(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118859
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240826BHJP
【FI】
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025414
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】及川 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】 土木構造物の最適な修繕工事費を算出する
【解決手段】 プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置であって、過去における、第1土木構造物の変状に係る第1情報を示す特徴量と、前記第1土木構造物の修繕に対して行った第1修繕工事の種類、前記第1修繕工事を行った前記第1土木構造物の工事範囲を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデルを記憶し、現在における、第2土木構造物の変状に係る第2情報を前記学習モデルに入力することにより、前記第2土木構造物の修繕に対して行うべき第2修繕工事の種類、前記第2修繕工事を行うべき前記第2土木構造物の工事範囲を予測し、前記第2修繕工事における修繕単価と、前記第2土木構造物の工事範囲とに基づいて、前記第2修繕工事に要する修繕工事費を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ及び記憶装置を有し、
過去における、第1土木構造物の変状に係る第1情報を示す特徴量と、前記第1土木構造物の修繕に対して行った第1修繕工事の種類、前記第1修繕工事を行った前記第1土木構造物の工事範囲を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデルを記憶し、
現在における、第2土木構造物の変状に係る第2情報を前記学習モデルに入力することにより、前記第2土木構造物の修繕に対して行うべき第2修繕工事の種類、前記第2修繕工事を行うべき前記第2土木構造物の工事範囲を予測し、
前記第2修繕工事における修繕単価と、前記第2土木構造物の工事範囲とに基づいて、前記第2修繕工事に要する修繕工事費を算出する
情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記第1情報は、
前記第1土木構造物の変状の種類、
前記第1土木構造物の変状の原因、
前記第1土木構造物の変状として特定される定量的な値、を含む
情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記第1土木構造物の変状の種類は、亀裂及び剥落の少なくとも何れか1つを含む
情報処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記第1土木構造物の変状の原因は、前記第1土木構造物の施工不良、前記第1土木構造物の内部要因、前記第1土木構造物に対する外部要因の何れか1つを含む
情報処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記修繕単価を示すデータは、前記記憶装置にテーブルデータとして予め記憶される
情報処理装置。
【請求項6】
プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置が、
過去における、第1土木構造物の変状に係る第1情報を示す特徴量と、前記第1土木構造物の修繕に対して行った第1修繕工事の種類、前記第1修繕工事を行った前記第1土木構造物の工事範囲を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデルを記憶し、
現在における、第2土木構造物の変状に係る第2情報を前記学習モデルに入力することにより、前記第2土木構造物の修繕に対して行うべき第2修繕工事の種類、前記第2修繕工事を行うべき前記第2土木構造物の工事範囲を予測し、
前記第2修繕工事における修繕単価と、前記第2土木構造物の工事範囲とに基づいて、前記第2修繕工事に要する修繕工事費を算出する
情報処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の情報処理方法であって、
前記第1情報は、
前記第1土木構造物の変状の種類、
前記第1土木構造物の変状の原因、
前記第1土木構造物の変状として特定される定量的な値、を含む
情報処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の情報処理方法であって、
前記第1土木構造物の変状の種類は、亀裂及び剥落の少なくとも何れか1つを含む
情報処理方法。
【請求項9】
請求項7に記載の情報処理方法であって、
前記第1土木構造物の変状の原因は、前記第1土木構造物の施工不良、前記第1土木構造物の内部要因、前記第1土木構造物に対する外部要因の何れか1つを含む
情報処理方法。
【請求項10】
請求項6に記載の情報処理方法であって、
前記修繕単価を示すデータは、前記記憶装置にテーブルデータとして予め記憶される
情報処理方法。
【請求項11】
プロセッサ及び記憶装置を有するコンピュータに、
過去における、第1土木構造物の変状に係る第1情報を示す特徴量と、前記第1土木構造物の修繕に対して行った第1修繕工事の種類、前記第1修繕工事を行った前記第1土木構造物の工事範囲を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデルを記憶する処理と、
