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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118910
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】二次圧制御機構
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/20 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
G05D16/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025491
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高野 雅之
【テーマコード(参考)】
5H316
【Fターム(参考)】
5H316BB05
5H316CC03
5H316DD01
5H316DD06
5H316EE04
5H316EE08
5H316ES01
5H316FF12
5H316GG01
5H316HH12
5H316JJ13
5H316KK02
(57)【要約】
【課題】二次側の圧力を電磁弁により制御する構成において、大気圧上昇の影響を抑制した状態で、二次圧を制御可能な二次圧制御機構を提供する。
【解決手段】ガス通流配管P1のうち第1電磁弁V1が設けられる電磁弁配設配管部位P1aに、並列状態で設けられる大気圧対応配管P2を備えると共に、大気圧対応配管P2を開閉する第2電磁弁V2を第1電磁弁V1とは別に備え、制御装置Sは、第1電磁弁V1の周囲の大気圧の変化状態である大気圧変化状態が予め定められた上昇速度以上の上昇傾向にあるか否かを判定する大気圧変化状態判定制御と、大気圧変化状態判定制御にて大気圧変化状態が上昇傾向にあると判定された場合に第2電磁弁V2を閉止状態から開放状態へ移行させる大気圧対応開放制御との一連の制御を、二次圧設定制御と並行して実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを通流するガス通流配管を開閉する弁体の開閉状態を制御して前記弁体の二次側の圧力である二次圧を制御する二次圧制御機構であって、
前記弁体としての第1電磁弁と、
前記二次圧を計測する二次圧計測部と、
前記二次圧計測部にて計測された前記二次圧が、予め定められた二次圧上限閾値以上となった場合に前記第1電磁弁を閉止状態へ切り換え、予め定められた二次圧下限閾値以下となった場合に前記第1電磁弁を開放状態へ切り換える二次圧設定制御を実行する制御装置と、
前記ガス通流配管のうち前記第1電磁弁が設けられる電磁弁配設配管部位に、並列状態で設けられる大気圧対応配管とを備えると共に、
前記大気圧対応配管を開閉する第2電磁弁を前記第1電磁弁とは別に備え、
前記制御装置は、前記第1電磁弁の周囲の大気圧の変化状態である大気圧変化状態が予め定められた上昇速度以上の上昇傾向にあるか否かを判定する大気圧変化状態判定制御と、前記大気圧変化状態判定制御にて前記大気圧変化状態が前記上昇傾向にあると判定された場合に前記第2電磁弁を前記閉止状態から前記開放状態へ移行させる大気圧対応開放制御との一連の制御を、前記二次圧設定制御と並行して実行する二次圧制御機構。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記大気圧変化状態判定制御において前記大気圧変化状態が前記上昇傾向にあると判定された場合に、前記上昇傾向にあると判定された時点を開始時点とした予め定められた圧力差導出時間幅における大気圧の圧力降下をキャンセルするガス容積をボイル則に基づいて計算し、
前記大気圧対応開放制御にて前記第2電磁弁を前記閉止状態から前記開放状態へ移行させた時点から、導出された前記ガス容積にガスを充填する大気圧対応時間が経過した後に、前記第2電磁弁を前記開放状態から前記閉止状態へ移行させる大気圧対応閉止制御を実行する請求項1に記載の二次圧制御機構。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記大気圧対応配管を複数備えると共に、夫々の前記大気圧対応配管に前記第2電磁弁を備え、
