(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118911
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】二次圧制御機構
(51)【国際特許分類】
G05D 16/20 20060101AFI20240826BHJP
G05D 16/04 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
G05D16/20 C
G05D16/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025492
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高野 雅之
【テーマコード(参考)】
5H316
【Fターム(参考)】
5H316BB05
5H316CC03
5H316DD01
5H316DD06
5H316EE04
5H316EE08
5H316ES01
5H316FF12
5H316GG03
5H316HH12
5H316JJ13
5H316KK02
(57)【要約】
【課題】弁体が閉止した後に大気圧が低下するような場合であっても、二次圧の異常昇圧の発生を抑制できる二次圧制御機構を提供する。
【解決手段】二次圧計測部Pにて計測された二次圧が、予め定められた二次圧上限閾値以上となった場合に電磁弁Vを閉止状態へ切り換え、予め定められた二次圧下限閾値以下となった場合に電磁弁Vを開放状態へ切り換える二次圧設定制御を実行する制御装置Sとを備え、制御装置Sは、現時点より後の時点であって、予め定められた予測期間先の予測時点を含む所定期間において、電磁弁Vの周囲の大気圧の変化状態としての大気圧変化状態が、低下傾向にあるか否かを予測する大気圧変化状態予測制御と、大気圧変化状態予測制御にて大気圧変化状態が低下傾向にあると予測された場合に現時点での二次圧上限閾値を低い側へ変更する二次圧上限閾値低下制御との一連の制御を、二次圧設定制御と並行して実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを通流するガス通流配管を開閉する弁体の開閉状態を制御して前記弁体の二次側の圧力である二次圧を制御する二次圧制御機構であって、
前記弁体としての電磁弁と、
前記二次圧をゲージ圧で計測する二次圧計測部と、
前記二次圧計測部にて計測された前記二次圧が、予め定められた二次圧上限閾値以上となった場合に前記電磁弁を閉止状態へ切り換え、予め定められた二次圧下限閾値以下となった場合に前記電磁弁を開放状態へ切り換える二次圧設定制御を実行する制御装置とを備え、
前記制御装置は、現時点より後の時点であって、予め定められた予測期間先の予測時点を含む所定期間において、前記電磁弁の周囲の大気圧の変化状態としての大気圧変化状態が、低下傾向にあるか否かを予測する大気圧変化状態予測制御と、前記大気圧変化状態予測制御にて前記大気圧変化状態が前記低下傾向にあると予測された場合に現時点での前記二次圧上限閾値を低い側へ変更する二次圧上限閾値低下制御との一連の制御を、前記二次圧設定制御と並行して実行する二次圧制御機構。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記大気圧変化状態予測制御にて予測される前記低下傾向が大きいほど、前記二次圧上限閾値の低い側への変化量を増加する形態で、前記二次圧上限閾値低下制御を実行する請求項1に記載の二次圧制御機構。
【請求項3】
前記制御装置は、
予め定められた更新時間毎に、前記大気圧変化状態予測制御を実行し、
前記更新時間毎に予測された前記低下傾向に基づいて、前記二次圧上限閾値低下制御を実行する請求項1又は2に記載の二次圧制御機構。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記電磁弁の周囲の現時点までの大気圧の実測値に基づいて予測される前記予測時点を含む所定期間での大気圧の予測値、及び外部の気象サーバにて予測される前記電磁弁の周囲の大気圧の予測値の何れか一方に基づいて、前記大気圧変化状態予測制御を実行する請求項1又は2に記載の二次圧制御機構。
