、残りの時系列データに対する分類処理を行う。一方、ステップSP4において肯定結果が得られると、制御部2は次のステップSP5に移り、学習分類処理手順RT1を終了する。
【0088】
[1-3-2.学習処理]
次に、学習処理について説明する。異常検知処理装置1の制御部2は、学習分類処理手順RT1(図8)のステップSP2において、図9に示す学習処理手順RT2をサブルーチンとして実行し、最初のステップSP11に移る。
【0089】
ステップSP11において制御部2は、データ取得部11(図2)により1つの時系列データを取得し、次のステップSP12に移る。ステップSP12において制御部2は、区間特定部12(図2)により、当該時系列データの一部分を対象区間として特定し、次のステップSP13に移る。
【0090】
ステップSP13において制御部2は、学習完了判定部16により、条件設定部15に設定された学習完了条件を満たすか否か、すなわち100個の時系列データを取り込んだか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、制御部2は再びステップSP11に戻り、時系列データの取得及び対象区間の特定を繰り返す。
【0091】
一方、ステップSP13において肯定結果が得られると、このことは既に充分な数の教師データを取り込んだため、これを基に教師データや分類モデルパラメータを生成すべきであることを表している。このとき制御部2は、次のステップSP14に移る。
【0092】
ステップSP14において制御部2は、前処理部13の変換部31(図2)により、時系列データにフーリエ変換処理を施すことにより、非負の観測行列を生成し、次のステップSP15に移る。ステップSP15において制御部2は、前処理部13のデータ分割部32(図2)により、変換部31により変換されたデータを時間領域及び周波数領域でそれぞれ分割し、次のステップSP16に移る。
【0093】
ステップSP16において制御部2は、前処理部13の分離度評価部33により、分離度が最も高くなる領域のデータを特定して教師データとし、次のステップSP17に移る。ステップSP17において制御部2は、前処理部13の周波数分割部34により、教師データを各周波数帯WB1~WB8(図4)に分割し、分割したそれぞれの教師データを教師データ処理部21へ供給して、次のステップSP18に移る。
【0094】
ステップSP18において制御部2は、教師データ処理部21(図2)により、分割されたそれぞれの教師データにNMFを適用し、それぞれの教師基底行列H(すなわち特徴量)を生成して教師データ記憶部22に記憶させると共に、周波数帯WBごとの教師係数行列Wを生成して特徴量連結部23に供給し、次のステップSP19に移る。
【0095】
ステップSP19において制御部2は、特徴量連結部23(図2)により、1個の時系列データに対応する各周波数帯WBの教師係数行列Wを連結して特徴量とし、これをパラメータ生成部24に供給して、次のステップSP20に移る。
【0096】
ステップSP20において制御部2は、パラメータ生成部24(図2)により、特徴量(すなわち連結後の教師係数行列W)を基に、時系列データを分類するための分類モデルパラメータを生成し、これをパラメータ記憶部25に記憶させ、次のステップSP21に移る。ステップSP21において制御部2は、学習処理手順RT2を終了して、元の学習分類処理手順RT1(図8)のステップSP2に戻る。
【0097】
[1-3-3.分類処理]
次に、分類処理について説明する。異常検知処理装置1の制御部2は、学習分類処理手順RT1(図8)のステップSP3において、図10に示す分類処理手順RT3をサブルーチンとして実行し、最初のステップSP31に移る。
【0098】
制御部2は、ステップSP31、SP32、SP33及びSP34において、時系列データに対し、学習処理手順RT2(図9)のステップSP21、SP22、SP24及びSP25とそれぞれ同様の処理を行う。すなわち制御部2は、時系列データを取得して対象区間を特定し、フーリエ変換処理を行った上で時間領域及び周波数領域で分割して、その次のステップSP35に移る。
【0099】
ステップSP35において制御部2は、前処理部13の分離度評価部33により、特定領域のデータを評価データとして周波数分割部34へ供給して、次のステップSP36に移る。ステップSP36において制御部2は、前処理部13の周波数分割部34(図2)により、評価データを各周波数帯WB1~WB8(図4)に分割し、分割したそれぞれの評価データを特徴抽出部26へ供給し、次のステップSP37に移る。
【0100】
