(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118937
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】鉄道車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B61D 27/00 20060101AFI20240826BHJP
B01D 45/12 20060101ALI20240826BHJP
B04C 3/06 20060101ALI20240826BHJP
B04C 5/04 20060101ALI20240826BHJP
B04C 3/02 20060101ALI20240826BHJP
B04C 9/00 20060101ALI20240826BHJP
B04C 11/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B61D27/00 N
B61D27/00 T
B01D45/12
B04C3/06
B04C5/04
B04C3/02
B04C9/00
B04C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025552
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】岩田 宜之
(72)【発明者】
【氏名】小山 泰平
(72)【発明者】
【氏名】祐川 直純
【テーマコード(参考)】
4D031
4D053
【Fターム(参考)】
4D031AC04
4D031BA01
4D031BA03
4D031BA10
4D031CA02
4D053AA03
4D053AB01
4D053BA01
4D053BB02
4D053BB07
4D053BC01
4D053BD01
4D053BD04
4D053CA04
4D053CD11
4D053CD12
4D053CF02
4D053CG00
4D053DA10
(57)【要約】
【課題】室外熱交換器に付着する塵埃の量を低減し、清掃作業の間隔を長くできる鉄道車両用空調装置を提供する。
【解決手段】一つの実施形態によれば、鉄道車両用空調装置は、外気を吸引する室外送風機を備える。さらに、前記鉄道車両用空調装置は、前記外気から塵埃を遠心分離する遠心分離器を備える。さらに、前記室外送風機は、遠心式であり、前記遠心分離器は、前記室外送風機の回転軸と重なる位置に配置される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を吸引する室外送風機と、
前記外気から塵埃を遠心分離する遠心分離器とを備え、
前記室外送風機は、遠心式であり、
前記遠心分離器は、前記室外送風機の回転軸と重なる位置に配置される、
鉄道車両用空調装置。
【請求項2】
前記遠心分離器の旋回流の旋回中心は、前記室外送風機の前記回転軸と同心軸上にある、請求項1に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項3】
前記室外送風機を駆動するモータをさらに備え、
前記モータは、前記室外送風機の回転軸と重なる位置に配置される、請求項1に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項4】
前記モータの回転軸は、前記室外送風機の回転軸と同心軸上にある、請求項3に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項5】
冷媒の熱交換を行う室外熱交換器をさらに備え、
前記室外熱交換器は、前記遠心分離によって前記塵埃が分離された空気によって熱交換が行われる、請求項1に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項6】
前記遠心分離器の全高と、前記室外送風機の全高の比が3対1から5対1の間である、請求項1に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項7】
前記遠心分離器の全高と、前記室外送風機の全高との比が4対1である、請求項6に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項8】
