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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118812
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】重機の下降方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 9/08 20060101AFI20240826BHJP
   B66C 5/02 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
E01C9/08 A
B66C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025328
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】井原 啓知
【テーマコード(参考)】
2D051
3F202
【Fターム(参考)】
2D051AB03
2D051AH01
2D051AH05
2D051DA12
2D051DB05
2D051DB15
2D051FA02
3F202AA01
3F202AB04
3F202BA02
(57)【要約】
【課題】重機を仮設地面上から地下空間内に下降搬入するための新たな手法を提案する。
【解決手段】複数の覆工板31からなる仮設地面30上に設置される揚重装置1を用いて、重機50を仮設地面30上から地下の床面40まで下降させる方法は、仮受桁20を仮設地面30の開口部34に架け渡すように設置する工程と、仮受桁20上に揚重装置1のステージ6を載せる工程と、仮受桁20上に載せた状態のステージ6上に重機50を搬入する工程と、重機50を載せた状態のステージ6を揚重装置1の吊上装置5によって上昇させることにより、ステージ6の地切りを行う工程と、ステージ6が地切りされている状態で仮受桁20を開口部34から撤去する工程と、仮受桁20の撤去後に、重機50を載せた状態のステージ6を、吊上装置5によって下降させることにより開口部34を通過させて地下の床面40まで下降させる工程と、を含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の覆工板からなる仮設地面上に設置される揚重装置を用いて、重機を前記仮設地面上から地下の床面まで下降させる方法であって、
前記揚重装置は、前記仮設地面上に立設される門型フレームと、前記門型フレームの上部梁に装着される吊上装置と、前記吊上装置によって昇降可能であり、かつ、前記仮設地面の開口部を上下に通過可能であるステージと、を備え、
前記方法は、
仮受桁を前記開口部に架け渡すように設置する仮受桁設置工程と、
前記仮受桁上に前記ステージを載せるステージ載置工程と、
前記仮受桁上に載せた状態の前記ステージ上に前記重機を搬入する重機搬入工程と、
前記重機を載せた状態の前記ステージを前記吊上装置によって上昇させることにより、前記ステージの地切りを行う地切り工程と、
前記地切りされている状態で前記仮受桁を前記開口部から撤去する仮受桁撤去工程と、
前記仮受桁の撤去後に、前記重機を載せた状態の前記ステージを、前記吊上装置によって下降させることにより前記開口部を通過させて地下の床面まで下降させる下降工程と、
を含む、重機の下降方法。
【請求項2】
前記仮受桁撤去工程では、前記仮受桁を前記仮受桁の長手方向にスライドさせることによって前記開口部から撤去する、請求項1に記載の重機の下降方法。
【請求項3】
前記仮受桁の長さが前記開口部の開口幅の2倍以上である、請求項2に記載の重機の下降方法。
【請求項4】
傾斜面を有するスロープが前記仮設地面上に設置されており、
前記重機搬入工程は、前記重機が前記仮設地面上から前記スロープの傾斜面上を通って前記ステージ上に至るまで自走することを含む、請求項1に記載の重機の下降方法。
【請求項5】
前記地下の床面には、前記ステージを収容可能な凹部が形成されており、
前記下降工程は、前記ステージを前記凹部内に収容することを含む、請求項1に記載の重機の下降方法。
【請求項6】
前記凹部の深さが前記ステージの高さと略同等である、請求項5に記載の重機の下降方法。
【請求項7】
前記ステージは、上下方向に複数の層で積層された積層構造を有し、
前記積層構造における最下層は、互いに間隔を空けて平行に延びる複数の吊桁を含み、
