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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011883
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】フューエルレール
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
F02M55/02 330C
F02M55/02 350A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114192
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有川 俊一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】椋 海斗
(72)【発明者】
【氏名】大石 優斗
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066BA46
3G066BA63
(57)【要約】
【課題】重量増加を抑えつつ、主管及び分配管の接合部における応力を効率良く抑制した耐久性に優れるフューエルレールを提供する
【解決手段】軸方向に燃料流路20を有し、径方向に貫通する貫通孔21が形成された主管2と、貫通孔21において主管2に接合され、貫通孔を介して燃料流路に連通する分配流路30を有する分配管3と、を備え、分配管は、一方側端部に一体形成されたフランジ31を有し、フランジにおいてろう付けにより主管と接合され、フランジが、主管の外周面に沿って分配流路の径方向外側に広がり、フランジの外周縁部は、フランジ端部へ向かうにつれて漸減する肉厚又は均一な肉厚に形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に燃料流路を有し、径方向に貫通する貫通孔が形成された主管と、
前記貫通孔において前記主管に接合され、前記貫通孔を介して前記燃料流路に連通する分配流路を有する分配管と、を備え、
前記分配管は、一方側端部に一体形成されたフランジを有し、前記フランジにおいてろう付けにより前記主管と接合され、
前記フランジが、前記主管の外周面に沿って前記分配流路の径方向外側に広がり、
前記フランジの外周縁部は、フランジ端部へ向かうにつれて漸減する肉厚又は均一な肉厚に形成されていることを特徴とするフューエルレール。
【請求項2】
前記主管の肉厚の値をt1、前記フランジの肉厚の値をt2としたとき、下記式(1)が成り立つことを特徴とする請求項1に記載のフューエルレール。
t2/t1≦2.5 ・・・(1)
【請求項3】
前記フランジは、前記貫通孔において前記主管の軸方向と直交する方向から見た際、前記主管の径方向の寸法よりも、前記主管の軸方向の寸法が長いことを特徴とする請求項2に記載のフューエルレール。
【請求項4】
前記貫通孔における前記主管の法線方向を高さ方向とし、前記貫通孔において前記主管に外接する接線から前記フランジ端部までを該高さ方向に計測した寸法をH、前記主管の外径をφAとしたとき、下記式(2)が成り立つことを特徴とする請求項3に記載のフューエルレール。
H≦φA/2 ・・・(2)
【請求項5】
前記分配流路は、前記燃料流路から近い順に、前記燃料流路よりも径の小さい主分配流路と、該主分配流路よりも径の小さい縮径部と、該主分配流路よりも径の大きい拡径部とを、連通して形成されていること特徴とする請求項4に記載のフューエルレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フューエルレールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料タンクから供給されたガソリン等の燃料を、主管から分配管を介して、複数の燃料噴射装置へ分配するフューエルレールが知られている。燃料は、燃料ポンプによって加圧された状態でフューエルレールに供給されるため、主管及び分配管内に高い内圧が負荷される。この内圧に起因して、フューエルレールは、主管及び分配管の接合部に引張り応力が発生する。
【0003】
特許文献1には、筒状部材(主管)の外周における分岐孔との対応位置に、リング部材(分配管)を外嵌し、リング部材から筒状部材への相対的な縮径方向の締付け力により、筒状部材のレール孔内壁における分岐孔の開口周辺部に圧縮残留応力を付与し、加圧燃料の内圧に起因する引張り応力を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-221126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、リング部材が筒状部材に外嵌される構成であるため、リング部材がフューエルレールの重量を増加させる要因となることや、組立て性が悪いという問題がある。また、リング部材と筒状部材の接合は焼きばめよって行われており、焼きばめ後に生じる応力を考慮すると、筒状部材の肉厚を厚くする必要があると考えられ、フューエルレールの重量増加を避けられない。
【0006】
