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特開2024-118875光学表示媒体、印刷物、製造方法、認証方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118875
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】光学表示媒体、印刷物、製造方法、認証方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/32 20060101AFI20240826BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240826BHJP
   G03H 1/24 20060101ALI20240826BHJP
   B42D 25/328 20140101ALI20240826BHJP
   G11B 7/0065 20060101ALI20240826BHJP
   G11B 7/24044 20130101ALI20240826BHJP
【FI】
G02B5/32
G02B5/18
G03H1/24
B42D25/328
G11B7/0065
G11B7/24044
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025434
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 聡
(72)【発明者】
【氏名】籠谷 彰人
【テーマコード(参考)】
2C005
2H249
2K008
5D090
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA04
2C005HB07
2C005HB10
2C005JB08
2H249AA07
2H249AA13
2H249AA60
2H249AA66
2H249CA22
2K008AA13
2K008CC01
2K008FF27
2K008HH02
5D090AA03
5D090BB16
5D090KK07
(57)【要約】
【課題】 特定波長あるいは波長帯による輝度を情報とした再生像を表現する光学表示媒体を提供する。
【解決手段】 本発明の光学表示媒体は、多数の空間位相変調素子が記録された記録面を備え、少なくとも特定波長または特定波長帯において、多数の空間位相変調素子のうちの1つまたは複数の空間位相変調素子によって、異なる輝度を有する複数の再生像が再生される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学表示媒体であって、
多数の空間位相変調素子が記録された記録面を備え、
少なくとも特定波長または特定波長帯において、前記多数の空間位相変調素子のうちの1つまたは複数の空間位相変調素子によって、異なる輝度を有する複数の再生像が再生される、
ことを特徴とする光学表示媒体。
【請求項2】
前記複数の再生像は少なくとも第1再生像と第2再生像とを含み、
前記第1再生像は、前記1つまたは複数の空間位相変調素子によって再生される1つまたは複数の第1再生点から構成され、
前記第2再生像は、前記1つまたは複数の空間位相変調素子によって再生される1つまたは複数の第2再生点から構成され、
前記第1再生点と前記第2再生点とは輝度が異なる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の光学表示媒体。
【請求項3】
前記複数の再生像の輝度は、諧調付けされる、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の光学表示媒体。
【請求項4】
前記多数の空間位相変調素子は、白色光を波長分散させ、
前記波長分散により得られた第1波長または第1波長帯の光において、前記1つまたは複数の空間位相変調素子によって再生される各再生像の位置と、前記波長分散により得られた第2波長または第2波長帯の光において、前記1つまたは複数の空間位相変調素子によって再生される各再生像の位置とは異なり、
前記第1波長または前記第1波長帯と、前記第2波長または前記第2波長帯とは異なる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の光学表示媒体。
【請求項5】
前記記録面の法線方向からの角度によって定義される、前記第1再生点を観察可能な角度である第1視野角と、前記法線方向からの角度によって定義される、前記第2再生点を観察可能な角度である第2視野角とは異なる、
ことを特徴とする、請求項2に記載の光学表示媒体。
【請求項6】
前記空間位相変調素子から前記第1再生点までの距離である第1再生高さと、前記空間位相変調素子から前記第2再生点までの距離である第2再生高さとは異なる、
ことを特徴とする、請求項2に記載の光学表示媒体。
【請求項7】
前記第1再生点によって呈される色と、前記第2再生点によって呈される色とは異なる、
ことを特徴とする、請求項2に記載の光学表示媒体。
【請求項8】
前記複数の再生像の輝度はそれぞれ、再生に寄与している空間位相変調素子の面積に応じて諧調付けされる、
ことを特徴とする、請求項3に記載の光学表示媒体。
【請求項9】
前記多数の空間位相変調素子が設けられた微細構造層と、
前記微細構造層の少なくとも一部を覆う反射層とをさらに備え、
前記第1再生点の輝度、および前記第2再生点の輝度はそれぞれ、再生に寄与している空間位相変調素子が設けられた前記微細構造層を覆う反射層の面積に応じて諧調付けされる、
ことを特徴とする、請求項2に記載の光学表示媒体。
【請求項10】
前記多数の空間位相変調素子が設けられた微細構造層と、
前記微細構造層の少なくとも一部を覆う反射層とをさらに備え、
前記反射層によって覆われる前記微細構造層に設けられた前記空間位相変調素子により第1情報が表示され、
前記反射層によって覆われていない前記微細構造層の部分により第2情報が表示される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の光学表示媒体。
【請求項11】
請求項1に記載の光学表示媒体が貼付される、
ことを特徴とする、印刷物。
