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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118912
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】整圧装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 47/02 20060101AFI20240826BHJP
   F16K 17/30 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
F16K47/02 D
F16K17/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025493
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高野 雅之
【テーマコード(参考)】
3H060
3H066
【Fターム(参考)】
3H060AA02
3H060BB04
3H060CC36
3H060DC05
3H060DD04
3H060DD17
3H060DF02
3H060EE06
3H066AA01
3H066BA33
3H066BA34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】弁体の振動に対する減衰力を、弁体の開度に応じて自在に調整する。
【解決手段】気体通流路L0の一次側と二次側との間に設けられる開孔部K0の開度を調整自在な主弁体V0と、気体通流路L0の圧力を検知する圧力検知部H2と、気体通流路L0の圧力を圧力検知部H2,H3へ導く圧力導入路L1,L2と、圧力検知部H2,H3にて検知された圧力に伴って主弁体V0の開度を制御して気体通流路L0の二次側の圧力である二次圧を設定圧力へ制御する整圧装置において、主弁体V0が開孔部K0を閉止する閉止状態と開孔部K0を全開する全開状態との間で開閉方向に沿って移動するときに、主弁体V0の開閉に伴って移動する可動部位に対して、所定の対象開度域において粘性抵抗を付与する粘性抵抗付与機構Nを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体通流路の一次側と二次側との間に設けられる開孔部の開度を調整自在な主弁体と、前記気体通流路の圧力を検知する圧力検知部と、前記気体通流路の圧力を前記圧力検知部へ導く圧力導入路と、前記圧力検知部にて検知された圧力に伴って前記主弁体の開度を制御して前記気体通流路の二次側の圧力である二次圧を設定圧力へ制御する整圧装置であって、
前記主弁体が前記開孔部を閉止する閉止状態と前記開孔部を全開する全開状態との間で開閉方向に沿って移動するときに、前記主弁体の開閉に伴って移動する可動部位に対して、所定の対象開度域において粘性抵抗を付与する粘性抵抗付与機構を備える整圧装置。
【請求項2】
前記粘性抵抗付与機構は、
前記開閉方向における所定位置において、前記可動部位の周囲で前記可動部位に対して前記粘性抵抗を付与可能な位置に配設され、且つ磁場が印加されたときに粘性が高くなる磁性流体と、
前記主弁体が前記対象開度域にあるときに前記磁性流体に対して印加する前記磁場としての第1磁場を印加可能な磁場印加部とを備える請求項1に記載の整圧装置。
【請求項3】
前記磁場印加部は、前記第1磁場を前記主弁体が前記対象開度域以外の開度域にあるときに前記磁性流体に対して印加する前記磁場としての第2磁場よりも強く印加可能に構成されると共に、前記主弁体が前記対象開度域以外の開度域にあるときに前記磁性流体に対して印加する前記第2磁場を零より大きい値に維持する請求項2に記載の整圧装置。
【請求項4】
前記磁場印加部は、前記開閉方向に沿って設けられた前記磁性流体の一端部と他端部に対し、前記第1磁場よりも弱く零よりも強い前記磁場としての第3磁場の印加を維持する請求項2に記載の整圧装置。
【請求項5】
前記磁場印加部は、前記可動部位とに対して設けられる永久磁石である請求項2に記載の整圧装置。
【請求項6】
