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特開2024-118907転写ベルト、転写装置、及び、画像形成装置
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  • 特開-転写ベルト、転写装置、及び、画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118907
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】転写ベルト、転写装置、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
G03G15/16 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025487
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 健司
(72)【発明者】
【氏名】林 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】木村 潤
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅人
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200FA08
2H200FA16
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA33
2H200GA44
2H200GB22
2H200HA12
2H200JA02
2H200JB06
2H200JC04
2H200JC07
2H200JC13
2H200JC15
2H200MA02
2H200MA04
2H200MA11
2H200MA13
2H200MA17
2H200MA20
2H200MB02
(57)【要約】
【課題】連続して画像を形成した後に形成する画像の白抜けの発生が抑制される転写ベルトの提供。
【解決手段】ポリエステル、シリコーン粒子、及び、導電性粒子を含有する基材層を有する転写ベルト。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル、シリコーン粒子、及び、導電性粒子を含有する基材層を有する
転写ベルト。
【請求項2】
前記ポリエステルが、芳香族を含むポリエステルである請求項1に記載の転写ベルト。
【請求項3】
前記芳香族を含むポリエステルが、ポリブチレンテレフタレートである請求項2に記載の転写ベルト。
【請求項4】
前記シリコーン粒子が、三次元架橋構造を有しないシリコーン樹脂を含有するコア部と、前記コア部を被覆し、三次元架橋構造を有するシリコーン樹脂を含有するシェル部と、を有する請求項1に記載の転写ベルト。
【請求項5】
前記導電性粒子が、炭素材料の粒子である請求項1に記載の転写ベルト。
【請求項6】
前記シリコーン粒子の含有量Msに対する前記導電性粒子の含有量Mcの質量比Mc/Msが、0.5以上30以下である請求項1に記載の転写ベルト。
【請求項7】
前記ポリエステルの含有量を100質量部としたとき、
前記シリコーン粒子の含有量が、1質量部以上30質量部以下であり、
前記導電性粒子の含有量が、15質量部以上40質量部以下である請求項1に記載の転写ベルト。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の転写ベルトを備える中間転写ベルトと、
像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写装置と、
前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写する二次転写装置と、を備える
転写装置。
【請求項9】
請求項8に記載の転写装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ベルト、転写装置、及び、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置(複写機、ファクシミリ、プリンタ等)では、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写し、記録媒体上に定着して画像が形成される。なお、こうしたトナー像の記録媒体への転写には、例えば、中間転写ベルトのような導電性の無端ベルトが用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材層上にプライマー層及びコート層をこの順で有する中間転写ベルトであって、前記基材層がカルボニル基を有する樹脂を含有し、前記プライマー層が、窒素原子を含むシランカップリング剤を含有し、前記コート層が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする中間転写ベルトが記載されている。
【0004】
【化1】

(式中、Rは水素原子、酸素原子又は炭素数10以下のアルキル基を表す。)が開示されている。
【0005】
特許文献2には、シリコーン・アクリル共重合体樹脂とウレタン樹脂を主成分とする樹脂組成物から形成された表面層を有することを特徴とする画像形成装置用転写ベルトが開示されている。
【0006】
特許文献3には、ポリアミド樹脂(A)と微細炭素繊維(B)とを含有した組成物からなる基材層と、熱可塑性エラストマー(C)とイオン導電剤(D)とを含有した組成物からなる弾性層とを積層したことを特徴とする画像形成装置用転写ベルトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-086013号公報
【特許文献2】特開2019-117292号公報
【特許文献3】特開2018-112619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本実施形態は、ポリエステル及び導電性粒子を含有する転写ベルトにおいて、シリコーン粒子を含有しない場合と比較して、連続して画像を形成した後に形成する画像の白抜け(つまり、記録媒体表面においてトナーが付着して画像となるべき箇所にトナーが付着しない現象)の発生が抑制される転写ベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段には、下記の態様が含まれる。
<1> ポリエステル、シリコーン粒子、及び、導電性粒子を含有する基材層を有する転写ベルト。
<2> 前記ポリエステルが、芳香族を含むポリエステルである<1>に記載の転写ベルト。
<3> 前記芳香族を含むポリエステルが、ポリブチレンテレフタレートである<2>に記載の転写ベルト。
