IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エフ・シー・シーの特許一覧

<>
  • 特開-クラッチ装置 図1
  • 特開-クラッチ装置 図2
  • 特開-クラッチ装置 図3
  • 特開-クラッチ装置 図4
  • 特開-クラッチ装置 図5
  • 特開-クラッチ装置 図6
  • 特開-クラッチ装置 図7
  • 特開-クラッチ装置 図8
  • 特開-クラッチ装置 図9
  • 特開-クラッチ装置 図10
  • 特開-クラッチ装置 図11
  • 特開-クラッチ装置 図12
  • 特開-クラッチ装置 図13
  • 特開-クラッチ装置 図14
  • 特開-クラッチ装置 図15A
  • 特開-クラッチ装置 図15B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118886
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】クラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 13/52 20060101AFI20240826BHJP
   F16D 43/10 20060101ALI20240826BHJP
   F16D 13/74 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
F16D13/52 C
F16D43/10
F16D13/74 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025453
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】吉本 克
(72)【発明者】
【氏名】小澤 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】曾 恒香
【テーマコード(参考)】
3J056
3J068
【Fターム(参考)】
3J056AA33
3J056AA38
3J056AA60
3J056BE13
3J056BE23
3J056CA07
3J056CC03
3J056CC13
3J056GA02
3J056GA13
3J068AA05
3J068BA12
3J068BB06
3J068CA01
3J068CA02
3J068CB03
(57)【要約】
【課題】出力軸が連結される出力軸保持部よりも径方向の外側に位置する部材に挿入孔を流通するクラッチオイルを供給すること。
【解決手段】出力軸15と共に回転駆動するクラッチセンタ40と、クラッチセンタ40に対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられたプレッシャプレート70と、を備え、クラッチセンタ40は、出力軸15が連結される出力軸保持部42を備え、出力軸保持部42は、出力軸15が挿入される挿入孔45を備え、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1には、挿入孔45と連通し、かつ、出力軸15の径方向かつ挿入孔45から第1の方向D1の端面42D1の径方向の外縁42DOまで延び、かつ、出力軸15から流れ出たクラッチオイルが流れるオイル溝42Pが形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、
前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、
前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、を備え、
前記クラッチセンタは、前記出力軸が連結される出力軸保持部を備え、
前記出力軸保持部は、前記出力軸が挿入される挿入孔を備え、
前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタに接近する方向を第1の方向、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから離隔する方向を第2の方向としたとき、前記出力軸保持部の第1の方向の端面には、前記挿入孔と連通し、かつ、前記出力軸の径方向かつ前記挿入孔から前記第1の方向の端面の前記径方向の外縁まで延び、かつ、前記出力軸から流れ出たクラッチオイルが流れるオイル溝が形成されている、クラッチ装置。
【請求項2】
前記クラッチハウジングの回転に伴う遠心力により前記径方向の内側の位置から外側の位置に移動可能に構成されたウエイト部材を有し、かつ、前記ウエイト部材が前記径方向の外側の位置にあるときに前記入力側回転板と前記出力側回転板とを圧接させて前記入力軸の回転駆動力を前記出力軸に伝達可能な状態とするとともに、前記ウエイト部材が前記内側の位置にあるときに前記入力側回転板と前記出力側回転板との圧接力を解放させて前記入力軸の回転駆動力が前記出力軸に伝達されるのを遮断し得る遠心クラッチ機構を備え、
前記遠心クラッチ機構は、前記オイル溝の前記径方向の外側かつ前記オイル溝の延長線上に位置する、請求項1に記載のクラッチ装置。
【請求項3】
前記入力側回転板と前記出力側回転板との圧接時に前記遠心クラッチ機構によって押圧されて前記入力軸の回転駆動力を前記出力軸に伝達可能な状態とするとともに、前記入力側回転板と前記出力側回転板との圧接力の解放時に前記遠心クラッチ機構による押圧から解放されて前記入力軸の回転駆動力が前記出力軸に伝達されるのを遮断するように構成された補助クラッチ板を備え、
前記補助クラッチ板は、前記出力軸に固定され、かつ、前記出力軸保持部の前記第1の方向の端面に隣接し、
前記補助クラッチ板の少なくとも一部と、前記出力軸保持部の前記第1の方向の端面の少なくとも一部とは面接触している、請求項2に記載のクラッチ装置。
【請求項4】
前記補助クラッチ板は、
前記出力軸に嵌合する嵌合部と、
前記嵌合部よりも前記径方向の外側に位置する円盤部と、を有し、
前記嵌合部の前記出力軸の軸線方向の長さは、前記円盤部の前記軸線方向の長さよりも長い、請求項3に記載のクラッチ装置。
【請求項5】
前記遠心クラッチ機構は、前記円盤部を押圧可能に構成され、
前記円盤部は、前記嵌合部の前記軸線方向の中心よりも前記第2の方向側に位置する、請求項4に記載のクラッチ装置。
【請求項6】
前記円盤部は、前記第2の方向側の端面であり、かつ、前記遠心クラッチ機構に押圧される当接面を有する、請求項5に記載のクラッチ装置。
【請求項7】
前記当接面と前記遠心クラッチ機構との間に設けられた摩擦材を備えている、請求項6に記載のクラッチ装置。
【請求項8】
前記出力軸保持部のうち前記挿入孔を区画する内壁には、前記出力軸の軸線方向に延びかつ前記出力軸と嵌合する複数の嵌合歯が形成され、
前記出力軸保持部の前記第1の方向の端面の少なくとも一部は、前記嵌合歯の前記第1の方向の端面よりも前記第1の方向側に位置し、
前記出力軸保持部の前記第1の方向の端面と前記嵌合歯の前記第1の方向の端面との間には段差部が形成されている、請求項2に記載のクラッチ装置。
【請求項9】
前記段差部は、前記出力軸保持部の全周に亘って形成されている、請求項8に記載のクラッチ装置。
【請求項10】
前記遠心クラッチ機構は、前記ウエイト部材を前記径方向に移動可能に保持する支持部材を有し、
前記支持部材と前記クラッチセンタとの間に設けられた他の摩擦材を備えている、請求項2に記載のクラッチ装置。
【請求項11】
前記入力側回転板と前記出力側回転板との圧接時に遠心クラッチ機構によって押圧されて前記入力軸の回転駆動力を前記出力軸に伝達可能な状態とするとともに、前記入力側回転板と前記出力側回転板との圧接力の解放時に前記遠心クラッチ機構による押圧から解放されて前記入力軸の回転駆動力が前記出力軸に伝達されるのを遮断するように構成された補助クラッチ板を備え、
