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特開2024-118900逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118900
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 51/00 20060101AFI20240826BHJP
   F16T 1/22 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
F16K51/00 A
F16T1/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025472
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】小池 正
(72)【発明者】
【氏名】浅田 哲夫
【テーマコード(参考)】
3H066
【Fターム(参考)】
3H066AA01
3H066BA38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】初期エアーを適正に排気することができ、かつ弁口のクリーニングを容易に行うことができる逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁の提供。
【解決手段】配管系統の蒸気移送が開始されたとき、初期エアーはオリフィス61から矢印92方向に沿って速やかに出口55から排気される。また、出口55からドレンが逆流したときは、逆止弁2が浮上してオリフィス61の後端を閉塞し逆流が防止される。さらに、オリフィス61に付着した異物を除去するクリーニング時には、クリーニングバー3を螺入操作して矢印101方向に進出させ、押圧先端30で逆止弁2を押圧し、逆止弁2の侵入突起25をオリフィス61に侵入、貫通させる。逆止弁2の摺動片21a、21bは弁座空間62の内壁に形成されたガイド溝67a、67bに挿入されているため、逆止弁2はガイド溝67a、67bに沿って円滑に進退することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入部及び流出部を有する弁座手段であって、当該流入部から流入した流体を当該流出部から流出させる作動流路を内部に有する弁座手段、
前記弁座手段の前記作動流路内に移動可能に位置しており、前記流入部を閉塞する閉塞部、前記流入部に侵入する侵入部、及び前記作動流路の内壁に接触可能な接触部を有する逆流防止弁であって、初期状態にあるとき又は前記流体が前記流入部から前記作動流路内に流入したとき、前記流入部から退避して前記流入部を開放し、前記流体が前記流出部から前記作動流路内に逆流したとき、当該逆流を受けて前記流入部に向けて進出して当該閉塞部によって前記流入部を閉塞する逆流防止弁、
前記作動流路に向けて位置し、前記作動流路の外部から操作可能なクリーニング部であって、外部からクリーニング操作されたとき、前記逆流防止弁に働きかけて前記逆流防止弁を前記流入部に向けて進出させ、前記侵入部を前記流入部に侵入させるクリーニング部、
を備えた逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁であって、
前記弁座手段の前記作動流路の内壁には、前記逆流防止弁が移動するとき、前記逆流防止弁が有する前記接触部の動きを案内する案内部が設けられている、
ことを特徴とする逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁。
【請求項2】
請求項1に係る逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁において、
前記逆流防止弁が有する前記接触部は、2つである、
ことを特徴とする逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁は、逆流防止機構を有するスチームトラップ等の自動弁における入流部のクリーニング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動弁としてはたとえばスチームトラップがある。スチームトラップは、産業プラント等に設置された蒸気移送のための配管系統の随所に設けられており、配管内の蒸気から発生するドレンを適宜、配管外に排出し、かつ蒸気を極力漏らさないように動作する。
【0003】