ステップSP37において制御部2は、特徴抽出部26(図2)により、教師データ記憶部22に記憶されている教師基底行列Hを基に評価係数行列Wを生成し、次のステップSP38に移る。ステップSP38において制御部2は、特徴量連結部23(図2)により、1個の時系列データに対応する各周波数帯WBの評価係数行列Wを連結して特徴量とし、これを分類部27へ供給して、次のステップSP39に移る。
【0101】
ステップSP39において制御部2は、分類部27(図2)により、パラメータ記憶部25に記憶している分類モデルパラメータに基づき、連結後の評価係数行列Wに含まれる係数ベクトルを特徴ベクトルとして分類処理を行うことにより、異常度に基づいた分類結果を得て、次のステップSP40に移る。
【0102】
ステップSP40において制御部2は、出力部28(図2)により、分類結果に応じた異常に関する情報を表す表示画面を生成し、これを表示部5(図1)に表示させることにより出力した後、次のステップSP41に移る。ステップSP41において制御部2は、分類処理手順RT3を終了して、元の学習分類処理手順RT1(図8)のステップSP3に戻る。
【0103】
[1-4.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による異常検知処理装置1は、学習処理において、時系列データを非負の観測行列に変換し、これを基に生成した教師データを複数の周波数帯WBに分割し、分割された各教師データにNMFをそれぞれ適用し、得られた係数行列を連結した特徴量を基に、分類モデルパラメータを生成して記憶する(図9)。
【0104】
また異常検知処理装置1は、分類処理において、時系列データを非負の観測行列に変換し、これを基に生成した評価データを複数の周波数帯WBに分割し、分割された各評価データにNMFをそれぞれ適用し、得られた係数行列を連結した特徴量と分類モデルパラメータとに基づいた分類結果を得る(図10)。
【0105】
このため異常検知処理装置1は、教師データ及び評価データに関し、信号成分の強度が、全周波数の範囲内では必ずしも高くは無いものの、分割された各周波数帯WB内では相対的に高いような周波数を、良好に抽出することができる。具体的に異常検知処理装置1は、例えば図4に示したスペクトログラムにおける周波数帯WB6の部分のように、周囲よりもやや信号成分の強度が高い(すなわち僅かに色が濃い)周波数を抽出できる。これにより異常検知処理装置1は、学習処理において生成する分類モデルパラメータの精度を高め得ると共に、分類処理において生成する特徴量の精度を高めることができ、最終的に良好な分類結果を得ることができる。
【0106】
また異常検知処理装置1は、各周波数帯WBの範囲に関し、互いに一部の周波数を重複させるように設定した(図4)。このため異常検知処理装置1は、各周波数帯WBの境界付近に特徴的な信号成分が含まれていたとしても、これを取りこぼすことなく確実に抽出することができる。
【0107】
さらに異常検知処理装置1は、前段の学習処理において、時系列データを順次処理し、学習完了条件が満たされると分類モデルパラメータを生成して学習処理を終了し、後段の分類処理において、残りの時系列データについて当該分類パラメータを用いた分類処理を行うようにした。
【0108】
このため異常検知処理装置1は、学習完了条件が適切に設定されることにより、必要十分な数の時系列データを取り込んだ適切な段階で、すなわち適切な数の教師データを生成し得るようになった段階で、前段の学習処理を切り上げ、分類処理に適した分類モデルパラメータを生成することができる。
【0109】
従って異常検知処理装置1は、時系列データを順次取得できれば、学習処理から自動的に分離処理に切り替えることができるので、例えば学習処理においてユーザが立ち会い、当該ユーザが教師データや分類モデルパラメータを確認しながら当該学習処理を完了すべきタイミングを見計らう、といった煩わしい作業を行う必要が無い。
【0110】
例えば異常検知処理装置1は、工作機械の近傍に設置されると、当該工作機械から発生する音を時系列データとして順次取得し、前段の学習処理において、適切に設定された学習完了条件が満たされるまでの間、正常に動作している場合の音に基づく時系列データを教師データとして分類モデルパラメータを生成する。その後、異常検知処理装置1は、発生する音に基づく時系列データを評価データとして分類処理を行い、当該評価データが教師データと同一のクラスであれば、当該工作機械が正常に動作していると判定し、異なるクラスであれば、当該工作機械の異常、例えば消耗部品の摩耗や劣化が発生したと判定する。この結果、異常検知処理装置1は、人手を必要とせずに、当該工作機械における消耗部品の交換時期を適切に判定し、ユーザに通知することができる。さらに、例えば消耗部品の寿命がある程度予想できる場合に、この寿命よりも十分に短い時間に相当する時系列データの数を学習完了条件として設定することにより、誤った分類を確実に防止できる。
【0111】