前記磁場印加部は、前記磁性流体に対して印加する前記磁場を自在に調整可能な電磁石から構成されている請求項2に記載の整圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体通流路の一次側と二次側との間に設けられる開孔部の開度を調整自在な主弁体と、前記気体通流路の圧力を検知する圧力検知部と、前記気体通流路の圧力を前記圧路検知部へ導く圧力導入路と、前記圧力検知部にて検知された圧力に伴って前記主弁体の開度を制御して前記気体通流路の二次側の圧力である二次圧を設定圧力へ制御する整圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、整圧装置としては、気体通流路の一次側と二次側との間に設けられる開孔部の開度を調整自在な主弁体と、前記気体通流路の圧力を検知する圧力検知部と、前記気体通流路の圧力を前記圧路検知部へ導く圧力導入路と、前記圧力検知部にて検知された圧力に伴って前記主弁体の開度を制御して前記気体通流路の二次側の圧力である二次圧を設定圧力へ制御するものが知られている。
そして、当該整圧装置の制御を安定させるために、弁体の開閉方向での動作に対してダンパー機能を付与している場合がある。このようなダンパー機能を有する整圧装置では、例えば、気体が通流する圧力導入路に小径パイプや細孔を設け、気体が当該小径パイプや細孔を通過するときの粘性抵抗を利用して減衰力としてのダンパー機能を得ている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-265323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示される構成によりダンパー機能を発揮する制御装置では、弁体の開度毎にダンパー機能による減衰力を変化させたりするといった細やかな減衰力調整制御を実行することはできなかった。
例えば、ハンチングが起きやすい低開度域や、高流量の気体の通流による流体圧により弁体の振動が発生する高開度域のみ減衰力を高める等の制御ができず、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、弁体の振動に対する減衰力を、弁体の開度に応じて自在に調整することが可能な整圧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための整圧装置は、
気体通流路の一次側と二次側との間に設けられる開孔部の開度を調整自在な主弁体と、前記気体通流路の圧力を検知する圧力検知部と、前記気体通流路の圧力を前記圧力検知部へ導く圧力導入路と、前記圧力検知部にて検知された圧力に伴って前記主弁体の開度を制御して前記気体通流路の二次側の圧力である二次圧を設定圧力へ制御する整圧装置であって、その特徴構成は、
前記主弁体が前記開孔部を閉止する閉止状態と前記開孔部を全開する全開状態との間で開閉方向に沿って移動するときに、前記主弁体の開閉に伴って移動する可動部位に対して、所定の対象開度域において粘性抵抗を付与する粘性抵抗付与機構を備える点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、主弁体の開閉に伴って移動する可動部位に対して、所定の対象開度域において粘性抵抗を付与する粘性抵抗付与機構を備えるから、例えば、粘性抵抗付与機構により、可動部位に対して粘性抵抗を付与する所定の対象開度域を、自在に設定することができる。これにより、弁体の振動が発生し易い開度域で、弁体の振動に対する減衰力を適切に働かせ、弁体の振動を良好に抑制できる。
以上より、弁体の振動に対する減衰力を、弁体の開度に応じて自在に調整することが可能な整圧装置を実現できる。
【0008】
整圧装置の更なる特徴構成は、
前記粘性抵抗付与機構は、
前記開閉方向における所定位置において、前記可動部位の周囲で前記可動部位に対して前記粘性抵抗を付与可能な位置に配設され、且つ磁場が印加されたときに粘性が高くなる磁性流体と、
前記主弁体が前記対象開度域にあるときに前記磁性流体に対して印加する磁場としての第1磁場を印加可能な磁場印加部とを備える点にある。
【0009】
上記特徴構成の如く、開閉方向における所定位置において、可動部位の周囲で可動部位に対して粘性抵抗を付与可能な位置に配設される磁性流体と、主弁体が対象開度域にあるときに磁性流体に対して印加する第1磁場を印加可能な磁場印加部とから、粘性抵抗付与機構を構成することで、大きな構成の複雑化を招くことなく、所定の対象開度域において弁体に印加される減衰力を、良好に発揮させることができる。
【0010】
整圧装置の更なる特徴構成は、
