(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118808
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】顆粒状食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20240826BHJP
A23L 29/219 20160101ALI20240826BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20240826BHJP
A23L 23/10 20160101ALN20240826BHJP
【FI】
A23L5/00 D
A23L29/219
B01J2/00 A
A23L23/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025323
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000106531
【氏名又は名称】サンヨー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】永岡 宏行
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
4B036
4G004
【Fターム(参考)】
4B025LD03
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4B036LP24
4G004AA02
(57)【要約】
【課題】優れた充填適性を有する顆粒状食品、及びそのような顆粒状食品を低コストで製造する方法を提供する。
【解決手段】(A)グリセリン部分の平均重合度が1~8である(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、及びHLBが8以下のショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つの脂肪酸エステルと、(B)保湿剤と、(C)油脂と、(D)食品原料と、(E)二酸化ケイ素微粒子と、含む顆粒状食品であって、食品原料が、多孔質糖質を含有する賦形剤を含み、顆粒状食品のCarr指数が75以上であり、80メッシュパス粒度率が3質量%未満であり、80メッシュ粒度率が13質量%未満であり、電子線マイクロアナライザー分析による顆粒状食品の表面ケイ素濃度が10質量%以上である、顆粒状食品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)グリセリン部分の平均重合度が1~8である(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、及びHLBが8以下のショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つの脂肪酸エステルと、
(B)保湿剤と、
(C)油脂と、
(D)食品原料と、
(E)二酸化ケイ素微粒子と、
を含む顆粒状食品であって、
前記食品原料が、多孔質糖質を含有する賦形剤を含み、
前記顆粒状食品のCarr指数が75以上であり、80メッシュパス粒度率が3質量%未満であり、80メッシュ粒度率が13質量%未満であり、
電子線マイクロアナライザー分析による前記顆粒状食品の表面ケイ素濃度が10質量%以上である、顆粒状食品。
【請求項2】
前記多孔質糖質の含有量が、前記食品原料の質量を基準として9質量%~26質量%である、請求項1に記載の顆粒状食品。
【請求項3】
前記二酸化ケイ素微粒子の含有量が1.5質量%~2.5質量%である、請求項1又は2に記載の顆粒状食品。
【請求項4】
前記多孔質糖質が、多孔質マルトース及び多孔質澱粉からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の顆粒状食品。
【請求項5】
前記二酸化ケイ素微粒子が、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、及びタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む微粒子である、請求項1又は2に記載の顆粒状食品。
【請求項6】
(F)酸化澱粉を更に含む、請求項1又は2に記載の顆粒状食品。
【請求項7】
前記酸化澱粉の含有量が1.5質量%~20質量%である、請求項6に記載の顆粒状食品。
【請求項8】
前記酸化澱粉が、とうもろこし澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、馬鈴薯澱粉、及びワキシーコーン澱粉からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する酸化澱粉である、請求項6に記載の顆粒状食品。
【請求項9】
(A)グリセリン部分の平均重合度が1~8である(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、及びHLBが8以下のショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つの脂肪酸エステルと、(D)食品原料との第1混合物を調製することであって、前記食品原料が、多孔質糖質を含有する賦形剤を含む、ことと、
(B)保湿剤及び(C)油脂を含む保湿剤分散油と、前記第1混合物との第2混合物を調製することと、
(E)二酸化ケイ素微粒子を前記第2混合物と混合することと、
を含む、Carr指数が75以上であり、80メッシュパス粒度率が3質量%未満であり、80メッシュ粒度率が13質量%未満である顆粒状食品の製造方法。
【請求項10】
前記二酸化ケイ素微粒子と同時に又は前記二酸化ケイ素微粒子の混合前に、(F)酸化澱粉を前記第2混合物と混合することを更に含む、請求項9に記載の顆粒状食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、顆粒状食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
即席カップ麺、即席カップスープなどの即席食品のスープとして、様々な粉末状又は顆粒状の食品が開発されている。粉末状スープを顆粒状に加工する方法として、例えば、流動層造粒法及び押出造粒法が知られている。粉末状スープを表面積の大きい顆粒状へと加工することで、カップ充填に適した粉体物性、及び熱湯(又は温水)への浸透性を高めることができる。顆粒状食品の流動性を改善するための添加剤もいくつか知られている。
【0003】
特許文献1(特開2015-019589号公報)は、「5~30重量%の油脂、油脂包含用基材、およびポリオールを含む、粉末または顆粒状の調味料組成物」を記載している。
【0004】
特許文献2(特開2005-021016号公報)は、「水、温水或いは熱湯に分散又は溶解する際、『ままこ(ダマ)』を生じにくい、粉末状或いは顆粒状の食品」として、「トリグリセリンベヘン酸エステルを含有することを特徴とする粉末状或いは顆粒状の食品」を記載している。
【0005】
特許文献3(特開2003-304826号公報)は、「分散性を改良し、『ままこ(ダマ)』の発生の抑えられた顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソース」として、「ポリグリセリンベヘン酸エステルを0.1~0.9質量%の割合で含有することを特徴とする顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソース」を記載している。
【0006】
