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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118819
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240826BHJP
   H02M 3/07 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025341
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森▲崎▼ 賢二
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730BB02
5H730BB11
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE59
5H730FD01
5H730FG05
5H730VV01
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で且つ入力電圧が低い場合でも動作可能なDC/DCコンバータを提供する。
【解決手段】直流電源からの入力電圧に基づいて出力電圧を生成するDC/DCコンバータであって、直流電源の正極側に一端が接続された第1のコイルと、直流電源の負極側に一端が接続された第2のコイルと、一端が第1のコイルの他端、他端が第2のコイルの他端に夫々接続された入力側コンデンサと、一端が第1のコイルの他端、他端が負荷に夫々接続されたスイッチング素子と、一端がスイッチング素子の他端、他端が所定電位に夫々接続された出力側コンデンサと、第1のコイルの他端に接続され、入力電圧を昇圧してブート出力電圧を生成するブートストラップ回路と、ブート出力電圧を受けてその電圧レベルに応じた電圧値の制御電圧をスイッチング素子の制御端に供給してそのオン及びオフを制御する制御回路と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの入力電圧に基づいて、負荷に供給する出力電圧を生成するDC/DCコンバータであって、
前記直流電源の正極側に一端が接続された第1のコイルと、
前記直流電源の負極側に一端が接続された第2のコイルと、
一端が前記第1のコイルの他端に接続され、他端が前記第2のコイルの他端に接続された入力側コンデンサと、
一端が前記第1のコイルの他端に接続され、他端が前記負荷に接続されたスイッチング素子と、
一端が前記スイッチング素子の他端に接続され、他端が所定電位に接続された出力側コンデンサと、
前記第1のコイルの他端に接続され、前記入力電圧を昇圧してブート出力電圧を生成するブートストラップ回路と、
前記ブート出力電圧を受けて、前記ブート出力電圧の電圧レベルに応じた電圧値を有する制御電圧を前記スイッチング素子の制御端に供給して前記スイッチング素子のオン及びオフを制御する制御回路と、
を有することを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記ブートストラップ回路は、
アノードが前記第1のコイルの他端に接続された第1のダイオードと、
アノードが前記第1のダイオードのカソードに接続された第2のダイオードと、
アノードが前記第2のダイオードのカソードに接続され、カソードが前記制御回路に接続された第3のダイオードと、
一端が前記第1のダイオードのカソードに接続され、他端が前記スイッチング素子の他端に接続された第1のコンデンサと、
一端が前記第2のダイオードのカソードに接続され、他端が前記第2のコイルの他端に接続された第2のコンデンサと、
一端が前記第3のダイオードのカソードに接続され、他端が所定電位に接続された第3のコンデンサと、
を有することを特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記スイッチング素子はFET(Field Effect Transistor)であり、ゲートに前記制御電圧の印加を受けることを特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記制御回路は、発振信号を生成するオシレータを含み、前記発振信号に基づいて所定周期で論理レベル1及び論理レベル0に変化し且つ論理レベル1において前記ブート出力電圧の電圧レベルに応じた電圧値を有する前記制御電圧を生成することを特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
