(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118894
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20240101AFI20240826BHJP
【FI】
B60K35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025463
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼西 雄大
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA01
3D344AA07
3D344AB01
3D344AD01
(57)【要約】
【課題】衝突に伴う上方立ち壁部の変形によるカバーパネルの割れを抑制可能とする車両用表示装置を提供する。
【解決手段】表示部110、立ち壁部132、およびカバーパネル120によって表示本体部101が形成され、表示本体部の上側が、車両のダッシュボード10の上側に飛び出して配置された車両用表示装置であって、立ち壁部において表示部の上側に位置する部分である上方立ち壁部132Aの端部133となる上方端部133Aは、カバーパネルの表面121よりも視認側に突出するように構成されると共に、上方立ち壁部は、内周側面135において、上方端部に向かうほど上方立ち壁部の厚さが順次薄くなるような傾斜部138を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を表示する表示部(110)と、
前記表示部を側方から包囲する筒状部材であって、視認側端部(133)が開口部として形成された包囲部(132)と、
透光性を有し、前記包囲部の開口部を塞ぐように前記表示部の表示面(111)よりも視認側に配置された板状のカバー部(120)と、を備え、
前記視認側端部は、前記カバー部の視認側の表面(121)には被さっておらず、
前記表示部、前記包囲部、および前記カバー部によって表示本体部(101)が形成され、前記表示本体部の上側が、車両のダッシュボード(10)の上側に飛び出して配置された車両用表示装置であって、
前記包囲部において前記表示部の上側に位置する部分である上方包囲部(132A)の前記視認側端部となる上方視認側端部(133A)は、前記カバー部の前記表面よりも視認側に突出するように構成されると共に、
前記上方包囲部は、内周側面(135)において、前記上方視認側端部に向かうほど前記上方包囲部の厚さが順次薄くなるような傾斜部(138)を有する車両用表示装置。
【請求項2】
前記上方包囲部の前記内周側面には、前記カバー部を支持する支持部(134)が設けられており、
前記支持部から前記上方視認側端部までの高さ寸法(h)は、前記上方包囲部と前記カバー部との隙間寸法(d)以下となるように設定された請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記カバー部の前記表面に対して、仮想される垂直な縦断面において、
前記表面に対応する第1ライン(L1)と、前記傾斜部に対応する第2ライン(L2)との成す角度を傾斜角度(θw)と定義し、
また、前記車両の前方衝突時における乗員頭部の前記上方視認側端部への衝突を想定したときの衝突方向を示す第3ライン(L3)と、前記第1ラインとの成す角度を衝突角度(θi)と定義したとき、
前記衝突角度≦前記傾斜角度、に設定された請求項1または請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記傾斜部の起点(137)の位置は、前記カバー部の前記表面の位置に対応するように設定された請求項1または請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記上方包囲部の外周側面(136)において、楔状の除肉部(136a)が設けられた請求項1または請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
情報を表示する表示部(110)と、
前記表示部を側方から包囲する筒状部材であって、視認側端部(133)が開口部として形成された包囲部(132)と、
透光性を有し、前記包囲部の開口部を塞ぐように前記表示部の表示面(111)よりも視認側に配置された板状のカバー部(120)と、を備え、
前記視認側端部は、前記カバー部の視認側の表面(121)には被さっておらず、
