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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118820
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/514 20060101AFI20240826BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240826BHJP
   A61F 13/475 20060101ALI20240826BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20240826BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20240826BHJP
   A61F 13/494 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
A61F13/514 300
A61F13/53 200
A61F13/475 111
A61F13/475 112
A61F13/511
A61F13/49 315A
A61F13/494 115
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025344
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 悠太郎
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA12
3B200BB03
3B200BB11
3B200CA12
3B200CA13
3B200CA15
3B200DA02
3B200DA12
3B200DA15
3B200DB01
3B200DB11
(57)【要約】
【課題】本開示は、着用感が向上した吸収性物品を提供することを目的とする。
【解決手段】吸収性物品は、後身頃領域において幅方向の最大幅が形成され、吸収体と、吸収体よりも着用者の非肌面側に配置された非透水性の非肌面側シートと、を備え、吸収体は、前身頃領域から後身頃領域にかけて長手方向に延在し、股下領域における吸収体の幅が、前身頃領域及び後身頃領域における吸収体の幅未満で形成され、非肌面側シートは、前身頃領域から後身頃領域にかけて長手方向に延在し、更に、非肌面側シートは、前身頃領域及び股下領域における幅が略同等であり、且つ、後身頃領域における幅が、前身頃領域と股下領域における幅よりも広く形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った幅と、を有し、着用状態において着用者の腹側に位置する前身頃領域、股下に位置する股下領域、及び背側に位置する後身頃領域、が前記長手方向にこの順に設けられる吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、前記後身頃領域において前記幅方向の最大幅が形成され、吸収体と、前記吸収体よりも前記着用者の非肌面側に配置された非透水性の非肌面側シートと、を備え、
前記吸収体は、前記前身頃領域から前記後身頃領域にかけて前記長手方向に延在し、前記股下領域における前記吸収体の幅が、前記前身頃領域及び前記後身頃領域における前記吸収体の幅未満で形成され、
前記非肌面側シートは、前記前身頃領域から前記後身頃領域にかけて前記長手方向に延在し、更に、前記非肌面側シートは、前記前身頃領域及び前記股下領域における幅が略同等であり、且つ、前記後身頃領域における幅が、前記前身頃領域と前記股下領域における幅よりも広く形成されている、
吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体よりも前記着用者の肌面側に配置され、透水性を有する肌面側シートと、前記肌面側シートよりも前記肌面側に配置された非透水性の防漏シートによって形成された防漏壁であって、前記肌面側シートに接合されると共に前記肌面側シートとの接合端部を基端部として前記肌面側に立ち上がるように形成された防漏壁と、前記防漏壁に設けられた第1収縮部材と、を更に備え、
前記肌面側シートは、前記前身頃領域から前記後身頃領域にかけて前記長手方向に延在し、
前記防漏壁は、前記吸収体の前記幅方向の端部に沿うように前記前身頃領域から前記後身頃領域にかけて前記長手方向に延在し、且つ、前記前身頃領域における前記吸収体と重なる位置で前記肌面側シートと接合されており、
