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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118793
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】LNGタンクのパージ方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/00 20060101AFI20240826BHJP
   F17C 9/02 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
F17C9/00 B
F17C9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025292
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大地
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 理孝
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB20
3E172BA06
3E172BB04
3E172BD05
3E172DA90
3E172KA03
3E172KA21
(57)【要約】
【課題】効率的にタンク内を窒素ガスで置換することが可能なLNGタンクのパージ方法を提供する。
【解決手段】LNGタンクのパージ方法は、LNGタンク内のタンク下部へ窒素ガスよりも比重の小さい置換ガスを供給するとともに、タンク下部から排気して、タンク内を置換ガスで置換すること、タンク内を置換ガスで置換した後、タンク下部へ窒素ガスを供給するとともに、タンク上部から排気して、タンク内を窒素ガスで置換すること、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LNGタンク内のタンク下部へ窒素ガスよりも比重の小さい置換ガスを供給するとともに、前記タンク下部から排気して、タンク内を前記置換ガスで置換すること、
タンク内を前記置換ガスで置換した後、前記タンク下部へ窒素ガスを供給するとともに、タンク上部から排気して、タンク内を窒素ガスで置換すること、を含む、
LNGタンクのパージ方法。
【請求項2】
タンク内を前記窒素ガスで置換した後、前記タンク上部へ空気を供給するとともに、前記タンク下部から排気して、タンク内を空気で置換すること、を更に含む、
請求項1に記載のLNGタンクのパージ方法。
【請求項3】
前記置換ガスは、常温のメタンガスである、
請求項1又は2に記載のLNGタンクのパージ方法。
【請求項4】
前記置換ガスは、前記LNGタンク又は他のLNGタンクで自然気化により生じた気化ガスである、
請求項1又は2に記載のLNGタンクのパージ方法。
【請求項5】
前記置換ガスは、前記タンク下部から排出された気化ガスとメタンガスとの混合気体である、
請求項1又は2に記載のLNGタンクのパージ方法。
【請求項6】
前記タンク下部からの排気を、前記タンク下部に開口部を有する仮設配管を通じて行う、
請求項1又は2に記載のLNGタンクのパージ方法。
【請求項7】
タンクに仮設されたサンプリング配管によってタンク内の高さの異なる複数の位置でサンプリングを行い、サンプリングされた気体の少なくとも1つの成分濃度を検出する、
請求項1又は2に記載のLNGタンクのパージ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化天然ガス(以下、LNG)を貯蔵するLNGタンクにおいて、タンク内をパージする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LNGタンクのメンテナンスに先立って行われるパージ作業では、一般に、タンク内のLNGの払い出し、残液の蒸発、タンク内の窒素ガス置換、及び、タンク内の空気置換の順に工程が進行する。
【0003】