現在における、第2土木構造物の変状に係る第2情報を前記学習モデルに入力することにより、前記第2土木構造物の修繕に対して行うべき第2修繕工事の種類、前記第2修繕工事を行うべき前記第2土木構造物の工事範囲を予測する処理と、
前記第2修繕工事における修繕単価と、前記第2土木構造物の工事範囲とに基づいて、前記第2修繕工事に要する修繕工事費を算出する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、化石燃料(石炭、石油、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)等)の燃焼熱を利用して電力を発生する火力発電所には、化石燃料を燃焼させるボイラー、ボイラーによる燃焼熱で水を熱することにより発生する蒸気で回転する蒸気タービン、蒸気タービンの回転力が伝達されて発電する発電機、船舶で輸送されてきた化石燃料(石油、液化天然ガス)を貯蔵して燃焼の際にボイラーに供給するための貯蔵タンク、船舶で輸送されてきた化石燃料(石炭)を貯蔵ヤードに積み付けて燃焼の際にボイラーに供給するためのスタッカー及びコンベア、ボイラーが化石燃料(石炭、石油)を燃焼させたときの排煙に含まれている硫黄酸化物を除去する排煙脱硫装置等の機械装置が設置されている。これらの機械装置は、基礎である土木構造物に安全に支持されている。また、火力発電所には、蒸気タービンを冷却するために海から海水を取水するための取水口及び取水路と、蒸気タービンを冷却した後の海水を海に放水するための放水路及び放水口とが設けられており、これらの取水口、取水路、放水路、放水口も土木構造物として形成されている。
【0003】
土木構造物は、例えば、セメントに対して水、細骨材、粗骨材等を所定の割合で混ぜ合わせたコンクリートを材料とするコンクリート構造物であり、一定の強度を発揮するように施工されている。
【0004】
しかし、コンクリート構造物を施工した際の初期不良、コンクリート構造物の施工後にコンクリート構造物の内部に発生した内部要因、コンクリート構造物の施工後にコンクリート構造物の外部に発生した外部要因の何れかによって、コンクリート構造物に亀裂や剥落が発生した場合、コンクリート構造物の強度が低下する虞がある。
【0005】
そこで、電力会社の作業員は、火力発電所内を定期的に巡回し、コンクリート構造物に亀裂や剥落が発生しているか否かを点検している。そして、コンクリート構造物に亀裂や剥落が発生している場合、コンクリート構造物の種類、亀裂や剥落の発生状況等を鑑みて、亀裂や剥落を修繕するために最適とされる修繕工事の種類を選定し、修繕すべき亀裂や剥落が発生しているコンクリート構造物の表面の工事面積や工事長さ等の工事範囲と、選定された修繕工事における亀裂や剥落の修繕単価とから、修繕工事費を算出している。しかし、修繕工事の選定は電力会社の作業員の判断で行われるのが一般的であり、作業員の熟練度によって選定される修繕工事の種類が異なってしまうと、最適な修繕工事費を算出できなくなる虞がある。
【0006】
そこで、例えば、マンション等の修繕工事に関して、施工部位、施工仕様、及び画像データの指定に基づき積算を行い、修繕工事費の自動見積もりを行う技術が開示されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に開示される技術において、施工仕様(修繕工事の種類)は作業者の判断で特定される情報であるため、最適な修繕工事費を算出できなくなる問題は解消されないこととなる。
【0009】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、学習モデルで予測された土木構造物の修繕工事の種類に従って、最適な修繕工事費を算出する情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明のうちの1つは、プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置であって、過去における、第1土木構造物の変状に係る第1情報を示す特徴量と、前記第1土木構造物の修繕に対して行った第1修繕工事の種類、前記第1修繕工事を行った前記第1土木構造物の工事範囲を示すラベルと、を対応付けた学習データに基づいて学習を行う学習モデルを記憶し、現在における、第2土木構造物の変状に係る第2情報を前記学習モデルに入力することにより、前記第2土木構造物の修繕に対して行うべき第2修繕工事の種類、前記第2修繕工事を行うべき前記第2土木構造物の工事範囲を予測し、前記第2修繕工事における修繕単価と、前記第2土木構造物の工事範囲とに基づいて、前記第2修繕工事に要する修繕工事費を算出する。
【0011】
本発明の情報処理装置によれば、学習モデルで予測された第2土木構造物の修繕工事の種類に従って、最適な修繕工事費を算出することが可能となる。
【0012】
また、上記目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、情報処理装置であって、前記第1情報は、前記第1土木構造物の変状の種類、前記第1土木構造物の変状の原因、前記第1土木構造物の変状として特定される定量的な値、を含む。
【0013】
本発明の情報処理装置によれば、第1情報を上記のように特定することにより、第2土木構造物を修繕するための最適な修繕工事費を算出することが可能となる。
【0014】
また、上記目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、情報処理装置であって、前記第1土木構造物の変状の種類は、亀裂及び剥落の少なくとも何れか1つを含む。