また異常検知処理装置1では、前処理部13のデータ分割部32及び分離度評価部33(図2)により、データを周波数及び時間それぞれにおいて複数の領域に分割し(図7)、高い分離度が得られた特定領域のデータを教師データ又は評価データとするようにした。このため異常検知処理装置1は、分割を行わずに全ての領域を教師データ又は評価データとする場合と比較して、データに特徴が良好に表れた状態となり、精度の高い分離処理を行うことができる。また異常検知処理装置1では、領域の減少に伴い演算量を削減できるので、処理負荷を軽減させることもできる。
【0112】
さらに異常検知処理装置1では、教師データ処理部21において、教師観測行列YにNMFを適用することにより教師基底行列H及び教師係数行列Wに分解し、このうち教師基底行列Hを教師データとして記憶し、教師係数行列Wを元に分類モデルパラメータを生成するようにした。これにより異常検知処理装置1では、例えば特定周波数のパワーの大きさに基づいて分類する場合よりも、分類精度を向上させることができる。
【0113】
以上の構成によれば、第1の実施の形態による異常検知処理装置1は、学習処理及び分類処理のそれぞれにおいて、教師データ及び評価データをそれぞれ複数の周波数帯WBに分割し、分割された各教師データ及び各評価データに対しNMFをそれぞれ適用し、得られた複数の係数行列を連結してから、その後の処理を行う。これにより異常検知処理装置1は、教師データ及び評価データに関し、分割された各周波数帯WB内において相対的に高い周波数を確実に抽出できるので、学習処理において生成する分類モデルパラメータの精度を高め得ると共に、分類処理において生成する特徴量の精度を高めることができ、最終的に良好な分類結果を得ることができる。
【0114】
[2.第2の実施の形態]
[2-1.学習分類処理装置の構成]
第2の実施の形態による異常検知処理装置201(図1)は、第1の実施の形態による異常検知処理装置1と比較して、制御部2及び記憶部3に代わる制御部202及び記憶部203を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0115】
制御部202は、第1の実施の形態による制御部2と同様、図示しないCPU、ROM及びRAM等を有しており、種々のプログラムを実行して様々な処理を行う。また記憶部203は、第1の実施の形態による記憶部3と同様、不揮発性の記憶媒体であり、種々のプログラムや種々の情報を記憶するものの、その内容が第1の実施の形態と一部相違している。
【0116】
制御部202は、記憶部203から各種プログラムを読み出して実行することにより、図2と対応する図11に示すような種々の機能ブロックを形成する。この第2の実施の形態では、第1の実施の形態と比較して、特徴量連結部23とパラメータ生成部24及び分類部27との間に特徴量圧縮部241が設けられている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0117】
特徴量圧縮部241は、学習処理において、特徴量連結部23から供給される特徴量、具体的には1個に連結された教師係数行列Wに対し、所定の圧縮処理を行うことによりデータ量を削減し、削減後の特徴量をパラメータ生成部24へ供給する。また特徴量圧縮部241は、分類処理において、特徴量連結部23から供給される特徴量、具体的には1個に連結された評価係数行列Wに対し、所定の圧縮処理を行うことによりデータ量を削減し、削減後の特徴量を分類部27へ供給する。
【0118】
この特徴量圧縮部241では、圧縮処理として、例えば主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)、潜在意味解析(LSA: Latent Semantic Analysis)、線形判別分析(LDA: Linear Discriminant Analysis)、或いは独立主成分分析(ICA: Independent Component Analysis)等の手法に基づいた演算処理が行われる。これにより特徴量圧縮部241は、特徴量に関し主に次元数を削減することによりデータ量を削減させることができる。
【0119】
[2-2.学習分類処理]
異常検知処理装置201の制御部202は、第1の実施の形態と同様に、予めユーザにより所定の学習完了条件が設定された上で、学習分類処理手順RT1(図8)を実行する。
ただしこの場合、制御部202は、ステップSP2において図9と対応する図12に示す学習処理手順RT22を実行し、またステップSP3において図10と対応する図13に示す分類処理手順RT23を実行するようになっている。
【0120】
[2-2-1.学習処理]