前記第1収縮部材は、前記幅方向における前記防漏壁の先端部において、前記前身頃領域から前記後身頃領域にかけて前記長手方向に伸長状態で延在するように設けられている、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
透水性を有する肌面側シートを更に備え、
前記肌面側シートは、前記吸収体の前記着用者の肌面側に配置され、前記前身頃領域から前記後身頃領域にかけて前記長手方向に延在し、
前記肌面側シートと前記吸収体とが、前記股下領域における少なくとも一部において非接着状態又は接着状態の解除が可能な状態である仮接着状態である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記非肌面側シートの前記長手方向に伸長状態で設けられる第2収縮部材を備え、
前記第2収縮部材は、前記股下領域において、前記吸収体よりも前記幅方向の外側に配置される、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記非肌面側シートの前記長手方向に伸長状態で設けられる第2収縮部材を備え、
前記非肌面側シートは、前記長手方向において、前記前身頃領域の長さが前記後身頃領域の長さ未満に形成され、
前記第2収縮部材は、前記股下領域において、前記吸収体よりも前記幅方向の外側に配置されると共に、前記前身頃領域と前記股下領域との境目から前記股下領域側へ延在する長さと、前記後身頃領域と前記股下領域との境目から前記後身頃領域側へ延在する長さと
、が略同等になるように設けられる、
請求項1に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用者から排出された尿などの排出液を吸収する吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、吸収性パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/114209号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品は、着用状態で着用者の肌に沿うことで着用感が向上する。本開示は、着用感が向上した吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る吸収性物品は、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った幅と、を有し、着用状態において着用者の腹側に位置する前身頃領域、股下に位置する股下領域、及び背側に位置する後身頃領域、が前記長手方向にこの順に設けられる吸収性物品であって、前記後身頃領域において前記幅方向の最大幅が形成され、前記吸収性物品は、吸収体と、前記吸収体よりも前記着用者の非肌面側に配置された非透水性の非肌面側シートと、を備え、前記吸収体は、前記前身頃領域から前記後身頃領域にかけて前記長手方向に延在し、前記股下領域における前記吸収体の幅が、前記前身頃領域及び前記後身頃領域における前記吸収体の幅未満で形成され、前記非肌面側シートは、前記前身頃領域から前記後身頃領域にかけて前記長手方向に延在し、更に、前記非肌面側シートは、前記前身頃領域及び前記股下領域における幅が略同等であり、且つ、前記後身頃領域における幅が、前記前身頃領域と前記股下領域における幅よりも広く形成されている、吸収性物品である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、吸収性物品の着用感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る吸収性パッドの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る吸収性パッドの分解斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る吸収性パッドを肌面側から視た平面図である。
図4図4は、実施形態に係る吸収性パッドを側面から視た側面図である。
図5図5は、実施形態に係る吸収性パッドを幅方向に沿って切断した断面図である。
図6図6は、実施形態の変形例1に係る吸収性パッドを肌面側から視た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本開示はこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0009】