前記表示部、前記包囲部、および前記カバー部によって表示本体部(101)が形成され、前記表示本体部の上側が、車両のダッシュボード(10)の上側に飛び出して配置された車両用表示装置であって、
前記包囲部において前記表示部の上側に位置する部分である上方包囲部(132A)の前記視認側端部となる上方視認側端部(133A)は、前記カバー部の前記表面よりも視認側に突出するように構成されると共に、
前記上方包囲部の内周側面(135)には、前記カバー部を支持する支持部(134)が設けられており、
前記支持部から前記上方視認側端部までの高さ寸法(h)は、前記上方包囲部と前記カバー部との隙間寸法(d)以下となるように設定された車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用表示装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1の車両用表示装置は、情報を表示する表示部と、表示部を側方から包囲して、視認側端部が開口した包囲部材と、透光性を有し、包囲部材の開口部を塞ぐように、表示部の表示面よりも視認側に配置されたカバー部材と、を備えている。
【0003】
カバー部材は、包囲部材の内側面から中心側に張り出すカバー受け部に支持されている。また、包囲部材の視認側端部は、カバー部材の視認側表面には被さらないようになっている。
【0004】
そして、包囲部材において表示部の上側に位置する上方包囲部の視認側端部である上方視認側端部は、カバー部材の表面よりも視認側に突出しており、上方視認側端部の突出量は、0.1mm以上、2.0mm以下に設定されている。
【0005】
これにより、車両の前端衝突のときに、乗員の頭部が、カバー部材よりも上方視認側端部に先に衝突するので、カバー部材に衝撃が直接印加されることが抑制され、カバー部材が割れるおそれを低減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、衝突に伴う上方包囲部の変形する形状によっては、上方包囲部がカバー部材に当たる可能性がある。例えば、衝突によって上方包囲部がカバー部材側に倒れるように変形すると、カバー部材に衝撃が印加されて、カバー部材の割れに繋がる。
【0008】
本開示の目的は、上記問題に鑑み、衝突に伴う上方包囲部の変形によるカバー部の割れを抑制可能とする車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0010】
第1の開示では、情報を表示する表示部(110)と、
表示部を側方から包囲する筒状部材であって、視認側端部(133)が開口部として形成された包囲部(132)と、
透光性を有し、包囲部の開口部を塞ぐように表示部の表示面(111)よりも視認側に配置された板状のカバー部(120)と、を備え、
視認側端部は、カバー部の視認側の表面(121)には被さっておらず、
表示部、包囲部、およびカバー部によって表示本体部(101)が形成され、表示本体部の上側が、車両のダッシュボード(10)の上側に飛び出して配置された車両用表示装置であって、
包囲部において表示部の上側に位置する部分である上方包囲部(132A)の視認側端部となる上方視認側端部(133A)は、カバー部の表面よりも視認側に突出するように構成されると共に、
上方包囲部は、内周側面(135)において、上方視認側端部に向かうほど上方包囲部の厚さが順次薄くなるような傾斜部(138)を有する。
【0011】
第1の開示によれば、上方包囲部の内周側面に傾斜部を設けているので、乗員の頭部が上方包囲部の内側から衝突する場合に、上方包囲部は、カバー部から離れる方に変形しやすくなり、カバー部の割れを抑制することができる。
【0012】
また、第2の開示では、情報を表示する表示部(110)と、
表示部を側方から包囲する筒状部材であって、視認側端部(133)が開口部として形成された包囲部(132)と、
透光性を有し、包囲部の開口部を塞ぐように表示部の表示面(111)よりも視認側に配置された板状のカバー部(120)と、を備え、
視認側端部は、カバー部の視認側の表面(121)には被さっておらず、
表示部、包囲部、およびカバー部によって表示本体部(101)が形成され、表示本体部の上側が、車両のダッシュボード(10)の上側に飛び出して配置された車両用表示装置であって、
包囲部において表示部の上側に位置する部分である上方包囲部(132A)の視認側端部となる上方視認側端部(133A)は、カバー部の表面よりも視認側に突出するように構成されると共に、
上方包囲部の内周側面(135)には、カバー部を支持する支持部(134)が設けられており、