【0015】
本発明の情報処理装置によれば、第1土木構造物の変状の種類を上記のように特定することにより、第2土木構造物を修繕するための最適な修繕工事費を算出することが可能となる。
【0016】
また、上記目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、情報処理装置であって、前記第1土木構造物の変状の原因は、前記第1土木構造物の施工不良、前記第1土木構造物の内部要因、前記第1土木構造物に対する外部要因の何れか1つを含む。
【0017】
本発明の情報処理装置によれば、第1土木構造物の変状の原因を上記のように特定することにより、第2土木構造物を修繕するための最適な修繕工事費を算出することが可能となる。
【0018】
また、上記目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、情報処理装置であって、前記修繕単価を示すデータは、前記記憶装置にテーブルデータとして予め記憶される。
【0019】
本発明の情報処理装置によれば、修繕単価を常に最新の値に更新できるので、第2土木構造物を修繕するための最適な修繕工事費を算出することが可能となる。
【0020】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、学習モデルで予測された土木構造物の修繕工事の種類に従って、最適な修繕工事費を算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】情報処理装置100を含む予測算出システム1の概略的な構成を示す図である。
【
図2】学習データ152の特徴量及びラベルの一例を示す図である。
【
図3】第1コンクリート構造物である取水路600の一部の内壁に亀裂が発生していることを示す変状図の一例である。
【
図4】記憶部150が記憶するテーブルデータ154の一例を示す図である。
【
図5】学習モデル153の一例である深層ニューラルネットワークの構造を示す図である。
【
図6】予測算出システム1の実現に用いる情報処理装置100のハードウェアの一例を示すブロック図である。
【
図7】情報処理装置100が学習データ152を用いて学習モデル153の学習を行うときの処理を示すフローチャートである。
【
図8】情報処理装置100が学習モデル153を用いて、第2コンクリート構造物の変状に係る第2情報から予測を行うときの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下、本発明をその一実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置100を含む予測算出システム1の概略的な構成を示す図である。尚、本実施形態において説明する土木構造物は、例えば後述する港湾設備、取放水設備、機械装置用基礎、排水処理設備等の、火力発電所で施工されるコンクリート構造物であることとする。
【0025】
電力会社の作業員が、火力発電所内のコンクリート構造物を点検した結果、このコンクリート構造物に亀裂や剥落等が発生していることを確認し、この亀裂や剥落等の発生箇所を修繕する必要があると判断した場合、予測算出システム1は、コンクリート構造物における亀裂や剥落等の変状に係る情報(第2情報)を取得することによって、この亀裂や剥落の発生箇所を修繕するのに最適とされる修繕工事の種類(第2修繕工事の種類)と、この修繕工事を行うコンクリート構造物の工事範囲とを予測した上で、この予測された修繕工事に要する修繕工事費を算出する。尚、以下の説明では、修繕工事費の算出対象となっているコンクリート構造物を第2コンクリート構造物(あるいは第2土木構造物)とも記す。
【0026】
予測算出システム1は、上記の機能を実現するための手段として、情報処理装置100、表示装置200、管理装置300、外部コンピュータ400、通信ネットワーク500を含んで構成される。情報処理装置100、表示装置200、管理装置300、外部コンピュータ400は、通信ネットワーク500を介して接続されている。尚、通信ネットワーク500は、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、専用線、電力線通信網、各種公衆通信網等である。
【0027】
情報処理装置100は、入力部110、予測部120、算出部130、出力部140、記憶部150を含んで構成される。
【0028】
記憶部150は、制御プログラム151、学習データ152、学習モデル153、テーブルデータ154を記憶する。
【0029】
制御プログラム151は、予測部120が、第2コンクリート構造物における亀裂や剥落等の変状に係る情報(第2情報)に基づいて、(a)この亀裂や剥落等の発生箇所を修繕するのに最適とされる修繕工事の種類(第2修繕工事の種類)、(b)この第2修繕工事が行われる第2コンクリート構造物の工事範囲、を学習モデル153により予測し、更に、算出部130が、予測された第2修繕工事における修繕単価と、第2コンクリート構造物の工事範囲とに基づいて、予測された第2修繕工事に要する修繕工事費を算出するときに、情報処理装置100が実行するプログラムである。
【0030】
学習データ152は、学習モデル153が上記(a)(b)を予測することができるように事前に用意される、過去の実績である特徴量及びラベルを対応付けた教師ありデータである。
【0031】
図2は、学習データ152の特徴量及びラベルの一例を示す図である。
【0032】