また、このような構成のリング部材をろう付けにより接合した場合は、接合部分の面積が広いため、筒状部材とリング部材との隙間においてろう材の分布が不均一になりやすく、強度不足部分が生じるおそれもある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、重量増加を抑えつつ、主管及び分配管の接合部における応力を効率良く抑制した耐久性に優れるフューエルレールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、分配管に一体形成されたフランジを設け、フランジにおいて分配管を主管とろう付けするものとした。
【0009】
具体的には、第1の発明では、
軸方向に燃料流路を有し、径方向に貫通する貫通孔が形成された主管と、
前記貫通孔において前記主管に接合され、前記貫通孔を介して前記燃料流路に連通する分配流路を有する分配管と、を備え、
前記分配管は、一方側端部に一体形成されたフランジを有し、前記フランジにおいてろう付けにより前記主管と接合され、
前記フランジが、前記主管の外周面に沿って前記分配流路の径方向外側に広がり、
前記フランジの外周縁部は、フランジ端部へ向かうにつれて漸減する肉厚又は均一な肉厚に形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によると、フランジによって分配管と主管との接合部の断面積変化が緩やかになる。そのため、燃料流路の内圧により、接合部周辺に応力が発生しても、応力の集中が低減される。フランジによって主管及び分配管の接合部における応力を効率良く抑制できるので、耐久性を高めるために主管や分配管の肉厚を増やす必要がなく、フューエルレールの重量増加を抑えつつ、耐久性を高めることができる。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
前記主管の肉厚の値をt1、前記フランジの肉厚の値をt2としたとき、
t2/t1≦2.5
が成り立つことを特徴とする。
【0012】
上記の構成によると、応力低減の効果が十分に得られるため、主管やフランジの肉厚を必要以上に厚くする必要がなく、主管及び分配管の接合部における応力をより効率的に抑制することが可能となる。
【0013】
第3の発明では、第2の発明において、
前記フランジは、前記貫通孔において前記主管の軸方向と直交する方向から見た際、前記主管の径方向の寸法よりも、前記主管の軸方向の寸法が長いことを特徴とする。
【0014】
上記の構成によると、主管及び分配管の接合部における応力を更に効率的に抑制することが可能となる。
【0015】
第5の発明は、第3の発明において、
前記貫通孔における前記主管の法線方向を高さ方向とし、前記貫通孔において前記主管に外接する接線から前記フランジ端部までを該高さ方向に計測した寸法をH、前記主管の外径をφAとしたとき、
H≦φA/2
が成り立つことを特徴とする。
【0016】
上記の構成によると、このような高さのフランジにより応力低減の効果は十分に得られるため、フューエルレールの重量を増加させることなく主管及び分配管の接合部における応力を効率的に抑制することが可能となる。
【0017】
第6の発明は、第5の発明において、
前記分配流路は、前記燃料流路から近い順に、前記燃料流路よりも径の小さい主分配流路と、該主分配流路よりも径の小さい縮径部と、該主分配流路よりも径の大きい拡径部とを、連通して形成されていること特徴とする。
【0018】
上記の構成によると、燃料の圧力脈動を抑えることができるため、より耐久性及びNVH性能に優れたフューエルレールを提供できる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、分配管に一体形成されたフランジを設けることで、重量増加を抑えつつ、主管及び分配管の接合部における応力を効率良く抑制したフューエルレールを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るフューエルレールの斜視図である。
図2】主管及び分配管の接合部の断面図である。
図3】分配管のフランジを主管側から見た図である。
図4】本発明の実施形態に係るフューエルレールの概略端面図である。
図5図4の一部拡大図である。
図6】主管及び分配管の接合部の応力解析結果を示すコンター図である。
図7】主管及び分配管の接合部の応力解析結果を示すコンター図である。
図8】t2/t1とCAE解析による応力値の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るフューエルレールの斜視図であり、図1に示すように、本実施形態のフューエルレール1は、円筒状の主管2と、主管2に接合される複数の分配管3と、各分配管3の先端に取り付けられた燃料噴射装置4と、を備える。主管2の両端はエンドキャップ5により閉塞される。主管2の一方側端部には、主管2内へ燃料を供給するための入口としてインレット6が設けられる。主管2の他方側端部には、センサポート7を介して、高圧センサ(不図示)が取り付けられる。
【0023】
ガソリン等の燃料は、燃料タンク(不図示)からインレット6を介して主管2へ供給される。燃料は、主管2から分配管3へ分配され、各燃料噴射装置4から吸気管(不図示)やシリンダー(不図示)内へ噴射される。
【0024】
図2は、主管及び分配管の接合部の断面図であり、主管2の軸方向と平行な面で切断した断面図である。主管2は、図2に示すように、軸方向に延びる燃料流路20を有し、径方向に貫通する貫通孔21が複数形成される。
【0025】