まず、学習処理について説明する。異常検知処理装置201の制御部202は、学習分類処理手順RT1(図8)のステップSP2において、学習処理手順RT22(図12)をサブルーチンとして実行し、最初のステップSP211に移る。
【0121】
制御部202は、ステップSP211~SP219において、学習処理手順RT2(図9)のステップSP11~SP19の各処理をそれぞれ行い、次のステップSP220に移る。
【0122】
これにより制御部202は、1つの時系列データを取得して対象区間を特定し、フーリエ変換処理を行った上で時間領域及び周波数領域でそれぞれ分割した後、事前の実験において特定された特定領域のデータを教師データとして採用する。さらに制御部202は、この教師データを複数の周波数帯WB(図4)に分割し、分割したそれぞれの教師データにNMFを適用して周波数帯WBごとの教師係数行列Wを生成し、これらを連結して1個の教師係数行列Wを生成して特徴量とする。
【0123】
ステップSP220において制御部202は、特徴量圧縮部241(図11)により、特徴量である教師係数行列Wに対し所定の圧縮処理を行うことによりデータ量を削減し、圧縮後の特徴量(すなわち教師係数行列W)をパラメータ生成部24へ供給して、次のステップSP221に移る。
【0124】
その後、制御部202は、ステップSP221において学習処理手順RT2(図9)のステップSP20と同様に分類モデルパラメータを生成し、これをパラメータ記憶部25に記憶させ、次のステップSP222に移る。ステップSP222において制御部202は、学習処理手順RT22を終了して、元の学習分類処理手順RT1(図8)のステップSP2に戻る。
【0125】
[2-2-2.分類処理]
次に、分類処理について説明する。異常検知処理装置201の制御部202は、学習分類処理手順RT1(図8)のステップSP3において、分類処理手順RT23(図13)をサブルーチンとして実行し、最初のステップSP231に移る。
【0126】
制御部202は、ステップSP231~SP238において、分類処理手順RT3(図10)のステップSP31~SP38の各処理をそれぞれ行い、次のステップSP239に移る。
【0127】
これにより制御部202は、1つの時系列データを取得して対象区間を特定し、フーリエ変換処理を行った上で時間領域及び周波数領域でそれぞれ分割した後、特定領域のデータを評価データとして採用する。さらに制御部202は、この評価データを複数の周波数帯WB(図4)に分割し、分割したそれぞれの評価データにNMFを適用して周波数帯WBごとの評価係数行列Wを生成し、これらを連結して1個の評価係数行列Wを生成して特徴量とする。
【0128】
ステップSP239において制御部202は、特徴量圧縮部241(図11)により、特徴量である評価係数行列Wに対し所定の圧縮処理を行うことによりデータ量を削減し、圧縮後の特徴量(すなわち評価係数行列W)を分類部27へ供給して、次のステップSP240に移る。
【0129】
その後、制御部202は、ステップSP240及びSP241において、分類処理手順RT3(図10)のステップSP39及びSP40と同様に、特徴量を基に異常度を算出し、この異常度を基に分類処理を行い、分類結果に応じた異常に関する情報を表す表示画面を表示部5(図1)に表示させて、次のステップSP242に移る。ステップSP242において制御部202は、分類処理手順RT23を終了して、元の学習分類処理手順RT1(図8)のステップSP3に戻る。
【0130】
[2-3.効果等]
以上の構成において、第2の実施の形態による異常検知処理装置201は、学習処理において、時系列データを非負の観測行列に変換し、これを基に生成した教師データを複数の周波数帯WBに分割し、分割された各教師データにNMFをそれぞれ適用し、得られた係数行列を連結した特徴量を圧縮し、これを基に分類モデルパラメータを生成する。
【0131】
また異常検知処理装置201は、分類処理において、時系列データを非負の観測行列に変換し、これを基に生成した評価データを複数の周波数帯WBに分割し、分割された各評価データにNMFをそれぞれ適用し、得られた係数行列を連結した特徴量を圧縮し、これと分類モデルパラメータとに基づいた分類結果を得る。
【0132】
このため異常検知処理装置201は、第1の実施の形態と同様に、学習処理において生成する分類モデルパラメータの精度を高め得ると共に、分類処理において生成する特徴量の精度を高めることができ、最終的に良好な分類結果を得ることができる。
【0133】
特に異常検知処理装置201は、生成された特徴量に対し圧縮処理を行った上で、分類パラメータの生成や異常度の算出処理等を行う。このため異常検知処理装置201は、第1の実施の形態と比較して演算量を削減できるため、制御部202における処理負荷や必要な記憶容量等を削減でき、処理の高速化や構成の簡素化を図ることができる。
【0134】
