(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118799
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】電磁波検知素子とこれを備えた電磁波センサ
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
G01J1/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025305
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】青木 進
(72)【発明者】
【氏名】原 晋治
(72)【発明者】
【氏名】太田 尚城
(72)【発明者】
【氏名】小久保 眞生子
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB02
2G065BA02
2G065BA09
2G065BA11
2G065BA12
2G065BA13
2G065BA34
2G065BC28
2G065BC35
2G065CA21
(57)【要約】
【課題】導電層の形状が安定して形成される電磁波検知素子を提供する。
【解決手段】電磁波検知素子11は、電磁波検知部12と、電磁波検知部12と電気的に接続された導電層15と、導電性支柱17と、を有している。導電性支柱17は、導電層15と電気的に接続された端面31を備え、端面31は、導電層15と接する内側領域33と、内側領域33の外側に位置する外側領域34と、を有している。電磁波検知素子11は、外側領域34の少なくとも一部と導電層15との間に位置する誘電体層を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波検知部と、
前記電磁波検知部と電気的に接続された導電層と、
前記導電層と電気的に接続された端面を備え、前記端面は、前記導電層と接する内側領域と、前記内側領域の外側に位置する外側領域と、を有する導電性支柱と、
前記外側領域の少なくとも一部と前記導電層との間に位置する誘電体層と、を有する、電磁波検知素子。
【請求項2】
前記端面の前記内側領域は前記外側領域の少なくとも一部に対して引き込んだ凹部を有し、前記導電層は前記凹部に沿って設けられている、請求項1に記載の電磁波検知素子。
【請求項3】
前記導電層は、前記電磁波検知部に接続された第1の端部を備え前記第1の端部から線状に延びる線状体を有し、前記導電性支柱の長軸と平行な方向からみて、前記誘電体層は前記線状体の経路に沿った前記内側領域と前記第1の端部との間にある、請求項1に記載の電磁波検知素子。
【請求項4】
前記誘電体層は前記外側領域の全周に渡る領域と前記導電層との間に設けられている、請求項3に記載の電磁波検知素子。
【請求項5】
前記導電層は前記第1の端部の反対側に位置する第2の端部を有し、前記第2の端部は前記外側領域に接している、請求項3に記載の電磁波検知素子。
【請求項6】
前記導電層を前記導電性支柱の長軸と平行な方向に投影して得られる、前記外側領域を含む投影面における投影像において、前記導電層は、前記外側領域の全周で前記外側領域の外周部に接する周辺領域を有する、請求項1に記載の電磁波検知素子。
【請求項7】
前記電磁波検知部は、温度検知素子と、前記温度検知素子の少なくとも一部を覆う電磁波吸収体と、を含む、請求項1に記載の電磁波検知素子。
【請求項8】
前記導電性支柱の側面と対向し、前記誘電体層と一体化した側面誘電体層を有する、請求項1に記載の電磁波検知素子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電磁波検知素子を備える電磁波センサ。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電磁波検知素子を複数個備え、
