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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118953
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】複合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20240826BHJP
   C08F 136/04 20060101ALI20240826BHJP
   C08F 210/00 20060101ALI20240826BHJP
   C08F 212/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B29C65/02
C08F136/04
C08F210/00
C08F212/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025573
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228120
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 蓮太朗
(72)【発明者】
【氏名】山口 健
(72)【発明者】
【氏名】竹重 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】会田 昭二郎
(72)【発明者】
【氏名】加賀 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】浜谷 悟司
(72)【発明者】
【氏名】橋口 真
【テーマコード(参考)】
4F211
4J100
【Fターム(参考)】
4F211AA02
4F211AA03
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4F211AA07
4F211AA08
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4J100CA03
4J100CA05
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4J100FA19
4J100GA01
4J100GC07
4J100GC26
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】剥離強度が向上しており、さらには、部材同士の接着が容易な複合体と、該複合体の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2つの部材からなる複合体であって、前記少なくとも2つの部材が接合しており、接合している部材は、それぞれ異なる素材で構成され、前記少なくとも2つの部材が、いずれも共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体を含有する、複合体、並びに、該複合体の製造方法であって、前記少なくとも2つの部材を接触させることと、接触している前記少なくとも2つの部材を加熱して、接合し、固定化することと、を含む、複合体の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの部材からなる複合体であって、
前記少なくとも2つの部材が接合しており、
接合している部材は、それぞれ異なる素材で構成され、
前記少なくとも2つの部材が、いずれも共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体を含有する、複合体。
【請求項2】
前記共重合体の融点が50~120℃である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が0mol%を超え50mol%以下であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が50mol%以上100mol%未満である、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記共重合体が、さらに芳香族ビニル単位を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
前記共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が1~50mol%であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が40~97mol%であり、前記芳香族ビニル単位の含有量が2~35mol%である、請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
前記部材のそれぞれにおける前記共重合体の含有量が0.1~25質量%である、請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
前記共重合体の融点の差が、前記部材間で30℃以下である、請求項1に記載の複合体。
【請求項8】
前記少なくとも2つの部材の少なくとも1つが、前記共重合体を3~20質量%含み、ジエン系ゴムを50質量%以上含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項9】
前記部材の少なくとも1つが、前記共重合体を0.1~10質量%含み、アスファルト成分を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項10】
前記部材の少なくとも1つが、樹脂成分を50質量%以上含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項11】
請求項1に記載の複合体の製造方法であって、
前記少なくとも2つの部材を接触させる工程と、
接触している前記少なくとも2つの部材を加熱して、接合し、固定化する工程と、を含む、複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異種材料、例えばゴムと樹脂の接着においては、過去より接着性の検討が進められている。
例えば、下記特許文献1には、加硫ゴムと樹脂の少なくとも一方の接着面に前処理を施し、前記加硫ゴムと前記樹脂とを積層させて熱圧縮してなる、加硫ゴムと樹脂とを接着してなる積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-144388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の加硫ゴムと樹脂とを接着してなる積層体は、接着力が十分でなく、接着力の向上には未だ改善の余地があることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、剥離強度が向上しており、さらには、部材同士の接着が容易な複合体を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかる複合体の製造方法を提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の複合体及び複合体の製造方法の要旨構成は、以下のとおりである。
【0007】
[1] 少なくとも2つの部材からなる複合体であって、
前記少なくとも2つの部材が接合しており、
接合している部材は、それぞれ異なる素材で構成され、
前記少なくとも2つの部材が、いずれも共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体を含有する、複合体。
この場合、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体を、いずれの部材も含むことにより、剥離強度が向上し、さらに、異種の素材からなる部材同士の接着が容易である。
【0008】
[2] 前記共重合体の融点が50~120℃である、[1]に記載の複合体。
この場合、共重合体の結晶性が高くなり、複合体の剥離強度が向上する。
【0009】
[3] 前記共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が0mol%を超え50mol%以下であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が50mol%以上100mol%未満である、[1]又は[2]に記載の複合体。
この場合、複合体の剥離強度が向上する。
【0010】
[4] 前記共重合体が、さらに芳香族ビニル単位を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の複合体。