【請求項12】
諧調データを準備する工程と、
前記諧調データに基づく輝度で集光される再生点を再生する空間位相変調素子を設ける工程とを有する、
ことを特徴とする、光学表示媒体の製造方法。
【請求項13】
諧調データを準備する工程と、
前記諧調データに基づく輝度で集光される再生点を再生する空間位相変調素子を設けることによって第1情報を含める工程と、
前記空間位相変調素子の少なくとも一部に反射層を設ける工程と、
前記反射層の一部を除去することによって第2情報を含める工程とを有する、
ことを特徴とする、光学表示媒体の製造方法。
【請求項14】
請求項2に記載の光学表示媒体を認証するための認証方法であって、
前記第1再生点と前記第2再生点との輝度が異なることを、前記光学表示媒体の認証情報として使用する、
ことを特徴とする、光学表示媒体の認証方法。
【請求項15】
前記第1再生点の輝度および前記第2再生点の輝度をさらに、前記光学表示媒体の認証情報として使用する、
ことを特徴とする、請求項14に記載の光学表示媒体の認証方法。
【請求項16】
請求項4に記載の光学表示媒体を認証するための認証方法であって、
前記波長分散により得られた第1波長または第1波長帯の光において、前記1つまたは複数の空間位相変調素子によって再生される各再生像の位置と、
前記波長分散により得られた第2波長または第2波長帯の光において、前記1つまたは複数の空間位相変調素子によって再生される各再生像の位置とを前記光学表示媒体の認証情報として使用する、
ことを特徴とする、光学表示媒体の認証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、偽造防止効果を提供する表示技術が施された光学表示媒体、印刷物、製造方法、認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、有価証券類、カード類、証明書類には、それらの偽造を困難にするために、通常の印刷物とは異なる視覚効果を有する表示体が貼り付けられている場合がある。
【0003】
これら偽造防止媒体の1つとしては、特許文献1に記載の光学フィルムがある。特許文献1は計算機合成ホログラムに関し、記録時の参照光の条件を用いずに再生像を再生できるよう、計算機によって計算された空間情報の位相成分を記録された光学フィルムが開示されている。
【0004】
また、特許文献1と同様な偽造防止媒体の1つとして、特許文献2に記載の光学フィルムがある。特許文献2では、絵柄の明るさと精細さを考慮し、再生点の数が最適化された光学フィルムが開示されている。また、明るさが均一な単調再生像、及び、明るさの諧調を持つ濃淡再生像を有する光学フィルムが開示されている。単調再生像でトレードマークや、ロゴマーク、符号および社名等の可読情報を表示し、濃淡再生像で肖像画やランドマーク等の絵画を表示でき、識別情報と美術的な価値の両立が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/209113A1号公報
【特許文献2】国際公開第2018/097315A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示された技術は、記録時の参照光の条件を用いずに再生像を再生できるよう、計算機によって計算された空間情報の位相成分を記録する光学フィルムのための、再生点の数の最適化を図った光学フィルムを提供する。
【0007】
この技術は、特定波長あるいは波長帯による明るさ(輝度)を情報とした再生像を表現する光学フィルムを提供するものではない。
【0008】
そこで本発明の目的は、特定波長あるいは波長帯による輝度を情報とした再生像を表現する光学表示媒体、光学表示媒体が添付された印刷物、光学表示媒体の製造方法、および光学表示媒体の認証方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0010】
第1の態様の光学表示媒体は、多数の空間位相変調素子が記録された記録面を備え、少なくとも特定波長または特定波長帯において、多数の空間位相変調素子のうちの1つまたは複数の空間位相変調素子によって、異なる輝度を有する複数の再生像が再生される、ことを特徴とする光学表示媒体である。
【0011】
第2の態様の光学表示媒体は、第1の態様の光学表示媒体において、複数の再生像は少なくとも第1再生像と第2再生像とを含み、第1再生像は、1つまたは複数の空間位相変調素子によって再生される1つまたは複数の第1再生点から構成され、第2再生像は、1つまたは複数の空間位相変調素子によって再生される1つまたは複数の第2再生点から構成され、第1再生点と第2再生点とは輝度が異なる、ことを特徴とする。
【0012】
第3の態様の光学表示媒体は、第1または第2の態様の光学表示媒体において、複数の再生像の輝度は、諧調付けされる、ことを特徴とする。
【0013】
第4の態様の光学表示媒体は、第1の態様の光学表示媒体において、多数の空間位相変調素子は、白色光を波長分散させ、波長分散により得られた第1波長または第1波長帯の光において、1つまたは複数の空間位相変調素子によって再生される各再生像の位置と、波長分散により得られた第2波長または第2波長帯の光において、1つまたは複数の空間位相変調素子によって再生される各再生像の位置とは異なり、第1波長または第1波長帯と、第2波長または第2波長帯とは異なる、ことを特徴とする。
【0014】
第5の態様の光学表示媒体は、第2の態様の光学表示媒体において、記録面の法線方向からの角度によって定義される、第1再生点を観察可能な角度である第1視野角と、法線方向からの角度によって定義される、第2再生点を観察可能な角度である第2視野角とは異なる、ことを特徴とする。
【0015】
第6の態様の光学表示媒体は、第2の態様の光学表示媒体において、空間位相変調素子から第1再生点までの距離である第1再生高さと、空間位相変調素子から第2再生点までの距離である第2再生高さとは異なる、ことを特徴とする。
【0016】
第7の態様の光学表示媒体は、第2の態様の光学表示媒体において、第1再生点によって呈される色と、第2再生点によって呈される色とは異なる、ことを特徴とする。
【0017】