アノードが前記第2のコイルの他端に接続され、カソードが前記スイッチング素子の他端及び前記出力側コンデンサの一端に接続された整流ダイオードを有することを特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項6】
アノードが所定電位に接続され、前記ブートストラップ回路及び前記制御回路を接続するノードにカソードが接続されたツェナーダイオードを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載のDC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末等の電子機器において、電池等の直流電源の電圧とは電圧値が異なる動作電圧を必要とする回路が搭載されている。このような電子機器において、直流電源の電圧を電圧値の異なる直流電圧に変換する回路としてDC/DCコンバータが用いられている。
【0003】
降圧型のDC/DCコンバータである所謂バックコンバータでは、回路の出力側にコイルを設けた構成が広く用いられている。このような通常のバックコンバータに対し、回路の出力側ではなく入力側において、電源側及びグランド側に分けて2つのコイルを設けたバックコンバータが提案されている。かかる構成のバックコンバータによれば、通常のバックコンバータと比べてコイルの大きさを抑えることができるとともに、各コイルがフィルタの役割を果たすため、入力のノイズを低減することができる(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Abdullah Abdulslam, Patrick P. Mercier "A Continuous-Input-Current Passive-Stacked Third-Order Buck Converter Achieving 0.7W/mm2 Power Density and 94% Peak Efficiency" ISSCC, pp. 148 - 150, Feb. 2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように入力側に2つのコイルが設けられたバックコンバータでは、レベルシフタ回路を用いて、スイッチング素子を構成するFET(Field effect transistor)のゲートに印加する駆動電圧を生成する。このため、FETの駆動電圧は入力電圧と同じ電圧値となる。したがって、駆動電圧が入力電圧に比して大きいFETを用いることができず、使用可能なFETに制限ができてしまうという問題があった。また、レベルシフタ回路自体の回路規模が大きいため、回路が複雑化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で且つ入力電圧が低い場合でも動作可能なDC/DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るDC/DCコンバータは、直流電源からの入力電圧に基づいて、負荷に供給する出力電圧を生成するDC/DCコンバータであって、前記直流電源の正極側に一端が接続された第1のコイルと、前記直流電源の負極側に一端が接続された第2のコイルと、一端が前記第1のコイルの他端に接続され、他端が前記第2のコイルの他端に接続された入力側コンデンサと、一端が前記第1のコイルの他端に接続され、他端が前記負荷に接続されたスイッチング素子と、一端が前記スイッチング素子の他端に接続され、他端が所定電位に接続された出力側コンデンサと、前記第1のコイルの他端に接続され、前記入力電圧を昇圧してブート出力電圧を生成するブートストラップ回路と、前記ブート出力電圧を受けて、前記ブート出力電圧の電圧レベルに応じた電圧値を有する制御電圧を前記スイッチング素子の制御端に供給して前記スイッチング素子のオン及びオフを制御する制御回路と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成で且つ入力電圧が低い場合でも動作可能なDC/DCコンバータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るDC/DCコンバータの構成を示す回路図である。