<4> 前記シリコーン粒子が、三次元架橋構造を有しないシリコーン樹脂を含有するコア部と、前記コア部を被覆し、三次元架橋構造を有するシリコーン樹脂を含有するシェル部と、を有する<1>~<3>のいずれか1つに記載の転写ベルト。
<5> 前記導電性粒子が、炭素材料の粒子である<1>~<4>のいずれか1つに記載の転写ベルト。
<6> 前記シリコーン粒子の含有量Msに対する前記導電性粒子の含有量Mcの質量比Mc/Msが、0.5以上30以下である<1>~<5>のいずれか1つに記載の転写ベルト。
<7> 前記ポリエステルの含有量を100質量部としたとき、前記シリコーン粒子の含有量が、1質量部以上30質量部以下であり、前記導電性粒子の含有量が、15質量部以上30質量部以下である<1>~<6>のいずれか1つに記載の転写ベルト。
<8> <1>~<7>のいずれか1つに記載の転写ベルトを備える中間転写ベルトと、像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写装置と、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写する二次転写装置と、を備える転写装置。
<9> <8>に記載の転写装置を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
前記<1>に係る発明によれば、ポリエステル及び導電性粒子を含有する転写ベルトにおいて、シリコーン粒子を含有しない場合と比較して、連続して画像を形成した後に形成する画像の白抜け(記録媒体表面においてトナーが付着して画像となるべき箇所にトナーが付着しない現象)の発生が抑制される転写ベルトが提供される。
前記<2>に係る発明によれば、ポリエステルとして、脂肪族ポリエステルのみを含有する場合と比較して、前記画像の白抜けの発生がより抑制される転写ベルトが提供される。
前記<3>に係る発明によれば、芳香族を含むポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートのみを含有する場合と比較して、前記画像の白抜けの発生がより抑制される転写ベルトが提供される。
前記<4>に係る発明によれば、コアシェル構造のないシリコーン粒子のみを含有する場合に比べ、前記画像の白抜けの発生がより抑制される転写ベルトが提供される。
前記<5>に係る発明によれば、導電性粒子として、酸化インジウムスズ粒子のみを含有する場合に比べ、前記画像の白抜けの発生がより抑制される転写ベルトが提供される。
前記<6>に係る発明によれば、前記シリコーン粒子の含有量Msに対する前記導電性粒子の含有量Mcの質量比Mc/Msが、0.5未満又は30超である場合に比べ、前記画像の白抜けの発生がより抑制される転写ベルトが提供される。
前記<7>に係る発明によれば、前記ポリエステルの含有量を100質量部としたとき、前記シリコーン粒子の含有量が、1質量部未満若しくは30質量部超であるか、又は、前記導電性粒子の含有量が、15質量部未満若しくは30質量部超である場合に比べ、前記画像の白抜けの発生がより抑制される転写ベルトが提供される。
前記<8>又は<9>に係る発明によれば、中間転写ベルトが、ポリエステル及び導電性粒子を含有し、かつ、シリコーン粒子を含有しないベルトである場合と比較して、前記画像の白抜けの発生がより抑制される転写装置又は画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0013】
本実施形態中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本実施形態中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本実施形態において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本実施形態において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
本実施形態において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本実施形態において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0014】
<転写ベルト>
本実施形態に係る転写ベルトは、ポリエステル、シリコーン粒子、及び、導電性粒子を含有する基材層を有する。
また、本実施形態に係る転写ベルトは、中間転写ベルトとして好適に用いられる。
なお、本明細書において導電性とは、20℃における体積抵抗率が1×1013Ω・cm未満であることを意味する。
【0015】
電子写真方式を用いた画像形成装置は、光導電性感光体からなる像保持体上に電荷を形成し、画像信号を変調したレーザー光等で静電潜像を形成した後、帯電したトナーで前記静電潜像を現像して可視化したトナー像とする。例えば、上記トナー像を中間転写体を介して静電的に転写することにより再生画像を得る画像形成装置が開示されている。前記の中間転写体方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写体の材料としては、ポリカーボネート樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂を用いた導電性の無端ベルトや、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂を用いる提案がなされている。
また、静電的な転写性は、前記樹脂に導電性を付与することにより向上し、導電性を付与する導電材料としては、カーボンブラックやイオン導電性樹脂、導電性高分子といったものが使用されている。
【0016】
前述した材料を用いた転写ベルトでは、繰り返し使用時において、中間転写方式の画像形成装置に用いられるトナーの外添剤や媒体である用紙の紙粉によるフィルミングの発生(転写ベルト表面クリーニング不良)、長期使用時の転写ベルトの抵抗変化や他部材との接触による転写ベルト表面磨耗による凹凸の発生(画像不良)、及び、高湿度下における吸湿による変形(転写ベルトの変形による画像不良)が生じ、これらにより連続して画像を形成した後に形成する画像の白抜けが発生する。
【0017】
本実施形態に係る転写ベルトは、ポリエステル、シリコーン粒子、及び、導電性粒子を含有する基材層を有することにより、連続して画像を形成した後に形成する画像の白抜け(つまり、記録媒体表面においてトナーが付着して画像となるべき箇所にトナーが付着しない現象)の発生が抑制される。
ポリエステルを用い、これにシリコーン粒子を添加した材料を用いた転写ベルトとすることにより、ポリエステルは耐磨耗性に優れており、繰り返し使用時における表面磨耗による傷の発生が他の熱可塑性樹脂と比較して少ないが、低摩擦であるシリコーン粒子を添加することで滑り性が付与され、優れた機械強度に低摩擦性が加わることで更に他部材等との接触時に発生する応力負荷が軽減され、表面耐摩耗性が向上すると推測される。