前記補助クラッチ板は、前記出力軸に固定され、かつ、前記出力軸保持部の前記第1の方向の端面に隣接する、請求項1に記載のクラッチ装置。
【請求項12】
前記出力軸保持部のうち前記挿入孔を区画する内壁には、前記出力軸の軸線方向に延びかつ前記出力軸と嵌合する複数の嵌合歯が形成され、
前記出力軸保持部の前記第1の方向の端面の少なくとも一部は、前記嵌合歯の前記第1の方向の端面よりも前記第1の方向側に位置し、
前記出力軸保持部の前記第1の方向の端面と前記嵌合歯の前記第1の方向の端面との間には段差部が形成されている、請求項1に記載のクラッチ装置。
【請求項13】
前記出力軸保持部の前記第1の方向の端面の全体は、前記嵌合歯の前記第1の方向の端面よりも前記第1の方向側に位置する、請求項12に記載のクラッチ装置。
【請求項14】
前記出力軸の前記軸線方向から見て、前記挿入孔のうち前記出力軸保持部の前記第1の方向の端面の内縁によって区画される部分の直径は、前記挿入孔のうち前記嵌合歯の前記径方向の内側の縁部によって区画される部分の直径よりも大きい、請求項12または13に記載のクラッチ装置。
【請求項15】
前記段差部は、前記出力軸保持部の全周に亘って形成されている、請求項12または13に記載のクラッチ装置。
【請求項16】
前記出力軸を備え、
前記出力軸は、
前記軸線方向に延びかつクラッチオイルが流通するオイル流路を形成する本体部と、
前記本体部に形成され、かつ、前記径方向に延び、かつ、前記オイル流路と連通する連通孔と、を備えている、請求項12または13に記載のクラッチ装置。
【請求項17】
前記連通孔の少なくとも一部は、前記出力軸の前記軸線方向に関して、前記出力軸保持部の前記第1の方向の端面と、前記嵌合歯の前記第1の方向の端面との間に位置する、請求項16に記載のクラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の鞍乗型車両は、エンジン等の動力源の回転駆動力を駆動輪に伝達および遮断可能なクラッチ装置を備えている。例えば、特許文献1には、エンジン側に連結された入力部材(以下入力軸とする)と、駆動輪側に連結された出力部材(以下出力軸とする)と、出力軸に連結されたクラッチ部材(以下クラッチセンタとする)と、クラッチセンタに対して近接又は離隔可能なプレッシャ部材(以下プレッシャプレートとする)とを有するクラッチ装置が開示されている。ここで、クラッチセンタは、入力軸から入力された回転駆動力を出力軸に伝達するために、出力軸に固定されている。クラッチセンタは、出力軸が連結される出力軸保持部を備えており、出力軸保持部には出力軸が挿入される挿入孔が形成されている。また、出力軸内にはクラッチオイルが流通しており、クラッチオイルは出力軸の所定の部分から外部に流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-030211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クラッチセンタの出力軸保持部のうちプレッシャプレートが配置された側とは反対側の端面には、ワッシャーや補助クラッチ板等の部材が配置され得る。このため、この端面は平面加工されていることが多い。しかしながら、平面加工された端面とワッシャー等の部材とが密着するため、出力軸保持部よりも径方向の外側に位置する部材には出力軸内を流通するクラッチオイルを十分に供給することができないという問題があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、出力軸保持部よりも径方向の外側に位置する部材に出力軸内を流通するクラッチオイルを供給することができるクラッチ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクラッチ装置は、入力軸の回転駆動力を出力軸に伝達または遮断するクラッチ装置であって、前記入力軸の回転駆動によって回転駆動する複数の入力側回転板を保持するクラッチハウジングに収容され、かつ、前記入力側回転板と交互に配置された複数の出力側回転板を保持し、かつ、前記出力軸と共に回転駆動するクラッチセンタと、前記クラッチセンタに対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられ、前記入力側回転板および前記出力側回転板を押圧可能なプレッシャプレートと、を備え、前記クラッチセンタは、前記出力軸が連結される出力軸保持部を備え、前記出力軸保持部は、前記出力軸が挿入される挿入孔を備え、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタに接近する方向を第1の方向、前記プレッシャプレートが前記クラッチセンタから離隔する方向を第2の方向としたとき、前記出力軸保持部の第1の方向の端面には、前記挿入孔と連通し、かつ、前記出力軸の径方向かつ前記挿入孔から前記第1の方向の端面の前記径方向の外縁まで延び、かつ、前記出力軸から流れ出たクラッチオイルが流れるオイル溝が形成されている。
【0007】
本発明に係るクラッチ装置によると、出力軸保持部の第1の方向の端面に形成されたオイル溝は、挿入孔と連通し、かつ、出力軸の径方向かつ挿入孔から第1の方向の端面の径方向の外縁まで延びる。このため、例えば、出力軸保持部の第1の方向の端面にワッシャー等の部材が配置されていたとしても、オイル溝を介して出力軸から流れ出たクラッチオイルを、出力軸保持部の第1の方向の端面の径方向の外縁から外部(例えば入力側回転板や出力側回転板)に供給することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、出力軸保持部よりも径方向の外側に位置する部材に出力軸内を流通するクラッチオイルを供給することができるクラッチ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係るクラッチ装置の断面図である。
図2図2は、一実施形態に係るクラッチ装置の一部を拡大した拡大断面図である。
図3図3は、一実施形態に係る第1クラッチセンタの斜視図である。
図4図4は、一実施形態に係る第1クラッチセンタの斜視図である。
図5図5は、一実施形態に係る第1クラッチセンタの平面図である。
図6図6は、一実施形態に係る第1クラッチセンタの底面図である。
図7図7は、一実施形態に係る第2クラッチセンタの斜視図である。
図8図8は、一実施形態に係る第2クラッチセンタの平面図である。
図9図9は、一実施形態に係るプレッシャプレートの斜視図である。
図10図10は、一実施形態に係るプレッシャプレートの平面図である。
図11図11は、一実施形態に係る遠心クラッチ機構の断面図である。
図12図12は、一実施形態に係る遠心クラッチ機構の一部を破断した斜視図である。
図13図13は、一実施形態に係る補助クラッチ板の斜視図である。
図14図14は、一実施形態に係る補助クラッチ板の斜視図である。
図15A図15Aは、センタ側アシストカム面およびプレッシャ側アシストカム面の作用について説明する模式図である。
図15B図15Bは、センタ側スリッパーカム面およびプレッシャ側スリッパーカム面の作用について説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るクラッチ装置の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るクラッチ装置10の断面図である。クラッチ装置10は、例えば、自動二輪車等の鞍乗型車両に設けられている。クラッチ装置10は、例えば、自動二輪車の動力源であるエンジンの入力軸(クランクシャフト)の回転駆動力を出力軸15に伝達または遮断する装置である。クラッチ装置10は、出力軸15を介して入力軸の回転駆動力を駆動輪(後輪)に伝達または遮断するための装置である。クラッチ装置10は、エンジンと変速機との間に配置される。