第8の態様の光学表示媒体は、第3の態様の光学表示媒体において、複数の再生像の輝度はそれぞれ、再生に寄与している空間位相変調素子の面積に応じて諧調付けされる、ことを特徴とする。
【0018】
第9の態様の光学表示媒体は、第2の態様の光学表示媒体において、多数の空間位相変調素子が設けられた微細構造層と、微細構造層の少なくとも一部を覆う反射層とをさらに備え、第1再生点の輝度、および第2再生点の輝度はそれぞれ、再生に寄与している空間位相変調素子が設けられた微細構造層を覆う反射層の面積に応じて諧調付けされる、ことを特徴とする。
【0019】
第10の態様の光学表示媒体は、第1の態様の光学表示媒体において、多数の空間位相変調素子が設けられた微細構造層と、微細構造層の少なくとも一部を覆う反射層とをさらに備え、反射層によって覆われる微細構造層に設けられた空間位相変調素子により第1情報が表示され、反射層によって覆われていない微細構造層の部分により第2情報が表示される、ことを特徴とする。
【0020】
第11の態様の印刷物は、第1の態様の光学表示媒体が貼付された、ことを特徴とする。
【0021】
第12の態様の光学表示媒体の製造方法は、諧調データを準備する工程と、諧調データに基づく輝度で集光される再生点を再生する空間位相変調素子を設ける工程とを有する、ことを特徴とする。
【0022】
第13の態様の光学表示媒体の製造方法は、諧調データを準備する工程と、諧調データに基づく輝度で集光される再生点を再生する空間位相変調素子を設けることによって第1情報を含める工程と、空間位相変調素子の少なくとも一部に反射層を設ける工程と、反射層の一部を除去することによって第2情報を含める工程とを有する、ことを特徴とする。
【0023】
第14の態様の光学表示媒体の認証方法は、第2の態様の光学表示媒体を認証するための認証方法であって、第1再生点と第2再生点との輝度が異なることを、光学表示媒体の認証情報として使用する、ことを特徴とする。
【0024】
第15の態様の光学表示媒体の認証方法は、第14の態様の光学表示媒体の認証方法において、第1再生点の輝度および第2再生点の輝度をさらに、光学表示媒体の認証情報として使用する、ことを特徴とする。
【0025】
第16の態様の光学表示媒体の認証方法は、態様4の態様の光学表示媒体を認証するための認証方法であって、波長分散により得られた第1波長または第1波長帯の光において、1つまたは複数の空間位相変調素子によって再生される各再生像の位置と、波長分散により得られた第2波長または第2波長帯の光において、1つまたは複数の空間位相変調素子によって再生される各再生像の位置とを光学表示媒体の認証情報として使用する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
第1の態様の光学表示媒体によれば、異なる輝度を有する再生像を再生することができる。
【0027】
第2の態様の光学表示媒体によれば、特に、異なる輝度を有する2つの再生像を再生することができる。
【0028】
第3の態様の光学表示媒体によれば、所望の輝度諧調を有する複数の再生像を再生することができる。
【0029】
第4の態様の光学表示媒体によれば、波長毎に変化する再生像の座標を、認証情報として利用することができる。
【0030】
第5の態様の光学表示媒体によれば、観察角度に応じて、再生点の波長毎の座標変化特性を変えることができる。
【0031】
第6の態様の光学表示媒体によれば、再生点毎に変化する再生高さを、認証情報として利用することができる。
【0032】
第7の態様の光学表示媒体によれば、再生点毎に異なる色を、認証情報として利用することができる。
【0033】
第8の態様の光学表示媒体によれば、再生像毎に異なる輝度を、繊細に実現できる。
【0034】
第9の態様の光学表示媒体によれば、再生像毎に異なる輝度を、繊細かつ滑らかに実現できる。
【0035】
第10の態様の光学表示媒体によれば、再生像とオンデマンドな顔画像のような同一媒体に2つの情報を設け、オバートおよびコバートで真贋判定が可能となる。
【0036】
第11の態様の印刷物によれば、第1の態様の光学表示媒体が貼付された印刷物を実現できる。
【0037】
第12の態様の製造方法によれば、所望の輝度諧調の光学表示媒体を製造することができる。
【0038】
第13の態様の製造方法によれば、再生像とオンデマンドな顔画像のような同一媒体に2つの情報を設けた光学表示媒体を製造することができる。
【0039】
第14の態様の認証方法によれば、光学表示媒体の真贋判定をコバートで実行でき、偽造抑制効果の向上を図ることもできる。
【0040】
第15の態様の認証方法によれば、光学表示媒体の真贋判定をコバートで実行でき、さらに、より多くの情報で真贋判定を行えるため、偽造防止効果の向上を図ることもできる。
【0041】
第16の態様の認証方法によれば、光学表示媒体の真贋判定をコバートで実行でき、偽造抑制効果の向上を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る光学表示媒体を含む身分証の一例を示す平面図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る光学表示媒体による光学効果の一例を模式的に示す、図1に示す身分証の斜視図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る光学表示媒体の輝度諧調を説明するための平面図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る光学表示媒体において、異なる波長で再生された再生像の輝度と位置との関係を説明するための平面図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る光学表示媒体において、再生点の位置が波長に応じて変化する原理を説明するための図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る光学表示媒体の再生点(再生像)の視野角を説明するための概念図である。
図7図7は、空間位相変調素子を変えることで、白色光入射時の波長ごとに、再生位置が変化する例を示す概念図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る光学表示媒体の再生点(再生像)の視野角を説明するための別の概念図である。