前記積層構造における最上層は、互いに間隔を空けて平行に延びる複数の受桁を含み、
平面視で、前記吊桁と前記受桁とが直交しており、
前記吊桁が前記吊上装置によって吊り下げ支持され、
前記重機搬入工程では、前記受桁上に前記重機を搬入する、請求項1に記載の重機の下降方法。
【請求項8】
前記揚重装置は前記門型フレームを複数備え、各門型フレームの上部梁には前記吊上装置が複数装着されており、該吊上装置によって前記ステージが多点で吊り下げ支持される、請求項1~請求項7のいずれか1つに記載の重機の下降方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覆工板により構成される仮設地面から地下の床面まで重機を下降させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば道路等の下に地下構造物を構築する際に、地面に相当する部分に仮設地面(例えば仮設路面)として覆工板が用いられ得る。この覆工板は、例えば、地下に掘削形成された空間(地下空間)の上面開口を塞ぐためのものであり、当該地下空間の上部に設けられた覆工桁(覆工受桁)上に敷設され得る。
この点、特許文献1には、根太上に覆工板を敷設して構築された仮設床(前述の仮設地面に対応する)に起伏式クレーンを設けて、このクレーンを用いて地下に各種資材を吊り降ろすことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-33021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、当該地下空間内での施工に用いられる重機を仮設地面上から当該地下空間内に吊り降ろすために、既存の大型クレーンを用いることが考えられる。しかしながら、例えば30t程度の重量の重機を吊り降ろすためには、最低でも120tクレーン程度の大型クレーンが必要になる。この大型クレーンを仮設地面上に配置しようとしても、当該大型クレーンの重量で仮設地面の強度が不足する虞があり、補強が必要になる。また、例えば鉄道工事では線路等に隣接した狭隘なヤードでの施工となる場合があり、この場合には当該ヤードに当該大型クレーンを配置することが困難であった。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑み、重機を仮設地面上から地下空間内に下降搬入するための新たな手法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明に係る重機の下降方法は、複数の覆工板からなる仮設地面上に設置される揚重装置を用いて、重機を仮設地面上から地下の床面まで下降させる方法である。揚重装置は、仮設地面上に立設される門型フレームと、門型フレームの上部梁に装着される吊上装置と、吊上装置によって昇降可能であり、かつ、仮設地面の開口部を上下に通過可能であるステージと、を備える。本発明に係る重機の下降方法は、仮受桁を仮設地面の開口部に架け渡すように設置する仮受桁設置工程と、仮受桁上にステージを載せるステージ載置工程と、仮受桁上に載せた状態のステージ上に重機を搬入する重機搬入工程と、重機を載せた状態のステージを吊上装置によって上昇させることにより、ステージの地切りを行う地切り工程と、地切りされている状態で仮受桁を仮設地面の開口部から撤去する仮受桁撤去工程と、仮受桁の撤去後に、重機を載せた状態のステージを、吊上装置によって下降させることにより仮設地面の開口部を通過させて地下の床面まで下降させる下降工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来にない新たな手法で、重機を仮設地面上から地下空間内に下降搬入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に揚重装置の正面図
図2】同上実施形態における揚重装置の側面図
図3図2のA-A断面図
図4】同上実施形態における仮受桁及びステージの設置方法を示す図
図5】同上実施形態における仮受桁及びステージの設置方法を示す図
図6】同上実施形態における重機の下降方法を示す図
図7】同上実施形態における重機の下降方法を示す図
図8】同上実施形態における重機の下降方法を示す図