前記上昇傾向が大きいほど、前記大気圧対応開放制御にて前記閉止状態から前記開放状態へ移行する前記第2電磁弁の数を増加させる第2電磁弁数増加制御を実行する請求項1又は2に記載の二次圧制御機構。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記二次圧計測部にて計測される前記二次圧が、前記二次圧下限閾値を下回る場合に、前記第2電磁弁数増加制御を実行する請求項3に記載の二次圧制御機構。
【請求項5】
前記第1電磁弁及び前記第2電磁弁は、前記二次圧を0kPaを超え1.0kPa以下に制御する小型電磁弁である請求項1又は2に記載の二次圧制御機構。
【請求項6】
前記ガス通流配管の内部の温度を計測可能なガス温度センサを備え、
前記制御装置は、前記ガス温度センサに計測される温度に基づいて、ガスの温度変化の影響を補正する補正制御を実行可能に構成されている請求項1又は2に記載の二次圧制御機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを通流するガス通流配管を開閉する弁体の開閉状態を制御して前記弁体の二次側の圧力である二次圧を制御する二次圧制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ガス(例えば、都市ガス13A)をガス使用機器が設けられる住戸等へ供給するガス通流配管には、ガス供給圧力を目標圧力に制御するべく、整圧装置としてのガバナが設けられている(特許文献1を参照)。
当該整圧装置では、例えば、ダイヤフラムが設けられる整圧室へ整圧装置の二次側の圧力である二次圧が伝達され、当該二次圧によるダイヤフラムの変位により、ガス通流配管に設けられ且つダイヤフラムと連接される主弁体の開度が調整される形態で、二次側の圧力が調整可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-285665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、上述のガバナは、数千Nm/hのガスが通流する中圧以上のガス通流配管にて用いられることが多いが、例えば、数十Nm/hの比較的小流量のガスが通流するガス通流配管では、その二次側のガス圧が電磁弁により制御される場合がある。
この場合、例えば、二次圧が所定の二次圧下限閾値未満となった場合に、電磁弁を開放状態へ制御し、二次圧が所定の二次圧上限閾値を超えた場合に、電磁弁を閉止状態へ制御して、当該電磁弁の二次圧を所定の目標圧力に制御する。
【0005】
電磁弁の閉止状態のガス通流配管の内部のゲージ圧力は、多かれ少なかれ大気圧変化の影響を直接的に受ける。ここで、特に、導管網の管内圧力を微圧で制御する場合、大気圧変化の影響を無視できないため対応に注意が必要である。
上述の如く、二次側のガス圧を電磁弁により制御する構成においては、圧力制御を電磁弁の開閉により実行するため単純な装置で実現できる。また、ガスの消費量が少ない導管網を想定する場合、電磁弁の大きさも小型にできるため、安価な装置を実現できる。
しかしながら、急激な大気圧上昇が生じた場合、電磁弁を介して二次側へ流入させるガスの最大流量が少なくなるため、圧力制御が適切に行えなくなる虞があるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、二次側の圧力を電磁弁により制御する構成において、大気圧上昇の影響を抑制した状態で、二次圧を制御可能な二次圧制御機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための二次圧制御機構は、ガスを通流するガス通流配管を開閉する弁体の開閉状態を制御して前記弁体の二次側の圧力である二次圧を制御する二次圧制御機構であって、その特徴構成は、
前記弁体としての第1電磁弁と、
前記二次圧を計測する二次圧計測部と、
前記二次圧計測部にて計測された前記二次圧が、予め定められた二次圧上限閾値以上となった場合に前記第1電磁弁を閉止状態へ切り換え、予め定められた二次圧下限閾値以下となった場合に前記第1電磁弁を開放状態へ切り換える二次圧設定制御を実行する制御装置と、