この場合、共重合体の剛性を向上させつつも、弾性を損ねにくく、高い剥離強度を得られる。
【0011】
[5] 前記共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が1~50mol%であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が40~97mol%であり、前記芳香族ビニル単位の含有量が2~35mol%である、[4]に記載の複合体。
この場合、複合体の剥離強度を向上できる。
【0012】
[6] 前記部材のそれぞれにおける前記共重合体の含有量が0.1~25質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の複合体。
この場合、剥離強度を向上させ、さらに、部材同士の接着が容易になる。
【0013】
[7] 前記共重合体の融点の差が、前記部材間で30℃以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の複合体。
この場合、部材同士の接着がより容易になる。
【0014】
[8] 前記少なくとも2つの部材の少なくとも1つが、前記共重合体を3~20質量%含み、ジエン系ゴムを50質量%以上含む、[1]~[7]のいずれかに記載の複合体。
この場合、ジエン系ゴムを含む部材と他の部材との剥離強度が向上し、さらに、部材同士の接着が容易になる。
【0015】
[9] 前記部材の少なくとも1つが、前記共重合体を0.1~10質量%含み、アスファルト成分を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の複合体。
この場合、アスファルト成分を含む部材と他の部材との剥離強度が向上し、さらに、部材同士の接着が容易になる。
【0016】
[10] 前記部材の少なくとも1つが、樹脂成分を50質量%以上含む、[1]~[9]のいずれかに記載の複合体。
この場合、樹脂成分を含む部材と他の部材との剥離強度が向上し、さらに、部材同士の接着が容易になる。
【0017】
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の複合体の製造方法であって、
前記少なくとも2つの部材を接触させる工程と、
接触している前記少なくとも2つの部材を加熱して、接合し、固定化する工程と、を含む、複合体の製造方法。
この場合、剥離強度が向上し、さらに、異種の素材からなる部材同士の接着が容易な複合体を製造できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、剥離強度が向上し、さらに、部材同士の接着が容易な複合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0020】
<定義>
本明細書に記載されている化合物は、部分的に、又は全てが化石資源由来であってもよく、植物資源等の生物資源由来であってもよく、使用済タイヤ等の再生資源由来であってもよい。また、化石資源、生物資源、再生資源のいずれか2つ以上の混合物由来であってもよい。
【0021】
本明細書において、「ゴム成分」及び「ジエン系ゴム」には、「共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体」は包含されないものとする。
【0022】
<複合体>
本発明の一実施形態の複合体は、少なくとも2つの部材からなる複合体であって、前記少なくとも2つの部材が接合しており、接合している部材は、それぞれ異なる素材で構成され、前記少なくとも2つの部材が、いずれも共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体(以下、単に「共重合体」と称することがある)を含有する。
【0023】
本実施形態の複合体は、少なくとも2つの部材からなり、該少なくとも2つの部材が接合している。
【0024】
前記少なくとも2つの部材は、それぞれ異なる素材で構成される部材である。部材を構成する素材は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、部材は、ゴム成分やアスファルト成分、樹脂成分等を含んでもよい。特に限定されないが、少なくとも2つの部材の1つがゴム成分を含み、他の部材がアスファルト成分を含んでもよいし、少なくとも2つの部材の1つがゴム成分を含み、他の部材が樹脂成分を含んでもよいし、少なくとも2つの部材の1つがアスファルト成分を含み、他の部材が樹脂成分を含んでいてもよい。
【0025】
本実施形態の複合体に用いる少なくとも2つの部材は、いずれも共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体を含有する。少なくとも2つの部材が該共重合体を含むことにより、それぞれ異なる素材からなる複合体であっても、剥離強度が向上し、部材同士の接着が容易になる。
【0026】
<部材>
本実施形態の部材を構成する素材は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。部材は、例えばゴム成分やアスファルト成分、樹脂成分等を含んでもよい。
【0027】
前記少なくとも2つの部材は、いずれも共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体を含有する。複合体を構成する部材がいずれも前記共重合体を含むことで、それぞれ異なる素材からなる部材であっても、剥離強度が向上し、さらに、部材同士を容易に接着できる。
【0028】
部材のそれぞれにおける共重合体の含有量としては、剥離強度を向上させ、さらに、部材同士の接着が容易になる観点から、0.1~25質量%であることが好ましい。同様の観点から、部材のそれぞれにおける共重合体の含有量は、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、部材のそれぞれにおける共重合体の含有量は、23質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。
また、部材のそれぞれにおける共重合体の含有量としては、剥離強度を向上させ、さらに、部材同士の接着が容易になる観点から、ゴム成分100質量部に対して3~40質量部であることが好ましい。同様の観点から、共重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、20質量部以下であることが好ましい。
【0029】
少なくとも2つの部材の少なくとも1つは、共重合体を3~20質量%含み、ジエン系ゴムを50質量%以上含んでいてもよい。この場合、ジエン系ゴムを含む部材と他の部材との剥離強度が向上し、さらに、部材同士の接着が容易になる。同様の観点から、共重合体の含有量は、3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。また、共重合体の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。
また、ジエン系ゴムを含む部材と他の部材との剥離強度が向上し、さらに、部材同士の接着が容易になる観点から、共重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して3質量部~40質量部であることが好ましい。同様の観点から、共重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、20質量部以下であることが好ましい。
ここで、ジエン系ゴムには、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体は包含されないものとする。
【0030】
部材の少なくとも1つが、共重合体を0.1~10質量%含み、アスファルト成分を含んでいてもよい。この場合、アスファルト成分を含む部材と他の部材との剥離強度が向上し、さらに、部材同士の接着が容易になる。同様の観点から、共重合体の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。
また、部材の少なくとも1つが、共重合体をゴム成分100質量部に対して3質量部~40質量部含み、アスファルト成分を含んでいてもよい。この場合、アスファルト成分を含む部材と他の部材との剥離強度が向上し、さらに、部材同士の接着が容易になる。同様の観点から、共重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、20質量部以下であることが好ましい。
【0031】
さらに、部材の少なくとも1つが、樹脂成分を50質量%以上含んでいてもよい。この場合、樹脂成分を含む部材と他の部材との剥離強度が向上し、部材同士の接着が容易になる。
【0032】
