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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011889
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】顆粒を製造する方法及び顆粒
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20240118BHJP
【FI】
A23L5/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114199
(22)【出願日】2022-07-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】321006774
【氏名又は名称】DM三井製糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】村田 晋一
(72)【発明者】
【氏名】當天 文恵
(72)【発明者】
【氏名】清水 健夫
(72)【発明者】
【氏名】萩原 克嗣
【テーマコード(参考)】
4B035
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE01
4B035LG19
4B035LG50
4B035LG51
4B035LK02
4B035LP24
(57)【要約】
【課題】簡便かつ効率的に顆粒を製造する方法を提供すること。
【解決手段】結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の原料と、溶媒とを混合し、前記原料全部の溶解及び該溶解後の前記原料の結晶化を行うことなく、前記原料の一部が結晶状態で含まれる結晶懸濁液を得る工程と、前記結晶懸濁液を低温条件で噴霧乾燥する工程と、を備える、顆粒を製造する方法。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の原料を含有し、前記原料全部の溶解及び該溶解後の前記原料の結晶化を行うことなく、前記原料の一部が結晶状態で含まれる結晶懸濁液を得る工程と、
前記結晶懸濁液を低温条件で噴霧乾燥する工程と、を備える、顆粒を製造する方法。
【請求項2】
前記糖及び前記糖アルコールが単糖、二糖、三糖及びこれらの糖アルコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料がパラチノース、スクロース及びトレハロースからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記噴霧乾燥が入口温度が0~60℃の条件で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記結晶懸濁液が機能材料を更に含有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記機能材料が酵素、微生物、又は香料である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記結晶懸濁液の粘度が25℃において50~1550mPa・sである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径が1.00~15.90μmである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径の標準偏差が1.00~10.70μmである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均短径に対する平均長径の比が1.00~1.70である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記顆粒を構成する粒子の平均短径に対する平均長径の比が3.1以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
前記顆粒の固結度が10.0質量%未満である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する顆粒であって、
前記糖及び/又は前記糖アルコールは、一部が結晶状態であり、他部が非結晶状態であり、
前記顆粒を構成する粒子の平均短径に対する平均長径の比が3.1以下である、顆粒。
【請求項14】
前記糖及び前記糖アルコールが、単糖、二糖、三糖及びこれらの糖アルコールである、請求項13に記載の顆粒。
【請求項15】
前記結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種が、パラチノース、スクロース及びトレハロースからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項13又は14に記載の顆粒。
【請求項16】
機能材料を更に含有する、請求項13又は14に記載の顆粒。
【請求項17】
前記機能材料が酵素、微生物、又は香料である、請求項16に記載の顆粒。
【請求項18】
前記顆粒を構成する粒子の平均粒径が10.00~20.00μmである、請求項13又は14に記載の顆粒。
【請求項19】
前記顆粒を構成する粒子の平均粒径の標準偏差が1.00~3.30μmである、請求項13又は14に記載の顆粒。
【請求項20】
前記顆粒の固結度が10.0質量%未満である、請求項13又は14に記載の顆粒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒を製造する方法及び顆粒に関する。
【背景技術】
【0002】
食品及び医薬品等の製造において、温度及び湿度等の様々な環境変化を想定して、素材の安定性と扱いやすさ(流動性)を維持することは非常に重要である。素材の安定性及び流動性を維持する方法には粉末化があり、粉末化の一方法として噴霧乾燥がある。
【0003】
噴霧乾燥とは、溶液又は懸濁液を気体中に噴霧して急速に乾燥させ、乾燥粉末を得る方法である。噴霧乾燥時の乾燥温度は一般的に高温である。酵素、酵母及び菌体は高温気体との接触で変性及び失活すること、易揮発性の香料では揮発が容易に進行することにより、本来の特性を十分に保持することが困難となる。このような噴霧乾燥による損失を防ぐ観点からこれまでにも提案がなされている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-106571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結晶性の糖及び/又は結晶性の糖アルコールを含み、結晶状態の糖及び/又は糖アルコール同士が形成する間隙に、非結晶状態の糖及び/又は糖アルコールが保持されている顆粒を製造するためには、結晶としての安定性、顆粒の噴霧乾燥中の易乾燥性及び噴霧乾燥後の安定性・流動性等の点から、糖及び/又は糖アルコールを完全に溶解させた後に、噴霧乾燥前に再度結晶を析出させることが重要と考えられている。そのため、噴霧乾燥に用いる懸濁液を製造するにあたり、原料である糖及び/又は糖アルコールを完全溶解させた上で加温・冷却して、再度一部の結晶を析出させる方法(結晶析出法)が採られてきた。しかし、このような結晶析出法は工程が複雑であり、結晶を析出させる装置を有しない場合には実施が困難であった。更に、析出操作によって目的の大きさの結晶だけでなく多数の微結晶も発生してしまう場合があり、噴霧乾燥後の顆粒の回収率が低下することがあった。
【0006】
本発明の一側面は、簡便かつ効率的に顆粒を製造する方法及び当該方法により得られる顆粒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の各発明を提供する。
[1]
結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の原料を含有し、前記原料全部の溶解及び該溶解後の前記原料の結晶化を行うことなく、前記原料の一部が結晶状態で含まれる結晶懸濁液を得る工程と、
前記結晶懸濁液を低温条件で噴霧乾燥する工程と、を備える、顆粒を製造する方法。
[2]
前記糖及び前記糖アルコールが単糖、二糖、三糖及びこれらの糖アルコールである、[1]に記載の方法。
[3]
前記原料がパラチノース、スクロース及びトレハロースからなる群より選ばれる少なくとも一種である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
前記噴霧乾燥の入口温度が0~60℃の条件で行われる、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