電気特性の安定性は、転写ベルト中に小粒径の導電性粒子が高密度に分散されていることから、電子の移動距離が短くなる為、電子移動時間が短くかつ安定的な電子移動が行われることが可能な導電経路が形成されていると推測される。
吸湿に対する寸法安定性は、導電性粒子の緻密な分散による補強効果と前記シリコーン粒子が均一に分散されていることによる撥水効果が相乗的に働き、変形が抑制されているものと推測される。
表面のトナーや紙粉に対する耐汚染性は、シリコーン粒子による低表面エネルギー化が図られ、トナーや紙粉のベルト表面に付着する力が弱まることで、クリーニングブレード等の清掃手段による機械的清掃力が効果的に働くことで得られているものと推測される。
これまでに述べた原理(メカニズム)によって、転写ベルトにおける物性の安定性が得られ、連続して画像を形成した後に形成する画像の白抜けの発生が抑制される転写ベルトが得られる。
【0018】
本実施形態に係る転写ベルトは、例えば、基材層のみを有していても、基材層と、基材層に設けられた表面層と、を有していてもよいが、本実施形態の効果をより発揮する観点から、基材層のみであることが好ましい。また、本実施形態に係る転写ベルトは、基材層と表面層との間、又は、基材層の一方の面側に公知の他の層を有してもよい。
【0019】
(基材層)
本実施形態に係る転写ベルトにおける基材層は、ポリエステル、シリコーン粒子、及び、導電性粒子を含有する。
【0020】
-ポリエステル-
本実施形態に用いられるポリエステルとしては、特に制限なく、例えば、公知のポリエステル樹脂が挙げられる。
【0021】
ポリエステルとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
また、基材層においてポリエステルは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、5,000以上1,000,000以下が好ましく、7,000以上500,000以下がより好ましい。
ポリエステルの数平均分子量(Mn)は、2,000以上100,000以下が好ましい。
ポリエステルの分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー(株)製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、テトラヒドロフラン(THF)溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0025】
中でも、ポリエステルとしては、画像白抜け抑制性の観点から、芳香族を含むポリエステルが好ましく、ポリアルキレンテレフタレートがより好ましく、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートがより好ましく、強度と靭性の両立性の観点からポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。
また、ポリエステルにおけるポリブチレンテレフタレートの含有量は、画像白抜け抑制性の観点から、ポリエステルの全質量に対し、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。
【0026】
-シリコーン粒子-
基材層は、シリコーン粒子を含有する。
本実施形態におけるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂を含む粒子である。
シリコーン粒子におけるシリコーン樹脂の含有量は、シリコーン粒子の全質量に対し、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。
本実施形態において、シリコーン樹脂とは、一般的なシリコーン樹脂全てを指し、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂や、アルキド、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ウレタンなどで変性したシリコーン樹脂、架橋構造を有するシリコーン樹脂(例えば、シリコーンゴム等)などが挙げられる
【0027】
前記シリコーン樹脂として具体例には、例えば、側鎖にメチル基やフェニル基を含有したメチルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂等のシリコーン樹脂;これらに架橋構造を形成した架橋シリコーン樹脂;これらに他の有機樹脂を化学的に結合させた変性シリコーン樹脂;等が挙げられる。
変性シリコーン樹脂の具体例としては、例えばフッ素系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素アクリル樹脂、アクリル・スチレン樹脂、アルキッド樹脂又はウレタン樹脂等で変性した変性シリコーン樹脂、並びに架橋型のフッ素変性シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0028】
中でも、シリコーン粒子としては、耐摩耗性、及び、画像白抜け抑制性の観点から、三次元架橋構造を有するシリコーン樹脂を含む粒子であることが好ましく、三次元架橋構造を有しないシリコーン樹脂(つまり(二次元状のシロキサン結合からなる架橋構造を有するシリコーンゴム(シリコーンエラストマー))を含有するコア部と、前記コア部を被覆し、三次元架橋構造を有するシリコーン樹脂(つまり三次元状のシロキサン結合からなる架橋構造を有するシリコーンレジン)を含有するシェル部と、を有するコアシェル粒子であることがより好ましい。
【0029】
シリコーン粒子の平均一次粒径は、画像白抜け抑制性の観点から、製造取り扱い上で可能な範囲であれば小さい方が良く、上限に関しては、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが特に好ましい。
シリコーン粒子の平均一次粒径は、次の方法により測定される。まず、得られたベルトの各層から、ミクロトームにより、100nmの厚さの測定サンプルを採取し、本測定サンプルをTEM(透過型電子顕微鏡)により観察する。そして、導電性粒子50個の各々の投影面積に等しい円の直径(すなわち円相当径)を粒子径として、その平均値を個数平均一次粒径とする
また、シリコーン粒子の形状は、特に制限はないが、球状粒子であることが好ましい。
【0030】
基材層は、シリコーン粒子を1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
基材層におけるシリコーン粒子の含有量は、画像白抜け抑制性の観点から、前記ポリエステルの含有量を100質量部としたとき、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、1質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、2質量部以上25質量部以下であることが更に好ましく、3質量部以上20質量部以下であることが特に好ましい。