図9図9は、第1の実施形態に係る光学表示媒体からの再生点(再生像)の高さを説明するための概念図である。
図10図10は、再生点毎に色が異なる第1の実施形態に係る光学表示媒体を説明するための概念図である。
図11図11は、第1の実施形態に係る光学表示媒体の層構成の一例を示す側断面図である。
図12図12は、第1の実施形態に係る光学表示媒体の空間位相変調素子を説明するための平面図である
図13図13は、第2の実施形態に係る光学表示媒体を含む身分証の一例を示す平面図である。
図14図14は、第2の実施形態に係る光学表示媒体の層構成の一例を示す側断面図である。
図15図15は、実施例2で作製された再生像の撮影により得られた画像である。
図16図16は、実施例3で作製された再生像の撮影により得られた画像である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全ての図面を通じて、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0044】
また、本発明の実施形態は、独自の単一の発明を基とする一群の実施形態である。また、本発明の各実施形態は、単一の発明を基とした一群の発明を構成する。本発明の各構成は、本開示の各実施形態を有し得る。本発明の各特徴は組み合わせ可能であり、各構成を成すことができる。したがって、本発明の各特徴、本発明の各構成、本開示の各態様、本発明の各実施形態は、組み合わせることが可能であり、その組み合わせは協同機能を発現し、相乗的な効果を発揮し得る。
【0045】
(第1の実施の形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係る光学表示媒体について説明する。
【0046】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光学表示媒体を含む身分証の一例を示す平面図である。
【0047】
図1では、第1の実施形態に係る光学表示媒体10が内包された身分証明書11が概略的に示されている。図1では、特に、身分証明書11がパスポートである例が示されている。このように、光学表示媒体10は、印刷物に貼付することができる。
【0048】
光学表示媒体10は、多数の空間位相変調素子を備えてなる。そして、少なくとも特定波長または特定波長帯において、多数の空間位相変調素子のうちの1つまたは複数の空間位相変調素子によって、異なる輝度を有する複数の再生像が再生される。
【0049】
図2は、第1の実施形態に係る光学表示媒体による光学効果の一例を模式的に示す、図1に示す身分証の斜視図である。
【0050】
図2には、光学表示媒体10による光学効果の一例として、光学表示媒体10による再生点RPと再生像RIとが概略的に示されている。一例として図2には、3つの再生像RI、すなわち、第1再生像RI1、第2再生像RI2、および第3再生像RI3が例示されている。
【0051】
第1再生像RI1は、1つまたは複数の空間位相変調素子によって再生される1つまたは複数の第1再生点RP1から構成される。
【0052】
第2再生像RI2は、1つまたは複数の空間位相変調素子によって再生される1つまたは複数の第2再生点RP2から構成される。
【0053】
第3再生像RI3は、1つまたは複数の空間位相変調素子によって再生される1つまたは複数の第3再生点RP3から構成される。
【0054】
第1再生点RP1の明るさ(以降、「明るさ」を「輝度」とも称する)は、相対的に第2再生点RP2の輝度より高い。
【0055】
また、第3再生点RP3も、第1再生点RP1、第2再生点RP2と異なる輝度であっても良い。図2に示す例では、第3再生点RP3は、第1再生点RP1および第2再生点RP2よりも輝度が低い場合を示している。なお、第1再生像RI1と第2再生像RI2のように、異なる再生像RIの組合せによって、組合せの絵柄を形成しても良い。
【0056】
第1再生点RP1と第2再生点RP2との輝度が異なることから、輝度のコントラストにより、輝度差が大きいほど、第1再生点RP1と第2再生点RP2とが、はっきり区別して観察される。一方、輝度の差が小さいほど、第1再生点RP1と第2再生点RP2同士を、ぼやけさせることもでき、滑らかな表現が可能となる。
【0057】
図3は、第1の実施形態に係る光学表示媒体の輝度諧調を説明するための平面図である。
【0058】
図2に例示する各再生像RI1~RI3は、その輝度が、図3に例示されているように、諧調付けられている。すなわち、星形の再生像RI1が、最も輝度が高い第1諧調に相当し、丸型の再生像RI2が、次に輝度が高い第2諧調に相当し、煌めき型の再生像RI3が、次に輝度が高い第3諧調に相当する。光学表示媒体10のうち、再生像RI1~RI3が再生されない図中黒色で示される部分の輝度は、再生像RI3の輝度よりも低い第4諧調に相当する。このように、図3は、4つの輝度の階調データで表現されている光学表示媒体10を例示している。このように輝度を諧調データで表現することで、デジタルデータとして取り扱うことが可能となる。
【0059】
光学表示媒体10は、多諧調で作製されていれば良く、諧調数としては、図3に例示される4諧調に限定されず、例えば、2諧調、16諧調、256諧調で作製することもできる。なお、輝度の諧調データは、特定波長、あるいは特定波長帯での輝度として取り扱うことも可能である。
【0060】
再生像RIのデジタルデータは、ディザリング処理されていても、フィルタリング処理されていてもよい。また、同じ再生像RI内で、輝度の階調を有するようにしても良い。これらによって、再生像RIを自然に、あるいは、恣意的に見せることも可能となる。
【0061】
再生点RPを結像させるために、空間位相変調素子に、後で詳述するように計算機ホログラムを適用することができる。計算機ホログラムは、フーリエ変換ホログラムとも、フレネル変換ホログラムともできる。また、空間位相変調素子は、焦点に複数の回折光が再生点RPに集光する回折格子とすることもできる。
【0062】
フレネル変換ホログラムは、特許文献1で開示された微細凹凸構造とできる。フレネル変換ホログラムは、複数の再生点RPで再生像RIを表示できる。
【0063】