前記結晶懸濁液が機能材料を更に含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
前記機能材料が酵素、微生物、又は香料である、[5]に記載の方法。
[7]
前記結晶懸濁液の粘度が25℃において50~1550mPa・sである、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
前記結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径が1.0~15.9μmである、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]
前記結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径の標準偏差が1.00~10.70μmである、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]
前記結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均短径に対する平均長径の比が1.00~1.70である、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]
前記顆粒を構成する粒子の平均短径に対する平均長径の比が1.00~3.10である、[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12]
前記顆粒の固結度が10.0質量%未満である、[1]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13]
結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する顆粒であって、
前記糖及び/又は前記糖アルコールは、一部が結晶状態であり、他部が非結晶状態であり、前記顆粒を構成する粒子の平均短径に対する平均長径の比が3.1以下である、顆粒。
[14]
前記糖及び前記糖アルコールが、単糖、二糖、三糖及びこれらの糖アルコールである、[13]に記載の顆粒。
[15]
前記結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種が、パラチノース、スクロース及びトレハロースからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[13]又は[14]に記載の顆粒。
[16]
機能材料を更に含有する、[13]~[15]のいずれかに記載の顆粒。
[17]
前記機能材料が酵素、微生物、又は香料である、[16]に記載の顆粒。
[18]
前記顆粒を構成する粒子の平均粒径が10.00~20.00μmである、[13]~[17]のいずれかに記載の顆粒。
[19]
前記顆粒を構成する粒子の平均粒径の標準偏差が1.00~3.30μmである、[13]~[18]のいずれかに記載の顆粒。
[20]
前記顆粒の固結度が10.0質量%未満である、[13]~[19]のいずれかに記載の顆粒。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によれば、簡便かつ効率的に顆粒を製造する方法及び当該方法により得られる顆粒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(A)は実施例1の方法で得た結晶懸濁液の顕微鏡画像を示し、(B)は比較例1の方法で得た結晶懸濁液の顕微鏡画像を示す。
図2】(A)は実施例3の方法で得た顆粒の電子顕微鏡画像を示し、(B)は(A)の拡大画像を示す。
図3】(A)は比較例3の方法で得た顆粒の電子顕微鏡画像を示し、(B)は(A)の拡大画像を示す。
図4】(A)は実施例3の方法で得た顆粒の吸湿性の評価結果を示し、(B)は比較例3の方法で得た顆粒の吸湿性の評価結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
<顆粒の製造方法>
本実施形態に係る顆粒を製造する方法は、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の原料を含有し、原料全部の溶解及び該溶解後の原料の結晶化を行うことなく、原料の一部が結晶状態で含まれる結晶懸濁液を得る工程(混合工程)と、結晶懸濁液を低温条件で噴霧乾燥する工程(噴霧乾燥工程)と、を備える。
【0012】
<混合工程>
混合工程では、まず、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の原料を含有し、原料の一部が結晶状態で含まれる結晶懸濁液を得る。
【0013】
本明細書において、「結晶状態の糖及び/又は糖アルコール」とは、構成原子が三次元的に規則正しい繰り返しからなる固体状の糖及び/又は糖アルコールを意味する。本明細書において、「非結晶状態の糖及び/又は糖アルコール」とは、そのような規則正しい繰り返しを有さない固体状の、又は液体状の糖及び/又は糖アルコールをいう。
【0014】
結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールは、混合工程での操作性を高める観点から、好ましくは、単糖、二糖、三糖、及びこれらの糖アルコールである。
【0015】
単糖としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、アロース、アルロース等が挙げられる。二糖としては、イソマルツロース、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース等が挙げられる。三糖としては、ニゲロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース等が挙げられる。なお、イソマルツロースは、「パラチノース」として三井製糖株式会社が商標登録している二糖である。
【0016】
糖アルコールとしては、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、マンニトール、α-グルコピラノシル-1,1-マンニトール、α-グルコピラノシル-1,6-ソルビトール等が挙げられる。
【0017】
上述した結晶性の糖及び糖アルコールは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いられてよい。結晶懸濁液は、結晶性の糖を二種以上含有していてもよく、結晶性の糖アルコールを二種以上含有していてもよく、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールを組み合わせて二種以上含有していてもよい。本実施形態に係る顆粒を製造する方法は、簡便な方法でありながら、二種以上の結晶性の糖及びアルコールを用いる場合(例えば、2種の糖を用いる場合)でも構成する粒子の平均短径に対する平均長径の比が十分に小さい(例えば、3.1以下)顆粒を得ることができる。構成する粒子の平均短径に対する平均長径の比が十分に小さい顆粒は、安定性及び流動性に優れる傾向がある。
【0018】
結晶懸濁液中に含まれる結晶性の糖及び/又は糖アルコールの含有量は、流動性に優れる顆粒を得やすくする観点からは、結晶懸濁液全量基準で、30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。結晶性の糖及び/又は糖アルコールの含有量は、混合工程及び噴霧乾燥工程で良好な操作性を保つ観点からは、結晶懸濁液全量基準で、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
【0019】
結晶懸濁液の上清ブリックス値(Bx)は、流動性に優れる顆粒を得やすくする観点から、20.00以上、25.00以上、27.00以上、29.00以上又は31.00以上であってよく、混合工程及び噴霧乾燥工程で良好な操作性を保つ観点から、85.00以下、75.00以下、65.00以下、55.00以下、45.00以下、40.00以下又は35.00以下であってよい。
【0020】
本明細書におけるブリックス値(Bx)は、屈折率から算出されるレフブリックス値を意味し、ブリックス計(例えば、デジタル屈折計(RX-5000)、株式会社アタゴ製)により測定することができる。結晶懸濁液の上清ブリックス値の測定方法は後述する実施例のとおりである。
【0021】