特徴量は、過去において、火力発電所内のコンクリート構造物に発生した亀裂や剥落等の変状に係る情報(第1情報)を示すデータである。一方、ラベルは、この亀裂や剥落等の変状に対して行った修繕工事(第1修繕工事)と、コンクリート構造物に対して第1修繕工事を行った面の工事範囲(例えば工事の施工面積や施工長さ)と、を示すデータである。この特徴量とラベルが対応付けられて学習データ152が構成される。尚、本実施形態において、過去に亀裂や剥落等が発生した火力発電所内のコンクリート構造物を第1コンクリート構造物(第1土木構造物)と呼称し、また、現在において亀裂や剥落等が発生している火力発電所内のコンクリート構造物を第2コンクリート構造物(第2土木構造物)と呼称する。
【0033】
第1情報は、第1修繕工事が行われた第1コンクリート構造物の変状に係る情報として、例えば、(A)第1コンクリート構造物の種類、(B)第1コンクリート構造物の変状の種類、(C)第1コンクリート構造物の変状の原因、(D)第1コンクリート構造物の変状として特定される定量的な値、を含む情報である。
【0034】
上記(A)の「第1コンクリート構造物の種類」は、例えば、(A1)港湾設備、(A2)取放水設備、(A3)機械装置用基礎、(A4)排水処理設備等である。
【0035】
上記(A1)の「港湾設備」は、例えば、外洋からの波(風波、津波等)から火力発電所を保護する護岸ケーソンを含む防波堤、船舶が着岸するために火力発電所の陸域部から海上へ向かって延びる桟橋、船舶が着岸して物揚げを行うための物揚げ場等のコンクリート構造物である。
【0036】
上記(A2)の「取放水設備」は、火力発電所内の蒸気タービンを冷却するための海水を取水するための取水口及び取水路、取水した海水を貯水する取水槽、蒸気タービンを冷却した後の海水を海に放水するための放水路及び放水口等のコンクリート構造物である。
【0037】
上記(A3)の「機械装置用基礎」は、火力発電所内のボイラー、蒸気タービン、発電機、排煙脱硫装置等の機械装置を安全に支持する基礎として施工されるコンクリート構造物である。この基礎は、例えばマットスラブ基礎や独立基礎等である。
【0038】
上記(A4)の「排水処理設備」は、蒸気タービンの冷却に用いた海水を海に排水するに際して、海水に含まれている微量の油分、酸、アルカリ、浮遊物質等に対して分離、凝集、沈殿、ろ過、中和等の処理を施して浄化を行うためのコンクリート構造物である。
【0039】
第1情報が「第1コンクリート構造物の種類」として、上記(A1)~(A4)を含むことにより、学習モデル153が第2修繕工事の種類を予測する際の予測精度は向上することとなる。
【0040】
上記(B)の「第1コンクリート構造物の変状の種類」は、例えば、(B1)第1コンクリート構造物自体の変形、(B2)第1コンクリート構造物に発生した亀裂、(B3)第1コンクリート構造物に発生した剥落等である。第1情報が「第1コンクリート構造物の変状の種類」として、上記(B1)~(B3)を含むことにより、学習モデル153が第2修繕工事の種類を予測する際の予測精度は向上することとなる。
【0041】
上記(C)の「第1コンクリート構造物の変状の原因」は、例えば、(C1)第1コンクリート構造物を施工した際の初期不良、(C2)第1コンクリート構造物の施工後に第1コンクリート構造物の内部に発生した内部要因、(C3)第1コンクリート構造物の施工後に第1コンクリート構造物の外部に発生した外部要因等である。
【0042】
上記(C1)の「第1コンクリート構造物を施工した際の初期不良」は、例えば、セメントに対して水、細骨材、粗骨材等が予め指定された割合で混合されていない場合、既に打設されているコンクリートが硬化する前に新たなコンクリートを打ち重ねる施工が不適当である場合、既に打設されているコンクリートが硬化した後に新たなコンクリートを打ち継ぐ施工が不適当である場合等において、第1コンクリート構造物が一定の強度を発揮することができなくなる初期不良のことである。
【0043】
上記(C2)の「第1コンクリート構造物の施工後に第1コンクリート構造物の内部における内部要因」は、例えば、コンクリート構造物内部に大気中の二酸化炭素が侵入して細孔溶液のpHを低下させる劣化現象、コンクリート構造物の表面に付着した塩分が内部に浸透して内部の鋼材が腐食して膨張する塩害、コンクリート構造物内でコンクリート中のアルカリ性水溶液と骨材中の鉱物とが反応して膨張性の物質を生成するアルカリ骨材反応(ASR)等のことである。
【0044】
上記(C3)の「第1コンクリート構造物の施工後に第1コンクリート構造物の外部に発生した外部要因」は、例えば、第1コンクリート構造物に外部から荷重(地震による外力等)が作用した場合にその荷重と同時に発生する変形、亀裂、剥落、又は、第1コンクリート構造物に外部から荷重が継続して作用した場合に時間の経過とともに発生する変形、亀裂、剥落等である。
【0045】
第1情報が「第1コンクリート構造物の変状の原因」として、上記(C1)~(C3)を含むことにより、学習モデル153が第2修繕工事の種類を予測する際の予測精度は向上することとなる。
【0046】
上記(D)の「第1コンクリート構造物の変状として特定される定量的な値」は、例えば、(D1)第1コンクリート構造物における変形前と変形後の形状差(沈下、傾斜等を示す値)、(D2)第1コンクリート構造物に発生した亀裂の発生位置、幅、長さ、形状、個数、深さ等を示す値、(D3)第1コンクリート構造物に発生した剥落の発生位置、面積、形状、個数、深さ等を示す値である。
【0047】
第1情報が「第1コンクリート構造物の変状として特定される定量的な値」として、上記(D1)~(D3)を含むことにより、学習モデル153が第2修繕工事の種類を予測する際の予測精度と、第2修繕工事の工事範囲(施工面積や施工長さ)を予測する際の予測精度は向上することとなる。尚、上記(D1)の値が大きく第1コンクリート構造物自体の変形を修繕した場合、学習データ152には、上記(D2)(D3)の値に関わらず、第1修繕工事及び第1修繕工事の工事範囲を示すラベルは対応付けられない。