図2】制御回路の構成を示す回路図である。
図3】オシレータの出力波形とスイッチのオンオフとの関係を示すタイムチャートである。
図4】第1のスイッチオフ期間における各部の電位を示す図である。
図5】スイッチオン期間における各部の電位を示す図である。
図6】第2のスイッチオフ期間における各部の電位を示す図である。
図7】スイッチのオンオフに応じた電流の変化を示すタイムチャートである。
図8】比較例のDC/DCコンバータの構成を示す回路図である。
図9】変形例のDC/DCコンバータの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【0011】
図1は、本発明の実施例にかかるDC/DCコンバータ100の構成を示す回路図である。DC/DCコンバータ100は、入力電源11、ブートストラップ回路12、FET13、制御回路14及び負荷回路15を有する。また、DC/DCコンバータ100は、コイルL1及びL2、コンデンサCin、コンデンサCout及びダイオードDRを有する。
【0012】
入力電源11は、直流の入力電圧Vinを出力するDC電源である。入力電源11のマイナス端子は、接地されている。
【0013】
コイルL1は、入力電源11のプラス端子側に設けられた第1のコイルである。コイルL1は、一端が入力電源11のプラス端子に接続され、他端がノードn1に接続されている。
【0014】
コイルL2は、入力電源11のマイナス端子側に設けられた第2のコイルである。コイルL2は、一端が入力電源11のマイナス端子に接続されるとともに接地されており、他端がノードn2に接続されている。
【0015】
コンデンサCinは、DC/DCコンバータ100の入力側に設けられた入力側コンデンサである。コンデンサCinの一端は、ノードn1に接続され、ノードn1を介してコイルL1の他端に接続されている。コンデンサCinの他端は、ノードn2に接続され、ノードn2を介してコイルL2の他端に接続されている。
【0016】
ブートストラップ回路12は、入力電圧Vinに基づいて、制御回路14に供給するブート出力電圧Vxを生成する回路である。本実施例では、ブートストラップ回路12は、入力電圧Vinの2倍の電圧値を有するブート出力電圧Vxを生成し、制御回路14に供給する。
【0017】
ブートストラップ回路12は、コイルL1の他端及びコンデンサCinの一端に接続されている。ブートストラップ回路12は、ダイオードD1、D2及びD3と、コンデンサC1、C2及びC3と、を含む。
【0018】
ダイオードD1、D2及びD3は、コイルL1の他端及びコンデンサCinの一端と制御回路14の電圧入力部との間に直列接続されている。ダイオードD1、D2及びD3は、コンデンサC1、C2及びC3における充電電流の逆流を防止するために設けられた逆流防止ダイオードである。
【0019】
ダイオードD1は、アノード(入力端)がコイルL1の他端及びコンデンサCinの一端に接続され、カソード(出力端)がコンデンサC1の一端に接続されている。ダイオードD2は、アノードがダイオードD1のカソード及びコンデンサC1の一端に接続され、カソードがコンデンサC2の一端に接続されている。ダイオードD3は、アノードがダイオードD2のカソード及びコンデンサC2の一端に接続され、カソードがコンデンサC3の一端に接続されている。
【0020】
コンデンサC1は、一端がダイオードD1のカソード及びダイオードD2のアノードに接続され、他端がノードn3に接続されている。コンデンサC2は、一端がダイオードD2のカソード及びダイオードD3のアノードに接続され、他端がダイオードDRのアノードに接続されている。コンデンサC3は、一端がダイオードD3のカソード及び制御回路14の入力部に接続され、他端が接地されている。
【0021】
FET13は、第1導電型であるNチャネルMOSFETから構成されている。制御回路14から出力された制御電圧を制御端(ゲート)に受けて、オン及びオフに制御されるスイッチング素子として機能する。FET13の第1端(ドレイン)は、ノードn1に接続され、ノードn1を介してコイルL1の他端に接続されている。FET13の第2端(ソース)は、ノードn3に接続され、ノードn3を介して負荷回路15の一端に接続されている。
【0022】