図9】同上実施形態における重機の下降方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1及び図2は、本発明の一実施形態における揚重装置1の正面図及び側面図である。図3は、図2のA-A断面図である。ここで、図1は、図2のB-B断面に対応する。また、図3では、図示簡略化のため、後述する吊上装置5の吊りフック5d及び吊り具5fの図示を省略している。尚、説明の便宜上、図1図3に示すように上下・前後・左右を規定しており、ゆえに、図2は揚重装置1の左側面図である。以下に記載する各寸法はあくまで例示のためのものであり、当該寸法に限るものではないことは言うまでもない。
【0011】
揚重装置1は、仮設地面30上に設置される。仮設地面30は、複数の覆工板31からなる。覆工板31は、平面視で、前後方向に沿う短辺(例えば1m程度)と、左右方向に沿う長辺(例えば3m程度)と、を有する矩形状であり、例えば鋼製である。仮設地面30、及び、それを構成する覆工板31は、例えば、地下に掘削形成された空間(地下空間)32の上面開口を塞ぐためのものである。
【0012】
仮設地面30は、複数の覆工桁(覆工受桁)33上に複数の覆工板31を敷設することで形成されている。複数の覆工桁33は、左右方向に互いに間隔を空けて平行に延びており、各覆工桁33が前後方向に延びている。各覆工板31は、左右方向で間隔を空けて隣り合う覆工桁33同士に跨るように敷設されている。覆工桁33は例えばH形鋼又はI形鋼からなり、上フランジ、下フランジ、及びウェブを有する。尚、覆工桁33については、例えば、地盤に予め打設された仮受杭(図示せず)に直接的又は間接的に固定されて仮受杭によって支持され得る。この仮受杭は土留め壁を構成するものであってもよい(例えば親杭横矢板工法によって形成された土留め壁における親杭であってもよい)。尚、本実施形態では、左右方向で隣り合う覆工桁33同士に関して、各々のウェブ間に3m程度の間隔が空いており、各々の上フランジ間に2.7m程度の間隔が空いており、各々の下フランジ間に2.7m程度の間隔が空いている。
【0013】
仮設地面30には、平面視で矩形状の開口部34(後述する図4(ア)参照)が形成されている。開口部34は、例えば、仮設地面30を構成する複数の覆工板31を取り外すことで形成され得る。本実施形態では、仮設地面30を構成して前後方向に並ぶ6つの覆工板31を取り外すことで開口部34が形成されている。図4(ア)を参照して、本実施形態では、開口部34の左右方向の長さ(開口幅)W0は例えば3m程度であり、開口部34の前後方向の長さ(開口長)L0は例えば6m程度である。開口部34は、仮設地面30上の空間と地下空間32とを連通する。尚、図4(ア)を参照して、本実施形態では、開口部34の下方に位置する覆工桁33の上フランジ同士の間の距離(最狭幅)W1は、例えば2.7m程度である。同様に、開口部34の下方に位置する覆工桁33の下フランジ同士の間の距離(最狭幅)W2は、例えば2.7m程度である。
【0014】
図1図3に戻り、揚重装置1は、枠体2と、敷桁3と、高さ調整材4と、吊上装置5と、ステージ(台座)6とを備える。
枠体2は、いわゆる「やぐら」であり、前側の門型フレーム8と、後側の門型フレーム9と、上梁10と、左側補強材11と、右側補強材12と、後側補強材13とを備える。
【0015】
前側の門型フレーム8は、上下方向に延びる左右一対の脚部8aと、これら脚部8aの上端部に左右両端部が連結されて左右方向に延びる上部梁8bとにより構成されている。
後側の門型フレーム9は、上下方向に延びる左右一対の脚部9aと、これら脚部9aの上端部に左右両端部が連結されて左右方向に延びる上部梁9bとにより構成されている。
門型フレーム8,9を構成する脚部8a,9a及び上部梁8b,9bは、例えばH形鋼からなる。脚部8a,9aの上下方向の長さは例えば4m程度である。上部梁8b,9bの左右方向の長さは例えば5m程度である。
【0016】
前側の門型フレーム8と後側の門型フレーム9とは、互いに前後方向に間隔を空けて配置されている。
前側の門型フレーム8の上部梁8bの上面と後側の門型フレーム9の上部梁9bの上面とには、前後方向に延びる左右一対の上梁10が架け渡されている。上梁10の前端部が前側の門型フレーム8の上部梁8bの上面に固定されており、上梁10の後端部が後側の門型フレーム9の上部梁9bの上面に固定されている。上梁10の前後方向の長さは例えば6m程度である。上梁10は例えばH形鋼からなる。
【0017】
前側の門型フレーム8の左側の脚部8aと後側の門型フレーム9の左側の脚部9aとには、前後方向に延びる上下一対の左側補強材11が架け渡されている。