結晶懸濁液の晶出率は、流動性に優れる顆粒を得やすくする観点から、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、又は60質量%以上であってよい。晶出率は、噴霧乾燥工程において良好な操作性を保つ観点から、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下又は78質量%以下であってよい。本明細書における晶出率は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0022】
晶出率は、例えば、フィルターろ過、遠心分離、重力沈降、加水及び/又は加温による溶解、化学反応に伴う結晶成分の消費調整等、結晶を物理的又は化学的に加除する操作を行うことにより調整することができる。結晶成分の投入及び混合等、結晶を増やす操作によっても調整することができる。
【0023】
結晶懸濁液は結晶核を含有していればよく、結晶核の大きさは、結晶懸濁液中で安定に存在できる大きさ以上であれば特に制限されない。結晶核の大きさは、例えば臨界結晶核以上の大きさであってもよい。
【0024】
結晶懸濁液の粘度は25℃において、噴霧乾燥後の顆粒の回収率の低下が更に抑制されること、及び、噴霧乾燥後の顆粒の固結の発生が更に抑制されることから、1550mPa・s以下、1400mPa・s以下、1300mPa・s以下、1200mPa・s以下、1100mPa・s以下、1000mPa・s以下、900mPa・s以下、800mPa・s以下、700mPa・s以下、600mPa・s以下、又は500mPa・s以下であってよく、50mPa・s以上、100mPa・s以上、200mPa・s以上、300mPa・s以上、400mPa・s以上、500mPa・s以上、600mPa・s以上、700mPa・s以上、800mPa・s以上、900mPa・s以上、1000mPa・s以上、又は1100mPa・s以上であってよい。結晶懸濁液の粘度は25℃において50~1550mPa・sであってよい。結晶懸濁液の粘度は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0025】
結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径は、顆粒の流動性を保つ観点から、1.00μm以上、2.00μm以上、3.00μm以上、4.00μm以上、5.00μm以上、6.00μm以上、7.00μm以上、8.00μm以上、9.00μm以上、10.00μm以上、11.00μm以上、又は12.00μm以上であってよい。結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径は、顆粒の崩壊の発生を更に抑制する観点から、30.00μm以下、25.00μm以下、20.00μm以下、18.00μm以下、15.90μm以下、14.00μm以下、13.00μm以下、12.00μm以下、又は11.00μm以下であってよい。結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径は、例えば、1.00~15.90μmであってよい。
【0026】
結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径は、溶媒又は溶質の加除、溶媒温度、溶解時間、撹拌時間の変更、撹拌機又は粉砕機による破砕、濾過等による分画、糖の加水分解等による晶析操作により調整することができる。
【0027】
本明細書における「結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径」は、デジタルマイクロスコープにより測定できる。測定のために、例えば斉藤光学株式会社製のSKM-S31B-PCを用いることができる。平均粒径の測定方法の詳細は、後述する実施例に記載のとおりである。
【0028】
結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径の標準偏差は、10.70μm以下、9.00μm以下、8.00μm以下、7.00μm以下、又は6.00μm以下であってよい。平均粒径の標準偏差が小さいことは平均粒径のばらつきが小さいことを意味する。平均粒径の標準偏差が上述した範囲内にあることによって、過度な粘度上昇が抑制されやすくなり、これによって、噴霧乾燥機内への顆粒の付着が更に抑制され、結果として、回収率がより一層改善される。結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径の標準偏差は、例えば、1.0μm以上、3.0μm以上、又は5.0μm以上であってよい。結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径の標準偏差は、例えば、1.00~10.70μmであってよい。
【0029】
本明細書において、「標準偏差」は、マイクロソフト(登録商標)・エクセルのSTDEV.S関数で求める不偏標準偏差である。
【0030】
結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均短径は、1.00μm以上、4.00μm以上、6.00μm以上、又は8.00μm以上であってよく、20.00μm以下、15.0μm以下、又は13.0μm以下であってよい。結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均長径は、5.00μm以上、7.00μm以上、又は9.00μm以上であってよく、30.00μm以下、25.00μm以下、又は20.00μm以下であってよい。
【0031】
結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均短径(単位:μm)に対する平均長径(単位:μm)の比は、顆粒の流動性及び安定性を保つ観点から、5.00以下、2.50以下、2.00以下、1.70以下、又は1.50以下であってよく、1.00以上、1.10以上、又は1.15以上であってよい。平均短径に対する平均長径の比は、例えば、1.00~1.70であってよい。結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均短径(単位:μm)に対する平均長径(単位:μm)の比の標準偏差は、0.50以下、0.45以下、又は0.40以下であってよく、0.05以上、0.10以上、又は0.15以上であってよい。
【0032】
結晶懸濁液は溶媒を含有する。溶媒は、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、イソプロパノール等の有機溶剤、又は水等であってよい。
【0033】
結晶懸濁液中の溶媒の含有量は、溶媒及び原料の合計質量を基準として、又は結晶懸濁液の全質量を基準として、10質量%以上、20質量%以上、又は30質量%以上であってよく、50質量%以下、又は45質量%以下であってよい。
【0034】
上述した結晶懸濁液は、噴霧乾燥される結晶懸濁液(噴霧液)としてそのまま用いられてもよく、他の成分と混合した後に噴霧液として用いられてもよい。他の成分としては、糖、糖アルコール、溶媒、機能材料及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0035】
機能材料とは、他の材料と組み合わせて得られる組成物(例えば食品、医薬品等)において、何らかの機能を発揮する材料、あるいは成分であれば限られない。機能材料は、水分、熱、光、酸、酸素、分子運動、紫外線、電気的相互作用、物理刺激といった周囲環境に影響を受ける材料であってもよく、加熱により機能を失う材料であってもよい。機能材料としては、より具体的には、アミノ酸、ペプチド(ホルモンを含む)、タンパク質(酵素及び抗体を含む)、脂肪酸、ビタミン、ミネラル、微生物(例えば、乳酸菌、酪酸菌、納豆菌、ビフィズス菌及び放線菌などの細菌、カビ・酵母)、ペプチド以外のホルモン、香料、ファージ、ペプチド以外の抗生物質、生薬などの天然原料、金属などの工業原料等が挙げられる。
【0036】
噴霧乾燥される結晶懸濁液(噴霧液)は、例えば、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の原料と溶媒とを混合して、原料の一部が結晶状態で含まれる結晶懸濁液Aを得る工程(工程A)、並びに、結晶懸濁液Aと糖溶液とを混合して、原料の一部が結晶状態で含まれ、噴霧乾燥される結晶懸濁液B(噴霧液)を得る工程(工程B)とを含む方法によって得ることができる。
【0037】
工程Aにおける原料と溶媒との混合はブリックス値(Bx)が、40以上、50以上、55以上、又は60以上であってよく、85以下、75以下、又は70以下となるように行われてよい。