【請求項5】
前記第1電磁弁及び前記第2電磁弁は、前記二次圧を0kPaを超え1.0kPa以下に制御する小型電磁弁である請求項1又は2に記載の二次圧制御機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを通流するガス通流配管を開閉する弁体の開閉状態を制御して前記弁体の二次側の圧力である二次圧を制御する二次圧制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ガス(例えば、都市ガス13A)をガス使用機器が設けられる住戸等へ供給するガス通流配管には、ガス供給圧力を目標圧力に制御するべく、整圧装置としてのガバナが設けられている(特許文献1を参照)。
当該整圧装置では、例えば、ダイヤフラムが設けられる整圧室へ整圧装置の二次側の圧力である二次圧が伝達され、当該二次圧によるダイヤフラムの変位により、ガス通流配管に設けられ且つダイヤフラムと連接される主弁体の開度が調整される形態で、二次側の圧力が調整可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁弁の閉止状態のガス通流配管の内部のゲージ圧力は、多かれ少なかれ大気圧変化の影響を直接的に受ける。ここで、特に、導管網の管内圧力を微圧で制御する場合、大気圧変化の影響を無視できないため対応に注意が必要である。
例えば、ゲージ圧に基づいて二次圧の制御を行うことで、大気圧変化の影響はキャンセルできる。しかしながら、整圧器や電磁弁のように弁体の開閉により圧力制御を行う構成において、弁体が閉止した後に大気圧が低下するような場合、大気圧の低下による二次圧の異常昇圧には対応できないという課題があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、弁体が閉止した後に大気圧が低下するような場合であっても、二次圧の異常昇圧の発生を抑制できる二次圧制御機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための二次圧制御機構は、
ガスを通流するガス通流配管を開閉する弁体の開閉状態を制御して前記弁体の二次側の圧力である二次圧を制御する二次圧制御機構であって、その特徴構成は、
前記弁体としての電磁弁と、
前記二次圧をゲージ圧で計測する二次圧計測部と、
前記二次圧計測部にて計測された前記二次圧が、予め定められた二次圧上限閾値以上となった場合に前記電磁弁を閉止状態へ切り換え、予め定められた二次圧下限閾値以下となった場合に前記電磁弁を開放状態へ切り換える二次圧設定制御を実行する制御装置とを備え、
前記制御装置は、現時点より後の時点であって、予め定められた予測期間先の予測時点を含む所定期間において、前記電磁弁の周囲の大気圧の変化状態としての大気圧変化状態が、低下傾向にあるか否かを予測する大気圧変化状態予測制御と、前記大気圧変化状態予測制御にて前記大気圧変化状態が前記低下傾向にあると予測された場合に現時点での前記二次圧上限閾値を低い側へ変更する二次圧上限閾値低下制御との一連の制御を、前記二次圧設定制御と並行して実行する点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、制御装置は、大気圧変化状態予測制御により、現時点より後の時点であって、予め定められた予測期間先の予測時点を含む所定期間において、電磁弁の周囲の大気圧の変化状態としての大気圧変化状態が、低下傾向にあるか否かを予測し、大気圧変化状態予測制御にて大気圧変化状態が低下傾向にあると予測された場合に、二次圧上限閾値低下制御により二次圧上限閾値を低い側へ変更するので、現時点以降に二次圧のゲージ圧が、低い側へ変更される前の二次圧上限閾値に到達する前の時点、換言すれば、新たに低い側に設定された二次圧上限閾値に到達した時点で、電磁弁を閉止状態へ移行できる。これにより、大気圧の低下に伴う二次圧(ゲージ圧)の昇圧に先立って、二次圧が高くなり過ぎないよう予め制御できる。