本実施形態の複合体に用いる部材の形状としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、コード状、シート状、ブロック状等が挙げられる。
【0033】
また、本実施形態の部材は、種々の製品の部材として使用できる。例えばゴム、樹脂、アスファルト、ガラス、金属、無機材料、炭素繊維等として使用することができる。
【0034】
<共重合体>
本実施形態の複合体に用いる部材に含まれる共重合体(以下、単に「共重合体」ということもある)は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する。
本実施形態の共重合体は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位との2つの単位からなる二元共重合体であってもよいし、さらに、芳香族ビニル単位を含む3つの単位からなる三元共重合体であってもよいし、更に、他の単量体単位を含む多元共重合体であってもよい。
【0035】
(共役ジエン単位)
共役ジエン単位は、単量体としての共役ジエン化合物に由来する構成単位である。
ここで、共役ジエン化合物とは、共役系のジエン化合物を指す。共役ジエン化合物は、炭素数が4~8であることが好ましい。かかる共役ジエン化合物として、具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0036】
前記共重合体の単量体としての共役ジエン化合物は、複合体の剥離強度を向上させる観点から、1,3-ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、1,3-ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1つのみからなることがより好ましく、1,3-ブタジエンのみからなることがさらに好ましい。
別の言い方をすると、前記共重合体における共役ジエン単位は、1,3-ブタジエン単位及びイソプレン単位からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、1,3-ブタジエン単位及びイソプレン単位からなる群より選択される少なくとも1つのみからなることがより好ましく、1,3-ブタジエン単位のみからなることがさらに好ましい。
【0037】
前記共重合体が二元共重合体の場合、共役ジエン単位の含有量は、0mol%を超え50mol%以下であることが好ましい。この場合、伸び及び耐候性に優れる共重合体を得ることができる。同様の観点から、二元共重合体における共役ジエン単位の割合は、40mol%以下であることがより好ましい。
【0038】
二元共重合体において、共役ジエン単位の1,2付加体(3,4付加体を含む)の割合は、10mol%以下であることが好ましい。上記割合が10mol%以下であると、前記共重合体の耐熱性及び耐屈曲疲労性を向上させることができる。同様の観点から、二元共重合体における共役ジエン単位の1,2付加体(3,4付加体を含む)の割合は、8mol%以下がより好ましく、6mol%以下が更に好ましい。なお、前記共役ジエン単位の1,2付加体(3,4付加体を含む)の割合は、共役ジエン単位全体における割合であって、共重合体全体における割合ではない。また、前記割合は、共役ジエン単位がブタジエン単位である場合には、1,2-ビニル結合量と同じ意味である。
【0039】
前記共重合体が三元共重合体または多元共重合体の場合、共役ジエン単位の含有量は、1mol%以上であることが好ましく、5mol%以上であることがより好ましく、10mol%以上であることが更に好ましく、また、50mol%以下であることが好ましく、40mol%以下であることがより好ましく、30mol%以下であることが更に好ましい。
【0040】
共役ジエン単位の含有量が、前記共重合体全体の1~50mol%であることで、複合体の剥離強度を向上させることができる。
複合体の剥離強度をより向上させる観点から、共役ジエン単位の含有量は、前記共重合体全体の1~50mol%の範囲が好ましく、5~40mol%の範囲がより好ましく、10~30mol%の範囲が更に好ましい。
【0041】
(非共役オレフィン単位)
非共役オレフィン単位は、単量体としての非共役オレフィン化合物に由来する構成単位である。
ここで、非共役オレフィン化合物とは、脂肪族不飽和炭化水素で、炭素-炭素二重結合を1個以上有する化合物を指す。非共役オレフィン化合物は、炭素数が2~10であることが好ましい。かかる非共役オレフィン化合物として、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィン、ピバリン酸ビニル、1-フェニルチオエテン、N-ビニルピロリドン等のヘテロ原子置換アルケン化合物等が挙げられる。非共役オレフィン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0042】
前記共重合体の単量体としての非共役オレフィン化合物は、複合体の剥離強度を向上させる観点から、非環状の非共役オレフィン化合物であることが好ましく、また、非環状の非共役オレフィン化合物は、α-オレフィンであることがより好ましく、エチレンを含むα-オレフィンであることがさらに好ましく、エチレンのみからなることが特に好ましい。
別の言い方をすると、前記共重合体における非共役オレフィン単位は、非環状の非共役オレフィン単位であることが好ましく、また、当該非環状の非共役オレフィン単位は、α-オレフィン単位であることがより好ましく、エチレン単位を含むα-オレフィン単位であることがさらに好ましく、エチレン単位のみからなることが特に好ましい。
【0043】
前記共重合体が二元共重合体の場合、非共役オレフィン単位の含有量は、50mol%以上100mol%未満であることが好ましい。この場合、複合体の剥離強度を効果的に向上させることができる。同様の観点から、二元共重合体における非共役オレフィン単位の割合は、60mol%以上であることがより好ましい。
【0044】
前記共重合体が三元共重合体又は多元共重合体の場合、非共役オレフィン単位の含有量は、40mol%以上であることが好ましく、45mol%以上であることがより好ましく、55mol%以上であることがさらに好ましく、60mol%以上であることが特に好ましく、また、97mol%以下であることが好ましく、95mol%以下であることがより好ましく、90mol%以下であることが更に好ましい。非共役オレフィン単位の含有量が、前記共重合体全体の40~97mol%であることで、剥離強度を向上させることができる。
複合体の剥離強度をより向上させる観点から、非共役オレフィン単位の含有量は、前記共重合体全体の40~97mol%の範囲が好ましく、45~95mol%の範囲がより好ましく、55~90mol%の範囲がより更に好ましく、60~90mol%の範囲が更に好ましい。
【0045】
(芳香族ビニル単位)
前記共重合体は、更に、芳香族ビニル単位を含有することが好ましい。
芳香族ビニル単位は、単量体としての芳香族ビニル単位を含有することで、エチレン結晶成分のような結晶成分を切断し、非共役オレフィン単位由来の過度の結晶化が抑制され、前記共重合体の剛性を向上させつつも、弾性を損ねにくく、剥離強度を向上させることができる。
ここで、芳香族ビニル化合物とは、少なくともビニル基で置換された芳香族化合物を指し、共役ジエン化合物には包含されないものとする。芳香族ビニル化合物としては、炭素数が8~10であることが好ましい。かかる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o、p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等が挙げられる。芳香族ビニル化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0046】
前記共重合体の単量体としての芳香族ビニル化合物は、複合体の剥離強度を向上させる観点から、スチレンを含むことが好ましく、スチレンのみからなることがより好ましい。別の言い方をすると、前記共重合体における芳香族ビニル単位は、スチレン単位を含むことが好ましく、スチレン単位のみからなることがより好ましい。
なお、芳香族ビニル単位における芳香族環は、隣接する単位と結合しない限り、前記共重合体の主鎖には含まれない。
【0047】
前記共重合体が三元共重合体又は多元共重合体の場合、芳香族ビニル単位の含有量は、2mol%以上であることが好ましく、3mol%以上であることがより好ましく、また、35mol%以下であることが好ましく、30mol%以下であることがより好ましく、25mol%以下であることが更に好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が、前記共重合体全体の2~35mol%であることで、複合体の剥離強度を向上させることができる。