特許文献4(特許第5300018号公報)は、「平均粒子径数十~100μmのDE1~30のデキストリンを、粉砕により、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した際の平均粒子径(メジアン径)として、0.1μm~10μmとなるように調製することにより得られる流動性改善剤を、粉末状または顆粒状食品の質量を基準として0.5質量%~20質量%添加することを特徴とする、粉末状または顆粒状食品の流動性改善方法」を記載している。
【0007】
特許文献5(特開2021-75492号公報)は、「(A)粉体の凝集度が20%以上の粉体90~99.8質量%、(B)平均粒子径が0.5~15μmの微粒二酸化ケイ素0.1~4質量%、(C)ショ糖脂肪酸エステル0.1~6質量%を混合して得られる混合原料を湿式造粒する工程を含む、造粒物の製造方法」を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-019589号公報
【特許文献2】特開2005-021016号公報
【特許文献3】特開2003-304826号公報
【特許文献4】特許第5300018号公報
【特許文献5】特開2021-075492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
即席カップ麺などの顆粒状スープの製造原価において、流動層造粒工程又は押出造粒工程に係るコストが占める割合は高い。そのため、これらの造粒工程に係るコストを削減しつつ、カップ充填に適した粉体物性を有する顆粒状食品を製造することが可能な方法が望まれている。
【0010】
本開示は、優れた充填適性を有する顆粒状食品、及びそのような顆粒状食品を低コストで製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、特定の脂肪酸エステルと、多孔質糖質を含有する賦形剤を含む食品原料との混合物(第1混合物)に、保湿剤及び油脂を混合した後(第2混合物)、二酸化ケイ素微粒子を更に混合することにより、優れた充填適性を有する顆粒状食品が製造できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明は、以下の態様1~10を包含する。
[態様1]
(A)グリセリン部分の平均重合度が1~8である(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、及びHLBが8以下のショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つの脂肪酸エステルと、
(B)保湿剤と、
(C)油脂と、
(D)食品原料と、
(E)二酸化ケイ素微粒子と、
を含む顆粒状食品であって、
前記食品原料が、多孔質糖質を含有する賦形剤を含み、
前記顆粒状食品のCarr指数が75以上であり、80メッシュパス粒度率が3質量%未満であり、80メッシュ粒度率が13質量%未満であり、
電子線マイクロアナライザー分析による前記顆粒状食品の表面ケイ素濃度が10質量%以上である、顆粒状食品。
[態様2]
前記多孔質糖質の含有量が、前記食品原料の質量を基準として9質量%~26質量%である、態様1に記載の顆粒状食品。
[態様3]
前記二酸化ケイ素微粒子の含有量が1.5質量%~2.5質量%である、態様1又は2に記載の顆粒状食品。
[態様4]
前記多孔質糖質が、多孔質マルトース及び多孔質澱粉からなる群より選ばれる少なくとも1種である、態様1~3のいずれか一態様に記載の顆粒状食品。
[態様5]
前記二酸化ケイ素微粒子が、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、及びタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む微粒子である、態様1~4のいずれか一態様に記載の顆粒状食品。
[態様6]
(F)酸化澱粉を更に含む、態様1~5のいずれか一態様に記載の顆粒状食品。
[態様7]
前記酸化澱粉の含有量が1.5質量%~20質量%である、態様6に記載の顆粒状食品。
[態様8]
前記酸化澱粉が、とうもろこし澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、馬鈴薯澱粉、及びワキシーコーン澱粉からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する酸化澱粉である、態様6又は7に記載の顆粒状食品。
[態様9]
(A)グリセリン部分の平均重合度が1~8である(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、及びHLBが8以下のショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つの脂肪酸エステルと、(D)食品原料との第1混合物を調製することであって、前記食品原料が、多孔質糖質を含有する賦形剤を含む、ことと、
(B)保湿剤及び(C)油脂を含む保湿剤分散油と、前記第1混合物との第2混合物を調製することと、
(E)二酸化ケイ素微粒子を前記第2混合物と混合することと、
を含む、Carr指数が75以上であり、80メッシュパス粒度率が3質量%未満であり、80メッシュ粒度率が13質量%未満である顆粒状食品の製造方法。
[態様10]
前記二酸化ケイ素微粒子と同時に又は前記二酸化ケイ素微粒子の混合前に、(F)酸化澱粉を前記第2混合物と混合することを更に含む、態様9に記載の顆粒状食品の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流動層造粒工程又は押出造粒工程を必要とせずに、優れた充填適性を有する顆粒状食品を低コストで製造し、提供することができる。
【0014】
上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】比較例2、例1、例2、及び流動層造粒を用いて調製した顆粒状スープの電子顕微鏡画像(200倍及び1000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0017】
〈顆粒状食品〉
一実施態様の顆粒状食品は、(A)グリセリン部分の平均重合度が1~8である(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、及びHLBが8以下のショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つの脂肪酸エステルと、(B)保湿剤と、(C)油脂と、(D)食品原料と、(E)二酸化ケイ素微粒子と、を含む。食品原料は、多孔質糖質を含有する賦形剤を含む。顆粒状食品のCarr指数は75以上であり、80メッシュパス粒度率は3質量%未満であり、80メッシュ粒度率は13質量%未満である。電子線マイクロアナライザー分析による顆粒状食品の表面ケイ素濃度は10質量%以上である。
【0018】
(A)脂肪酸エステル
脂肪酸エステルは、グリセリン部分の平均重合度が1~8である(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、及びHLBが8以下のショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つである。いかなる理論に拘束される訳ではないが、脂肪酸エステルは、油脂を含む顆粒状食品の流動性を維持する、又は顆粒状食品の過度の凝集を防止することに寄与すると考えられる。
【0019】