LNGには、メタンだけではなく、エタン、プロパン、及びブタンなどの重質成分が含まれている。定常運転中のLNGタンク内で発生する気化ガス(以下、BOG)の成分は大部分がメタンである。パージ作業開始時のLNGタンク底部には重質成分を多く含む残液が存在することがある。特許文献1では、LNGタンクの残液を排出する方法が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されたLNGタンクの残液排出方法では、先ず、タンク内部に常温に温められたメタンガスが供給される。このメタンガスによってタンク底部の重質成分が強制的に気化され、この重質成分の気化ガスはメタンガスで希釈されて、メタンガスと重質成分の気化ガスが混合したBOGとなってタンク内部に充満する。タンク内が上記のBOGで満たされた状態となったらメタンガスの供給が停止され、その後、タンク内のガスが窒素ガスに一旦置換されてから、更に、この窒素ガスが空気に置換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-185096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LNGタンクに残留しているLNGが気化すると、比重の違いによってプロパンガス及びブタンガスからなるプロパン・ブタン層、エタンガスからなるエタン層、及び、メタンから成るメタン層が形成される。この状態でLNGタンク内を窒素ガスに置換する場合に、以下のような理由から理想的なピストンフローを形成することが難しい。第1に、エタンガスの比重(1.049)と窒素ガスの比重(0.967)が近いことから、LNGタンク内に供給された窒素ガスがエタン層で拡散して、置換のために多量の窒素ガスが必要となる。第2に、プロパンガスの比重(1.56)及びブタンガスの比重(2.09)は窒素ガスの比重よりも著しく大きいことから、プロパン・ブタン層がタンク底部に滞留してしまう。ここで、比重は標準状態(0℃、101523Pa)における或る物質の質量の、それと同じ体積の空気の質量に対する比を表す。理想的なピストンフローが形成されると、窒素ガスの気流がピストンのように動いてタンク内の残留気体を押し出し、効率よくタンク内を窒素ガス置換できる。理想的なピストンフローを形成するためには、窒素ガス置換作業開始時のLNGタンク内が窒素ガスよりも比重の小さいガスで充填された状態であることが望ましい。
【0007】
以上の事情に鑑み、本開示では、LNGタンク内をパージする方法であって、効率的にタンク内を窒素ガス置換できるものを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るLNGタンクのパージ方法は、
LNGタンク内のタンク下部へ窒素ガスよりも比重の小さい置換ガスを供給するとともに、前記タンク下部から排気して、タンク内を前記置換ガスで置換すること、
タンク内を前記置換ガスで置換した後、前記タンク下部へ窒素ガスを供給するとともに、タンク上部から排気して、タンク内を窒素ガスで置換すること、を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、効率的にタンク内を窒素ガスで置換することが可能なLNGタンクのパージ方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るパージ方法が適用されるLNGタンクの概略構成を示す図である。
図2図2は、パージ作業開始時のLNGタンクを示す図である。
図3図3は、パージ作業の流れ図である。
図4図4は、置換ガス置換中のLNGタンクの変形例を示す図である。
図5図5は、窒素ガス置換中のLNGタンクを示す図である。
図6図6は、空気置換中のLNGタンクを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本開示に係るLNGタンクのパージ方法が適用されるLNGタンク1の概略構成を示す図である。図1に示すLNGタンク1は、陸上に設置され、内部に液化天然ガス(以下、LNG)が貯蔵される。
【0012】
本実施形態に係るLNGタンク1は平底円筒型であるが、LNGタンク1の形状はこれに限定されない。説明の便宜を図って、LNGタンク1内の上部を「タンク上部」と称する。タンク上部は、タンク内の頂部から下方へタンクの高さの1/4程度の範囲を指す。また、説明の便宜を図って、LNGタンク1内の下部を「タンク下部」と称する。タンク下部は、タンク内の底部から上方へタンクの高さの1/4程度の範囲を指す。タンク下部のうち底部により近い部分を特に「タンク底部」と称する。
【0013】
LNGタンク1の頂部には、BOGライン11が接続されている。BOGライン11には、BOG圧縮機12が設けられている。BOGライン11のBOG圧縮機12よりも上流には、ベントライン17が接続されており、ベントライン17にはフレアスタックが接続されている。BOGライン11のBOG圧縮機12より下流には再液化ライン18が接続されており、再液化ライン18は再液化装置と接続されている。また、再液化ライン18は、BOGを燃料として使用するBOG使用設備と接続されていてもよい。
【0014】