前記磁場印加部は、前記第1磁場を前記主弁体が前記対象開度域以外の開度域にあるときに前記磁性流体に対して印加する前記磁場としての第2磁場よりも強く印加可能に構成されると共に、前記主弁体が前記対象開度域以外の開度域にあるときに前記磁性流体に対して印加する前記第2磁場を零より大きい値に維持する点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、主弁体が対象開度域以外の開度域にあるときに磁性流体に対して印加する第2磁場を零より大きい値に維持するので、磁性流体の粘性を主弁体の開度に限られず一定以上に維持することができ、当該磁性流体について一定の粘性が保たれ、磁性流体が充填される充填空間等から流出すること、及び圧力制御対象の流体が磁性流体の充填空間等を通過して流出することを良好に防止できる。
【0012】
整圧装置の更なる特徴構成は、
前記磁場印加部は、前記開閉方向に沿って設けられた前記磁性流体の一端部と他端部に対し、前記第1磁場よりも弱く零よりも強い前記磁場としての第3磁場の印加を維持する点にある。
【0013】
磁性流体を所定の磁性流体充填部等に充填する場合、当該磁性流体充填部を挟んで両側の気体の差圧が一定以上に大きくなると、磁性流体充填部から磁性流体や気体が漏洩することがある。
上記特徴構成によれば、開閉方向に沿って設けられた磁性流体の一端部と他端部に対し、比較的弱い第3磁場の印加を維持するから、磁性流体充填部を挟んで両側の気体の差圧が大きい場合であっても、開閉方向の一端部及び他端部で磁性流体の粘性を高め、磁性流体や気体の流出を良好に防止できる。
更に、開閉方向で一端部と他端部を除く磁性流体に対しては、第3磁場が印加されないので、可動部位に対して不要に粘性抵抗が付与されることを防止でき、主弁体の円滑な動作を極力妨げない構成とすることができる。
【0014】
整圧装置の更なる特徴構成は、
前記磁場印加部は、前記可動部位とに対して設けられる永久磁石である点にある。
【0015】
上記特徴構成の如く、磁場印加部を、可動部位に対して設けられる永久磁石から構成することで、電動部位を持たない機械駆動を実現でき、安定した動作を長期間に亘って期待できる整圧装置を実現できる。
【0016】
整圧装置の更なる特徴構成は、
前記磁場印加部は、前記磁性流体に対して印加する前記磁場を自在に調整可能な電磁石から構成されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、磁性流体に印加される磁場の強度を電磁石により適切に調整できるから、個体毎に整圧特性が異なる整圧装置や、現場の状況等に応じて、弁体に付与される粘性抵抗を細やかに調整でき、弁体の振動を良好に抑制できる整圧装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る整圧装置の概略構成図である。
図2】実施形態に係る整圧装置の粘性抵抗付与機構に係る構成を示す図である。
図3】別実施形態に係る整圧装置の粘性抵抗付与機構に係る構成を示す図である。
図4】別実施形態に係る整圧装置の粘性抵抗付与機構に係る構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る整圧装置は、弁体の振動に対する減衰力を、弁体の開度に応じて自在に調整することが可能なものに関する。
以下、図面に基づいて、当該実施形態に係る整圧装置を説明する。
【0020】
整圧装置は、図1に示すように、パイロットガバナ50から主ガバナ10へ駆動圧を導入する逆作動型整圧装置として構成されており、都市ガス13A等の気体が通流する気体通流路L0の一次側と二次側との間に設けられる開孔部K0の開度を調整自在な主弁体V0と、気体通流路L0の圧力を検知する圧力検知部と、気体通流路L0の圧力を圧力検知部へ導く圧力導入路とを備え、圧力検知部にて検知された圧力に伴って主弁体V0の開度を制御して気体通流路L0の二次側の圧力である二次圧を設定圧力へ制御する。
【0021】
主ガバナ10は、ダイヤフラムプレート14に沿って設けられる第1ダイヤフラムD1を備えており、その内部空間が第1ダイヤフラムD1にて第1室H1と第2室H2(圧力検知部の一例)とに区画されている。そして、主ガバナ10は、気体通流路L0に設けられる開孔部K0を開閉する主弁体V0を備えており、この主弁体V0は弁軸16にて第1ダイヤフラムD1と連結され第1ダイヤフラムD1と連動して動く形態で、開閉される構成となっている。また、第1室H1には、第1ダイヤフラムD1を主弁体V0の閉弁方向側に付勢する第1付勢バネG1が配設されている。
