(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118941
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
B62D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025559
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】水戸部 貴志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀伸
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DA25
3D030DA34
3D030DB13
(57)【要約】
【課題】表皮材の厚さの違いによりセンサーの感度に差を生じさせ難くすることが可能なステアリングホイールを提供する。
【解決手段】本発明のステアリングホイール(1)では、リム本体部(11,41)と表皮材(20,50)との間に静電容量式センサーマット(30,60)が配され、表皮材(20,50)は、第1表皮部(26,56)と、第1表皮部(26,56)よりも厚い第2表皮部(27,57)とを有し、センサーマット(30,60)は、第1表皮部(26,56)に接触する第1マット部(36,66)と、第1マット部(36,66)よりも薄く且つ第2表皮部(27,57)に接触する第2マット部(37,67)とを有し、センサーマット(30,60)の第1マット部(36,66)及び第2マット部(37,67)間の厚さの差により、表皮材(20,50)の第1表皮部(26,56)及び第2表皮部(27,57)間の厚さの差が吸収されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が把持するリム部を少なくとも有し、前記リム部は、リム本体部と、前記リム本体部を外側から被覆する表皮材と、前記リム本体部及び前記表皮材間に配される静電容量式センサーマットとを有するステアリングホイールにおいて、
前記表皮材は、一定の厚さを有する第1表皮部と、前記第1表皮部よりも厚く形成される第2表皮部とを有し、
前記センサーマットは、一定の厚さを有するとともに前記第1表皮部に接触する第1マット部と、前記第1マット部よりも薄く形成されるとともに前記第2表皮部に接触する第2マット部とを有し、
前記センサーマットの前記第1マット部及び前記第2マット部間の厚さの差により、前記表皮材の前記第1表皮部及び前記第2表皮部間の厚さの差が吸収されている
ことを特徴とするステアリングホイール。
【請求項2】
前記センサーマットは、絶縁体により形成される基材部と、前記基材部と前記表皮材との間に配されるセンサー電極部とを少なくとも有し、
前記センサーマットの前記第2マット部は、前記基材部の厚さを前記第1マット部よりも薄くして形成されている
請求項1記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記リム部は、前記リム部の中央位置を示すように設けられたセンターマーク部を有し、
前記表皮材の前記第2表皮部は、前記センターマーク部と、前記センターマーク部に隣接するマーク隣接部とを含む
請求項1記載のステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開平9-226599号公報(特許文献1)に記載されているステアリングホイールでは、ステアリングホイールの運転者に対向するステアリング表面に皮革表皮材が取り付けられている。また、この特許文献1の皮革表皮材は、複数枚の分割皮革部を有しており、分割皮革部の端縁同士が縫合されることによって、1枚の皮革表皮材が形成されている。
【0003】
このような皮革表皮材でステアリングホイールのステアリング表面が覆われることにより、ステアリングホイールの見栄えを良くすることができる。更に、その皮革表皮材が、複数の分割皮革部を縫い合わせて形成されていることにより、歩留まりの向上が図れるとともに、コストの増大を抑制できる。
【0004】