前記遠心分離器は、前記塵埃を貯蔵する塵埃貯蔵部を有し、
前記塵埃貯蔵部の縁には、前記遠心分離器の旋回流の旋回方向に沿って、塵埃の流出を防止する仕切板が配置される、
請求項1に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項9】
前記仕切板は、垂直方向に対して下側の傾斜を有する、請求項8に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項10】
前記塵埃貯蔵部は、鉄道レール方向に延伸される端部を有する、請求項8に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項11】
前記端部は、流速の減速領域となる角部を有する、請求項10に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項12】
前記端部は、嵌合部を有し、
前記端部と、前記塵埃貯蔵部とは、前記嵌合部によって取り外しが可能である、請求項10に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項13】
前記遠心分離器は、外気を吸引する2つの吸気口を有し
前記2つの吸気口は互いに対向する位置に配置される、請求項1に記載の鉄道車両用空調装置。
【請求項14】
外気を吸引する室外送風機と、
前記外気から塵埃を遠心分離する遠心分離器とを備え、
前記遠心分離器は、外気から塵埃を分離する遠心分離部と、前記塵埃を貯蔵する塵埃貯蔵部とを有し、
前記遠心分離部は、塵埃と、塵埃が分離された空気とに分離する円錐部を含み、
前記遠心分離器は、前記室外送風機の回転軸と重なる位置に配置される、
鉄道車両用空調装置。
【請求項15】
前記遠心分離器の旋回流の旋回中心は、前記室外送風機の前記回転軸と同心軸上にある、請求項14に記載の鉄道車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、鉄道車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用空調装置の冷房機能は、室内熱交換器で液体の冷媒を気化する際に、周囲から熱を奪うことで成立する。また、この空調装置は、冷房機能を維持するために、室外熱交換器で気化した冷媒を再び液化する必要がある。この際に、室外熱交換器に塵埃が付着していると、熱交換面積が減少するため、冷房性能が著しく低下する。また、付着した塵埃を長期間放置すると、室外熱交換器のフィン部分が腐食し、熱交換効率が低下する原因となる。
【0003】
一方、鉄道車両用空調装置は、家庭用の空調装置と異なり、移動を伴うため、室外熱交換器に付着する塵埃の量が多く、また油分も多く含んでいる。このため、鉄道車両用空調装置は、定期的に、高圧洗浄等による清掃作業が行われている。また、鉄道車両用空調装置は、鉄道車両の屋根上に搭載されており、危険作業を避けるため、空調装置を車体から取り外して清掃作業が行われている。しかし、鉄道車両用空調装置は、取り外し作業の工程が複雑であり、コストもかかることから、清掃作業の間隔の延長が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6253236号公報
【特許文献2】特開2010-156149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄道車両用空調装置において、塵埃を除去する技術として、巻き取り式のフィルタを用いる技術がある。フィルタを巻き取り式とすることで、塵埃の量が少ない室内機ではフィルタの交換間隔を延長することができる。しかし、塵埃の量が多い室外機ではフィルタの交換間隔が短くなり、コストが高くなってしまう。
【0006】
また、建設機械用冷却装置において、熱交換器への塵埃の付着を低減する技術として、熱交換器の風上に重力式の遠心分離機を設置する技術がある。しかし、鉄道車両用空調装置は、鉄道車両のトンネルへの進入等を考慮して、高さや幅に制限があるため、空間的余裕が十分でなく、重力式の遠心分離器により、多くの塵埃を分離することは難しい。
【0007】