【0048】
図3は、第1コンクリート構造物である取水路600の一部の内壁に亀裂が発生していることを示す変状図の一例である。本実施形態では、
図3は、電力会社の作業員が蒸気タービンを冷却するための海水を取水する取水路600を点検した結果、取水路600の内壁に複数の亀裂が発生していることを発見した場合に、亀裂の発生位置、幅、長さ、形状、個数等が分かるように作成された、海水が流れる方向に沿う断面図である。
【0049】
尚、電力会社の作業員が取水路600の内壁に亀裂が発生していることを発見する場合に、取水路600の内壁から遊離石灰が滲出していることを亀裂の発生の根拠としてもよい。ここで、遊離石灰とは、コンクリート構造物内に残留している酸化カルシウム等の成分のことである。遊離石灰は、コンクリート構造物内の水分と反応して水酸化カルシウムとなった後、コンクリート構造物の亀裂箇所を通って滲出すると、空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムとなり、この炭酸カルシウムが白い汚れとなってコンクリート構造物の壁面に現れる。
【0050】
図3において、取水路600の内部には、取水路600から取水槽までの損失水頭を等しくするための隔壁610が設けられている。また、取水路600の内壁620には、複数の亀裂630が形成されている。
【0051】
図3の変状図には、複数の亀裂630が発生している場所における取水路600の大きさが分かるように、寸法(例えばmm単位)が記されていることとする。また、複数の亀裂630夫々の発生位置を特定するには、例えば、紙面横方向(X方向)及び紙面縦方向(Y方向)の基点(X,Y)=(0,0)となる座標の位置を設定するとよい。例えば、黒丸の位置を基点に設定する。これにより、上記の座標を設定した変状図から、複数の亀裂630の発生位置、幅(例えば0.3mm未満)、長さ、形状、個数を特定することができる。尚、電力会社の作業員は取水路600を点検した際に亀裂630の深さを計測していることとする。そして、第1情報の中に、上記(D)の「第1コンクリート構造物の変状として特定される定量的な値」として、複数の亀裂630の発生位置、幅、長さ、形状、個数、深さ等を示すデータを含むようにすることができる。尚、
図3では、第1コンクリート構造物である取水路600の内壁620に亀裂630が発生している場合について説明したが、これに限定されない。例えば、第1コンクリート構造物に剥落が発生した場合においても、第1情報の中に、第1コンクリート構造物に発生した剥落の発生位置、面積、形状、個数、深さ等を示すデータを含むようにすることができる。
【0052】
本実施形態では、上記(D)の「第1コンクリート構造物の変状として特定される定量的な値」は、電力会社の作業員が実際に計測した変形、亀裂、剥落に係る値をテキストデータとしたものとするが、テキストデータ以外のデータを更に含んでいてもよい。
図3を例に挙げると、
図3の変状図を示す画像データ、又は
図3の変状図に対応する取水路600の複数の亀裂630が撮影された画像データの少なくとも何れか一方を更に含み、この画像データを複数の亀裂630の発生位置、幅、長さ、形状、個数等のデータと対応付けて、特徴量を更に明確とするようにしてもよい。
【0053】
取水路600の内壁に発生した亀裂630の修繕のために採用された第1修繕工事の種類の一例について以下に説明する。
【0054】
取水路600の内壁に亀裂630が発生した原因が、例えば取水路600の内部要因に基づくものではあるが、亀裂630が進行する可能性が低い場合、亀裂630の幅に応じて以下の3種類のうち何れかの第1修繕工事が行われている。例えば、亀裂630の幅が第1幅(例えば0.2mm以下)の場合、この亀裂630を修繕するために、例えば塗膜弾性防水材、ポリマーセメントペースト等で亀裂630を被覆する被覆工法を用いた第1修繕工事が行われる。また、亀裂630の幅が第2幅(例えば0.2mm~1.0mm)の場合、この亀裂630を修繕するために、例えばエポキシ樹脂系注入材、アクリル樹脂系注入材、注入用ポリマーセメント等を亀裂630に注入する注入工法を用いた第1修繕工事が行われる。また、亀裂630の幅が第3幅(例えば1.0mm以上)の場合、この亀裂630を修繕するために、例えばポリマーセメントモルタル、可撓性エポキシ樹脂等を亀裂630に充填する充填工法を用いた第1修繕工事が行われる。
【0055】
また、取水路600の内壁に亀裂630が発生した原因が、例えば取水路600の内部要因に基づくものであって、取水路600の施工を完了してからの経過日数が僅かであったり、環境条件の影響を受けたりして、亀裂630が進行する可能性が高い場合、亀裂630の幅に応じて以下の3種類のうち何れかの第1修繕工事が行われている。例えば、亀裂630の幅が第1幅の場合、この亀裂630を修繕するために、例えば塗膜弾性防水材等で亀裂630を被覆する被覆工法を用いた第1修繕工事が行われる。また、亀裂630の幅が第2幅の場合、この亀裂630を修繕するために、例えば軟質系のエポキシ樹脂系注入材、アクリル樹脂系注入材等を亀裂630に注入する注入工法を用いた第1修繕工事が行われる。また、亀裂630の幅が第3幅の場合、この亀裂630を修繕するために、例えばウレタン樹脂又はシリコン樹脂等のシーリング材、可撓性エポキシ樹脂等を亀裂630に充填する充填工法を用いた第1修繕工事が行われる。
【0056】
尚、取水路600の内壁に発生した亀裂630の原因が、取水路600を施工した際の初期不良や、取水路600の外部要因に基づく場合においても、その亀裂630の修繕に適した第1修繕工事が行われている。