また、分割皮革部の端縁同士を縫合するときには、それぞれの分割皮革部の先端部分が内面側に折り曲げられた(折り返された)状態で、その折り曲げられたU字状の折り曲げ部同士が縫い合わせられる。これにより、特許文献1では、分割皮革部を縫い合わせた境界部分が目立ち難くなり、また、分割皮革部の境界部分の外観も損なわれることがないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のステアリングホイールにおいて、ステアリングホイールのリム部等に取り付けられる表皮材が、複数の表皮部を縫い合わせて形成される場合、各表皮部の縫い合わせる端縁部は、例えば特許文献1のように、縫い合わせたときの見栄えを良くするために表皮部の先端部を折り返すことによって、U字状に折り曲げられた形状を有する。
【0007】
しかし、このように各表皮部の端縁部がU字状に折り曲げられた形状を有すると、表皮部の端縁部の厚さが、表皮部の端縁部以外の部分よりも部分的に増大する。なおこの場合、例えば、表皮部の先端部をその他の部分よりも予め薄く形成しておくことによって、U字状に折り曲げられた端縁部の厚さが増大することを抑えられるものの、そのU字状の端縁部を、表皮部の端縁部以外の部分と同じような厚さで形成することは難しかった。
【0008】
ところで、近年では、運転者がステアリングホイールを把持しているか否かを検出するために、ステアリングホイールのリム部に静電容量式のセンサー(例えば、センサーマット)が設けられることがある。しかし、このような静電容量式のセンサーが設けられるステアリングホイールにおいて、例えば特許文献1のような表皮部の縫い合わせによって表皮材の厚さが部分的に厚くなる場合、表皮材の厚さが異なる部分(すなわち、薄い部分と厚い部分)の間でセンサーの感度に差を生じさせ、その結果、センサー全体の性能の低下を招くことがあった。
【0009】
また、従来のステアリングホイールには、ステアリングホイールの中央位置(ニュートラルの位置)を示すセンターマークが、リム部の表皮材に設けられていることもある。しかし、このようなセンターマークが設けられる場合、センターマーク及びセンターマークに隣接する部分が、リム部に取り付けられる表皮材のその他の部分よりも厚く形成される。その結果、センターマークが設けられるステアリングホイールにおいても、ステアリングホイールに静電容量式のセンサーが設けられる場合に、上述した表皮材の厚さの違いによって、センサーの感度に差を生じさせることがあった。
【0010】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、リム部に取り付けられる表皮材が厚さを異ならせる部分を有していても、その表皮材の厚さの違いによりセンサーの感度に差を生じさせ難くすることが可能なステアリングホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるステアリングホイールは、運転者が把持するリム部を少なくとも有し、前記リム部は、リム本体部と、前記リム本体部を外側から被覆する表皮材と、前記リム本体部及び前記表皮材間に配される静電容量式センサーマットとを有するステアリングホイールにおいて、前記表皮材は、一定の厚さを有する第1表皮部と、前記第1表皮部よりも厚く形成される第2表皮部とを有し、前記センサーマットは、一定の厚さを有するとともに前記第1表皮部に接触する第1マット部と、前記第1マット部よりも薄く形成されるとともに前記第2表皮部に接触する第2マット部とを有し、前記センサーマットの前記第1マット部及び前記第2マット部間の厚さの差により、前記表皮材の前記第1表皮部及び前記第2表皮部間の厚さの差が吸収されているステアリングホイールである。
【0012】
本発明のステアリングホイールにおいて、前記センサーマットは、絶縁体により形成される基材部と、前記基材部と前記表皮材との間に配されるセンサー電極部とを少なくとも有し、前記センサーマットの前記第2マット部は、前記基材部の厚さを前記第1マット部よりも薄くして形成されていることが好ましい。
【0013】
また本発明において、前記リム部は、前記リム部の中央位置を示すように設けられたセンターマーク部を有し、前記表皮材の前記第2表皮部は、前記センターマーク部と、前記センターマーク部に隣接するマーク隣接部とを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のステアリングホイールによれば、リム部に取り付けられる表皮材が、表皮材の仕様等によって厚さを異ならせる部分を有していても、その表皮材の厚さの違いによりセンサーの感度に差を生じさせないこと、又は生じさせ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1に係るステアリングホイールを模式的に示す正面図である。