図4は、第1の実施形態に係る光学表示媒体において、異なる波長で再生された再生像の輝度と位置との関係を説明するための平面図である。
【0064】
空間位相変調素子は、白色光を、複数の波長または波長帯に波長分散させ、波長分散により得られた各波長または波長帯において、再生像RIを再生することができる。
【0065】
図4(a)、図4(b)、および図4(c)は、空間位相変調素子による波長分散によって白色光から得られた波長1、波長2、および波長3において再生された各再生像RIをそれぞれ示している。
【0066】
図4(a)、図4(b)、および図4(c)は、図2に例示するように、光学表示媒体10に表面側から白色光を照射し、それぞれ異なる特定波長である波長1、波長2、波長3のおのおので得られた再生像RIの輝度を、カメラで撮影して得られた画像である。例えば波長1は赤色、波長2は緑色、波長3は青色に相当する波長とできる。なお、波長は、このような可視域に限定されず、赤外域ともできる。
【0067】
図4(a)、図4(b)、および図4(c)に示されるように、各波長とも、図3同様に3つの再生像RI1、RI2、RI3を再生している。しかしながら、再生像RI1、RI2、RI3が再生される位置は、波長毎に異なっており、波長が、波長1から波長2、さらに波長2から波長3へと低波長側にシフトするにしたがって、再生像RI1、RI2、RI3が再生される位置が、図中右下側へシフトしている。例えば、同じ再生像RI1であっても、波長1で再生される再生像RI1(1)(図4(a))の位置、波長2で再生される再生像RI1(2)(図4(b))の位置、および波長3で再生される再生像RI1(3)(図4(c))の位置が、図中右下側へシフトしている。
【0068】
このように、空間位相変調素子は、白色光を波長分散させ、波長に応じて再生像RIの位置を変化させることができる。すなわち、空間位相変調素子は、白色光を波長分散させ、波長に応じて再生点RPの位置を変化させることができる。この原理を、図5を用いて詳細に説明する。
【0069】
図5は、第1の実施形態に係る光学表示媒体において、再生点の位置が波長に応じて変化する原理を説明するための図である。
【0070】
光学表示媒体10の記録面20には、多数の空間位相変調素子12が記録されている。
【0071】
空間位相変調素子12に入射した波長Bの光は、再生点RP_Bに集光される。
【0072】
一方、空間位相変調素子12に入射した、波長Bよりも長波長である波長Aの光は、空間位相変調素子12により、再生点RP_Bとは異なる位置である再生点RP_Aに、再生点RP_Bとは異なる輝度で集光される。
【0073】
また、空間位相変調素子12に入射した、波長Bよりも短波長である波長Cの光は、空間位相変調素子12により、再生点RP_A,RP_Bとは異なる位置である再生点RP_Cに、再生点RP_A,RP_Bとは異なる輝度で集光される。
【0074】
各再生点RP_A,RP_B,RP_Cの輝度は、その波長A,B,Cの回折効率により変わる。また、波長A,B,Cにより回折角が変わるため、視野角も変わる。なお、視野角とは、再生点RPを形成させる空間位相変調素子12の角度であり、詳細については、図6を用いて後述する。
【0075】
例えば、空間位相変調素子12が波長Bに対して計算されて設けられた場合、再生点RPを形成させる空間位相変調素子12が波長Bで最適化されているため、波長Aや波長Cに対しては、空間位相変調素子12の有効量が変わる。
【0076】
すなわち、波長Bにとって有効な空間位相変調素子12のエリアは、空間位相変調素子エリアEC-,EB,EA-の合計であるが、波長Aにとって有効な空間位相変調素子12は、空間位相変調素子EA-エリア分だけ設けられていない。同様に、波長Cにとって有効な空間位相変調素子12は、空間位相変調素子EC-エリア分だけ設けられていない。この空間位相変調素子12の有効量の違いが、再生点RP_A,RP_B,RP_Cごとの輝度に反映される。また、同様な理由で、波長A,B,Cに応じて再生点A,B,Cの位置が変わる。また、この原理を利用して、複数の再生像RIの輝度をそれぞれ、再生に寄与している空間位相変調素子12の面積に応じて諧調付けすることも可能となる。
【0077】
次に、視野角について図6を用いて説明する。
【0078】
図6は、第1の実施形態に係る光学表示媒体の再生点(再生像)の視野角を説明するための概念図である。
【0079】
図6に示すように視野角VAは、再生点RPを形成させる空間位相変調素子12の角度であって、記録面20の法線方向からの傾斜角度によって定義される。観察者は、再生像RIを視野角方向から観察することができる。
【0080】
図6右側の図は、第1再生点RP1とその視野角VA1とを例示し、図6左側の図は、第2再生点RP2とその視野角VA2とを例示している。図6では、視野角VA1と視野角VA2とが異なっている。このように、再生点RP毎に視野角VAを異なるようにすることもできる。
【0081】
視野角VAにより再生点RPを形成させる空間位相変調素子12を変えることができ、再生点の輝度を調整することが可能となる。
【0082】
図6において、視野角VA1と視野角VA2を比較すると、視野角VA1の方が視野角VA2より小さい。視野角VAが小さい分、集光点における光は絞られるため、再生点RP2よりも、再生点RP1の方が輝度は高くなる。
【0083】
また、空間位相変調素子12を変えることで、白色光入射時の波長ごとに、再生点RPが再生される位置を変えることもできる。
【0084】
図7は、空間位相変調素子を変えることで、白色光入射時の波長ごとに、再生位置が変化する例を示す概念図である。
【0085】
図7には、白色光が、視野角VAの異なる2つの再生点RP1(図中右側),RP2(図中左側)に入射した場合が例示されている。
【0086】
再生点RP1について説明する。図5と同様な理由で、波長A、波長B、波長Cの光が入射すると、それぞれの波長の光は、それぞれの視野角VAで集光され、それぞれの再生点RP1_A、再生点RP1_B、再生点RP1_Cにおいて再生される。また、図5と同様な理由で、各再生点RP1_A,RP1_B,RP1_Cの輝度は異なる。
【0087】