スチームトラップには種々の構造のものがあるが、フロート式トラップは弁室に中空のフロートを内蔵している。そして、通常においては、このフロートは弁室の底部付近に形成されたドレン排出口を塞いでいるが、弁室にドレンが流入した場合、ドレンの滞留に従ってこのフロートが浮上し、ドレン排出口を開放する。ドレン排出口が開放されたことにより、弁室内に滞留したドレンは、配管内の高圧の勢いを受けて自動的にドレン排出口からドレン回収管に向けて排出される。ドレンの排出後はフロートが下降して復位し、再びドレン排出口を閉塞する。
【0004】
ここで、スチームトラップの排出側に背圧が生じた場合、ドレン回収管からドレンが弁室内に逆流することがある。ドレンが弁室内に逆流した場合、配管系統における蒸気移送に支障が生じるため、ドレン排出口に逆流防止弁が設けられることがある。
【0005】
また、スチームトラップの弁室内には、流入するドレンとともに錆やスケール(水垢)等の異物が侵入することがある。そして、このような異物がドレン排出口に付着して堆積した場合、この異物によってドレン排出口が塞がれて詰まりが生じ、フロートが浮上しても適正にドレンを排出することができなくなる虞がある。特にドレン排出口は、フロートの接触外表面との関係上、口径の小さなオリフィス状に形成されていることから、異物による詰まりが生じやすい。このため、スチームトラップに、ドレン排出口に付着・堆積した異物を除去するためのクリーニング機構が設けられていることがある。
【0006】
以上のような逆流防止弁及びクリーニング機構が設けられたスチームトラップとして、後記特許文献1に開示されているフロート式ドレントラップがある。このフロート式ドレントラップは、弁室4の下部に弁座部材8を配置し、この弁座部材8にオリフィス状の弁口11を形成する。弁口11は、弁室4と出口7とを連通させる(特許文献1、段落番号0008)。そして弁座部材8内に、受圧壁部14が設けられた操作部材13を配置し、スプリング15によって操作部材13を前進させ、弁口11内に位置させて、フランジ状の受圧壁部14で弁口11を閉じる(特許文献1、段落番号0009)。
【0007】
入口5から弁室4内にドレンが流入し、フロート17が浮上して弁口11を開口したとき、弁口11を通過する排出ドレンが受圧壁部14に衝突し、スプリング15を圧縮して操作部材13を弁口11から後退させ、ドレンは通孔12から出口通路10を通じて出口7に排出される(特許文献1、段落番号0010)。そして、フロート17が下降して弁口11を閉口したとき、スプリング17の付勢を受けて操作部材13が弁口11に侵入し、弁口11内に付着した異物を除去する(特許文献1、段落番号0010)。また、出口7側の流体圧力が入口5側より高くなると、さらに操作部材13が前進し、受圧壁部14が逆止弁座部16に当接して弁口11を閉じ、逆流が防止される(特許文献1、段落番号0010)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-247789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の特許文献1に開示されたフロート式ドレントラップには、蒸気移送の開始初期に配管内に滞留している初期エアーを適正に排気することができない。すなわち、通常時において、操作部材13及び受圧壁部14はスプリング15の付勢を受けて前進した状態にあり、受圧壁部14が逆止弁座部16に当接して弁口11を閉じている。このため、蒸気移送の開始初期において弁室4内の初期エアーが排気されず、弁室4にドレンが流入することができない。
【0010】
そこで、本願に係る逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁は、初期エアーを適正に排気することができ、かつ弁口のクリーニングを容易に行うことができる逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に係る逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁は、
流入部及び流出部を有する弁座手段であって、当該流入部から流入した流体を当該流出部から流出させる作動流路を内部に有する弁座手段、
前記弁座手段の前記作動流路内に移動可能に位置しており、前記流入部を閉塞する閉塞部、前記流入部に侵入する侵入部、及び前記作動流路の内壁に接触可能な接触部を有する逆流防止弁であって、初期状態にあるとき又は前記流体が前記流入部から前記作動流路内に流入したとき、前記流入部から退避して前記流入部を開放し、前記流体が前記流出部から前記作動流路内に逆流したとき、当該逆流を受けて前記流入部に向けて進出して当該閉塞部によって前記流入部を閉塞する逆流防止弁、
前記作動流路に向けて位置し、前記作動流路の外部から操作可能なクリーニング部であって、外部からクリーニング操作されたとき、前記逆流防止弁に働きかけて前記逆流防止弁を前記流入部に向けて進出させ、前記侵入部を前記流入部に侵入させるクリーニング部、