複数の前記電磁波検知素子はアレイ状に配列されている電磁波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁波検知素子とこれを備えた電磁波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線などの電磁波を検知する電磁波センサが知られている。特許文献1には、サーミスタ素子と、サーミスタ素子に電気的に接続された配線層と、配線層に電気的に接続されたレッグ部(導電性支柱)と、を有する電磁波検知素子が記載されている。サーミスタ素子は、温度に応じて電気抵抗が変化するサーミスタ膜を有している。サーミスタ膜は外部から入射した電磁波によって温度変化を生じる。測定対象の温度とその測定対象から放射される輻射エネルギーとの間には相関関係(Stefan-Boltzmannの法則)がある。この原理に基づき、サーミスタ膜の電気抵抗から測定対象の温度を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁波検知素子の測定精度を確保するためには、輻射エネルギー以外の要因によるサーミスタ膜の温度変動を抑制することが望ましい。そのためには、導電層を薄く形成して、サーミスタ素子から導電層への放熱を抑制することが好ましい。一方、導電層と導電性支柱との接続部の近傍では導電層の経路が複雑であることから、導電層を薄く形成した場合、導電層の形状が安定して形成されない可能性がある。
【0005】
本発明は、導電層の形状が安定して形成される電磁波検知素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、電磁波検知素子は、電磁波検知部と、電磁波検知部と電気的に接続された導電層と、導電性支柱と、誘電体層と、を有している。導電性支柱は、導電層と電気的に接続された端面を備え、端面は、導電層と接する内側領域と、内側領域の外側に位置する外側領域と、を有している。誘電体層は、外側領域の少なくとも一部と導電層との間に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、導電層の形状が安定して形成される電磁波検知素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る赤外線センサの分解斜視図である。
【
図3】導電性支柱と導電層の接続部の構成を示す概略図である。
【
図10】電磁波検知素子の製造方法を示す図である。
【
図11】電磁波検知素子の製造方法を示す図である。
【
図12】比較例1の電磁波検知素子の製造方法を示す図である。
【
図13】比較例1の電磁波検知素子の製造方法を示す図である。
【
図14】有機犠牲層の上面が導電性支柱の端面よりも突き出る場合の電磁波検知素子の製造方法を示す図である。
【
図15】比較例2の電磁波検知素子の製造方法を示す図である。
【
図16】第2の実施形態における導電性支柱と導電層の接続部の構成を示す概略図である。
【
図17】第3の実施形態における導電性支柱と導電層の接続部の構成を示す概略図である。
【
図18】第4の実施形態における導電層の構成を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して、本発明の電磁波検知素子と電磁波センサのいくつかの実施形態について説明する。以下の説明及び図面において、X方向及びY方向は第1の基板2及び第2の基板3の主面と平行な向きであり、X方向は電磁波検知素子11のアレイの行方向に対応し、Y方向は電磁波検知素子11のアレイの列方向に対応している。主面とは、第1の基板2及び第2の基板3の互いに対向する面である。X方向とY方向は互いに直交している。Z方向はX方向及びY方向と直交する方向であり、第1の基板2及び第2の基板3の主面と垂直な方向である。Z方向上向きは第2の基板3から第1の基板2を向く方向、Z方向下向きは第1の基板2から第2の基板3を向く方向である。図面では第2の基板3から第1の基板2を向く方向をZ方向としている。
【0010】
以下の実施形態では、電磁波検知素子11が2次元のアレイ状に配列した赤外線センサを対象とする。赤外線センサは主に長波長赤外線を検知する。長波長赤外線の波長は概ね8~14μmである。このような赤外線センサは主に赤外線カメラの撮像素子として利用される。赤外線カメラは暗所での暗視スコープ、暗視ゴーグルとして利用できるほか、人や物の温度測定などに利用可能である。また、複数の電磁波検知素子が1次元状に配列した赤外線センサは、各種の温度ないし温度分布を測定するセンサとして利用することができる。説明は省略するが、複数の電磁波検知素子が1次元状に配列した赤外線センサも本発明の範囲に含まれる。本実施形態の電磁波検知素子11はサーミスタ膜を備えた温度検知素子を含むが、サーモパイル(熱電対)型、焦電型、ダイオード型などの温度検知素子を含むあらゆる形式の電磁波検知素子が適用可能である。また、フォトダイオードなどの電磁波を直接検知する素子を電磁波検知素子として用いることも可能である。検出する電磁波は赤外線に限定されず、例えば波長100μm~1mmのテラヘルツ波であってもよい。
