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  • 特開-散水板および散水板の製造方法 図1
  • 特開-散水板および散水板の製造方法 図2
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  • 特開-散水板および散水板の製造方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118831
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】散水板および散水板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/18 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
B05B1/18 101
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025372
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】597030464
【氏名又は名称】株式会社アラミック
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏彦
【テーマコード(参考)】
4F033
【Fターム(参考)】
4F033AA11
4F033BA04
4F033DA01
4F033JA06
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】散水孔から吐出される水流の乱れを抑制することが可能な散水板を提供する。
【解決手段】散水板100は、板厚方向に対して傾斜した方向に散水する散水孔2を備えるものである。散水孔2は、流入側開放端21および流出側開放端22を有する。流入側開放端21は、板厚方向から見た場合に長孔状である。流出側開放端22は、板厚方向から見た場合に円孔状であり、流入側開放端21の中心に対して一方側にずれた位置に配置されている。散水孔2には、一方側とは反対の他方側に水溜まり部23が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚方向に対して傾斜した方向に散水する散水孔を備える散水板であって、
前記散水孔は、流入側開放端および流出側開放端を有し、
前記流入側開放端は、板厚方向から見た場合に長孔状であり、
前記流出側開放端は、板厚方向から見た場合に円孔状であり、前記流入側開放端の中心に対して一方側にずれた位置に配置され、
前記散水孔には、前記一方側とは反対の他方側に水溜まり部が形成されていることを特徴とする散水板。
【請求項2】
板厚方向に対して傾斜した方向に散水する散水孔を備える散水板の製造方法であって、
金属板の上面に第1レジスト層を形成するステップと、
前記金属板の下面に第2レジスト層を形成するステップと、
前記第1レジスト層に長孔状の第1開口部を形成するステップと、
前記第2レジスト層に円孔状の第2開口部を形成するステップと、
前記金属板を両面からエッチングして前記散水孔を形成するステップとを備え、
前記第2開口部を形成するステップでは、前記第2開口部が前記第1開口部と対応する位置に配置されるとともに、前記第2開口部が前記第1開口部の中心に対して一方側にずれた位置に配置され、
前記散水孔を形成するステップでは、前記散水孔に、前記一方側とは反対の他方側に水溜まり部が形成されることを特徴とする散水板の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の散水板の製造方法において、
前記散水孔を形成するステップでは、前記金属板の上面に前記第1開口部を介して第1凹部を形成するとともに、前記金属板の下面に前記第2開口部を介して第2凹部を形成し、前記第1凹部および前記第2凹部が連通されることによって前記散水孔が形成され、
前記第1凹部が前記第2凹部よりも深く、前記第1凹部により前記水溜まり部が形成されることを特徴とする散水板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散水板および散水板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板厚方向に対して傾斜した方向に散水する散水孔を備える散水板が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の散水板では、金属板の両面から偏心させてエッチングすることによって散水孔が形成されている。この散水孔では、流入側開放端と流出側開放端とがずらされており、傾斜した方向に散水することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-276000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記した従来の散水板では、散水孔から吐出される水流に乱れが発生することがある。
【0006】