を備えた逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁であって、
前記弁座手段の前記作動流路の内壁には、前記逆流防止弁が移動するとき、前記逆流防止弁が有する前記接触部の動きを案内する案内部が設けられている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願に係る逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁においては、初期状態にあるとき、逆流防止弁は流入部から退避して流入部を開放するよう位置している。このため、この自動弁は、クリーニング機構を有しつつ、流入部を通じて初期エアーを確実に流出部から排気することができる。
【0013】
また、クリーニング部は、外部からクリーニング操作されたとき、逆流防止弁に働きかけて逆流防止弁を流入部に向けて進出させ、侵入部を流入部に侵入させる。このため、流入部に付着した異物を除去することができ、容易にクリーニングを行うことができる。
【0014】
さらに、弁座手段の作動流路の内壁には、逆流防止弁が移動するとき、逆流防止弁が有する接触部の動きを案内する案内部が設けられている。このため、逆流防止弁は円滑に移動することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本願に係る逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁の第1の実施形態を示すフロート式スチームトラップ1の初期状態の断面図である。
図2図1に示すフロート式スチームトラップ1の弁座6及びクリーニングバー3近傍の拡大断面図である。
図3図1に示す逆止弁2の斜視図である。
図4図1に示す弁座6の拡大図である。
図5図1に示す弁座6を後端側から見た背面図である。
図6図1に示すクリーニングバー3の側面図である。
図7図1に示すフロート式スチームトラップ1の通常動作時の状態を示す拡大断面図である。
図8図1に示すフロート式スチームトラップ1の弁座6近傍の拡大断面図であり、逆流時の状態を示す拡大断面図である。
図9図1に示すフロート式スチームトラップ1の弁座6近傍の拡大断面図であり、クリーニング時の状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態において示す主な用語は、本願に係る逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁の下記の要素にそれぞれ対応している。
【0017】
スチームトラップ1・・・自動弁
逆止弁2・・・逆流防止弁
クリーニングバー3・・・クリーニング部
弁座6・・・弁座手段
摺動片21a、21b・・・接触部
侵入突起25・・・侵入部
球面部28・・・閉塞部
オリフィス61・・・流入部
弁座空間62・・・作動流路
ガイド溝67a、67b・・・案内部
弁座流出口69・・・流出部
エアー、蒸気又はドレン・・・流体
【0018】
[第1の実施形態]
本願に係る逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁の第1の実施形態を、スチームトラップを例に掲げて説明する。
【0019】
(スチームトラップ1の構成の説明)
産業プラントに設置されている配管系統の随所には、ドレンを適宜、排出するためのスチームトラップが多数設けられている。図1は本実施形態におけるスチームトラップ1の断面図である。配管の主管には支管が連通して設けられており(図示せず)、この支管にスチームトラップ1が取り付けられる。
【0020】
スチームトラップ1の上部本体11には下部本体12がボルトで固定され、内部に形成された空間が弁室15として構成される。上部本体11には入口51が形成されており、ここに支管(図示せず)が接続され、入口51から蒸気やドレンが矢印91方向に沿って弁室15に流入する。また、上部本体11には出口55が形成されており、ここにドレン回収管(図示せず)が接続されて出口55を通じてドレンが排水される。
【0021】
弁室15内には、中空の球状体であるフロート10が浮動自在に位置している。また、弁室15の上部には、メッシュカバー45がボルトで固定された状態で配置されている。入口51から流入した蒸気やドレンはこのメッシュカバー45を透過し、蒸気やドレンに混入している異物がメッシュカバー45によって捕捉される。
【0022】
