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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118931
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】車両用シートのシートクッション
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/70 20060101AFI20240826BHJP
   A47C 7/28 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B60N2/70
A47C7/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025539
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 克司
(72)【発明者】
【氏名】小松 均
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 利春
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DB03
3B087DB04
3B087DB09
(57)【要約】
【課題】着座した乗員の座り心地を良好にし易く、車両が振動したときに乗員の振動を収束させ易い車両用シートのシートクッションを得る。
【解決手段】クッションフレームと、クッションフレームに支持され、平面視においてシート前後方向に直線的に延びるスライド支持部40A、40B、40C及びスライド支持部とは前後位置が異なる固定部37A、37B、37Cを有し、互いにシート左右方向に並ぶ複数のクッションスプリング35A、35B、35Cと、全てのクッションスプリングに対して上方から対向して配置されると共に、固定部に固定された被固定部49及び前記スライド支持部に相対スライド可能に支持された被支持部57を有し、弾性変形可能とされた樹脂板45と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッションフレームと、
前記クッションフレームに支持され、平面視においてシート前後方向に直線的に延びるスライド支持部及び前記スライド支持部とは前後位置が異なる固定部を有し、互いにシート左右方向に並ぶ複数のクッションスプリングと、
全ての前記クッションスプリングに対して上方から対向して配置されると共に、前記固定部に固定された被固定部及び前記スライド支持部に相対的にスライド可能に支持された被支持部を有し、弾性変形可能とされた樹脂板と、
を備える車両用シートのシートクッション。
【請求項2】
前記クッションスプリングと前記樹脂板が別体として構成された請求項1記載の車両用シートのシートクッション。
【請求項3】
前記固定部が、平面視においてシート左右方向に延びる左右延長部及び前記左右延長部に接続され且つ平面視においてシート前後方向に延びる前後延長部を有し、
前記被固定部が、前記樹脂板の下面に形成された溝であり、平面視においてシート左右方向に延び且つ上方から前記左右延長部に嵌められる左右溝、及び、平面視においてシート前後方向に延び且つ上方から前記前後延長部に嵌められる前後溝を有する請求項2記載の車両用シートのシートクッション。
【請求項4】
前記樹脂板が、
全ての前記クッションスプリングとシート上下方向に対向する板状の本体部と、
前記本体部の下面から下方に突出する前記被支持部と、
を備え、
前記固定部が前記スライド支持部より前方と後方の一方側に位置し、
前記クッションスプリングが、前記スライド支持部が前記被支持部に対して前方と後方の他方側に相対的にスライドしたときに、前記被支持部の前記一方側の端部と接触可能なストッパ部を備える請求項2又は請求項3記載の車両用シートのシートクッション。
【請求項5】
3個以上の前記クッションスプリングを備え、
前記シートクッションに乗員が着座していないときの前記ストッパ部の前記一方側の端部からのシート前後方向の距離を初期距離と定義する場合に、シート左右方向の中央部に位置する前記クッションスプリングの前記初期距離が残りの前記クッションスプリングの前記初期距離より長い請求項4記載の車両用シートのシートクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのシートクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された車両用シートのシートクッションは、クッションフレームと、樹脂製の板状部材である支持部材と、金属製の複数のワイヤーと、を備える。クッションフレームは、左右のサイドメンバと、左右のサイドメンバの前部をシート左右方向に連結する前部クロスメンバと、左右のサイドメンバの後部をシート左右方向に連結する後部クロスメンバと、を有する。支持部材とワイヤーは互いに固定されている。