支持部から上方視認側端部までの高さ寸法(h)は、上方包囲部とカバー部との隙間寸法(d)以下となるように設定されている。
【0013】
第2の開示によれば、乗員の頭部が上方包囲部の外側から衝突する場合に、上方包囲部は、頭部の衝突に伴って、カバー部側に近づく方向に変形しやすくなる。しかしながら、上方包囲部における高さ寸法が、上方包囲部とカバー部との隙間寸法以下となるように設定されているので、上方包囲部がカバー部に当たることを抑制できる。よって、カバー部の割れを抑制することができる。
【0014】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】車両用表示装置の車両への取付け状態を示す説明図である。
【
図2】第1実施形態の車両用表示装置の外観を示す説明図である。
【
図3】
図2におけるIII-III部を示す断面図(垂直縦断面図)である。
【
図6】車両用表示装置への頭部の衝突態様を示す説明図である。
【
図7】第2実施形態における除肉部を示す説明図である。
【
図8】第3実施形態における上方立ち壁部の高さ寸法と、隙間寸法とを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態における車両用表示装置100Aについて
図1~
図6を用いて説明する。本実施形態の車両用表示装置100Aは、車両に搭載されて、車両に関連する各種情報(画像)を表示するものとなっている。各種情報は、例えば、車速等の車両走行情報(メータ装置としての表示情報)である。各種情報としては、車両走行情報の他にも、車両用空調装置の作動状態を示す情報、カーナビゲーションシステムにおける地図上の現在位置情報および目的地案内情報、車両オーディオ装置の作動状態を示す情報等とすることも可能である。更に、車両用表示装置100Aでは、テレビやDVD等の動画の表示も可能である。
【0018】
車両用表示装置100Aは、例えば、後述する表示本体部101の上側が車両のダッシュボード10の上側に飛び出して配置されている。この搭載形態は、いわゆる、オンダッシュ搭載と呼ばれている。車両用表示装置100Aは、ダッシュボード10において、車両幅方向の中央位置(
図1)、あるいは運転者(視認者)と対向する位置等に配置されて、表示部110における表示面111が運転者に向けられている。
【0019】
車両用表示装置100Aは、
図1~
図3に示すように、表示部110、カバーパネル120、リアケース130、および駆動回路等を備えている。表示部110、カバーパネル120、およびリアケース130(立ち壁部132)は、表示本体部101を形成している。
【0020】
表示部110は、表示面111にマトリックス配置される複数の画素の発光によって、所定の画像(各種情報)を表示するようになっている。表示部110としては、例えば、自発光式のものが使用されている。表示部110は、例えば、横長となる矩形状(四角形)の有機ELパネルが使用されている。有機ELパネルの「EL」は、Electro Luminescenceの略表示である。有機ELパネルは、OLED(Organic Light Emitting Diode)とも表示される。
【0021】
表示部110は、自発光式であることから、例えば、液晶式のパネルのようなバックライトを必要としないので、車両用表示装置100Aの厚み寸法としては、極めて薄く設定することが可能となっている(薄型化)。そして、表示部110は、可撓性(フレキシブル性)を有しており、たわませたり折曲げたりすることも可能となっている。
【0022】
カバーパネル120は、表示部110の表示面111を保護するために設けられた透光性の(透明な)板状の部材となっており、表示部110の運転者側(視認側)に設けられている。カバーパネル120は、立ち壁部132の開口部を塞ぐように設けられており、本開示のカバー部に対応する。カバーパネル120は、例えば、ガラス材から形成されており、可撓性を有している。ガラス材としては、例えば、アルミノシリケート(化学強化がラス)を用いて好適である。カバーパネル120は、透光性を有することから、表示部110によって形成される画像が透過して運転者に視認されるようになっている。
【0023】
カバーパネル120の視認側の面が表面121、視認側とは反対側の面が裏面122となっている。また、カバーパネル120の外周端面は、端面123となっている。
【0024】