【0011】
(第1の実施形態)
(全体構成)
図1は本発明の第1の実施形態の赤外線センサ1の分解斜視図であり、第1の基板2と第2の基板3を離して示している。赤外線センサ1は、第1の基板2と、第1の基板2と対向する第2の基板3と、を有している。第1の基板2と第2の基板3に側壁(図示せず)が接続され、第1の基板2と第2の基板3と側壁は密閉された内部空間4を形成する。内部空間4は負圧ないしは真空にされている。これによって、内部空間4での気体の対流が防止または抑制され、電磁波検知素子11への熱的影響を軽減することができる。
【0012】
第1の基板2はシリコン基板と絶縁膜(ともに図示せず)とを有している。シリコン基板の表面ないし絶縁膜の内部に、リードアウトIC(ROIC)などの素子5、配線(図示せず)等が形成されている。ROICは、レギュレータ、A/Dコンバータ、マルチプレクサなどを含んでいる。第2の基板3は主にシリコン基板で形成されている。第2の基板3には、後述するリード6が形成されている。
【0013】
内部空間4には複数の電磁波検知素子11が設けられている。複数の電磁波検知素子11は、X方向に延びる複数の行とY方向に延びる複数の列からなる2次元の格子状のアレイをなし、各行はX方向に一定の間隔で配列された複数の電磁波検知素子11で構成され、各列はY方向に一定の間隔で配列された複数の電磁波検知素子11で構成されている。各電磁波検知素子11の電磁波検知部12はこのアレイにおける一つのセルないし画素を構成する。アレイの行列数としては例えば640行×480列、1024行×768列などが挙げられるが、これらに限定されない。なお、
図1においては後述する配線層13の図示を省略している。
【0014】
第2の基板3にはリード6が形成されている。リード6は後述する電気接続部材7を電磁波検知素子11に接続し、電磁波検知素子11にセンス電流を供給する。リード6は銅などの導体から形成されている。リード6は電磁波検知素子11の行毎及び列毎に設けられ、格子状に形成されている。すなわち、リード6は行方向(X方向)に延びる行リード6Xと、列方向(Y方向)に延びる列リード6Yとからなっている。行リード6Xは対応する行に含まれる電磁波検知素子11を順次接続し、列リード6Yは対応する列に含まれる電磁波検知素子11を順次接続している。行リード6Xと列リード6Yは互いに直接的には導通しないで交差するように、Z方向の異なる位置を延びている。
【0015】
第1の基板2と第2の基板3は複数の電気接続部材7によって接続されている。電気接続部材7は円形断面のピラー状の形状をした導体で、例えばメッキによって作成することができる。ROICなどの素子5は第1の基板2の内部配線を介して電気接続部材7に接続されている。電気接続部材7の一部は行リード6Xに接続され、電気接続部材7の残りは列リード6Yに接続されている。図示は省略するが、複数の行リード6Xにそれぞれが接続された複数の電気接続部材7Xは、複数の行リード6Xの一端側と他端側とに交互に配置されている。同様に、複数の列リード6Yにそれぞれが接続された複数の電気接続部材7Yは、複数の列リード6Yの一端側と他端側とに交互に配置されている。これによって、電気接続部材7の十分な断面積を確保しつつ、赤外線センサ1のサイズの増加を抑制することができる。
【0016】
(電磁波検知素子11の構成)
図2(a)は電磁波検知素子11の斜視図であり、
図2(b)は
図2(a)のA-A線に沿った電磁波検知素子11の断面図である。
図3(a)は導電性支柱17と導電層15の接続部の構成を示す断面図、
図3(b)は
図3(a)においてZ方向下向きにみた接続部の平面図であり、後述する導電性支柱17の内側領域33を示している。
図2(a)では導電性支柱17と導電層15の接続部の詳細を省略している。便宜上、
図2、3(a)は
図1と上下を逆にして示している。電磁波検知素子11は、電磁波検知部12と、電磁波検知部12に接続された2つの配線層13と、2つの配線層13の各々とそれぞれが接続された2つの導電性支柱17と、を有している。2つの配線層13は同じ形状と構成を有し、2つの導電性支柱17も同じ形状と構成を有しているので、以下では一方の配線層13と導電性支柱17について説明する。
【0017】