そこで、本発明の実施形態は、室外熱交換器に付着する塵埃の量を低減し、清掃作業の間隔を長くできる鉄道車両用空調装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの実施形態によれば、鉄道車両用空調装置は、外気を吸引する室外送風機を備える。さらに、前記鉄道車両用空調装置は、前記外気から塵埃を遠心分離する遠心分離器を備える。さらに、前記室外送風機は、遠心式であり、前記遠心分離器は、前記室外送風機の回転軸と重なる位置に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態における鉄道車両用空調装置及び鉄道車両の概要図である。
【
図2】従来の鉄道車両用空調装置における斜視図及び断面図の例である。
【
図3】第1実施形態の鉄道車両用空調装置における室外機の斜視図である。
【
図4】第1実施形態の鉄道車両用空調装置における遠心分離器等の斜視図である。
【
図5】第1実施形態の鉄道車両用空調装置における室外機の断面図である。
【
図6】第2実施形態の鉄道車両用空調装置における室外機の断面図である。
【
図7】第3実施形態の鉄道車両用空調装置における室外機の断面図である。
【
図8】第4実施形態の鉄道車両用空調装置における遠心分離器等の斜視図である。
【
図9】第1実施形態における遠心分離器と第4実施形態における遠心分離器との流速シミュレーション結果の比較例である。
【
図10】第1実施形態における遠心分離器と第4実施形態における遠心分離器との集塵率シミュレーション結果の比較例である。
【
図11】第5実施形態の鉄道車両用空調装置における遠心分離器等の斜視図である。
【
図12】第6実施形態の鉄道車両用空調装置における遠心分離器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的又は概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における鉄道車両用空調装置及び鉄道車両の概要図である。
【0012】
図1は、互いに垂直なX軸、Y軸、及びZ軸を示している。X方向は、鉄道車両用空調装置100が搭載された鉄道車両200の鉄道レール方向(鉄道車両200の進行方向)に相当する。Y方向は、鉄道車両200の幅方向に相当する。Z方向は、鉄道車両200の縦方向(垂直方向)に相当する。また、+Z方向は上方向に相当し、-Z方向は下方向に相当している。なお、-Z方向は、厳密に重力方向に一致していてもよいし、厳密には重力方向に一致していなくてもよい。
【0013】
鉄道車両用空調装置100は、例えば、
図1に示すように鉄道車両200の屋根上に搭載される。鉄道車両用空調装置100は、ダクト300を通じて客室400に調和空気を供給する。
図1では、1台の鉄道車両200につき、1台の鉄道車両用空調装置100が搭載された例を示しているが、鉄道車両用空調装置100の搭載数はこれに限定されない。例えば、1台の鉄道車両200につき、複数の鉄道車両用空調装置100が備えられていてもよい。鉄道車両用空調装置100の詳細については、後述する。
【0014】
図2は、従来の鉄道車両用空調装置における斜視図及び断面図の例である。
【0015】
図2Aは、従来の鉄道車両用空調装置100の斜視図の例であり、
図2Bは、従来の鉄道車両用空調装置100の断面図の例である。
【0016】
図2Aに示す通り、鉄道車両用空調装置100は、室外機20及び室内機30で構成される。また、室外機20は、軸流式の室外送風機2、室外熱交換器1及びコンプレッサ21を備える。コンプレッサ21は、別途、機械室(不図示)内に備えられる場合もある。また、室内機30は、室内送風機31及び室内熱交換器32を備える。この空調装置は、室内熱交換器32内で液体の冷媒を気化する際に、周囲から熱を奪うことで冷房機能が実現される。また、コンプレッサ21で加圧された高温高圧の冷媒ガスは、室外熱交換器1の伝熱管内を流れる。室外熱交換器1は、室外送風機2によって吸引された外気が接触することで冷却され、伝熱管内の冷媒ガスが再び液化する。この循環により、この空調装置は、鉄道車両200内の冷房機能を供給し続けることができる。
【0017】
この例では、鉄道車両200の幅方向に、室外送風機2を挟むように2つの室外熱交換器1が備えられる。また、室外熱交換器1は、室外送風機2側が高くなるように斜めに傾けて設けられる。