脂肪酸エステルの融点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上である。脂肪酸エステルの融点が50℃以上であることにより、脂肪酸エステルの溶融を回避しつつ顆粒状食品に防湿性を賦与することができる。脂肪酸エステルの融点は、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。脂肪酸エステルの融点が100℃以下であることにより、メンテナンス製造設備の配管内の洗浄等を容易に行うことができる。
【0020】
《(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル》
(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルは、脂肪酸とグリセリン又はグリセリンの縮合物(ポリグリセリン)とのエステルである。グリセリン部分の平均重合度は1~8である。(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルは、完全にエステル化されていてもよく、部分エステル化されていてもよい。(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分は、飽和脂肪酸であることが好ましい。
【0021】
(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルのHLBは、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。親油基の多い(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルを含む顆粒状食品は高い防湿性を有する。この観点から、脂肪酸エステルのHLBは、1以上、又は3以上とすることができる。本開示において、HLBは、Griffinの経験式から算出される値である。
HLB=20×(1-SV/NV)
SV:(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル又はショ糖脂肪酸エステルのけん化値
NV:脂肪酸の中和価
【0022】
(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸部分の炭素原子数は16~22であることが好ましい。(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルとして、例えば、モノグリセリンパルミチン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸エステル、モノグリセリンエイコサン酸エステル、モノグリセリンベヘン酸エステルなどのモノグリセリン脂肪酸エステル;ジグリセリンパルミチン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンエイコサン酸エステル、ジグリセリンベヘン酸エステルなどのジグリセリン脂肪酸エステル;トリグリセリンパルミチン酸エステル、トリグリセリンステアリン酸エステル、トリグリセリンエイコサン酸エステル、トリグリセリンベヘン酸エステルなどのトリグリセリン脂肪酸エステル;テトラグリセリンパルミチン酸エステル、テトラグリセリンステアリン酸エステル、テトラグリセリンエイコサン酸エステル、テトラグリセリンベヘン酸エステルなどのテトラグリセリン脂肪酸エステル;ペンタグリセリンパルミチン酸エステル、ペンタグリセリンステアリン酸エステル、ペンタグリセリンエイコサン酸エステル、ペンタグリセリンベヘン酸エステルなどのペンタグリセリン脂肪酸エステル;ヘキサグリセリンパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンエイコサン酸エステル、ヘキサグリセリンベヘン酸エステルなどのヘキサグリセリン脂肪酸エステル;ヘプタグリセリンパルミチン酸エステル、ヘプタグリセリンステアリン酸エステル、ヘプタグリセリンエイコサン酸エステル、ヘプタグリセリンベヘン酸エステルなどのヘプタグリセリン脂肪酸エステル;オクタグリセリンパルミチン酸エステル、オクタグリセリンステアリン酸エステル、オクタグリセリンエイコサン酸エステル、オクタグリセリンベヘン酸エステルなどのオクタグリセリン脂肪酸エステル;及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルは、脂肪酸部分がステアリン酸(炭素原子数18)である、(ポリ)グリセリンステアリン酸エステルを含むことがより好ましい。
【0023】
(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルは、モノグリセリン脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルとの混合物を含むことが好ましく、モノグリセリンベヘン酸エステル及びオクタグリセリンステアリン酸エステルの混合物;モノグリセリンステアリン酸エステル、ペンタグリセリンパルミチン酸エステル、及びペンタグリセリンステアリン酸エステルの混合物;又はモノグリセリンステアリン酸エステル、及びジグリセリンステアリン酸エステルの混合物を含むことがより好ましく、モノグリセリンベヘン酸エステル及びオクタグリセリンステアリン酸エステルの混合物を含むことが特に好ましい。モノグリセリン脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルとの混合物は、顆粒状食品の流動性を改善し、喫食時の油滴形成を促進し、油脂及び香辛料抽出物(スパイス)を包括して風味を保持することができる。
【0024】
《ショ糖脂肪酸エステル》
ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸とショ糖とのエステルである。ショ糖脂肪酸エステルのHLBは8以下である。ショ糖脂肪酸エステルは、完全にエステル化されていてもよく、部分エステル化されていてもよい。ショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸部分は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。ショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸部分は、飽和脂肪酸であることが好ましい。
【0025】
ショ糖脂肪酸エステルのHLBは、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。親油基が多く親水基が少ないショ糖脂肪酸エステルを含む顆粒状食品は高い防湿性を有する。この観点から、ショ糖脂肪酸エステルのHLBは、1以上、又は3以上とすることができる。
【0026】
ショ糖脂肪酸エステルの脂肪酸部分の炭素原子数は16~22であることが好ましい。ショ糖脂肪酸エステルとして、例えば、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖エイコサン酸エステル、及びショ糖ベヘン酸エステルが挙げられる。ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸部分がパルミチン酸(炭素原子数16)である、ショ糖パルミチン酸エステル、及び脂肪酸部分がステアリン酸(炭素原子数18)である、ショ糖ステアリン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことがより好ましい。
【0027】
(B)保湿剤