<実施形態>
本実施形態では、交換式(使い捨て)の吸収性パッド1(本願でいう「吸収性物品」の一例)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が連接して位置している。また、吸収性パッド1が着用者に着用された状態(以下、「着用状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(着用された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(着用された状態で外側)を非肌面側とする。更に、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向のいずれにも直交する方向を幅方向とし、吸収性パッド1は幅方向に沿った幅を有する。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とし、厚み方向に直交し幅方向に平行な方向から視ることを側面視とする。また、本願で用いる方向に関する用語は、吸収性パッドが着用者に着用された状態において該着用者の前後左右に一致する方向を意味するものとする。例えば、本願で左右方向という場合、吸収性パッドが着用者に着用された状態において該着用者の左右に一致する方向を意味する。
【0010】
図1は、実施形態に係る吸収性パッド1の斜視図である。吸収性パッド1は、着用状態において着用者の陰部を覆う股下に対応する股下領域1Bと、股下領域1Bの腹部側に位置し、着用者の前身頃と腰回りに対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの背部側に位置し、着用者の後身頃と腰回りに対応する部位である後身頃領域1Rと、を有する。前身頃領域1F、後身頃領域1R、股下領域1Bには、股下領域1Bを中心に、平面形状が略瓢箪形状(砂時計形状)の吸収体6が組み込まれている。また、吸収体6は、着用者の肌面側に位置するトップシート7(本願でいう「肌面側シート」の一例)と、着用者の非肌面側に位置するバックシート4(本願でいう「非肌面側シート」の一例)と、の間に配置されている。また、着用者が排出した尿などの排出液の漏出防止のために、トップシート7の更に肌面側には防漏壁3BL,3BRが設けられている。但し、防漏壁3BL,3BRを設けない態様や、トップシート7がなく吸収体6が着用者と直接触れる態様でもよい。
【0011】
本実施形態では、吸収性パッド1は、後身頃領域1Rにおいて最大幅を有する形状を有している。より詳細には、吸収性パッド1は、後身頃領域1Rにおける幅が前身頃領域1Fと股下領域1Bにおける幅よりも広くなるように形成されている。つまり、吸収性パッド1は、前身頃領域1F側が狭く、後身頃領域1R側が広く形成されている。また、本実施形態に係る吸収性パッド1は、テープ型おむつやパンツ型おむつの肌面側に重ねて使用される。着用者が排出した尿などの排出液は、吸収性パッド1が吸収し保持するので、吸収性パッド1のみを交換し、おむつ自体は再利用することができる。なお、吸収性パッド1は、下衣肌着の肌面側に配置し、おむつと併用されることなく、単独で使用されてもよい。本実施形態では、吸収性パッド1が大人用(介護用)の吸収性パッドであるとして説明する。
【0012】
図2は、実施形態に係る吸収性パッド1の分解斜視図である。本実施形態において、吸収性パッド1は、トップシート7と、バックシート4と、トップシート7とバックシート4の間に配置された吸収体6と、吸収体6の幅方向の両端部に沿うようにトップシート7の肌面側に配置された、防漏壁3BL,3BR形成用の防漏シート3L,3Rと、を備える。本実施形態では、先述の構成が、肌面側から防漏シート3L,3R、トップシート7、吸収体6、バックシート4の順で積層された層構造を形成している。また、防漏シート3L,3R、トップシート7、吸収体6及びバックシート4の長手方向は、吸収性パッド1の長手方向と一致する。吸収性パッド1の長手方向における前身頃端部及び後身頃端部では、吸収体6は存在せず、トップシート7とバックシート4が接合されている。また、