尚、上記特徴構成における「大気圧変化状態が低下傾向にある」とは、現時点での大気圧に関わらず、大気圧が減少している場合に加え、大気圧は増加しているが大気圧の変化速度が減少している場合も含むものとする。
ちなみに、電磁弁の周囲の大気圧は、電磁弁の二次側のガス通流配管の周囲の大気圧も含むものであるとする。
以上より、弁体が閉止した後に大気圧が低下するような場合であっても、二次圧の異常昇圧の発生を抑制できる二次圧制御機構を実現できる。
【0008】
二次圧制御機構の更なる特徴構成は、前記制御装置は、
前記大気圧変化状態予測制御にて予測される前記低下傾向が大きいほど、前記二次圧上限閾値の低い側への変化量を増加する形態で、前記二次圧上限閾値低下制御を実行する点にある。
【0009】
さて、予測時点において、大気圧変化状態の低下傾向が大きいほど、現時点以降(特に、予測時点以降)にゲージ圧としての二次圧が高くなり、異常昇圧する可能性が高くなる。
上記特徴構成によれば、大気圧変化状態予測制御にて予測される低下傾向が大きいほど、二次圧上限閾値の低い側への変化量を増加する形態で、二次圧上限閾値低下制御を実行することで、大気圧の低下に伴うゲージ圧としての二次圧の昇圧速度が速いと予測されるほど、電磁弁を閉止する閾値としての二次圧上限閾値を低くして、二次圧が二次圧上限閾値を超える異常昇圧の発生を、より効果的に抑制できる。
尚、ここで、「大気圧変化状態の低下傾向が大きい」とは、大気圧の減少幅が大きい場合に加え、大気圧は増加しているが大気圧の変化速度の減少幅が大きい場合も含むものとする。
【0010】
二次圧制御機構の更なる特徴構成は、前記制御装置は、
予め定められた更新時間毎に、前記大気圧変化状態予測制御を実行し、
前記更新時間毎に予測された前記低下傾向に基づいて、前記二次圧上限閾値低下制御を実行する点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、更新時間毎に予測された低下傾向に基づいて、二次圧上限閾値低下制御を実行するから、刻一刻と変化する大気圧変化状態に逐次対応する形で、二次圧上限閾値を調整できる。
【0012】
二次圧制御機構の更なる特徴構成は、前記制御装置は、
前記電磁弁の周囲の現時点までの大気圧の実測値に基づいて予測される前記予測時点を含む所定期間での大気圧の予測値、及び外部の気象サーバにて予測される前記電磁弁の周囲の大気圧の予測値の何れか一方に基づいて、前記大気圧変化状態予測制御を実行する点にある。
【0013】
上記特徴構成の如く、大気圧変化状態予測制御を、電磁弁の周囲の大気圧の実測値に基づいて予測される予測時点での大気圧の予測値により実行することで、電磁弁が位置する箇所の大気圧の実測値に基づいて、大気圧変化状態を予測するので、電磁弁の周囲の周囲環境をより適切に反映して大気圧変化状態を予測できる。
一方、大気圧変化状態予測制御を、外部の気象サーバにて予測される電磁弁の周囲の大気圧の予測値に基づいて実行することで、精度の高い予測値に基づいて、大気圧変化状態を予測できる。
【0014】
これまで説明してきた二次圧制御機構としては、前記二次圧上限閾値低下制御にて前記二次圧上限閾値を変更していない場合、前記二次圧を0kPaを超え1.0kPa以下に制御する小型電磁弁を、前記電磁弁として設けるガス配管網であって、管内圧を微圧で制御するようなガス配管網、換言すると、大気圧変化の影響を無視できないガス配管網に対して、これまで説明してきた作用効果を良好に発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る二次圧制御機構の概略構成図である。
【
図2】大気圧が低下傾向にある場合に、二次圧設定制御のみを実行したときの二次圧(ゲージ圧)の変化を示すグラフ図である。
【
図3】大気圧が低下傾向にある場合に、二次圧設定制御に加えて、大気圧変化状態予測制御及び二次圧上限閾値低下制御を実行したときの二次圧(ゲージ圧)の変化を示すグラフ図である。
【