保湿剤としては、食品用途に使用されるものであれば特に限定されない。保湿剤は、顆粒状食品に含まれる自由水と結合して、長期間にわたり顆粒状食品の水分活性値を低く保持することができる。水分活性値は微生物の増殖に関係している。また、いかなる理論に拘束される訳ではないが、保湿剤と食品原料とを混合することにより、顆粒状食品の製造中に油脂の凝集の発生を抑制して、油脂をより均一に顆粒状食品中に分散させ、かつ油脂を半固体化又は固体化させて、顆粒状食品中に保持させることができる。そのため、顆粒状食品からの油脂の滲み出しを抑制し、顆粒状食品を長期間保管したときでも、その凝集を抑制して流動性を維持させることができる。
【0028】
保湿剤としては、例えば、ポリオール、有機酸及び有機酸塩が挙げられる。
【0029】
ポリオールとしては、例えば、無毒性グリコール、糖類、又はこれら2種以上の組み合わせが挙げられる。無毒性グリコールとしては、例えば、グリセリン、及びプロピレングリコールが挙げられる。糖類としては、例えば、ショ糖、及びブドウ糖が挙げられる。ポリオールは常温(23℃)で液体であることが好ましい。ポリオールはグリセリンを含むことが好ましい。
【0030】
有機酸としては、例えば、ヒアルロン酸が挙げられる。
【0031】
有機酸塩としては、例えば、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、及びピロリドンカルボン酸ナトリウムが挙げられる。有機酸塩は、乳酸ナトリウム及び乳酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0032】
保湿剤は、グリセリン、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム及びヒアルロン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、グリセリン、乳酸ナトリウム及び乳酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0033】
(C)油脂
油脂としては、特に限定されないが、植物油、動物油脂、若しくは加工油脂、又はこれらの2種以上の組み合わせを使用することができる。植物油としては、例えば、大豆油、なたね油、パーム油、ヤシ油、コーン油、綿実油、ごま油、米油、オリーブ油、紅花油、落花生油、グレープシード油、しそ油、亜麻仁油、椿油、月見草油、ハーブ油、及びラー油が挙げられる。動物油脂としては、例えば、豚脂(ラード)、牛脂(ヘット)、鶏脂、及び魚油が挙げられる。加工油脂としては、例えば、マーガリン、ショートニング、中鎖脂肪酸含有油、モノグリセリド、及びジグリセリドが挙げられる。
【0034】
油脂の融点は、例えば、0℃~50℃とすることができる。一実施態様では、油脂は室温(23℃)で液状である。
【0035】
(D)食品原料
食品原料は、顆粒状食品の風味及び味を決定する主成分であり、一般に、結晶物及び粉末原料を含む混合物である。
【0036】
結晶物としては、例えば、塩、グラニュー糖、グルタミン酸ソーダ、イノシン酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、グルコース、及びリボヌクレオチド二ナトリウムが挙げられる。結晶物は微粒子化されていることが好ましい。
【0037】
粉末原料は一般に風味成分を含む。風味成分とは、味(味覚)又は香り(嗅覚)を食品に付与する要素である。風味成分としては、例えば、食塩、砂糖などの一般調味料;醤油、食酢、味醂、味噌などの発酵系調味料;ガーリック、ジンジャー、胡椒、ローレル、タイム、セイジなどのスパイス系調味料;肉エキス(牛、豚、鶏など)、魚介エキス、野菜エキス、動植物組織の煮出し濃縮物、酵母エキス、発酵エキスなどのエキス;クエン酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸などの酸味料;及びアミノ酸、核酸、酸味料以外の有機酸、無機塩、タンパク質加水分解物、核酸分解物などの調味料が挙げられる。粉末原料は、香辛料、香料、安定剤(カゼインナトリウム、キサンタンガムなど)、乳化剤、若しくは酸化防止剤、又はこれらの2種以上の組み合わせを更に含んでもよい。
【0038】
《多孔質糖質》
食品原料は、多孔質糖質を含有する賦形剤を含む。いかなる理論に拘束される訳ではないが、多孔質糖質は吸油能力が高いため、後述する保湿剤分散油と第1混合物との混合時に、液状油脂を粉末化しながら食品原料を凝集させて、その結果、造粒物の形成が促進されると考えられる。
【0039】
多孔質糖質の材質としては、例えば、麦芽糖、乳糖、トレハロース、マルトース、ワキシーコーン澱粉等の澱粉、及びデキストリンが挙げられる。多孔質糖質は、多孔質マルトース及び多孔質澱粉からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。多孔質糖質は、例えば、澱粉等の原料を酸素又は酸により分解し、その分解物を乾燥することにより得ることができる。多孔質マルトースとしては、例えば、商品名サンマルト シロ(株式会社林原製)が挙げられる。多孔質澱粉としては、例えば、商品名オイルQNo.50及びロンフードOWP(いずれも日澱化学株式会社製)が挙げられる。
【0040】
食品原料は、多孔質糖質以外に他の賦形剤も含んでもよい。賦形剤としては、例えば、親水性蛋白質(ゼラチン、カゼイン、カゼインナトリウム、ホエータンパク、脱脂粉乳、全脂粉乳、アルブミン等)、化工澱粉(酸分解澱粉、酸化澱粉、α化澱粉、グラフト化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉等)、親水性多糖類(アルギン酸塩、アラビアガム、大豆多糖類、グアーガム、キサンタンガム、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、アガロース等)、マルトデキストリン、タンパク部分加水分解物(HAP、HVP等)、澱粉部分分解物(オリゴ糖等)、及び糖類(乳糖等)が挙げられる。
【0041】
(E)二酸化ケイ素微粒子
二酸化ケイ素微粒子は顆粒状食品の流動性の改善に寄与する成分である。一実施態様の顆粒状食品では、二酸化ケイ素微粒子は顆粒状食品の表面に偏在しており、顆粒状食品の粒子間の接触抵抗又は化学的若しくは静電的な相互作用を低減することにより、顆粒状食品の流動性を高めることができる。二酸化ケイ素微粒子としては、例えば、軽質無水ケイ酸(二酸化ケイ素98.0%以上含有)、含水二酸化ケイ素(二酸化ケイ素95.0%以上含有)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、及びタルク(含水ケイ酸マグネシウム(3MgO・4SiO2・H2O))からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0042】
二酸化ケイ素微粒子の平均粒径は、好ましくは50nm~100μm、より好ましくは50nm~10μm、更に好ましくは50nm~5μmである。二酸化ケイ素微粒子の平均粒径を上記範囲とすることにより、顆粒状食品の表面に効果的に偏在させて、顆粒状食品の流動性をより高めることができる。二酸化ケイ素微粒子の平均粒径は、コールター法(「電気的検知帯法」ともいう。)(平均粒径1μm以上の場合)又は動的光散乱法(平均粒径1μm未満の場合)によって決定される累積体積中位径である。
【0043】
(F)酸化澱粉