幅方向における両端部でも、吸収体6は存在せず、防漏シート3L,3Rとバックシート4が接合されている。このように、吸収性パッド1においては、吸収体6の配置領域外においてトップシート7とバックシート4とが接合され、防漏シート3L,3Rとバックシート4とが接合されており、トップシート7とバックシート4との接合部と、防漏シート3L,3Rとバックシート4との接合部と、によって吸収体6が囲まれている。本実施形態では、トップシート7とバックシート4との接合やトップシート7と防漏シート3L,3Rとの接合は、ホットメルト接着剤による接着であるが、その他の態様で接合されていてもよい。
【0013】
図3は、実施形態に係る吸収性パッド1を肌面側から視た平面図である。吸収性パッド1は長手方向に延在し、防漏シート3L,3R、バックシート4、吸収体6、トップシート7は、いずれも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、吸収性パッド1によって着用者の陰部を覆うと、バックシート4と吸収体6とトップシート7の各長手方向において、前身頃領域1F側の端部は着用者の腹側に、後身頃領域1R側の端部は着用者の背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体6に覆われる状態となる。したがって、着用者が仰臥位を取っている場合でも、伏臥位を取っている場合でも、排出液はトップシート7を介して吸収体6に進入することになる。なお、本実施形態に係る吸収性パッド1は、長手方向において、前身頃領域1Fの長さは後身頃領域1Rの長さ未満で形成されているが、本開示はその限りではない。
【0014】
本実施形態に係る吸収性パッド1において、バックシート4の非肌面側には、弾性体2L,2R(本願でいう「第2収縮部材」の一例)が設けられておらず、レグギャザーは形成されていない。
【0015】
トップシート7は、吸収体6の吸水面を被覆するように肌面側に配置される。トップシート7は、熱可塑性樹脂の繊維を含んで形成されたスパンボンド不織布や、エアスルー不織布などからなる。このトップシート7は、その一部又は全部において透水性(液透過性)を有する。そのため、吸収性パッド1の着用状態において、着用者から排出された排出液は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸収体6に進入し、そこで吸収される。また、トップシート7は親水性を有していてもよい。
【0016】
また、本実施形態に係る吸収性パッド1において、トップシート7よりも肌面側には、防漏壁3BL,3BR(本願でいう「防漏壁」の一例)を形成するための非透水性の防漏シート3L,3Rが、吸収体6の幅方向の端部に沿うように前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにかけて長手方向に延在し、配置されている。また、少なくとも前身頃領域1Fにおける吸収体6と重なる位置で、防漏シート3L,3Rとトップシート7とが接合されている。本実施形態では、防漏シート3L,3Rとトップシート7は、前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにかけて長手方向に延在する接合端部3LL,3LRで接続されている。また、防漏シート3L,3Rは、バックシート4の幅方向のそれぞれの両端部における長手方向に沿うように接合されている。これによると、防漏壁3BLは接合端部3LLを基端部として、防漏壁3BRは接合端部3LRを基端部として、それぞれ厚み方向において肌面側に立ち上がるように形成され、着用者が排出した排出液が防漏壁3BL,3BRよりも幅方向外側に漏れ出すことを抑制できる。
【0017】
防漏壁3BLには弾性体3ELが、防漏壁3BRには弾性体3ERがそれぞれ設けられている(本願でいう「第1収縮部材」の一例)。弾性体3EL,3ERは、幅方向における防漏壁3BL,3BRの先端部において、前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにかけて長手方向に伸長状態で延在するように設けられている。防漏壁3BL,3BRの先端部とは、防漏壁3BL,3BRにおいて、接合端部3LL,3LRよりも幅方向内側に存在す
る他端である端部である。このように弾性体3EL,3ERを伸長状態で配置することで、少なくとも防漏シート3L,3Rを収縮させ、防漏壁3BL,3BRが厚み方向において肌面側へ立ち上がる状態になりやすくなる。これにより、より一層着用者の排出液の漏出防止に寄与する。なお、弾性体3EL,3ERを構成する弾性部材として、糸ゴムや帯状のゴムなどを適宜選択できる。
【0018】