前側の門型フレーム8の右側の脚部8aと後側の門型フレーム9の右側の脚部9aとには、前後方向に延びる上下一対の右側補強材12が架け渡されている。
後側の門型フレーム9の左右一対の脚部9a同士には、左右方向に延びる上下一対の後側補強材13が架け渡されている。
左側補強材11と右側補強材12と後側補強材13とは、例えばH形鋼からなる。
【0018】
仮設地面30の開口部34の前端部の直上と後端部の直上とには、それぞれ、前側の門型フレーム8の上部梁8bと、後側の門型フレーム9の上部梁9bとが位置している。平面視で、前側の門型フレーム8の左右一対の脚部8a間に、仮設地面30の開口部34の前端部が位置している。平面視で、後側の門型フレーム9の左右一対の脚部9a間に、仮設地面30の開口部34の後端部が位置している。
【0019】
門型フレーム8,9の各脚部8a,9aの下端部と、仮設地面30との間には、下から上に向かって順に、敷桁3と高さ調整材4とが介装されている。換言すれば、門型フレーム8,9は、敷桁3及び高さ調整材4を介して、仮設地面30上に立設されている。
敷桁3は、その少なくとも一部が、仮設地面30の開口部34を区画する覆工板31上に載置され、左右方向に延びている。敷桁3は、平面視で、仮設地面30の開口部34に被らないように、当該開口部34の近傍に配置されている。敷桁3は例えばH形鋼からなり、上フランジ、下フランジ、及びウェブを有する。
【0020】
高さ調整材4は、門型フレーム8,9の各脚部8a,9aの下端部と、敷桁3との間に介装されるものであり、例えば、左右方向に延びるH形鋼からなり、上フランジ、下フランジ、及びウェブを有する。高さ調整材4は、門型フレーム8,9の仮設地面30に対する高さを調整するためのものであり、その寸法は任意である。高さ調整材4についても、平面視で、仮設地面30の開口部34に被らないように配置されている。尚、高さ調整材4が不要であれば省略してもよい。
【0021】
敷桁3については、左右方向で間隔を空けて隣り合う覆工桁33同士に跨るように、これら覆工桁33の直上に配置されている。これにより、門型フレーム8,9の各脚部8a,9aからの荷重が、敷桁3を介して、複数の覆工桁33に分散され得る。つまり、門型フレーム8,9の各脚部8a,9aからの荷重が、覆工板31に直接的かつ集中的に作用することを防止することができる。尚、敷桁3については、2つ以上の任意の覆工桁33に跨るように配置され得る。
【0022】
門型フレーム8,9の各上部梁8b,9bには、それぞれ、左右一対の吊上装置5が装着されている。つまり、4つの吊上装置5によって、ステージ6が4点で吊り下げ支持され得る。換言すれば、複数の吊上装置5によって、ステージ6が多点(複数点)で吊り下げ支持され得る。
【0023】
吊上装置5は例えばチェーンブロックである。吊上装置5は、例えば、上部フック5aを有する駆動部5bと、駆動部5bによって巻上・巻下可能な線状部材(例えばチェーン)5cと、線状部材5cの下端に取り付けられた吊りフック5dと、を備える。吊上装置5は、電動式又は手動式であり得る。
【0024】
門型フレーム8,9の各上部梁8b,9bには、それぞれ、取付ブラケット5eが2つずつ設けられており、各取付ブラケット5eに、吊上装置5の上部フック5aが取り付けられ得る。吊上装置5の吊りフック5dは、吊り具5fを介して、ステージ6に取り付けられ得る。
【0025】
ステージ6は、上下方向に複数の層(本実施形態では2つの層)で積層された積層構造を有する。この積層構造における最下層は、複数(本実施形態では2つ)の吊桁15を含み、最上層は、複数(本実施形態では6つ)の受桁16を含む。
吊桁15及び受桁16は、各々が、例えばH形鋼からなり、上フランジ、下フランジ、及びウェブを有する。
【0026】
2つの吊桁15は、左右方向に互いに間隔を空けて平行に、前後方向に延びている。尚、本実施形態では、2つの吊桁15に水平ブレース17が設けられている。
6つの受桁16は、前後方向に互いに間隔を空けて平行に、左右方向に延びている。
平面視で、吊桁15と受桁16とが直交している。そして、ステージ6は、平面視で、吊桁15と受桁16とによって梯子状に形成されている。
【0027】
吊桁15の前後両端部には、それぞれ、前述の吊り具5fを取り付けるためのブラケット18が設けられている。従って、ステージ6は、その吊桁15におけるブラケット18の設置箇所にて、吊上装置5によって吊り下げ支持され得る。
【0028】