支持部材の前部が前部クロスメンバに支持され、ワイヤーの後部が後部クロスメンバに支持されている。支持部材の平面形状は大きい。そのため支持部材は、車両が振動したときにシートクッションに着座した乗員の振動を収束させ易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-124981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のシートクッションの支持部材とワイヤーは互いに固定されている。そのため乗員がシートクッションに着座したときに、乗員が支持部材から大きな反力を受け易い。即ち、シートクッションに着座したときの乗員の座り心地が良好ではない。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、着座した乗員の座り心地を良好にし易く、車両が振動したときに乗員の振動を収束させ易い車両用シートのシートクッションを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両用シートのシートクッションは、クッションフレームと、前記クッションフレームに支持され、平面視においてシート前後方向に直線的に延びるスライド支持部及び前記スライド支持部とは前後位置が異なる固定部を有し、互いにシート左右方向に並ぶ複数のクッションスプリングと、全ての前記クッションスプリングに対して上方から対向して配置されると共に、前記固定部に固定された被固定部及び前記スライド支持部に相対的にスライド可能に支持された被支持部を有し、弾性変形可能とされた樹脂板と、を備える。
【0007】
請求項1に記載のシートクッションは、クッションフレームに支持された複数のシート左右方向に並ぶクッションスプリングによって支持され且つ弾性変形可能な樹脂板を有する。従って、乗員がシートクッションに着座したときに、平面形状が大きい樹脂板が乗員の身体を受け止める。そのため請求項1に記載のシートクッションは、車両が振動したときに乗員の振動を収束させ易い。
【0008】
さらに乗員がシートクッションに荷重を及ぼしたときに、クッションスプリングが撓み、且つ、スライド支持部が樹脂板の被支持部に対して相対的にスライドする。そのため請求項1に記載のシートクッションは、クッションスプリングが樹脂板に対して相対的にスライドしない場合と比べて、着座した乗員の座り心地を良好にし易い。
【0009】
請求項2に記載の車両用シートのシートクッションは、請求項1記載の構成において、前記クッションスプリングと前記樹脂板が別体として構成される。
【0010】
請求項2に記載の車両用シートのシートクッションは、クッションスプリングと樹脂板を一体成形する場合と比べて、シートクッションを容易に製造できる。
【0011】
請求項3に記載の車両用シートのシートクッションは、請求項2記載の構成において、前記固定部が、平面視においてシート左右方向に延びる左右延長部及び前記左右延長部に接続され且つ平面視においてシート前後方向に延びる前後延長部を有し、前記被固定部が、前記樹脂板の下面に形成された溝であり、平面視においてシート左右方向に延び且つ上方から前記左右延長部に嵌められる左右溝、及び、平面視においてシート前後方向に延び且つ上方から前記前後延長部に嵌められる前後溝を有する。
【0012】
請求項3に記載の車両用シートのシートクッションによれば、互いに別体として構成されたクッションスプリングと樹脂板を固定するための固定構造を、簡単な構成により実現できる。
【0013】
請求項4に記載の車両用シートのシートクッションは、請求項2又は請求項3記載の構成において、前記樹脂板が、全ての前記クッションスプリングとシート上下方向に対向する板状の本体部と、前記本体部の下面から下方に突出する前記被支持部と、を備え、前記固定部が前記スライド支持部より前方と後方の一方側に位置し、前記クッションスプリングが、前記スライド支持部が前記被支持部に対して前方と後方の他方側に相対的にスライドしたときに、被支持部の一方側の端部と接触可能なストッパ部を備える。
【0014】
請求項4に記載の車両用シートのシートクッションによれば、乗員がシートクッションに着座したり車両に振動が発生したりしたときに、クッションスプリングの下方への撓み量が過大になるのを防止できる。
【0015】
請求項5に記載の車両用シートのシートクッションは、請求項4記載の構成において、3個以上の前記クッションスプリングを備え、前記シートクッションに乗員が着座していないときの前記ストッパ部の前記一方側の端部からの前後方向の距離を初期距離と定義する場合に、左右方向の中央部に位置する前記クッションスプリングの前記初期距離が残りの前記クッションスプリングの前記初期距離より長い。
【0016】