前記ガス通流配管のうち前記第1電磁弁が設けられる電磁弁配設配管部位に、並列状態で設けられる大気圧対応配管とを備えると共に、
前記大気圧対応配管を開閉する第2電磁弁を前記第1電磁弁とは別に備え、
前記制御装置は、前記第1電磁弁の周囲の大気圧の変化状態である大気圧変化状態が予め定められた上昇速度以上の上昇傾向にあるか否かを判定する大気圧変化状態判定制御と、前記大気圧変化状態判定制御にて前記大気圧変化状態が前記上昇傾向にあると判定された場合に前記第2電磁弁を前記閉止状態から前記開放状態へ移行させる大気圧対応開放制御との一連の制御を、前記二次圧設定制御と並行して実行する点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、ガス通流配管のうち第1電磁弁が設けられる電磁弁配設配管部位に、並列状態で設けられる大気圧対応配管と、大気圧対応配管に第1電磁弁とは別に設けられる第2電磁弁とを備える構成において、制御装置が、第1電磁弁の周囲の大気圧の変化状態である大気圧変化状態が予め定められた上昇速度以上の上昇傾向にあるか否かを判定する大気圧変化状態判定制御と、大気圧変化状態判定制御にて大気圧変化状態が上昇傾向にあると判定された場合に第2電磁弁を閉止状態から開放状態へ移行させる大気圧対応開放制御との一連の制御を、二次圧設定制御とを並行して実行する。
これにより、二次圧設定制御にて、二次圧を二次圧下限閾値以上且つ二次圧上限閾以下に制御しているときに、大気圧が上昇傾向となった場合、第2電磁弁を閉止状態から開放状態へ移行させる大気圧対応開放制御を実行するから、大気圧上昇が発生して、二次圧のゲージ圧が低下するような場合であっても、当該大気圧上昇の影響を、第2電磁弁を介したガスの二次側への流入により良好に抑制できる。
ちなみに、第1電磁弁の周囲の大気圧は、第1電磁弁の二次側のガス通流配管の周囲の大気圧も含むものであるとする。
以上の構成により、二次側の圧力を電磁弁により制御する構成において、大気圧上昇の影響を抑制した状態で、二次圧を制御可能な二次圧制御機構を実現できる。
【0009】
二次圧制御機構の更なる特徴構成は、前記制御装置は、
前記大気圧変化状態判定制御において前記大気圧変化状態が前記上昇傾向にあると判定された場合に、前記上昇傾向にあると判定された時点を開始時点とした予め定められた圧力差導出時間幅における大気圧の圧力降下をキャンセルするガス容積をボイル則に基づいて計算し、
前記大気圧対応開放制御にて前記第2電磁弁を前記閉止状態から前記開放状態へ移行させた時点から、導出された前記ガス容積にガスを充填する大気圧対応時間が経過した後に、前記第2電磁弁を前記開放状態から前記閉止状態へ移行させる大気圧対応閉止制御を実行する点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、第1電磁弁の二次側の配管において、大気圧の上昇に伴う二次圧の低下をキャンセルするガス容積にガスを充填する大気圧対応時間だけ第2電磁弁を開放することで、大気圧の上昇傾向の実態に則した状態で、精度良く大気圧の影響をキャンセルすることができる。
【0011】
二次圧制御機構の更なる特徴構成は、前記制御装置は、
前記大気圧対応配管を複数備えると共に、夫々の前記大気圧対応配管に前記第2電磁弁を備え、
前記上昇傾向が大きいほど、前記大気圧対応開放制御にて前記閉止状態から前記開放状態へ移行する前記第2電磁弁の数を増加させる第2電磁弁数増加制御を実行する点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、大気圧の上昇傾向が大きい場合でも、第2電磁弁増加制御により、大気圧の上昇傾向が大きいほど、大気圧対応開放制御にて閉止状態から開放状態へ移行する第2電磁弁の数を増加させることで、大気圧の上昇傾向が大きい場合でも、当該大気圧の上昇に伴う二次圧の低下を良好に抑制できる。
【0013】
二次圧制御機構の更なる特徴構成は、前記制御装置は、