ここで、図4(ア)及び図5(ウ)を参照しつつ説明すると、吊桁15の長さ(長手方向である前後方向の長さ)L1は、仮設地面30の開口部34の開口長L0と略同等であるか、又は、当該開口長L0よりも僅かに短い。また、受桁16の長さ(長手方向である左右方向の長さ)L2は、仮設地面30の開口部34の下方に位置する覆工桁33のフランジ同士の間の距離(最狭幅)W1,W2と略同等であるか、又は、当該最狭幅W1,W2よりも僅かに短い。
従って、ステージ6は、吊上装置5における線状部材5cの巻上・巻下によって昇降可能であり、かつ、仮設地面30の開口部34を上下に通過可能である。
【0029】
ステージ6を構成する受桁16上には、重機50(後述する図6(イ)~図9(キ)参照)が載置され得る。
【0030】
本実施形態では、仮設地面30の開口部34に架け渡すように、複数(本実施形態では11個)の仮受桁20が設けられている(図1図3参照)。仮受桁20は、前後方向に互いに間隔を空けて平行に、左右方向に延びている。仮受桁20は、例えばH形鋼からなり、上フランジ、下フランジ、及びウェブを有する。
【0031】
ここで、図4(ア)及び(イ)を参照しつつ説明すると、仮受桁20の長さ(長手方向である左右方向の長さ)L3は、仮設地面30の開口部34の開口幅W0の2倍以上である。本実施形態では、仮受桁20の長さL3は例えば6m程度である。
【0032】
本実施形態では、ステージ6上に重機50が載置されるに先立って、ステージ6が仮受桁20上に載置され得る。この手順について、図4及び図5を用いて説明する。
図4(ア)~図5(ウ)は、仮受桁20及びステージ6の設置方法を示す。ここにおいて、図4(ア)~図5(ウ)は、前述の図3と同様に平面視したものである。
【0033】
まず図4(ア)に示すように形成された仮設地面30の開口部34に対して、図4(イ)に示すように、当該開口部34に跨るように、複数の仮受桁20を並べて設置する。
次に、図5(ウ)に示すように、仮受桁20上に、2つの吊桁15を、仮受桁20に対して直交するように並べて載置し、水平ブレース17を取り付け、その後、2つの吊桁15上に、これらに跨るように、6つの受桁16を、吊桁15に対して直交するように並べて載置する。そして、これら吊桁15及び受桁16を互いに固定して一体化することで、仮受桁20上にステージ6が載置され得る。
【0034】
図2及び図3に示すように、仮設地面30上には、開口部34の前縁に隣接するように、傾斜面25を有するスロープ26が設置されている。スロープ26の傾斜面25は、前から後に向かうほど高くなるような上り勾配を有している。スロープ26の最後部の高さ(スロープ26のうち開口部34の前縁に最も近い側の高さ)は、ステージ6の高さ(吊桁15の高さと受桁16の高さとの和)と仮受桁20の高さとの和と略同等である。
【0035】
尚、本実施形態では、揚重装置1及び仮受桁20の重量の総和が例えば15t程度である。これは、いわゆる120tクレーン(車体重量が例えば80t程度)などの既存の大型クレーンよりも非常に軽量であることは言うまでもない。
【0036】
次に、仮設地面30上に設置される揚重装置1を用いて、重機50を仮設地面30上から地下の床面40まで下降させる方法について、前述の図1図5に加えて、図6図9を用いて説明する。
図6(ア)~図9(カ)は、重機50の下降方法を示す。ここにおいて、図6(ア)~図9(カ)は、前述の図1と同様に正面視したものである。
【0037】
まず、図4(イ)に示すように、仮受桁20を仮設地面30の開口部34に架け渡すように設置する(仮受桁設置工程)。
次に、図5(ウ)に示すように、仮受桁20上にステージ6を載置する(ステージ載置工程)。
【0038】
また、図6(ア)に示すように、揚重装置1におけるステージ6以外の部分も、仮設地面30上に設置される。この設置時期については、前述の仮受桁設置工程及びステージ載置工程の少なくとも一方の実施時期と重なってもよい。又は、前述の仮受桁設置工程及びステージ載置工程の実施時期に重ならないように当該設置時期を前後にずらしてもよい。
【0039】
尚、本実施形態では、重機50をステージ6上に搬入するに先立って、前側の門型フレーム8の上部梁8bに装着された2つの吊上装置5については、その下端の吊りフック5dが、ステージ6から離脱した状態で、重機50の搬入時に重機50をかわす位置まで上昇している。これに対し、後側の門型フレーム9の上部梁9bに装着された2つの吊上装置5については、その下端の吊りフック5dが、吊り具5f及びブラケット18を介して、ステージ6の吊桁15に接続している。