【0012】
以下の説明では、クラッチ装置10のプレッシャプレート70がクラッチセンタ40に対して接近および離隔する方向を方向Dとし、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40に接近する方向を第1の方向D1、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40から離隔する方向を第2の方向D2とする。また、クラッチセンタ40およびプレッシャプレート70の周方向を周方向Sとし、周方向Sに関して一方のプレッシャ側カム部90から他方のプレッシャ側カム部90に向かう方向(一方のセンタ側カム部60から他方のセンタ側カム部60に向かう方向)を第1の周方向S1(図3参照)、他方のプレッシャ側カム部90から一方のプレッシャ側カム部90に向かう方向(他方のセンタ側カム部60から一方のセンタ側カム部60に向かう方向)を第2の周方向S2(図3参照)とする。本実施形態では、出力軸15の軸線方向は、方向Dと同じ方向である。また、プレッシャプレート70およびクラッチセンタ40は、第1の周方向S1(即ち1つのセンタ側カム部60のセンタ側アシストカム面60Aからセンタ側スリッパーカム面60Sに向かう方向)に回転する。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、クラッチ装置10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0013】
図1に示すように、クラッチ装置10は、出力軸15と、複数の入力側回転板20と、複数の出力側回転板22と、クラッチハウジング30と、クラッチセンタ40と、プレッシャプレート70と、ストッパプレート100と、遠心クラッチ機構120と、補助クラッチ板150と、を備えている。
【0014】
図1に示すように、出力軸15は、中空状に形成された軸体である。出力軸15の一方側の端部は、ニードルベアリング28Aを介して後述する入力ギア35およびクラッチハウジング30を回転自在に支持する。出力軸15は、ナット28Bを介してクラッチセンタ40を固定的に支持する。即ち、出力軸15は、クラッチセンタ40と一体的に回転する。出力軸15の他方側の端部は、例えば、自動二輪車の変速機(図示せず)に連結されている。
【0015】
図1に示すように、出力軸15は、方向Dに延びる本体部15Aと、本体部15Aに形成された連通孔15Bとを備えている。本体部15Aは、その内部にクラッチオイルが流通するオイル流路15Hを有する。オイル流路15Hは、後述するプッシュロッド16Aに外嵌するスリーブ16Cと、本体部15Aとの間に形成されている。クラッチオイルは、出力軸15内、即ち本体部15Aのオイル流路15H内を流通する。連通孔15Bは、出力軸15の径方向(以下、径方向とする。径方向は方向Dと直交する方向である。)に延びる。連通孔15Bは、オイル流路15Hと連通する。オイル流路15Hを流通するクラッチオイルの一部は、連通孔15Bに流れ込む。連通孔15Bは、本体部15Aに例えば1~2個形成されている。図2に示すように、連通孔15Bの少なくとも一部は、出力軸15の軸線方向(即ち方向D)に関して、後述する出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1と、後述する嵌合歯47の第1の方向D1の端面47D1との間に位置する。
【0016】
図1に示すように、出力軸15のオイル流路15Hには、プッシュロッド16Aと、プッシュロッド16Aに隣接して設けられたプッシュ部材16Bとが設けられている。プッシュロッド16Aおよびプッシュ部材16Bは、スリーブ16C内を摺動可能に設けられている。プッシュロッド16Aは、一方の端部(図示左側の端部)が自動二輪車のクラッチ操作レバー(図示せず)に連結されており、クラッチ操作レバーの操作によってスリーブ16C内を摺動してプッシュ部材16Bを第2の方向D2に押圧する。プッシュ部材16Bの一部は出力軸15の外方(ここでは第2の方向D2)に突出しており、プレッシャプレート70に設けられたレリーズベアリング18に連結している。スリーブ16Cおよびプッシュ部材16Bは、本体部15Aの内径よりも細く形成されており、オイル流路15H内においてクラッチオイルの流通性が確保されている。
【0017】
クラッチハウジング30は、アルミニウム合金から形成されている。クラッチハウジング30は、有底円筒状に形成されている。図1に示すように、クラッチハウジング30は、略円形状に形成された底壁31と、底壁31の縁部から第2の方向D2に延びる側壁33と、を有する。クラッチハウジング30は、複数の入力側回転板20を保持する。
【0018】
図1に示すように、クラッチハウジング30の底壁31には、入力ギア35が設けられている。入力ギア35は、トルクダンパ35Aを介してリベット35Bによって底壁31に固定されている。入力ギア35は、エンジンの入力軸の回転駆動によって回転する駆動ギア(図示せず)と噛み合っている。入力ギア35は、出力軸15から独立してクラッチハウジング30と一体的に回転駆動する。
【0019】
入力側回転板20は、入力軸の回転駆動によって回転駆動する。図1に示すように、入力側回転板20は、クラッチハウジング30の側壁33の内周面に保持されている。入力側回転板20は、クラッチハウジング30にスプライン嵌合によって保持されている。入力側回転板20は、クラッチハウジング30の軸線方向(即ち方向D)に沿って変位可能に設けられている。入力側回転板20は、クラッチハウジング30と一体的に回転可能に設けられている。
【0020】
入力側回転板20は、出力側回転板22に押し当てられる部材である。入力側回転板20は、環状に形成された平板である。入力側回転板20は、アルミニウム合金を鋳造成形して形成されている。入力側回転板20の表面および裏面には、複数の紙片からなる摩擦材(図示せず)が貼り付けられている。摩擦材の間にはクラッチオイルを保持するための深さ数μm~数十μmの溝が形成されている。
【0021】
図1に示すように、クラッチセンタ40は、クラッチハウジング30に収容されている。クラッチセンタ40は、クラッチハウジング30と同心に配置されている。クラッチセンタ40は、入力側回転板20と方向Dに交互に配置された複数の出力側回転板22を保持する。クラッチセンタ40は出力軸15と共に回転駆動する。クラッチセンタ40は、第1クラッチセンタ41と、第2クラッチセンタ51とを備えている。第1クラッチセンタ41と第2クラッチセンタ51とは相互に組み付けられている。第2クラッチセンタ51は、第1クラッチセンタ41の径方向の外側に位置する。第2クラッチセンタ51は、第1クラッチセンタ41に外嵌する。
【0022】
図3に示すように、第1クラッチセンタ41は、出力軸保持部42と、出力軸保持部42の径方向の外側に位置する環状のベース壁43と、複数のセンタ側カム部60と、を備えている。
【0023】
図1に示すように、出力軸保持部42には、出力軸15が連結されている。図3に示すように、出力軸保持部42は、円筒状に形成されている。出力軸保持部42には、出力軸15が挿入されてスプライン嵌合する挿入孔45が形成されている。挿入孔45は、出力軸保持部42を貫通して形成されている。出力軸保持部42のうち挿入孔45を区画する内壁45Aには、出力軸15の軸線方向(即ち方向D)に延びる複数の嵌合歯47が形成されている。嵌合歯47は出力軸15と嵌合する。
【0024】