前記二次圧計測部にて計測される前記二次圧が、前記二次圧下限閾値を下回る場合に、前記第2電磁弁数増加制御を実行する点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、例えば、大気圧の上昇傾向が大きい場合であって、二次圧が二次圧下限閾値を下回り、二次側において適切なガス供給ができなくなる虞がある場合に、第2電磁弁数増加制御を実行することで、大気圧の上昇の影響により、二次圧が低下し過ぎることを、より一層効果的に防止できる。
【0015】
これまで説明してきた二次圧制御機構は、前記第1電磁弁及び前記第2電磁弁として、前記二次圧を0kPaを超え1.0kPa以下に制御する小型電磁弁が設けられるガス配管網であって、管内圧を微圧で制御するようなガス配管網において、大気圧変化の影響を無視できないガス配管網に対して、これまで説明してきた作用効果を良好に発揮できる。
【0016】
二次圧制御機構の更なる特徴構成は、前記制御装置は、
前記ガス通流配管の内部の温度を計測可能なガス温度センサを備え、
前記制御装置は、前記ガス温度センサに計測される温度に基づいて、ガスの温度変化の影響を補正する補正制御を実行可能に構成されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、ガス温度センサに計測される温度に基づいて、ボイルシャルル則により外乱の影響をキャンセルする補正を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る二次圧制御機構の概略構成図である。
図2】大気圧が上昇傾向にある場合に、二次圧設定制御のみを実行したときの二次圧(ゲージ圧)の変化を示すグラフ図である。
図3】大気圧が上昇傾向にある場合に、二次圧設定制御に加えて大気圧変化状態判定制御及び大気圧対応開放制御を実行したときの二次圧(ゲージ圧)の変化を示すグラフ図である。
図4】二次圧設定制御に係る制御フロー図である。
図5】大気圧変化状態判定制御及び大気圧対応開放制御に係る制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る二次圧制御機構は、二次側の圧力を電磁弁により制御する構成において、大気圧上昇の影響を抑制した状態で、二次圧を制御できるものに関する。
以下、図1~5に基づいて、実施形態に係る二次圧制御機構について説明する。
【0020】
当該実施形態に係る二次圧制御機構100は、図1に示すように、ガス(例えば、都市ガス13A)を通流するガス通流配管P1を開閉する第1電磁弁V1(弁体の一例)の開閉状態を制御して第1電磁弁V1の二次側の圧力である二次圧(ゲージ圧)を制御するものである。
当該二次圧制御機構100は、第1電磁弁V1の二次側の二次圧(ゲージ圧)を計測する圧力センサP(二次圧計測部の一例)と、当該圧力センサPにて計測された二次圧が、予め定められた二次圧上限閾値(例えば、0.4kPa)以上となった場合に第1電磁弁V1を閉止状態へ切り換え、予め定められた二次圧下限閾値(例えば、0.2kPa)以下となった場合に第1電磁弁V1を開放状態へ切り換える二次圧設定制御を実行する制御装置Sを備えている。つまり、当該二次圧制御機構100の第1電磁弁V1は、二次圧が比較的低いガス通流配管P1に対して設けられる小型の電磁弁である。
尚、制御装置Sは、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現されるものである。
【0021】
さて、当該実施形態に係る二次圧制御機構100では、第1電磁弁V1が閉止した後に大気圧が上昇するような場合であっても、二次圧が低下し過ぎることを抑制するべく、ガス通流配管P1のうち第1電磁弁V1が設けられる電磁弁配設配管部位P1aに、並列状態で設けられる大気圧対応配管P2と、大気圧対応配管P2に第1電磁弁V1とは別に設けられる第2電磁弁V2とを備える。ここで、第1電磁弁V1及び第2電磁弁V2は、二次圧を0kPaを超え1.0kPa以下に制御する小型電磁弁である。ただし、第2電磁弁V2は、二次圧の0kPaを超え1.0kPa以下への制御に関与せず、大気圧の影響をキャンセルするためだけの制御を行う場合もある。
尚、当該実施形態においては、大気圧対応配管P2は、第1大気圧対応配管P2aと第2大気圧対応配管P2bとが並列に設けられて構成され、第1大気圧対応配管P2aには第2電磁弁V2aが設けられ、第2大気圧対応配管P2bには第2電磁弁V2bが設けられる。