【
図2】
図1に示したII-II線における断面を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の実施例2に係るステアリングホイールの要部の断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。
【実施例0017】
図1は、本実施例1に係るステアリングホイールを模式的に示す正面図である。
図2は、
図1に示したII-II線における断面を模式的に示す断面図である。
【0018】
なお、以下の説明において、上下方向及び左右方向とは、ステアリングホイールが装着されるステアリングシャフトの軸方向に直交する方向で、且つ、ステアリングホイールをニュートラルの位置で保持した状態にて運転者側から見たときのステアリングホイールにおける上下方向(
図1の紙面においてリム部の0時の部分と6時の部分を結ぶ方向)及び左右方向(
図1の紙面においてリム部の9時の部分と3時の部分を結ぶ方向)を言う。
【0019】
また、前方とは、ステアリングシャフトの軸方向に平行な方向で、運転者側から見たときのステアリングホイールの手前側(
図1の紙面に対して手前側)の方向を言い、後方とは、ステアリングホイールの奥側(
図1の紙面に対して奥側)の方向を言う。
【0020】
本実施例1のステアリングホイール1は、ステアリング本体2と、ステアリング本体2の運転者に対向する乗員対向表面(前面)側に配されるとともにエアバッグモジュールを内部に収納するステアリングパッド3と、ステアリングパッド3から下側及び左右両側に延びるように配されるフィニッシャ4と、ステアリング本体2の乗員対向表面とは反対となる裏面(後面)側を被覆する図示しないロアカバーとを有する。
【0021】
ステアリング本体2は、運転者が把持する環状のリム部10と、リム部10の中央部に配されるとともにステアリングパッド3を支持するボス部(不図示)と、リム部10及びボス部間を連結する3つのスポーク部(不図示)とを有する。なお、本発明は、ステアリングホイール1のリム部10に主な特徴を有するため、以下ではリム部10を中心に説明を行う。
【0022】
本実施例1のリム部10は、環状に形成されるリム本体部11と、リム本体部11を外側から被覆するようにリム本体部11に取り付けられる表皮材20と、リム本体部11及び表皮材20間に配されるセンサーマット30とを有する(
図2を参照)。この場合、センサーマット30は、センサーマット30の内面をリム本体部11に接触させ、且つ、センサーマット30の外面を表皮材20に接触させて配されている。
【0023】
リム部10のリム本体部11は、リム部10の周方向に直交する断面(不図示)を見たときに、芯材(骨格)となるリム芯金部(不図示)と、リム芯金部を被覆するリム被覆部11aとを有する。リム芯金部は、合金等の金属により形成されており、また、環状のリム部10の周方向に沿ってリム部10の全体に連続的に配されている。リム被覆部11aは、リム芯金部を内側に包み込むように、リム芯金部の外側に形成されており、また、ポリウレタン樹脂等の軟質の合成樹脂により形成されている。なお本発明において、リム芯金部及びリム被覆部11aの材質及び形状等は特に限定されない。
【0024】
表皮材20は、リム本体部11に外側から巻き付けられることによって、リム部10の外面を形成している。本実施例1の表皮材20は、リム部10の中央位置を示すセンターマーク部21と、センターマーク部21以外のリム部10の外面を形成する表皮本体部22とを有する。
【0025】
センターマーク部21は、ステアリング本体2がニュートラルの位置で保持された状態において、リム部10の上端部に配されている(
図1を参照)。表皮材20の表皮本体部22は、センターマーク部21に隣接するマーク隣接部22aと、マーク隣接部22aから延びる表皮延在部22bとを有しており、マーク隣接部22aは、センターマーク部21を挟むようにして、センターマーク部21の左右両側にそれぞれ配されている。なお本発明において、センターマーク部の材質及び構造、並びに表皮本体部の材質等は特に限定されない。
【0026】