図4に示すように、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1には、クラッチオイルが流れるオイル溝42Pが形成されている。オイル溝42Pは、出力軸15の径方向に延びる。オイル溝42Pは、挿入孔45と連通する。オイル溝42Pは、挿入孔45から第1の方向D1の端面42D1の径方向の外縁42DOまで延びる。オイル溝42Pは、端面42D1から第2の方向D2に凹む。ここでは、端面42D1には、2つのオイル溝42Pが形成されているが、オイル溝42Pの数は2つに限定されない。2つのオイル溝42Pは、相互に対向する位置に設けられている。図2に示すように、オイル溝42Pは、出力軸15の連通孔15Bの径方向の外側に位置する。
【0025】
図4に示すように、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1の少なくとも一部は、嵌合歯47の第1の方向D1の端面47D1よりも第1の方向D1側に位置する。ここでは、端面42D1の全体は、端面47D1よりも第1の方向D1側に位置する。出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1と嵌合歯47の第1の方向D1の端面47D1との間には段差部48が形成されている。本実施形態では、出力軸保持部42の全周に亘って(挿入孔45の全周に亘って)段差部48が形成されている。段差部48にはクラッチオイルが一時的に保持される。図6に示すように、出力軸15の軸線方向から見て、挿入孔45のうち出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1の内縁42Iによって区画される部分の直径R1は、挿入孔45のうち嵌合歯47の径方向の内側の縁部47Iによって区画される部分(縁部47Iを通る仮想円)の直径R2よりも大きい。
【0026】
センタ側カム部60は、入力側回転板20と出力側回転板22との押圧力(圧接力)を増加させる力であるアシストトルクまたは入力側回転板20と出力側回転板22との押圧力(圧接力)を減少させて半クラッチ状態に移行させる力であるスリッパートルクを生じさせるアシスト&スリッパー(登録商標)機構を構成する傾斜面からなるカム面を有した台状に形成されている。図3に示すように、センタ側カム部60は、ベース壁43の第2の方向D2側の面43D2から第2の方向D2に突出するように形成されている。図5に示すように、センタ側カム部60は、第1クラッチセンタ41の周方向Sに等間隔に配置されている。本実施形態では、第1クラッチセンタ41は、3つのセンタ側カム部60を有しているが、センタ側カム部60の数は3に限定されない。
【0027】
図3に示すように、センタ側カム部60は、出力軸保持部42の径方向の外側に位置する。センタ側カム部60は、センタ側アシストカム面60A(図6も参照)と、センタ側スリッパーカム面60Sとを有する。センタ側アシストカム面60Aは、プレッシャプレート70に対して相対回転した際に、入力側回転板20と出力側回転板22との押圧力(圧接力)を増加させるためにプレッシャプレート70をクラッチセンタ40に接近させる方向の力を発生させるように構成されている。本実施形態では、上記力が発生するときにはクラッチセンタ40に対するプレッシャプレート70の位置は変化せず、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40に対して物理的に接近する必要はない。なお、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40に対して物理的に変位してもよい。センタ側スリッパーカム面60Sは、プレッシャプレート70に対して相対回転した際に、入力側回転板20と出力側回転板22との押圧力(圧接力)を減少させるためにプレッシャプレート70をクラッチセンタ40から離隔させるように構成されている。周方向Sに関して隣り合うセンタ側カム部60において、一方のセンタ側カム部60Lのセンタ側アシストカム面60Aと他方のセンタ側カム部60Mのセンタ側スリッパーカム面60Sとは周方向Sに対向して配置されている。
【0028】
図3に示すように、第1クラッチセンタ41は、複数(本実施形態では3つ)のボス部62を備えている。ボス部62は、プレッシャプレート70を固定する部材である。複数のボス部62は、周方向Sに等間隔に配置されている。ボス部62は、円筒状に形成されている。ボス部62は、出力軸保持部42より径方向の外側に位置する。ボス部62は、プレッシャプレート70に向けて(即ち第2の方向D2に向けて)延びる。ボス部62は、センタ側カム部60に設けられている。ボス部62は、周方向Sに関して、センタ側アシストカム面60Aとセンタ側スリッパーカム面60Sとの間に設けられている。ボス部62には、ボルト28(図1参照)が挿入されるねじ穴62Hが形成されている。ねじ穴62Hは、クラッチセンタ40の軸線方向(即ち方向D)に延びる。
【0029】
図5に示すように、第1クラッチセンタ41は、ベース壁43の一部を貫通するセンタ側カム孔43Hを有する。センタ側カム孔43Hは、ベース壁43を方向Dに貫通する。センタ側カム孔43Hは、周方向Sに関して、隣り合うセンタ側カム部60の間に位置する。図6に示すように、クラッチセンタ40の軸線方向から見て、センタ側アシストカム面60Aとセンタ側カム孔43Hの一部とは重なる。
【0030】
図3に示すように、第1クラッチセンタ41は、複数の係合溝49を有している。係合溝49は、ベース壁43の外周面に形成されている。係合溝49は、ベース壁43の外周面から径方向の内側に向けて凹む。
【0031】
図7に示すように、第2クラッチセンタ51は、環状の外周壁52と、外周壁52から径方向の外側に延びるフランジ68と、センタ側嵌合部54と、を備えている。第2クラッチセンタ51は、入力側回転板20と方向Dに交互に配置された複数の出力側回転板22を保持する。
【0032】
図7に示すように、外周壁52の外周面には、スプライン嵌合部56が設けられている。スプライン嵌合部56は、外周壁52の外周面に沿って第2クラッチセンタ51の軸線方向(即ち方向D)に延びる複数のセンタ側嵌合歯57と、隣り合うセンタ側嵌合歯57の間に形成されかつ第2クラッチセンタ51の軸線方向(即ち方向D)に延びる複数のスプライン溝58と、オイル排出孔59とを有する。センタ側嵌合歯57は、出力側回転板22を保持する。複数のセンタ側嵌合歯57は、周方向Sに並ぶ。複数のセンタ側嵌合歯57は、周方向Sに等間隔に形成されている。複数のセンタ側嵌合歯57は、同じ形状に形成されている。センタ側嵌合歯57は、外周壁52の外周面から径方向の外側に突出する。オイル排出孔59は、外周壁52を径方向に貫通して形成されている。オイル排出孔59は、隣り合うセンタ側嵌合歯57の間に形成されている。即ち、オイル排出孔59は、スプライン溝58に形成されている。オイル排出孔59は、センタ側嵌合部54に形成されている。オイル排出孔59は、第2クラッチセンタ51の内部と外部とを連通する。オイル排出孔59は、出力軸15からクラッチセンタ40内に流出したクラッチオイル等を、クラッチセンタ40の外部に排出する孔である。オイル排出孔59から排出されたクラッチオイルは、オイル排出孔59の径方向の外側に位置する入力側回転板20および出力側回転板22に供給される。
【0033】
出力側回転板22は、第2クラッチセンタ51のスプライン嵌合部56およびプレッシャプレート70に保持されている。出力側回転板22の一部は、第2クラッチセンタ51のセンタ側嵌合歯57およびスプライン溝58にスプライン嵌合によって保持されている。出力側回転板22の他の一部は、プレッシャプレート70の後述するプレッシャ側嵌合歯77(図9参照)に保持されている。出力側回転板22は、クラッチセンタ40の軸線方向(即ち方向D)に沿って変位可能に設けられている。出力側回転板22は、クラッチセンタ40と一体的に回転可能に設けられている。
【0034】