【0022】
更に、制御装置Sとして、上述した二次圧設定制御を実行する二次圧設定部S1と、第1電磁弁V1の周囲の大気圧の変化状態である大気圧変化状態が予め定められた上昇速度以上の上昇傾向にあるか否かを判定する大気圧変化状態判定部S2と、大気圧変化状態判定部S2にて大気圧変化状態が上昇傾向にあると判定された場合に第2電磁弁V2を閉止状態から開放状態へ移行させる大気圧対応開放部S3が設けられている。
【0023】
大気圧変化状態判定部S2による大気圧変化状態判定制御について説明を追加すると、当該実施形態に係る大気圧変化状態判定部S2は、例えば、外部の気象サーバKSからインターネット回線等の通信回線Nを介して、二次圧制御機構100が設置される地域での大気圧の現時点(図3ではT1)での実測値(又は実測値)を逐次受信して記憶部Mに記憶し、当該値から、現時点T1を含む所定期間(例えば、現時点を終点とする10分程度の時間)での大気圧が予め定められた変化量(例えば、0.05kPa)以上の上昇傾向にあるか否かを判定する。
【0024】
ここで、例えば、従来の整圧装置の如く、上述の二次圧設定制御のみが実行される場合について説明する。大気圧及び二次圧(ゲージ圧)が、図2(a)(b)に示すように、変化する場合、時刻T1までは、大気圧の変動がほぼないため、制御装置Sとしての二次圧設定部S1は、二次圧設定制御により、二次圧が二次圧下限閾値Lyとなった場合(図2で時刻Ta)に第1電磁弁V1を開放状態へ切り換え、その後、二次圧が二次圧上限閾値Lxとなった場合(図2で時刻Tb)に第1電磁弁V1を閉止状態へ切り換える。時刻Tbの後、第1電磁弁V1は、閉止状態であるため、二次圧は低下傾向となる。更に、時刻Tbの後、時刻T1以降にて大気圧が上昇傾向に転じると、二次圧の低下傾向が大きくなる。その後、時刻T2にて二次圧が二次圧下限閾値Lyとなると、二次圧設定部S1は、第1電磁弁V1を開放状態へ移行させるのであるが、大気圧の上昇による二次圧(ゲージ圧)低下の影響が大きいため、第1電磁弁V1が開放状態であっても、二次圧が二次圧下限閾値Ly未満の状態が継続される場合がある。
【0025】
一方、当該実施形態に係る二次圧制御機構100の如く、大気圧変化状態判定部S2による大気圧変化状態判定制御と、大気圧対応開放部S3による大気圧対応開放制御との一連の制御を実行しながら、二次圧設定部S1による二次圧設定制御を並行して実行する場合、二次圧(ゲージ圧)の変化は、以下のようになる。
図3に示すように、大気圧及び二次圧(ゲージ圧)が変化する場合、時刻T1までは、大気圧の変動がほぼないため、制御装置Sとしての二次圧設定部S1は、二次圧設定制御により、二次圧が二次圧下限閾値Lyとなった場合(図3で時刻Ta)に第1電磁弁V1を開放状態へ切り換え、その後、二次圧が二次圧上限閾値Lxとなった場合(図3で時刻Tb)に第1電磁弁V1を閉止状態へ切り換える。時刻Tbの後、第1電磁弁V1は、閉止状態であるため、二次圧は低下傾向となり、更に、時刻Tbの後、時刻T1以降に大気圧が上昇傾向に転じると、二次圧の低下傾向はより急峻になる。
しかしながら、当該実施形態に係る二次圧制御機構100では、時刻T1において、大気圧変化状態判定部S2が大気圧が上昇傾向にあると判定し、時刻T1にて大気圧対応開放部S3にて第2電磁弁V2aが閉止状態から開放状態へ移行されることにより、二次圧(ゲージ圧)の低下傾向を緩慢にできる。
このように、二次圧の低下傾向を緩慢にしている状態で、時刻T4にて、二次圧が二次圧下限閾値Lyとなった場合、二次圧設定部S1は、第1電磁弁V1を開放状態へ移行させることで、緩慢となった二次圧の低下傾向を吸収して、二次圧を上昇傾向へ導く、換言すると二次圧下限閾値以上且つ二次圧上限閾値以下に制御することが可能となる。
【0026】
尚、当該実施形態に係る二次圧制御機構100には、二次圧の上昇傾向が大きいほど、大気圧対応開放制御にて閉止状態から開放状態へ移行する第2電磁弁V2の数を増加させる第2電磁弁数増加制御を実行する第2電磁弁数増加部S6が、制御装置Sに設けられている。