図5】大気圧変化状態予測制御及び二次圧上限閾値低下制御に係る制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る二次圧制御機構は、ガス通流配管の二次圧を制御するための電磁弁(弁体の一例)が閉止した後に大気圧が低下するような場合であっても、二次圧(ゲージ圧)の異常昇圧の発生を抑制できる二次圧制御機構100に関する。
以下、
図1~5に基づいて、実施形態に係る二次圧制御機構について説明する。
【0017】
当該実施形態に係る二次圧制御機構100は、
図1に示すように、ガス(例えば、都市ガス13A)を通流するガス通流配管P1を開閉する電磁弁V(弁体の一例)の開閉状態を制御して電磁弁Vの二次側の圧力である二次圧(ゲージ圧)を制御するものである。
当該二次圧制御機構100は、電磁弁Vの二次側の二次圧(ゲージ圧)を計測する圧力センサP(二次圧計測部の一例)と、当該圧力センサPにて計測された二次圧が、予め定められた二次圧上限閾値(二次圧上限閾値が基準二次圧上限閾値である場合:例えば、0.4kPa)以上となった場合に電磁弁Vを閉止状態へ切り換え、予め定められた二次圧下限閾値(例えば、0.2kPa)以下となった場合に電磁弁Vを開放状態へ切り換える二次圧設定制御を実行する制御装置Sを備えている。つまり、当該二次圧制御機構100の電磁弁Vは、二次圧が比較的低いガス通流配管P1に対して設けられる小型の電磁弁である。ここで、制御装置Sは、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現されるものである。
【0018】
尚、当該実施形態に係る制御装置Sは、二次圧上限閾値を変更制御(後述する二次圧上限閾値低下制御を実行)するものであるが、上述した基準二次圧上限閾値は、二次圧上限閾値の変更制御の基準となる閾値であり、例えば、二次圧上限閾値低下制御が実行される前に、設定される二次圧上限閾値である。
【0019】
さて、当該実施形態に係る二次圧制御機構100は、特に、電磁弁Vが閉止状態となった後に大気圧が低下するような場合であっても、二次圧(ゲージ圧)が基準二次圧上限閾値を超えるような異常昇圧が発生することを抑制するべく、制御装置Sとして、上述した二次圧設定制御を実行する二次圧設定部S1と、現時点より後の時点であって、予め定められた予測期間先の予測時点を含む所定期間(例えば、10分程度の時間)において、電磁弁Vの周囲の大気圧の変化状態としての大気圧変化状態が、低下傾向にあるか否かを予測する大気圧変化状態予測制御を実行する大気圧変化状態予測部S2と、大気圧変化状態予測部S2にて大気圧変化状態が低下傾向にあると予測された場合に現時点での二次圧上限閾値を低い側へ変更する二次圧上限閾値低下制御を実行する二次圧上限閾値低下部S3が設けられている。
制御装置Sは、大気圧変化状態予測制御及び二次圧上限閾値低下制御の一連の制御を、二次圧設定制御と並行して実行可能に構成されている。
ここで、電磁弁Vは、二次圧上限閾値低下制御にて二次圧上限閾値を変更していない場合、二次圧を0kPaを超え1.0kPa以下制御する小型電磁弁である。ただし、第2電磁弁V2は、二次圧の0kPaを超え1.0kPa以下への制御に関与せず、大気圧の影響をキャンセルするためだけの制御を行う場合もある。
【0020】
ここで、大気圧変化状態予測部S2による大気圧変化状態予測制御について説明を追加する。制御装置Sは、外部の気象サーバKSからインターネット回線等の通信回線Nを介して、二次圧制御機構100が設置される地域(電磁弁Vの周囲の一例)での気圧分布を含む気象情報や気温等から予測される大気圧の現時点より後の予測値を逐次受信して記憶部Mに記憶する。
大気圧変化状態予測部S2は、記憶部Mに記憶される予測値に基づいて、現時点より予測期間先の予測時点を含む所定期間における大気圧変化状態が低下傾向にあるか否かを予測する。例えば、大気圧変化状態予測部S2は、予測時点を終点とする所定期間において大気圧が減少している場合(例えば、10分程度の時間で0.05kPa減少している場合)、予測時点を含む所定期間における大気圧変化状態が低下傾向にあると予測する。
【0021】