【0031】
-導電性粒子-
基材層は、導電性粒子を含有する。
導電性粒子としては、例えば、ケッチェンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;アルミニウム、ニッケル等の金属粒子;酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化イットリウム等の金属酸化物粒子;などが挙げられる。
画像の色抜け及び色点の発生をより抑制する観点から、導電性粒子としては、炭素材料の粒子が好ましく、カーボンブラックがより好ましい。
【0032】
導電性粒子の個数平均一次粒径は、50nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましく、30nm以下が更に好ましい。
【0033】
導電性粒子の平均一次粒径は、次の方法により測定される。
まず、得られたベルトの各層から、ミクロトームにより、100nmの厚さの測定サンプルを採取し、本測定サンプルをTEM(透過型電子顕微鏡)により観察する。そして、導電性粒子50個の各々の投影面積に等しい円の直径(すなわち円相当径)を粒子径として、その平均値を平均一次粒径とする。
【0034】
本実施形態に用いられる粒子における体積抵抗の測定方法は、以下の通りである。
20cmの電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象となる粒子(外添剤)を平坦に載せる。この上に前記同様の20cmの電極板を載せ粒子層を挟み込む。粒子間の空隙をなくすため、電極板の上に4kgの荷重をかけてから粒子層の厚み(cm)を測定する。キャリア層上下の両電極には、エレクトロメーター及び高圧電源発生装置に接続されている。両電極に電界が所定の値となるように高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取ることにより、粒子の体積抵抗率(Ω・cm)を計算する。粒子の体積抵抗率(Ω・cm)の計算式は、下記式(3)に示す通りである。
ρ=E×20/(I-I0)/L・・・式(3)
上記式中、ρは粒子の体積抵抗率(Ω・cm)、Eは印加電圧(V)、Iは電流値(A)、I0は印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lはキャリア層の厚み(cm)をそれぞれ表す。また、20の係数は、電極板の面積(cm)を表す。
【0035】
基材層において、導電性粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
基材層における導電性粒子の含有量は、画像白抜け抑制性の観点から、前記ポリエステルの含有量を100質量部としたとき、5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、10質量部以上45質量部以下であることがより好ましく、15質量部以上40質量部以下であることが更に好ましく、25質量部以上35質量部以下であることが特に好ましい。
【0036】
基材層におけるシリコーン粒子の含有量Msに対する導電性粒子の含有量Mcの質量比Mc/Msは、画像白抜け抑制性の観点から、0.2以上50以下であることが好ましく、0.5以上30以下であることがより好ましく、1以上20以下であることが更に好ましく、1.5以上5以下であることが特に好ましい。
また、画像白抜け抑制性の観点から、基材層におけるシリコーン粒子の含有量よりも、導電性粒子の含有量のほうが多いことが好ましい。
【0037】
-その他の成分-
基材層は、ポリエステル、シリコーン粒子及び導電性粒子のほかに、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、導電性粒子以外の導電剤、ベルトの強度向上のためのフィラー、ベルトの熱劣化を防止するための酸化防止剤、流動性を向上させるための界面活性剤、耐熱老化防止剤、架橋剤、難燃剤、着色剤、分散剤等が挙げられる。
基材層にその他の成分が含まれる場合、その他の成分の含有量は、基材層の全質量に対して、0質量%超10質量%以下が好ましく、0質量%超5質量%以下がより好ましく、0質量%超1質量%以下が更に好ましい。
【0038】
基材層は、導電性粒子以外の導電剤を含有していてもよい。導電剤としては、例えば、チタン酸カリウム、塩化カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム等のイオン導電性物質;ポリアニリン、ポリエーテル、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレン等のイオン導電性高分子;などが挙げられる。導電剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】

基材層の厚さは、50μm以上500μm以下が好ましく、60μm以上400μm以下がより好ましく、80μm以上200μm以下が更に好ましい。
【0040】
(転写ベルトの表面抵抗率)
転写ベルトの外周面に500Vの電圧を3秒間印加した際の表面抵抗率の常用対数値は、凹凸紙への転写性を良好にする観点から、8.(logΩ/suq.)以上15.0(logΩ/suq.)以下であることが好ましく、8.5(logΩ/suq.)以上14.0(logΩ/suq.)以下であることがより好ましく、9.0(logΩ/suq.)以上13.5(logΩ/suq.)以下であることが特に好ましい。
なお、前記表面抵抗率の単位logΩ/suq.は、表面抵抗率を単位面積当たりの抵抗値の対数値で表すものあり、log(Ω/suq.)、logΩ/suquare、logΩ/□等とも表記する。
前記無端ベルトの外周面における500Vの電圧を3秒間印加した際の表面抵抗率の測定は、以下の方法により行う。
抵抗測定機として、微小電流計(Advantest社製R8430A)を用い、プローブとしてURプローブ(三菱ケミカルアナリテック(株)製)を使用し、無端ベルトの外周面の表面抵抗率(logΩ/suq.)について、無端ベルトの外周面を周方向に等間隔で6点、幅方向の中央部及び両端部について3点の計18点、電圧500V、印加時間3秒間、加圧1kgfで測定し、平均値を算出する。また、温度22℃、湿度55%RHの環境下で測定を行うものとする。
【0041】
(転写ベルトの製造方法)
転写ベルトの製造方法は、特に限定されるものではない。
転写ベルトの製造方法の一例では、例えば、ポリエステル、導電性粒子、及び、シリコーン粒子を用い、それぞれを所定の配合量となるように、2軸押出溶融混練機を用いて混練、混合ペレットを得る。