複合体の剥離強度をより向上させる観点から、芳香族ビニル単位の含有量は、前記共重合体全体の2~35mol%の範囲が好ましく、3~30mol%の範囲がより好ましく、3~25mol%の範囲が更に好ましい。
【0048】
共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位以外の、その他の構成単位の含有量は、本発明の所望の効果を得る観点から、前記共重合体全体の30mol%以下であることが好ましく、20mol%以下であることがより好ましく、10mol%以下であることがさらに好ましく、含有しないこと、即ち、含有量が0mol%であることが特に好ましい。つまり、前記共重合体は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位との2つの単位からなる二元共重合体であるか、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位の3つの単位からなる三元共重合体であることが好ましい。
【0049】
前記共重合体は、複合体の剥離強度を向上させる観点から、単量体として、一種のみの共役ジエン化合物、一種のみの非共役オレフィン化合物、及び一種の芳香族ビニル化合物を少なくとも用いて重合してなる重合体であることが好ましい。
別の言い方をすると、前記共重合体は、一種のみの共役ジエン単位、一種のみの非共役オレフィン単位、及び一種のみの芳香族ビニル単位を有する共重合体であることが好ましく、一種のみの共役ジエン単位、一種のみの非共役オレフィン単位、及び一種のみのジエン芳香族ビニル単位のみからなる三元共重合体であることがより好ましく、1,3-ブタジエン単位、エチレン単位、及びスチレン単位のみからなる三元共重合体であることがさらに好ましい。ここで、「一種のみの共役ジエン単位」には、異なる結合様式の共役ジエン単位が包含される。
【0050】
前記共重合体が、例えば、二元共重合体である場合、共役ジエン単位の含有量が0mol%を超え50mol%以下であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が50mol%以上100mol%未満であることが好ましい。
前記共重合体が、例えば、三元共重合体である場合、共役ジエン単位の含有量が1~50mol%で、非共役オレフィン単位の含有量が40~97mol%で、且つ、芳香族ビニル単位の含有量が2~35mol%であることが好ましい。
【0051】
前記共重合体は、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、10,000~9,000,000(10~9,00kg/mol)であることが好ましく、50,000~9,000,000(50~9,000kg/mol)であることがより好ましく、100,000~8,000,000(100~8,000kg/mol)であることが更に好ましい。前記共重合体のMnが10,000以上であることにより、複合体の剥離強度を十分に確保することができ、また、Mnが9,000,000以下であることにより、部材の作業性を損ねにくい。
【0052】
前記共重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が10,000~10,000,000(10~10,000kg/mol)であることが好ましく、50,000~9,000,000(50~9,000kg/mol)であることがより好ましく、100,000~8,000,000(100~8,000kg/mol)であることが更に好ましい。前記共重合体のMwが10,000以上であることにより、複合体の剥離強度を十分に確保することができ、また、Mwが10,000,000以下であることにより、部材の作業性を損ねにくい。
【0053】
前記共重合体は、分子量分布[Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)]が1.00~4.00であることが好ましく、1.00~3.50であることがより好ましく、1.80~3.00であることがさらに好ましい。前記共重合体の分子量分布が4.00以下であれば、前記共重合体の物性に十分な均質性をもたらすことができる。
【0054】
なお、前記共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として求める。
【0055】
前記共重合体は、0~120℃における示差走査熱量計(DSC)で測定した吸熱ピークエネルギーが10~150J/gであることが好ましく、30~120J/gであることがさらに好ましい。前記共重合体の吸熱ピークエネルギーが10J/g以上であれば、前記共重合体の結晶性が高くなり、複合体の剥離強度を向上させることができる。また、前記共重合体の吸熱ピークエネルギーが150J/g以下であれば、部材の作業性が向上する。
前記共重合体の吸熱ピークエネルギーは、示差走査熱量計を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、例えば、10℃/分の昇温速度で-150℃から150℃まで昇温して測定すればよい。
【0056】
前記共重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が30~130℃であることが好ましく、50~120℃であることがより好ましい。前記共重合体の融点が50℃以上であれば、前記共重合体の結晶性が高くなり、複合体の剥離強度を向上させることができる。また、前記共重合体の融点が120℃以下であれば、部材の作業性が向上する。
前記共重合体の融点は、示差走査熱量計を用い、JIS K 7121-1987に準拠して測定すればよい。
【0057】
また、前記共重合体の部材間の融点の差は、部材同士の接着が容易になる観点から、30℃以下であることが好ましく、20℃以下であることがより好ましく、10℃以下であることがさらに好ましく、0℃、即ち、それぞれの部材に融点が同じ共重合体を含有することが特に好ましい。部材間の融点の差が0℃であると、部材同士の接着がさらに容易になる。
【0058】
前記共重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)が0℃以下であることが好ましく、-100~-10℃であることがさらに好ましい。前記共重合体のガラス転移点が0℃以下であれば、複合体の剥離強度をさらに向上させることができる。
前記共重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量計を用い、JIS K 7121-1987に準拠して測定すればよい。
【0059】
前記共重合体は、結晶化度が0.5~50%であることが好ましく、3~45%であることがさらに好ましく、5~45%であることがより一層好ましい。前記共重合体の結晶化度が0.5%以上であれば、非共役オレフィン単位に起因する共重合体の結晶性を十分に確保して、複合体の剥離強度をさらに向上させることができる。また、前記共重合体の結晶化度が50%以下であれば、部材の混練の際の作業性、及び押出加工性が向上する。
前記共重合体の結晶化度は、100%結晶成分のポリエチレンの結晶融解エネルギーと、前記共重合体の融解ピークエネルギーを測定し、ポリエチレンと前記共重合体とのエネルギー比率から、結晶化度を算出すればよい。また、融解ピークエネルギーは、示差走査熱量計で測定することができる。
【0060】
前記共重合体は、主鎖が非環状構造のみからなることが好ましい。これにより、複合体の剥離強度をさらに向上させることができる。
なお、前記共重合体の主鎖が環状構造を有するか否かの確認には、NMRが主要な測定手段として用いられる。具体的には、主鎖に存在する環状構造に由来するピーク(例えば、三員環~五員環については、10~24ppmに現れるピーク)が観測されない場合、その共重合体の主鎖は、非環状構造のみからなることを示す。
なお、本発明において、重合体の主鎖とは、それ以外のすべての分子鎖(長分子鎖又は短分子鎖、或いはその両方)が、ペンダントのように連なる線状分子鎖を意味する〔「Glossary of Basic Terms in Polymer Science IUPAC Recommendations 1996」,Pure Appl. Chem., 68, 2287-2311 (1996)のセクション1.34参照〕
また、前記共重合体は、直鎖状構造又は分岐状構造のいずれであってもよいが、直鎖状構造であることが好ましい。
【0061】
前記共重合体は、機械的強度に優れ、具体的には、破断強度、踏み抜き強度、引張強度、耐摩耗性、耐亀裂性等に優れる。前記共重合体は、低温での機械的強度にも優れる。
さらに、前記共重合体は、カーボンブラック、シリカ等の充填剤に頼らずとも機械的強度に優れることから、着色剤を用いて着色することができ、加飾性に優れる。一方、前記共重合体は、充填剤との相互作用が可能であるから、充填剤を用いて更に機械的強度を向上させることもできる。