請求項5に記載の車両用シートのシートクッションによれば、乗員がシートクッションに着座したり車両に振動が発生したりしたときに、側方のクッションスプリングに比べて大きな力が掛かり易い中央部のクッションスプリングを、側方のクッションスプリングよりも大きく撓ませられる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の車両用シートのシートクッションは、着座した乗員の座り心地を良好にし易く、車両が振動したときに乗員の振動を収束させ易い、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの模式的な側面図である。
図2】シートクッションの構成部材の分解斜視図である。
図3】クッションスプリング及び樹脂板の組み立て状態の斜視図である。
図4図3の4-4矢線に沿う断面図である。
図5】クッションスプリング及び樹脂板の組み立て状態の底面図である。
図6】乗員が着座したときの車両用シートの模式的な側面図である。
図7】乗員が着座したときの図5と同様の底面図である。
図8】変形例のクッションスプリング及びカラーの斜視図である。
図9】別の変形例の樹脂板及びクッションスプリングの一部を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1図7を参照して本発明の実施形態に係る車両用シート20について説明する。なお、各図中に適宜記載された矢印FR、LH及びUPは、車両用シート20の前方、左方及び上方をそれぞれ示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、車両用シート20を基準とする方向を示すものとする。
【0020】
図1に示されるように、車両10の車体の一部である車体フロア11に車両用シート20が設けられている。車両用シート20は、ロアレール21、アッパレール22、リフタ機構23、シートクッション25、シートバック70及びヘッドレスト75を備える。
【0021】
図1及び図2に示されたように、シートクッション25は、シートクッション25の骨格を構成するクッションフレーム27、クッションスプリング35A、35B、35C、樹脂板45、クッションパッド63及びカバー部材65を備えている。
【0022】
図2に示されるように、金属製のクッションフレーム27は、左右方向に離間して配置された左右一対のサイドフレーム29と、左右のサイドフレーム29の前部同士を連結する左右方向に延びるフロントパネル31と、左右のサイドフレーム29の後部同士を連結する左右方向に延びるリヤパイプ33とを備えている。左右のサイドフレーム29と左右のスライドレール24がリフタ機構23によって接続されている。フロントパネル31の上面の3か所には取付孔31aが設けられている。
【0023】
図2図5に示されるように、車両用シート20は3本のクッションスプリング35A、35B、35Cを有する。クッションスプリング35A、35B35Cは互いに同一形状である。
【0024】
左右方向に並べて設けられたクッションスプリング35A、35B、35Cは、金属のばね材からなるワイヤーを曲げ加工することにより製造されたものである。クッションスプリング35A、35B、35Cは、フック部36A、36B、36Cと、固定部37A、37B、37Cと、中間屈曲部38A、38B、38Cと、ストッパ部39A、39B、39Cと、スライド支持部40A、40B、40Cと、挿入部41A、41B、41Cと、を備える。
【0025】
クッションスプリング35A、35B、35Cの後端部を構成するフック部36A、36B、36Cは略円弧形状である。フック部36A、36B、36Cの前端に接続された固定部37A、37B、37Cの平面形状は略L字形である。固定部37A、37B、37Cは、フック部36A、36B、36Cの前端に接続された平面視において前後方向に延びる前後延長部37A1、37B1、37C1と、前後延長部37A1、37B1、37C1の前端から平面視において左右方向に延びる左右延長部37A2、37B2、37C2と、を有する。左右延長部37A2、37B2、37C2の端部に接続された中間屈曲部38A、38B、38Cの左右寸法はフック部36A、36B、36C及び固定部37A、37B、37Cより大きい。中間屈曲部38A、38B、38Cの前端部に接続されたストッパ部39A、39B、39Cは左右方向と平行である。ここで左右延長部37A2、37B2、37C2、中間屈曲部38A、38B、38C、及びストッパ部39A、39B、39Cを含む部位を「屈曲部」と定義する。この「屈曲部」とは、各クッションスプリング35A、35B、35Cの前後方向の中間部に設けられ、平面視において前後方向に対して交差する方向に延びる部分を含む部位のことである。なお「交差する方向」には、左右方向、並びに、前後方向及び左右方向に対して傾斜する方向が含まれる。スライド支持部40A、40B、40Cは、ストッパ部39A、39B、39Cの端部から前方に向かって直線的に延びる。挿入部41A、41B、41Cは、スライド支持部40A、40B、40Cの前端から下方に向かって延びる。図1に示されたように、クッションスプリング35A、35B、35Cが自由状態にあるとき、側面視において固定部37A、37B、37C、中間屈曲部38A、38B、38C、ストッパ部39A、39B、39C及びスライド支持部40A、40B、40Cは実質的に同一直線上に位置し、且つ、平面視においてフック部36A、36B、36C、固定部37A、37B、37C、スライド支持部40A、40B、40C、及び挿入部41A、41B、41Cは実質的に同一直線上に位置する。