【0038】
工程Aにおいて、結晶懸濁液Aは、例えば、原料と、溶媒とを混合し、得られる混合液を、25~35℃の温度に保持しながら、1~3時間撹拌することによって得ることができる。撹拌時の回転数は、例えば、250~400rpmであってよい。
【0039】
結晶懸濁液Aにおける、上清ブリックス値、晶出率、結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径、平均長径、平均短径及び平均短径に対する平均長径の比並びにこれらの標準偏差等の具体的態様は、上述した結晶懸濁液の具体的態様として例示したものと同様であってよい。
【0040】
工程Bでは、結晶懸濁液Aと糖溶液とが混合される。結晶懸濁液Aと糖溶液との混合は、温度を25~35℃に保持しながら行われてよい。
【0041】
糖溶液は、糖及び/又は糖アルコールと、溶媒とを含む。糖溶液に含まれる糖及び糖アルコールの一部又は全部は溶媒に溶解していてよい。糖及び糖アルコールは上述したものを用いることができる。糖溶液は、1種又は2種以上の糖及び/又は糖アルコールを含んでいてもよい。糖溶液中の糖及び/又は糖アルコールは、結晶懸濁液A中の糖及び/又は糖アルコールと同種のものを含んでいてもよく、異種のものを含んでいてもよい。
【0042】
糖溶液は、例えば、糖及び/又は糖アルコールと、溶媒とを混合することによって得ることができる。糖溶液は、80℃以上の温度条件で、糖及び/又は糖アルコールと、溶媒とを混合して糖及び/又は糖アルコールを溶解させることによって得てもよい。糖溶液は、調製後に25~35℃に保持されていてよい。
【0043】
糖溶液のブリックス値(Bx)は、50以上、55以上、又は60以上であってよく、85以下、75以下、又は70以下であってよい。
【0044】
糖溶液の混合量は、結晶懸濁液100質量部に対して、5質量部以上、10質量部以上、又は15質量部以上であってよく、30質量部以下、25質量部以下、又は20質量部以下であってよい。
【0045】
結晶懸濁液Bは、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の原料の一部が結晶状態で含まれる。結晶懸濁液Bは噴霧液としてそのまま噴霧乾燥することができる。
【0046】
噴霧液における、上清ブリックス値、晶出率、結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径、平均長径、平均短径及び平均短径に対する平均長径の比並びにこれらの標準偏差等の具体的態様は、上述した結晶懸濁液の具体的態様として例示したものと同様であってよく、異なっていてもよい。
【0047】
噴霧液中の糖及び/又は糖アルコールの含有量は、溶媒及び原料の合計質量を基準として、又は結晶懸濁液の全質量を基準として、40質量%以上、50質量%以上、又は60質量%以上であってよく、90質量%以下、80質量%以下、又は70質量%以下であってよい。
【0048】
噴霧液は、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選択される第1の糖原料と、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選択され、かつ、第1の糖原料とは異なる第2の糖原料と、を含有していてよい。第1の糖原料は、例えば、イソマルツロースであってよい。第2の糖原料は、第1の糖原料と異なるものであれば1種又は2種以上の上述した糖又は糖アルコールを含んでいてよく、スクロースを含んでいてよい。
【0049】
第1の糖原料の含有量は、噴霧液中の固形分100質量部に対して、70.0質量部以上、75.0質量部以上、80.0質量部以上、85.0質量部以上、90.0質量部以上又は95.0質量部以上であってよく、99.9質量部以下、95.0質量部以下又は90.0質量部以下であってよい。本明細書において、「固形分」は、組成物全量から溶媒(例えば水)量を除いた量を意味する。
【0050】
噴霧液が第1の糖原料及び第2の糖原料を含有する場合、第2の糖原料の含有量は、噴霧液中の固形分100質量部に対して、1.0質量部以上、3.0質量部以上、5.0質量部以上、8.0質量部以上、10.0質量部以上、12.0質量部以上、又は15.0質量部以上であってよく、30.0質量部以下、25.0質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下又は5質量部以下であってよい。
【0051】
機能材料を含有する噴霧液を調製する場合、機能材料を噴霧液に含有させる際のタイミングは特に制限されないが、例えば、機能材料と、上記糖溶液とを予め混合して混合液を調製後、当該混合液と、結晶懸濁液Aとを混合して噴霧液を得てもよい。
【0052】
機能材料の含有量は、上述した結晶懸濁液100質量部に対して、0.01質量部以上、0.05質量部以上、又は0.1質量部以上であってよく、5質量部以下、3質量部以下、又は1質量部以下であってよい。機能材料の添加量は、機能材料の種類によって適宜調整することができる。
【0053】
混合工程では、原料全部の溶解及び原料全部の溶解後の原料の結晶化が行われない。原料全部の溶解は例えば目視にて確認することができる。原料全部の溶解を確認するその他の方法としては、例えば、マイクロスコープで結晶化誘導を観察することが挙げられる。スライドガラスに滴下した結晶懸濁液を室温25℃でマイクロスコープを用いて5分間観察した際に、結晶の析出が確認されないことをもって原料全部が溶解したと判断することができる。
【0054】
原料全部の溶解は、通常、原料及び溶媒を含む液体を加熱すること、及び、加温した溶媒と原料とを混合すること等によって行われる。加熱する際の液体の温度又は加温した溶媒の温度は、特に制限されないが、例えば、70℃以上又は75℃以上であってよく、100℃以下であってよい。上述した混合工程では、結晶懸濁液を調製する際に、原料と混合する溶媒が原料全部を溶解するために加熱されない。
【0055】
原料全部の溶解後の原料の結晶化は公知の方法によって行われ得る。原料全部の溶解後に原料を結晶化させる方法は、原料の溶解液を冷却する方法(冷却晶析法)及び反応晶析法等が挙げられる。上述した混合工程では、原料全部を溶解させる操作に加えて、上記結晶化させる操作が行われない。
【0056】
冷却晶析法により結晶化が行われる場合、冷却による原料の溶解液の温度(冷却温度)は、結晶性の糖及び/又は糖アルコールの種類により設定される。冷却温度は、典型的には、25℃以下又は20℃以下であり、5℃以上、10℃以上、又は15℃以上であってよい。
【0057】
<噴霧乾燥工程>
噴霧乾燥工程は、上述した結晶懸濁液(噴霧液)を低温条件で噴霧乾燥する工程である。噴霧乾燥は、一実施形態において、噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を用いて行うことができる。噴霧乾燥機としては、例えば、大川原化工機株式会社製のOC-16を用いることができる。
【0058】
低温条件とは、従来の噴霧乾燥で行われていた温度(例えば60℃より高温)よりも低温条件(例えば60℃以下)であることを意味する。本実施形態では、糖及び/又は糖アルコールの一部が結晶状態で含まれる結晶懸濁液を用いるため、従来よりも低温条件で噴霧乾燥を行っても、好適な顆粒を得ることができる。
【0059】
低温条件は、機能材料が有する機能が失われない程度の温度条件であってもよい。本実施形態では、例えば、機能材料として酵素を含む場合、高温条件での噴霧乾燥による酵素の失活を抑制することができる。機能材料として香料を含む場合、高温条件での噴霧乾燥による香料の揮発を抑制することができる。
【0060】
低温条件で噴霧乾燥が行われていることは、噴霧乾燥機における入口空気温度(入口温度)が上述したような温度条件で行われていることをいう。
【0061】
一実施形態において、噴霧乾燥工程における入口空気温度は、好ましくは、60℃以下、55℃以下、50℃以下、45℃以下、40℃以下、35℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下、又は15℃以下である。入口空気温度は、例えば、0℃以上、5℃以上、又は10℃以上であってもよい。すなわち、噴霧乾燥工程における入口空気温度は、0~60℃であってよく、0~50℃であってもよい。
【0062】
噴霧乾燥機における出口空気温度(排風温度)は、例えば、50℃以下、40℃以下、35℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下、又は15℃以下であってよく、0℃以上、5℃以上、又は10℃以上であってよい。