顆粒状食品は酸化澱粉を更に含んでもよい。酸化澱粉は、澱粉の水酸基の一部をカルボキシ基へと酸化した構造を有する。酸化澱粉としては、例えば、とうもろこし澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、馬鈴薯澱粉、及びワキシーコーン澱粉からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する酸化澱粉が挙げられる。酸化澱粉は、更に、アセチル化、α化、アセチル化酸処理などの処理を受けたものであってもよい。酸化澱粉は、前記のとおり食品原料の賦形剤として機能する場合がある。それとは別に、いかなる理論に拘束される訳ではないが、顆粒状食品の製造方法において後述するように、第2混合物と二酸化ケイ素微粒子との混合時に酸化澱粉を併用することで、二酸化ケイ素微粒子を顆粒状食品の表面に滞留させて二酸化ケイ素微粒子の表面偏在を促進することができると考えられる。顆粒状食品の油脂含有量を高めたい場合、第2混合物と二酸化ケイ素微粒子との混合時の酸化澱粉の配合量を増加させることにより、顆粒状食品の流動性を維持しつつ、顆粒状食品の油脂含有量を例えば約13質量%程度まで増加させることができる。
【0044】
《Carr指数》
Carr指数は、粉体特性評価装置から得た情報(ゆるめ嵩密度、固め嵩密度、圧縮率、安息角、崩壊角、及び差角)を、流動性指数表及び噴流性指数表を参照して指数化した後、これらの指数に流動性指数を加えた総和として定義される。すなわち、Carr指数=圧縮率指数+安息角指数+流動性指数+崩壊角指数+差角指数である(横山藤平他「Carrの方法による粉体流動性測定装置の試作」、粉体工学研究会誌、Vol.6、No.4(1969)、pp.264~291も参照のこと)。
【0045】
一実施態様の顆粒状食品のCarr指数は75以上であり、好ましくは78以上、より好ましくは80以上である。Carr指数が75以上の顆粒状食品は、容器への充填に適した高い流動性を有する。
【0046】
《圧縮率》
顆粒状食品の圧縮率は好ましくは20%以下、より好ましくは18%以下、更に好ましくは15%以下である。圧縮率を20%以下に制御することにより、顆粒状食品の充填量の制御を精密に行うことができる。圧縮率は、粉体特性評価装置を用いて、室温(23℃)にて以下の手順に従って決定される。内径40mm、高さ80mm、容積100cm3の円筒容器の上面から38cmの高さに漏斗の出口(出口内径7mm)を合わせて、約120cm3の顆粒状食品を漏斗に入れて落下させたときに円筒容器に充填された顆粒状食品の質量をゆるめ嵩密度a(g/100cm3)とし、同じ円筒容器に継ぎ足し用のキャップを取り付け、ゆるめ嵩密度aの測定と同様の手順で顆粒状食品を落下させ、10回タッピングして顆粒状食品を密にし、その後キャップを外し、円筒容器の上面から突出した余剰の顆粒状食品を掻き取った後に円筒容器に充填されていた顆粒状食品の質量を固め嵩密度b(g/100cm3)として、式:(b-a)×100/bにより得られる値を圧縮率と定義する。
【0047】
《安息角、崩壊角及び差角》
安息角及び崩壊角は、粉体特性評価装置を用いて、室温(23℃)にて以下の手順に従って決定される。直径8cmの円盤の上に出口高さ12cm、出口内径7mmの漏斗を通して顆粒状食品を落下させ、顆粒状食品が形成した山の裾野の角度を安息角、山に衝撃を3回与えた後の裾野の角度を崩壊角と定義する。タッピングは、標準条件のストローク長18mm及びタッピング速度60回/分で行う。差角は安息角と崩壊角の差(安息角-崩壊角)である。
【0048】
《粒度分布》
一実施態様の顆粒状食品の80メッシュパス粒度率は3質量%未満であり、好ましくは2質量%未満であり、より好ましくは1.5質量%未満である。一実施態様の顆粒状食品の80メッシュ粒度率は13質量%未満であり、好ましくは10質量%未満であり、より好ましくは8質量%未満である。80メッシュパス粒度率が3質量%未満、かつ80メッシュ粒度率が13質量%未満である顆粒状食品は、微粉末の含有量が少ないため、充填時の飛散を抑制することができる。
【0049】
80メッシュパス粒度率及び80メッシュ粒度率は、電磁振動式ふるい分け振とう機を用いて以下の手順に従って決定される。φ200ふるい(目開き:1000μm(16メッシュ)、710μm(24メッシュ)、355μm(42メッシュ)、250μm(60メッシュ)、180μm(80メッシュ)、80メッシュパス(受け皿)の6種類)を、目開きの粗いものを上から順に6段に重ねて振動させる。顆粒状食品を最上段ふるい(目開き1000μm)に投入後、以下の条件で振動させてふるい分け分級を行う。
サンプル量:100g~108g
運転モード:20秒ごとに一旦停止、直ぐに振動再開
振動時間:5分間
振幅:2mm
振動数:150往復/分
【0050】
事前に各目皿の質量A(g)を記録し、ふるい分け分級後の各目皿の質量B(g)の差を、投入した顆粒状食品の質量で割ることにより、各目皿に対応する粒度を有する顆粒状食品の割合を算出する。
各目皿に対応する粒度を有する顆粒状食品の割合(質量%)=(B(g)-A(g))/投入した顆粒状食品の質量(g)。
【0051】
80メッシュパス粒度率(質量%)とは、80メッシュの目皿を通過した顆粒状食品の質量割合として定義される。80メッシュ粒度率とは、80メッシュの目皿に残留する顆粒状食品の質量割合として定義される。
【0052】
《表面ケイ素濃度》
電子線マイクロアナライザー(EPMA)分析による、一実施態様の顆粒状食品の表面ケイ素濃度は10質量%以上であり、好ましくは12質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。顆粒状食品の表面ケイ素濃度は、一般に40質量%以下である。いくつかの実施態様では、顆粒状食品の表面ケイ素濃度は、10質量%~40質量%、12質量%~40質量%、又は15質量%~40質量%である。顆粒状食品の表面ケイ素濃度は二酸化ケイ素微粒子の存在に由来し、二酸化ケイ素微粒子の表面偏在の度合いを示す指標である。表面ケイ素濃度が10質量%以上の顆粒状食品は、二酸化ケイ素微粒子が表面に十分な量で偏在しているため優れた流動性を示し、その結果、充填適性に優れている。
【0053】
電子線マイクロアナライザー分析による表面ケイ素濃度は、導電膜作製装置を用いて顆粒状食品の表面に金薄膜を蒸着して導電性を付与し、電子線マイクロアナライザーを用いて以下の条件で分析を行うことにより決定される。
電子線源:CeBixチップ
加速電圧:15kV
分析径:直径100μm
【0054】
顆粒状食品の平均粒径D50は、例えば、30μm~1600μm、40μm~1500μm、又は50μm~1400μmとすることができる。本開示において、顆粒状食品の平均粒径D50は、レーザー回折散乱法を用いて決定される累積体積中位径である。
【0055】
顆粒状食品の脂肪酸エステルの含有量は、好ましくは0.1質量%~1.6質量%、より好ましくは0.12質量%~1.4質量%、更に好ましくは0.15質量%~1.2質量%である。脂肪酸エステルの含有量を上記範囲とすることで、顆粒状食品の流動性を高め、顆粒状食品の過度の凝集を効果的に防止することができる。
【0056】
顆粒状食品の保湿剤の含有量は、好ましくは0.1質量%~4.0質量%、より好ましくは0.3質量%~3.5質量%、更に好ましくは0.5質量%~3.0質量%である。保湿剤の含有量を上記範囲とすることで、顆粒状食品からの油脂の滲み出しを効果的に抑制し、顆粒状食品の流動性を長期間にわたり維持することができる。
【0057】
顆粒状食品の油脂の含有量は、好ましくは3質量%~15質量%、より好ましくは3質量%~13質量%である。油脂の含有量は、食品原料、脂肪酸エステル、及び油脂の種類によって変動し、顆粒状食品の製品仕様及び要求される流動性(Carr指数)に応じて適宜設定することができる。
【0058】
顆粒状食品の食品原料の含有量は、一般に61質量%~93質量%、好ましくは64質量%~92質量%、より好ましくは70質量%~91質量%である。
【0059】