その他の点においても、第2の実施の形態による異常検知処理装置201は、第1の実施の形態による異常検知処理装置1と同様の作用効果を奏し得る。
【0135】
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、周波数分割部34(図2)において分割する複数の周波数帯WBに関し、該複数の周波数帯WBの間において一部の周波数を互いに重複させる形態について述べた(図4)。しかし本発明はこれに限らず、例えば複数の周波数帯WBの間で互いの周波数が重ならないように設定しても良い。また、例えば信号成分に異常が表れないことが予め判明している周波数がある場合に、当該周波数を除外するように各周波数帯WBを設定しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0136】
また上述した第1の実施の形態においては、周波数分割部34(図2)において分割する複数の周波数帯WBに関し、8個の周波数帯WBを設けると共に、各周波数帯WBの帯域幅を何れも320[Hz]に統一する形態について述べた(図4)。しかし本発明はこれに限らず、例えば7個以下又は9個以上の周波数帯WBを設けても良く、また各周波数帯WBの帯域幅を互いに相違させても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0137】
さらに上述した第1の実施の形態においては、周波数分割部34(図2)において分割する複数の周波数帯WBに関し、各周波数帯WBを予め設定した範囲に固定する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば複数の周波数帯WBの組み合わせ(以下これを周波数帯分割パターンと呼ぶ)に関し、各周波数帯WBの上限値及び下限値、並びに周波数帯WBの数等を互いに相違させた複数の周波数帯分割パターンを予め用意しておき、これらを切り替えるようにしても良い。この場合、周波数帯分割パターンの切り替えに関しては、例えばユーザの操作に基づくものでも良く、或いは時系列データの特性等に応じて自動的に切り替えるようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0138】
さらに上述した第2の実施の形態においては、特徴量圧縮部241(図11)により、特徴量連結部23から供給される特徴量(教師係数行列W又は評価係数行列W)に対し無条件で圧縮処理を行う形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば特徴量に含まれる次元の数が所定の閾値を超える場合等、所定の条件を満たす場合にのみ圧縮処理を行うようにしても良い。
【0139】
さらに上述した第1の実施の形態においては、学習処理の完了後に分類処理を行う形態について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば学習処理の完了後に分類処理を行わず、生成した教師基底行列H(教師データ)や教師係数行列W、或いは該教師係数行列Wを基に生成した分類モデルパラメータ等を記憶部3等に記憶させ、若しくは所定のサーバ等へ送信して保存させても良い。これらの教師データ等は、例えば所定の分離装置に記憶させ、当該教師データ等に基づいた分離処理を行わせても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0140】
さらに上述した第1の実施の形態においては、学習完了条件を、「100個の時系列データを取り込むこと」とする形態について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、任意の個数の時系列データを取り込むこととしても良く、また所定の時間範囲(例えば1分間等)に渡る時系列データを取り込むこととしても良い。さらには、例えば学習完了条件を「教師データの分散が所定の閾値以下であること」等、統計的な値(平均値や標準偏差等)や分布に関する値を用いたものとしても良い。或いは、例えば予め時系列データを教師データと評価データとに分けておき、教師データを用いた学習処理を行い分類モデルパラメータを生成した後に、評価データを用いて分類処理を行うようにしても良い。この場合、学習完了条件を設定する必要は無く、また条件設定部15及び学習完了判定部16(図2)を省略できる。第2の実施の形態についても同様である。
【0141】