電磁波検知部12は、温度検知素子12Aと、温度検知素子12Aの少なくとも一部を覆う誘電体層12Bと、温度検知素子12Aに電気的に接続された導電性の端子層12Cと、を含む。温度検知素子12Aは、例えば正方形状または長方形状のサーミスタ膜である。サーミスタ膜の平面形状は正方形状または長方形状に限られず、任意の形状をとることができる。サーミスタ膜は、例えば、酸化バナジウム、非晶質シリコン、多結晶シリコン、マンガンを含むスピネル型結晶構造の酸化物、酸化チタン、またはイットリウム-バリウム-銅酸化物の膜である。誘電体層12Bは窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素などで形成され、電磁波吸収体として機能する。端子層12Cは後述する導電層15を温度検知素子12Aに電気接続するために設けられている。
【0018】
図2(b)、
図3(a)に示すように、配線層13は、導電層15と、導電層15の一方の面(第2の基板3と対向する面)を覆う第1の誘電体層14と、導電層15の他方の面(第1の基板2と対向する面)を覆う第2の誘電体層16と、を有している。導電層15は、第1の端部23から延びる線状体21と、線状体21に接続されて第2の端部24まで延びる端部区間22と、を有している。
図3(a)に示す例では、線状体21は第1の端部23から導電性支柱17まで延びている。線状体21はミアンダ形状に形成されているが、線状体21の形状は特に限定されない。線状体21を覆う第1及び第2の誘電体層14,16は、線状体21と概ね同じ平面形状を有している。
【0019】
導電層15の第1の端部23は電磁波検知部12、具体的には電磁波検知部12の端子層12Cに接続されている。導電層15の第2の端部24は、導電層15に沿った経路において、導電性支柱17と導電層15との電気接続部(本実施形態では、後述する内側領域33に対応)に関して第1の端部23の反対側にある。ただし、第2の端部24はZ方向からみて導電性支柱17の外周部よりも外側の位置にある。導電層15はチタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、窒化チタン、窒化タンタル、窒化クロム、及び窒化ジルコニウムなどの導電体で形成される。第1の誘電体層14及び第2の誘電体層16は、製造工程上、温度検知素子12Aを覆う誘電体層12Bと同じ材料で形成することが好ましい。従って、第1の誘電体層14及び第2の誘電体層16は、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素等から形成される。
【0020】
導電性支柱17は電磁波検知部12を支持するとともに、電磁波検知部12にセンス電流を供給する。複数の電磁波検知部12は、それぞれが2つの導電性支柱17を介して第2の基板3に支持されている。電磁波検知部12は、その対角線上の2つの角部で、2つの導電性支柱17に支持されている。導電性支柱17も電気接続部材7と同様、円形断面のピラー状の形状をした導体で、例えばメッキによって作製することができる。導電性支柱17はZ方向に延びる長軸Cを有しているが、長軸Cの方向はZ方向に対し多少傾斜していてもよい。導電性支柱17の長軸Cの方向は、導電層15の厚み方向に対向する両面と交差する方向である。
図1に示すように、2つの導電性支柱17の一方17Xは行リード6Xに接続され、他方17Yは列リード6Yに接続されている。2つの導電性支柱17X,17Yはそれぞれ行リード6Xと列リード6Yから第1の基板2に向けてZ方向上向き(
図1では下向き)に延び、第1の基板2と第2の基板3との間で終端している。従って、電磁波検知部12は第1の基板2及び第2の基板3からZ方向に間隔をおいて内部空間4内に懸架されている。素子5などの第1の基板2に設けられた熱源からの熱伝導による伝熱は第1の基板2、電気接続部材7、リード6、導電性支柱17を通る経路にほぼ限られるため、素子5のような熱源で発生する熱の電磁波検知部12への影響が抑制される。
【0021】
このように構成された赤外線センサ1は例えば以下のように作動する。赤外線センサ1に第2の基板3から入射した赤外線は電磁波検知部12のアレイに入射する。入射した赤外線は誘電体層12Bや温度検知素子12Aに吸収されることにより温度検知素子12Aの温度が変化して、温度検知素子12Aの抵抗が変化する。センス電流が電気接続部材7X、選択された行リード6X、行リード6Xに接続された導電性支柱17、電磁波検知部12、列リード6Yに接続された導電性支柱17Y、列リード6Y、電気接続部材7Yを順次流れる。選択された行リード6Xに接続された各温度検知素子12Aの抵抗変化は電圧の変化として第1の基板2のROICにより取り出される。ROICはこの電圧信号を輝度温度に変換する。行リード6XはROICによって順次選択され、選択された行リード6Xに接続された電磁波検知部12(温度検知素子12A)から取り出された抵抗変化が順次輝度温度に変換される。このようにしてすべての電磁波検知部12が走査され、1画面分の撮像データが得られる。