前記共重合体は、共役ジエン単位を含むことから、架橋が可能であり、架橋速度もジエン系ゴムと変わらない。前記共重合体は、共役ジエン単位を含むことから、弾性体として働き、伸縮可能である。前記共重合体は、射出成型することができ、延伸加工も可能であるため、フィルム状に加工することができる。前記共重合体は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を含有するため、オレフィン樹脂にもゴムにも接着しやすく、したがって、オレフィン樹脂とゴムとの接着剤として機能し得る。前記共重合体は、発泡することができる。前記共重合体は、融点が30~130℃であることが好ましく、50~120℃であることがより好ましく、80~100℃程度のお湯をかけたり、お湯に浸漬したりする程度の加熱で、形状を修復することができる。また、前記共重合体は、形状記憶特性を有する。
【0062】
前記共重合体として、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位との2つの単位からなる二元共重合体を製造する場合、共役ジエン化合物及び非共役オレフィン化合物を単量体として用いる重合工程を経て、前記共重合体を製造することができる。
前記共重合体として、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位の3つの単位からなる三元共重合体を製造する場合、共役ジエン化合物と、非共役オレフィン化合物と、芳香族ビニル化合物とを単量体として用いる重合工程を経て、前記共重合体を製造することができる。
【0063】
前記共重合体の製造方法は、さらに、必要に応じ、カップリング工程、洗浄工程、及びその他の工程を経てもよい。
以下、三元共重合体を製造する場合を代表して、前記共重合体の製造方法について説明する。
【0064】
重合体の製造においては、重合触媒の存在下で、共役ジエン化合物を添加せずに非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物のみを添加し、これらをまず重合させることが好ましい。特に後述の触媒組成物を使用する場合には、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物より共役ジエン化合物の方が、反応性が高いことから、共役ジエン化合物の存在下で非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物のいずれか一方又は両方を重合させにくい。また、先に共役ジエン化合物を重合させ、後に非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物を付加的に重合させることも、触媒の特性上困難となり易い。
【0065】
重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン等が挙げられる。
【0066】
重合工程は、一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。
一段階の重合工程とは、重合させる全ての種類の単量体、即ち、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、芳香族ビニル化合物、及びその他の単量体、好ましくは、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、及び芳香族ビニル化合物を一斉に反応させて重合させる工程である。
また、多段階の重合工程とは、1種類又は2種類の単量体の一部又は全部を最初に反応させて重合体を形成し(第1重合段階)、次いで、第1重合段階で添加しなかった種類の単量体、第1重合段階で添加した単量体の残部等を添加して重合させる1以上の段階(第2重合段階~最終重合段階)を行って重合させる工程である。特に、前記共重合体の製造では、重合工程を多段階で行うことが好ましい。
【0067】
重合工程において、重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。重合反応の重合温度は、特に限定されないが、例えば、-100℃~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。また、上記重合反応の圧力は、共役ジエン化合物を十分に重合反応系中に取り込むため、0.1~10.0MPaの範囲が好ましい。
また、重合反応の反応時間も特に制限がなく、例えば、1秒~10日の範囲が好ましいが、重合触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。
また、共役ジエン化合物の重合工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
【0068】
重合工程は、多段階で行うことが好ましい。より好ましくは、少なくとも芳香族ビニル化合物を含む第1単量体原料と、重合触媒とを混合して重合混合物を得る第1工程と、前記重合混合物に対し、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む第2単量体原料を導入する第2工程とを実施することが好ましい。さらに、第1単量体原料が共役ジエン化合物を含まず、且つ第2単量体原料が共役ジエン化合物を含むことがより好ましい。
【0069】
第1工程で用いる第1単量体原料は、芳香族ビニル化合物とともに、非共役オレフィン化合物を含有してもよい。また、第1単量体原料は、使用する芳香族ビニル化合物の全量を含有してもよく、一部のみを含有してもよい。また、非共役オレフィン化合物は、第1単量体原料及び第2単量体原料の少なくともいずれかに含有される。
【0070】
第1工程は、反応器内で、不活性ガス、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。第1工程における温度(反応温度)は、特に制限はないが、例えば-100~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。また、第1工程における圧力は、特に制限はないが、芳香族ビニル化合物を十分に重合反応系中に取り込むため、0.1~10.0MPaの範囲が好ましい。また、第1工程に費やす時間(反応時間)は、重合触媒の種類、反応温度等の条件によって適宜選択することができるが、例えば、反応温度を25~80℃とした場合には、5~500分の範囲が好ましい。
【0071】
第1工程において、重合混合物を得るための重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサノン、ノルマルヘキサン等が挙げられる。
【0072】
第2工程で用いる第2単量体原料は、共役ジエン化合物のみ、又は、共役ジエン化合物及び非共役オレフィン化合物、又は、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物、又は共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物であることが好ましい。
なお、第2単量体原料が、共役ジエン化合物以外に非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1つを含む場合には、予めこれらの単量体原料を溶媒等と共に混合した後に重合混合物に導入してもよく、各単量体原料を単独の状態から導入してもよい。また、各単量体原料は、同時に添加してもよく、逐次添加してもよい。
第2工程において、重合混合物に対して第2単量体原料を導入する方法としては、特に制限はないが、各単量体原料の流量を制御して、重合混合物に対して連続的に添加すること(所謂、ミータリング)が好ましい。ここで、重合反応系の条件下で気体である単量体原料(例えば、室温、常圧の条件下における非共役オレフィン化合物としてのエチレン等)を用いる場合には、所定の圧力で重合反応系に導入することができる。
【0073】
第2工程は、反応器内で、不活性ガス、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。第2工程における温度(反応温度)は、特に制限はないが、例えば、-100~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、反応温度を上げると、共役ジエン単位におけるシス-1,4結合の選択性が低下することがある。また、第2工程における圧力は、特に制限はないが、共役ジエン化合物等の単量体を十分に重合反応系に取り込むため、0.1~10.0MPaの範囲が好ましい。また、第2工程に費やす時間(反応時間)は、重合触媒の種類、反応温度等の条件によって適宜選択することができるが、例えば、0.1時間~10日の範囲が好ましい。
また、第2工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