【0063】
噴霧乾燥工程における結晶懸濁液の液温は、例えば、60℃以下、50℃以下、又は45℃以下であってよく、10℃以上、15℃以上、又は20℃以上であってよい。
【0064】
噴霧乾燥において、結晶懸濁液の供給量、雰囲気温度、雰囲気湿度等の他の条件は、それぞれ適宜調整されてよい。
【0065】
例えば、噴霧乾燥におけるアトマイザ回転数は、3000rpm以上、5000rpm以上、又は10000rpm以上であってよく、25000rpm以下、20000rpm以下、又は18000rpm以下であってよい。
【0066】
噴霧乾燥工程では、例えば顆粒の水分量を調整することを目的として、更なる後乾燥工程を備えてもよい。後乾燥工程は、例えば、噴霧乾燥機における缶壁に付着した顆粒に対して所定時間送風を行い、顆粒の水分を更に揮発させることであってよい。あるいは、噴霧乾燥により得られた顆粒を、シリカゲルを入れたデシケーター内等に所定時間保管することであってもよい。
【0067】
顆粒の固結度は、10.0質量%未満、又は9.5質量%以下であってよく、0.1質量%以上、1.0質量%以上又は4.0質量%以上であってよい。顆粒の固結度は、噴霧乾燥1週間後の前記顆粒のうち、目開き2mmの篩及び目開き1mmの篩を通過しない部分の割合を意味し、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0068】
本実施形態に係る顆粒の回収率は、40.0質量%以上、又は45.0質量%以上であってよく、100.0質量%以下、90.0質量%以下、80.0質量%以下、又は75.0質量%以下であってよい。顆粒の回収率は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0069】
<顆粒>
本実施形態に係る顆粒は、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有し、結晶性の糖及び/又は糖アルコールは、一部が結晶状態であり、他部が非結晶状態である。当該顆粒を構成する粒子の平均短径に対する平均長径の比は、3.1以下である。当該顆粒は、例えば、上述した顆粒を製造する方法により得ることができる。
【0070】
当該顆粒は、機能材料を更に含んでいてよい。結晶性の糖、結晶性の糖アルコール、及び機能材料の詳細な態様は、上述したものと同様であるため説明を省略する。本明細書における「顆粒」は、粒子の集合体であり、顆粒を構成する粒子(顆粒粒子)が、結晶性の糖及び糖アルコールからなる群より選ばれる一種又は二種以上を含有する。
【0071】
顆粒は、結晶性の糖を二種以上含有していてもよく、結晶性の糖アルコールを二種以上含有していてもよく、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールを組み合わせて二種以上含有していてもよい。
【0072】
顆粒は、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選択される第1の糖原料と、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選択され、かつ、第1の糖原料とは異なる第2の糖原料と、を含有してもよい。顆粒が第1の糖原料と、第2の糖原料とを含有する場合、顆粒の流動性、並びに機能材料及び顆粒の安定性がより優れたものとなる。
【0073】
第1の糖原料は、例えば、イソマルツロースであってよい。第2の糖原料は、第1の糖原料と異なるものであれば1種又は2種以上の上述した糖又は糖アルコールを含んでいてよく、スクロースを含んでいてよい。
【0074】
第1の糖原料の含有量は、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールの総量100質量部に対して、70.0質量部以上、75.0質量部以上、80.0質量部以上、85.0質量部以上、90.0質量部以上又は95.0質量部以上であってよく、99.9質量部以下、95.0質量部以下又は90.0質量部以下であってよい。
【0075】
顆粒が第2の糖原料を含有する場合、第2の糖原料の含有量は、結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールの総量100質量部に対して、1.0質量部以上、3.0質量部以上、5.0質量部以上、8.0質量部以上、10.0質量部以上、12.0質量部以上、又は15.0質量部以上であってよく、30.0質量部以下、25.0質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下又は5質量部以下であってよい。
【0076】
一実施形態に係る顆粒は、結晶性の糖及び/又は糖アルコールの一部が結晶状態であり、この結晶状態の糖及び/又は糖アルコール同士が凝集した顆粒粒子から構成されている。この場合、結晶性の糖及び/又は糖アルコールの他の一部(他部)は非結晶状態であり、凝集した結晶状態の糖及び/又は糖アルコール同士が形成する間隙に保持されていることが好ましい。顆粒が機能材料を含む場合、機能材料もまた、結晶状態の糖及び/又は糖アルコール同士が形成する間隙に保持されていることが好ましい。
【0077】
結晶状態の糖及び/又は糖アルコール同士が凝集していることは、走査型電子顕微鏡(SEM)又はデジタルマイクロスコープにより顆粒粒子の外観、又は、顆粒粒子の破断面を形態観察することにより確認できる。非結晶状態の糖及び/又は糖アルコール、並びに機能材料が上記間隙に保持されていることは、下記の方法により確認することができる。
(1)示差走査熱量計(DSC、例えば日立ハイテクサイエンス株式会社製のリアルビューDSC(TA7000))で昇温中の顆粒を形態観察する。これにより、非結晶状態の糖、糖アルコールが昇温によってガラス転移することが視認できる。
(2)偏光顕微鏡(例えばメイジテクノ株式会社製の偏光顕微鏡(MT9200L))で、結晶状態と非結晶状態の偏光性の違いを視認する。
【0078】
顆粒を構成する粒子に含まれる結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの数(結晶の数)は、例えば10個以上であり、50個以上、又は100個以上であってもよい。結晶の数は、1000個以下であってもよい。結晶の数は、走査型電子顕微鏡により観察して目視により測定できる。
【0079】
顆粒を構成する粒子の形状は、顆粒の流動性がより優れる観点から、略球状であってよい。顆粒を構成する粒子は、流動性により優れる観点から、その表面に凹凸を有していてもよい。
【0080】
顆粒の平均粒径は、顆粒が更に固結しにくく、流動性が良好であることから、10.00μm以上、20.00μm以上、40.00μm以上、60.00μm以上、80.00μm以上、又は90.00μm以上であってよく、溶解性が更に良好であることから、200.00μm以下、150.00μm以下、140.00μm以下、135.00μm以下、又は118μm以下であってよい。顆粒の平均粒径は、例えば、20.00~118.00μmであってよい。
【0081】
本明細書における「顆粒の平均粒径」は、電子顕微鏡により測定できる。測定のために、例えば株式会社日立ハイテクノロジーズ製のMiniscopeTM3030を用いることができる。顆粒の平均粒径の測定方法の詳細は、後述する実施例に記載のとおりである。
【0082】
顆粒の平均粒径の標準偏差は、顆粒がより固結しにくいものとなることから、40μm以下、又は30μm以下であってよく、5μm以上又は10μm以上であってよい。
【0083】
顆粒の平均短径は、80μm以上、又は95μm以上であってよく、150μm以下、又は130μm以下であってよい。顆粒の平均長径は、75μm以上、又は95μm以上であってよく、200μm以下、又は150μm以下であってよい。
【0084】
顆粒の平均短径に対する平均長径の比は、顆粒の安定性及び流動性が更に良好であることから、1.40以下、1.20以下、1.10以下、又は1.04以下であってよく、1.00以上、又は1.01以上であってよい。顆粒の平均短径に対する平均長径の比は、例えば、1.00~1.04であってよい。顆粒の平均短径に対する平均長径の比の標準偏差は、顆粒の乾燥しやすさ、固結しにくさ及び流動性が更に良好であることから、0.20以下、又は0.12μm以下であってよく、0.01μm以上であってよい。
【0085】
顆粒を構成する粒子の平均粒径は、5.00μm以上、10.00μm以上、又は15.00μm以上であってよく、50.00μm以下、40.00μm以下、30.00μm以下、25.00μm以下又は20.00以下であってよい。顆粒を構成する粒子の平均粒径は、例えば、10.00~20.00μmであってよい。