本発明の一の目的は、散水孔から吐出される水流の乱れを抑制することが可能な散水板を提供することである。本発明の他の目的は、散水孔から吐出される水流の乱れが抑制される散水板を得ることが可能な散水板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による散水板は、板厚方向に対して傾斜した方向に散水する散水孔を備える散水板である。散水孔は、流入側開放端および流出側開放端を有する。流入側開放端は、板厚方向から見た場合に長孔状である。流出側開放端は、板厚方向から見た場合に円孔状であり、流入側開放端の中心に対して一方側にずれた位置に配置されている。散水孔には、一方側とは反対の他方側に水溜まり部が形成されている。
【0008】
このように構成することによって、水溜まり部により、流出側開放端に安定的に水が供給されるので、流出側開放端から吐出される水流の圧力変動を抑制することができる。
【0009】
本発明による散水板の製造方法は、板厚方向に対して傾斜した方向に散水する散水孔を備える散水板の製造方法である。散水板の製造方法は、金属板の上面に第1レジスト層を形成するステップと、金属板の下面に第2レジスト層を形成するステップと、第1レジスト層に長孔状の第1開口部を形成するステップと、第2レジスト層に円孔状の第2開口部を形成するステップと、金属板を両面からエッチングして散水孔を形成するステップとを備える。第2開口部を形成するステップでは、第2開口部が第1開口部と対応する位置に配置されるとともに、第2開口部が第1開口部の中心に対して一方側にずれた位置に配置される。散水孔を形成するステップでは、散水孔に、一方側とは反対の他方側に水溜まり部が形成される。
【0010】
上記散水板の製造方法において、散水孔を形成するステップでは、金属板の上面に第1開口部を介して第1凹部を形成するとともに、金属板の下面に第2開口部を介して第2凹部を形成し、第1凹部および第2凹部が連通されることによって散水孔が形成されるようにしてもよい。第1凹部が第2凹部よりも深く、第1凹部により水溜まり部が形成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の散水板によれば、散水孔から吐出される水流の乱れを抑制することができる。本発明の散水板の製造方法によれば、散水孔から吐出される水流の乱れが抑制される散水板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の散水板を下面側から見た図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】金属板にレジスト層およびフォトマスクが設けられた状態を示した断面図である。
図4図3のフォトマスクの一方を示した平面図である。
図5図3のフォトマスクの他方を示した平面図である。
図6】レジスト層に開口部が形成された状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
【0014】
まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態による散水板100について説明する。
【0015】
散水板100は、水を分散噴射するシャワーヘッド(図示省略)などの構成部品である。散水板100は、図1に示すように、金属板1と、金属板1に形成された複数の散水孔2とを備え、散水孔2から水流を吐出するように構成されている。なお、図1などでは、説明を簡略化するために、複数の散水孔2のうちの一つだけを示している。
【0016】
金属板1は、図2に示すように、上面11および下面12を有する。上面11には凹部111が形成され、下面12には凹部121が形成されている。そして、凹部111および121が連通されることによって散水孔2が形成されている。散水板100では、上面11に水が供給されることにより、散水孔2から水流が吐出されるようになっている。
【0017】
凹部111の深さは、凹部121の深さよりも大きい。すなわち、散水孔2の板厚方向(Z1およびZ2方向)において、凹部111の占める割合が凹部121の占める割合に比べて大きい。なお、凹部111および121は、本発明の「第1凹部」および「第2凹部」の一例である。
【0018】
散水孔2は、金属板1を板厚方向に貫通するように形成されている。散水孔2は、流入側開放端21および流出側開放端22を有する。流入側開放端21は、上面11側(Z1方向側)の開放端であり、流出側開放端22は、下面12側(Z2方向側)の開放端である。
【0019】
図1に示すように、流入側開放端21は、板厚方向(Z2方向)から見た場合に長孔状である。具体的に、流入側開放端21は、角丸長方形状(トラック状)に形成されている。たとえば、流入側開放端21の長さLは、半円弧部の半径rの3倍~5倍に設定されている。流出側開放端22は、板厚方向(Z1方向)から見た場合に円孔状である。たとえば、流出側開放端22の直径は、流入側開放端21の幅よりも小さくされている。また、板厚方向から見た場合に、流出側開放端22が流入側開放端21の内側に配置されている。
【0020】
そして、流出側開放端22の中心C2は、流入側開放端21の中心C1に対して一方側(X1方向側)にずれた位置に配置されている。すなわち、流出側開放端22は、流入側開放端21の長手方向において偏った位置に配置されている。このため、散水孔2は、板厚方向に対して傾斜した方向(図2の太線矢印の方向)に散水するように構成されている。