【0022】
パイロットガバナ50は、第2ダイヤフラムD2と第3ダイヤフラムD3とを備えており、第2ダイヤフラムD2及び第3ダイヤフラムD3にて、その内部空間が第3室H3(圧力検知部の一例)と第4室H4と第5室H5とに区画されている。第3室H3は、二次側圧力導入路L2により気体通流路L0の二次側(主ガバナ10よりも下流側)に連通接続されていると共に、第1接続流路L3により主ガバナ10の第1室H1に連通接続されている。第4室H4は、一次側圧力導入路L1により気体通流路L0の一次側(主ガバナ10よりも上流側)に連通接続されていると共に、駆動圧導入路L4により主ガバナ10の第2室H2に連通接続されている。因みに、当該駆動圧導入路L4と第1接続流路L3とは、絞り部39を有する第2接続流路L5により連通接続されている。
また、第2ダイヤフラムD2と第3ダイヤフラムD3とは連結部材Rにより連結されており、第2ダイヤフラムD2及び第3ダイヤフラムD3と一体的にその変位方向で変位自在に構成されている。第5室H5には、第2付勢バネG2が配設されており、当該第2付勢バネG2が第3ダイヤフラムD3を第4室H4側に付勢し、それに伴って、第2ダイヤフラムD2が第3室H3側に付勢されている。
【0023】
一次側圧力導入路L1の先端には、第4室H4内で第4室H4の側へ向けて開孔する開孔端L1aが形成されると共に、当該開孔端L1aに対向する形で、第2弁体V2が設けられている。当該第2弁体V2は、第3付勢バネG3により第2ダイヤフラムD2から第4室H4の開孔端L1aへ向けて付勢されている。更に、当該第2弁体V2には、第2ダイヤフラムD2に形成される開口D2aを開閉する第1弁体V1が一体的に設けられている。
【0024】
当該構成において第1付勢バネG1、第2付勢バネG2、第3付勢バネG3の付勢力を適切なものに設定することにより、気体通流路L0の二次側圧力が設定圧力よりも低下すると、二次側圧力導入路L2にて気体通流路L0の二次側に連通接続されたパイロットガバナ50の第3室H3の圧力が低下し、第2付勢バネG2の付勢力により第2ダイヤフラムD2が第3室H3側へ変位する。これにより、パイロットガバナ50の第2弁体V2が開き側に動作し、一次側圧力導入路L1を通して第4室H4に気体通流路L0の一次側圧力が導入されて、第4室H4の圧力が上昇する。そして、その圧力上昇した第4室H4の圧力が駆動圧導入路L4を介して主ガバナ10の第2室H2に駆動圧として導入され、第2室H2の圧力も上昇し、第1室H1と第2室H2との圧力差により第1ダイヤフラムD1が第1室H1側に変位する。よって、主ガバナ10の主弁体V0が開き側に動作され、気体通流路L0の二次側圧力を上昇させて二次側圧力を設定圧力に調整する。
【0025】
一方、二次側圧力が設定圧力よりも上昇すると、パイロットガバナ50の第3室H3の圧力が上昇し、第2付勢バネG2の付勢力に抗して第2ダイヤフラムD2が第4室H4側へ変位する。これにより、第2弁体V2が閉じ側へ動作され、第4室H4へ一次側圧力が導入されなくなる。これにより、第2室H2の気体は、第2接続流路L5、絞り部39、第1接続流路L3、第3室H3、二次側圧力導入路L2を介して、気体通流路L0の二次側へ排出され、第2室H2の圧力は低下し、第1室H1と第2室H2との圧力差により第1ダイヤフラムD1が第2室H2側に変位する。よって、主ガバナ10の主弁体V0が閉じ側に動作され、気体通流路L0の二次側圧力を低下させて二次側圧力を設定圧力に調整する。
尚、二次側圧力が設定圧力よりも上昇する場合、第1弁体V1が第2ダイヤフラムD2の開口D2aを開放するように構成されると共に、開口D2aの開度は、二次側圧力と設定圧力との圧力差が大きいほど大きくなるように構成されている。
【0026】
以上の構成において、一次側圧力導入路L1、二次側圧力導入路L2、駆動圧導入路L4が、圧力導入路として働く。
【0027】
さて、当該実施形態に係る整圧装置は、主弁体V0の振動に対する減衰力を、主弁体V0の開度に応じて自在に調整するべく、以下の如く構成されている。