但し、クッションスプリング35A、35B、35Cが自由状態にあるときに、側面視において固定部37A、37B、37C、中間屈曲部38A、38B、38C、ストッパ部39A、39B、39C及びスライド支持部40A、40B、40Cが同一直線上に位置しなくてもよい。またクッションスプリング35A、35B、35Cが自由状態にあるときに、平面視においてフック部36A、36B、36C、固定部37A、37B、37C、スライド支持部40A、40B、40C、及び挿入部41A、41B、41Cが同一直線上に位置しなくてもよい。
【0026】
クッションスプリング35A、35B、35Cは、フロントパネル31とリヤパイプ33との間に架け渡されている。即ち、クッションスプリング35A、35B、35Cのフック部36A、36B、36Cがリヤパイプ33に上方から被せられ、且つ、挿入部41A、41B、41Cがフロントパネル31の各取付孔31aに上方から挿入されている。
【0027】
一体成形品である単一の樹脂板45は、平面視略長方形の板状部である本体部47と、本体部47の後端部に設けられた3つの被固定部49と、本体部47の前端部に設けられた3つの被支持部57と、を備える。樹脂板45は例えばPP(ポリプロピレン)によって製造可能である。即ち、樹脂板45はクッションスプリング35A、35B、35Cとは別個に製造される。樹脂板45は弾性を有する。図5に示されたように各被固定部49の下面には平面視略L字形の取付溝51が形成されている。取付溝51は、平面視において左右方向に延びる左右溝53と、平面視において前後方向に延びる前後溝55と、を有する。前後溝55の前端部が左右溝53の左端部に接続されている。さらに左右溝53の右端及び前後溝55の後端は開口している。図2図3及び図5に示されたように、被固定部49の後部は本体部47の後端面から後方に突出し、且つ、被固定部49の下部は本体部47の下面から下方に突出する。図4に示されたように、取付溝51の内面の天井部には抑え突起51aが設けられ、取付溝51の両側面の下端部には抜け止め爪51bが設けられている。
【0028】
図5に示されたように各被支持部57の下面には平面視において前後方向に延びるスライド溝59が形成されている。スライド溝59の前後両端は開口している。図2図3及び図5に示されたように、被支持部57の前部は本体部47の前端面から前方に突出し、且つ、被支持部57の下部は本体部47の下面から下方に突出する。図4に示されたように、スライド溝59の内面の天井部には抑え突起59aが設けられ、スライド溝59の両側面の下端部には抜け止め爪59bが設けられている。さらに平面視において前後溝55とスライド溝59は前後方向に延びる直線上に位置する。さらに左右方向の真ん中に位置する被支持部57の後端面の位置は、左右両側の被支持部57の後端面の位置より僅かに前方に位置する。
【0029】
樹脂板45は各クッションスプリング35A、35B、35Cに上方から装着される。即ち、図5に示されたように、各クッションスプリング35A、35B、35Cの固定部37A、37B、37Cが対応する被固定部49の抜け止め爪51bを弾性変形させながら取付溝51に嵌合し、且つ、各クッションスプリング35A、35B、35Cのスライド支持部40A、40B、40Cが対応する被支持部57の抜け止め爪59bを弾性変形させながらスライド溝59に嵌合される。より詳細には、前後延長部37A1、37B1、37C1が対応する前後溝55に嵌合され、左右延長部37A2、37B2、37C2が対応する左右溝53に嵌合される。そのため、被固定部49のクッションスプリング35A、35B、35Cに対する前後方向の相対移動が左右延長部37A2、37B2、37C2及び左右溝53によって規制され、被固定部49のクッションスプリング35A、35B、35Cに対する左右方向の相対移動が前後延長部37A1、37B1、37C1及び前後溝55によって規制される。さらに抑え突起51a及び抜け止め爪51bが固定部37A、37B、37Cの外周面に接触するので、被固定部49の固定部37A、37B、37Cに対するがたつきが防止される。さらに抑え突起59a及び抜け止め爪59bがスライド支持部40A、40B、40Cの外周面に接触するので、被支持部57のスライド支持部40A、40B、40Cに対する左右方向及び上下方向のがたつきが防止される。図5に示されたように、樹脂板45がクッションスプリング35A、35B、35Cに装着されると、本体部47の左端部が中間屈曲部38Aの左端部より左方に位置し、本体部47の右端部が中間屈曲部38Aの右端部より右方に位置する。
【0030】
図1に示されたように、樹脂板45の上面及びクッションフレーム27の上面にクッションパッド63が固定されている。さらにクッションフレーム27及びクッションパッド63の表面が可撓性材料からなるカバー部材65によって覆われている。