上記図3に示すグラフ図に係る制御では、時刻T1にて第2電磁弁V2aを閉止状態から開放状態へ移行させた後、当該第2電磁弁数増加部S6が時刻T3において第2電磁弁V2bをも閉止状態から開放状態へ移行させ、二次圧の低下傾向をより一層緩慢にしている。
【0027】
さて、上述の如く、開放状態に移行された第2電磁弁V2は、以下の如く、大気圧対応時間導出制御及び大気圧対応閉止制御を実行することにより、開放状態から閉止状態へ移行する。
【0028】
制御装置Sは、大気圧変化状態判定制御において大気圧変化状態が上昇傾向にあると判定された場合に、上昇傾向にあると判定された時点を開始時点とした予め定められた圧力差導出時間幅(例えば、1分以上30分以下程度の時間)における大気圧の圧力降下をキャンセルするガス容積をボイル則に基づいて計算し、大気圧対応開放制御にて第2電磁弁V2を閉止状態から開放状態へ移行させた時点から、導出されたガス容積にガスを充填する大気圧対応時間が経過した後に、第2電磁弁V2を開放状態から閉止状態へ移行させる大気圧対応閉止制御を実行する。
【0029】
更に、説明を加えると、例えば、制御装置Sとしての大気圧対応時間導出部S4は、大気圧変化状態判定制御において大気圧変化状態が上昇傾向にあると判定された場合に、上昇傾向にあると判定された時点を開始時点とした予め定められた圧力差導出時間幅における開始時点の大気圧と終了時点の大気圧との差である圧力差と、第1電磁弁V1の二次側の配管容積(図1でPVで示す配管容積)との乗算値である第1乗算値を、第2電磁弁V2が開放状態にあるときに第2電磁弁V2を通過する瞬時流量と二次圧との乗算値である第2乗算値で除算して大気圧対応時間を導出する大気圧対応時間導出制御を実行する。
尚、図示は省略するが、上述の瞬時流量は、超音波メータ等の瞬時流量計により測定することができる。
その後、制御装置Sとしての大気圧対応閉止部S5が、大気圧対応開放制御にて第2電磁弁V2を閉止状態から開放状態へ移行させた時点から、大気圧対応時間が経過した後に、第2電磁弁V2を開放状態から閉止状態へ移行させる大気圧対応閉止制御を実行する。
【0030】
尚、上記圧力差導出時間幅の開始時点及び終了時点の大気圧は、気象サーバKSから受信される実測値又は予測値を好適に用いることができる。また、第2電磁弁V2を通過するガスの瞬時流量は、一次圧と二次圧との圧力差毎に、予め測定され記憶部Mに記憶される。
【0031】
尚、図示は省略するが、当該実施形態に係る二次圧制御機構100は、ガス通流配管P1の内部の温度を計測可能なガス温度センサを備え、制御装置Sは、ガス温度センサに計測される温度に基づいて、ガスの温度変化の影響を補正する補正制御を実行可能に構成されている。
【0032】
さて、これまで、説明してきたように、制御装置Sは、大気圧設定制御と並行して、大気圧変化状態判定制御、大気圧対応開放制御(第2電磁弁数増加制御)、大気圧対応時間導出制御及び大気圧対応閉止制御の一連の制御を実行する。
以下、大気圧設定制御を図4の制御フローに基づいて説明すると共に、大気圧変化状態判定制御、大気圧対応開放制御(第2電磁弁数増加制御)、大気圧対応時間導出制御及び大気圧対応閉止制御の一連の制御を、図5の制御フローに基づいて説明する。
【0033】
図4に示すように、制御装置Sとしての二次圧設定部S1は、二次圧を所定の設定圧にするべく、まず、第1電磁弁V1を開放状態とすると共に第2電磁弁V2を閉止状態とする(#11)。
二次圧設定部S1は、圧力センサPにて測定される二次圧(ゲージ圧)が所定の二次圧上限閾値未満である場合(#12でNO)、第1電磁弁V1の開放状態を維持しながら、所定時間毎に#12の制御を実行し、二次圧が所定の二次圧上限閾値以上となった場合(#12でYES)、第1電磁弁V1を開放状態から閉止状態へ移行する(#13)。
次に、二次圧設定部S1は、二次圧が所定の二次圧下限閾値以上である場合(#14でNO)、第1電磁弁V1の閉止状態を維持しながら、所定時間毎に#14の制御を実行し、二次圧が所定の二次圧下限閾値以下となった場合(#14でYES)、第1電磁弁V1を閉止状態から開放状態へ移行する(#15)。
二次圧設定部S1は、以上の#11~#15までのステップを連続して実行し続ける。
【0034】