このペレットを用い、一軸スクリュー溶融押出機を用いて樹脂溶融温度(融点)以上に加熱し、円筒状に溶融押出し、直後に円筒状に溶融押出された溶融樹脂の内周面に円筒状のインナーサイジングダイの外面を接触させて冷却させるとともに、円筒状に押し出しされた溶融樹脂の外周面に冷却エアを吹きつけて冷却固化させ、その後にカットし円筒状の転写ベルトを得る。
【0042】
<転写装置、画像形成装置>
本実施形態に係る転写装置は、本実施形態に係る転写ベルトを備えるものであればよいが、本実施形態に係る転写ベルトを備える中間転写ベルトと、像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写装置と、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写する二次転写装置と、を備える転写装置であることが好ましい。
【0043】
本実施形態に係る画像形成装置は、本実施形態に係る転写ベルトを備えるものであればよいが、本実施形態に係る転写装置を備えるものであることが好ましい。
本実施形態に係る転写ベルトを適用した好ましい画像形成装置の態様としては、以下の態様が挙げられる。
具体的には、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、前記帯電装置により帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成装置と、前記像保持体上の静電潜像をトナーにより現像しトナー像を形成する現像装置と、実施形態に係る環状体を用いてなる中間転写用ベルトと、前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写用環状体に転写する一次転写装置と、前記中間転写ベルトに転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、前記記録媒体上のトナー像を定着する定着装置と、を備える画像形成装置である。
なお、前記画像形成装置に用いる本実施形態に係る転写ベルトは、表面抵抗率が1×10Ω/□以上1×1012Ω/□以下であることが好ましい。
【0044】
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、現像装置内に単色のトナーのみを収容する通常のモノカラー画像形成装置、像保持体上に保持されたトナー像を中間転写ベルトに順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置、各色毎の現像器を備えた複数の像保持体を中間転写ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置が挙げられる。
【0045】
以下においては、本実施形態に係る転写ベルトを、中間転写ベルトとして用いた実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成の一例(一実施形態)を示す概略図である。図1における画像形成装置100は、いわゆるタンデム方式であり、電子写真感光体からなる4つの像保持体101a乃至101dの周囲に、その回転方向に沿って順次、帯電装置102a乃至102d、露光装置114a乃至114d、現像装置103a乃至103d、一次転写装置(一次転写ロール)105a乃至105d、像保持体クリーニング装置104a乃至104dが配置されている。なお、転写後の像保持体101a乃至101dの表面に残留している残留電位を除去するために除電器を備えていてもよい。
また、中間転写ベルト107が、テンションロール106a乃至106d、ドライブロール111及びバックアップロール108に張架され、環状体張架装置(ベルト張架装置)107bを形成している。これらのテンションロール106a乃至106d、ドライブロール111及びバックアップロール108により、中間転写ベルト107は、各像保持体101a乃至101dの表面に接触しながら各像保持体101a乃至101dと一次転写ロール105a乃至105dとを矢印Aの方向に移動し得る。一次転写ロール105a乃至105dが中間転写ベルト107を介して像保持体101a乃至101dに接触する部位が一次転写部となり、像保持体101a乃至101dと一次転写ロール105a乃至105dとの接触部には一次転写電圧が印加される。
【0046】
また、二次転写装置として、中間転写ベルト107及び二次転写ベルト116を介してバックアップロール108と二次転写ロール109が対向配置されている。紙等の記録媒体115が中間転写ベルト107の表面に接触しながら中間転写ベルト107と二次転写ロール109とで挟まれる領域を矢印Bの方向に移動し、その後、定着装置110を通過する。二次転写ロール109が中間転写ベルト107及び二次転写ベルト116を介してバックアップロール108に接触する部位が二次転写部となり、二次転写ロール109とバックアップロール108との接触部には二次転写電圧が印加される。更に、転写後の中間転写ベルト107と接触するように、中間転写ベルトクリーニング装置112及び113が配置されている。
【0047】
この構成のフルカラー画像形成装置100では、像保持体101aが矢印Cの方向に回転するとともに、その表面が帯電装置102aによって帯電された後、レーザー光等の露光装置114aにより第1色目の静電潜像が形成される。形成された静電潜像はその色に対応するトナーを収容した現像装置103aにより、トナーで現像(顕像化)されてトナー像が形成される。なお、現像装置103a乃至103dには、各色の静電潜像に対応するトナー(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)がそれぞれ収容されている。像保持体101a上に形成されたトナー像は、一次転写部を通過する際に、一次転写ロール105aによって中間転写ベルト107上に静電的に転写(一次転写)される。以降、第1色目のトナー像を保持した中間転写ベルト107上に、一次転写ロール105b乃至105dによって、第2色目、第3色目、第4色目のトナー像が順次重ね合わせられるよう一次転写され、最終的にフルカラーの多重トナー像が得られる。中間転写ベルト107上に形成された多重トナー像は、二次転写部を通過する際に、記録媒体115に静電的に一括転写される。トナー像が転写された記録媒体115は、定着装置110に搬送され、加熱及び/又は加圧により定着処理された後、機外に排出される。一次転写後の像保持体101a乃至101dは、像保持体クリーニング装置104a乃至104dにより残留トナーが除去される。一方、二次転写後の中間転写ベルト107は、中間転写ベルトクリーニング装置112及び113により残留トナーが除去され、次の画像形成プロセスに備える。
【0048】
(像保持体)