【0086】
顆粒を構成する粒子の平均粒径の標準偏差は、顆粒の安定性及び流動性が更に良好である観点から、10.00μm以下、8.00μm以下、6.00μm以下、4.00μm以下、又は3.3μm以下であってよく、1.00μm以上、又は2.00μm以上であってよい。顆粒を構成する粒子の平均粒径の標準偏差は、例えば、1.00~3.30μmであってよい。
【0087】
顆粒を構成する粒子の平均短径は、5.0μm以上、又は10.0μm以上であってよく、30.0μm以下、25.0μm以下であってよい。顆粒を構成する粒子の平均長径は、10.0μm以上、又は15.0μm以上であってよく、50μm以下、又は35μm以下であってよい。
【0088】
顆粒を構成する粒子の平均短径に対する平均長径の比は、3.1以下である。顆粒を構成する粒子の平均短径に対する平均長径の比が3.1以下であることによって、顆粒の安定性及び流動性が優れたものとなっている。顆粒を構成する粒子の平均短径に対する平均長径の比は、安定性及び流動性が更に良好であることから、2.8以下、2.5以下、2.2以下、又は1.9以下であってよく、0.5以上、1.0以上、又は1.4以上であってよい。
【0089】
顆粒を構成する粒子の平均短径に対する平均長径の比の標準偏差は、0.4以下、又は0.3以下であってよく、0.0超、又は0.1以上であってよい。
【0090】
顆粒の総細孔容積は、0.0265cm/g以上、0.0270cm/g以上、0.0275cm/g以上、0.0280cm/g以上又は0.0290cm/g以上であってよく、0.0400cm/g以下、0.0350cm/g以下、0.0300cm/g以下、0.0290cm/g以下であってよい。
【0091】
顆粒の総比表面積は、2.000m/g以上、4.000m/g以上、6.000m/g以上、又は8.000m/g以上であってよく、10.000m/g以下、9.000m/g以上又は8.5000m/g以下であってよい。
【0092】
顆粒の平均細孔直径は、顆粒の安定性が更に良好である観点から、60000Å以下、40000Å以下、20000Å以下、10000Å以下、800Å以下、又は600Å以下であってよく、200Å以上、400Å以上、又は550Å以上であってよい。
【0093】
顆粒の気孔率は、3.80%以上、3.90%以上、又は3.95%以上であってよく、8.00%以下、5.00%以下、4.50%以下、又は4.10%以下であってよい。
【0094】
香料を含有する顆粒の保香率は、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は100%以上であってよく、150%以下、140%以下又は130%以下であってよい。
【0095】
顆粒の総細孔容積、総比表面積、平均細孔直径、気孔率及び保香率は後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0096】
本実施形態に係る顆粒の製造方法は、原料を完全に溶解する工程、原料を結晶化させる工程、真空凍結により乾燥を行う工程、又は原料の完全溶解若しくは結晶化を目的とした結晶懸濁液を噴霧乾燥前に加温する工程を省略することができるため、従来の方法よりも簡便な方法により顆粒を製造することが可能である。
【0097】
本実施形態に係る顆粒は、より簡便な操作で効率的に製造可能でありながら、固結の発生が抑制されている。更に、本実施形態に係る顆粒は、より簡便な操作で効率的に製造可能でありながら、吸湿性、流動性及び噴流性の低下も抑制されている。
【0098】
顆粒は低温条件で噴霧乾燥することにより得られるため、顆粒が機能材料を含有する場合、包含される機能材料の機能が熱により失われにくい。すなわち、この顆粒は、乾燥工程を経てもなお機能材料の機能が良好に保持されている。通常、噴霧乾燥により顆粒を得る場合には、より高温の条件で噴霧乾燥をしなければ好適な顆粒を得ることが困難である。しかし、本実施形態に係る顆粒は、低温条件であっても好適な顆粒を容易に得ることができる。
【0099】
上述した実施形態に係る顆粒は、例えば、食品、食品添加物、医薬品、化粧品、医薬部外品又は医薬品、動物飼料、肥料、香料、抗生物質、土壌改良剤等に添加されるための材料として用いることができる。
【実施例0100】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0101】
<実施例1>
(結晶懸濁液の調製)
8L容積の金属容器に、パラチノース(三井製糖株式会社の登録商標)(三井製糖株式会社、PST-N)3.25kg及び水1.75kgを入れ、ブリックス(Bx)65に希釈し、結晶懸濁液を得た。その後、結晶懸濁液の温度を30℃で保持しながら、攪拌機(新東科学株式会社、スリーワンモータ、BL-1200)350rpmで2時間撹拌して、結晶懸濁液A1を得た。
【0102】
(噴霧液の調製)
3Lのポリジョッキに、グラニュ糖(三井製糖株式会社、GN)900g、及び80℃以上に温めたイオン交換水300gを入れ、糖が完全に溶解するまで撹拌した。得られた糖溶液を、Bxが60になるまでイオン交換水で希釈し、Bx60の糖溶液を1.5L調製した。調製したBx60の糖溶液は、ウォーターバス(タイテック株式会社、PERSONAL-11)で温度を30℃に維持した。結晶懸濁液A1に、上述のBx60の糖溶液0.96kgを混合し、パラチノース:スクロースの固形分比率が85:15となる噴霧液を調製した。
【0103】
(噴霧乾燥)
30℃に維持した噴霧液約4kgを噴霧乾燥機(大川原化工機株式会社、OC-16(乾式))を用いて噴霧乾燥した。噴霧乾燥の条件は次に示す条件とした。
送風温度:40℃
排風温度:28℃
送風インバータ周波数:60Hz
排風風量:38Hz
塔内制圧:微陽圧
アトマイザ回転数:14,000rpm(設定:33Hz)
原料供給速度:50mL/min,4.0kg/h(設定:8.5Hz)
装置:OC-16(乾式)
【0104】
<実施例2>
(結晶懸濁液の調製)
PST-Nを6.5kg、水を3.5kg用いたこと、撹拌機の回転数を300rpmに変更したこと以外は、実施例1の結晶懸濁液A1を得る手順と同様にして結晶懸濁液A2を得た。
【0105】
(噴霧液の調製)
3Lのポリジョッキに、グラニュ糖(三井製糖株式会社、GN)1800g、80℃以上に温めたイオン交換水600gを入れ、糖が完全に溶解するまで攪拌した。Bxが60になるまでイオン交換水で希釈し、Bx60の糖溶液を1.5L調製した。調製したBx60の糖溶液は、ウォーターバス(タイテック株式会社、PERSONAL-11)で温度を30℃に維持した。Bx60の糖溶液1.9kgとイオン交換水90.0gとを混合し、香料なしの糖溶液を調製した。結晶懸濁液A2に、上述した香料なしの糖溶液1.90kgを混合し、パラチノース:スクロースの固形分比率が85:15となる噴霧液を調製した。
【0106】
(噴霧乾燥)
約10kgの噴霧液を30℃に維持しながら、モーノポンプ(兵神装備株式会社、3NTL08PUL)を使用して全量噴霧乾燥した。噴霧乾燥の条件は、次に示す条件とした。
送風温度:40℃
排風温度:28-30℃
送風風量:60Hz
排風風量:38Hz
塔内静圧:微陽圧
アトマイザ回転数:14,000rpm(設定:33Hz)
アトマイザ種類:ディスク式アトマイザ
原料供給速度:50mL/min,4.0kg/h(設定:8.5Hz)
装置:OC-16(乾式)
【0107】
<実施例3>
(結晶懸濁液の調製及び噴霧乾燥)
黒糖香料(高砂香料工業株式会社、コクトウミクロンH-80210)19.0gとイオン交換水71.0gを混合し、黒糖香料水溶液を調製した。実施例2の「(噴霧液の調製)」に記載の方法で得たBx60の糖溶液1.9kgと黒糖香料水溶液90.0gとを混合し、香料入り糖溶液を調製した。実施例2の方法で得た結晶懸濁液A2に香料入り糖溶液1.90kgを混合し、パラチノース:スクロースの固形分比率が85:15となる噴霧液を調製した。得られた噴霧液を用いて、実施例2と同様の条件で噴霧乾燥を行った。
【0108】
<実施例4~7>
(結晶懸濁液の調製)
8L容積の金属容器に、PST-N3.25kg及び水2.4kgを入れ、Bx57.5に希釈した。その後、希釈物を温度30℃で保持しながら、攪拌機(新東科学株式会社、スリーワンモータ、BL-1200)300rpmで2時間撹拌して結晶懸濁液(c1)を得た。
【0109】
(噴霧液の調製)