制御回路14は、FET13のゲートに制御電圧Vcを供給することにより、FET13のオン及びオフを制御する回路である。制御回路14は、ブートストラップ回路12の出力電圧であるブート出力電圧Vxに基づいて、ブート出力電圧Vxの電圧レベルに応じた電圧値を有する制御電圧Vcを生成する。
【0023】
図2は、制御回路14の構成を示す回路図である。制御回路14は、エラーアンプ21、コンパレータ22及びオシレータ23を含む。
【0024】
エラーアンプ21は、基準電圧Vrefと帰還電圧である電圧Vaとを比較して、出力電圧VFBを調整する誤差増幅器である。エラーアンプ21の反転入力端は、負荷回路15に対して並列に接続された抵抗R1及び抵抗R2(図1では図示を省略)同士を接続する接続ノードであるノードn4に接続されている。また、エラーアンプ21の出力端と反転入力端との間には、抵抗R3、コンデンサC4及びC5からなる帰還回路が接続されている。
【0025】
コンパレータ22は、エラーアンプ21の出力電圧VFB及びオシレータ23の発振信号の入力を受け、これらに基づいてパルス幅変調信号を生成するPWM(Pulse Width Modulation)コンパレータである。生成されたパルス幅変調信号は、制御電圧VCとしてFET13のゲートに供給される。
【0026】
コンパレータ22は、負側電源端子NTが接地され、正側電源端子PTがブートストラップ回路12に接続されている。これにより、オシレータ23の発振信号に応じて所定周期で電圧値が論理レベル0及び論理レベル1に変化し、且つ論理レベル1において電圧値がブート出力電圧Vxの電圧レベルとなる制御電圧VCが、FET13のゲートに供給される。
【0027】
図3は、オシレータ23の発振信号OSCの出力波形とFET13のオンオフとの関係を示すタイムチャートである。上段はオシレータ23の発振信号OSC及びエラーアンプ21の出力電圧VFBの波形を示している。下段は、スイッチング素子としてのFET13のオン及びオフのタイミングを示している。
【0028】
発振信号OSCの信号レベルが出力電圧VFBの電圧値以上である期間においてHレベル(すなわち、論理レベル1)の制御電圧VCがコンパレータ22から出力され、FET13のゲートに印加されるため、当該期間においてFET13はオンとなる。また、発振信号OSCの信号レベルが出力電圧VFBの電圧値よりも小さい期間においてLレベル(すなわち、論理レベル0)の制御電圧VCがコンパレータ22から出力され、FET13のゲートに印加されるため、当該期間においてFET13はオフとなる。
【0029】
再び図1を参照すると、ダイオードDRは、DC/DCコンバータ100におけるダイオード整流のために設けられた整流ダイオードである。ダイオードDRは、アノードがノードn2に接続され、カソードがコンデンサCoutの一端及び負荷回路15の一端に接続されている。
【0030】
コンデンサCoutは、DC/DCコンバータ100の出力側に設けられた出力側コンデンサである。コンデンサCoutの一端は負荷回路15に接続され、他端は接地されている。
【0031】
負荷回路15は、DC/DCコンバータ100によって生成された電力を消費する回路である。負荷回路15は、一端がノードn3を介してFET13のソースに接続され、他端が接地されている。
【0032】
次に、本実施例のDC/DCコンバータ100の動作について、図4~7を参照して説明する。図4~6では、FET13をスイッチSWとして示している。また、入力電圧は電圧Vin、出力電圧は電圧Voutである。
【0033】
図4は、FET13がオフの状態である期間(以下、第1のオフ期間と称する)における電流経路及び各部の電位を示す図である。
【0034】
第1のオフ期間において、コンデンサCinには、入力電圧Vinがかかる。コンデンサC1もダイオードD1及びダイオードDRを介してコンデンサCinと同電位(電圧Vin)になるため、コンデンサC1のハイ側の電位は電圧Vout+Vinとなる。また、コンデンサC2のハイ側の電位も電圧Vout+Vinとなる。
【0035】
図5は、第1のオフ期間の後、FET13がオンの状態となった期間(以下、オン期間と称する)における電流経路及び各部の電位を示す図である。
【0036】
第1のオフ期間からオン期間に移行すると、コンデンサCinのハイ側の電圧が電圧Voutとなる。コンデンサCinにかかる電圧は入力電圧Vinであるため、コンデンサCinのロー側の電位は電圧Vout-Vinとなる。コンデンサC2のロー側の電位も電圧Vout-Vinとなり、ハイ側の電位が電圧Vout+Vinであることから、コンデンサC2にはVin×2の電圧がかかる。