顆粒状食品の二酸化ケイ素微粒子の含有量は、好ましくは1.5質量%~2.5質量%、より好ましくは1.6質量%~2.0質量%、更に好ましくは1.6質量%~1.8質量%である。二酸化ケイ素微粒子の含有量を上記範囲とすることで、顆粒状食品の粒子間の接触抵抗又は化学的若しくは静電的な相互作用を効果的に低減して、顆粒状食品の流動性をより高めることができる。
【0060】
顆粒状食品の多孔質糖質の含有量は、食品原料の質量を基準として好ましくは9質量%~26質量%、より好ましくは9質量%~22質量%である。多孔質糖質の含有量を上記範囲とすることで、顆粒状食品の製造時に造粒物の形成を促進して、顆粒状食品に優れた充填適性を付与することができる。
【0061】
顆粒状食品の酸化澱粉の含有量は、好ましくは1.9質量%~18質量%、より好ましくは1.9質量%~13質量%である。酸化澱粉の含有量には、食品原料中に賦形剤として含まれる酸化澱粉と、第2混合物と二酸化ケイ素微粒子との混合時に使用する酸化澱粉の両方が含まれる。
【0062】
酸化澱粉以外の、顆粒状食品の糖質(乳糖、澱粉、加工澱粉等)の合計含有量は、食品原料の質量を基準として好ましくは4質量%~17質量%、より好ましくは8質量%~13質量%である。味以外の舌触り及び食感に寄与する澱粉及び加工澱粉の合計含有量を上記範囲とすることで、食品原料中の味成分をより効果的に知覚させることができ、顆粒状食品の風味及び美味しさを高めることができる。
【0063】
顆粒状食品において、デキストリン化合物の含有量は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。デキストリン化合物の含有量を上記範囲とすることで、デキストリン化合物の持つ人工的な臭気により損なわれるおそれのある、繊細な風味及び香味を保持することができる。
【0064】
〈顆粒状食品の製造方法〉
一実施態様の顆粒状食品の製造方法は、(A)グリセリン部分の平均重合度が1~8である(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、及びHLBが8以下のショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つの脂肪酸エステルと、(D)食品原料との第1混合物を調製すること;(B)保湿剤及び(C)油脂を含む保湿剤分散油と、第1混合物との第2混合物を調製すること;及び(E)二酸化ケイ素微粒子を第2混合物と混合することを含む。食品原料は多孔質糖質を含有する賦形剤を含む。製造される顆粒状食品のCarr指数は75以上であり、80メッシュパス粒度率は3質量%未満であり、80メッシュ粒度率は13質量%未満である。
【0065】
《第1混合物の調製》
脂肪酸エステルと、食品原料とを、コニカルブレンダー、ナウター、リボンミキサーなどの混合装置を用いて混合することによって、第1混合物を調製することができる。食品原料の成分、例えばスープ粉末と多孔質糖質とをコニカルブレンダー、ナウター、リボンミキサーなどの混合装置を用いて予備混合してプレミックスを調製し、その後、プレミックスと脂肪酸エステルとを混合することもできる。食品原料の成分と脂肪酸エステルとを同時に混合することもできる。
【0066】
《保湿剤分散油の調製》
保湿剤及び油脂を含む保湿剤分散油は、通常の撹拌機又はホモジナイザーを用いて調製することができる。
【0067】
保湿剤は、水溶液の形態で保湿剤分散油の調製に用いることが好ましい。保湿剤水溶液を用いることにより、保湿剤がより均一に分散されており、かつ経時で二層分離しにくい保湿剤分散油を調製することができる。保湿剤水溶液中の保湿剤の濃度は、例えば、10質量%~90質量%とすることができ、20質量%~80質量%であることが好ましい。
【0068】
保湿剤分散油中の保湿剤の含有量は、好ましくは2~20質量%、より好ましくは4~18質量%、更に好ましくは5~15質量%である。
【0069】
保湿剤分散油は、エキス及びペースト状調味料からなる群より選ばれる少なくとも1つの添加物を含んでもよい。エキス又はペースト状調味料は、顆粒状食品に食味、香味、風味などを付与する。エキス又はペースト状調味料を含む保湿剤分散油は、エキス又はペースト状調味料を含まない保湿剤分散油と比較して、保湿剤の分散状態をより長期間保持することもできる。この実施態様では、保湿剤分散油に含まれるエキス及びペースト状調味料を、油脂と一緒に顆粒状食品に効果的に包含させることができる。エキスとしては、例えば、醤油、魚醤などの醤、ポークエキス、ビーフエキス、チキンエキスなどの畜肉エキス、魚介エキス、及び野菜エキスが挙げられる。ペースト状調味料としては、例えば、味噌、ねりごま、及びカレールーが挙げられる。
【0070】
一実施態様では、保湿剤分散油中の上記添加物の含有量は、質量基準で、保湿剤分散油中の油脂の含有量の2倍以下、好ましくは等量以下、より好ましくは0.5倍以下である。
【0071】
保湿剤分散油がエキス及びペースト状調味料からなる群より選ばれる少なくとも1つの添加剤を更に含む場合、保湿剤分散油中の保湿剤の含有量は、好ましくは0.5質量%~15質量%、より好ましくは1質量%~13質量%、更に好ましくは2質量%~10質量%である。
【0072】
保湿剤分散油がエキス及びペースト状調味料からなる群より選ばれる少なくとも1つの添加剤を更に含む場合、保湿剤分散油中の保湿剤の含有量は、質量基準で、保湿剤分散油中の油脂の含有量の好ましくは0.7倍以下、より好ましくは0.5倍以下、更に好ましくは0.3倍以下である。
【0073】
《第2混合物の調製》
次に、保湿剤分散油と第1混合物とを混合して第2混合物を調製する。いかなる理論に拘束される訳ではないが、保湿剤分散油において油脂中に分散した水溶性の保湿剤が、混合中に食品原料を凝集させて、造粒物の形成を促進すると考えられる。また、造粒物の形成の際に、脂肪酸エステルが存在することにより、過度の又は不均一な凝集が抑制されて、大きな塊(ダマ)の発生が抑制されると考えられる。
【0074】
保湿剤分散油は、例えば、直径1.0~4.0mmの穴を底部に設けた容器に入れて、その容器からから第1混合物に対して滴下することができる。保湿剤分散油と第1混合物との混合は、コニカルブレンダー、ナウター、リボンミキサー、ピン型ミキサーなどの混合装置を用いて行うことができる。保湿剤分散油と第1混合物との混合は、回転可能な保管容器、例えば回転可能なトートビンを用いて行うこともできる。混合装置は、保湿剤分散油と第1混合物とをより均一に混合できることから、円錐型のリボンミキサー又はピン型ミキサーであることが好ましく、ピン型ミキサーであることがより好ましい。
【0075】
保湿剤分散油は、調製後速やかに第1混合物と混合することが好ましい。混合時間は20分以内であることが好ましく、10分以内であることがより好ましい。
【0076】
第2混合物を静置して放冷することにより、保湿剤による油脂の半固体化又は固体化を促進することができる。静置放冷後に振動ふるい(8~10メッシュ:目開き0.9mmφ~2.25mmφ)を用いて整粒してもよい。整粒された第2混合物の静置法としては、例えば、クラフト紙袋(20kg容量)、フレキシブルコンテナバッグなどの保管容器内で一時保管することが挙げられる。
【0077】
《二酸化ケイ素粒子の混合》
次に、第2混合物に二酸化ケイ素粒子を混合することにより、顆粒状食品が製造される。この工程により、顆粒状食品の流動性を高め、その結果として充填適性を高めることができる。混合装置は、第2混合物の調製時に形成された造粒物の破砕を抑制できることから、コニカルブレンダー又はナウターミキサーであることが好ましい。
【0078】
二酸化ケイ素粒子の混合時に、二酸化ケイ素粒子の表面偏在を促進させるために酸化澱粉を併用してもよい。混合する酸化澱粉の配合量は、顆粒状食品の質量を基準として、好ましくは1.5質量%~20質量%、より好ましくは1.8質量%~18質量%となるように調整される。