吸収体6は、液体を吸収する吸収コアと、吸収コアを包み込むコアラップシートとを有する。吸収コアは、パルプ繊維、レーヨン繊維、又はコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンテレフタレートなどの合成繊維に親水化処理を施した短繊維によって形成されている。コアラップシートには、透液性を有する不織布が用いられる。本実施形態では、コアラップシートにティッシュが用いられている。本実施形態では、吸収体6が前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにかけて長手方向に延在している。また、吸収体6の幅方向において、股下領域1Bにおける吸収体6の幅が、前身頃領域1F及び後身頃領域1Rにおける吸収体6の幅未満で形成されている。そのため、吸収体6は、股下領域1Bの一部に最小幅が形成されるような略瓢箪形状(砂時計形状)の平面形状を有する。吸収体6は、股下領域1Bに幅方向に最も幅狭な最小幅部分を有することで、吸収性パッド1が折れ曲がる際に応力を集中させやすくできる。なお、吸収体6の構成の詳細については後述する。但し、吸収体6の平面形状は適宜変更してもよい。
【0019】
バックシート4は、吸収体6の非吸水面を被覆するように着用者の非肌面側に配置される。図3に示すように、バックシート4の前身頃領域1Fにおける幅と股下領域1Bにおける幅とが略同等となっている。更に、バックシート4の後身頃領域1Rにおける幅は、前身頃領域1Fにおける幅及び股下領域1Bにおける幅よりも広くなっている。つまり、バックシート4は、幅方向において、着用者の腹側(前身頃側)が狭く、背側(後身頃側)が広くなるような羽子板状の平面形状を有する。バックシート4は、排出物の漏れを抑制するために非透液性の熱可塑性樹脂を材料として形成されており、更に、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。本実施形態では、外装面を形成するシートがフィルムのバックシート4だが、これに限らず、例えば、不織布のバックシートであってもよい。また、本実施形態のバックシート4は、長手方向において、前身頃領域1Fの長さが、後身頃領域1Rの長さ未満に形成されているが、これに限定されない。
【0020】
先述のように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにかけて長手方向に延在している。また、吸収体6は、股下領域1Bにおける吸収体6の幅が、前身頃領域1F及び後身頃領域1Rにおける吸収体6の幅未満で形成されている。また、バックシート4は、前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにかけて長手方向に延在しており、更に、バックシート4は、前身頃領域1F及び股下領域1Bにおける幅が略同等であり、且つ、後身頃領域1Rにおける幅が、前身頃領域1Fと股下領域1Bにおける幅よりも広く形成されている。このような吸収性パッド1によると、着用者の股下に吸収性パッド1をあてがう際には、股下領域1Bと後身頃領域1Rの境界が分かりやすくなり、着用状態では、吸収性パッド1がずれていた際に、着用者に股下領域1Bでの装着位置の違和感を覚えさせることができるため、着用者に股下部の位置を把握させる一助となる。また、吸収性パッド1の形状は、目視でも着用者の股下部に位置する股下領域1Bの位置を確認しやすくなるため、介助者による装着に際しても有用である。
【0021】
図4は、実施形態に係る、吸収性パッド1を側面から視た側面図である。本実施形態に係る吸収性パッド1は、前身頃領域1Fを肌面側に立ち上げやすくなっている。詳細には、股下領域1Bにおける吸収体6の幅が、前身頃領域1F及び後身頃領域1Rにおける吸収体6の幅未満で形成され、股下領域1Bに吸収体6の最小幅箇所を有するため、当該最
小幅箇所に吸収性パッド1を折り曲げる動作をする際の応力が集中しやすくなり、且つバックシート4の前身頃領域1F側が幅狭に形成され、後身頃領域1R側が幅広に形成されるため。つまり、吸収性パッド1の後身頃領域1Rを手前側としたときに、前身頃領域1Fが手前に向かうように持ち上げることができる。これにより、非着用状態においては、吸収性パッド1がパッケージから取り出した後に着用者に装着しやすい形状に自ら変形する。また、着用状態においては、吸収性パッド1の特に前身頃領域1Fを着用者の腹に沿わせることができる。更に、防漏壁3BL,3BRに弾性体3EL,3ERが設けられている場合、弾性体3EL,3ERの収縮力が、吸収性パッド1の前身頃領域1Fを肌面側に立ち上げやすくする一助となる。
【0022】