【0022】
図3(a)に示すように、導電性支柱17は導電層15と電気的に接続された端面31を備えている。端面31はほぼ円形で概ね平坦である。端面31と側面32との境界近傍が図示のように多少丸められている場合は、丸められている部分は端面31ではなく側面32の一部となる。端面31は、導電層15と接する内側領域33と、内側領域33の外側に位置する外側領域34と、を有している。
【0023】
外側領域34の全周に渡る領域(外側領域34のすべて)と導電層15との間には誘電体層(第1の誘電体層14の一部)が設けられている。より詳細には、外側領域34の全周に渡る領域と導電層15との間にはZ方向のギャップGが設けられ、このギャップGが概ねリング状の誘電体層(第1の誘電体層14の一部)で埋められている。これに対し、内側領域33と導電層15との間には第1の誘電体層14は設けられておらず、導電層15は導電性支柱17の端面31と物理的に接している。内側領域33はほぼ端面31と同心の円形形状であるが、形状自体は限定されず、楕円形、多角形等であってもよい。また、内側領域33は端面31に対して偏心していてもよい。ただし、Z方向からみて、内側領域33は少なくとも導電性支柱17と配線層13とが接する部分18(
図3(b)参照)を含まないことが好ましい。換言すれば、導電性支柱17の長軸Cな平行な方向(Z方向)からみて、外側領域34と導電層15との間に位置する誘電体層(第1の誘電体層14の一部)が、少なくとも、線状体21の経路に沿った、内側領域33と第1の端部23との間(
図3(b)の領域20)に設けられていることが好ましい。
図3(b)に示す例では、配線層13と概ね同じ平面形状を有する導電層15は、Z方向からみて導電性支柱17を包含しており、導電層15の第2の端部24はZ方向からみて導電性支柱17の外周部よりも外側の位置にあるが、導電層15の第2の端部24がZ方向からみて導電性支柱17の外周部と重なる位置にあってもよい、また、導電層15の導電性支柱17と対向する部分がZ方向からみて導電性支柱17よりも小さく、導電層15の第2の端部24がZ方向からみて導電性支柱17の外周部よりも内側の位置にあってもよい。
【0024】
(電磁波検知素子11の製造方法)
図4~11を参照して電磁波検知素子11の製造方法について説明する。
図4(a)、
図5(a)、
図6(a)、
図7(a)、
図8(a)、
図9(a)、
図10(a)及び
図11(a)は導電性支柱17と導電層15の接続部の断面図を示し、
図3(a)に対応している。
図4(b)、
図5(b)、
図6(b)、
図7(b)、
図8(b)、
図9(b)、
図10(b)及び
図11(b)は接続部の平面図を示し、
図3(b)に対応している。
図8(b)、
図9(b)、
図10(b)及び
図11(b)では導電性支柱17の外周の図示を省略している。
図4~11に示すプロセスはウエハ工程として行われる。まず、
図1,4に示すように、第2の基板3の行リード6Xと列リード6Yの上に導電性支柱17をメッキで形成し、導電性支柱17をその端面31も含めレジストからなる有機犠牲層41で覆う。
【0025】
次に、
図5に示すように、導電性支柱17の上に積層された有機犠牲層41を露光、現像によって除去する。これによって、導電性支柱17の端面31が露出する。次に、
図6に示すように、有機犠牲層41を加熱して硬化させる。これによって、後工程で有機犠牲層41の上に配線層13を安定して形成することができる。有機犠牲層41は硬化する際に収縮し、導電性支柱17の一部が有機犠牲層41の上面から突き出る。次に、
図7に示すように、第1の誘電体層14をウエハの全面に形成する。これによって、第1の誘電体層14が有機犠牲層41と導電性支柱17の上に積層される。第1の誘電体層14は、導電性支柱17の側面32の上部と対向する側面誘電体層14Aを有している。側面誘電体層14Aは、外側領域34と導電層15との間に位置する誘電体層(第1の誘電体層14の一部)と、第1の誘電体層14の他の部分を介して一体化している。側面誘電体層14Aは、導電性支柱17の側面32の上部と接触している。