【0057】
このようにして、第1コンクリート構造物に発生した変形自体を修繕する場合を除き、第1コンクリート構造物に発生した亀裂や剥落の修繕を行うのに適した第1修繕工事が行われている。
【0058】
ラベルは、上記のような実際に行われた第1修繕工事の種類と、この第1修繕工事を行った第1コンクリート構造物の外壁又は内壁の工事範囲(施工面積や施工長さ)と、を示すデータであり、上記の特徴量と対応付けられて学習データ152を構成する。
【0059】
尚、学習データ152は、学習モデル153の学習を行うときのみ必要になるデータであるため、記憶部150に記憶する代わりに、外部コンピュータ400の記憶部410に記憶するようにしてもよい。そして、情報処理装置100が通信ネットワーク500を介して外部コンピュータ400内の記憶部410から学習データ152を取得し、情報処理装置100上で学習データ152を用いて学習モデル153の学習を行うようにしてもよい。或いは、外部コンピュータ400内で学習データ152を用いて学習モデル153の学習を行い、情報処理装置100が通信ネットワーク500を介して外部コンピュータ400から学習済みの学習モデル153を取得して記憶部150に記憶するようにしてもよい。
【0060】
図4は、記憶部150が記憶するテーブルデータ154の一例を示す図である。
【0061】
テーブルデータ154は、第2コンクリート構造物に発生した亀裂を修復する第2修繕工事の種類(第2修繕工事に用いる工法)と、その第2修繕工事に用いる修繕材料と、その修繕材料の単位長(例えば1m)あたりの修繕単価と、を対応付けたデータである。尚、第2修繕工事は、第1修繕工事と同一種類の工事である。具体的には、第2修繕工事に用いる工法が被覆工法Aである場合、塗膜弾性防水材及びポリマーセメントペーストが修繕材料として対応付けられ、更に、塗膜弾性防水材及びポリマーセメントペースト夫々の修繕単価が対応付けられている。同様に、被覆工法B、注入工法A,B、充填工法A,Bの夫々についても、修繕材料及び修繕単価が対応付けられている。修繕単価は変動する可能性があるため、記憶部150のテーブルデータ154には、最新の修繕単価が記憶されている。尚、第2コンクリート構造物に発生した剥落の修繕にも対応できるように、テーブルデータ154には、剥落を修繕する第2修繕工事の工法、その第2修繕工事に用いる修繕材料、その修繕材料の単位面積(例えば1m2)あたりの修繕単価と、が対応付けられて記憶されていることとする。
【0062】
学習モデル153は、火力発電所内において、第1コンクリート構造物における亀裂や剥落等の変状に係る第1情報と同一種類である、第2コンクリート構造物における亀裂や剥落等の変状に係る第2情報に基づいて、(a)この亀裂や剥落等の発生箇所を修繕するのに最適とされる第2修繕工事の種類、(b)この第2修繕工事が行われる第2コンクリート構造物の工事範囲(施工面積や施工長さ)、を予測するように形成された機械学習モデルである。学習モデル153は、より多くの学習データ152を用いて学習を行うほど、より正確な予測を行うことが可能となる。尚、本実施形態では、学習モデル153は、例えば深層ニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)であることとするが、勾配ブースティング(GBDT:Gradient Boosting Decision Tree)等の他の種類のモデルであってもよい。
【0063】
図5は、学習モデル153の一例である深層ニューラルネットワークの構造を示す図である。
【0064】
学習モデル153は、入力層1531、中間層1532、出力層1533の3層を含んで構成される。学習モデル153は、
図2に示す特徴量(第1情報)とラベルとを対応付けた学習データ152を用いて学習を行う。入力層1531は、第1コンクリート構造物の変状に係る第1情報と同一種類である、第2コンクリート構造物の変状に係る第2情報を示すデータが入力される層である。中間層1532は、学習データ152を用いて学習を行うことにより調整されるパラメータを含む1つ以上のノードからなる1つ以上の隠れ層を含む層である。中間層1532は、入力層1531に入力されるデータに基づき、上記(a)(b)を予測する。出力層1533は、中間層1532による予測結果を出力する層である。
【0065】
図1に戻り、入力部110は、情報処理装置100が学習モデル153を用いて上記(a)(b)を予測するときに、第2コンクリート構造物の変状に係る第2情報を示すデータが入力される。この第2情報は、例えば、電力会社の作業員が操作する外部コンピュータ(不図示)から管理装置300に送信され、管理装置300内の記憶部310に予め記憶されている。そして、上記の外部コンピュータから第2情報を使用することを示す指示が管理装置300に供給されると、記憶部310に記憶されている第2情報を示すデータが読み出されて入力部110に入力される。
【0066】
予測部120は、入力部110に第1情報と同一種類である第2情報を示すデータが入力されたことを契機として、この第2情報を示すデータを、学習モデル153の入力層1531に入力する。中間層1532では、入力層1531に第2情報を示すデータが入力されたことにより上記(a)(b)を予測し、この予測結果を出力層1533に出力する。
【0067】