【0074】
ここで、上記の共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、芳香族ビニル化合物の重合工程は、触媒成分として、下記(a)~(f)成分の1種以上の存在下で、各種単量体を重合させる工程を含むことが好ましい。なお、重合工程には、下記(a)~(f)成分を1種以上用いることが好ましいが、下記(a)~(f)成分の2種以上を組み合わせて、触媒組成物として用いることがさらに好ましい。
(a)成分:希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物
(b)成分:有機金属化合物
(c)成分:アルミノキサン
(d)成分:イオン性化合物
(e)成分:ハロゲン化合物
(f)成分:置換又は無置換のシクロペンタジエン(シクロペンタジエニル基を有する化合物)、置換又は無置換のインデン(インデニル基を有する化合物)、及び、置換又は無置換のフルオレン(フルオレニル基を有する化合物)から選択されるシクロペンタジエン骨格含有化合物
上記(a)~(f)成分については、例えば、国際公開第2018/092733等を参照することによって、重合工程に用いることができる。
【0075】
カップリング工程は、重合工程において得られた共重合体の高分子鎖の少なくとも一部(例えば、末端)を編成する反応(カップリング反応)を行う工程である。
カップリング工程において、重合反応が100%に達した際にカップリング反応を行うことが好ましい。
カップリング反応に用いるカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)等のスズ含有化合物;4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;グリシジルプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)が、反応効率と低ゲル生成の点で、好ましい。
なお、カップリング反応を行うことにより、共重合体の数平均分子量(Mn)を増加することができる。
【0076】
洗浄工程は、重合工程において得られた共重合体を洗浄する工程である。
なお、洗浄に用いる媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられるが、重合触媒としてルイス酸由来の触媒を使用する際は、特にこれらの溶媒に対して酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸等)を加えて使用することができる。添加する酸の量は溶媒に対して15mol%以下が好ましい。添加量が15mol%以下であることで、酸が共重合体中に残存しにくく、部材の混練及び加硫時の反応に悪影響を及ぼしにくい。
この洗浄工程により、共重合体中の触媒残渣量を好適に低下させることができる。
【0077】
部材中の前記共重合体の含有量は、複合体の剥離強度を向上させ、さらに、部材同士の接着を容易にする観点から、0.1~25質量%であることが好ましく、0.1~23質量%であることがより好ましく、0.2~20質量%であることが更に好ましく、0.2~15質量%であることがより更に好ましい。
【0078】
<ゴム成分>
前記部材の少なくとも1つは、ゴム成分を含んでもよい。
該ゴム成分としては、天然ゴム(NR)、合成ジエン系ゴム等のジエン系ゴムが挙げられる。
合成ジエン系ゴムは、具体的には、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合ゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。
ジエン系ゴムは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。また、ジエン系ゴムは、変性されていてもよい。
ゴム成分は、非ジエン系ゴムを含んでいてもよい。
【0079】
前記部材中のゴム成分の含有量は、40質量%以上であることが好ましく、また、70質量%以下であることが好ましい。
また、前記部材中のジエン系ゴムの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、また、70質量%以下であることが好ましい。
【0080】
<アスファルト成分>
前記部材の少なくとも1つは、アスファルト成分を含んでもよい。該アスファルト成分は、特に限定されず、例えば、舗装用ストレートアスファルト、レークアスファルト等の天然アスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルトで変性されたストレートアスファルト、タール変性されたストレートアスファルト等が挙げられる。
前記部材中のアスファルト成分の含有量は、3質量%以上であることが好ましく、また、20質量%以下であることが好ましい。
【0081】
<骨材>
前記部材がアスファルト成分を含む場合、該部材は、更に、骨材を含むことが好ましい。該骨材としては、砕石、砂、スラグ等が挙げられる。
前記部材中の骨材の含有量は、アスファルト成分の質量に対して、500質量%以上であることが好ましく、また、1000質量%以下であることが好ましい。
【0082】
前記アスファルト成分及び前記骨材を含む部材としては、舗装道路等が挙げられる。また、該アスファルト成分及び前記骨材を含む部材(舗装道路等)と接合する部材が、ゴム成分を含む部材、好ましくは、ジエン系ゴムを50質量%以上含む部材である場合、かかる部材としては、タイヤ等のゴム製品の摩耗粉等が挙げられる。ここで、舗装道路(アスファルト成分及び前記骨材を含む部材)に、タイヤ等のゴム製品の摩耗粉(ゴム成分を含む部材)を接合することで、摩耗粉による粉塵を低減できる。
【0083】
<樹脂成分>
前記部材の少なくとも1つは、樹脂成分を含んでもよい。該部材中の樹脂成分の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、また、15質量%以下であることが好ましい。
前記樹脂としては、オレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0084】
(オレフィン系樹脂)
本発明の複合体を構成する部材は、更に、オレフィン系樹脂を含んでもよい。
前記部材は、オレフィン系樹脂を含むことで、部材が前記共重合体のみを含む場合に比べ、複合体の剥離強度をより一層向上させることができる。
【0085】
オレフィン系樹脂は、少なくともポリオレフィンが結晶性を有し、樹脂の主体を成す樹脂を指す。例えば、オレフィン-α-オレフィン共重合体、オレフィン共重合体等が挙げられ、変性されていてもよい。
具体的には、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-ペンテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-ペンテン共重合体、プロピレン-4-メチル-1ペンテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、1-ブテン-ヘキセン共重合体、1-ブテン-4-メチル-ペンテン共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン-メタクリル酸共重合体、プロピレン-メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン-メチルアクリレート共重合体、プロピレン-エチルアクリレート共重合体、プロピレン-ブチルアクリレート共重合体、プロピレン-酢酸ビニル共重合体等の重合体が挙げられる。
【0086】
オレフィン系樹脂は、非共役オレフィン単位を含有することが好ましい。オレフィン系樹脂が非共役オレフィン単位を含有することで、剥離強度に優れる。
オレフィン系樹脂は、炭素数2~5のオレフィン単位を含有することが好ましく、更には、前記共重合体が含有する非共役オレフィン単位の炭素数と、オレフィン系樹脂が含有する非共役オレフィン単位の炭素数との差が、2以下であることが好ましい。
前記共重合体とオレフィン系樹脂とで、共通する単位である非共役オレフィン単位を含み、更に非共役オレフィン単位が類似する構造であることで、部材に亀裂が入りにくく、また、剥離強度にも優れる。
【0087】
前記共重合体が含有する非共役オレフィン単位の炭素数と、オレフィン系樹脂が含有する非共役オレフィン単位の炭素数との差は、1以下であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。また、オレフィン単位の炭素数は2~4であることがより好ましく、2~3であること、つまり、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂が更に好ましい。
【0088】