弁室15の下部には、バイメタル40がボルトで固定された状態で配置されており、フロート10の底部に当接している。このバイメタル40は、膨張率の異なる2種の部材を貼り合わせ、湾曲させて構成されている。そして、バイメタル40は、部材の膨張率が異なることを利用し、部材の温度が所定の温度以下になったとき、湾曲部の開きが大きくなることによって図1に示すようにフロート10を下方から持ち上げる。また、この状態から部材の温度が逆に所定の温度を上回ったとき、湾曲部の開きが小さくなるように変形する。
【0023】
下部本体12の底部近傍には斜め方向に円柱状の貫通孔が形成されており、この貫通孔の弁室15側には略円筒形状の弁座6が弁室15側から取り付けられている。図2は弁座6近傍の拡大断面図である。図2に示すように、弁座6はガスケット68を挟んで下部本体12の貫通孔に螺入して固定されている。なお、下部本体12の貫通孔の内壁には、段状に形成されたストッパー65が設けられている。
【0024】
弁座6には、弁室15側の先端にオリフィス61が形成されており、さらに弁座6の内部には円柱状の貫通孔である弁座空間62が形成されている。オリフィス61の中心線と弁座空間62の中心線とは、中心軸L1上に沿って一致している。また、弁座空間62の後端は弁座流出口69として開口している。オリフィス61と弁座空間62とは連通しており、弁座空間62の筒径はオリフィス61の内径よりも大きく構成されている。
【0025】
図4は弁座6の拡大断面図、図5は弁座6を後端側から見た背面図である。弁座空間62の内周面には、2箇所にガイド溝67a、67bが形成されている。このガイド溝67a、67bは、中心軸L1方向に直線的に延びる凹部であり、中心軸L1を挟んで対向する位置に形成されている(図5参照)。
【0026】
図1に示すように弁座6の弁座空間62は、下部本体12に形成された出口通路53及び上部本体11に形成された出口通路54、出口55に連通しており、弁室15内のドレンが弁座6からこれらの経路を通して、矢印92方向に沿って出口55から排水される。なお、フロート10がバイメタル40による干渉を解かれたとき、フロート10は弁座6に着座して当接し、オリフィス61を閉塞するようになっている。
【0027】
弁座6の弁座空間62には、逆止弁2が進退自在に位置している。図3は逆止弁2の斜視図である。図3に示すように、逆止弁2は、一体的に形成された摺動部21、球面部28及び侵入突起25を備えている。摺動部21は、2つの摺動片21a、21bから構成される。摺動片21a、21bは、軸線L2に沿って同軸上に位置し、両側に向けて突出している。
【0028】
そして、摺動部21の全長L21は、図4及び図5に示す弁座空間62の内径L61よりも長く、かつ弁座空間62の溝内径L62よりも僅かに小さく形成されている。摺動片21aがガイド溝67aに挿入され、摺動片21bがガイド溝67bに挿入された状態で、逆止弁2は弁座空間62内に位置する。
【0029】
すなわち、逆止弁2はガイド溝67a、67bに沿って、弁座空間62内を矢印101、102方向(図1図2)に自在に進退可能である。なお、逆止弁2の摺動片21a、21bの突出先端面は、湾曲しているガイド溝67a、67bの内周面に対応する曲面を備えている(図3参照)。これによって、逆止弁2の円滑な移動を確保することができる。
【0030】
図3に示す逆止弁2の球面部28の外周が表す球体の直径はオリフィス61の径よりも大きく形成されており、逆止弁2が矢印101方向に進出し限界位置に達したとき、球面部28がオリフィス61を後端から閉塞するようになっている。
【0031】
また、球面部28から先端に向けて延びる侵入突起25の太さは、オリフィス61の径よりもやや小さい径で形成されており、逆止弁2が矢印101方向に進出した際、侵入突起25はオリフィス61内に侵入し、かつ逆止弁2が進出して限界位置に達したとき、オリフィス61を貫通して弁室15側に突出する。
【0032】
弁座6の弁座流出口69の後方には、下部本体12の貫通孔に円筒形状の円筒部材39が螺入して取り付けられている。円筒部材39は、ガスケット34を挟んで下部本体12に取り付けられている。そして、この円筒部材39の貫通孔にさらにガスケット38を介してプラグ37が螺入されて固定されている。プラグ37及びガスケット38には、中心軸に沿って貫通孔が形成されている。
【0033】
そして、プラグ37の貫通孔には、クリーニングバー3が貫通した状態で取り付けられている。このクリーニングバー3の先端側にはクリーニング押圧部31が一体的に接続されており、クリーニング押圧部31の先端には小径の押圧先端30が設けられている。この押圧先端30は弁座6の弁座空間62に向けて配置されている。
【0034】