像保持体101a乃至101dとしては、公知の電子写真感光体が広く適用される。電子写真感光体としては、感光層が無機材料で構成される無機感光体や、感光層が有機材料で構成される有機感光体などが用いられる。有機感光体においては、露光により電荷を発生する電荷発生層と、電荷を輸送する電荷輸送層を積層する機能分離型有機感光体や、電荷を発生する機能と電荷を輸送する機能を果たす単層型有機感光体が好適に用いられる。また、無機感光体においては、感光層がアモルファスシリコンにより構成されているものが、好適に用いられる。
また、像保持体の形状には特に限定はなく、例えば、円筒ドラム状、シート状又はプレート状等、公知の形状が採用される。
【0049】
(帯電装置)
帯電装置102a乃至102dとしては、特に制限はなく、例えば、導電性(ここで、帯電装置における「導電性」とは例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満を意味する。)又は半導電性(ここで、帯電装置における「半導電性」とは例えば体積抵抗率が10乃至1013Ω・cmを意味する。)のローラ、ブラシ、フィルム、又はゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器など、公知の帯電器が広く適用される。これらの中でも接触型帯電器が好ましい。 帯電装置102a乃至102dは、像保持体101a乃至101dに対し、通常、直流電流を印加するが、交流電流を更に重畳させて印加も可能である。
【0050】
(露光装置)
露光装置114a乃至114dとしては、特に制限はなく、例えば、像保持体101a乃至101dの表面に、半導体レーザー光、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)光、又は液晶シャッタ光等の光源、或いはこれらの光源からポリゴンミラーを介して定められた像様に露光し得る光学系機器など、公知の露光装置が広く適用される。
【0051】
(現像装置)
現像装置103a乃至103dとしては、目的に応じて選択され。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、又はローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器などが挙げられる。
【0052】
画像形成装置100に用いるトナー(現像剤)は、特に限定されず、例えば、結着樹脂と着色剤を含んで構成される。
【0053】
結着樹脂としては、スチレン類、モノオレフィン類、ビニルエステル類、α-メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルエーテル類、又はビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体が例示され、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン-アクリル酸アルキル共重合体、スチレン-メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、又はポリプロピレン等が挙げられる。更に、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、又はパラフィンワックス等も挙げられる。
着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、又はC.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして挙げられる。
【0054】
トナーには、帯電制御剤、離型剤、他の無機粒子等の公知の添加剤を内添加処理や外添加処理してもよい。
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、又はキャンデリラワックス等を代表的なものとして挙げられる。
帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、又は極性基を含有するレジンタイプ等の帯電制御剤が用いられる。
他の無機粒子としては、粉体流動性、帯電制御等の目的で、平均1次粒径が40nm以下の小径無機粒子を用い、更に、付着力低減の為、それより大径の無機或いは有機粒子を併用してもよい。これらの他の無機粒子は公知のものが使用される。
また、小径無機粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性をあげる効果が大きくなるため有効である。
トナーの製造方法としては、高い形状制御性を得られることから、乳化重合凝集法や溶解懸濁法等などの重合法が好ましく用いられる。また、これらの方法で得られたトナーをコアにして、更に凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法を行ってもよい。
なお、外添剤を添加する場合、トナー及び外添剤をヘンシェルミキサー或いはVブレンダー等で混合することによって製造し得る。また、トナーを湿式にて製造する場合は、湿式にて外添してもよい。
【0055】
(一次転写ロール)
一次転写ロール105a乃至105dは単層或いは多層のいずれでもよい。例えば、単層構造の場合は、発泡又は無発泡のシリコーンゴム、ウレタンゴム、又はエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。
【0056】
(像保持体クリーニング装置)
像保持体クリーニング装置104a乃至104dは、一次転写工程後の像保持体101a乃至101dの表面に付着する残存トナーを除去するためのものであり、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、又はロールクリーニング等が用いられる。これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、又はシリコーンゴム等が挙げられる。
【0057】
(二次転写ロール)
二次転写ロール109の層構造は、特に限定されるものではないが、例えば、三層構造の場合、コア層と中間層とその表面を被覆するコーティング層により構成される。コア層は導電性粒子を分散したシリコーンゴム、ウレタンゴム、又はEPDM等の発泡体で、中間層はこれらの無発泡体で構成される。コーティング層の材料としては、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、又はパーフルオロアルコキシ樹脂などが挙げられる。二次転写ロール109の体積抵抗率は10Ωcm以下であることが好ましい。また、中間層を除いた2層構造としてもよい。
【0058】
(バックアップロール)
バックアップロール108は、二次転写ロール109の対向電極を形成する。バックアップロール108の層構造は、単層或いは多層のいずれでもよい。例えば単層構造の場合は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、又はEPDM等にカーボンブラック等の導電性粒子が適量配合されたロールで構成される。二層構造の場合は、上記のゴム材料で構成される弾性層の外周面を高抵抗層で被覆したロールから構成される。