【0021】
また、散水孔2には、一方側とは反対の他方側(X2方向側)に水溜まり部23が設けられている。水溜まり部23は、凹部111によって形成されている。すなわち、水溜まり部23は、上面11から窪むように形成されるとともに、流出側開放端22に対して他方側(X2方向側)に延びるように形成されている。この水溜まり部23は、流出側開放端22に供給される水を蓄えることにより、流出側開放端22から吐出される水流の圧力変動を抑制するために設けられている。
【0022】
-散水板の製造方法-
次に、図2図6を参照して、本実施形態の散水板100の製造方法について説明する。
【0023】
まず、図3に示すように、金属板1aの上面11にレジスト層51aが形成され、金属板1aの下面12にレジスト層52aが形成される。そして、レジスト層51aの上面にフォトマスク61が設けられ、レジスト層52aの下面にフォトマスク62が設けられる。フォトマスク61には、図4に示すように、長孔状の開口部611が形成されている。フォトマスク62には、図5に示すように、円孔状の開口部621が形成されている。
【0024】
次に、露光装置(図示省略)を用いて、フォトマスク61のパターンがレジスト層51aに転写され、フォトマスク62のパターンがレジスト層52aに転写される。そして、フォトマスク61および62が取り外され、金属板1aが現像液に浸される。このため、図6に示すように、レジスト層51aの感光した部分が取り除かれることにより、レジスト層51に開口部511が形成され、レジスト層52aの感光した部分が取り除かれることにより、レジスト層52に開口部521が形成される。
【0025】
なお、レジスト層51および51aは、本発明の「第1レジスト層」の一例であり、レジスト層52および52aは、本発明の「第2レジスト層」の一例である。また、開口部511は、本発明の「第1開口部」の一例であり、開口部521は、本発明の「第2開口部」の一例である。
【0026】
ここで、開口部511は長孔状であり、開口部521は円孔状である。開口部521が開口部511と対応する位置に配置されるとともに、開口部521が開口部511の中心に対して一方側(X1方向側)にずれた位置に配置されている。
【0027】
次に、金属板1aの両面がエッチングされる。すなわち、金属板1aの開口部511および521から露出している部分にエッチング液が吹き付けられ、その部分が腐食作用によって取り除かれる。このため、金属板1aの上面11に凹部111(図2参照)が形成されるとともに、金属板1aの下面12に凹部121(図2参照)が形成され、その凹部111および121が連通されることによって散水孔2(図2参照)が形成される。
【0028】
その後、レジスト層51および52が除去される。このようにして、図2に示すような散水板100が製造される。なお、凹部111が凹部121よりも深くされ、凹部111により水溜まり部23が形成される。
【0029】
-効果-
本実施形態では、上記のように、流入側開放端21が長孔状に形成され、流出側開放端22が円孔状に形成され、流出側開放端22の中心C2が流入側開放端21の中心C1に対して一方側(X1方向側)にずれた位置に配置されている。このように構成することによって、散水孔2から板厚方向に対して傾斜した方向に散水することができる。また、散水孔2の他方側(X2方向側)に水溜まり部23が形成されることによって、流出側開放端22に安定的に水が供給されるので、流出側開放端22から吐出される水流の圧力変動を抑制することができる。これにより、散水孔2から吐出される水流の乱れを抑制することができる。
【0030】
-他の実施形態-
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0031】
たとえば、上記実施形態では、流入側開放端21が角丸長方形状に形成される例を示したが、これに限らず、流入側開放端がオーバル状に形成されていてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、板厚方向から見た場合に流出側開放端22が流入側開放端21の内側に配置される例を示したが、これに限らず、板厚方向から見た場合に流出側開放端の一部が流入側開放端の外側に配置されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、板厚方向に対して傾斜した方向に散水する散水孔を備える散水板およびその製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1、1a 金属板
2 散水孔
11 上面
12 下面
21 流入側開放端
22 流出側開放端
23 水溜まり部
51、51a レジスト層(第1レジスト層)
52、52a レジスト層(第2レジスト層)
100 散水板
111 凹部(第1凹部)
121 凹部(第2凹部)
511 開口部(第1開口部)
521 開口部(第2開口部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6