再生点RP2についても、同様に、波長A、波長B、波長Cの光は、それぞれの視野角VAで集光され、それぞれの再生点RP2_A、再生点RP2_B、再生点RP2_Cにおいて再生される。また、図5と同様な理由で、各再生点RP2_A,RP2_B,RP2_Cの輝度は異なる。このとき、再生点RP1_A、RP1_B、RP1_C内の相対的な輝度および位置に対して、再生点RP2_A、RP2_B、RP2_C内の相対的な輝度および位置は異なる。よって、再生点RP1と再生点RP2とで視野角VAが変わると、入射波長によって、再生点RP内の輝度および位置関係が変わる。
【0088】
図8は、第1の実施形態に係る光学表示媒体の再生点(再生像)の視野角を説明するための別の概念図である。
【0089】
図8には、2つの再生点RP、すなわち、第1再生点RP1と、第2再生点RP2とが示されている。第1再生点RP1の視野角VA1は、第2再生点RP2の視野角VA2よりも小さい。したがって、第1再生点RP1の輝度は、低い第2再生点RP2の輝度よりも相対的に高い。このような場合の目視効果を以下に説明する。
【0090】
図8のように、第1再生点RP1と第2再生点RP2との視野が重ならないようにすることができる。視野角VA1が狭く、輝度は高いが消失しやすい第1再生点RP1により形成される第1再生像RI1と、視野角VA2が広く、輝度は低いが消失しにくい第2再生点RP2により形成される第2再生像RI2とにより、観察者は、第2再生像を観察・確認したのち、視野を変えて、第1再生像RI1を瞬くように観察することができる。すなわち、第1再生点RP1が観察される視野では第1再生点RP1のみが、第2再生点RP2が観察される視野では第2再生点RP2のみが観察される。
【0091】
このように、視野角VAにより観察される再生点RPが変化することで、光学表示媒体10は、観察者に対して、瞬くような特殊な光学効果を与えることができる。
【0092】
次に、図9を用いて、光学表示媒体10の記録面20から各再生点RP1,RP2までの高さh1,h2の違いについて説明する。
【0093】
図9は、第1の実施形態に係る光学表示媒体からの再生点(再生像)の高さを説明するための概念図である。
【0094】
図9に例示するように、光学表示媒体10は、各再生点RP1,RP2ごとに、記録面20からの高さh1,h2を変えることができる。
【0095】
記録面20から再生点RPまでの高さhにより、撮影時のぼけ量が異なる。このため、各再生点RP1,RP2ごとに、記録面20からの高さh1,h2を変えることによって、再生点RP1,RP2個々の輝度を変えることができる。また、白色光の照射時における個々の再生点RP1,RP2への集光の具合が変わるので、個々の再生点RP1,RP2の集合である再生像の輝度も波長毎に変えることができる。
【0096】
なお、再生点RPは、オバートとして明瞭に再生像を観察する観点から、フレネル変換ホログラムが記録された記録面20からの距離は、2mm以上、25mm以下に表示されるのが好ましい。なお、再生点RPは、記録面20から観察者側に再生される場合と、記録面20の観察者と反対側に再生される場合とがある。どちらの場合でも、再生点RPの、微細構造からの距離は同様に規定できる。
【0097】
次に、図10を用いて、再生点毎に色を変えることについて説明する。
【0098】
図10は、再生点毎に色が異なる第1の実施形態に係る光学表示媒体を説明するための概念図である。
【0099】
図10において、例えば、第1再生点RP1の輝度を相対的に高く、第2再生点RP2の輝度を相対的に低くすることで、第1再生点RP1と第2再生点RP2との色を変えることができる。具体的には、第1再生点RP1の色を黄色、第2再生点RP2の色を青色とできる。このように、再生点RP毎に、輝度のみならず、色も異なるようにすることで、各再生点RP1,RP2を、くっきり、はっきり、視認できるようになる。再生点RPの色は、例えば、空間位相変調素子12の凹凸構造の構造深さを変えることで、変えることができる。
【0100】
次に、光学表示媒体の層構成と製造方法について説明する。
【0101】
図11は、第1の実施形態に係る光学表示媒体の層構成の一例を示す側断面図である。
【0102】
光学表示媒体10の層構成は、図11に例示するように、図中上側からキャリア13、剥離層14、微細構造層15、反射層16とできる。また、図示していないが、接着層を適宜加えることもできる。
【0103】
剥離層14、微細構造層15、および接着層(存在する場合)の材料には、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂などの光透過性樹脂などの樹脂を使用できる。
【0104】
これら樹脂は、具体的には、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、および、セルロース系樹脂などとできる。ポリスチレン系樹脂は、アクリロニトリル-(ポリ)スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)とできる。
【0105】
なお、剥離層14、微細構造層15、および接着層(存在する場合)の形成材料は、これらの樹脂のうち1つの樹脂とできる。あるいは、2つ以上の樹脂の混合または複合ともできる。オリゴマー、ポリマー、またはその混合といった樹脂を使用でき、また樹脂に、無機粒子、有機粒子、またはその双方を含有してもよい。樹脂は、硬化剤を添加しない場合は熱可塑樹脂となる。
【0106】
微細構造層15にこのような熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を使用することによって、凹凸形状が形成された原版から、微細凹凸形状を成形できる。凹凸形状は、キャリア13と接する面と反対面である記録面に形成される。また、キャリア13と剥離層14との接する面が、表示面となる。この表示面は、キャリア13の表面と平行となる。なお、剥離層14は省略されてもよく、同様に、キャリア13も省略されても良い。
【0107】
キャリア13は、プラスチックフィルムまたはプラスチックシートとできる。キャリア13は、それ自体を単独に扱うことができる。キャリア13の材質は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)やポリカーボネート(PC)とできる。