【0079】
二酸化ケイ素微粒子と同時に又は二酸化ケイ素微粒子の混合前に、酸化澱粉を第2混合物と混合することが好ましい。酸化澱粉を第2混合物に予め混合しておく、又は二酸化ケイ素微粒子と同時に混合することにより、混合中、二酸化ケイ素微粒子を顆粒状食品の表面に滞留させて、より効果的に顆粒状食品の表面に偏在させることができる。
【0080】
二酸化ケイ素粒子の混合時に風味付けを目的として香料を混合してもよい。混合する香料の配合量は、顆粒状食品の質量を基準として、例えば0.8質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下となるように調整される。
【0081】
〈顆粒状食品の使用方法〉
顆粒状食品は、様々な用途に使用することができる。顆粒状食品の用途として、例えば、顆粒状のスープ、ふりかけ、及び他の食品(例えばスナック菓子、フライドポテトなど)の調味料が挙げられる。顆粒状食品は、顆粒状スープとして特に好適に使用することができる。
【実施例0082】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。表も含めて部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
【0083】
〈原料〉
本実施例で使用した原料を表1に示す。
【0084】
【0085】
脂肪酸エステルAp-1の組成を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)及びガスクロマトグラフィ(GC)を用いて分析した。
【0086】
GPC測定は、ゲル浸透クロマトグラフ分析装置(DGU-20A3/LC20AD/CBM-20A/SIL-20AHT/CTO-20AC/SPD-M20A/RID-10A/FRC-10A、株式会社島津製作所製)を用いて行った。条件は以下のとおりであった。
カラム:Shim-pack GPC-80M(長さ300mm×内径80mm)
検出器:示差屈折率検出器(RID)
カラム温度:40℃
移動相:テトロヒドロフラン(THF)
流量:1mL/分
標準物質:Shodex STANDARD(Type:SM-105、昭和電工株式会社製)
試料:テトラヒドロフラン(THF)溶液、脂肪酸エステル濃度1g/L、メンブランフィルター(PTFE製、0.5μm)ろ過
注入量:20μL
【0087】
GC測定は、ガスクロマトグラフAgilent 7890B GCシステム(アジレントテクノロジー株式会社製)を用いて行った。条件は以下のとおりであった。
カラム:DB-23(アジレントテクノロジー株式会社製、φ0.25mm×30m、膜厚0.25μm)
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
カラム温度:50℃(1分保持)→昇温10℃/分→170℃→昇温1.2℃/分→210℃
試料導入系:スプリット(1:20)
水素ガス流量:35mL/分
空気流量:300mL/分
窒素流量(メイクアップ):20mL/分
ヘリウムガス(キャリヤーガス)圧力:115kPa
注入量:1μL
採取量:0.03615~0.04237g
最終液量:3mL
【0088】
脂肪酸エステルAp-1について、GPCでは、重量平均分子量(Mw)が2719~3271(10.782分)及び826~878(11.237分)の位置にピークが観察された。GCでは、脂肪酸の組成がC18:C22=56:38であることが確認された。これらの情報に基づき、グリセロール又はその重合物及び脂肪酸の分子量を用いて、脂肪酸エステルAp-1が、モノグリセリンベヘン酸エステル(分子量755.25=92.09+340.58×2-18)と、オクタグリセリンステアリン酸エステル(分子量3008.72=610.58+284.48×9-18×9)との混合物であると判定した。
【0089】
〈評価方法〉
顆粒状スープの特性は以下の方法を用いて評価した。
【0090】
《圧縮率》
顆粒状スープの圧縮率を、粉体特性評価装置(パウダテスタ(登録商標)PT-X、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて室温(23℃)で測定した。ふるい目開きを1700μmとした。内径40mm、高さ80mm、容積100cm3の円筒容器の上面から38cmの高さに漏斗の出口(出口内径7mm)を合わせて、約120cm3の顆粒状スープを漏斗に入れて落下させたときに円筒容器に充填された顆粒状スープの質量をゆるめ嵩密度a(g/100cm3)とした。同じ円筒容器に継ぎ足し用のキャップを取り付け、ゆるめ嵩密度aの測定と同様の手順で顆粒状スープを落下させ、10回タッピングして顆粒状スープを密にし、その後キャップを外し、円筒容器の上面から突出した余剰の顆粒状スープを掻き取った後に円筒容器に充填されていた顆粒状スープの質量を固め嵩密度b(g/100cm3)とした。圧縮率を式:(b-a)×100/bにより得た。
【0091】
《安息角、崩壊角及び差角》
顆粒状スープの安息角及び崩壊角を、粉体特性評価装置(パウダテスタ(登録商標)PT-X、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて室温(23℃)で測定した。ふるい目開きを1700μmとした。直径8cmの円盤の上に出口高さ12cm、出口内径7mmの漏斗を通して顆粒状スープを落下させた。顆粒状スープが形成した山の裾野の角度を安息角、山に衝撃を3回与えた後の裾野の角度を崩壊角とした。タッピングは、標準条件のストローク長18mm及びタッピング速度60回/分で行った。差角は安息角と崩壊角の差(安息角-崩壊角)である。
【0092】
《Carr指数》
粉体特性評価装置(パウダテスタ(登録商標)PT-X、ホソカワミクロン株式会社製)から得た情報(ゆるめ嵩密度、固め嵩密度、圧縮率、安息角、崩壊角、及び差角)は、流動性指数表及び噴流性指数表を参照して指数化することができる(横山藤平他「Carrの方法による粉体流動性測定装置の試作」、粉体工学研究会誌、Vol.6、No.4(1969)、pp.264~291も参照のこと)。これらの指数に流動性指数を加えた総和がCarr指数(=圧縮率指数+安息角指数+流動性指数+崩壊角指数+差角指数)である。顆粒状スープのCarr指数を、MT1001k解析ソフト Ver 1.02(株式会社セイシン企業製)を用いて算出した。
【0093】
《Carr指数に基づく評価》
カップ充填後の顆粒状スープについて、充填量が基準値外のカップ個数とCarr指数との相関を評価した。具体的には、ストロークフィーダ(速度:29ショット/分)を用いて顆粒状スープを充填したカップ1000個をそれぞれ秤量した後、基準値(中央値±1g)から外れたカップ個数をCarr指数と比較した。評価基準として、「優」を基準値外のカップが5個未満(Carr指数80以上)、「良」を基準値外のカップが10個未満(Carr指数78以上、80未満)、「可」を基準値外のカップが20個未満(Carr指数75以上、78未満)、「不可」を基準値外のカップが20個以上(Carr指数75未満)とした。
【0094】
《粒度分布測定》
電磁振動式ふるい分け振とう機(ヴァーダー・サイエンティフィック株式会社(旧レッチェ)製AS200コントロール、クランプユニットAタイプセット(φ200~203mm対応))を用いて顆粒状スープの粒度分布を測定した。東京スクリーン株式会社製φ200ふるい(目開き:1000μm(16メッシュ)、710μm(24メッシュ)、355μm(42メッシュ)、250μm(60メッシュ)、180μm(80メッシュ)、80メッシュパス(受け皿)の6種類)を、目開きの粗いものを上から順に6段に重ねて振動させた。
【0095】