3Lのポリジョッキに、グラニュ糖(三井製糖株式会社、GN)1800g、又はPST-N1800gを入れ、80℃以上に温めたイオン交換水1200gを入れ、糖が完全に溶解するまで攪拌した。得られた各糖溶液をBxが60になるまでイオン交換水で希釈することによって、Bx60の糖溶液(a)として、グラニュ糖を含むBx60のスクロースシロップと、PST-Nを含むBx60のパラチノースシロップとを調製した。調製したBx60の糖溶液(a)は、ウォーターバス(タイテック株式会社、PERSONAL-11)を用いて温度30℃に保持した。
【0110】
黒糖香料水溶液(b)は、黒糖香料(高砂香料工業株式会社、コクトウミクロンH-80210)9.5gとイオン交換水40.5gを混合することによって調製した。
【0111】
表1に示す組成となるように、Bx60の糖溶液(a)と黒糖香料水溶液(b)とを混合し、得られた混合液に結晶懸濁液(c1)を混合した。これにより、表2に示す組成の噴霧液を調製した。
【表1】

【表2】
【0112】
(噴霧乾燥)
噴霧液を30℃に維持しながら、次に示す条件でモーノポンプ(兵神装備株式会社、3NTL08PUL)を使用して全量(6.7kg)噴霧乾燥した。
送風温度:30℃
排風温度:28.1-24.0℃
送風風量:60Hz
排風風量:38Hz
塔内静圧:微陽圧
アトマイザ回転数:14,000rpm(設定:33Hz)
アトマイザ種類:ディスク式アトマイザ
原料供給速度:50mL/min,4.0kg/h(設定:8.5Hz)
装置:OC-16(乾式)
【0113】
噴霧終了後、噴霧乾燥機の運転条件を変えず、そのまま40分間、乾燥エアを送り続け、乾燥機の庫内を乾燥させた。その後、乾燥物をかき落として回収した。
【0114】
<比較例1>
(比較用懸濁液の調製)
8L容積の金属容器に、PST-N3.25kg及び水1.75kgを入れて、80℃で1時間湯煎した。糖が完全に溶解したことを確認後、金属容器に水を入れてBx65に調節した。金属容器内の懸濁液を7℃の水を入れた水浴を用いて20℃になるまで冷却した。300rpmで撹拌しながら、超音波発振機(株式会社エスエムテー、ULTRA SONIC HOMOGENIZER、UH-600S)(メモリ8、連続照射)で15分間照射した。その後、内容物の温度を30℃に維持しながら、攪拌機300rpmで1時間45分撹拌して、比較用懸濁液B1を得た。
【0115】
(噴霧液の調製及び噴霧乾燥)
結晶懸濁液A1に代えて比較用懸濁液B1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして噴霧液の調製及び噴霧乾燥を行った。
【0116】
<比較例2>
(比較用懸濁液の調製)
PST-Nを6.5kg、水を3.5kg用いたこと以外は、比較例1の比較用懸濁液B1を得る手順と同様にして、比較用懸濁液B2を得た。
【0117】
(結晶懸濁液の調製及び噴霧乾燥)
結晶懸濁液A2に代えて比較用懸濁液B2を用いたこと以外は、実施例2と同様にして噴霧液の調製及び噴霧乾燥を行った。
【0118】
<比較例3>
(比較用懸濁液の調製及び噴霧乾燥)
比較用懸濁液B1に上述した香料入り糖溶液1.90kgを混合し、パラチノース:スクロースの固形分比率が85:15となる噴霧液を調製した。得られた噴霧液を用いて、実施例2と同様の条件で噴霧乾燥を行った。
【0119】
<比較例4~7>
(比較用懸濁液の調製)
8L容積の金属容器に、PST-N3.25kgと水2.4kgを入れて、80℃で1時間湯煎した。糖が完全に溶解したことを確認後、水を入れてBx57.5に調節した。8L容積の金属容器を7℃の水に水浴して、20℃になるまで内容物を冷却した。300rpmで撹拌しながら、超音波発振機(株式会社エスエムテー、ULTRA SONIC HOMOGENIZER、UH-600S)(メモリ8、連続照射)で15分間照射した。その後、内容物の温度を30℃に維持しながら、攪拌機300rpmで1時間45分撹拌して比較用懸濁液(c2)を得た。
【0120】
(噴霧液の調製及び噴霧乾燥)
結晶懸濁液(c1)に代えて比較用懸濁液(c2)を用いたこと以外は、実施例4~7と同様にして噴霧液の調製及び噴霧乾燥を行った。
【表3】
【0121】
<ブリックス値(Bx)>
BxはレフBx計(株式会社アタゴ、RX-5000α)で測定した。
【0122】
<晶出率>
晶出率は、結晶懸濁液又は噴霧液を1.5mL容エッペンドルフチューブに1g入れ、遠心分離機(株式会社佐久間製作所、M150IV)を用いて16,000rpmで1分間遠心分離を行い、上清を除いた際の残存結晶質量と、結晶懸濁液又は噴霧液の質量を、以下の式に当てはめて算出した。
晶出率(質量%)=残存結晶質量(g)/結晶懸濁液又は噴霧液の質量(g)×100
【0123】
<粘度>
粘度はB型粘度計(東京計器株式会社、BL型)を使用して液温25℃での粘度を測定した。粘度計のアダプターNo.3を装着して、回転速度12rpmで15秒間、対象物に測定部を浸漬させた。その後、読み値を記録した。B型粘度計の換算係数に基づいて、読み値を100倍して、対象物の粘度(mPa・s)を算出した。
【0124】
<顆粒の外観>
得られた顆粒の外観評価は、電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ、TM3030-Plus)を用いて行った。
【0125】
<製品回収率(歩留まり)の評価>
製品回収率(歩留まり)(質量%)は、噴霧液中の固形分重量(g)に対する噴霧乾燥後の顆粒重量(g)の割合で求めた。
【0126】
<水分活性の評価>
水分活性(%)は、水分活性測定装置(METER社、Dew Point water activity Meter AquaLAb Series4TE)により顆粒5g又は10mLを用いて測定した。
【表4】
【0127】
Bx及び晶出率が同等であっても、実施例の方法では、結晶懸濁液及び噴霧液中の結晶径が適度に小さい結晶が均一に生成し、粘度も低く、噴霧乾燥後の顆粒の回収率が良好であった。実施例及び比較例の方法において、水分活性は同等であった。
【0128】
<顆粒の固結度合いの評価>
(1)篩評価(一部サンプルのみ)
得られた顆粒1~2kgをアルミパック(チャック下長さ340mm×240mm)に入れて密封して室温25℃で1週間保存した後、目開き2mm、1mmの篩にそれぞれ通して、篩上、篩下の重量を測定し、以下の基準で固結の度合いを評価した。
・弱:顆粒の1割未満が篩上にある。
・中:顆粒の1割以上3割未満が篩上にある。
・強:顆粒の3割以上が篩上にある。
【0129】
(2)目視確認
アルミパックに入れて密封して室温25℃で1か月以上保存した顆粒を、黒紙の上に各500g広げて以下の基準で固結度合いを目視で確認した。表6は、実施例1及び比較例1の方法で得た顆粒の評価結果を示す。
・弱:顆粒の1割未満が塊状に固結している。
・中:顆粒の1割以上3割未満が塊状に固結している。
・強:顆粒の3割以上が塊状に固結している。
【表5】

【表6】
【0130】
表5に示すとおり、従来法(結晶析出法)の比較例の方法で得た顆粒の多くは中程度の固結を示したのに対して、実施例の方法で作製した顆粒では固結はほとんど確認されなかった。
【0131】
<結晶懸濁液及び噴霧液中の粒子の結晶径>
結晶懸濁液又は噴霧液をスライドガラスに滴下し、カバーガラスを乗せて、倍率1000倍で計測した。平均粒径の測定方法は、デジタルマイクロスコープ(斉藤光学株式会社、SKM-S31B-PC)で任意の10個以上の糖結晶に対して、それらを構成する各10個以上の糖結晶の粒径の平均をとった。結晶懸濁液又は噴霧液中の測定対象とする粒子10個以上において、第1方向の距離と、第1方向と直交する第2方向の距離とがそれぞれの中間点で交わったときの第1方向の距離及び第2方向の距離をそれぞれ横幅及び縦幅として測定した。第1方向は、測定対象とする全粒子において同じ方向である。測定された横幅及び縦幅の内、長い方を長径、短い方を短径として測定対象の粒子における平均を平均長径及び平均短径とした。図1(A)及び(B)はそれぞれ実施例1及び比較例1の方法で得た結晶懸濁液の顕微鏡画像を示す。
【0132】
<顆粒及び顆粒を構成する粒子の結晶径>
顆粒径及び顆粒を構成する粒子の結晶径を電子顕微鏡(日立ハイテク社、MiniscopeTM3030)を用いて測定した。実施例及び比較例の方法で得られた顆粒を10個ずつ観察し、各顆粒の長幅、短幅を計測し顆粒径の平均値を求めた。顆粒に含まれる結晶3~10個の長幅、短幅をそれぞれ計測し顆粒中の結晶径の平均値を求めた。図2は実施例3の方法で得た顆粒の電子顕微鏡画像を示す。図3は比較例3の方法で得た顆粒の電子顕微鏡画像を示す。
【0133】
<標準偏差>
平均粒径、平均長径、平均短径及び平均短径に対する平均長径の比の標準偏差は、マイクロソフト(登録商標)・エクセルのSTDEV.S関数で算出した。
【表7】

【表8】

【表9】

【表10】
【0134】
<流動性、噴流性及び嵩密度の評価>