【0018】
図2Bは、室外機20の断面図であり、図中の高さHは、室外送風機2と、室外送風機2を駆動させるモータ4とを含めた高さを表している。幅Wは、室外送風機2の幅を表している。高さH及び幅Wは、トンネルへの進入や室外熱交換器1の配置等を考慮し、空間的な余裕が制限される。なお、室外送風機2の外気の吸引方法は、室外送風機2側から吸引した外気が室外熱交換器1側に抜ける形態と、室外熱交換器1側から吸引した外気が室外送風機2側に抜ける形態とが存在する。いずれの形態も、室外機20は、室外送風機2を回転させることで空気の流れを発生させて外気を吸引し、吸引した外気を室外熱交換器1に接触させ、伝熱管内を流れる冷媒ガスの熱交換を行っている。吸引した外気は塵埃を含んでいるため、室外熱交換器1の熱交換の際に塵埃が付着する。
図2Bの矢印は、前者の形態における外気の流れを表している。
【0019】
図3は、第1実施形態の鉄道車両用空調装置における室外機の斜視図である。
【0020】
図3Aは室外機20の外観を示しており、
図3Bは
図3Aの蓋部22、22’を取り外した状態の外観を示している。
【0021】
図3Aに示す蓋部22、22’は一例であり、この配置や形状に限定されない。通気性や保守性を考慮し、別の配置や形状を有していてもよい。
【0022】
図3Bに示す通り、本実施形態では、室外機20は、遠心分離器3を備える。遠心分離器3は、塵埃を含む外気から塵埃を分離する。また、コンプレッサ21の記載は省略する。詳細については、以下で説明する。
【0023】
図4は、第1実施形態の鉄道車両用空調装置における遠心分離器等の斜視図である。
【0024】
図4は、
図3Bに示す遠心分離器3と、遠心分離器3の下部に配置される室外送風機2とを拡大した図である。本実施形態では、遠心分離器3は、吸気口7を2つ備えており、互いに対向する位置に配置されている。吸気口7の数はこれに限定されない。吸気口7の数は、1つであってもよく、また、3つ以上であってもよい。
【0025】
遠心分離器3は、室外送風機2によって吸気口7から外気を吸引する。動作の詳細は、後述する。
【0026】
図5は、第1実施形態の鉄道車両用空調装置における室外機の断面図である。
【0027】
本実施形態の室外機20は、室外熱交換器1、室外送風機2及びモータ4に加えて、遠心分離器3を備える。また、本実施形態の室外送風機2は、遠心式の送風機である。例えば、ターボファンやシロッコファンなど、種々の遠心式の送風機を採用することができる。また、遠心分離器3は、塵埃を含む外気から塵埃を分離する遠心分離部5と、分離された塵埃を貯蔵する塵埃貯蔵部6とを備える。
【0028】
モータ4によって室外送風機2が駆動されると、遠心分離器3は、吸気口7から外気を吸引する。吸引された外気は塵埃を含んでおり、遠心分離部5で発生する旋回流によって、塵埃と、塵埃が分離された空気とに遠心分離される。遠心分離された塵埃は、重力によって、遠心分離器3内部の壁面をつたって落下し、塵埃貯蔵部6に貯蔵される。
【0029】
一方、塵埃が分離された空気は、遠心分離器3の排気口8から排気され、室外送風機2の吸い込み口9から吸い込まれる。また、塵埃が分離された空気は、室外送風機2の遠心力によって昇圧され、室外送風機2の吐き出し口10から吐き出される。
【0030】
上述と同様に、鉄道車両200のトンネルへの進入や室外熱交換器1の配置等を考慮し、本実施形態では、遠心分離器3、室外送風機2及びモータ4の配置場所が制限される。そのため、本実施形態の遠心分離器3は、室外送風機2及びモータ4の回転軸と重なる位置に配置される。これにより、室外機20内において、遠心分離器3、室外送風機2及びモータ4の配置を省スペース化することができる。
図5に示す通り、遠心分離器3内の旋回流の旋回中心と、室外送風機2及びモータ4の回転軸とが同心軸上になるように、遠心分離器3を室外送風機2上に設置するのが好ましい。また、遠心分離器3は、室外送風機2と、たわみ継手等の接続部材によって接続されていてもよい。
【0031】
また、
図5に示す通り、塵埃貯蔵部6の縁には、遠心分離器3内の旋回流の旋回方向に沿って、仕切板13が配置されている。塵埃貯蔵部6は、仕切板13を備えることにより、塵埃貯蔵部6で発生する旋回流速を静止状態に近づけることができる。これにより、遠心分離器3は、塵埃貯蔵部6に貯蔵された塵埃が流出することを防止することができる。