サンプルを最上段ふるい(目開き1000μm)に投入後、以下の条件で振動させてふるい分け分級を行った。
サンプル量:100g~108g
運転モード:20秒ごとに一旦停止、直ぐに振動再開
振動時間:5分間
振幅:2mm
振動数:150往復/分
【0096】
事前に各目皿の質量A(g)を記録し、ふるい分け分級後の各目皿の質量B(g)の差を、投入したサンプルの質量で割ることにより、各目皿に対応する粒度を有する顆粒状スープの割合を算出した。
各目皿に対応する粒度を有する顆粒状スープの割合(質量%)=(B(g)-A(g))/投入したサンプルの質量(g)。
【0097】
《充填適性試験》
株式会社トパック製試験機RU-46(ドラム径φ350mm、シャッター式)を用いて顆粒状スープの充填適性(3σ/X%)を評価した。顆粒状スープの充填量を8.8gに設定し、顆粒状スープをホッパーに充填した後、試験機を約10分間、速度450包/分)で、幅65mm、長さ70mmのパックに連続充填した。連続充填開始時から12個のパック、及び連続充填終了時から12個のパックを回収し、充填された顆粒状スープの質量を電子天秤を用いて秤量し、誤差範囲及び3σ/X%を算出した。σは標準偏差であり、3σ/X%は平均値±3σ(99.7%)の範囲外となる割合である。
【0098】
《電子顕微鏡及び電子線マイクロアナライザー分析》
顆粒状スープの電子顕微鏡画像の撮影及び顆粒状スープ表層の元素分析を行った。顆粒状スープをアルミニウム製の試料台にカーボンテープを用いて固定し、導電膜作製装置を用いて顆粒状スープの表面に金薄膜を蒸着して導電性を付与した後、以下の条件で撮影及び元素分析を行った。
(1)電子顕微鏡撮影
装置:日本電子株式会社製走査電子顕微鏡JSM-5600LV
電子線源:タングステンフィラメント
撮影モード:高真空モード
撮影画像:二次電子像
加速電圧:5kV
ワーキングディスタンス:20mm
倍率:200倍及び1000倍
(2)電子線マイクロアナライザー分析
装置:株式会社島津製作所製電子線マイクロアナライザーEPMA-1610
電子線源:CeBixチップ
加速電圧:15kV
分析径:直径100μm
【0099】
〈例1~例8、比較例1~比較例12〉
顆粒状スープを以下の手順で調製した。
【0100】
《第1混合物の調製》
コニカルブレンダーを用いて、粉末スープ中に(A)脂肪酸エステルを混合して第1混合物を調製した(PMX1-1~PMX1-4)。表2に第1混合物の組成を示す。
【0101】
【0102】
《第2混合物の調製》
内径165mmの3Lガラスビーカー(AGCテクノグラス株式会社製)に入れた(C)油脂に、(B)保湿剤又はその他の成分を添加し、トルネード撹拌機(品名:TORNADO、タービン型P-65型、撹拌シャフト50cm、アズワン株式会社製)を用いて撹拌することにより、保湿剤分散油(以下、実施例において単に「分散油」ともいう。)を調製した。表3に分散油の配合を示す。
【0103】
【0104】
直径1.0~4.0mmの穴を設けた容器に分散油を入れ、ピン型ミキサーの撹拌槽に入れた第1混合物に分散油を滴下しながら、回転数70rpmで10分間撹拌した。撹拌完了してから5分経過した後、混合物を撹拌槽から取り出し、8~10メッシュ(目開き1.0~2.25mm)の振動ふるいにかけ、静置することにより第2混合物を調製した。表4に第2混合物の組成を示す。
【0105】
【0106】
《顆粒状スープの調製》
コニカルブレンダーを用いて、第2混合物に香料及び使用する場合は酸化澱粉を混合し、その後二酸化ケイ素微粒子を混合して顆粒状スープを得た。第1混合物(比較例1~比較例4)、第2混合物(比較例5~比較例8)、及び顆粒状スープ(例1~例8、比較例9~比較例12)の組成及び粉体物性の評価結果を表5に示す。
【0107】
【0108】
〈例9~例14〉
シチュー系粉末スープZ-2の原料1種類及び香料を変更して、デミグラス系粉末スープZ-2a及びハヤシ系粉末スープZ-2bを調製した。粉末スープZ-2a及びZ-2bを用いた以外は、表2に示す第1混合物PMX1-4と同じ組成を有する第1混合物を用いて、第2混合物を調製した。コニカルブレンダーを用いて第2混合物に香料(約0.3質量%)を混合した後、酸化澱粉及び二酸化ケイ素微粒子を同時に、又は逐次混合して顆粒状スープを調製した。酸化澱粉及び二酸化ケイ素微粒子の混合順序、顆粒状スープの組成及び粉体物性の評価結果を表6に示す。例8の顆粒状スープの組成及び粉体物性の評価結果も合わせて表6に示す。
【0109】
【0110】
例1~例14、比較例1~比較例2、及び比較例5~12の顆粒状スープの粒度分布を表7に示す。粒度分布は顆粒状スープの充填適性と関係する。表7の評価(造粒度)では、Carr指数が75以上、80メッシュ粒度率(80メッシュの目皿に残留する顆粒状スープの質量割合)が13質量%未満、かつ80メッシュパス粒度率(80メッシュの目皿を通過した顆粒状スープの質量割合)が3質量%未満であるものをA、Carr指数が75未満、80メッシュ粒度率(80メッシュの目皿に残留する顆粒状スープの質量割合)が13質量%未満、かつ80メッシュパス粒度率(80メッシュの目皿を通過した顆粒状スープの質量割合)が3質量%未満であるものをB、それ以外をCとした。粒度分布の幅が狭い顆粒状スープは一般に高い充填適性を有する。
【0111】
【0112】
比較例2及び例2の充填適性の評価結果を表8に示す。
【0113】
【0114】
例2は、比較例2と比べて誤差範囲及び3σ/X%のいずれも小さく、優れた充填適性を有していた。
【0115】
比較例2、例1、例2、及び流動層造粒を用いて調製した顆粒状スープについて、電子顕微鏡撮影及び電子線マイクロアナライザー分析を行った。
【0116】
流動層造粒による顆粒状スープは以下の手順で調製した。600gの第2混合物PMX2-2を流動層コーティング装置(フローコーター、株式会社大川原製作所製)の目皿に投入し、吸気温度を60~70℃、ダンパー開度を0.2~0.4MPa、噴霧空気圧を0.18MPaに設定して浮遊させ、排気温度が35℃に到達した時点から増粘剤(グアーガム、オルノーSY-1、オルガノフードテック株式会社製)の0.5質量%水溶液をノズルから噴霧することにより造粒物を形成した。流動層造粒中は、排気温度が40~45℃に維持されるように吸気温度を微調整した。増粘剤水溶液の噴霧は、ロータリーポンプの目盛りを4.5に設定し、噴霧量を70mLとした。70mLの増粘剤水溶液を10分程度で噴霧した後、3分間乾燥し、吸気温度を45℃まで下げて冷却した後、造粒物を回収した。その後、ふるい(TESTING SIEVE(目開き2mm、線径0.9mm)、東京スクリーン株式会社製)を用いて粒径の大きい造粒物を除去することにより、顆粒状スープを調製した。得られた顆粒状スープのCarr指数は83.3であった。
【0117】
図1に電子顕微鏡画像(200倍及び1000倍)を示す。
【0118】
比較例2の顆粒状スープ及び流動層造粒品では表面が滑らかであったのに対し、例1及び例2の顆粒状スープでは、表面に二酸化ケイ素微粒子に起因すると思われる微細な凹凸が観察された。特に、流動層造粒品では、流動層造粒時に使用した増粘剤によって粒子同士が結合されていた。
【0119】
元素分析の結果(半定量値)を表9に示す。
【0120】
【0121】
ケイ素(Si)及び酸素(O)の数値から、例1及び例2の顆粒状スープでは、表面に二酸化ケイ素微粒子が高濃度で存在していることが分かる。第2混合物に酸化澱粉を混合した例2では、混合しなかった例1と比較して、約3倍のケイ素(Si)が表面に存在した。また、炭素(C)の数値も、例1(72質量%)と比べて例2(20質量%)では顕著に低い。これらの結果は、第2混合物に混合した酸化澱粉が二酸化ケイ素微粒子の表面偏在を促進したことを示唆する。