さらに上述した第1の実施の形態においては、区間特定部12(図2)が参照信号D2(図3)において振幅が振幅値Pとなる区間Tに対応する時系列データD1の区間を対象区間とする形態について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば区間特定部12が時系列データD1における振幅の大きさに基づいて、対象区間を特定しても良い。具体的には、時系列データD1において、振幅の大きさが所定の閾値を超える区間を対象区間として特定しても良く、又は振幅の大きさが所定の閾値を超える時刻の所定時間前から当該時刻の所定時間後までを、対象区間として特定しても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0142】
さらに上述した第1の実施の形態においては、前処理部13のデータ分割部32において、変換部31により変換された時間・周波数・振幅データを、周波数領域及び時間領域それぞれにおいて2分割する場合について述べた(図7)。しかしながら本発明はこれに限らず、周波数領域及び時間領域の少なくとも一方を、任意数の領域に分割しても良い。この場合、周波数領域及び時間領域における分割数は互いに相違させても良く、また同数としても良い。さらに、周波数領域及び時間領域における分割箇所は、それぞれ適宜設定することができる。第2の実施の形態についても同様である。
【0143】
さらに上述した第1の実施の形態においては、前処理部13のデータ分割部32において、時間・周波数・振幅データを、周波数領域及び時間領域それぞれにおいて2分割する処理を1回のみ行う形態について述べた(図7)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図7に示したように、4つの領域A1、A2、A3、A4のそれぞれにおいて、さらに再帰的にデータを分割してもよい。具体的には、例えば領域A1を、さらに4つの領域A11、A12、A13、A14に分割しても良い。この場合、分離度評価部33は、分割されたデータや、分割されたデータを組み合わせたデータに対して、それぞれ分離度を求めれば良い。このような再帰的な分割は、時間領域・周波数領域が最小の単位になるまで分割されるか、あるいは分割されたデータの大きさが所定の値となるまで、繰り返しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0144】
さらに上述した第1の実施の形態においては、前処理部13の分離度評価部33において、時間及び周波数に関して分割した各領域のデータでクラスの分類(判別)正解率を指標として分離度を算出し、当該分離度が所定の閾値L以上である領域を特定領域とする形態について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、他の種々の方法により分離度を評価しても良い。また、時間及び周波数に関して分割して全ての領域に限らず、一部の領域についてのみ分離度を評価しても良い。さらには、分離度評価部33においてNMFを用いること無く、他の種々の手法により基底行列及び係数行列を算出しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0145】
さらに上述した第1の実施の形態においては、前処理部13において、データ分割部32により時間及び周波数に関して領域を分割し、さらに分離度評価部33により領域毎の分離度を評価して特定領域を選択する形態について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば前処理部13からデータ分割部32及び分離度評価部33を省略しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0146】
さらに上述した第1の実施の形態においては、教師データ処理部21(図2)において、教師観測行列Yに対応付けられた正解ラベルのクラスごとにNMFを適用する形態について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、教師観測行列Yに対して、一括してNMFを適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0147】
さらに上述した第1の実施の形態においては、教師データ処理部21において、時系列データから変換された周波数領域の観測ベクトル又は観測行列を基に、NMFにより教師基底行列及び教師係数行列を生成する形態について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、周波数領域の観測ベクトル又は観測行列に対して他の種々の演算処理を行うことにより、教師基底行列及び教師係数行列を生成しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0148】