即ち、当該実施形態に係る整圧装置は、図1又は図2に示すように、主弁体V0が開孔部K0を閉止する閉止状態と開孔部K0を全開する全開状態との間で開閉方向(図2で矢印Zに沿う方向)に沿って移動するときに、主弁体V0と一体的に開閉方向で移動する弁軸16(可動部位の一例)に対して、所定の対象開度域において粘性抵抗を付与する粘性抵抗付与機構Nを備える。
当該実施形態においては、図1に示すように、粘性抵抗付与機構Nは、主ガバナ10の筐体60で開閉方向における一端側(第1付勢バネG1の一端が当接する当接部分)の近傍部位に設けられる第1粘性抵抗付与機構N1と、筐体60で開閉方向における他端側(第2室H2と気体通流路L0の境界部分)の近傍部位に設けられる第2粘性抵抗付与機構N2とから構成されている。第1粘性抵抗付与機構N1と第2粘性抵抗付与機構N2とは、実質的に同様の構成を有するため、以下では、第1粘性抵抗付与機構N1に係る構成について説明する。
【0028】
第1粘性抵抗付与機構N1は、図2に示すように、開閉方向における所定位置において、弁軸16(可動部位の一例)の周囲で弁軸16に対して粘性抵抗を付与可能な位置に配設され、且つ磁場MF(磁束密度:Wb/m)が印加されたときに粘性が高くなる磁性流体MRと、主弁体V0が対象開度域にあるときに磁性流体MRに対して印加する磁場MFとしての第1磁場を、主弁体V0が対象開度域以外の開度域にあるときに磁性流体MRに対して印加する磁場MFとしての第2磁場(当該実施形態では零)よりも強く印加可能な磁場印加部MJとを備える。
因みに、当該実施形態において、対象開度域とは、主弁体V0のハンチングが起きやすい低開度域と、気体通流路L0を大流量の気体が通流するときに流体圧により主弁体V0が振動する場合がある大開度域とを含む。
当該実施形態に係る磁性流体MRは、粒径10nm以下程度の磁性体粒子と油との混合流体を好適に用いることができるが、より大径の粒径1μm以上10μm以下程度の磁性体粒子と油との混合流体も用いることができる。
【0029】
当該実施形態に係る磁場印加部MJは、弁軸16の内部に対し埋め込まれる形態で、弁軸16と一体的に可動するよう設けられる永久磁石であり、当該永久磁石は、S極とN極とを繋ぐ磁石軸心が開閉方向に交差する交差方向(当該実施形態では直交方向)に沿って設けられている。これにより、磁場印加部MJとしての永久磁石からの磁場MFの磁力線は、弁軸16の軸心方向(主弁体V0の開閉方向)と直交する直交方向へ放射状に広がる形で形成されることになる。
磁場印加部MJは、低開度域において磁性流体MRに対して第1磁場を印加する第1磁場印加部MJ1と、大開度域において磁性流体MRに対して第2磁場を印加する第2磁場印加部MJ2とを、弁軸16に沿う開閉方向で主弁体V0から遠い側から記載の順に設けている。
【0030】
さて、磁性流体MRは、主ガバナ10の筐体60で開閉方向における一端側(第1付勢バネG1の一端が当接する当接部分)で、筐体60と弁軸16との間に充填される形態で設けられている。
説明を追加すると、筐体60と弁軸16との間には、弁軸16の周囲に沿う形状の環状部材SKが設けられ、当該環状部材SKと弁軸16との間に形成される第1凹欠部位SKaに、磁性流体MRが充填される。尚、第1凹欠部位SKaの開閉方向での一端側には環状部材SKと弁軸16との間をシールする第1シール部材S1が設けられると共に、第1凹欠部位SKaの開閉方向での他端側には環状部材SKと弁軸16との間をシールする第2シール部材S2が設けられる。
因みに、当該磁性流体MRは、定期的に交換する必要があるため、第1凹欠部位SKaには、磁性流体MRを外部から充填したり、外部へ排出したりするための磁性流体流路Lmが連通接続されている。
そして、当該磁性流体流路Lmを備える関係で、筐体60と環状部材SKとの間には、環状部材SKと筐体60との間に第2凹欠部位SKbが形成され磁性流体MRが充填される。第2凹欠部位SKbの開閉方向での一端側には環状部材SKと筐体60との間をシールする第3シール部材S3が設けられると共に、第2凹欠部位SKbの開閉方向での他端側には環状部材SKと筐体60との間をシールする第4シール部材S4が設けられる。
【0031】
以上の構成により、主弁体V0が低開度域である場合には、第1磁場印加部MJ1の磁場が環状部材SKの第1凹欠部位SKaに充填される磁性流体MRに作用して、磁性流体MRの粘性抵抗が高くなり、当該磁性流体MRに対する弁軸16の摺動抵抗が大きくなることで、主弁体V0のハンチングが抑制される。