【0026】
次に、
図8に示すように、第1の誘電体層14の一部をミリングによって除去し、導電性支柱17の端面31を再び露出させる。これによって、次ステップで導電膜15を導電性支柱17の端面31と接するように形成することが可能となる。この際、導電性支柱17の端面31の内側領域33を覆う第1の誘電体層14のみを除去し、外側領域34を含む他の領域を覆う第1の誘電体層14は残存させる。この理由については後述する。なお、
図3(b)の破線は内側領域33の境界線を示しているが、本ステップのミリングの際に用いるマスクの開口と一致している。
【0027】
次に、
図9に示すように、導電層15をウエハの全面に形成する。これによって、導電層15が第1の誘電体層14と導電性支柱17の端面31の上に積層される。次に、
図10に示すように、第2の誘電体層16をウエハの全面に形成する。これによって、第2の誘電体層16が導電層15の上に積層される。次に、
図11に示すように、第1の誘電体層14と導電層15と第2の誘電体層16のそれぞれの一部をミリングで除去して、ミアンダ形状の配線層13を形成する。その後、有機犠牲層41を除去し、別のウエハに形成された第1の基板2に側壁を介して第2の基板3を接続する。以上の工程によって、
図1に示す電磁波検知素子11を複数個備えた赤外線センサ1が得られる。
【0028】
本実施形態では、このようにして導電層15を導電性支柱17と接続することで、導電層15に膜厚が局所的に薄くなった狭窄部42が生じにくくなる。その理由を本実施形態と比較例1とを比較して説明する。
図12,13は比較例1の電磁波検知素子11の製造方法を示しており、
図12は
図8に対応し,
図13は
図9に対応している。比較例1の他の工程は
図4~7,10~11に示す本実施形態の工程と同じである。従って、比較例1の工程は
図4~7,12,13,10,11の順に行われる。
【0029】
図12に示すように、比較例1では、導電性支柱17の端面31の全面から第1の誘電体層14を除去し、導電性支柱17の端面31の全面を露出させている。
図12(a)に破線で示すように第1の誘電体層14を積層した際(
図7に対応するステップ)、導電性支柱17の端面31上の第1の誘電体層14は、有機犠牲層41の上面上の第1の誘電体層14よりも突き出ている。この状態で導電性支柱17の端面31の全面だけを露出させる場合、導電性支柱17の端面31の外周部に沿って、鋭い端部を持ったとげ状部35が発生しやすくなる。第1の誘電体層14の除去範囲を外側に拡張すれば、とげ状部35の発生を抑えることができるが、その場合、導電性支柱17の側面32の第1の誘電体層14が除去されて、配線層13と導電性支柱17との接続強度が低下する可能性がある。このように、第1の誘電体層14と導電性支柱17との接続を維持し且つ導電性支柱17の端面31の全面を露出させようとすると、とげ状部35が発生しやすくなる。
【0030】
従って、
図13に示すように、とげ状部35の上にとげ状部35に沿って積層された導電層15には膜厚の薄い狭窄部42が発生しやすく、導電層15は形状が安定しない。狭窄部42では電気抵抗が増加し、また、とげ状部35の形状は電磁波検知素子11毎にばらつきやすいため、導電層15の電気抵抗は電磁波検知素子11毎にばらつきやすくなる。さらに、メッキ厚のばらつきは有機犠牲層41の厚さのばらつきより格段に大きいため、メッキで形成された導電性支柱17と有機犠牲層41の段差H(
図6(a)参照)もばらつきやすい。この結果、第1の誘電体層14の形状(
図12(a)に破線で示す形状)が電磁波検知素子11毎にばらつきやすくなり、とげ状部35の形状が電磁波検知素子11毎にさらにばらつきやすくなる。導電層15の電気抵抗の電磁波検知素子11毎のばらつきは、電磁波検知素子11の出力のばらつきを招き、電磁波センサの性能や信頼性に悪影響を及ぼす。
【0031】
これに対して本実施形態では、
図8に示すように、内側領域33の第1の誘電体層14のみを除去しており、外側領域34の第1の誘電体層14を残存させている。第1の誘電体層14の残存部は導電性支柱17の端面31よりも突き出る突出し部19となるが、突出し部19は比較例1よりも内側に広がるため、とげ状部35よりも滑らかな形状で形成される。従って、
図9(a)に示すように、突出し部19の上に積層される導電層15も滑らかな形状で形成される。この結果、狭窄部42が発生しにくくなり、導電層15の形状を安定して形成することが可能となる。