さらに上述した第1の実施の形態においては、分類部27において分類モデルとして閾値判別を用いる形態について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば分類モデルとして線形判別、二次判別、又はSVM(Support Vector Machine)に基づく分類モデル等、種々の分類モデルを用いて、分類しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0149】
さらに上述した実施の形態においては、出力部28(図2)によって分類結果を基に所定の表示画面を構成して表示部5(図1)に表示させる形態について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図示しないスピーカから分類結果を音声により出力しても良く、或いは通信部4(図1)から所定の端末装置(図示せず)等へ分類結果を表すデータを送信する等、種々の手法により分類結果を出力しても良い。若しくは、記憶部3に分類結果を記憶しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0150】
さらに上述した第1の実施の形態においては、異常検知処理装置1の制御部2(図1)において各種プログラムを実行することにより、図2に示したデータ取得部11等の各ブロックをソフトウェアによる機能ブロックとして構成する形態について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、データ取得部11等をハードウェアにより構成しても良く、或いはハードウェア及びソフトウェアの協働により実現しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0151】
さらに上述した第1の実施の形態においては、異常検知処理装置1(図1)が記憶部3に予め記憶されている各種プログラムを読み出して実行する形態について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばネットワークに接続された所定のサーバ装置(図示せず)から取得し、或いはUSB(Universal Serial Bus)メモリのような着脱可能な記憶媒体から読み出すことにより、異常検知処理装置1が各種プログラムを取得して実行しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0152】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態にも適用範囲が及ぶものである。また本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態のうち任意の実施の形態に記載された構成の一部を抽出し、上述した各実施の形態及び他の実施の形態のうちの任意の実施の形態の構成の一部と置換・転用した実施の形態や、抽出された構成の一部を任意の実施の形態に追加した実施の形態にも適用範囲が及ぶものである。
【0153】
さらに上述した第1の実施の形態においては、データ取得部としてのデータ取得部11と、変換部としての変換部31と、周波数分割部としての周波数分割部34と、特徴量生成部としての教師データ処理部21及び特徴抽出部26と、特徴量連結部としての特徴量連結部23と、パラメータ生成部としてのパラメータ生成部24と、分類部としての分類部27とによって異常検知処理装置としての異常検知処理装置1を構成する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなるデータ取得部と、変換部と、周波数分割部と、特徴量生成部と、特徴量連結部と、パラメータ生成部と、分類部とによって異常検知処理装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、例えば時系列のデータを取得して学習処理を行ってから分類処理を行う場合に利用できる。
【符号の説明】
【0155】
1、201……学習分類装置、2、202……制御部、3、203……記憶部、11……データ取得部、12……区間特定部、13……前処理部、15……条件設定部、16……学習完了判定部、21……教師データ処理部、22……教師データ記憶部、23……特徴量連結部、24……パラメータ生成部、25……パラメータ記憶部、26……特徴抽出部、27……分類部、28……出力部、31……変換部、32……データ分割部、33……分離度評価部、34……周波数分割部、241……特徴量圧縮部、H……基底行列、H……教師基底行列、W……係数行列、W……教師係数行列、W……評価係数行列、Y……観測行列、Y……教師観測行列、Y……評価観測行列、σ ……クラス間分散、σ ……クラス内分散、J……クラス間分散比、WB……周波数帯。

図1
図2
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