分配管3は、貫通孔21において主管2に接合され、貫通孔21を介して燃料流路20に連通する分配流路30を有する。分配管3は、一方側端部に一体形成されたフランジ31を有する。分配管3は、フランジ31においてろう付けにより主管2と接合される。本実施形態において、主管2と分配管3は互いに長手方向が略直交するように接合されている。
【0026】
フランジ31は、主管2の外周面に沿って分配流路30の径方向外側に広がっている。フランジ31の外周縁部は、フランジ端部へ向かうにつれて漸減する肉厚又は均一な肉厚に形成されていることが好ましい。
【0027】
図3は、フランジを主管側から見た図である。図3に示すように、貫通孔21において主管2の軸方向と直交する方向から見ると、フランジ31は、主管2の径方向の寸法よりも、主管2の軸方向の寸法が長い。このように、フランジ31は、主管2側から見て楕円形状であることが好ましい。
【0028】
図4及び図5は、フューエルレール1を主管2の径方向と平行な面で切断した端面図である。図4及び図5に示すように、主管2の軸方向から見ると、フランジ31は、主管2の周方向に延び、主管2の外周に沿って湾曲している。フランジ31は、分配流路30の端部において、径方向外側に環状に窪む凹部を有する。フランジ31の凹部と主管2の間に環状のろう材8が挟み込まれた状態で、フューエルレール1が炉内において加熱されると、フランジ31と主管2の外周面との隙間に溶融したろう材8が流れ込み、主管2と分配管3が接合される。
【0029】
分配流路30は、燃料流路20から近い順に、燃料流路20よりも径の小さい主分配流路30aと、主分配流路30aよりも径の小さい縮径部30bと、主分配流路30aよりも径の大きい拡径部30cとを、連通して形成されている。拡径部30cには、燃料噴射装置4の端部が挿入されている。
【0030】
図5に示すように、貫通孔21における主管2の法線方向を高さ方向とし、貫通孔21において主管2に外接する接線からフランジ31の端部までを高さ方向に計測した寸法をH、主管2の外径をφAとしたとき、下記式(1)
H≦φA/2 ・・・(1)
が成り立つことが好ましい。
【0031】
図5に示すように、主管2の軸方向に平行な方向から見たとき、フランジ31の高さHは、主管2の外径φAの1/2以下であれば、主管2と分配管3の接合部に生じる応力を十分に低減できる。フランジ31の高さHが、主管2の外径φAの1/2よりも大きい場合、主管2とフランジ31との接合面積が広くなるため、主管2とフランジ31の隙間に流れ込むろう材が均一に広がり難く、強度の弱い接合部分が生じるおそれがある。
【0032】
図6は、フランジ31を備えない分配管3を主管2へろう付けした際の応力の解析結果を示すコンター図であり、図7は、本実施形態のフランジ31を備える分配管3を主管2へろう付けした際の応力の解析結果を示すコンター図である。図6の応力集中箇所δ0に対応する図7の応力集中箇所δ1は、δ0よりも応力が低減されていた。
【0033】
図8は、CAE応力解析の結果を示し、CAE応力(MPa)を縦軸、t2/t1を横軸として、CAE応力及びt2/t1の関係を示すグラフである。なお、図2に示すように、t1は主管2の肉厚の値であり、t2はフランジ31の肉厚の値である。また、Lは主管2の長手方向における分配管3の外周面からフランジ端部までの寸法であり、フランジ31の長さを示す。
【0034】
図8より、フランジを備えない分配管を主管へろう付けした際の主管と分配管との接合部δ0の応力値と比較して、本実施形態のフランジ31を備える分配管3を主管2へろう付けした際の主管と分配管との接合部δ1の応力値を比較した。フランジ31を備える場合の接合部δ1の応力値は、t2/t1が3のとき、フランジ31の長さLを変化させても応力の低下がほとんど見られないが、t2/t1が2.5以下のとき、フランジ31の長さLを長くしていくことで顕著な低下が見られた。
【0035】
そのため、主管2の肉厚の値t1とフランジ31の肉厚の最大値t2は、下記式(2)
t2/t1≦2.5 ・・・(2)
を満たすことが好ましく、より好ましくは、t2/t1≦2.0である。
【0036】
また図8から、フランジ31の長さLは、7.5mmで十分な応力低減が見られる。フランジ31長さLを必要以上に長くすると、主管2とフランジ31との接合面積が広くなるため、主管2とフランジ31の隙間に流れ込むろう材が均一に広がり難く、強度の弱い接合部分が生じるおそれがあるため、本実施形態においてフランジ31の長さLは2.5mm~7.5mmが好ましい。
【0037】
以上のように構成した本実施形態のフューエルレール1は、フランジ31によって分配管3と主管2との接合部の断面積変化が緩やかになる。そのため、燃料流路20の内圧により、接合部周辺に応力が発生しても、応力の集中が低減される。フランジによって主管及び分配管の接合部における応力を効率良く抑制できるので、耐久性を高めるために主管や分配管の肉厚を増やす必要がなく、フューエルレールの重量増加を抑えつつ、耐久性を高めることができる。
【0038】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0039】
1 フューエルレール
2 主管
3 分配管
4 燃料噴射装置
5 エンドキャップ
6 インレット
7 センサポート
8 ろう材
20 燃料流路
21 貫通孔
30 分配流路
30a 主分配流路
30b 縮径部
30c 拡径部
31 フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8