カバーパネル120の正面形状は、表示部110の表示面111よりも大きく、後述するリアケース130の運転者側から見た大きさに相当する横長の長方形を成している。尚、カバーパネル120の材質としては、ガラスの他にも、例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)や、PC(ポリカーボネート)等の透明な樹脂部材等を用いたものとしてもよい。
【0025】
そして、表示部110とカバーパネル120との間には、例えば、光透過性、および弾性を有する光学透明接着剤124が設けられて、表示部110とカバーパネル120は、接合されている。尚、光学透明接着剤124に代えて、他の透明な弾性を有する粘着剤(例えば、光学粘着シート(OCA)等)としてもよい。
【0026】
リアケース130は、表示部110の背面側に設けられて、表示部110を収容すると共に、カバーパネル120を支持する容器体となっている。リアケース130は、例えば、アルミニウム、マグネシウム、ステンレス、あるいは鋼等の金属から成る部材となっている。尚、リアケース130は、金属製部材とすることで、表示部110、および後述する駆動回路に対するヒートシンクの役割を果たす部材にもなっている。
【0027】
リアケース130は、表示部110の背面側となる板状の底面部131と、この底面部131の外周領域で、カバーパネル120側(視認側)に延設された立ち壁部132と、を有している。立ち壁部132は、本開示の包囲部に対応し、
図2に示すように、表示部110の側方を包囲する筒状部材であって、後述する端部133が開口部として形成されている。立ち壁部132は、上下左右に対応するように、上方立ち壁部132A、下方立ち壁部132B、左方立ち壁部132C、および右方立ち壁部132Dを有している。各立ち壁部132A、132B、132C、132Dの構造は、ここでは同一としており、以下、立ち壁部132については、上方立ち壁部132Aを代表部位として説明する。上方立ち壁部132Aは、本開示の上方包囲部に対応する。
【0028】
立ち壁部132(上方立ち壁部132A)の延設された先端部は、端部133(上方端部133A)となっている。端部133は、本開示の視認側端部に対応し、また、上方端部133Aは、本開示の上方視認側端部に対応する。尚、端部133(上方端部133A)の各角部には、所定寸法のR面取りが設けられている。
【0029】
上方立ち壁部132Aの内周側には、底面部131に向けて階段状に凹む、支持部134、および段部134aが設けられている。支持部134は、カバーパネル120の外周の裏面122を支持する(当接させる)部位となっている。支持部134から上方端部133Aまでの寸法(後述する高さ寸法h)は、カバーパネル120の板厚寸法よりも大きくなるように設定されている。つまり、上方端部133Aが、カバーパネル120の表面121よりも突出するようになっている。また、上方端部133A(端部133)は、カバーパネル120の表面121に被さらないように設定されている。
【0030】
また、段部134aは、支持部134よりも内側(底面部131の中心側)で、更に底面部131側に凹むように形成されている。カバーパネル120と段部134aとの間には、接着剤134bが設けられて、カバーパネル120は、段部134a(リアケース130)に固定されている。接着剤134bとしては、例えば、弾性を有する弾性接着剤を用いるのがよい。カバーパネル120に接合された表示部110は、段部134aよりも内側(底面部131の中心側)で、底面部131と対向するように収容される。
【0031】
上方立ち壁部132Aの内周側は内周側面135となっており、外周側は外周側面136となっている。カバーパネル120の端面123と内周側面135との間には、所定寸法の隙間が設けられている。
【0032】
そして、内周側面135には、上方端部133Aに向かうほど上方立ち壁部132Aの厚さが順次薄くなるような傾斜部138が設けられている。傾斜部138の起点137の位置は、
図4に示すように、カバーパネル120の表面121の位置に対応するように設定されている。傾斜部138の傾斜角度θwは、
図5に示すように、設定されている。
【0033】
即ち、カバーパネル120の表面121に対して、仮想される垂直な縦断面(
図5)において、表面121に対応する第1ラインL1と、傾斜部138に対応する第2ラインL2との成す角度を、傾斜角度θwと定義する。また、車両の前方衝突時における乗員の頭部(球状頭部模型Md)の上方端部133Aへの衝突を想定したときの衝突方向(