ポリエチレン系樹脂は、主鎖に、エチレン単位を主成分(例えば、50mol%超)として含む重合体を意味し、更にプロピレン単位等の他の単位を含んでいてもよい。また、ポリエチレン系樹脂は、熱硬化性であっても、熱可塑性であってもよい。具体的には、ポリエチレン(単独重合体)、エチレン-プロピレン共重合体(ただし、エチレン単位が50mol%超)等が挙げられる。
また、ポリエチレン系樹脂は、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等の種類があるが、いずれを用いてもよい。
【0089】
これらの中でも汎用性の高さから、ポリエチレン系樹脂は、高密度ポリエチレン(HDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる群より選択される1つ以上を用いることが好ましい。
【0090】
ポリプロピレン系樹脂は、主鎖に、プロピレン単位を主成分(例えば、50mol%超)として含む重合体を意味し、更にエチレン単位等の他の単位を含んでいてもよい。また、ポリプロピレン系樹脂は、熱硬化性であっても、熱可塑性であってもよい。具体的には、ポリプロピレン(単独重合体)、エチレン-プロピレン共重合体(ただし、プロピレン単位が50mol%超)等が挙げられる。
【0091】
複合体の剥離強度を向上させる観点から、オレフィン系樹脂は、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、5~10,000kg/molであることが好ましく、7~1,000kg/molであることがより好ましく、10~1,000kg/molであることが更に好ましい。
【0092】
複合体の剥離強度を向上させる観点から、オレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、100~300kg/molであることが好ましく、180~300kg/molであることがより好ましく、200~280kg/molが更に好ましい。
オレフィン系樹脂の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができ、例えば、東ソー株式会社製の「HLC-8321GPC/HT」等のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いることができる。
【0093】
(その他の樹脂)
前記オレフィン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂;ポリエステル系可塑性エラストマー;ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0094】
<各種成分>
前記部材は、更に、前記共重合体、ゴム成分、アスファルト成分及び樹脂成分以外のポリマー成分を含有してもよいし、樹脂分野及びゴム分野で一般に用いられている各種成分、例えば、充填剤;強化繊維;老化防止剤;軟化剤;ステアリン酸、亜鉛華、架橋促進剤及び架橋剤を含む架橋パッケージ;樹脂;紫外線吸収剤;発泡剤;着色剤等の機能性成分を、本発明の目的を害しない範囲で適宜選択して配合することができる。これら各種成分としては、市販品を好適に使用することができる。
【0095】
(充填剤)
充填剤としては、カーボンブラック及び無機充填剤が挙げられる。
部材が、ゴム成分を含む場合、充填剤を更に含むことで、加硫ゴムの機械的強度を向上させることができ、複合体の剥離強度を向上させることができる。
カーボンブラックの種類は、特に制限されず、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等が挙げられ、HAF、ISAF、及びSAFが好ましい。
無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物が挙げられ、中でもシリカが好ましい。シリカの種類は、特に制限はなく、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロイダルシリカ等が挙げられる。充填剤としてシリカを含有する場合、本発明の部材中でのシリカ分散性を向上させるために、部材は、更に、シランカップリング剤を含んでもよい。
【0096】
(老化防止剤)
老化防止剤としては、例えば、アミン-ケトン系化合物、イミダゾール系化合物、アミン系化合物、フェノール系化合物、硫黄系化合物及びリン系化合物等が挙げられる。
【0097】
(軟化剤)
軟化剤としては、プロセスオイル、潤滑油、ナフテンオイル、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤、蜜ロウ、カルナバロウ、ラノリンなどのワックス類等が挙げられる。これらの軟化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
(架橋剤)
架橋剤は、特に制限はなく、通常、過酸化物、硫黄、オキシム、アミン、紫外線硬化剤等が挙げられる。
前記共重合体は、共役ジエン単位を含むことから、硫黄により架橋(加硫)することができる。硫黄としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等を挙げることができる。
【0099】
(架橋促進剤)
本発明の複合体を構成する部材が、ゴム成分を含む場合、ゴム成分の加硫を促進するために、架橋促進剤(加硫促進剤)を含んでいてもよい。
加硫促進剤としては、例えば、グアジニン系、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、アルデヒド系、チオカルバミン酸塩系等が挙げられる。
【0100】
<部材の製造方法>
部材の製造方法は、特に限定されず、部材に合わせて適宜選択できる。例えば、共重合体と他の材料を混合し、加熱し、成型してもよい。
部材は、共重合体を含有すれば、任意の添加成分を含有させて製造してもよい。例えば、共重合体と共に、ゴム成分を含有してもよい。
【0101】
<複合体の製造方法>
本発明の一実施形態の複合体の製造方法(以下、「本実施形態の製造方法」と称することがある)は、少なくとも2つの部材からなる複合体の製造方法であって、
少なくとも2つの部材を接触させる工程と、
接触している少なくとも2つの部材を加熱して、接合し、固定化する工程と、を含む。
かかる本実施形態の製造方法によれば、剥離強度が向上し、さらに、部材同士の接着が容易な複合体を得られる。
【0102】
なお、本実施形態の複合体の製造方法は、上述した工程以外の工程を適宜備えていてもよい。
【0103】
(部材を接触させる工程)
本実施形態の製造方法は、少なくとも2つの部材を接触させる工程を含む。
部材を接触させる工程では、少なくとも2つの部材を接触させる。
接触させる方法としては、特に限定されず、部材同士が接触していればよい。
また、部材同士を接触させる時間は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。
【0104】
(部材を加熱して、接合し、固定化する工程)
本実施形態の製造方法は、接触している少なくとも2つの部材を加熱して、接合し、固定化する工程を含む。
部材を加熱する際の加熱温度は、部材同士を接着できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、加熱温度は、100~500℃であってもよい。
また、加熱時間は、部材同士を接着できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、加熱時間は、1~200秒であってもよい。
加熱する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本実施形態の製造方法においては、加熱後に、部材を冷却することにより、少なくとも2つの部材を固定化する。
固定化における冷却温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。冷却温度は、例えば室温であってもよい。
【実施例0105】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0106】
(共重合体1の調製)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器内に、スチレン75gと、トルエン675gと、を加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、((1-ベンジルジメチルシリル-3-メチル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{(1-BnMeSi-3-Me]CGd[N(SiHMe}0.075mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[MeNHPhB(C]0.083mmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド0.35mmolを加え、更にトルエン30gを加えて、触媒溶液とした。