【0037】
図6は、オン期間の後、FET13がオフの状態となった期間(以下、第2のオフ期間と称する)における電流経路及び各部の電位を示す図である。
【0038】
オン期間から第2のオフ期間に移行すると、コンデンサC2のロー側の電位が電圧Voutとなる。コンデンサC2には電圧Vin×2がかかっており、コンデンサC2のハイ側の電位は電圧Vout+Vin×2となる。このため、コンデンサC3のハイ側の電位も電圧Vout+Vin×2となり、コンデンサC3のロー側は接地されているため、コンデンサC3には電圧Vout+Vin×2がかかる。
【0039】
制御回路14の入力部には、コンデンサC3のハイ側の電位である電圧Vout+Vin×2が供給される。これにより、制御回路14は、電圧Vout+Vin×2から、DC/DCコンバータ100の出力電圧である電圧Voutを引いた電圧Vin×2を、FET13のゲート電圧として印加することができる。
【0040】
図7は、FET13のオンオフに応じた電流の変化を示すタイムチャートである。上段はFET13のドレインソース間を流れるスイッチ電流Iswの電流波形を示している。中段はダイオードDRを流れるダイオード電流Idの電流波形を示している。下段は、コイルL1を流れる電流IL1及びコイルL2を流れる電流IL2を合わせたインダクタ電流(IL1+IL2)の電流波形を示している。
【0041】
インダクタ電流(IL1+IL2)は、FET13がオンの期間において電流値が単調増加し、FET13がオフの期間において電流値が単調減少する電流波形となる。スイッチ電流Iswは、FET13がオンの期間においてインダクタ電流(IL1+IL2)の変化を反映した電流波形となる。すなわち、スイッチ電流Iswは、FET13がオンの期間にはインダクタ電流(IL1+IL2)の変化に応じて電流値が増加し、オフの期間には0Aの値をとる(すなわち、スイッチがオフであるため電流が流れない)電流波形となる。一方、ダイオード電流Idは、スイッチ電流Iswとは逆に、FET13がオフの期間におけるインダクタ電流(IL1+IL2)の変化を反映した電流波形となる。すなわち、ダイオード電流Idは、FET13がオフの期間にはインダクタ電流(IL1+IL2)の変化に応じて電流値が減少し、オンの期間には0Aの値をとる電流波形となる。
【0042】
以上のように、本実施例のDC/DCコンバータ100は、ブートストラップ回路12を用いて入力電圧Vinの2倍の電圧値を有するブート出力電圧Vxを生成し、制御回路14に供給する。制御回路14は、ブート出力電圧Vxに基づいて、HレベルにおいてVin×2の電圧値を有する制御電圧VCを生成し、FET13の駆動電圧として出力する。本実施例のDC/DCコンバータ100によれば、簡易な回路構成で入力電圧Vinよりも大きい駆動電圧を生成することができる。
【0043】
図8は、本実施例のDC/DCコンバータ100とは異なり、レベルシフタ回路及び3個のFETからなる駆動回路を用いてスイッチング素子(本実施例におけるFET13に相当するもの)の駆動電圧を生成する比較例のDC/DCコンバータ200の構成を示す回路図である。
【0044】
比較例のDC/DCコンバータ200は、制御回路31、レベルシフタ32、レベルシフタ33、P型トランジスタ34、P型トランジスタ35及びN型トランジスタ36からなるハイ側駆動回路30を有する。また、DC/DCコンバータ200は、制御回路41、レベルシフタ42、レベルシフタ43、N型トランジスタ44、N型トランジスタ45及びP型トランジスタ46からなるロー側駆動回路40を有する。また、DC/DCコンバータ200は、ハイ側のスイッチであるFET24及びロー側のスイッチであるFET25を有する。なお、図1に示す本実施例のDC/DCコンバータ100では、図8の比較例におけるロー側のスイッチであるFET25の代わりに、ダイオードDRが設けられている。
【0045】
ハイ側駆動回路30では、制御回路31が生成した制御電圧の電圧値をレベルシフタ32及び33によってレベルシフトし、P型トランジスタ34と、P型トランジスタ35及びN型トランジスタ36と、を交互にオン及びオフとなるように制御することにより、ハイ側のスイッチであるFET24を駆動するための駆動電圧を生成する。ロー側駆動回路40では、制御回路41が生成した制御電圧の電圧値をレベルシフタ42及び43によってレベルシフトし、N型トランジスタ44及びP型トランジスタ46と、N型トランジスタ45と、を交互にオン及びオフとなるように制御することにより、ロー側のスイッチであるFET25を駆動するための駆動電圧を生成する。