出力側回転板22は、入力側回転板20に押し当てられる部材である。出力側回転板22は、環状に形成された平板である。出力側回転板22は、アルミニウム合金を鋳造成形して形成されている。なお、入力側回転板20に設けられた摩擦材は、入力側回転板20に代えて出力側回転板22に設けられていてもよいし、入力側回転板20および出力側回転板22のそれぞれに設けてもよい。
【0035】
図7に示すように、センタ側嵌合部54は、外周壁52の内周面に形成されている。センタ側嵌合部54は、後述するプレッシャ側嵌合部88(図9参照)に摺動可能に外嵌するように構成されている。センタ側嵌合部54の内径は、プレッシャ側嵌合部88に対して出力軸15の先端部15T(図1参照)から流出するクラッチオイルの流通を許容する嵌め合い公差を有して形成されている。即ち、センタ側嵌合部54とプレッシャ側嵌合部88との間には隙間が形成されている。
【0036】
図7および図8に示すように、第2クラッチセンタ51は、複数の係合突起55を有している。係合突起55は、第1クラッチセンタ41の係合溝49(図3参照)に係合する。係合突起55は、外周壁52の内周面に形成されている。係合突起55は、外周壁52の内周面から径方向の内側に向けて突出する。係合突起55は、オイル排出孔59よりも第1の方向D1側に位置する。
【0037】
図1に示すように、プレッシャプレート70は、クラッチセンタ40に対して接近または離隔可能かつ相対回転可能に設けられている。プレッシャプレート70は、入力側回転板20および出力側回転板22を押圧可能に構成されている。プレッシャプレート70は、クラッチセンタ40およびクラッチハウジング30と同心に配置されている。図9に示すように、プレッシャプレート70は、本体72と、本体72の第2の方向D2側の外周縁に接続しかつ径方向の外側に延びるフランジ98とを有する。本体72は、フランジ98よりも第1の方向D1に突出している。フランジ98は、後述する筒状部80よりも径方向の外側に位置する。プレッシャプレート70は、入力側回転板20と交互に配置された複数の出力側回転板22を保持する。フランジ98は、入力側回転板20および出力側回転板22を押圧可能に構成されている。
【0038】
図9に示すように、本体72は、筒状部80と、複数のプレッシャ側カム部90と、プレッシャ側嵌合部88と、スプリング収容部84(図1参照)とを備えている。
【0039】
図9に示すように、筒状部80は、円筒状に形成されている。筒状部80は、プレッシャ側カム部90と一体に形成されている。筒状部80は、出力軸15の先端部15T(図1参照)を収容する。筒状部80には、レリーズベアリング18(図1参照)が収容される。筒状部80は、レリーズベアリング18を介してプッシュ部材16B(図1参照)からの押圧力を受ける部位である。筒状部80は、出力軸15の先端部15Tから流出したクラッチオイルを受け止める部位である。
【0040】
プレッシャ側カム部90は、センタ側カム部60に摺動してアシストトルクまたはスリッパートルクを発生させるアシスト&スリッパー(登録商標)機構を構成する傾斜面からなるカム面を有した台状に形成されている。図9に示すように、プレッシャ側カム部90は、フランジ98よりも第1の方向D1に突出するように形成されている。図10に示すように、プレッシャ側カム部90は、プレッシャプレート70の周方向Sに等間隔に配置されている。本実施形態では、プレッシャプレート70は、3つのプレッシャ側カム部90を有しているが、プレッシャ側カム部90の数は3に限定されない。
【0041】
図10に示すように、プレッシャ側カム部90は、筒状部80の径方向の外側に位置する。プレッシャ側カム部90は、プレッシャ側アシストカム面90A(図9も参照)と、プレッシャ側スリッパーカム面90Sとを有する。プレッシャ側アシストカム面90Aは、センタ側アシストカム面60Aと接触可能に構成されている。プレッシャ側アシストカム面90Aは、クラッチセンタ40に対して相対回転した際に、入力側回転板20と出力側回転板22との押圧力(圧接力)を増加させるためにプレッシャプレート70をクラッチセンタ40に接近させる方向の力を発生させるように構成されている。プレッシャ側スリッパーカム面90Sは、センタ側スリッパーカム面60Sと接触可能に構成されている。プレッシャ側スリッパーカム面90Sは、クラッチセンタ40に対して相対回転した際に、入力側回転板20と出力側回転板22との押圧力(圧接力)を減少させるためにプレッシャプレート70をクラッチセンタ40から離隔させるように構成されている。周方向Sに関して隣り合うプレッシャ側カム部90において、一方のプレッシャ側カム部90Lのプレッシャ側アシストカム面90Aと他方のプレッシャ側カム部90Mのプレッシャ側スリッパーカム面90Sとは周方向Sに対向して配置されている。
【0042】
ここで、センタ側カム部60およびプレッシャ側カム部90の作用について説明する。エンジンの回転数が上がり、入力ギア35およびクラッチハウジング30に入力された回転駆動力がクラッチセンタ40を介して出力軸15に伝達され得る状態となったときには、図15Aに示すように、プレッシャプレート70には第1の周方向S1の回転力が付与される。このため、センタ側アシストカム面60Aおよびプレッシャ側アシストカム面90Aの作用により、プレッシャプレート70には第1の方向D1への力が発生する。これにより、入力側回転板20と出力側回転板22との圧接力を増加させるようになっている。
【0043】
一方、出力軸15の回転数が入力ギア35およびクラッチハウジング30の回転数を上回ってバックトルクが生じた際には、図15Bに示すように、クラッチセンタ40には第1の周方向S1の回転力が付与される。このため、センタ側スリッパーカム面60Sおよびプレッシャ側スリッパーカム面90Sの作用により、プレッシャプレート70を第2の方向D2へ移動させて入力側回転板20と出力側回転板22との圧接力を解放させるようになっている。これにより、バックトルクによるエンジンや変速機に対する不具合を回避することができる。
【0044】
図10に示すように、プレッシャ側嵌合部88は、プレッシャ側カム部90より径方向の外側に位置する。プレッシャ側嵌合部88は、プレッシャ側カム部90よりも第2の方向D2側に位置する。プレッシャ側嵌合部88は、センタ側嵌合部54(図7参照)に摺動可能に内嵌するように構成されている。
【0045】
図9および図10に示すように、プレッシャプレート70は、本体72およびフランジ98の一部を貫通するプレッシャ側カム孔73Hを有する。プレッシャ側カム孔73Hは、筒状部80よりも径方向の外側に位置する。プレッシャ側カム孔73Hは、筒状部80の側方からプレッシャ側嵌合部88よりも径方向の外側まで延びる。プレッシャ側カム孔73Hは、隣り合うプレッシャ側カム部90のプレッシャ側アシストカム面90Aとプレッシャ側スリッパーカム面90Sとの間に形成されている。図10に示すように、プレッシャプレート70の軸線方向から見て、プレッシャ側アシストカム面90Aとプレッシャ側カム孔73Hの一部とは重なる。プレッシャ側カム孔73Hには、第1クラッチセンタ41のボス部62(図3参照)が挿入される。
【0046】
図9に示すように、プレッシャプレート70は、フランジ98に配置された複数のプレッシャ側嵌合歯77を備えている。プレッシャ側嵌合歯77は、出力側回転板22を保持する。プレッシャ側嵌合歯77は、フランジ98から第1の方向D1に向けて突出する。プレッシャ側嵌合歯77は、筒状部80よりも径方向の外側に位置する。プレッシャ側嵌合歯77は、プレッシャ側カム部90より径方向の外側に位置する。プレッシャ側嵌合歯77は、プレッシャ側嵌合部88より径方向の外側に位置する。複数のプレッシャ側嵌合歯77は、周方向Sに並ぶ。複数のプレッシャ側嵌合歯77は、周方向Sに等間隔に配置されている。なお、本実施形態では、一部のプレッシャ側嵌合歯77が取り除かれているため、該部分の間隔は広がっているが、その他の隣り合うプレッシャ側嵌合歯77は等間隔に配置されている。