【0032】
また、本実施形態の遠心分離器3は、遠心分離器3と室外熱交換器1との接触を防止する隔離板23を備えていてもよい。
【0033】
本実施形態によれば、室外機20は、遠心分離器3及び遠心式の室外送風機2を備えることで、吸引した外気から塵埃を分離することができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、鉄道車両用空調装置100は、外気から塵埃を分離し、塵埃が分離された空気を室外熱交換器1に接触させることができるため、室外熱交換器1への塵埃の付着を低減し、メンテナンス間隔を長くすることができる。また、本実施形態における鉄道車両用空調装置100は、メンテナンス間隔が長くなるため、保守コストを抑えることができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、遠心分離器3は、室外送風機2及びモータ4の回転軸と重なる位置に配置される。これにより、室外機20内において、遠心分離器3、室外送風機2及びモータ4の配置を省スペース化することができる。好ましくは、遠心分離器3内の旋回流の旋回中心と、室外送風機2及びモータ4の回転軸とが同心軸上になるように、遠心分離器3を室外送風機2上に設置することで、さらに省スペース化を実現することができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、塵埃貯蔵部6は、仕切板13を備えることにより、塵埃貯蔵部6で発生する旋回流速を静止状態に近づけることができる。これにより、遠心分離器3は、塵埃貯蔵部6に貯蔵された塵埃が流出することを防止することができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、遠心分離器3は、2つの吸気口7を備える。これにより、集塵率をより向上させることができる。
【0038】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態の鉄道車両用空調装置における室外機の断面図である。
【0039】
本実施形態の室外機20は、第1実施形態と同様に、室外熱交換器1、室外送風機2及びモータ4及び遠心分離器3を備える。
【0040】
遠心分離器3の分離性能は、旋回流が高速なほど、微細な塵埃まで分離することができる。そのため、吸気口7の開口面積は小さい方がよい。一方で、圧力損失は、吸気口7の開口面積が小さいほど大きくなる。そのため、室外機20は、高い圧力損失下で、冷房能力に必要な風量を得るには、遠心分離器3の外形を大きくし、全高を高くする必要がある。ここで、遠心分離器3の全高11とは、遠心分離部5及び塵埃貯蔵部6の高さを合計した高さを指す。また、室外送風機2の全高12とは、室外送風機2の翼高さを指す。前述と同様に、鉄道車両200のトンネルへの進入等を考慮し、遠心分離器3の全高11は制限される。これらのバランスを考慮すると、室外機20は、遠心分離器3の全高11と、室外送風機2の全高12との比が3対1から5対1の間であれば、分離性能を向上させることができる。好ましくは、室外機20は、遠心分離器3の全高11と、室外送風機2の全高12との比を、4対1に近づけることで最適な比率とすることができる。
【0041】
本実施形態によれば、遠心分離器3及び室外送風機2は、遠心分離器3の全高11と室外送風機2の全高12とを5対1から3対1にすることで、塵埃の分離性能を向上させることができる。また、遠心分離器3及び室外送風機2は、全高11と12の比を4対1に近づけることで、最適な構成とすることができ、塵埃の分離性能をさらに向上させることができる。
【0042】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態の鉄道車両用空調装置における室外機の断面図である。
【0043】
本実施形態の室外機20は、第1実施形態と同様に、室外熱交換器1、室外送風機2及びモータ4及び遠心分離器3を備える。
【0044】
第1実施形態とは異なり、本実施形態における仕切板13は、垂直方向に対して下側に傾斜している。
【0045】