【0031】
図1に示されたように、シートクッション25の後端部には、シートバック70の下端部が接続される。さらにシートバック70の上端部には、ヘッドレスト75が設けられる。これにより車両用シート20が完成する。
【0032】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0033】
図1は、乗員PS(図6参照)が着座していないときの車両用シート20を示す。このときクッションスプリング35A、35B、35C及び樹脂板45は実質的に自由状態にある。このとき樹脂板45の本体部47は実質的に平板形状になる。このときクッションスプリング35A、35B、35Cと樹脂板45は図3及び図5に示された位置関係になる。即ち、ストッパ部39A、39B、39Cの前端と対応する被支持部57の後端面との間の前後方向距離はそれぞれ初期距離LA1、LB1、LC1となる。上述のように左右方向の真ん中に位置する被支持部57の後端面の位置は、左右両側の被支持部57の後端面の位置より僅かに前方に位置する。そのためクッションスプリング35A、35B、35C及び樹脂板45は実質的に自由状態にあるとき、初期距離LB1>初期距離LA1、LC1である。
【0034】
図6は、乗員PSが着座したときの車両用シート20を示す。このとき乗員PSの臀部PS1及び大腿部PS2からカバー部材65の上面に下向きの荷重がかかる。そのため樹脂板45及びクッションスプリング35A、35B、35Cが下に凸の態様で弾性変形する(湾曲する)。さらに樹脂板45の各被支持部57(スライド溝59)に対して対応するスライド支持部40A、40B、40Cが前方へ相対的にスライドする。例えば、車両用シート20に着座した乗員PSの体重が小さい場合は、樹脂板45及びクッションスプリング35A、35B、35Cの撓み量が小さくなり、ストッパ部39A、39B、39Cの前端が各被支持部57の後端面に接触する前に、各ストッパ部39A、39B、39Cがスライド動作を停止する。また、車両用シート20に着座した乗員PSの体重が大きい場合や、乗員PSが車両用シート20に着座している状態で車両に振動が発生した場合は、樹脂板45及びクッションスプリング35A、35B、35Cの撓み量が大きくなる。但しこの場合も、図6及び図7に示されたように、ストッパ部39A、39B、39Cの前端が各被支持部57の後端面に接触する前に、各ストッパ部39A、39B、39Cがスライド動作を停止する可能性が高い。なお、例えば車両10がオフロードを走行する場合は、乗員PSの身体が大きく振動し、乗員PSからシートクッション25に大きな力が掛かるため、ストッパ部39A、39B、39Cの前端が各被支持部57の後端面に接触する可能性がある。
【0035】
なお乗員PSの体重の大きさにかかわらず、乗員PS(臀部PS1及び大腿部PS2)から中央部のクッションスプリング35Bに及ぶ力は、左右両側に位置するクッションスプリング35A、35Cに及ぶ力より大きくなり易い。さらに初期距離LB1>初期距離LA1、LC1である。そのため乗員PSの体重の大きさにかかわらず、クッションスプリング35Bの対応する被支持部57に対する前方へのスライド量は、クッションスプリング35A、35Cの対応する被支持部57に対する前方へのスライド量より大きくなり易い。即ち、クッションスプリング35Bの撓み量をクッションスプリング35A、35Cの撓み量より大きくすることが可能である。
【0036】
以上説明したように本実施形態のシートクッション25は、クッションフレーム27に支持された左右方向に並ぶ3つのクッションスプリング35A、35B、35Cによって支持され且つ弾性変形可能な単一の樹脂板45を有する。このように樹脂板45は全てのクッションスプリング35A、35B、35Cに対して上方から対向する。より詳細には、樹脂板45は全てのクッションスプリング35A、35B、35Cの少なくとも上記屈曲部全体に対して上方から対向する。さらに樹脂板45は単一である。そのため樹脂板45の平面形状は大きい。従って、乗員PSがシートクッション25に着座したときに、平面形状が大きい樹脂板45が、乗員PSの臀部PS1及び大腿部PS2を受け止める。そのためシートクッション25は、車両10が振動したときに乗員PSの振動を収束させ易い。
【0037】
さらに乗員PSがシートクッション25に荷重を及ぼしたときに、クッションスプリング35A、35B、35Cが撓み、且つ、スライド支持部40A、40B、40Cが樹脂板45の被支持部57に対して相対的にスライドする。そのため乗員PSがシートクッション25に着座したときに、乗員PSが樹脂板45から大きな反力を受け難い。従って、本実施形態のシートクッション25は、クッションスプリング35A、35B、35Cが樹脂板45に対して相対的にスライドしない場合と比べて、着座した乗員PSの座り心地を良好にし易い。
【0038】
さらに互いに別部材として製造されたクッションスプリング35A、35B、35Cと樹脂板45を固定するための固定構造が、簡単な構成である固定部37A、37B、37C及び被固定部49により実現されている。