クリーニングバー3の後端はプラグ37から下部本体12の外側に突出しており、突出した後端面には操作溝35が形成されている。クリーニングバー3の中央部には、円筒部材39の貫通孔の内壁に形成されているネジ溝に結合するバーネジ部3aが設けられている。操作溝35に工具を嵌め入れてクリーニングバー3を回転操作したとき、この回転を受けてクリーニングバー3はバーネジ部3aのネジ機構に従って矢印101又は矢印102方向に進退する。さらに、クリーニングバー3の中央部であってバーネジ部3aの先端側には円形の規制部33が固定されている。
【0035】
なお、クリーニングバー3の中心線は中心軸L1に沿って配置されている。前述の逆止弁2は自重によって矢印102方向に移動するが、逆止弁2の摺動部21がクリーニング押圧部31の押圧先端30に当接して移動は規制される。このため、逆止弁2が弁座流出口69から抜け落ちることはなく、弁座空間62内に保持される。
【0036】
(スチームトラップ1の初期状態・通常動作時の動作の説明)
まずスチームトラップ1の初期状態、すなわち配管系統が蒸気移送を開始する前の状態から、蒸気移送が開始された後の通常動作について説明する。初期状態においては、スチームトラップ1は蒸気で加熱されていないため、バイメタル40の湾曲が大きく開いてフロート10を持ち上げ、図1に示すように弁座6のオリフィス61を強制的に開弁している。
【0037】
この状態から配管系統の蒸気移送が開始されたとき、配管内に滞留していた初期エアーが入口51から矢印91方向に沿って弁室15内に流入するが、この初期エアーは開弁されているオリフィス61から弁座空間62、出口通路53、54及び出口55を通じ、矢印92方向に沿って速やかに排気される。また、配管内の低温のドレンも同様の経路から出口55を通じて排水される。
【0038】
なお、弁座6の弁座空間62内には逆止弁2が位置しているが、逆止弁2の摺動片21a、21bは2つのみである。このため、摺動片の間に大きく確保された空間を初期エアーやドレンが通過し、実際上、初期エアーやドレンの排出が阻害されることはない。すなわち、かりに逆止弁2の摺動片が3つ以上設けられている場合、摺動片の間に形成される空間は狭くなり、初期エアーやドレンが通過しにくく排出が阻害されることがあるが、本実施形態においては摺動片21a、21bは2つのみであることから、弁座空間62内に十分な流路を確保して円滑な排出を実現することができる。
【0039】
初期エアーの排気や低温のドレンの排水の後、弁室15には高温の蒸気とドレンが矢印91方向に流入する。そして、弁室15に流入するドレンの温度が上昇し、所定の温度に達したとき、これにバイメタル40が反応して湾曲の開きが小さくなり、バイメタル40のフロート10への当接が解除されて、以後バイメタル40はフロート10に干渉しなくなる。これによってフロート10は着座し、弁座6のオリフィス61を閉塞する。図7はこの状態を示しており、スチームトラップ1はこの状態から通常動作を開始する。
【0040】
オリフィス61が閉塞されたことによって、弁室15に流入して滞留するドレンの水位が上昇し、これに応じてフロート10も徐々に浮上する。そして、滞留するドレンの水位がレベルL12(図7)に達しフロート10が浮上したとき、フロート10はオリフィス61を完全に開放する。オリフィス61が開放されると、弁室15内に滞留していたドレンは配管内の高圧の勢いに従って一気に矢印92方向に沿って排水される。なお、この場合においても、逆止弁2の摺動片21a、21bは2つのみであるため、摺動片の間に大きく確保された空間をドレンが円滑に通過して排出される。
【0041】
ドレンの排水によって弁室15内に滞留するドレンの水位が下がり、レベルL11に達したときフロート10は再び下降して着座し弁座6のオリフィス61を閉塞する。そして、弁室15内のドレンの水位が再度、レベルL12に達したとき浮上したフロート10はオリフィス61を開放しドレンの排水が行われる。
【0042】
スチームトラップ1は以上のような動作を繰り返し、ドレンを適宜、自動的に排水する。なお、この動作中、弁室15内に滞留しているドレンの水位は、レベルL11とL12との間で往復して変化することになるが、オリフィス61は常にドレンに水没している状態であるため、配管系統を移送される蒸気が漏れることはなく、蒸気のロスを回避することができる。
【0043】
(スチームトラップ1に逆流が生じた場合の動作の説明)
スチームトラップ1の排出側に背圧が生じた場合、ドレン回収管からドレンが弁室15に向けて逆流することがある。ドレンが弁室15内に逆流した場合、配管系統における蒸気移送に支障が生じるため、本実施形態においては逆止弁2が作動しドレンの逆流を防止する。
【0044】
図8はドレンの逆流が生じた場合の弁座6近傍の拡大断面図である。背圧によってドレンが、出口55及び出口通路54(図1図7)から出口通路53を通し、矢印93方向に沿って弁座流出口69から弁座空間62内に浸入する。