このようにして上記(a)(b)が予測されると、算出部130は、テーブルデータ154から、予測された第2修繕工事に用いる工法及び修繕材料に対応付けられた最新の修繕単価を参照し、第2修繕工事に要する修繕工事費を算出する。例えば、第2修繕工事に用いる工法として被覆工法Aが予測された場合には、修繕材料として塗膜弾性防水材又はポリマーセメントペーストが適用可能であるため、修繕材料として塗膜弾性防水材を適用した場合の修繕工事費と、修繕材料としてポリマーセメントペーストを適用した場合の修繕工事費と、を算出する。尚、第2修繕工事の工法ごとに用いる修繕材料は1種類に限定してもよい。
【0068】
出力部140は、予測された第2修繕工事の修繕工事費を算出部130が算出した算出結果を外部に出力する。例えば、予測された第2修繕工事に用いる工法が被覆工法Aである場合、「被覆工法A/塗膜弾性防水材/修繕工事費XXXXX円」、「被覆工法A/ポリマーセメントペースト/修繕工事費YYYYY円」の内容を含む情報を外部に出力する。出力部140の出力方法としては、例えば、算出結果を表示パネルに表示出力する方法、算出結果をスピーカから音声出力する方法、算出結果を紙媒体に印刷して出力する方法等が考えられるが、本実施形態では、算出結果を表示装置200の表示パネル210に表示出力することとする。
【0069】
管理装置300は、学習データ152の特徴量である第1情報と、学習データ152のラベルとして第1情報に対応付けられたデータと、を記憶部310に記憶し、情報処理装置100が学習データ152を形成する場合には、これらの特徴量及びラベルとなるデータを入力部110に提供する。また、管理装置300は、学習モデル153が予測を行う際に必要となる第2情報を示すデータを記憶部310に記憶し、学習モデル153が予測を行う時点でこの第2情報を示すデータを入力部110に提供する。また、管理装置300は、学習モデル153による予測結果及び算出部130による算出結果を示すデータを記憶部310に記憶して管理し、表示装置200が表示パネル210に学習モデル153による予測結果や算出部130による算出結果を表示する際に、これらの結果を示すデータを表示装置200に提供するようにしてもよい。
【0070】
図6は、予測算出システム1の実現に用いる情報処理装置100のハードウェアの一例を示すブロック図である。
【0071】
情報処理装置100は、プロセッサ1010、主記憶装置1020、補助記憶装置1030、入力装置1040、出力装置1050、通信装置1060を備える。情報処理装置100は、例えば、パーソナルコンピュータ、オフィスコンピュータ、各種サーバ装置、汎用機等である。情報処理装置100は、その全部又は一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。予測算出システム1は、通信可能に接続された複数の情報処理装置100を用いて実現されるものであってもよい。
【0072】
プロセッサ1010は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成される。
【0073】
主記憶装置1020は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0074】
補助記憶装置1030は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカード、光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置1030には、記録媒体の読取装置や通信装置1060を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置1030に記憶されているプログラムやデータは主記憶装置1020に随時読み込まれる。
【0075】
入力装置1040は、外部からの入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0076】
出力装置1050は、処理経過や処理結果等の各種情報を出力するインタフェースである。出力装置1050は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、情報処理装置100は、通信装置1060を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0077】
入力装置1040及び出力装置1050は、ユーザとの間で情報の受け付けや情報の提示を行うユーザインタフェースを構成する。
【0078】
通信装置1060は、通信ネットワーク500等の通信基盤を介した他の装置との間での通信(有線通信又は無線通信)を実現する装置であり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等を用いて構成される。
【0079】
尚、情報処理装置100には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(Data Base Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0080】
予測算出システム1が備える機能は、情報処理装置100のプロセッサ1010が、主記憶装置1020に読み込まれているプログラム(制御プログラム)を実行することにより実現されるか、或いは、予測算出システム1を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)自体の機能により実現される。例えば、
図1の記憶部150は主記憶装置1020及び補助記憶装置1030により実現され、
図1の入力部110は入力装置1040により実現され、
図1の予測部120及び算出部130はプロセッサ1010により実現され、
図1の出力部140は出力装置1050及び通信装置1060により実現される。
【0081】
図7は、情報処理装置100が学習データ152を用いて学習モデル153の学習を行うときの処理を示すフローチャートである。