【0047】
図1に示すように、スプリング収容部84は、プレッシャ側カム部90に形成されている。スプリング収容部84は、第2の方向D2から第1の方向D1に凹むように形成されている(図15Aも参照)。スプリング収容部84は、円形状に形成されている。スプリング収容部84は、プレッシャスプリング25を収容する。
【0048】
図1に示すように、プレッシャスプリング25は、スプリング収容部84に収容されている。プレッシャスプリング25は、プレッシャプレート70をクラッチセンタ40に向けて(即ち第1の方向D1に向けて)付勢する。プレッシャスプリング25は、例えば、ばね鋼を螺旋状に巻いたコイルスプリングである。
【0049】
図1に示すように、遠心クラッチ機構120は、クラッチハウジング30内に設けられている。遠心クラッチ機構120は、クラッチセンタ40よりも第1の方向D1側に設けられている。遠心クラッチ機構120は、オイル溝42Pの径方向の外側に位置する。遠心クラッチ機構120は、オイル溝42Pの延長線42PL(図2も参照)上に位置する。遠心クラッチ機構120は、クラッチハウジング30に保持されている。遠心クラッチ機構120は、クラッチハウジング30と一体的に回転可能に設けられている。図11および図12に示すように、遠心クラッチ機構120は、ウエイト部材122と、保持部材124と、圧接部材126と、支持部材128と、第1球状部材131と、第2球状部材132と、付勢部材135(図1参照)と、を有している。遠心クラッチ機構120は、ウエイト部材122が径方向の外側の位置にあるときに入力側回転板20と出力側回転板22とを圧接させて入力軸の回転駆動力を出力軸15に伝達可能な状態とする。遠心クラッチ機構120は、ウエイト部材122が径方向の内側の位置にあるときに入力側回転板20と出力側回転板22との圧接力を解放させて入力軸の回転駆動力が出力軸15に伝達されるのを遮断し得る状態とする。遠心クラッチ機構120は、補助クラッチ板150(図13参照)の後述する円盤部154(図13参照)を押圧可能に構成されている。
【0050】
ウエイト部材122は、クラッチハウジング30の回転に伴う遠心力により径方向の内側の位置から外側の位置に移動可能に構成されている。図11に示すように、ウエイト部材122は、保持部材124の後述する収容部124Aに収容されている。ウエイト部材122は、遠心力が付与されない状態では径方向の内側の位置に保持される。ウエイト部材122は、遠心力が付与されることにより付勢部材135(図1参照)の付勢力に抗して径方向の外側に向けて移動し、径方向の外側の位置に移動する。
【0051】
図11に示すように、保持部材124は、ウエイト部材122を径方向の内側の位置と径方向の外側の位置との間で移動可能に保持する。保持部材124は、円環状に形成されている。保持部材124は、周方向に亘って複数形成された収容部124Aと、収容部124A内に形成された勾配溝124Bと、押圧面124Cとを有している。収容部124Aは、ウエイト部材122を収容する。収容部124Aは、ウエイト部材122の形状および移動範囲に合致した凹状に形成されている。収容部124Aの外周壁面124AAには、付勢部材135(図1参照)の一端が当接可能に構成されている。
【0052】
図11および図12に示すように、圧接部材126は、ウエイト部材122が径方向の内側の位置から外側の位置に移動することにより第2の方向D2に移動して、入力側回転板20と出力側回転板22とを圧接可能に構成されている。圧接部材126は、円環状に形成されている。圧接部材126は、周方向に亘って複数形成された勾配溝126Aと、勾配溝126Aが形成された位置にそれぞれ形成された溝126Bと、押圧面126Cとを有している。勾配溝126Aは、ウエイト部材122に対応した位置にそれぞれ形成されている。勾配溝126Aは、径方向の内側から径方向の外側に向かって第1の方向D1に向かうように傾斜している。クラッチハウジング30が停止した状態では、付勢部材135(図1参照)の付勢力によってウエイト部材122は径方向の内側に保持される。クラッチハウジング30が回転してウエイト部材122に遠心力が付与された状態では、ウエイト部材122が勾配溝126Aに沿って移動することによって、圧接部材126は保持部材124から離隔する方向(即ち第2の方向D2)に移動する。これにより、圧接部材126の押圧面126Cは、第2クラッチセンタ51のフランジ68(図1参照)を第2の方向D2に向けて押圧する。なお、保持部材124および圧接部材126は、周方向に亘って形成された複数の突起部127を有している。保持部材124および圧接部材126は、入力側回転板20と同様、突起部127を介してクラッチハウジング30の側壁33の内周面に保持されている。保持部材124および圧接部材126は、クラッチハウジング30に嵌合によって保持されている。保持部材124および圧接部材126は、クラッチハウジング30の軸線方向(即ち方向D)に沿って変位可能に設けられている。保持部材124および圧接部材126は、クラッチハウジング30と一体的に回転可能に設けられている。
【0053】
図11および図12に示すように、支持部材128は、保持部材124に取り付けられている。支持部材128は、保持部材124のうち第2の方向D2側の面に固定されている。支持部材128は、ウエイト部材122を径方向に移動可能に保持する。図2に示すように、支持部材128と、クラッチセンタ40(ここでは第1クラッチセンタ41)との間には、摩擦材175が設けられている。摩擦材175は、他の摩擦材の一例である。
【0054】
図11および図12に示すように、第1球状部材131は、ウエイト部材122に取り付けられている。第1球状部材131は、例えば、鋼球である。第1球状部材131は、ウエイト部材122に形成された貫通孔の一方の開口から一部を突出させて圧接部材126の勾配溝126Aに接触する。第2球状部材132は、ウエイト部材122に取り付けられている。第2球状部材132は、例えば、鋼球である。第2球状部材132は、ウエイト部材122に形成された貫通孔の他方の開口から一部を突出させて保持部材124の勾配溝124Bに接触する。
【0055】
図1に示すように、付勢部材135は、ウエイト部材122の径方向の外側に配置されている。付勢部材135は、ウエイト部材122を径方向の内側に向けて付勢する。付勢部材135は、例えば、コイルスプリングである。
【0056】
このような遠心クラッチ機構120では、ウエイト部材122に遠心力が付与されていないとき、ウエイト部材122は径方向の内側の位置に保持され、入力側回転板20および出力側回転板22の圧接力が解放された状態となっている。一方、ウエイト部材122に遠心力が付与されているとき、ウエイト部材122は、径方向の内側の位置から外側の位置に移動してする。これにより、圧接部材126に形成された押圧面126Cが第2クラッチセンタ51のフランジ68を介して入力側回転板20および出力側回転板22を押圧して圧接状態とし、入力軸の回転駆動力が出力軸15に伝達可能な状態となる。このとき、保持部材124は、第1の方向D1に移動し、保持部材124に形成された押圧面124Cが補助クラッチ板150を押圧する。
【0057】
図1に示すように、補助クラッチ板150は、クラッチハウジング30内に設けられている。補助クラッチ板150は、出力軸15に固定されている。補助クラッチ板150は、遠心クラッチ機構120の一部よりも第1の方向D1側に配置されている。図2に示すように、補助クラッチ板150は、第1クラッチセンタ41の出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1に隣接する。補助クラッチ板150の少なくとも一部と、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1の少なくとも一部とは面接触している。なお、補助クラッチ板150と端面42D1との間にはワッシャー等の部材が設けられていてもよい。