ここで、例えば、従来の整圧装置の如く、上述の二次圧設定制御のみが実行される場合について説明する。
大気圧及び二次圧(ゲージ圧)が、
図2(a)(b)に示すように、変化する場合、時刻t1までは、大気圧の変動がほぼないため、制御装置Sとしての二次圧設定部S1は、二次圧設定制御により、二次圧が二次圧下限閾値Lyとなった場合(
図2で、時刻Ta)に電磁弁Vを開放状態へ切り換える。時刻Taの後、電磁弁Vは、開放状態であるため、二次圧は上昇傾向となる。更に、時刻Taの後、時刻T1以降にて大気圧が低下傾向に転じると、二次圧の上昇傾向が大きくなる。その後、二次圧が二次圧上限閾値Lxとなると(
図2で、時刻Tb)、二次圧設定部S1は、電磁弁Vを閉止状態へ移行させるのであるが、大気圧の低下傾向に伴う二次圧(ゲージ圧)上昇の影響が大きいため、電磁弁Vが閉止状態であっても、二次圧が二次圧上限閾値Lxを超える状態が継続される場合がある。
【0022】
一方、当該実施形態に係る二次圧制御機構100の如く、大気圧変化状態予測部S2による大気圧変化状態予測制御と、二次圧上限閾値低下部S3による二次圧上限閾値低下制御との一連の制御を実行しながら、二次圧設定部S1による二次圧設定制御を並行して実行する場合、二次圧(ゲージ圧)の変化は、以下のようになる。
大気圧及び二次圧(ゲージ圧)が、
図3(a)(b)に示すように変化するときで、大気圧変化状態予測部S2が、現時点T0で、予測期間ΔT後の予測時点T1を終点とする所定期間において大気圧変化状態が低下傾向にあると予測した場合、二次圧上限閾値低下部S3は、当該予測に伴って、現時点での二次圧上限閾値である基準二次圧上限閾値Lxを、所定の変化量ΔPだけ低い二次圧上限閾値Lzへ変更する。
ここで、現時点T0以前の時刻Ta以降、電磁弁Vは開放状態にあるため、現時点T0以降も二次圧(ゲージ圧)は上昇傾向となると予測され、予測時点T1以降で大気圧の低下傾向が継続するときには、二次圧(ゲージ圧)の上昇傾向はさらに強くなると予測される。
ただし、二次圧設定部S1は、予測時点T1以降に、二次圧が二次圧上限閾値低下部S3により先に設定された二次圧上限閾値Lzとなる時刻Tcにて、電磁弁Vを閉止状態へ移行するため、当該時刻Tc以降の二次圧(ゲージ圧)の上昇傾向を緩慢にできる。これにより、二次圧が、基準二次圧上限閾値Lxを超える異常昇圧の状態となることを、効果的に抑制できる。
【0023】
さて、これまで、説明してきたように、制御装置Sは、大気圧設定制御と並行して、大気圧変化状態予測制御及び二次圧上限閾値低下制御の一連の制御を実行する。
以下、大気圧設定制御を
図4の制御フローに基づいて説明すると共に、大気圧変化状態予測制御及び二次圧上限閾値低下制御の一連の制御を、
図5の制御フローに基づいて説明する。
【0024】
図4に示すように、制御装置Sとしての二次圧設定部S1は、二次圧を所定の設定圧にするべく、まず、電磁弁Vを開放状態とする(#11)。
二次圧設定部S1は、圧力センサPにて測定される二次圧(ゲージ圧)が所定の二次圧上限値未満である場合(#12でNO)、電磁弁Vの開放状態を維持しながら、所定時間毎に#12の制御を実行し、二次圧が所定の二次圧上限値以上となった場合(#12でYES)、電磁弁Vを開放状態から閉止状態へ移行する(#13)。
次に、二次圧設定部S1は、二次圧が所定の二次圧下限値以上である場合(#14でNO)、電磁弁Vの閉止状態を維持しながら、所定時間毎に#14の制御を実行し、二次圧が所定の二次圧下限値以下となった場合(#14でYES)、電磁弁Vを閉止状態から開放状態へ移行する(#15)。
二次圧設定部S1は、以上の#11~#15までのステップを連続して実行し続ける。
【0025】
次に、大気圧変化状態予測制御及び二次圧上限閾値低下制御の一連の制御を、
図5の制御フローに基づいて説明する。
図5に示すように、制御装置Sは、予め設定され記憶部Mに記憶される基準二次圧上限閾値を二次圧上限閾値として設定する(#21)。
大気圧変化状態予測部S2は、現時点より後の時点であって、予め定められた予測期間先の予測時点を含む所定期間において、電磁弁Vの周囲の大気圧の変化状態としての大気圧変化状態が、低下傾向にあるか否かを予測する大気圧変化状態予測制御を実行する(#22)。