本実施形態によれば、仕切板13が垂直方向下側に傾斜しているため、遠心分離器3は、塵埃貯蔵部6での旋回流速をより静止状態に近づけることができる。これにより、遠心分離器3は、塵埃貯蔵部6に貯蔵された塵埃が流出するのをさらに防止することができる。
【0046】
(第4実施形態)
図8は、第4実施形態の鉄道車両用空調装置における遠心分離器等の斜視図である。
【0047】
本実施形態の室外機20は、実施形態1と同様に、室外熱交換器1、室外送風機2及びモータ4及び遠心分離器3を備える。具体的には、
図8は、遠心分離器3、室外送風機2及びモータ4の断面を斜視図で示している。
【0048】
本実施形態では、塵埃貯蔵部6は、鉄道レール方向(X方向)に延伸される端部14を有する。
【0049】
一般的な重力式の遠心分離器では、重力方向下側に十分な寸法を取ることができるため、遠心分離器の下部に設置される塵埃貯蔵部6の流速は、ほぼゼロとなり、貯蔵された塵埃が流出することはない。しかし、本実施形態における鉄道車両用空調装置100は、全高11等に制限があるため、遠心分離器3では、前述のように重力方向に寸法を取ることができない。そのため、塵埃貯蔵部6は、鉄道レール方向に延伸した端部14を設けることで、端部14における流速を抑制し、塵埃が流出するのを防止する。
【0050】
図9は、第1実施形態における遠心分離器と第4実施形態における遠心分離器との流速シミュレーション結果の比較例である。
【0051】
図9Aは、第1実施形態の遠心分離器3における流速分布図の例であり、
図9Bは、第4実施形態の遠心分離器3における流速分布図の例である。これらは、X方向の断面及びY方向の断面における流速の大きさを可視化したものである。各図下側のグレースケールは、流速の大きさを表している。グレースケール左側ほど流速の値が小さく、右側ほど流速の値が大きいことを示している。
【0052】
図9A、9Bの例では、同一の室外送風機2を用いてシミュレーションを行った。
図9Aの塵埃貯蔵部6(
図9A四角部分参照)は、流速の値がゼロになっていないことを示しており、
図9Bの塵埃貯蔵部6(
図9B四角部分参照)は、流速の値がほぼゼロになっていることを示している。
【0053】
このように遠心分離器3は、塵埃貯蔵部6に端部14を設け、鉄道レール方向に延伸することで、流速を抑制することができる。
【0054】
図10は、第1実施形態における遠心分離器と第4実施形態における遠心分離器との集塵率シミュレーション結果の比較例である。
【0055】
図10Aは、第1実施形態の遠心分離器3における集塵率の例であり、
図10Bは、第4実施形態の遠心分離器3における集塵率の例である。これらの図は、集塵率及び集塵した塵埃の流速を可視化したものである。各図下側のグレースケールは、塵埃の流速の大きさを表している。グレースケールの左側ほど塵埃の流速の値が小さく、右側ほど塵埃の流速の値が大きいことを示している。
【0056】
図10A、10Bの例では、同一の室外送風機2を用いて、遠心分離器3が吸気口7から同一量の塵埃を吸引した場合の動作について、シミュレーションを行った。図中の粒子は、塵埃を表している。遠心分離器3を備えない場合の集塵率を0%とすると、
図10Aの遠心分離器3における集塵率は、24.2%であり、
図10Bの遠心分離器3における集塵率は、54.2%であることを示している。遠心分離器3は、塵埃貯蔵部6に端部14を設けることにより、より集塵率を向上させることができる。
【0057】
また、
図10Aでは、塵埃貯蔵部6内に貯蔵された塵埃は、流速の値がゼロになっていないのに対して、
図10Bでは、端部14を設けることにより、端部14内の流速の値がほぼゼロになっていることを示している。また、
図10Bは、端部14内に塵埃が多く蓄積されていることを示している。
【0058】
また、端部14は、流速の減速領域となる角部を有する程度に延伸されるのが望ましい。
図10Bの塵埃貯蔵部は、端部14が角部を有していることにより(
図10Bの四角部分参照)、より流速が減速していることが分かる。これにより、塵埃が流出するのを防止することができる。
【0059】
本実施形態によれば、遠心分離器3は、重力方向に十分な寸法をとることができない場合であっても、鉄道レール方向に延伸した端部14によって、流速の減速領域が設けられるため、塵埃が流出するのを防止することができる。また、遠心分離器3は、端部14を設けることで集塵率を向上させることができる。