一方、主弁体V0が高開度域である場合には、第2磁場印加部MJ2の磁場MFが環状部材SKの第1凹欠部位SKaに充填される磁性流体MRに作用して、磁性流体MRの粘性抵抗が高くなり、当該磁性流体MRに対する弁軸16の摺動抵抗が大きくなることで、主弁体V0の大流量の気体による振動が抑制される。
【0032】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、粘性抵抗付与機構Nは、逆作動型の整圧装置の主ガバナ10に対して設けられる構成例を示したが、直動式のガバナ(図示せず)に対して設けても構わない。
また、粘性抵抗付与機構Nとしては、図1に示すように、第1粘性抵抗付与機構N1と第2粘性抵抗付与機構N2とを備える構成例を示したが、何れか一方のみを備える構成としても構わない。また、2つ以上の粘性抵抗付与機構Nを備える構成としても構わず、これらの設けられる位置は、弁軸16等の可動部位の近傍であれば、どのような部位に設けられていても構わない。
【0033】
(2)上記実施形態では、磁場印加部MJは、弁軸16の内部に埋め込む形態で設ける構成例を示した。
しかしながら、当該磁場印加部MJは、開閉方向において主弁体V0と一体的に移動する可動部位であれば、どこに設けられていても構わない。
例えば、磁場印加部MJは、弁軸16に一部が固定され開閉方向に沿って延設される棒状部材(図示せず)に対して一体的に設けられる構成を採用しても構わない。
【0034】
(3)図示は省略するが、磁場印加部として、主弁体V0が対象開度域以外の開度域にあるときに磁性流体MRに対して印加する第2磁場を零より大きい値に維持するものとしても構わない。
具体的には、主弁体V0の開度に関わらず、磁場MFとしての磁力線が磁性流体MRに対して重畳するように、磁場印加部として永久磁石を筐体60或いは環状部材SKに設ける構成とすることができる。
これにより、磁性流体MRの粘性を一定以上に維持できるから、例えば、図2に示す構成において、第1シール部材S1~第4シール部材S4を省略した場合であっても、磁性流体MRが第1凹欠部位SKa及び第2凹欠部位SKbから流出することを防止できる。
【0035】
(4)図3に示すように、開閉方向に沿って設けられた磁性流体MRの一端部と他端部に対し、第1磁場よりも弱く零(第2磁場)よりも強い磁場MFとしての第3磁場の印加を維持する磁場印加部としての永久磁石MSを備える構成を採用しても構わない。
これにより、例えば、図2に示す構成において、第1シール部材S1~第4シール部材S4を省略した場合であって、第1凹欠部位SKa及び第2凹欠部位SKbと外部空間との間の差圧が大きい場合であっても、第1シール部材S1~第4シール部材S4が位置する部位の磁性流体MRの粘性を一定以上に維持して、磁性流体MRが第1凹欠部位SKa及び第2凹欠部位SKbから流出することを防止できる。
尚、当該構成によれば、上述の別実施形態(3)に比べ、主弁体V0が対象開度域以外にある場合に、限定的に磁性流体MRの粘性抵抗を高くできるから、磁性流体MRと弁軸16との間の抵抗が不必要に高くなることを防止できる。
【0036】
(5)図4に示すように、弁軸16に一体的に設けられる磁場印加部は、磁性流体MRに対して印加する磁場MFを自在に調整可能な電磁石MMにて構成することができる。
具体的には、磁場印加部として、第1鉄心T1に通流する電流を調整可能な第1コイルCO1を巻回して第1磁場を印加可能な第1電磁石MM1と、第2鉄心T2に通流する電流を調整可能な第2コイルCO2を巻回して第2磁場を印加可能な第2電磁石MM2とを、弁軸16に沿う開閉方向で主弁体V0から遠い側から記載の順に設けている。
当該構成によれば、第1磁場及び第2磁場の強度適宜調整でき、弁軸16等の可動部位に付与する粘性抵抗をより高い自由度で設定できる。
【0037】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の整圧装置は、弁体の振動に対する減衰力を、弁体の開度に応じて自在に調整することが可能な整圧装置として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
16 :弁軸
100 :整圧装置
H2 :第2室
H3 :第3室
K0 :開孔部
L0 :気体通流路
MF :磁場
MJ :磁場印加部
MM :電磁石
MR :磁性流体
MS :永久磁石
N :粘性抵抗付与機構
V0 :主弁体
図1
図2
図3
図4