【0039】
さらにクッションスプリング35A、35B、35Cのストッパ部39A、39B、39Cと樹脂板45の各被支持部57とによって、クッションスプリング35A、35B、35Cの樹脂板45に対する前方へのスライド量が所定量で規制される。換言すると、クッションスプリング35A、35B、35Cの最大撓み量が過大になることが、ストッパ部39A、39B、39Cと各被支持部57とによって規制されている。そのため車両用シート20に設けられたクッションスプリング35A、35B、35Cの直下に位置する部品(図示省略)に、クッションスプリング35A、35B、35Cが接触するおそれは殆どない。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0041】
例えば、クッションスプリング35A、35B、35Cと樹脂板45を一体成形してもよい。この変形例は、例えば図8に示す態様で実施可能である。この変形例のクッションスプリング35A、35B、35Cのスライド支持部40A、40B、40Cには、樹脂製のカラー80がスライド可能に装着されている。このクッションスプリング35A、35B、35C及びカラー80を成形型(図示省略)に配置したインサート成形により、クッションスプリング35A、35B、35Cと一体化された樹脂板45(図8では図示省略)を成形する。このとき樹脂板45の各被固定部49が固定部37A、37B、37Cと一体化し、且つ、各カラー80が各被支持部57と一体化する。このようにして成形された樹脂板45の被支持部57(カラー80)に対してクッションスプリング35A、35B、35Cのスライド支持部40A、40B、40Cは相対的にスライド可能になる。
【0042】
実施形態及び上記変形例において、クッションスプリング35A、35B、35Cの後部にスライド支持部40A、40B、40Cを設けて、このスライド支持部40A、40B、40Cより前方に位置する固定部37A、37B、37Cをクッションスプリング35A、35B、35Cに設けてもよい。この場合は、樹脂板45の後部に被支持部57が設けられ、樹脂板45の前部に被固定部49が設けられる。
【0043】
クッションスプリングの数は、複数であればいくつであってもよい。なおクッションスプリングの数が奇数の場合は、左右方向の中央部に位置する一つのクッションスプリングの初期距離を、他のクッションスプリングの初期距離より長くするのが好ましい。またクッションスプリングの数が偶数の場合は、左右方向の中央部に位置する2つのクッションスプリングの初期距離を、他のクッションスプリングの初期距離より長くするのが好ましい。
【0044】
さらに樹脂板45の複数の被固定部をそれぞれ図9に示す態様で実施してもよい。この被固定部は、互いに分離した被固定部60及び被固定部61を備える。さらに被固定部60には左右溝53に相当する左右溝60aが形成され、被固定部61には前後溝55に相当する前後溝61aが形成される。さらに左右溝60aに対応する左右延長部37A2、37B2、37C2が嵌合され、前後溝61aに前後延長部37A1、37B1、37C1が嵌合される。
【0045】
樹脂板が複数の樹脂部材によって構成されてもよい。例えば、樹脂板が左右一対の樹脂部材により構成され、且つ、クッションスプリングが左右方向に並べて4本設けられてもよい。この場合、左側の樹脂部材が左側の2本のクッションスプリングに上方から装着され、右側の樹脂部材が右側の2本のクッションスプリングに上方から装着される。さらに左右の樹脂部材の被固定部が各クッションスプリングの固定部に固定され、左右の樹脂部材の被支持部が各クッションスプリングのスライド支持部にスライド可能に支持される。この場合も各樹脂部材は、各クッションスプリングの少なくとも屈曲部全体に対して上方から対向する。そのためこの変形例の樹脂板の平面形状は大きい。
【0046】
樹脂板が左右方向に分割される場合の樹脂部材の数は、3個以上であってもよい。
【0047】
また樹脂板が、前後方向に分割された複数の樹脂部材により構成されてもよい。
【0048】
さらに樹脂板が複数の樹脂部材によって構成される場合に、隣り合う樹脂部材どうしを互いに接続してもよい。この変形例の樹脂板は単一である。変形例の樹脂板は、各クッションスプリングの少なくとも屈曲部全体に対して上方から対向する。そのためこの変形例の樹脂板の平面形状は大きい。
【符号の説明】
【0049】
10 車両
25 シートクッション
27 クッションフレーム
35A 35B 35C クッションスプリング
37A 37B 37C 固定部
37A1 37B1 37C1 前後延長部
37A2 37B2 37C2 左右延長部
40A 40B 40C スライド支持部
45 樹脂板
47 本体部
49 被固定部
53 左右溝
55 前後溝
57 被支持部
60 被固定部
60a 左右溝
61 被固定部
61a 前後溝
LA1 LB1 LC1 初期距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9