図5中の太矢印)を示す第3ラインL3と、第1ラインL1との成す角度を、衝突角度θiと定義する。そして、衝突角度θiと傾斜角度θwとにおいて、
衝突角度θi≦傾斜角度θw、となるように設定されている。
【0034】
尚、本実施形態では、頭部が最初に衝突する位置は、上方立ち壁部132Aの上方端部133Aと傾斜部138とが交わる点よりも内側(底面部131の中心側)である場合を想定している。
【0035】
駆動回路(図示省略)は、表示部110の表示面111における画像の表示状態を制御する制御部である。駆動回路は、フレキシブル配線によって、表示部110に接続されている。駆動回路は、例えば底面部131の背面側に固定されている。駆動回路は、ビス等を用いた機械的な締結や、接着剤等を用いた接着等により底面部131に固定されている。
【0036】
本実施形態の車両用表示装置100Aの構成は、上記のようになっており、以下、その作動および作用効果について説明する。
【0037】
運転者が車両用表示装置100Aの作動操作(例えば、イグニッションスイッチオン)をすると、表示部110の表示面111における各画素の発光状態が、駆動回路によって制御されて、各種情報が表示される。運転者は、表示される各種情報に基づいて(画像を視認して)、車両の運転を行うことができる。
【0038】
ここで、車両用表示装置100Aは、運転者を含む乗員の頭部よりも下方であって、車両の前端衝突が発生した際に、その衝撃により乗員の頭部が衝突しうる範囲(以降、頭部衝突範囲)に配置され得る。車両用表示装置100Aが頭部衝突範囲に取り付けられている場合、車両衝突の衝撃によって乗員の頭部は、
図6に示すように、車両用表示装置100Aの上端部へ斜め上方から衝突し得る。
図6は、車両用表示装置100Aをダッシュボード10の上側に飛び出すように載置した状態(オンダッシュ搭載)において、乗員の頭部を模した、直径165mm(質量6.8kg)の球状頭部模型Mdが衝突する位置を試験する際の構成、および、その衝突位置を示したものである。
【0039】
尚、ここでの頭部衝突範囲とは、例えば、球状頭部模型Mdを所定の回転中心Cから所定の回転半径Rで回転させた際に、その球状頭部模型Mdが静的に接する範囲を指す。回転半径Rは、例えば705mm等、人体の股関節点から頭部中心までの距離に相当する値に設定されていれば良い。回転半径Rは、654.5mm~755.5mmの範囲で調整されていてもよい。
【0040】
回転中心Cは、例えば、シーティングリファレンスポイントとすることができる。シーティングリファレンスポイントとは、人体模型をISO6549-1980に規定する着座方法により運転席等の座席に着座させた場合における股関節点の位置、またはこれに相当する座席上に設定した設計標準位置を指す。また、回転中心Cは、前後に調節できる座席にあっては、シーティングリファレンスポイントに加えて、シーティングリファレンスポイントから所定量(例えば127mm)前方で、かつ、所定量(例えば19mm)鉛直上方に移動した点を採用することができる。
【0041】
尚、以上の試験構成において衝突位置に頭部からの衝撃が作用する方向は、衝突位置における接線に垂直な方向(つまり衝突位置における法線方向)となる。また、球状頭部模型Mdの衝突試験は、時速20km/h程度で走行している車両が前端衝突した場合を想定して実施されれば良い。球状頭部模型Mdの衝突速度は、ここでは、例えば、24.1km/hに設定されている。
【0042】
ここで、仮に上方立ち壁部132Aが、カバーパネル120の表面121よりも奥側(背面側)に位置するように構成されている場合、頭部がカバーパネル120の端面123に直接的に衝突し得る。そのため、カバーパネル120が相対的に割れやすい。端面123には角部も含まれる。このように、上方立ち壁部132A(上方端部133A)が、カバーパネル120の表面121よりも奥側に位置するように構成した車両用表示装置において、上記した頭部衝突試験を実施したところ、カバーパネル120が相対的に割れやすいことが確認された。
【0043】
これに対して、本実施形態の構成では、上方立ち壁部132Aの上方端部133Aは、カバーパネル120の表面121よりも視認側に突出するように構成されている。故に、乗員の頭部との1次衝突位置は、上方端部133Aとなり、車両用表示装置100Aと頭部との衝突による衝撃がカバーパネル120の端面123へ直接印加されることを抑制することができる。
【0044】
車両用表示装置100Aにおいては、異なる車両ごとに、ダッシュボード10における搭載位置が異なり、搭載位置に応じて頭部が上方立ち壁部132Aの内側から衝突する場合と、外側から衝突する場合とがあり得る。