【0040】
次に、図6(イ)に示すように、仮受桁20上に載せた状態のステージ6上に重機50を搬入する(重機搬入工程)。この重機搬入工程は、重機50が仮設地面30上からスロープ26の傾斜面25上を通ってステージ6上に至るまで自走することを含む。本実施形態では、ステージ6が仮受桁20上に載っているので、重機50の搬入時のステージ6のぐらつきが抑制され得る。
【0041】
ここで、重機50について説明する。重機50は、例えば、バックホー等の油圧ショベル、杭打機、ブルドーザー等の建設機械である。また、重機50は、例えば、下部走行体51及び上部旋回体52を有するベースマシン53と、上部旋回体52に腕体(図示せず)を介して取り付けられた作業装置54と、を備える。下部走行体51は、例えば、左右両側に無限軌道(クローラ)55を備える。上部旋回体52は、下部走行体51の上部に旋回可能に設けられている。作業装置54は、例えば、掘削、杭打ち、敷均しなどの各種作業を行うためのものである。尚、本実施形態では、下部走行体51が無限軌道55を備えているが、その他、タイヤ等の車輪を備えてもよい。ここにおいて、ステージ6については、重機50の下部走行体51の左右両側の無限軌道55又は車輪の直下に吊桁15が位置するように構成されることが好ましい。
【0042】
次に、図7(ウ)に示すように、前側の門型フレーム8の上部梁8bに装着された2つの吊上装置5について、線状部材5cを巻下して、その下端の吊りフック5dを、吊り具5fに取り付け、ブラケット18を介して、ステージ6の吊桁15に接続する。
【0043】
次に、図7(エ)に示すように、重機50を載せた状態のステージ6を吊上装置5によって上昇させることにより、ステージ6の地切りを行う(地切り工程)。
【0044】
次に、図8(オ)に示すように、ステージ6が地切りされている状態で、仮受桁20を仮設地面30の開口部34から撤去する(仮受桁撤去工程)。この仮受桁撤去工程では、すべての仮受桁20を、各仮受桁20の長手方向に、仮設地面30に対してスライドさせることによって、仮設地面30の開口部34から撤去する。尚、本実施形態では、左右方向に延びる仮受桁20を、左側にスライドさせることによって、仮設地面30の開口部34から撤去する例を図示しているが、これとは逆に、仮受桁20を右側にスライドさせることによって、仮設地面30の開口部34から撤去してもよいことは言うまでもない。
【0045】
この後、図8(カ)及び図9(キ)に示すように、重機50を載せた状態のステージ6を、吊上装置5によって下降させることにより、仮設地面30の開口部34を通過させて、地下の床面40まで下降させる(下降工程)。尚、地下の床面40には、開口部34の直下に、ステージ6を収容可能な凹部41が予め掘削形成されている。それゆえ、前述の下降工程では、ステージ6が、地下の床面40の凹部41内に収容される。地下の床面40の凹部41は、平面視で、例えば、開口部34と同様の矩形状である。この凹部41の矩形状における各辺の寸法は、開口部34の矩形状における各辺の寸法と略同等であるか、又は、開口部34の矩形状における各辺の寸法よりも若干大きい。この凹部41の深さは、ステージ6の高さ(吊桁15の高さと受桁16の高さとの和)と略同等である。ゆえに、地下の床面40においては、前述のスロープ26のようなものの設置が不要である。
【0046】
このようにして、仮設地面30上に設置される揚重装置1を用いて、重機50を仮設地面30上から地下の床面40まで下降させることができる。
【0047】
尚、本実施形態における重機50は、その重量が例えば30t程度である。このような重機50を吊り降ろすためには、従来、最低でも120tクレーン程度の大型クレーンが必要であったが、本実施形態では、当該大型クレーンよりも非常に軽量な揚重装置1及び仮受桁20を用いて重機50を吊り降ろすことができる。
【0048】
以上では、揚重装置1を用いて、重機50を仮設地面30上から地下の床面40まで下降させる方法について説明したが、この方法における各工程の順序を逆にすることで、重機50を地下の床面40から仮設地面30上まで上昇させることができることは言うまでもない。すなわち、揚重装置1は、重機50の昇降に用いられ得る。
【0049】