【0108】
キャリア13の厚さは、19μm以上、500μm以下とできる。剥離層14の厚さは、0.3μm以上、2μm以下とできる。微細構造層15の厚さは、0.5μm以上、15μm以下とできる。また、接着層の厚さは、1μm以上、20μm以下とできる。
【0109】
光学表示媒体10は、剥離層14としてキャリア13上に熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂を塗布し、さらに、例えば微細構造層15である機能層を塗布した後、この機能層の記録面に、微細凹凸形状が形成された原版を押し当てることで得られる。
【0110】
反射層16は、このようにして得られた微細構造層15の微細凹凸構造の表面の少なくとも一部を覆うように、かつ微細凹凸構造に追従するように配置されている。
【0111】
反射層16の材料には、アルミニウム、銅、銀、金、およびそれらの合金など、光を反射する金属を適用する。中でもアルミニウムが好適である。また、無機蒸着層と金属蒸着層の多層でもよい。反射層16の厚みは、10nm以上、200nm以下とできる。厚みを10nm以上とすることで、反射層16の薄膜の反射効果を、目視で許容する程度に実現できる。一方、厚みを200nm以下とすることで、加工時の取り回しを容易にできる。
【0112】
前述した層を構成する際に、諧調データを準備し、諧調データに基づく輝度で集光される再生点を再生する空間位相変調素子12を設けながら行う。さらには、諧調データに基づく輝度で集光される再生点を再生する空間位相変調素子12を設けることによって第1情報を含める工程と、空間位相変調素子12の少なくとも一部に反射層16を設ける工程と、反射層16の一部を除去することによって第2情報を含める工程とも実施する。
【0113】
第1再生点の輝度、および第2再生点の輝度はそれぞれ、再生に寄与している空間位相変調素子12が設けられた微細構造層を覆う反射層16の面積に応じて諧調付けされる。
【0114】
図12は、第1の実施形態に係る光学表示媒体の空間位相変調素子を説明するための平面図である。
【0115】
第1の実施形態に係る光学表示媒体では、図12に例示するように、計算された空間位相変調素子12が、微細凹凸構造に設けられる。微細凹凸構造に反射層16を設けることで入射光の反射率を高めることができる。
【0116】
第1再生点RP1と第2再生点RP2との輝度を決定する空間位相変調素子12は、その面積が変調されていても良い。例えば、相対的に輝度の高い第1再生点RP1を、より広い面積からなる空間位相変調素子12で形成し、相対的に輝度の低い第2再生点RP2を、より狭い面積からなる位相変調素子12で形成することができる。
【0117】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る光学表示媒体について説明する。以下の説明では、第1の実施形態と異なる点について説明し、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0118】
図13は、第2の実施形態に係る光学表示媒体を含む身分証の一例を示す平面図である。
【0119】
第2の実施形態に係る光学表示媒体10Aでは、空間位相変調素子12上に設けられた反射層16を、例えば図14に例示するように、選択的に除去する。
【0120】
光学表示媒体10Aは、空間位相変調素子12に設けられた反射層16の一部が除去されても、除去されていない空間位相変調素子12によって再生像RIを再生できるため、再生像RIを表示しながら、反射層16の除去によって実現される新たな情報を表示する。
【0121】
これによって、光学表示媒体10Aは、図13に例示するように、図2に示す光学表示媒体10でも表示されていた再生像RI1,RI2,RI3に加えて、顔写真19も表示できるようになる。つまり、光学表示媒体10では、再生像RI1,RI2,RI3という第1情報しか表示できなかったのに対して、光学表示媒体10Aでは、再生像RI1,RI2,RI3という第1情報に加えて、顔写真19のような第2情報をも表示可能となる。
【0122】
このように、光学表示媒体10Aは、反射層16によって覆われる微細構造層15に設けられた空間位相変調素子12により第1情報を表示し、反射層16によって覆われていない微細構造層15の部分により第2情報を表示する。
【0123】
次に、反射層16を選択的に除去する方法について図14を用いて説明する。
【0124】
図14は、第2の実施形態に係る光学表示媒体の層構成の一例を示す側断面図である。
【0125】
図14には、光学表示媒体10Aの反射層16の一部が除去された状態が示されている。
【0126】
反射層16が除去された光学表示媒体10Aは、微細構造層15、反射層16が一体化されたのち、反射層16の一部をディメタにより除去することによって作製できる。ディメタは、レーザービームLAの照射により実施できる。具体的には、レーザービームLAを照射し、任意の画像を作製することによって実施できる。
【0127】
レーザービームLAには、波長が1064nmのYVOや、YAGレーザーのような固定レーザーを適用できる。ファイバーレーザも適用できる。レーザービームLAの走査速度やステップ幅、出力の繰り返し周波数を調整することで、反射層16の除去領域におけるレーザービームLAの走査方向Sの個々のパルス痕や、パルス痕とパルス痕との重なり程度を調整できる。
【0128】
(認証方法)
次に、第1および第2の実施形態に係る光学表示媒体の認証方法について説明する。この認証方法は、第1および第2の両方の実施形態の光学表示媒体に共通して適用できる。
【0129】
まず、図2を用いて説明したように、空間位相変調素子12によって再生される各再生点RP1,RP2,RP3の輝度は異なる。このように、再生点RP毎に異なる輝度を、光学表示媒体10の認証情報として使用することができる。
【0130】
また、図4および図5を用いて説明したように、空間位相変調素子12は、白色光を波長分散させ、波長に応じて再生点RPの位置を変化させることができる。このように波長によって再生点RPの位置が変化するという特性を、光学表示媒体10の認証に使用することができる。
【0131】