BOGライン11はタンク上部の常に気相となる部分に開口しており、タンク内で気化したLNG(以下、BOG)はBOGライン11へ排出される。LNGタンク1内の余剰のBOGは、タンク内圧によって自然に排出される、又は、BOG圧縮機12の稼働によって強制的に排出される。LNGタンク1からBOGライン11へ排出されたBOGは、再液化ライン18を通じて再液化装置へ送られて再液化されたり、外部へ送出されたり、後述する還流ライン19(図2、参照)を通じてLNGタンク1へ還流されたり、ベントライン17を通じてフレアスタックへ送られて焼却されたりしてよい。
【0015】
タンク下部には、ポンプ13が設置されている。ポンプ13は、望ましくは、ポンプバレル14の底部に配置されている。ポンプ13とポンプバレル14が接続されており、ポンプ13の稼働によってLNGタンク1内のLNGはポンプバレル14を通じてLNGタンク1から排出される。また、ポンプバレル14を通じてタンク下部から気体を排出したりタンク下部へ気体を供給したりする場合には、ポンプ13に代えてダミーポンプが設置される。
【0016】
ここで、上記構成のLNGタンク1のパージ方法を説明する。図2ではパージ作業開始時のLNGタンク1が示されている。図2に示すように、パージ作業開始時のLNGタンク1のタンク底部には、プロパンやブタンを多く含むBOGが存在する。タンク底部には、プロパンやブタンなどの重質成分を多く含む残液が僅かに存在することもある。パージ作業に先立って、LNGタンク1に還流ライン19及びガス吸引配管21が仮設される。還流ライン19は、ポンプバレル14とベントライン17とを接続する配管である。ポンプバレル14を流れる流体の一部又は全部を、還流ライン19を通じてベントライン17へ送ることができる。また、還流ライン19は、ポンプバレル14とBOGライン11のBOG圧縮機12より下流又は再液化ライン18とを接続する配管である。BOGライン11を流れる流体の一部又は全部を、BOG圧縮機12で圧縮してから、還流ライン19へ送ることができる。還流ライン19は、ベントライン17と、BOGライン11又は再液化ライン18とに、選択的に接続されてよい。この場合、還流ライン19に流路切替弁が設けられるか、仮設の還流ライン19の接続先が自由に選択可能であってよい。ガス吸引配管21は、LNGタンク1内からガスを排出するために使用される配管である。ガス吸引配管21の開口部は、タンク下部の気相部分のうち、より低い位置に配置される。ガス吸引配管21の他方の端は還流ライン19と接続される。ガス吸引配管21には、ガス吸引ポンプ22が設けられている。
【0017】
更に、パージ作業に先立って、LNGタンク1に複数のサンプリング配管24が仮設される。複数のサンプリング配管24は、LNGタンク1内の異なる高さ位置に開口したサンプリング配管24a,24b,24cを含む。本実施形態では、タンク下部に開口部を有する下部サンプリング配管24a、タンク上部に開口部を有する上部サンプリング配管24b、及び、タンク下部とタンク上部の間に開口部を有する中部サンプリング配管24cの複数のサンプリング配管24が設置されている。複数のサンプリング配管24の開口部は、LNGタンク1内の気相部分のうちより低い位置であって、平面視においてタンク中央部分に配置されている。但し、サンプリング配管24の数や開口部の位置は本実施形態に限定されない。
【0018】
複数のサンプリング配管24には、サンプルガス吸引ポンプ25が設けられている。複数のサンプリング配管24に対して1つのサンプルガス吸引ポンプ25が設けられていてもよいし、各サンプリング配管24に対して1つのサンプルガス吸引ポンプ25が設けられていてもよい。サンプルガス吸引ポンプ25の稼働によってサンプリング配管24を通じてタンク内の気体が採取される。気体のサンプリングはパージ作業中の適時に行われ、サンプリングされた気体の成分が分析器26によって分析される。ここで、分析は、気体のメタンガス濃度又は窒素濃度の測定、及び、酸素濃度の測定などであってよい。
【0019】
図3は、パージ作業の流れ図である。パージ作業では、先ず、LNGタンク1内が置換ガスに置き換えられる。図3に示すように、タンク下部及びタンク上部からの強制排気が開始され、タンク下部への置換ガスの供給が開始される(ステップS1)。但し、強制排気はタンク下部のみから行われてもよい。
【0020】
ガス吸引ポンプ22が稼働され、タンク下部からガス吸引配管21へ強制排気される。ガス吸引配管21へ流出したガスはタンク下部に滞留しているプロパンガス及びブタンガスを多く含み、還流ライン19及びポンプバレル14を通じて置換ガスとしてLNGタンク1へ供給される。また、BOGライン11を通じてタンク上部からBOGが自然又は強制排気される。タンク上部からBOGライン11へ流出したBOGは、ベントライン17を通じて焼却される、再液化ライン18を通じて再液化などの再利用に供される、又は、還流ライン19を通じて置換ガスとして利用される。