【0045】
本実施形態では更に、上方立ち壁部132Aの内周側面135には、傾斜部138を設けている。よって、頭部が上方立ち壁部132Aの内側から衝突する場合に、上方立ち壁部132Aは、頭部(球状頭部模型Md)の衝突に伴って、
図4に示すように、カバーパネル120から離れる方向に変形しやすくなり、カバーパネル120の割れを抑制することができる。
【0046】
傾斜部138においては、衝突角度θi≦傾斜角度θw、となるように設定することで、より効果的に、上方立ち壁部132Aを、確実にカバーパネル120から離れる方向に変形させることが可能となる。
【0047】
また、傾斜部138の起点137を、カバーパネル120の表面121の位置に対応するように設定している。これにより、上方立ち壁部132Aの付け根側(支持部134側)の板厚を確保して、頭部の衝突によって、上方立ち壁部132Aが圧縮されて、内周側面135がカバーパネル120側へ膨らみ、また、外周側面136が外側へ膨らむような変形(圧縮変形)を抑制でき、カバーパネル120への影響を抑制することができる。
【0048】
(第2実施形態)
第2実施形態の車両用表示装置100Bを
図7に示す。第2実施形態の車両用表示装置100Bは、上記第1実施形態の車両用表示装置100Aに対して、上方立ち壁部132Aに除肉部136aを追加したものである。
【0049】
除肉部136aは、上方立ち壁部132Aの外周側面136で、断面が楔状を成すように形成されている。除肉部136aの設定位置は、カバーパネル120の表面121に対応する位置、あるいは、表面121に対応する位置よりも上方端部133A側とするのがよい。
【0050】
これにより、頭部が上方立ち壁部132Aの内側から衝突する場合に、楔状の除肉部136aが閉じるように変形する。よって、上方立ち壁部132Aは、衝突に伴って、より効果的に、カバーパネル120から離れる方向に変形しやすくなり、カバーパネル120の割れを抑制することができる。
【0051】
(第3実施形態)
第3実施形態の車両用表示装置100Cを
図8に示す。第3実施形態の車両用表示装置100Bは、上記第1実施形態の車両用表示装置100Aに対して、上方立ち壁部132Aの高さ寸法hと、上方立ち壁部132Aおよびカバーパネル120の隙間寸法dと、を以下のように設定したものである。
【0052】
高さ寸法hは、上方立ち壁部132Aにおいて、支持部134から上方端部133Aまでの寸法である。また、隙間寸法dは、上方立ち壁部132Aの内周側面135からカバーパネル120の端面123までの寸法である。ここでは、高さ寸法hが、隙間寸法d以下(高さ寸法h≦隙間寸法d)となるように設定されている。
【0053】
これにより、頭部が上方立ち壁部132Aの内側から衝突する場合では、上記第1実施形態で説明したように、上方立ち壁部132Aは、頭部の衝突に伴って、カバーパネル120から離れる方向に変形しやすくなり、カバー部の割れを抑制することができる。
【0054】
加えて、頭部が上方立ち壁部132Aの外側から衝突する場合では、上方立ち壁部132Aは、頭部の衝突に伴って、カバーパネル120側に近づく方向に変形しやすくなる。しかしながら、上方立ち壁部132Aにおける高さ寸法hが、上方立ち壁部132Aとカバーパネル120との隙間寸法d以下となるように設定されているので、上方立ち壁部132Aがカバーパネル120に当たることを抑制できる。よって、カバーパネル120の割れを抑制することができる。
【0055】
このように、本実施形態では、頭部が上方立ち壁部132Aの内側から衝突する場合であっても、外側から衝突する場合であっても、カバーパネル120の割れを抑制できる。
【0056】
(その他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、1つの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、更に請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0057】
上記第3実施形態に対して、傾斜部138を廃止したものとしてもよい。この形態では、頭部が上方立ち壁部132Aの外側から衝突する場合に、上方立ち壁部132Aがカバーパネル120側に近づく方向に変形しても、高さ寸法hの設定に基づき、カバーパネル120に当たることを抑制できる。よって、カバーパネル120の割れを抑制することができる。
【0058】