【0045】
弁座空間62内にドレンが浸入した場合、クリーニング押圧部31の押圧先端30に当接して待機していた逆止弁2(図7)は、摺動部21(摺動片21a、21b)が逆流圧を受けながら矢印101方向に浮動して進出する。そして、逆止弁2が図8に示す限界位置まで移動したとき、逆止弁2の球面部28がオリフィス61の後端部を閉塞する。これによって、弁室15内へのドレンの逆流が阻止される。
【0046】
逆止弁2が弁座空間62内を移動する場合、前述のように逆止弁2の摺動片21a、21bがガイド溝67a、67bを摺動することによって、逆止弁2はガイド溝67a、67bに沿って進退する。このため、逆止弁2は弁座空間62内を円滑に移動することができる。
【0047】
すなわち、かりにガイド溝が設けられていない場合、逆止弁2が矢印101,102方向に進退する際、不安定な逆流圧を受けて、逆止弁2には中心軸L1を中心とした回転方向の動きも加わり、逆止弁2の中心線が中心軸L1からずれて傾くことがある。このような場合、逆止弁2が弁座空間62の内壁に引っ掛かり、円滑な移動が阻止されてしまう。これに対して、本実施形態では、逆止弁2の摺動片21a、21bがガイド溝67a、67bに挿入された状態で移動するため、回転方向の動きは阻止されて安定して移動することが可能である。
【0048】
また、逆止弁2が図8に示す限界位置まで移動したとき、球面部28がオリフィス61の後端部を閉塞すると同時に、逆止弁2の侵入突起25がオリフィス61内に侵入して貫通する。これによって、ドレンの逆流防止の機会に、オリフィス61に付着した異物を侵入突起25によって除去し、クリーニング動作の実施と同様の効果を得ることができる。
【0049】
スチームトラップ1の排出側の背圧が解消し、逆流したドレンが適正にドレン回収管に排水された場合、逆止弁2は弁室15側から流れ込むドレンの琉圧に従ってストッパー65に接する位置まで矢印102方向に退き、図5に示す状態に復位する。
【0050】
(クリーニング時の動作の説明)
弁室15にはメッシュカバー45(図1)の網目を透過して、細かいゴミやスケール等の異物が流入することがあり、この異物がオリフィス61に付着することがある。異物が比較的柔らかい場合は、前述のように、ドレンの逆流時に逆止弁の侵入突起25がオリフィス61内に侵入して異物を自動的に除去する。
【0051】
しかし、固形化した異物が付着した場合、逆流防止の機会に自動的に除去するのが難しいことがある。また、付着した異物が時間の経過によって堆積した場合、オリフィス61の口径が徐々に縮小されてドレンの排水が不十分になり、最終的にオリフィス61が完全に閉塞されて、フロート10が浮上してもドレンがまったく排水されない事態に至る。また、比較的大きな異物がオリフィス61に付着した場合、突然、ドレンがまったく排水されなくなることがある。
【0052】
このため、スチームトラップ1からのドレンの排水が鈍くなった場合や、ドレンがまったく排水されなくなった場合、オリフィス61に詰まりが発生している可能性があると判断し、メンテナンスの一環としてクリーニングバー3を操作して弁座6のオリフィス61のクリーニングを行う。クリーニングを行う場合、図7に示す状態から、クリーニングバー3後端に形成された操作溝35に工具等を嵌め入れて締め込む方向に回転操作する。これによって、クリーニングバー3は、バーネジ部3aのネジ機構を介して矢印101方向に進出する。
【0053】
クリーニングバー3の矢印101方向への進出によって、クリーニング押圧部31の押圧先端30は、逆止弁2の後端面に当接して押圧する。これによって、逆止弁2は、クリーニングバー3の回転操作に従って矢印101方向に押し上げられて進出する。
【0054】
クリーニングバー3が限界位置まで矢印101方向に進出した状態が図9である。クリーニングバー3に固定された規制部33がストッパー65に当接した位置が、クリーニングバー3の進出の限界位置である。逆止弁2は、クリーニングバー3のクリーニング押圧部31によって押圧され、ドレンの逆流時(図6)と同様の状態に位置し、強制的に侵入突起25がオリフィス61を貫通する。クリーニングバー3の操作を受けた侵入突起25の貫通によって、オリフィス61の内面に付着した異物はそぎ落とされてオリフィス61から弁室15側に押し出される。
【0055】
この後、クリーニングバー3後端に形成された操作溝35に嵌め入れた工具等を緩める方向に回転操作し、クリーニングバー3を矢印102方向に退避させ、図7に示す状態に復位させる。クリーニングバー3の矢印102方向への退避に従って、逆止弁2は自重や弁室15内のドレンの流圧によって矢印102方向に退き、逆止弁2も図7に示す状態に復位する。
【0056】