本実施形態に係る吸収性パッド1は、着用者の形状に沿った状態を維持するため、着用状態の正誤の認識を感覚的に促すと共に着用感の向上を期待できる。また、着用者に対し、感覚的に着用状態の正誤を伝達するため、製造工程においてバックシート4に装着時の位置合わせのための刻印を、着用状態の位置に合わせて印刷するなどの手間が無くなる。バックシート4への印刷の必要性がないため、印刷ずれなどで吸収性パッド1の適切な着用状態を提供できない虞を解消できる。
【0023】
また、先述の通り、バックシート4は幅方向において、前身頃領域1F側が幅狭に形成され、後身頃領域1R側が幅広に形成される。また、バックシート4の股下領域1Bにおいて当該幅狭部分と当該幅広領域をつなぐ移行領域を形成していてもよい。この形状に合わせ、防漏壁3BL,3BRの幅方向外側の端部も、バックシート4の幅方向外側の端部形状に沿っていることが好ましい。また、バックシート4における股下領域1Bの当該移行領域は、吸収体6の最小幅が形成される領域と略同等であることが好ましい。これにより、バックシート4及び防漏壁3BL,3BRの当該移行領域と、吸収体6の最小幅が形成される領域と、に吸収性パッド1が折れ曲がる際に応力を更に集中させやすくできる。
【0024】
図5は、実施形態に係る吸収性パッド1を幅方向に沿って切断した断面図である。具体的には、図5は、図3のA-A線に沿って切断した断面図である。本実施形態に係る吸収性パッド1の吸収体6は、吸収コア6Cと、吸収コア6Cを包み込むコアラップシート6Wを有する。吸収コア6Cは、複数の吸収マットが積層して形成されている。より詳しくは、吸収コア6Cは、着用者の肌面側に設けられた上層吸収マット6Aと、着用者の非肌面側に設けられた下層吸収マット6Bとを有する。また、吸収コア6Cは、上層吸収マット6Aと下層吸収マット6Bとの間にSAP層6Sを有する。SAP層6Sは、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)の粒状が複数集まることによって形成されている。SAP層6Sは、吸収体6の幅方向中央部の外側に配置されており、吸収体6の長手方向に沿って延在している。SAP層6Sは幅方向に互いに対称に設けられている。
【0025】
本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤など)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマーなどを挙げることができる。なお、上層吸収マット6A及び下層吸収マット6Bの短繊維間にSAPの粒子が配置されていてもよい。
【0026】
コアラップシート6Wは、薄い透液性のシートであり、吸収コア6Cをコアラップシート6Wで包むことにより、SAP層6SのSAPの粒子が吸収体6の外部にこぼれるのを防いでいる。また、吸収コア6Cをコアラップシート6Wで包むことにより吸収コア6C
の型崩れが抑制される。コアラップシート6Wは、不織布又はパルプ繊維で形成することができ、パルプ繊維の一例としてはティッシュペーパーを用いることができる。なお、吸収体6はバックシート4とトップシート7に包まれており、これらのシートによっても型崩れを抑制できるため、コアラップシート6Wを設けない構成としてもよい。なお、図4に示す構成では、コアラップシート6Wは、吸収コア6Cの肌面側であるトップシート7側を覆う上層コアラップシート6WAと、吸収コア6Cの非肌面側であるバックシート4側と、吸収コア6Cの側面側を覆う下層コアラップシート6WBの2枚のシートから構成されている。上層コアラップシート6WAと下層コアラップシート6WBは、吸収コア6Cの肌面側の幅方向両端部において積層され、互いに接合されている。このため、吸収体6の肌面側は上層コアラップシート6WAから構成され、吸収体6の側面側と非肌面側は、下層コアラップシート6WBから構成されている。
【0027】
本実施形態に係る吸収性パッド1において、トップシート7と吸収体6とは、少なくとも一部において非接着状態又は接着状態の解除が可能な状態である仮接着状態である。ここで、非接着状態とは、トップシート7と吸収体6が全く接着されていないことをいう。また、仮接着状態とは、吸収性パッド1を破るなどの破壊をすることなく、トップシート7を吸収体6から引き剥がせる程度の強さの接着状態をいう。仮接着状態は、接着領域と非接着領域との割合を調整したり、接着剤の性能や塗布量を調整したりするなどして仮接着状態を形成できる。非接着状態及び仮接着状態は、トップシート7が吸収体6から剥がれ易い状態である。