このように、光学表示媒体10は、再生点RPの輝度によって、光学表示媒体10自体の真贋判定を行える。また、同様に、特定波長、あるいは、波長帯での再生点RPの位置によっても、光学表示媒体10自体の真贋判定を行える。
【0132】
このような真贋判定を行う場合、例えば、光学表示媒体10に白色光を照射する。そして、再生点RPにカメラ焦点を合わせて撮影し、撮影画像を得る。このとき、外部光の影響を避けたほうが良い。光源の種類としては、ハロゲン光源、LED光源を用いることができる。カメラには、モノクロカメラ、カラーカメラいずれを用いることができる。そして、カメラによって撮影された画像を、予め準備されたベース情報と比較することにより、光学表示媒体10の真贋を判定できる。
【0133】
また、再生像RI同士の相対的な輝度や、位置情報で真贋判定を行う場合は、再生像RIの個々の絶対的な輝度や、位置情報を用いて真贋判定することができる。この場合、ベース情報としては、元画像の輝度諧調データを予め準備しておき、比較する。
【0134】
なお、輝度測定のために、カメラのほかに、輝度計、照度計をも使用できる。
【実施例0135】
以下に、光学表示媒体10によって、所望する輝度を有する再生点RPからなる再生像RIを形成するための、空間位相変調素子12の計算機による計算の実施例について説明する。
【0136】
(実施例1)
実施例1では、まず、再生像RIの輝度諧調のグレースケールでデータを準備した。次に、再生点RPの視野角VAを20度と固定し、計算要素区間を規定し、指定した輝度の再生点RPとなるよう空間位相変調素子12を計算した。
【0137】
次に、この計算結果を用いて、電子線描画により、レジスト基板に、描画エネルギーを加え、描画を行った。その後、現像処理を行い、空間位相変調素子12のパターンを作製した。さらに、レジスト原版に、ニッケル蒸着を行い、シード層をつけ、ニッケル電鋳法により、ニッケル電鋳版を作製した。
【0138】
作製したニッケル電鋳版に、無溶剤の液体の紫外線硬化樹脂を滴下した。次に、予め、PET基材に剥離層を塗工した積層フィルムを、剥離層側を紫外線硬化樹脂と接地させ、紫外線を照射した。
【0139】
その後、ニッケル電鋳版から積層フィルムを剥離することで、ニッケル電鋳版の微細構造を転写した。さらに、微細構造面に真空蒸着法によって、アルミニウムを設けた。
【0140】
上述のように作製した光学表示媒体10をPET面側から観察したところ、高輝度の再生点と、低輝度の再生点により、それぞれ輝度の異なる再生像を確認することができた。
【0141】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様に高輝度の再生点RPと、低輝度の再生点RPとにより、輝度の異なる再生像RIを作製し、作製した再生像RIの光学表示媒体10に、ハロゲン光源を照射した。
【0142】
その後、RGBカメラにより、再生像に焦点を合わせ、撮影した。
【0143】
図15は、実施例2で作製された再生像の撮影により得られた画像である。
【0144】
図15に示すように、この画像でも、高輝度の再生像RIと、相対的に暗い低輝度の再生像RIとが確認された。
【0145】
(実施例3)
実施例3では、実施例1と同様に高輝度の再生点RPと、低輝度の再生点RPとにより、輝度の異なる再生像RIを作製し、作製した再生像RIの光学表示媒体10に、ハロゲン光源を照射した。
【0146】
その後、複数バンドを検出可能なカメラにより、再生像RIに焦点を合わせ、撮影した。
【0147】
図16は、実施例3で作製された再生像の撮影により得られた画像である。
【0148】
図16には、可視領域における3つの周波数バンド、すなわち、(a)波長550nm、(b)波長460nm、および(c)波長640nmにおいて撮影された画像が示されている。
【0149】
図16(a),(b),(c)に示されるように、各周波数バンドで撮影された画像でも、高輝度の再生像RIと、相対的に暗い低輝度の再生像RIとが確認された。さらに、周波数バンドにより、再生像の相対的な位置が変わることも確認された。
【0150】
(実施例4)
実施例4では、実施例1と同様に高輝度の再生点RPと、低輝度の再生点RPとにより、輝度の異なる再生像のフィルムを作製した。さらに、アルミニウム面に接着剤を塗工した。そして、作成した光学表示媒体10をポリカシート基材に転写した。
【0151】
その後、ポリカーボネート基材に、積層フィルムを、接着層側から接地させ、熱と圧をかけ、転写した。
【0152】
その後、ポリカシート基材を剥離し、転写したポリカーボネート基材を別の有色ベース層となるポリカーボネート基材と積層し、熱と圧をかけ、融着させ、カード形状とした。
【0153】
このカードに、1064nmの赤外光のパルスレーザ光を照射した。なお、照射する際は、予め、任意の画像の各画素の、輝度値を、各画素エリアの走査長となるように、データ変換しておき、そのデータを用いて、レーザー光を走査させ、反射層16の一部を除去した。
【0154】
反射層16の有無により顔画像を確認することができた。また、一部の反射層16が除去されても、再生像RIを視認することができた。
【0155】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の光学表示媒体は、上述した身分証明書に内包されるほか、偽造防止印刷物として、例えば、クレジットカード、IDカード等のカード類や、紙幣や商品券、小切手、手形、株券、などの金券類に貼付して使用できる。
【0157】
また、本発明の光学表示媒体は、反射層の有無で、オンデマンドな画像などの情報を付与することもできる。よって、個人情報が付与されるようなパスポートや運転免許証、IDカードのような個人認証体などの物品に含まれ、その価値を保護するために利用することもできる。
【符号の説明】
【0158】
10,10A・・光学表示媒体
11・・身分証明書
12・・空間位相変調素子
13・・キャリア
14・・剥離層
15・・微細構造層
16・・反射層
19・・顔写真
20・・記録面
h,h1,h2・・高さ
LA・・レーザービーム
RI・・再生像
RP・・再生点
S・・走査方向
VA・・視野角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16