【0046】
比較例のDC/DCコンバータ200では、入力電圧Vinと同じ値の駆動電圧がFET24及び25に供給される。このため、入力電圧Vinの電圧レベルが低い場合にはそれに合わせて各FETの駆動電圧も低下することにより、スイッチング素子として使用するFETが制限されてしまう。また、各駆動回路に設けられたレベルシフト回路(32,33,42,43)の回路規模が大きいため、DC/DCコンバータ200全体の実装規模が大きくなってしまう。
【0047】
これに対し、本実施例のDC/DCコンバータ100では、ブートストラップ回路12によって入力電圧Vinの2倍の電圧値を有する駆動電圧をFET13に供給することができるため、比較例のDC/DCコンバータ200と比べて、スイッチング素子として用いるFETの制限(駆動電圧の制限)が小さい。また、比較例のようなレベルシフタ回路ではなく、ダイオードD1~D3及びコンデンサC1~C3からなるブートストラップ回路12を用いて駆動電圧の最大レベルに相当する電圧を生成しているため、比較例のDC/DCコンバータ200と比べて回路規模を抑えることができる。
【0048】
したがって、本実施例のDC/DCコンバータ100によれば、簡易な構成で且つ入力電圧が低い場合でも動作可能なDC/DCコンバータを提供することが可能となる。
【0049】
なお、本発明の実施形態は、上記実施例に記載したものに限られない。例えば、上記実施例では、入力電圧Vinが低い場合にもスイッチング素子の駆動電圧を大きくすることができる構成としてDC/DCコンバータ100の説明を行った。しかし、上記実施例1の構成に加えて、入力電圧が高い場合に備えて駆動電圧の上がり過ぎることを抑える構成を設けても良い。
【0050】
図9は、このような電圧の上昇を抑えるための構成を有する変形例のDC/DCコンバータ300を示す回路図である。
【0051】
DC/DCコンバータ300は、ツェナーダイオードDZを有する。ツェナーダイオードDZは、アノードが接地され、カソードがコンデンサC3の一端及びダイオードD3のカソードと制御回路14の入力部とを接続する接続ノードであるノードn4に接続されている。
【0052】
かかる構成によれば、ブートストラップ回路12からツェナーダイオードDZのツェナー電圧を超えるようなブート出力電圧Vxが出力されるような場合に、ツェナーダイオードDZのアノードからカソードに流れる電流によって電圧降下を生じさせることにより、過電圧を保護することが可能となる。
【0053】
また、上記実施例では、DC/DCコンバータ100においてロー側のスイッチの代わりにダイオードDRを用いる場合について説明したが、比較例として示したDC/DCコンバータ200と同様に、FETをロー側スイッチとして設けても良い。
【0054】
また、上位実施例では、ブートストラップ回路12が入力電圧Vinの2倍の電圧値を有するブート出力電圧Vxを生成する場合を例として説明した。しかし、ブートストラップ回路12が生成するブート出力電圧Vxの電圧値(すなわち、最大電圧値)はこれに限定されず、入力電圧Vinの2倍以上の電圧値を有するブート出力電圧Vxを生成する構成であってもよい。また、ブートストラップ回路12の回路構成は図1で示したものに限定されない。
【符号の説明】
【0055】
100 DC/DCコンバータ
11 入力電源
12 ブートストラップ回路
13 FET
14 制御回路
15 負荷回路
L1,L2 コイル
Cin コンデンサ
Cout コンデンサ
DR ダイオード
C1,C2,C3 コンデンサ
D1,D2,D3 ダイオード
21 エラーアンプ
22 コンパレータ
23 オシレータ
24,25 FET
200,300 DC/DCコンバータ
30 ハイ側駆動回路
31 制御回路
32,33 レベルシフタ
34,35 P型トランジスタ
36 N型トランジスタ
40 ロー側駆動回路
41 制御回路
42,43 レベルシフタ
44,45 N型トランジスタ
46 P型トランジスタ
DZ ツェナーダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9