【0028】
本実施形態に係る吸収性パッド1は、トップシート7の少なくとも一部を吸収体6から剥がれ易くし、尿などの水分を含んだトップシート7が着用者の肌面に貼り付くように構成されている。また、先述の通り、本実施形態に係る吸収性パッド1は、吸収体6において、股下領域1Bの一部に最小幅が形成されており、当該最小幅箇所を起点に折れ曲がるように構成されている。このように折れ曲がった際に、折れ曲がった形状が着用者の体系に沿わない場合でも、トップシート7と吸収体6とが剥がれ易くすることで、トップシート7が着用者の肌面に張り付きやすくなる。これにより、本実施形態に係る吸収性パッド1は、着用者への固定力を向上させることで、おむつ内での位置ずれを抑制することができ、以って、着用感を向上させることができる。なお、トップシート7は、吸収性パッド1の他の部材と比較して剛性が圧倒的に小さいため、肌に密着しやすく、肌に貼り付きやすい。
【0029】
トップシート7と防漏シート3L,3Rとの接合には、例えばホットメルト接着剤が用いられている。ホットメルト接着剤が、図5に示すトップシート7上に塗布され、吸収体6上に防漏シート3L,3Rが配置された後、トップシート7と防漏シート3L,3Rとがローラによってプレスされる。これにより、トップシート7と防漏シート3L,3Rとが接着状態とされ、接合端部3LL,3LRが形成される。防漏シート3L,3Rにより形成された防漏壁3BL,3BRにはそれぞれ、伸長状態で弾性体3EL,3ERが設けられているため、防漏壁3BL,3BRが縮む方向に付勢される。そのため、接合端部3LL,3LRを基端部とし、防漏壁3BL,3BRが厚み方向において肌面側へ起立状態になりやすく、着用者の排出液の漏出防止に寄与すると共に着用感の向上を期待できる。
【0030】
一般的に、吸収性パッドは、先述の通り、おむつと組み合わせて使用される場合が多い。パンツ型のおむつやテープ型のおむつは、着用者のウエスト部分で固定される。しかしながら、吸収性パッドは、おむつの肌面側に配置されるものの、着用者に対して直接的に固定されないので、吸収性パッドがおむつ内で位置ずれを起こす虞がある。本実施形態に係る吸収性パッド1は、着用者に対しての固定力を向上させることを目的とし、両面テープなどを用いてもよい。より詳しくは、例えば、吸収性パッド1のバックシート4の非肌面側に両面テープを設け、おむつなどと接着する態様などが考えられる。但し、バックシ
ート4に両面テープなどを設けることなく、すなわち、使用する材料を低減させつつ、例えば摩擦力の強い素材をバックシート4に用いるなどして位置ずれを抑制してもよい。
【0031】
また、一般的に、外装面が滑りやすい資材で構成された吸収性パッドは、組み合わせて用いられるおむつやホルダーパンツ内において位置ずれを起こさないようにするため、静摩擦係数を高めるために不織布などを積層したりするなどの方法で摩擦力を高めることがある。市販されている吸収性パッドにおいては、不織布が用いられるカバーシートが外装面を形成していることが多い。一方、本実施形態に係る吸収性パッド1は、カバーシートを備えておらず、バックシート4が非肌面側の外装面を形成している。本実施形態に係る吸収性パッド1において、バックシート4は、非透液性を有するシート材(例えば、フィルム)が用いられる。このようなバックシート4は、不織布のカバーシートよりも静摩擦係数が小さく、カバーシートよりも滑りやすい。しかしながら、本実施形態に係る吸収性パッド1は、トップシート7が着用者に密着することで、位置ずれを防止することができる。
【0032】
<変形例1>
次に、実施形態の変形例1に係る吸収性パッド1について説明する。図6は、変形例1に係る吸収性パッド1を肌面側から視た平面図である。変形例1に係る吸収性パッド1には、弾性体2L,2R(本願でいう「第2収縮部材」の一例)が、バックシート4の長手方向に伸長状態で設けられている。本変形例では、弾性体2L,2Rはバックシート4の非肌面側に設けられており、弾性体2L,2Rの収縮力によって、少なくともバックシート4を収縮させ、着用者の大腿部に沿うレグギャザーが形成される。レグギャザーが着用者の大腿部に沿うことにより、着用者から排出される排出液は、吸収性パッド1からほとんど漏出することなく吸収性パッド1の吸収体6に吸収される。なお、弾性体2L,2Rを構成する弾性部材として、糸ゴムや帯状のゴムなどを適宜選択できる。但し、弾性体2L,2Rは、更に複数本の糸ゴムを平行させ配置してもよい。
【0033】