【0032】
上述のようにメッキ厚はばらつきが大きいため、有機犠牲層41が硬化収縮する際に、
図6とは逆に、有機犠牲層41が導電性支柱17の端面31よりも突き出ることも考えられる。メッキ厚は一つのウエハ内でもばらつくため、ウエハの場所によって有機犠牲層41が突き出たり導電性支柱17が突き出たりする可能性がある。
図14と
図15はそれぞれ、本実施形態と比較例2において有機犠牲層41が導電性支柱17の端面31よりも突き出たときの導電性支柱17と導電層15の接続部の断面図を示している。
図14(a)と
図15(a)は
図8(a)に対応し、
図14(b)と
図15(b)は
図3(a)に対応する。
図14(b)と
図15(b)に示すように、導電層15はZ方向下向きに凸となる形状で形成される。
【0033】
図15(a)に示すように、比較例2では導電性支柱17の端面31の全面が露出している。このため、次に導電層15をウエハの全面に第1の誘電体層14と導電性支柱17の端面31に沿って形成すると、
図15(b)に示すように、導電層15は、第1の誘電体層14、導電性支柱17の端面31および有機犠牲層41の導電性支柱17より高い部分の上に形成される。その後
図10~11に示す工程を経て有機犠牲層41を除去すると、導電層15の下面の一部15Aが露出する。上述のようにメッキ厚は一つのウエハでも場所によってばらつくため、導電性支柱17の高さが相対的に高い電磁波検知素子11では導電層15の下面が第1の誘電体層14で覆われ(
図13(a))、導電性支柱17の高さが相対的に低い電磁波検知素子11では導電層15の下面の一部15Aが露出する(
図15(b))可能性がある。このため導電層15からの放熱量が電磁波検知素子11毎にばらつき、測定精度に影響が生じる可能性がある。
【0034】
本実施形態では、
図14(b)に示すように、有機犠牲層41の導電性支柱17より高い部分が第1の誘電体層14で完全に覆われるため、導電層15の下面が露出することが防止される(
図14(b))。また、導電性支柱17の高さが相対的に高い場合も導電層15の下面は第1の誘電体層14で完全に覆われる(
図3(a))。従って、導電層15からの放熱量の電磁波検知素子11毎のばらつきと、測定精度への影響が抑制される。なお、図示は省略するが、
図6(a)において有機犠牲層41の上面と導電性支柱17の端面31のZ方向位置がほぼ揃う場合(有機犠牲層41の上面と導電性支柱17の端面31との間に段差がほぼ無い場合)も、導電層15の下面は第1の誘電体層14で完全に覆われる。
【0035】
(第2の実施形態)
図16は第2の実施形態を示す図であり、
図3に対応した図である。説明を省略した構成及び効果は第1の実施形態と同様である。導電性支柱17の端面31の内側領域33は外側領域34に対してZ方向下向きに引き込んだ凹部36を有し、導電層15は凹部36に沿って、且つ凹部36に接して設けられている。凹部36は内側領域33の全面に形成されているが、内側領域33の少なくとも一部に形成されていればよい。凹部36は端面31の外側領域34と平行な底面37を有する円錐台形状であるが、内側領域33の中心に向かってZ方向下向きに引き込む深さが深くなる碗状形状でもよい。凹部36は、平坦に形成された導電性支柱17の端面31を、例えばミリングで加工することによって形成できる。凹部36の形成は、導電性支柱17を形成した後、且つ、導電層15を積層する前の任意のタイミングで実施できる。例えば、導電層15を積層する直前の、第1の誘電体層14の一部をミリングによって除去して導電性支柱17の端面31を露出させる工程(
図8)で、凹部36を形成することができる。凹部36に沿って導電層15が形成されるため、導電層15と導電性支柱17との接触面積が増加し、より安定した電気接続が可能となる。凹部36の深さは特に限定されないが、Z方向において、凹部36の底面37が、線状体21を覆う第1の誘電体層14の下面(第1の誘電体層14の線状体21との接触面の裏面)と外側領域34との間となる深さが好ましい。
【0036】
(第3の実施形態)
図17は第3の実施形態を示す図であり、
図3に対応した図である。説明を省略した構成及び効果は第1の実施形態と同様である。導電層15の第2の端部24は、導電層15に沿った経路において、第1の端部23の反対側に位置する。導電層15の第2の端部24は導電性支柱17に接しており、Z方向からみて導電性支柱17の外周部と重なる位置にある。導電層15は第1の端部23と第2の端部24との間を延びて第1の端部23で電磁波検知部12と接続されるが、例えば、第1の実施形態における、導電層15の内側領域33と第2の端部24との間の区間43(