【0082】
先ず、情報処理装置100は、第1コンクリート構造物の変状に係る情報を示す説明変数である特徴量と、この変状を修繕した第1修繕工事の種類及びこの第1修繕工事を行った第1コンクリート構造物の工事範囲を示す目的変数であるラベルと、を対応付けた学習データ152を生成する(S1000)。
【0083】
次に、情報処理装置100は、学習データ152を用いて学習モデル153の学習を行う(S1010)。尚、情報処理装置100は、学習済みの学習モデル153に対して予測精度の検証を行うようにしてもよい。その場合、情報処理装置100は、学習データ152として学習用データ及び検証用データを用意し、学習用データを用いて学習モデル153の学習を行い、検証用データを用いて学習モデル153の検証を行う。
【0084】
図8は、情報処理装置100が学習モデル153を用いて、第2コンクリート構造物の変状に係る第2情報を示すデータを入力とし、上記(a)(b)の予測結果を出力するときの処理を示すフローチャートである。
【0085】
先ず、情報処理装置100は、第2コンクリート構造物の変状に係る第2情報を示すデータが入力部110に入力されたか否かを判定する(S2000)。情報処理装置100は、第2情報を示すデータが入力部110に入力されていないと判定すると(S2000:NO)、ステップS2000の処理を再度実行する。
【0086】
次に、情報処理装置100は、第2情報を示すデータが入力部110に入力されたと判定すると(S2000:YES)、学習モデル153を用いて、上記(a)(b)を予測する(S2010)。
【0087】
次に、情報処理装置100は、学習モデル153による予測結果を出力層1533から出力する(S2020)。
【0088】
そして、算出部130は、上記(a)(b)の予測結果に基づいて、テーブルデータ154を参照して、予測された第2修繕工事に要する修繕工事費を算出する。
【0089】
以上説明したように、プロセッサ1010及び記憶部150(主記憶装置1020及び補助記憶装置1030)を有する情報処理装置100は、過去における、第1コンクリート構造物の変状に係る第1情報を示す特徴量と、第1コンクリート構造物の修繕に対して行った第1修繕工事の種類、第1修繕工事を行った第1コンクリート構造物の工事範囲を示すラベルと、を対応付けた学習データ152に基づいて学習を行う学習モデル153を記憶し、現在における、第2コンクリート構造物の変状に係る第2情報を学習モデル153に入力することにより、第2コンクリート構造物の修繕に対して行うべき第2修繕工事の種類、第2修繕工事を行うべき第2コンクリート構造物の工事範囲を予測し、第2修繕工事における修繕単価と、第2コンクリート構造物の工事範囲とに基づいて、第2修繕工事に要する修繕工事費を算出する。
【0090】
情報処理装置100によれば、学習モデル153で予測された第2コンクリート構造物の修繕工事の種類に従って、最適な修繕工事費を算出することが可能となる。
【0091】
また、情報処理装置100において、第1情報は、第1コンクリート構造物の変状の種類、第1コンクリート構造物の変状の原因、第1コンクリート構造物の変状として特定される定量的な値、を含む。
【0092】
情報処理装置100によれば、第1情報を上記のように特定することにより、第2コンクリート構造物を修繕するための最適な修繕工事費を算出することが可能となる。
【0093】
また、情報処理装置100において、第1コンクリート構造物の変状の種類は、亀裂及び剥落の少なくとも何れか1つを含む。
【0094】
情報処理装置100によれば、第1コンクリート構造物の変状の種類を上記のように特定することにより、第2コンクリート構造物を修繕するための最適な修繕工事費を算出することが可能となる。
【0095】
また、情報処理装置100において、第1コンクリート構造物の変状の原因は、第1コンクリート構造物の施工不良、第1コンクリート構造物の内部要因、第1コンクリート構造物に対する外部要因の何れか1つを含む。
【0096】
情報処理装置100によれば、第1コンクリート構造物の変状の原因を上記のように特定することにより、第2コンクリート構造物を修繕するための最適な修繕工事費を算出することが可能となる。
【0097】
また、情報処理装置100において、修繕単価を示すデータは、記憶部150にテーブルデータ154として予め記憶される。
【0098】
情報処理装置100によれば、修繕単価を常に最新の値に更新できるので、第2コンクリート構造物を修繕するための最適な修繕工事費を算出することが可能となる。
【0099】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。本実施形態で説明した情報処理装置100を含む予測算出システム1は、火力発電所以外の施設に施工されたコンクリート構造物の亀裂や剥落等に対しても、適切な修繕工事の種類の予測と、予測された修繕工事に要する修繕工事費を算出することが可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 予測算出システム
100 情報処理装置
110 入力部
120 予測部
130 算出部
140 出力部
150,310,410 記憶部
151 制御プログラム
152 学習データ
153 学習モデル
154 テーブルデータ
200 表示装置
210 表示パネル
300 管理装置
400 外部コンピュータ
500 通信ネットワーク
1010 プロセッサ
1020 主記憶装置
1030 補助記憶装置
1040 入力装置
1050 出力装置
1060 通信装置
1531 入力層
1532 中間層
1533 出力層