制御装置Sとしての大気圧変化状態判定部S2、大気圧対応開放部S3、第2電磁弁数増加部S6、大気圧対応時間導出部S4及び大気圧対応閉止部S5は、上述の図4に示す大気圧設定制御と並行して以下の制御を実行する。
図4に示すように、大気圧変化状態判定部S2は、現時点を含む所定期間での大気圧が予め定められた上昇速度以上の上昇傾向にあるか否かを判定し(#21)、大気圧が上昇傾向にない場合(#21でNO)、大気圧対応開放部S3は所定時間毎に#21のステップを実行し、大気圧が上昇傾向にある場合(#21でYES)、大気圧対応開放部S3は上昇傾向に従って第2電磁弁V2を閉止状態から開放状態へ移行する(#22)。
ここで、制御フロー図への図示は省略するが、制御装置Sとしての第2電磁弁数増加部S6は、大気圧の上昇傾向が大きいほど、閉止状態から開放状態へ移行する第2電磁弁V2の数を増加する。即ち、制御装置Sは、大気圧の上昇による二次圧(ゲージ圧)の上昇をキャンセルする形態で、第2電磁弁V2の数(及び開度)を制御する。
次に、大気圧対応時間導出部S4は、第2電磁弁V2を開放状態とする時間としての大気圧対応時間を、大気圧の変化度合、及び第1電磁弁V1の二次側の配管容積PV(図1に図示)から導出し(#23)、大気圧対応閉止部S5が、導出された大気圧対応時間の間、第2電磁弁V2を開放状態とした後、閉止状態へ移行させる(#24)。
制御装置Sは、上記#21~#24のステップを連続して実行し続ける。
【0035】
ちなみに、これまで説明してきた二次圧制御機構は、例えば、第1電磁弁V1の二次側でのガスの使用量が一定未満の場合(例えば、夜間等で零に近い場合)には、より良好に機能する。
【0036】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、大気圧対応配管P2を複数(上記実施形態では2つ)と、複数の大気圧対応配管P2の夫々に第2電磁弁V2を設ける構成を示した。
しかしながら、単一の大気圧対応配管P2に対し、単一の第2電磁弁V2を備える構成であっても構わない。
また、大気圧対応配管P2は3つ以上の複数設ける構成であっても構わないが、この場合であっても、夫々の大気圧対応配管P2の夫々には、第2電磁弁V2を備える構成を採用する。
【0037】
(2)上記実施形態では、大気圧変化状態判定部S2は、気象サーバKSから受信した大気圧の実測値又は予測値に基づいて、大気圧変化状態判定制御を実行した。
他の構成として、大気圧変化状態判定部S2は、第1電磁弁V1の近傍に設けられ大気圧を計測可能な圧力センサ(図示せず)にて計測される大気圧に基づいて、大気圧変化状態判定制御を実行しても構わない。
【0038】
(3)上記実施形態で説明した第2電磁弁数増加制御は、圧力センサPにて計測される二次圧が、二次圧下限閾値を下回る場合にも実行しても構わない。
【0039】
(4)上記実施形態では、大気圧変化状態判定部S2は、気象サーバKSから受信した大気圧の現時点での実測値(又は予測値)に基づいて、現時点での大気圧が上昇傾向にあるか否かを判定した。
しかしながら、大気圧変化状態判定部は、例えば、外部の気象サーバKSからインターネット回線等の通信回線Nを介して、二次圧制御機構100が設置される地域での気圧分布を含む気象情報や気温等から予測される大気圧の予測値を逐次受信して記憶部Mに記憶し、当該値から、現時点より所定時間後の未来時点を含む所定期間(例えば、10分程度の時間)での大気圧が予め定められた変化量(例えば、0.05kPa)以上の上昇傾向にあるか否かを判定する。
【0040】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の二次圧制御機構は、二次側の圧力を電磁弁により制御する構成において、大気圧上昇の影響を抑制した状態で、二次圧を制御可能な二次圧制御機構として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
100 :二次圧制御機構
P1 :ガス通流配管
P1a :電磁弁配設配管部位
P2 :大気圧対応配管
PV :配管容積
Lx :二次圧上限閾値
Ly :二次圧下限閾値
S :制御装置
V1 :第1電磁弁
V2 :第2電磁弁
図1
図2
図3
図4
図5