本実施例1の表皮本体部22は、一定の厚さを有する合成皮革を用いて形成されており、この合成皮革は、センターマーク部21よりも厚さを薄くして形成されている。なお本発明において、一定の厚さを有するとは、同じ厚さを有する場合だけでなく、略同じ厚さを有する場合(言い換えると、厚さに誤差がある場合)を含むものとする。
【0027】
表皮本体部22のマーク隣接部22aは、
図2に示すように、合成皮革の端縁が表皮本体部22の裏側に折り返されることによって、合成皮革が略U字状に折り曲げられた形状で形成されている。このため、左右の各マーク隣接部22aは、表皮本体部22のマーク隣接部22a以外の部分(すなわち、表皮延在部22b)に対して略2倍の厚さを有する。
【0028】
本実施例1において、マーク隣接部22aの厚さは、センターマーク部21と同じ厚さ又は略同じ厚さに設定されている。また、左右のマーク隣接部22aと、センターマーク部21の左右側縁部とは、縫製糸(不図示)で互いに縫い合わされることによって連結されている。なお本発明において、左右のマーク隣接部とセンターマーク部とを連結する方法及び手段は特に限定されない。
【0029】
更に、上述のような本実施例1の表皮材20は、一定の厚さを有する第1表皮部26と、その第1表皮部26よりも厚く形成される第2表皮部27とを少なくとも有する。この場合、本実施例1の第1表皮部26は、表皮本体部22の上述した表皮延在部22bによって形成されており、第2表皮部27は、表皮本体部22のマーク隣接部22aと、センターマーク部21とによって形成されている。また、第2表皮部27は、リム部10の周方向において、左右の第1表皮部26の間に一定の厚さで設けられている。
【0030】
本実施例1のセンサーマット30は、静電容量の変化を利用して、運転者にステアリングホイール1のリム部10が把持されているか否かを検出する静電容量式のセンサーマット30である。このセンサーマット30は、リム本体部11と表皮材20の間の位置でリム本体部11に巻き付けるように、リム部10の全周又は略全周に亘って設置されている。センサーマット30は、環状に形成されるリム本体部11に巻き付け可能なように、薄くて長尺なシート状に形成されている。また、センサーマット30は、リム本体部11に接する内面と、表皮材20に接する外面とを有する。
【0031】
センサーマット30は、
図2に示したように、絶縁体(誘電体)により形成される基材部31と、基材部31の外面側(表皮材20に近い側)に設けられるセンサー電極32と、基材部31の内面側(リム本体部11に近い側)に設けられる接地電極33とを有する。接地電極33は、シールド電極と言われることもある。
【0032】
センサーマット30の基材部31は、センサー電極32及び接地電極33間に挟まれて配されるとともに、センサー電極32及び接地電極33と一体的に形成されている。また、センサーマット30は、ステアリング本体2に設置されるセンサー制御部(不図示)に電気的に接続されており、このセンサー制御部において、運転者がリム部10を把持しているか否かを判別することが可能である。
【0033】
本実施例1のセンサーマット30は、一定の厚さを有する第1マット部36と、第1マット部36よりも薄く形成される第2マット部37と、第1マット部36及び第2マット部37間に配される境界部38とを有する。また、センサーマット30の表皮材20に接する外面には、第1マット部36、境界部38、及び第2マット部37の厚さの違いによって凹凸形状が形成されている。
【0034】
この場合、センサーマット30の第1マット部36は、表皮材20の第1表皮部26に対応する位置に配されるとともに、第1表皮部26に接触している。第2マット部37は、表皮材20の第2表皮部27に対応する位置に配されるとともに、第2表皮部27に接触している。センサーマット30の境界部38は、センサーマット30の厚さを第1マット部36から第2マット部37に向けて漸減させる傾斜部を有するように形成されている。なお本発明において、センサーマットの境界部は、実施例1のように傾斜部を有する形状ではなく、リム部の周方向に直交するような段差部を有するように形成されていてもよい。
【0035】