また、バックアップロール108と二次転写ロール109のシャフトとには、好ましくは1kV以上6kV以下の電圧が印加される。バックアップロール108のシャフトへの電圧印加に代えて、バックアップロール108に接触させた電気良導性の電極部材と二次転写ロール109とに電圧を印加してもよい。上記電極部材としては、金属ロール、導電性ゴムロール、導電性ブラシ、金属プレート、又は導電性樹脂プレート等が挙げられる。
【0059】
(定着装置)
定着装置110としては、例えば、熱ローラ定着器、加圧ローラ定着器、又はフラッシュ定着器など公知の定着器が広く適用される。
【0060】
(中間転写ベルトクリーニング装置)
中間転写ベルトクリーニング装置112及び113としては、クリーニングブレードの他、ブラシクリーニング、又はロールクリーニング等を用いることができ、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、又はシリコーンゴム等が挙げられる。
【0061】
上述した実施形態においては、像保持体が複数個で構成される所謂タンデム方式の画像形成装置を説明したが、像保持体が1個で、色数分だけ中間転写ベルトが回転及び作像プロセスを行う所謂複数サイクル方式(例えば4サイクル方式等)の画像形成装置であってもよい。
【0062】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施の形態に限定的に解釈されるものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【実施例0063】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0064】
<実施例1>
熱可塑性樹脂(ポリブチレンテレフタレート(PBT)、三菱プラスチック社製ノバデュラン)に、カーボンブラック(Monark 880(M880)、キャボットスペシャリティケミカルズ社製、平均一次粒径16nm)が30phr、シリコーン粒子(三次元架橋構造を有しないシリコーン樹脂を含有するコア部と、前記コア部を被覆し、三次元架橋構造を有するシリコーン樹脂を含有するシェル部と、を有するシリコーン粒子、信越化学工業(株)製KMP600、平均一次粒径5μm)が15phrとなるように、二軸溶融混練機(パーカーコーポレイション社製)を用いて、バレル加熱温度を最下流位置(材料供給側)のバレルが170℃、そこから徐々に最大加熱温度が240℃となるようにバレル加熱温度を段階的に設定し、スクリューの回転トルク120N・mにて溶融混練を行い、混練機の排出口より排出された溶融状態のストランド(直径2mm程度のロープ状)を水槽内に通して冷却、冷却固化されたストランドをペレタイザーに挿入しカット後、長さ約5mm程度のカットサイズの混合樹脂ペレットを得た。なお、「phr」とは、ポリエステル等のバインダー樹脂の含有量を100質量部としたときの使用した各材料の質量部を表す。
【0065】
溶融混練後の混合樹脂ペレットを、一軸溶融押出し機((株)三葉製作所製)にて225℃に加熱し、引き取り機によって引き取り(延伸)ながら溶融押出しさせ、直後に円筒状の溶融樹脂の内周面をφ278mmの円筒状サイジングダイの表面(表面温度25℃)に接触させ、かつ、外周面に空気(25℃)を吹きつけながら冷却したフィルムを円筒状に引き取り、カット機により切断することで、φ277.9mm、幅350mmの転写ベルトを得た。得られた転写ベルトの膜厚は120μmで、表面抵抗率は10.2logΩ/□であった。この転写ベルトから物性評価用のフィルムサンプルを切り取り、吸湿膨張率を測定するとともに、長期画像形成後の画像評価を実施した。
【0066】
<実施例2~7、並びに、比較例1~2>
表1に記載した各材料の種類及び量に変更した以外は、実施例1と同様にして、転写ベルトを作製した。
【0067】
得られた転写ベルトを用い、以下の評価を行った。評価結果をまとめて表2に示す。
【0068】
―表面抵抗率-
転写ベルトの表面抵抗率について、抵抗測定機として、微小電流計(Advantest社製R8430A)を用い、プローブとしてURプローブ(三菱ケミカルアナリテック(株)製)を使用し、無端ベルトの外周面の表面抵抗率(logΩ/suq.)について、無端ベルトの外周面を周方向に等間隔で6点、幅方向の中央部及び両端部について3点の計18点、電圧500V、印加時間3秒間、加圧1kgfで測定し、平均値を算出する。また、温度22℃、湿度55%RHの環境下で測定を行うものとする。
【0069】
-表面接触角-
転写ベルトの表面接触角について、接触角計として、協和界面科学株式会社製DMs-401を用い、滴下溶媒として純水を用い、転写ベルト表面に対し周方向2点、軸方向5点の計10点を測定(温度22℃、湿度55%)し、平均値を算出した。
なお、水接触角は、汚染性に関わるトナー離型性に関与し、値が高い程に離型性が良く、ベルト表面汚染起因による白抜け画像が発生しにくくなる。
【0070】
-表面粗さ-
転写ベルトの表面粗さについて、表面粗さ計として、東京精密社製サーフコムを用い、転写ベルト表面に対し周方向2点、軸方向5点の計10点を測定(温度22℃、湿度55%)し、平均値を算出した。
なお、表面粗さは、ベルト表面汚染性や摩耗性に関与し、小さい方が接触面積が小さくなり汚染や摩耗起因の白抜け画像が発生しにくくなる。
【0071】
-転写ベルト特性の評価-
転写ベルトの寸法安定性について、25.4mm×149mm試験片、荷重230g、[35℃/85%RH、24hr]⇔[35℃/20%RH、24hr]の繰り返しの条件において、寸法の変化量を確認することで、転写ベルトの湿度による変形性(表中、吸湿膨張率)の評価を実施した。また、転写ベルトの表面抵抗率、接触角、及び、表面粗さについても、評価を実施した。
なお、吸湿膨張率は、抵抗/表面汚染性の安定性に関与し、値が小さい程吸湿による抵抗変動や表面形状変化による白抜け画像が発生しにくくなる。
【0072】
-白抜け画像の評価-
30℃/85%RHの高温高湿環境下において、富士フイルムビジネスイノベーション(株)製のDocuPrint C2250を改造した評価装置によってA4縦用紙を連続して3,000枚転写した後、ハーフトーン(マゼンタ30%)の画像をA3縦用紙に転写した。このときの2次転写電圧は5.5kVとした。得られたハーフトーン画像を目視により下記評価基準で白抜け画像の判定を行った。
A:白抜けなし
B:わずかに白抜けあり
C:白抜けあり
D:ひどい白抜けあり
【0073】
-転写ベルト表面汚染状態の評価-
前記白抜け画像の評価時に転写ベルト表面のトナーや紙粉の固着状態(フィルミング)についても観察を実施し、転写ベルト表面の汚染状態を確認した。