【0021】
置換ガス供給の際には、ポンプバレル14に接続されたポンプ13がダミーポンプに置き換えられ、ポンプバレル14を通じて置換ガスがタンク底部へ供給される。置換ガスは、窒素ガスよりも比重が小さい気体である。置換ガスと窒素ガスは、置換ガスが充填された空間に窒素ガスが供給された場合に置換ガス層と窒素ガス層とに比重分離される程度に十分な比重差を有することが望ましい。また、置換ガスは、LNGタンク1の残液よりも温度が高く且つLNGタンク1内よりも高圧である。
【0022】
置換ガスは、常温のメタンガスであってよい。この場合、図4に示すように、ポンプバレル14に置換ガス源としてLNGタンク1とは別のLNGタンクのBOGラインが接続されて、他のLNGタンクで生じた自然気化ガスがタンク下部へ供給されてよい。なお、LNGの自然気化ガスは殆どがメタンガスである。
【0023】
置換ガスの供給は、タンク下部の残液が殆ど蒸発した状態で行われることが望ましいが、残液が存在していてもかまわない。残液が存在する場合には、上記のようにタンク下部に置換ガスが供給されることによって、タンク下部の残液が気化する。残液には、エタン、プロパン、及びブタンなどの重質成分が多く含まれている。残液の気化により、主にエタンガス、プロパンガス、ブタンガスが生じる。エタンガスは、プロパンガス及びブタンガスよりも比重が小さいので上昇し、プロパンガス及びブタンガスはタンク下部に滞留する。
【0024】
上記のようにLNGタンク1から強制排気されたプロパンガス及びブタンガスを多く含む気化ガスの一部又は全部は、置換ガスの一部として用いられてよい。この場合、タンク下部から強制排気された気化ガスは重質成分を多く含むため、気化ガスはメタンガスによって希釈された置換ガスとしてタンク内へ戻される。
【0025】
タンク下部への置換ガスの供給とタンク下部からの強制排気とが継続されると、タンク内からプロパンガス及びブタンガスの殆どが排出されて、タンク下部の気体はエタンガスに置き換わる。エタンガスは置換ガスよりも比重が大きい。エタンガスのタンク下部からの強制排気及びBOGライン11を通じたタンク上部からの排気が更に継続されると、タンク内からエタンガスの殆どが排出されて、タンク下部の気体は置換ガスに置き換わる。このように、LNGタンク1内の重質成分の気化ガスが積極的に排出されることから、LNGタンク1内に可燃性ガスである重質成分の気化ガスの残留を防ぐことができる。
【0026】
LNGタンク1内が置換ガスに置き換われば(ステップS2でYES)、タンク下部への置換ガス(ここでは、常温のメタンガス)の供給が停止され、タンク下部及びタンク上部からの強制排気が停止される(ステップS3)。タンク下部の気体が置換ガスに置き換わったことは、LNGタンク1内が置換ガスに置き換わったことを意味する。本実施形態において、タンク下部の気体が置換ガスであるメタンガスに置き換わったことは、下部サンプリング配管24aを通じてサンプリングされた気体のメタンガス濃度に基づいて検出できる。なお、LNGタンク1内が置換ガスに置き換わった状態は、LNGタンク1内が完全に置換ガスで充填された状態に限定されず、窒素ガスと比重分離される程度に比重が十分に小さい気体でLNGタンク1内が満たされた状態も含まれる。例えば、置換ガスがメタンガスである場合に、タンク下部からサンプリングされた気体のメタン濃度が60vol%以上でLNGタンク1内が置換ガスに置き換わったと見做してよい。
【0027】
続いて、LNGタンク1内が窒素ガスに置換される。ここで、タンク上部からの強制排気が開始され、タンク上部への窒素ガスの供給が開始される(ステップS4)。窒素ガスは、ポンプバレル14を通じてタンク底部へ供給されてよい。
【0028】
図5は、窒素ガス置換中のLNGタンク1を示す図である。図5に示すように、ポンプバレル14に窒素ガス源が接続されて、ポンプバレル14を通ってポンプ13からタンク下部へ窒素ガスが供給されてよい。また、BOG圧縮機12の稼働によって、タンク上部の気体がBOGライン11を通じてタンク外へ強制排気され、再液化ライン18で再液化等の再利用に供されるか、又は、ベントライン17を通じて焼却されてよい。
【0029】
タンク下部に窒素ガスが供給されると、窒素ガスの比重はメタンガスよりも大きいことから、タンク底部からタンク内に溜まっていく窒素ガスがピストンの働きをして、タンク内のメタンガスがBOGライン11を通じてタンク外へ押し出される。更に、窒素ガスとメタンガスの比重差によって、メタンガス中への窒素ガスの拡散が抑制される。このようにして、LNGタンク1内に理想的なピストンフローが形成されることによって、LNGタンク1内を効率よく窒素ガスに置換できる。
【0030】