本実施例1において、センサーマット30の基材部31は、オレフィン系エラストマーからなる合成樹脂層により形成されており、この基材部31の厚さをリム部10の周方向で変化させることによって、センサーマット30の第1マット部36、第2マット部37、及び境界部38が形成されている。すなわち、センサーマット30の第1マット部36は、基材部31の厚さを第2マット部37よりも厚くすることによって形成されている。また、センサーマット30の境界部38は、基材部31の厚さをリム部10の周方向に漸次変化させることによって形成されている。
【0036】
本実施例1では、センサーマット30における第1マット部36と第2マット部37との間の厚さの差は、表皮材20における第1表皮部26と第2表皮部27との間の厚さの差を吸収するように設けられている。より具体的に説明すると、センサーマット30における第2マット部37の外面は、第1マット部36の外面に対し、表皮材20における第1表皮部26の内面に対する第2表皮部27の内面側(裏面側)への膨らみを吸収するように凹んだ位置に設けられている。この場合、センサーマット30における第1マット部36と第2マット部37との間の厚さの差と、表皮材20における第1表皮部26と第2表皮部27との間の厚さの差とは、実質的に同じ大きさである。
【0037】
これにより、表皮材20の厚さがセンターマーク部21の設置によって部分的に増大しても、センサーマット30によって表皮材20の厚さの増大を吸収して、表皮材20とセンサーマット30の合計の厚さを、リム部10の周方向に沿って一定に又は略一定に均一化できる。またそれによって、リム部10の外面(表皮材20の外面)を、凹凸がない又は凹凸が少ない滑らかな面に形成できる。
【0038】
センサーマット30のセンサー電極32と接地電極33とは、メッキが施された合成繊維を用いて作製される導電布により形成されており、基材部31の一方の面と他方の面とにそれぞれ接着されている。なお、センサー電極32及び接地電極33は、導電性を備えていれば、その材質や構造は特に限定されるものではなく、例えば金属線を用いて形成されていてもよい。また、センサー電極32及び接地電極33は、例えば縫製によって基材部31に取り付けられていてもよい。
【0039】
以上のような本実施例1のステアリングホイール1によれば、センターマーク部21の設置によって表皮材20の厚さが第2表皮部27で部分的に増大していても、その第2表皮部27が形成されている位置及び範囲に対応させて、センサーマット30に第1マット部36よりも厚さを薄くした第2マット部37を設けることによって、表皮材20の第1表皮部26と第2表皮部27との厚さの差をセンサーマット30で吸収できる。
【0040】
従って、表皮材20の厚さが上述のようにリム部10の周方向で変化していても、センサーマット30の感度を、センサーマット30の厚さを変化させることによって補整できるため、リム部10の周方向でセンサーの感度に差を生じさせず、又は差を生じさせ難くして、センサーマット30の全体の性能が低下することを防止又は抑制できる。これによって、本実施例1のステアリングホイール1では、運転者がステアリングホイール1のリム部10を何れの位置で把持しても、その運転者の把持をリム部10に設置したセンサーマット30を介して安定して検出できる。
本実施例2のステアリングホイールにおいて、リム部40は、環状に形成されるリム本体部41と、リム本体部41を被覆するようにリム本体部41に取り付けられる表皮材50と、リム本体部41及び表皮材50間に配されるセンサーマット60とを有する。
リム本体部41は、前述した実施例1と同様に、リム芯金部(不図示)と、リム芯金部を被覆するリム被覆部41aとを有しており、リム被覆部41aは、リム芯金部を内側に包み込むように形成されており、また、軟質の合成樹脂により形成されている。
本実施例2の表皮材50には、前述の実施例1のようなセンターマーク部は設けられていないものの、本実施例2の表皮材50は、合成皮革で形成される合成皮革部51と、本革(天然皮革)で形成される本革部52とを有する。この場合、合成皮革部51及び本革部52は、接着剤によりリム本体部41に固定されている。なお本発明において、合成皮革部及び本革部をリム本体部に固定する方法及び手段は限定されない。
ここで、本実施例2のステアリングホイールをニュートラルの位置で保持した状態で運転者側から見た正面視において、例えばリム部40の範囲(領域)を時計の文字盤で例える場合、合成皮革部51は、リム部40における1時と2時の中間位置から4時と5時の中間位置までの範囲と、7時と8時の中間位置から10時と11時の中間位置までの範囲とに設けられている。また、本革部52は、10時と11時の中間位置から1時と2時の中間位置までの範囲と、4時と5時の中間位置から7時と8時の中間位置までの範囲とに設けられている。