実施例及び比較例の顆粒について、R.L.Carrにより提案された「流動性指数」及び「噴流性指数」を算出した(Carr,R.L.“Evaluating flow properties of solids.”Chem.Eng.(1965)72(163-168))。多機能型粉体物性測定器(株式会社セイシン企業、マルチテスターMT-02)を用いて、顆粒の安息角(°)、スパチュラ角(°)、圧縮度(%)及び均一度(-)を求め、Carrの理論に基づき、各測定値に対応する指数を得た。各測定値の指数を合算することにより、流動性指数を得た。多機能型粉体物性測定器で、顆粒の崩壊角(°)及び差角(°)、分散度(%)を求め、Carrの理論に基づき得られた各測定値に対応する指数と、流動性指数に基づく指数を足し合わせることにより、噴流性指数を得た。測定時の温湿度は25℃、50%であった。
【0135】
次に示すCarrの評価基準に基づき、顆粒の流動性及び噴流性を評価した。
流動性の評価基準
流動性指数値 流動性の程度
90~100 最も良好
80~89 良好
70~79 かなり良好
60~69 普通
40~59 あまり良くない
0~19 非常に悪い
【0136】
噴流性の評価基準
噴流性指数値 噴流性の程度
80~100 非常に強い
60~79 かなり強い
40~59 傾向がある
25~39 あるかもしれない
0~24 なし
【0137】
実施例の方法で得られた顆粒は、より簡便な操作で得られたものでありながら、比較例の方法と同様に良好な流動性及び噴流性を有していた。
【0138】
安息角及び均一度については粉体工学用語辞典(一般社団法人粉体工学会、更新日2021年5月17日、URL:http://www.sptj.jp/powderpedia/words/10382/)に記載のカーの流動性指数表に基づいて別途流動性を評価した。
【0139】
実施例及び比較例の顆粒について、多機能型粉体物性測定器で嵩密度(ゆるめ嵩密度、固め嵩密度、動的嵩密度)を求めた。実施例の方法で得られた顆粒は比較例の方法と同様の嵩密度を示した。
【表11】
【0140】
<顆粒の吸湿性の評価>
実施例3及び比較例3それぞれの方法で得た顆粒の吸湿性(吸脱着等温線)は動的水蒸気吸着測定装置(Surface Measurement Systems Ltd.、DVS Intrinsic)を用いて測定した。サンプル10mgを用いて、5%ずつ相対湿度を上げ、0%から90%まで上昇させたのち、同様の手順で0%に低下させた。サンプルの含水量変化率(dm/dt)が10分間で0.02を下回るまで、又は0.02%/minに達しない場合でも30分後までは一定の相対湿度を維持し、温度は常時25℃に保った。実施例3の方法で得た顆粒の吸湿性の評価結果を図4(A)に示す。比較例3の方法で得た顆粒の吸湿性の評価結果を図4(B)に示す。
【0141】
実施例の方法で得た顆粒は、比較例の方法で得た顆粒と同様の吸脱着等温線を示し、吸湿性が同等であることが確認された。
【0142】
<顆粒の平均細孔直径、総細孔容積、気孔率及び総比表面積の評価>
実施例1及び比較例1それぞれの方法で得た顆粒の平均細孔直径、総細孔容積、気孔率及び総比表面積を水銀圧入孔径分析装置(Quantachrome社、POREMASTER 60GT)を用いて評価した。サンプル0.4gを水銀圧入孔径分析装置に供し、20℃で測定した。
平均細孔直径=累積50%細孔径
総細孔容積=圧入された総水銀量(cm)/サンプル重量(g)
気孔率=サンプルの細孔容積(cm)×サンプル嵩密度(g/cm)/サンプル重量(g)×100
総比表面積=細孔を開放系円筒形と仮定したときの比表面積(細孔分布及び容積から算出)
【表12】
【0143】
実施例1の方法で得た顆粒は、比較例1の方法で得た顆粒よりも、平均細孔直径が小さく、総細孔容積、総比表面積及び気孔率が高い結果となった。
【0144】
<顆粒の保香率の評価>
実施例4及び6、比較例4及び6それぞれの方法で得た顆粒の保香率はポータブル型ニオイセンサ(新コスモス電機株式会社、XP-329IIIR)を用いて測定した。サンプル50gを、アルミパック(日本生産社、ラミジップ 平袋底開きタイプAL-G)に入れて密封した。また、ゼロ値設定用として、サンプルを入れずに密封したアルミパックを、標準品として、パラチノース(三井製糖株式会社、PST-N)42.4g、グラニュ糖(三井製糖株式会社、GN)7.5g、黒糖香料(高砂香料工業株式会社、コクトウミクロンH-80210)0.125gを混合して入れ、密封したアルミパックを用意した。室温25℃で各アルミパックを3時間静置した後のアルミパック内の香り強度をポータブル型ニオイセンサのモニタリング・モードで5分間測定し、5分間で最も高い香り強度をサンプル又は標準品の香り強度とし、以下の式で各サンプルの保香率を算出した。
保香率(%)=サンプルの香り強度/標準品の香り強度×100
なお、ゼロ値設定用のアルミパック内を香り強度ゼロとした。
【表13】
【0145】
実施例の方法で得た顆粒は、同じ砂糖含有率の比較例の方法で得た顆粒と同様又はそれ以上の保香率を示し、保香性が同等又はそれ以上であることが確認された。

図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種の原料を含有し、前記原料全部の溶解及び該溶解後の前記原料の結晶化を行うことなく、前記原料の一部が結晶状態で含まれる結晶懸濁液を得る工程と、
前記結晶懸濁液を低温条件で噴霧乾燥する工程と、を備え
前記噴霧乾燥が入口温度が0~60℃の条件で行われる、顆粒を製造する方法。
【請求項2】
前記糖及び前記糖アルコールが単糖、二糖、三糖及びこれらの糖アルコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料がパラチノース、スクロース及びトレハロースからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記結晶懸濁液が機能材料を更に含有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記機能材料が酵素、微生物、又は香料である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記結晶懸濁液の粘度が25℃において50~1550mPa・sである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径が1.00~15.90μmである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均粒径の標準偏差が1.00~10.70μmである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記結晶懸濁液中の結晶状態の糖及び/又は糖アルコールの平均短径に対する平均長径の比が1.00~1.70である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記顆粒を構成する粒子の平均短径に対する平均長径の比が3.1以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記顆粒の固結度が10.0質量%未満である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する顆粒であって、
前記糖及び/又は前記糖アルコールは、一部が結晶状態であり、他部が非結晶状態であり、
前記顆粒を構成する粒子の平均短径に対する平均長径の比が3.1以下である、顆粒。
【請求項13】
前記糖及び前記糖アルコールが、単糖、二糖、三糖及びこれらの糖アルコールである、請求項12に記載の顆粒。
【請求項14】
前記結晶性の糖及び結晶性の糖アルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種が、パラチノース、スクロース及びトレハロースからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項12又は13に記載の顆粒。
【請求項15】
機能材料を更に含有する、請求項12又は13に記載の顆粒。
【請求項16】
前記機能材料が酵素、微生物、又は香料である、請求項15に記載の顆粒。
【請求項17】
前記顆粒を構成する粒子の平均粒径が10.00~20.00μmである、請求項12又は13に記載の顆粒。
【請求項18】
前記顆粒を構成する粒子の平均粒径の標準偏差が1.00~3.30μmである、請求項12又は13に記載の顆粒。
【請求項19】
前記顆粒の固結度が10.0質量%未満である、請求項12又は13に記載の顆粒。