得られた触媒溶液を、前記耐圧ステンレス反応器内に加えて、60℃に加温した。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaで、前記耐圧ステンレス反応器に投入し、75℃で計3時間共重合を行った。その共重合の際、1,3-ブタジエン20gを含むトルエン溶液80gを0.4~0.6mL/分の速度で連続的に添加した。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを、前記耐圧ステンレス反応器内に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体1を得た。
【0107】
(共重合体2の調製)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器内に、スチレン30gと、1,3-ブタジエン5gを含むトルエン溶液20gと、トルエン430gと、を加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、モノ(1,3-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{1,3-[(t-Bu)MeSi]Gd[N(SiHMe}0.075mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[MeNHPhB(C]0.075mmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド0.35mmolを加え、更にトルエン20mLを加えて、触媒溶液とした。
得られた触媒溶液を、前記耐圧ステンレス反応器内に加えて、60℃に加温した。
次いで、エチレンを圧力1.0MPaで、前記耐圧ステンレス反応器内に投入し、75℃で計3時間共重合を行った。その共重合の際、1,3-ブタジエン60gを含むトルエン溶液240gを2.5~2.8mL/分の速度で連続的に添加した。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを、前記耐圧ステンレス反応器内に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体2を得た。
【0108】
<共重合体1及び2の物性測定方法>
得られた共重合体1及び2について、以下の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0109】
(1)ブタジエン単位、エチレン単位、スチレン単位の含有量
共重合体中のエチレン単位、ブタジエン単位、スチレン単位の含有量(mol%)を、H-NMRスペクトル(100℃、d-テトラクロロエタン標準:6ppm)の各ピークの積分比より求めた。
【0110】
(2)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー社製HLC-8121GPC/HT、カラム:東ソー社製GMHHR-H(S)HT×2本、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、共重合体のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、測定時間は40℃である。
【0111】
(3)ブタジエン単位の1,4-結合の含有率
赤外法(モレロ法)により1,2-結合及び3,4-結合求め、100%から1,2-結合及び3,4-結合の合計量を算出することで1,4-結合の含有率を算出した。
【0112】
(4)融点(Tm)
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、共重合体の融点(Tm)を測定した。
【0113】
(5)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、共重合体のガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0114】
(6)結晶化度
100%結晶成分のポリエチレンの結晶融解エネルギーと、得られた共重合体の0~120℃の融解ピークエネルギーを測定し、ポリエチレンと共重合体とのエネルギー比率から、結晶化度を算出した。なお、融解ピークエネルギーは、示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)で測定した。
【0115】
(7)吸熱ピークエネルギー
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、得られた共重合体を、-150℃~150℃まで、10℃/minで昇温した。そして、その時(1st run)の0℃以上100℃未満の範囲における吸熱ピークエネルギー(ΔH(J/g))と、100℃以上150℃以下の範囲における吸熱ピークエネルギー(ΔH(J/g))とを測定した。
【0116】
(8)引張強度
共重合体1及び2を145℃で熱プレスして、厚さ1mmのシートを製造し、引張強度(Tb;Tensile Strength at brerak)を測定した。
引張強度(Tb)は、JIS K 6251(2017年)に基づいて、引張試験装置(インストロン社製)を使用し、試験片を25℃で100%伸長し、試験片を破断させるのに要した最大の引張り力として測定した。
【0117】
(9)破断伸び
共重合体1及び2を145℃で熱プレスして、厚さ1mmのシートを製造し、破断伸び(Eb;Elongation at break)を測定した。
破断伸び(Eb)は、試験片を25℃にて100mm/分の速度で引張り、シートが破断したときの長さを測定し、引っ張る前の長さ(100%)に対する長さとして求めた。
【0118】
【表1】
【0119】
<複合体の製造>
複合体の少なくとも2つの部材として、ゴム成分を含む部材とアスファルト成分を含む部材を使用した。
【0120】
(ゴム成分を含む部材の作製)
表2に示す配合処方に従って、各成分を配合し混練、加硫して、ゴム組成物を調製した。なお、配合した共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体の種類及び量は、表3、又は表4に示す通りである。このゴム組成物を摩耗させ、長径0.1~20mmの摩耗粉を得て、これを、ゴム成分を含む部材とした。
【0121】
【表2】
*1 NR: 天然ゴム
*2 BR: ブタジエンゴム、UBEエラストマー社製、商品名「UBEPOL BR150L」
*3 カーボンブラック: N134
*4 加硫系薬品: 加硫促進剤と硫黄を含む
*5 その他成分: ステアリン酸、亜鉛華を含む
【0122】
(アスファルト成分を含む部材の作製)
アスファルト(ENEOS社製、ストレートアスファルト60/80)に対し、共重合体1又は2(表3及び4に示す)を添加し、ホモミキサーを用いて混合し、組成物を調製した。次いで、かかる組成物に対し、骨材(東京石灰工業株式会社製)を混合してアスファルト混合物を調製し、アスファルト成分を含む部材とした。
なお、アスファルト混合物の調製では、当該アスファルト混合物中の上記組成物の含有量を5.4質量%とした。従って、アスファルト成分を含む部材における共重合体の含有量は、表3、4に示す通り、0.27質量%と算出される。
【0123】
(複合体の作製)
上記2つの部材を接合させ、所定温度に熱した加硫プレスを使用し、加熱温度120℃、加熱時間120秒で加熱した。その後、室温で冷却して固定化し、複合体を作製した。
それぞれの実施例、比較例において部材に含まれる共重合体の量は、表3及び4に示す。
【0124】
(剥離試験)
上記固定化させた複合体に、粘着テープを貼り、テープを引き剥がして、テープに付着したゴム成分を含む部材の量により剥離強度を評価した。なお、剥離強度は下記の基準で評価した。粘着テープへの付着が少ないほど、剥離強度が大きいことを表す。
A:粘着テープにわずかに付着
B:粘着テープに少量付着
C:粘着テープに多量付着
D:粘着テープにほとんど付着
評価結果を表3及び4に示す。
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】
【0127】
表3及び4から、複合体を構成するそれぞれの部材に共重合体を含むことにより、剥離強度が向上することが分かる。また、それぞれの部材が、異なる素材からなるものであっても、本発明の工程により、容易に接着した。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明によれば、剥離強度が向上し、さらに接着が容易な複合体を提供することができる。