本変形例では、弾性体2L,2Rは、股下領域1Bにおいて、吸収体6よりも幅方向の外側に配置されている。また、弾性体2L,2Rはバックシート4に設けられ、前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにかけての少なくとも一部に延在している。本変形例では、弾性体2L,2Rそれぞれが、長手方向において前身頃領域1Fと股下領域1Bの境目から前身頃領域1F側への長さと、後身頃領域1Rと股下領域1Bとの境目から後身頃領域1R側への長さと、が略同等な2本の糸ゴムによって構成されている。但し、弾性体2L,2Rが股下領域1Bにおいて、吸収体6よりも幅方向の外側に配置されていれば、弾性体2L,2Rの長手方向において延在する位置は適宜変更してもよい。
【0034】
弾性体2L,2Rが配置されていることによって、弾性体2L,2Rの収縮力がバックシート4の前身頃領域1F側を後身頃領域1R側へ、吸収体6の最小幅箇所を起点に持ち上げやすくなる一助となる。また、本変形例では、バックシート4が長手方向において、前身頃領域1Fの長さが、後身頃領域1Rの長さ未満に形成されると共に、弾性体2L,2Rそれぞれが、長手方向において前身頃領域1Fと股下領域1Bの境目から前身頃領域1F側への長さと、後身頃領域1Rと股下領域1Bとの境目から後身頃領域1R側への長さと、が略同等に配置されるため、長手方向において、レグギャザーが前身頃領域1F側の端部へ延在したとしても、後身頃領域1R側の端部までは延在しない態様となる。つまり、長手方向の長さが相対的に短い前身頃領域1Fが、長手方向の長さが相対的に長い後身頃領域1R側に持ち上げられやすくなる態様で構成されている。
【0035】
<変形例2>
次に、実施形態の変形例2に係る吸収性パッド1について説明する。変形例2に係る吸収性パッド1において、トップシート7の肌面側には、防漏壁3BL,3BRを形成する
非透水性の防漏シート3L,3Rが設けられておらず、トップシート7は、幅方向の全面において最も着用者側に配置されている。通常、吸収性パッド1は、組み合わせて使用されるおむつの一対の防漏壁の間に配置される。吸収性パッド1は、防漏シートを有さないことによって、トップシート7がおむつの防漏壁に接触する。このような状態で着用者が排出した液体がトップシート7の幅方向全域に伝わることで、トップシート7とおむつの防漏壁との間に水分が存在するようになり、両者間の表面張力によってトップシート7とおむつの防漏壁とが密着し、吸収性パッド1の位置ずれを抑制できる。また、吸収性パッド1から排出液が漏れておむつとバックシート4の間に排出液が進入する場合も想定される。バックシート4とおむつのトップシートの間に水分が存在することで、両者間の表面張力によってバックシート4とおむつのトップシートとが密着し、吸収性パッド1の位置ずれを抑制できる。
【0036】
また、防漏壁3BL,3BRが存在しない場合、トップシート7及びバックシート4は、吸収体6よりも幅方向に長く、吸収体6の幅方向端部よりも外側にも存在していてもよい。更に、トップシート7は、バックシート4よりも幅方向に長く、且つ、バックシート4の幅方向端部よりも外側に延在していてもよい。これによると、トップシート7は、吸収性パッド1内で最も幅方向外側に出ており、組み合わせて使用されるおむつなどの資材に接する。トップシート7は、着用者が排出した尿などで濡れて、おむつなどの資材に密着するため、このトップシート7による密着力によっても位置ずれを抑制できる。また、おむつの交換頻度は、吸収性パッド1よりも低く、おむつのトップシートが濡れた状態で新しい吸収性パッド1がおむつ内に配置される場合もある。この場合、幅方向の外側に延在する部分がおむつのトップシートに接して濡れた状態となり、トップシート7がおむつのトップシートに密着するため、吸収性パッド1は、位置ずれを抑制できる。
【0037】
以上、本開示に係る実施形態について説明したが、本開示の内容は先述した実施形態に限られるものではない。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 :吸収性パッド
1B :股下領域
1F :前身頃領域
1R :後身頃領域
3BL,3BR :防漏壁
2L,2R・3EL,3ER:弾性体
3L,3R :防漏シート
4 :バックシート
6 :吸収体
6C :吸収コア
6A :上層吸収マット
6B :下層吸収マット
6W :コアラップシート
6WA :上層コアラップシート
6WB :下層コアラップシート
6S :SAP層
図1
図2
図3
図4
図5
図6