上述した合成皮革部51及び本革部52を有する本実施例2の表皮材50は、一定の厚さを有する第1表皮部56と、その第1表皮部56よりも厚く形成される第2表皮部57とを有する。この場合、本実施例2の第1表皮部56は、本革部52によって形成されており、第2表皮部57は、合成皮革部51によって形成されている。
本実施例2のセンサーマット60は、前述の実施例1と同様に、静電容量式のセンサーマット60であり、リム本体部41と表皮材50の間の位置でリム本体部41に巻き付けるように、リム部40の全周又は略全周に亘って設置されている。このセンサーマット60は、オレフィン系エラストマーにより形成される基材部61と、基材部61の外面側に設けられるセンサー電極62と、基材部61の内面側に設けられる接地電極63とを有する。また、センサーマット60は、ステアリング本体に設置されるセンサー制御部(不図示)に電気的に接続されている。
本実施例2のセンサーマット60は、一定の厚さを有する第1マット部66と、第1マット部66よりも薄く形成される第2マット部67と、第1マット部66及び第2マット部67間に配される境界部とを有する。センサーマット60の第1マット部66は、表皮材50の第1表皮部56に対応する位置に、第1表皮部56に接触して配されており、第2マット部67は、表皮材50の第2表皮部57に対応する位置に、第2表皮部57に接触して配されている。センサーマット60の表皮材50に接する外面には、第1マット部66と第2マット部67の厚さの違いによる段差が形成されており、このセンサーマット60の段差は、表皮材50の第1表皮部56及び第2表皮部57間の境界部の位置に対応して設けられている。
センサーマット60の第1マット部66は、第2マット部67よりも基材部61の厚さを厚くすることによって形成されている。また、センサーマット60における第1マット部66と第2マット部67との間の厚さの差は、表皮材50における第1表皮部56と第2表皮部57との間の厚さの差を吸収するように設けられている。これにより、表皮材50の厚さが、表皮材50の材質の違いによって部分的に異なっていても、センサーマット60で表皮材50の厚さの違いを吸収して、表皮材50とセンサーマット60の合計の厚さを、リム部40の周方向に沿って一定に又は略一定に均一化できる。
従って、本実施例2のステアリングホイールにおいては、表皮材50の厚さがリム部40の周方向で変化していても、センサーマット60の厚さを変化させることによって、センサーマット60の感度を補整できるため、前述の実施例1のステアリングホイール1と同様に、リム部40の周方向でセンサーの感度に差を生じさせないこと、又は差を生じさせ難くすることができる。それによって、センサーマット60が良好なセンサー性能を安定して発揮できる。
また、本実施例2では、例えばリム部40の周方向に直交する方向でリム部40を切断したときの断面視において、表皮材50の厚さが円形のリム本体部41の円周方向で変化する場合においても、センサーマット60の厚さを表皮材50に対応させて変化させることによって、表皮材50の厚さの変化を吸収し、センサーマット60の感度を補整することが可能である。
なお、本発明は、上述した実施例1及び2に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載した構成と実質的に同一な構成を有し、且つ、同様な作用効果を奏する範囲において多様な変更が可能である。
例えばステアリングホイールの形状、寸法、及びデザイン等については特に限定されず、変更可能である。また上述した実施例1及び2において、表皮材20,50において厚く形成される第2表皮部27,57と、センサーマット30,60において薄く形成される第2マット部37,67とは、それぞれ一定の厚さで形成されている。しかし本発明では、センサーマットによって表皮材の第1表皮部及び第2表皮部間の厚さの差を吸収可能であれば、表皮材の第2表皮部、及びセンサーマットの第2マット部は、厚さを一定にすることなく形成されていてもよい。また本発明において、表皮材の一定の厚さを有する第1表皮部と、センサーマットの一定の厚さを有する第1マット部とは、表皮材及びセンサーマットの少なくとも一部に設けられていればよい。