【0058】
補助クラッチ板150は、入力側回転板20と出力側回転板22との圧接時(即ち遠心クラッチ機構120のウエイト部材122が径方向の外側の位置に位置するとき)に遠心クラッチ機構120(ここでは保持部材124の押圧面124C)によって押圧されて入力軸の回転駆動力を出力軸15に伝達可能な状態とするように構成されている。補助クラッチ板150は、入力側回転板20と出力側回転板22との圧接力の解放時(即ちウエイト部材122が径方向の内側の位置に位置するとき)に遠心クラッチ機構120(ここでは保持部材124の押圧面124C)による押圧から解放されて入力軸の回転駆動力が出力軸15に伝達されるのを遮断するように構成されている。図13に示すように、補助クラッチ板150は、嵌合部152と、円盤部154とを有している。嵌合部152と円盤部154とは一体に形成されている。
【0059】
図1に示すように、嵌合部152は、出力軸15に嵌合する。嵌合部152には、出力軸15が挿入されてスプライン嵌合する挿入孔152H(図13も参照)が形成されている。挿入孔152Hは、嵌合部152を貫通して形成されている。嵌合部152の方向D(即ち出力軸15の軸線方向)の長さL1は、円盤部154の方向Dの長さL2よりも長い。
【0060】
図1に示すように、円盤部154は、嵌合部152よりも径方向の外側に位置する。円盤部154は、第2の方向D2側の端面であり、かつ、遠心クラッチ機構120に押圧される当接面154Fを有する。図2に示すように、当接面154Fは、遠心クラッチ機構120の保持部材124の押圧面124Cに押圧される。当接面154Fと遠心クラッチ機構120との間には摩擦材170(図14も参照)が設けられている。即ち、当接面154Fは、摩擦材170を介して押圧面124Cに間接的に押圧される。円盤部154は、嵌合部152の方向Dの中心152Cよりも第2の方向D2側に位置する。
【0061】
図1に示すように、ストッパプレート100は、プレッシャプレート70と接触可能に設けられている。ストッパプレート100は、プレッシャプレート70がクラッチセンタ40から第2の方向D2に所定の距離以上離隔することを抑制する部材である。ストッパプレート100は、第1クラッチセンタ41のボス部62にボルト28によって固定されている。プレッシャプレート70は、スプリング収容部84にプレッシャスプリング25が配置された状態でストッパプレート100を介してボルト28をボス部62に締め付けて取り付けられている。ストッパプレート100は、平面視で略三角形状に形成されている。
【0062】
クラッチ装置10内には、所定量のクラッチオイルが供給される。クラッチオイルは、熱の吸収や摩擦材の摩耗を抑止する。本実施形態のクラッチ装置10は、いわゆる湿式多板摩擦クラッチ装置である。クラッチオイルは、出力軸15のオイル流路15Hを介してクラッチセンタ40およびプレッシャプレート70内に流通し、入力側回転板20および出力側回転板22に供給される。また、オイル流路15Hを流通するクラッチオイルは、図2の矢印FLで示すように、連通孔15Bを介してオイル溝42Pに向けて流れる。ここで、出力軸保持部42の第1の方向D1側の端部には、出力軸保持部42の全周に亘って段差部48(図4も参照)が形成されている。このため、段差部48を介してオイル溝42Pにより確実にクラッチオイルが流れる。また、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1と、補助クラッチ板150とが面接触しているが、端面42D1にはオイル溝42Pが形成されているため、連通孔15Bから流れ出たクラッチオイルは、オイル溝42Pを介して第1クラッチセンタ41の径方向の外側に流れる。第1クラッチセンタ41の径方向の外側に流れたクラッチオイルは、例えば、補助クラッチ板150の当接面154Fと遠心クラッチ機構120との間に設けられた摩擦材170、支持部材128と第1クラッチセンタ41とに間に設けられた摩擦材175、遠心クラッチ機構120のウエイト部材122、入力側回転板20および出力側回転板22等に供給される。
【0063】
以上のように、本実施形態のクラッチ装置10によると、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1に形成されたオイル溝42Pは、挿入孔45と連通し、かつ、出力軸15の径方向かつ挿入孔45から第1の方向D1の端面42D1の径方向の外縁42DOまで延びる。このため、例えば、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1にワッシャー等の部材が配置されていたとしても、オイル溝42Pを介して出力軸15から流れ出たるクラッチオイルを、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1の径方向の外縁42DOから外部(例えば入力側回転板20や出力側回転板22)に供給することができる。
【0064】
本実施形態のクラッチ装置10は、クラッチハウジング30の回転に伴う遠心力により径方向の内側の位置から外側の位置に移動可能に構成されたウエイト部材122を有し、かつ、ウエイト部材122が外側の位置にあるときに入力側回転板20と出力側回転板22とを圧接させて入力軸の回転駆動力を出力軸15に伝達可能な状態とするとともに、ウエイト部材122が内側の位置にあるときに入力側回転板20と出力側回転板22との圧接力を解放させて入力軸の回転駆動力が出力軸15に伝達されるのを遮断し得る遠心クラッチ機構120を備え、遠心クラッチ機構120は、オイル溝42Pの径方向の外側かつオイル溝42Pの延長線42PL上に位置する。上記態様によれば、遠心クラッチ機構120に、オイル溝42Pを介して出力軸15から流れ出たクラッチオイルを供給することができる。
【0065】
本実施形態のクラッチ装置10は、入力側回転板20と出力側回転板22との圧接時に遠心クラッチ機構120によって押圧されて入力軸の回転駆動力を出力軸15に伝達可能な状態とするとともに、入力側回転板20と出力側回転板22との圧接力の解放時に遠心クラッチ機構120による押圧から解放されて入力軸の回転駆動力が出力軸15に伝達されるのを遮断するように構成された補助クラッチ板150を備え、補助クラッチ板150は、出力軸15に固定され、かつ、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1に隣接し、補助クラッチ板150の少なくとも一部と、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1の少なくとも一部とは面接触している。上記態様によれば、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1に補助クラッチ板150が隣接し、補助クラッチ板150の少なくとも一部と、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1の少なくとも一部とは面接触しているが、オイル溝42Pを介して出力軸15から流れ出たクラッチオイルを、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1の径方向の外縁から外部に供給することができる。
【0066】
本実施形態のクラッチ装置10では、補助クラッチ板150は、出力軸15に嵌合する嵌合部152と、嵌合部152よりも径方向の外側に位置する円盤部154と、を有し、嵌合部152の方向D1の長さL1は、円盤部154の方向D1の長さL2よりも長い。上記態様によれば、補助クラッチ板150が出力軸15により確実に嵌合されるとともに、補助クラッチ板150をコンパクトに配置することができる。