【0026】
二次圧上限閾値低下部S3は、#23のステップにて、大気圧変化状態が低下傾向にあると予測された場合(#23でYES)、現時点での二次圧上限閾値を低い側へ変更する二次圧上限閾値低下制御を実行する(#24)。
ここで、二次圧上限閾値低下部S3は、大気圧変化状態予測制御にて予測される低下傾向が大きいほど、二次圧上限閾値の低い側への変化量を増加する形態で、二次圧上限閾値低下制御を実行する。
制御装置Sは、#25のステップを実行した後、所定の更新時間(例えば、例えば数分程度の時間)の待機の後、#22のステップの前へ戻る。
【0027】
一方、二次圧上限閾値低下部S3は、#23のステップにて、大気圧変化状態が低下傾向にないと予測された場合(#23でNO)、現時点での大気圧が二次圧下限閾値を超え、且つ予め定められた基準二次圧上限閾値未満である判定条件を満たすか否かを判定する(#26)。
二次圧上限閾値低下部S3は、上記判定条件を満たす場合(#26でYES)、二次圧上限閾値を基準二次圧上限閾値へリセットし(#27)、所定の更新時間待機した後(#28)、#22のステップの前へ戻る。
ここで、二次圧上限閾値低下部S3は、上記判定条件を満たさない場合(#26でNO)、現状の二次圧上限閾値を維持した状態で、所定の更新時間待機した後(#28)、#22のステップの前へ戻る。
【0028】
即ち、上記#22~28のステップを繰り返すことにより、二次圧上限閾値低下部S3は、予め定められた更新時間毎に、前記大気圧変化状態予測制御を実行し、前記更新時間毎に予測された前記低下傾向に基づいて、前記二次圧上限閾値低下制御を実行することになる。
【0029】
〔別実施形態〕
【0030】
(1)上記実施形態では、大気圧変化状態予測部S2は、気象サーバKSから受信した大気圧の予測値に基づいて、大気圧変化状態予測制御を実行した。
他の構成として、大気圧変化状態予測部S2は、電磁弁Vの周囲(近傍)に設けられ大気圧を計測可能な圧力センサ(図示せず)にて計測される現時点までの大気圧の実測値に基づいて、現時点より後の時点である予測時点を含む所定期間(例えば、予測時点を終点とする所定期間)の大気圧を予測し、予測された予測時点を含む所定期間の大気圧に基づいて、予測時点において大気圧変化状態が低下傾向にあるか否かを判定しても構わない。
【0031】
(2)上記実施形態にあっては、大気圧変化状態予測部S2は、予測時点を終点とする所定期間において大気圧が減少している場合、予測時点における大気圧変化状態が低下傾向にあると予測した。
他の構成として、大気圧変化状態予測部S2は、予測時点を終点とする所定期間において、大気圧は増加しているが大気圧の変化速度が減少している場合、予測時点における大気圧変化状態が低下傾向にあると予測しても構わない。
【0032】
(3)上記実施形態では、二次圧上限閾値低下部S3は、大気圧変化状態予測制御にて予測される低下傾向が大きいほど、二次圧上限閾値の低い側への変化量を増加する形態で、二次圧上限閾値低下制御を実行する構成例を示した。
他の構成例として、二次圧上限閾値低下部S3は、大気圧変化状態予測制御にて予測される低下傾向に多寡に関わらず、二次圧上限閾値の低い側への変化量を一定にする形態で、二次圧上限閾値低下制御を実行しても構わない。
【0033】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の二次圧制御機構は、弁体が閉止した後に大気圧が低下するような場合であっても、二次圧の異常昇圧の発生を抑制できる二次圧制御機構として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
100 :二次圧制御機構
KS :気象サーバ
Lx、Lz:二次圧上限閾値
Ly :二次圧下限閾値
P :圧力センサ
P1 :ガス通流配管
S :制御装置
S1 :二次圧設定部
S2 :大気圧変化状態予測部
S3 :二次圧上限閾値低下部
T0 :現時点
T1 :予測時点
V :電磁弁
ΔP :変化量
ΔT :予測期間