本実施形態によれば、重機50の下降方法は、複数の覆工板31からなる仮設地面30上に設置される揚重装置1を用いて、重機50を仮設地面30上から地下の床面40まで下降させる方法である。揚重装置1は、仮設地面30上に立設される門型フレーム8,9と、門型フレーム8,9の上部梁8b,9bに装着される吊上装置5と、吊上装置5によって昇降可能であり、かつ、仮設地面30の開口部34を上下に通過可能であるステージ6と、を備える。重機50の下降方法は、仮受桁20を開口部34に架け渡すように設置する仮受桁設置工程と、仮受桁20上にステージ6を載せるステージ載置工程と、仮受桁20上に載せた状態のステージ6上に重機50を搬入する重機搬入工程と、重機50を載せた状態のステージ6を吊上装置5によって上昇させることにより、ステージ6の地切りを行う地切り工程と、ステージ6が地切りされている状態で仮受桁20を開口部34から撤去する仮受桁撤去工程と、仮受桁20の撤去後に、重機50を載せた状態のステージ6を、吊上装置5によって下降させることにより開口部34を通過させて地下の床面40まで下降させる下降工程と、を含む。揚重装置1は、複数の門型フレーム8,9を備え、各門型フレーム8,9の上部梁8b,9bには複数の吊上装置5が装着されており、これら吊上装置5によってステージ6が多点で吊り下げ支持される。これにより、揚重装置1を軽量かつコンパクトな構成とすることができる。
【0050】
また本実施形態によれば、仮受桁撤去工程では、仮受桁20を仮受桁20の長手方向にスライドさせることによって開口部34から撤去する。ここで、仮受桁20の長さL3が、開口部34の開口幅W0の2倍以上である。これにより、仮受桁20を撤去する際(引き抜く際)には、常に、仮受桁20における半分以上の長さ分が仮設地面30上に位置するので、仮受桁20の開口部34内への落下を防止することができる。
【0051】
また本実施形態によれば、重機搬入工程は、重機50が仮設地面30上からステージ6上まで自走することを含む。特に本実施形態によれば、傾斜面25を有するスロープ26が仮設地面30上に設置されており、重機搬入工程は、重機50が仮設地面30上からスロープ26の傾斜面25上を通ってステージ6上に至るまで自走することを含む。これにより、ステージ6と仮設地面30との間に高低差があっても、重機50を仮設地面30上からスロープ26を介してステージ6上にスムーズに搬入することができる。
【0052】
また本実施形態によれば、地下の床面40には、ステージ6を収容可能な凹部41が形成されており、下降工程は、ステージ6を凹部41内に収容することを含む。凹部41の深さがステージ6の高さと略同等である。これにより、地下の床面40については、前述のスロープ26のような段差調整手段の設置を省略することができる。
【0053】
また本実施形態によれば、ステージ6は、上下方向に複数の層で積層された積層構造を有し、この積層構造における最下層は、互いに間隔を空けて平行に延びる複数の吊桁15を含み、最上層は、互いに間隔を空けて平行に延びる複数の受桁16を含み、平面視で、吊桁15と受桁16とが直交しており、吊桁15が吊上装置5によって吊り下げ支持され、重機搬入工程では、受桁16上に重機50を搬入する。これにより、ステージ6を吊桁15と受桁16とからなる簡素な構成とすることができ、ひいては、ステージ6の軽量化を実現することができる。
【0054】
尚、本実施形態では、揚重装置1を用いて、重機50を昇降しているが、この他、掘削土砂や各種資材等を運搬可能なダンプトラックなどの運搬車両を昇降してもよい。
【0055】
図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1…揚重装置、2…枠体、3…敷桁、4…高さ調整材、5…吊上装置、5a…上部フック、5b…駆動部、5c…線状部材、5d…吊りフック、5e…取付ブラケット、5f…吊り具、6…ステージ、8…前側の門型フレーム、8a…脚部、8b…上部梁、9…後側の門型フレーム、9a…脚部、9b…上部梁、10…上梁、11…左側補強材、12…右側補強材、13…後側補強材、15…吊桁、16…受桁、17…水平ブレース、18…ブラケット、20…仮受桁、25…傾斜面、26…スロープ、30…仮設地面、31…覆工板、32…地下空間、33…覆工桁、34…開口部、40…地下の床面、41…凹部、50…重機、51…下部走行体、52…上部旋回体、53…ベースマシン、54…作業装置、55…無限軌道、L0…開口長、L1…吊桁15の長さ、L2…受桁16の長さ、L3…仮受桁20の長さ、W0…開口幅、W1,W2…最狭幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9