クリーニングバー3を操作して逆止弁2を進退させる場合、ドレンの逆流時と同様、逆止弁2の摺動片21a、21bがガイド溝67a、67bを摺動する。このため、クリーニング時においても逆止弁2が弁座空間62内を円滑に移動することができ、確実なクリーニング動作を確保することができる。
【0057】
なお、逆止弁2の侵入突起25によって、オリフィス61から弁室15側に押し出された異物は、スチームトラップ1の通常動作時におけるドレンの排水の際、排水の勢いに従ってドレンとともにドレン回収管に向けて排出される。
【0058】
本実施形態においては、前述のようにクリーニングバー3を操作した際、クリーニング押圧部31の押圧先端30の先端面で逆止弁2の後端面を押圧し逆止弁2を矢印101方向に押し上げた。この押圧先端30の先端面と逆止弁2の後端面に互いに嵌合する凹凸部を設け、クリーニング押圧部31の押圧先端30と逆止弁2とを結合させることもできる。凹凸部の嵌合によってクリーニング押圧部31の押圧先端30と逆止弁2とを結合させれば、より確実に逆止弁2を矢印101方向に進出させることができる。
【0059】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、流入部、流出部、弁座手段、流体、作動流路、閉塞部、侵入部、接触部、逆流防止弁、クリーニング部及び案内部のそれぞれについて例を掲げたが、これらは単なる例示であり、各々について異なる構成を採用することもできる。
【0060】
たとえば、前記実施形態においては、本願に係る逆流防止機構及びクリーニング機構を有する自動弁を、メカニカルスチームトラップの一種であるフロート式スチームトラップに適用した例を示したが、これに限定されるものではなく、流体が通る経路に設けられ、流れの方向・圧力・流量の制御を行う自動弁であれば他の機器に適用することができる。
【0061】
また、前記実施形態においては、接触部として逆止弁2に設けられた摺動片21a、21bを例示し、案内部として弁座6の内壁に形成されたガイド溝67a、67bを例示し、ガイド溝67a、67bに摺動片21a、21bが挿入された例を掲げたが、摺動片21a、21b(接触部)の動きを案内するものであれば他の構成を採用することもできる。たとえば、弁座6(弁座手段)の弁座空間62(作動流路)の内壁側に中心線L1に沿って延びるレール上の凸部を案内部として形成し、逆止弁2(逆流防止弁)側にこの凸部が嵌まり込む凹部を接触部として設けることもできる。
【0062】
また、前記実施形態においては、逆流防止弁として逆止弁2を例示したが、弁座手段(弁座6等)の作動流路(弁座空間62等)内に移動可能に位置しており、閉塞部(球面部28等)、侵入部(侵入突起25等)及び接触部(摺動片21a、21b等)を有するものであれば他の形状、構造を採用することができる。たとえば、例示した摺動片21a、21bとは異なる形状や大きさを用いてもよい。また、閉塞部として球面部28を例示したが、ドレン(流体)の逆流を受けて移動し、オリフィス61(流入部)を閉塞するものであれば、他の形状、構造を採用してもよい。
【0063】
さらに、前記実施形態においては、侵入部として侵入突起25を例示したが、クリーニング動作の際、オリフィス61(流入部)に侵入するものであれば他の形状、構造を採用してもよい。たとえば、尖り部やスクリュー部を備えた侵入部を採用し、より確実に異物を削ぎ落すよう構成することもできる。
【0064】
なお、クリーニング動作や逆流防止の際にフロート10が損傷する危険を回避するために、侵入突起25の先端をゴム等の柔らかい部材で形成してもよい。また、前記実施形態において示した侵入突起25の突出長さを短く形成し、逆止弁2が限界位置まで進出しとき、侵入突起25がオリフィス61の先端側に突き抜けないように構成し、フロート10への衝突を避け、フロート10の損傷を回避することもできる。
【0065】
前記実施形態においては、クリーニング部としてクリーニングバー3を例示したが、これに限定されるものではなく、外部からクリーニング操作されたとき、逆止弁2(逆流防止弁)に働きかけて逆止弁2をオリフィス61(流入部)に向けて進出させ、侵入突起25(侵入部)をオリフィス61に侵入させるものであれば、他の形状、構造を採用してもよい。
【0066】
なお、上述の各実施形態を任意に組み合わせて新たな実施形態とすることもできる。
【符号の説明】
【0067】
1:スチームトラップ 2:逆止弁 3:クリーニングバー 6:弁座
21a、21b:摺動片 25:侵入突起 28:球面部 61:オリフィス
62:弁室空間 67a、67b:ガイド溝 69:弁座流出口

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9