図3(a)参照)は、電磁波検知部12と導電性支柱17とを電気接続する機能を有していない。これに対し、本実施形態では、導電層15の内側領域33と第2の端部24との間の区間43が導電性支柱17と接触しており、外側領域34の一部は導電層15と接している。これによって、導電層15と導電性支柱17との接触面積が増加し、より安定した電気接続が可能となる。
【0037】
図17(b)に記載された開口44は、
図8に示す工程、すなわち第1の誘電体層14の一部をミリングによって除去し、導電性支柱17の端面31を再び露出させる工程に用いるマスクの開口である。マスクの開口44は内側領域33の全面と対向するとともに、外側領域34のうち線状体21側を除く領域及び側面32の端面31との境界近傍(丸められている部分)の一部と対向している。マスクの開口44と導電性支柱17の重なる範囲(
図17(b)の濃いハッチング部)が導電層15と導電性支柱17との接触領域となる。第1の実施形態とは異なり、第3の実施形態では、外側領域34の一部(この例では、外側領域34の導電層15と接する領域を除いた部分)と導電層15との間に誘電体層(第1の誘電体層14の一部)が設けられている。また、第1の実施形態と同様に、第3の実施形態では、導電性支柱17の長軸Cと平行な方向(Z方向)からみて、外側領域34と導電層15との間に位置する誘電体層(第1の誘電体層14の一部)が、少なくとも、線状体21の経路に沿った、内側領域33と第1の端部23との間(
図17(b)の領域20)に設けられている。マスクの開口44の形状は
図17(b)に示したものに限定されないが、線状体21の中心線C1と直交し導電性支柱17の端面31の中心を通る直線C2より右側部分の全体、より具体的には直線C2で導電性支柱17のZ方向からみた平面形状を2つの半部に二分したときに、第2の端部24側の半部の全体を含むような形状であることが好ましい。この結果、導電層15と導電性支柱17との接触部が第2の端部24側に大きく広がり、第1の実施形態と比べて導電層15と導電性支柱17との接触面積が増加する。
【0038】
本実施形態は第2の実施形態と組み合わせることもできる。例えば、図示は省略するが、
図17(b)においてマスクの開口44と導電性支柱17の端面31の重なる範囲を凹部36とすることができる。この場合、凹部36は内側領域33だけでなく、外側領域34の一部にも形成される。換言すれば、内側領域33は外側領域34の一部に対して引き込んだ凹部36を有することになる。
【0039】
(第4の実施形態)
図18は第4の実施形態における導電層15の構成を示す概略平面図である。上述の実施形態では、導電層15は第1の端部23から導電性支柱17まで延びる線状体21を有しているが、本実施形態では、導電層15は少なくとも導電性支柱17の近傍で面状に設けられている。導電層15と導電性支柱17の接触部は第1の実施形態と同様、導電性支柱17の端面31の内側領域33と一致している。
【0040】
図18(a)に示す例では、導電層15は第1の端部23から導電性支柱17まで面状に広がっている。
図18(b),(c)に示す例では、導電層15は第1の端部23から延びる線状体51と、線状体51に接続されて導電性支柱17まで延びる面状体52と、を有している。
図18(b)に示す例では線状体51は面状体52の一つの辺の中央部に接続され、
図18(c)に示す例では線状体51は面状体52の角部に接続されている。線状体51は直線状であるが、
図2に示すようなミアンダ形状でもよく、線状体51の形状は限定されない。同様に、面状体52の形状も限定されない。いずれの例においても、導電層15を導電性支柱17の長軸C(
図2(a)参照)と平行な方向(Z方向)に投影して得られる、外側領域34を含む投影面における投影像において、導電層15は外側領域34の全周で外側領域34の外周部に接する周辺領域38を有している。
【符号の説明】
【0041】
1 電磁波センサ(赤外線センサ)
11 電磁波検知素子
12 電磁波検知部
12A 温度検知素子
12B 電磁波吸収体(誘電体層)
13 配線層
14 第1の誘電体層
15 導電層
16 第2の誘電体層
17 導電性支柱
23 第1の端部
24 第2の端部
31 導電性支柱の端面
33 端面の内側領域
34 端面の外側領域
36 凹部