A:汚染なし
B:僅かに汚染あり
C:汚染あり
D:ひどい汚染あり
【0074】
-転写ベルト表面の磨耗状態の評価-
前記白抜け画像の評価時にベルト表面の凹凸の観察を実施し、転写ベルト表面の磨耗状態を確認した。
A:ほぼ磨耗なし
B:僅かに磨耗あり
C:磨耗あり
D:ひどい磨耗あり
【0075】
-抵抗安定性の評価-
前記白抜け画像の評価後に、転写ベルトの表面抵抗率(表中、長期画像形成後の表面抵抗率と表記)を測定した。
前記画像形成前の転写ベルトの表面抵抗率と比較し、初期と画像形成後の表面抵抗率の変更量(表中、初期から長期使用後迄の抵抗安定変動量と表記)を算出した。この変動量は、数値が近いほうが好ましい。
【0076】
【表1】
【0077】
前述した以外の表1における略記の詳細を、以下に示す。
PBT:ポリブチレンテレフタレート(三菱プラスチック社製「ノバデュラン」)
PA :ポリアミド樹脂(宇部興産社製「6434ポリアミド」)
PEN:ポリエチレンナフタレート樹脂
KMP600:シリコーン粒子(三次元架橋構造を有しないシリコーン樹脂を含有するコア部と、前記コア部を被覆し、三次元架橋構造を有するシリコーン樹脂を含有するシェル部と、を有するシリコーン粒子、信越化学工業(株)製KMP600、平均一次粒径5μm)
KMP601:シリコーン粒子(三次元架橋構造を有しないシリコーン樹脂を含有するコア部と、前記コア部を被覆し、三次元架橋構造を有するシリコーン樹脂を含有するシェル部と、を有するシリコーン粒子、信越化学工業(株)製KMP601、平均一次粒径15μm)
KMP602:シリコーン粒子(三次元架橋構造を有しないシリコーン樹脂を含有するコア部と、前記コア部を被覆し、三次元架橋構造を有するシリコーン樹脂を含有するシェル部と、を有するシリコーン粒子、信越化学工業(株)製KMP602、平均一次粒径35μm)
M880:カーボンブラック(キャボットスペシャリティケミカルズ社製「Monark 880」、平均一次粒径16nm)
REGAL350:カーボンブラック(オリオンエンジニアドカーボンズ社製「REGAL350」、平均一次粒径48nm)
【0078】
前記表2に示す結果から、本実施例の転写ベルトは、比較例の転写ベルトに比べ、連続して画像を形成した後に形成する画像の白抜けの発生が抑制されることがわかる。
【0079】
(((1))) ポリエステル、シリコーン粒子、及び、導電性粒子を含有する基材層を有する転写ベルト。
(((2))) 前記ポリエステルが、芳香族を含むポリエステルである(((1)))に記載の転写ベルト。
(((3))) 前記芳香族を含むポリエステルが、ポリブチレンテレフタレートである(((2)))に記載の転写ベルト。
(((4))) 前記シリコーン粒子が、三次元架橋構造を有しないシリコーン樹脂を含有するコア部と、前記コア部を被覆し、三次元架橋構造を有するシリコーン樹脂を含有するシェル部と、を有する(((1)))~(((3)))のいずれか1つに記載の転写ベルト。
(((5))) 前記導電性粒子が、炭素材料の粒子である(((1)))~(((4)))のいずれか1つに記載の転写ベルト。
(((6))) 前記シリコーン粒子の含有量Msに対する前記導電性粒子の含有量Mcの質量比Mc/Msが、0.5以上30以下である(((1)))~(((5)))のいずれか1つに記載の転写ベルト。
(((7))) 前記ポリエステルの含有量を100質量部としたとき、前記シリコーン粒子の含有量が、1質量部以上30質量部以下であり、前記導電性粒子の含有量が、15質量部以上30質量部以下である(((1)))~(((6)))のいずれか1つに記載の転写ベルト。
(((8))) (((1)))~(((7)))のいずれか1つに記載の転写ベルトを備える中間転写ベルトと、像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写ベルトの外周面に一次転写する一次転写装置と、前記中間転写ベルトの外周面に転写された前記トナー像を記録媒体に二次転写する二次転写装置と、を備える転写装置。
(((9))) (((8)))に記載の転写装置を備える画像形成装置。
【0080】
前記(((1)))に係る発明によれば、ポリエステル及び導電性粒子を含有する転写ベルトにおいて、シリコーン粒子を含有しない場合と比較して、連続して画像を形成した後に形成する画像の白抜け(記録媒体表面においてトナーが付着して画像となるべき箇所にトナーが付着しない現象)の発生が抑制される転写ベルトが提供される。
前記(((2)))に係る発明によれば、ポリエステルとして、脂肪族ポリエステルのみを含有する場合と比較して、前記画像の白抜けの発生がより抑制される転写ベルトが提供される。
前記(((3)))に係る発明によれば、芳香族を含むポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートのみを含有する場合と比較して、前記画像の白抜けの発生がより抑制される転写ベルトが提供される。
前記(((4)))に係る発明によれば、コアシェル構造のないシリコーン粒子のみを含有する場合に比べ、前記画像の白抜けの発生がより抑制される転写ベルトが提供される。
前記(((5)))に係る発明によれば、導電性粒子として、酸化インジウムスズ粒子のみを含有する場合に比べ、前記画像の白抜けの発生がより抑制される転写ベルトが提供される。
前記(((6)))に係る発明によれば、前記シリコーン粒子の含有量Msに対する前記導電性粒子の含有量Mcの質量比Mc/Msが、0.5未満又は30超である場合に比べ、前記画像の白抜けの発生がより抑制される転写ベルトが提供される。
前記(((7)))に係る発明によれば、前記ポリエステルの含有量を100質量部としたとき、前記シリコーン粒子の含有量が、1質量部未満若しくは30質量部超であるか、又は、前記導電性粒子の含有量が、15質量部未満若しくは30質量部超である場合に比べ、前記画像の白抜けの発生がより抑制される転写ベルトが提供される。
前記(((8)))又は(((9)))に係る発明によれば、中間転写ベルトが、ポリエステル及び導電性粒子を含有し、かつ、シリコーン粒子を含有しないベルトである場合と比較して、前記画像の白抜けの発生がより抑制される転写装置又は画像形成装置が提供される。
【符号の説明】
【0081】
100 画像形成装置
101a乃至101d 像保持体
102a乃至102d 帯電装置(帯電手段)
103a乃至103d 現像装置(現像手段)
104a乃至104d 像保持体クリーニング装置
105a乃至105d 一次転写ロール(転写手段)
106a乃至106e 支持ロール
107 中間転写ベルト
108 対向ロール
109 二次転写ロール(転写手段)
110 定着装置(定着手段)
111 駆動ロール
112、113 中間転写ベルトクリーニング装置
114a乃至114d 露光装置(潜像形成手段)
115 記録媒体
116 二次転写ベルト(導電性部材)
図1