LNGタンク1内が窒素ガスに置き換われば(ステップS5でYES)、タンク下部への窒素ガスの供給が停止され、タンク上部からの強制排気が停止される(ステップS6)。LNGタンク1内が窒素ガスに置き換わったことは、上部サンプリング配管24bを通じてサンプリングされた気体の成分を分析することによって検出できる。タンク上部からサンプリングされた気体のメタンガス濃度が100%LEL未満の所定の許容値になった時点でLNGタンク1内が窒素ガスに置き換わったと見做してよい。上記の許容値は、タンク上部からサンプリングされる気体の組成や、LNGタンク1に規定される爆発下限界濃度に応じて、適宜設定されてよい。
【0031】
最後に、LNGタンク1内が空気に置き換えられる。ここで、タンク下部が大気開放され、タンク上部への空気の供給が開始される(ステップS7)。図6に示すように、タンク下部は、ポンプバレル14を通じて大気に開放されてよい。また、BOGライン11にエアブロワ等を含む空気源が接続されて、BOGライン11を通じてタンク上部へ空気が供給されてよい。LNGタンク1内が空気に置き換われば(ステップS8でYES)、タンク下部の大気開放が停止又は継続され、タンク上部への空気の供給が停止される(ステップS9)。空気への置換作業は、タンク内の酸素濃度が所定濃度となるまで継続される。なお、LNGタンク1内が空気に置き換わったことは、下部サンプリング配管24aでサンプリングされたタンク下部の気体の酸素濃度が18vol%以上となったことでLNGタンク1内が空気に置き換わったと見做してよい。上記の酸素濃度は、LNGタンク1の作業環境規定に応じて、適宜設定されてよい。
【0032】
以上に説明したように、本実施形態のLNGタンク1のパージ方法は、
タンク下部へ窒素ガスよりも比重の小さい置換ガスを供給するとともに、タンク下部から排気して、タンク内を置換ガスで置換すること、
タンク内を置換ガスで置換した後、タンク下部へ窒素ガスを供給するとともに、タンク上部から排気して、タンク内を窒素ガスで置換すること、を含む。
上記のLNGタンク1のパージ方法は、
タンク内を窒素ガスで置換した後、タンク上部へ空気を供給するとともに、タンク下部から排気して、タンク内を空気で置換すること、を更に含んでよい。
【0033】
上記のLNGタンク1のパージ方法によれば、タンク内を窒素ガスで置換する際に、タンク内は窒素ガスと比重差のある置換ガスで満たされているため、タンク内に供給された窒素ガスの置換ガス中への拡散が抑えられ、窒素ガス層がピストン様に置換ガス層に作用して置換ガスがタンク外に押し出される。このように、窒素ガスの置換に際し理想的なピストンフローが形成されるので、使用される窒素ガス量が抑えられるとともに、効率的な置換が行われる。
【0034】
上記のLNGタンク1のパージ方法において、置換ガスは常温のメタンガスであってよい。或いは、置換ガスはLNGタンク1又は他のLNGタンクで自然気化により生じたLNGの気化ガスであってよい。或いは、置換ガスは、タンク下部から排出された気化ガスとメタンガスとの混合気体であってよい。
【0035】
また、本実施形態のLNGタンク1のパージ方法では、タンク下部からの排気が、タンク下部に開口部を有する仮設配管(即ち、ガス吸引配管21)を通じて行われる。
【0036】
LNGタンク1からの排気のために仮設配管を用いることで排気位置の自由度が高まり、残液の液面により近づいた位置から排気することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態のLNGタンク1のパージ方法では、タンクに仮設されたサンプリング配管24によってタンク内の高さの異なる複数の位置でサンプリングを行い、サンプリングされた気体の少なくとも1つの成分濃度を検出している。
【0038】
これにより、パージ作業中のタンク内の気体のモニタリング精度を向上できる。例えば、タンク下部の気体の滞留状況、タンク高さ方向の気体の比重分布、タンク高さ方向の窒素ガス置換状況を、パージ作業中にモニタリングすることが可能となる。
【0039】
本開示の実施形態は例示及び説明の目的で提示されたものであり、本開示を本明細書に開示される形態に限定することを意図するものではない。例えば、本開示に含まれる特徴は、上記で論じたもの以外の代替の実施形態、構成、又は態様に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 :LNGタンク
11 :BOGライン
12 :BOG圧縮機
13 :ポンプ
14 :ポンプバレル
17 :ベントライン
18 :再液化ライン
19 :還流ライン
21 :ガス吸引配管(仮設配管)
22 :ガス吸引ポンプ
24 :サンプリング配管
25 :サンプルガス吸引ポンプ
26 :分析器
図1
図2
図3
図4
図5
図6