【0067】
本実施形態のクラッチ装置10では、遠心クラッチ機構120は、円盤部154を押圧可能に構成され、円盤部154は、嵌合部152の軸線方向の中心152Cよりも第2の方向D2側に位置する。上記態様によれば、遠心クラッチ機構120を小型化することができる。
【0068】
本実施形態のクラッチ装置10では、円盤部154は、第2の方向D2側の端面であり、かつ、遠心クラッチ機構120に押圧される当接面154Fを有する。上記態様によれば、遠心クラッチ機構120は当接面154Fを押圧することにより補助クラッチ板150の全体を押圧することができる。
【0069】
本実施形態のクラッチ装置10は、当接面154Fと遠心クラッチ機構120との間に設けられた摩擦材170を備えている。上記態様によれば、回転駆動力は、摩擦材170によって遠心クラッチ機構120を介して補助クラッチ板150により確実に伝達される。また、摩擦材170に出力軸15から流れ出たクラッチオイルを供給することができるため、摩擦材170の摩耗を抑制することができる。
【0070】
本実施形態のクラッチ装置10では、出力軸保持部42のうち挿入孔45を区画する内壁45Aには、出力軸15の軸線方向に延びかつ出力軸15と嵌合する複数の嵌合歯47が形成され、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1の少なくとも一部は、嵌合歯47の第1の方向D1の端面47D1よりも第1の方向D1側に位置し、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1と嵌合歯47の第1の方向D1の端面47D1との間には段差部48が形成されている。上記態様によれば、出力軸15から流れ出たクラッチオイルは段差部48に一度保持されてからオイル溝42Pに流れるため、より多くのクラッチオイルをオイル溝42Pから外部に流すことができる。
【0071】
本実施形態のクラッチ装置10では、段差部48は、出力軸保持部42の全周に亘って形成されている。上記態様によれば、出力軸15の連通孔15Bとオイル溝42Pとの周方向における位置(位相)がずれていてたとしても、出力軸15のオイル流路15Hを流れるクラッチオイルをオイル溝42Pに確実に供給することができる。
【0072】
本実施形態のクラッチ装置10では、遠心クラッチ機構120は、ウエイト部材122を径方向に移動可能に保持する支持部材128を有し、支持部材128とクラッチセンタ40との間に設けられた摩擦材175を備えている。上記態様によれば、摩擦材175にクラッチオイルを供給することができ、摩擦材175の焼き付きを抑制することができる。
【0073】
本実施形態のクラッチ装置10では、補助クラッチ板150は、出力軸15に固定され、かつ、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1に隣接する。上記態様によれば、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1に補助クラッチ板150が隣接しているが、オイル溝42Pを介して出力軸15から流れ出たクラッチオイルを、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1の径方向の外縁42DOから外部に供給することができる。
【0074】
本実施形態のクラッチ装置10では、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1の全体は、嵌合歯47の第1の方向D1の端面47D1よりも第1の方向側D1に位置する。上記態様によれば、挿入孔45の全周に亘って段差部48が形成されるため、段差部48により多くのクラッチオイルを保持することができる。
【0075】
本実施形態のクラッチ装置10では、出力軸15の軸線方向から見て、挿入孔45のうち出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1の内縁42Iによって区画される部分の直径R1は、挿入孔45のうち嵌合歯47の径方向の内側の縁部47Iによって区画される部分の直径R2よりも大きい。上記態様によれば、段差部48の径方向の長さを十分に確保することができるため、段差部48においてより多くのクラッチオイルを保持することができる。
【0076】
本実施形態のクラッチ装置10では、出力軸15は、方向Dに延びかつクラッチオイルが流通するオイル流路15Hを形成する本体部15Aと、本体部15Aに形成され、かつ、径方向に延び、かつ、オイル流路15Hと連通する連通孔15Bと、を備えている。上記態様によれば、本体部15Aのオイル流路15Hを流通するクラッチオイルは連通孔15Bを介してオイル溝42Pに流れる。
【0077】
本実施形態のクラッチ装置10では、連通孔15Bの少なくとも一部は、方向D(即ち出力軸15の軸線方向)に関して、出力軸保持部42の第1の方向D1の端面42D1と、嵌合歯47の第1の方向D1の端面47D1との間に位置する。上記態様によれば、本体部15Aのオイル流路15Hを流通するクラッチオイルを段差部48により多く流すことができる。
【0078】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0079】
上述した実施形態では、クラッチセンタ40は、第1クラッチセンタ41と、第2クラッチセンタ51とを備え、第1クラッチセンタ41と第2クラッチセンタ51とを組み付けて用いられているが、第1クラッチセンタ41と第2クラッチセンタ51とは一体であってもよい。
【0080】
上述した実施形態では、挿入孔45には出力軸15の軸方向に沿ってクラッチオイルは流通しないが、流通してもよい。
【0081】
上述した実施形態では、クラッチセンタ40は、センタ側アシストカム面60Aと、センタ側スリッパーカム面60Sとを備えていたが、クラッチセンタ40は、センタ側アシストカム面60Aおよびセンタ側スリッパーカム面60Sを備えていなくてもよい。また、プレッシャプレート70は、プレッシャ側アシストカム面90Aと、プレッシャ側スリッパーカム面90Sとを備えていたが、プレッシャプレート70は、プレッシャ側アシストカム面90Aおよびプレッシャ側スリッパーカム面90Sを備えていなくてもよい。
【0082】
上述した実施形態では、動力源としてエンジンを用いていたが、動力源はエンジンに限定されず、例えば電動モータ等であってもよい。
【0083】
本実施形態の鞍乗型車両とは、運転者が跨がって乗車する車両のことである。鞍乗型車両はスクータ等の自動二輪車に限定されない。鞍乗型車両は、例えば、自動三輪車、ATV(All Terrain vehicle)、スノーモービル等であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
10 クラッチ装置
15 出力軸
15A 本体部
15B 連通孔
15H オイル流路
20 入力側回転板
22 出力側回転板
30 クラッチハウジング
40 クラッチセンタ
41 第1クラッチセンタ
42 出力軸保持部
42D1 第1の方向の端面
42P オイル溝
42PL 延長線
42DO 外縁
42I 内縁
45 挿入孔
45A 内壁
47 嵌合歯
47D1 第1の方向の端面
47I 内径側の縁部
48 段差部
70 プレッシャプレート
120 遠心クラッチ機構
122 ウエイト部材
128 支持部材
150 補助クラッチ板
152 嵌合部
154 円盤部
154F 当接面
170 摩擦材
175 摩擦材(他の摩擦材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B