【0060】
(第5実施形態)
図11は、第5実施形態の鉄道車両用空調装置における遠心分離器等の斜視図である。
【0061】
本実施形態の室外機20は、実施形態1と同様に、室外熱交換器1、室外送風機2及びモータ4及び遠心分離器3を備える。具体的には、
図11は、遠心分離器3、室外送風機2及びモータ4の断面を斜視図で示している。
【0062】
本実施形態では、塵埃貯蔵部6は、鉄道レール方向に延伸される端部14を有しており、端部14は、嵌合部17で塵埃貯蔵部6から取り外し可能となっている。
【0063】
嵌合部17は、留具18を備えることで、塵埃貯蔵部6と固定することができる。留具18の形状は、
図11のような差し込み式のものに限定されず、蝶ネジ等のネジ接続であってもよく、種々の留具18を採用することができる。嵌合部17は、留具18を有することで、端部14の取り外しの際の保守性を保ちながら、鉄道車両200の振動に伴う端部14の脱落を防止することができる。
【0064】
また、
図11では記載を省略するが、嵌合部17は、パッキン等の密閉性の高い素材を取り付けることで、外気の進入や塵埃の流出をさらに抑制することができる。
【0065】
本実施形態によれば、端部14に嵌合部17を設けることで、鉄道車両200の保守作業員は、遠心分離器3から端部14を取り外して、内部に貯蔵された塵埃を除去することができる。また、遠心分離器3の端部14を取り外し可能とすることで、塵埃除去作業における作業性を向上させることができる。
【0066】
(第6実施形態)
図12は、第6実施形態の鉄道車両用空調装置における遠心分離器の断面図である。
【0067】
本実施形態の遠心分離器3は、遠心分離部5に円錐部24を有する重力式の遠心分離器3である。円錐部24は、円錐形状の内壁面を有している。遠心分離器3は、吸気口7から外気を吸引する。吸引された外気は、旋回流によって円錐部24の内面を旋回しながら下降し、塵埃と、塵埃が分離された空気に遠心分離される。この図では、室外送風機2にモータ4が内蔵されている図となっているため、図中では、モータ4の記載を省略している。
【0068】
遠心分離器3は、室外送風機2及びモータ4の回転軸と重なる位置に配置される。これにより、室外機20内において、遠心分離器3、室外送風機2及びモータ4の配置を省スペース化することができる。好ましくは、遠心分離器3内の旋回流の旋回中心と、室外送風機2及びモータ4の回転軸とが同心軸上になるように、遠心分離器3を室外送風機2の下に設置することで、さらに省スペース化を実現することができる。
【0069】
遠心分離器3は、円錐部24を有しているため、塵埃貯蔵部6の入口が狭くなっている。塵埃貯蔵部6の入口付近では、流動抵抗が大きくなり、塵埃が分離された空気は、塵埃貯蔵部6には流入せず、上昇気流によって排気口8から排気される。排気された空気は、室外熱交換器1(不図示)に接触し、熱交換が行われる。また、室外送風機2は、遠心式の送風機の他、軸流式の送風機等、排気された空気を室外熱交換器1に接触させるための種々の送風機を採用することができる。
【0070】
上述の通り、第1~5実施形態による遠心分離器3を採用する方が、外気からより多くの塵埃を分離することができるが、本実施形態の遠心分離器3を用いた場合でも、塵埃を含む外気から塵埃を分離することができる。また、例えば、本実施形態における遠心分離器3は、排気口8側にフィルタなどを併用することで、さらに外気から塵埃を分離することができる。
【0071】
なお、鉄道車両用空調装置100は、鉄道車両200に限られず、バス等の車両に設けられていてもよい。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
1:室外熱交換器、2:室外送風機、3:遠心分離器、
4:モータ、5:遠心分離部、6:塵埃貯蔵部、
7:吸気口、8:排気口、9:吸い込み口、10:吐き出し口、
11:全高、12:全高、13:仕切板、14:端部、
17:嵌合部、18:留具、20:室外機、21:コンプレッサ、
22:蓋部、22’:蓋部、23、隔離板、24:円錐部、
30:室内機、31:室内送風機、32:室内熱交換器、
100、鉄道車両用空調装置、200:鉄道車両、
300:ダクト、400:客室