また、上記各実施形態では、立ち壁部132における傾斜部138、傾斜角度θw、起点137、除肉部136a、高さ寸法h等は、それぞれの立ち壁部132A、132B、132C、132Dにおいて、同じものであるとして説明したが、少なくとも上方立ち壁部132Aに適用されるものとしてもよい。
【0059】
また、上記各実施形態では、自発光式の表示部110として、有機ELパネルを代表例として説明したが、これに限定されることなく、他の蛍光表示管、無機ELディスプレイ等に適用してもよい。
【0060】
(付記)
この明細書には、以下に列挙する複数の技術的思想1~6と、それらの複数の組み合わせが開示されている。
【0061】
(技術的思想1)
情報を表示する表示部(110)と、
表示部を側方から包囲する筒状部材であって、視認側端部(133)が開口部として形成された包囲部(132)と、
透光性を有し、包囲部の開口部を塞ぐように表示部の表示面(111)よりも視認側に配置された板状のカバー部(120)と、を備え、
視認側端部は、カバー部の視認側の表面(121)には被さっておらず、
表示部、包囲部、およびカバー部によって表示本体部(101)が形成され、表示本体部の上側が、車両のダッシュボード(10)の上側に飛び出して配置された車両用表示装置であって、
包囲部において表示部の上側に位置する部分である上方包囲部(132A)の視認側端部となる上方視認側端部(133A)は、カバー部の表面よりも視認側に突出するように構成されると共に、
上方包囲部は、内周側面(135)において、上方視認側端部に向かうほど上方包囲部の厚さが順次薄くなるような傾斜部(138)を有する車両用表示装置。
【0062】
(技術的思想2)
上方包囲部の内周側面には、カバー部を支持する支持部(134)が設けられており、
支持部から上方視認側端部までの高さ寸法(h)は、上方包囲部とカバー部との隙間寸法(d)以下となるように設定された技術的思想1に記載の車両用表示装置。
【0063】
(技術的思想3)
カバー部の表面に対して、仮想される垂直な縦断面において、
表面に対応する第1ライン(L1)と、傾斜部に対応する第2ライン(L2)との成す角度を傾斜角度(θw)と定義し、
また、車両の前方衝突時における乗員頭部の上方視認側端部への衝突を想定したときの衝突方向を示す第3ライン(L3)と、第1ラインとの成す角度を衝突角度(θi)と定義したとき、
衝突角度≦傾斜角度、に設定された技術的思想1または技術的思想2に記載の車両用表示装置。
【0064】
(技術的思想4)
傾斜部の起点(137)の位置は、カバー部の表面の位置に対応するように設定された技術的思想1~技術的思想3のいずれか1つに記載の車両用表示装置。
【0065】
(技術的思想5)
上方包囲部の外周側面(136)において、楔状の除肉部(136a)が設けられた技術的思想1~技術的思想4のいずれか1つに記載の車両用表示装置。
【0066】
(技術的思想6)
情報を表示する表示部(110)と、
表示部を側方から包囲する筒状部材であって、視認側端部(133)が開口部として形成された包囲部(132)と、
透光性を有し、包囲部の開口部を塞ぐように表示部の表示面(111)よりも視認側に配置された板状のカバー部(120)と、を備え、
視認側端部は、カバー部の視認側の表面(121)には被さっておらず、
表示部、包囲部、およびカバー部によって表示本体部(101)が形成され、表示本体部の上側が、車両のダッシュボード(10)の上側に飛び出して配置された車両用表示装置であって、
包囲部において表示部の上側に位置する部分である上方包囲部(132A)の視認側端部となる上方視認側端部(133A)は、カバー部の表面よりも視認側に突出するように構成されると共に、
上方包囲部の内周側面(135)には、カバー部を支持する支持部(134)が設けられており、
支持部から上方視認側端部までの高さ寸法(h)は、上方包囲部とカバー部との隙間寸法(d)以下となるように設定された車両用表示装置。
【符号の説明】
【0067】
10 ダッシュボード
100A、100B、100C 車両用表示装置
101 表示本体部
110 表示部
111 表示面
120 カバーパネル(カバー部)
121 表面
132 立ち壁部(包囲部)
132A 上方立ち壁部(上方包囲部)
133 端部(視認側端部)
133A 上方端部(上方視認側端部)
134 支持部
135 内周側面
136 外周側面
136a 除肉部
137 起点
138 傾斜部
h 高さ寸法
d 隙間寸法
θi 衝突角度
θw 傾斜角度
L1 第1ライン
L2 第2ライン
L3 第3ライン