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特開2024-118956逆浸透膜装置の洗浄方法及び逆浸透膜装置の洗浄装置
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  • 特開-逆浸透膜装置の洗浄方法及び逆浸透膜装置の洗浄装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118956
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】逆浸透膜装置の洗浄方法及び逆浸透膜装置の洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/06 20060101AFI20240826BHJP
   B01D 61/10 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B01D65/06
B01D61/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025576
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 琢也
(72)【発明者】
【氏名】大場 将純
(72)【発明者】
【氏名】小沼 孝博
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006JA53Z
4D006JA63Z
4D006KA16
4D006KC03
4D006KC16
4D006KD04
4D006KD11
4D006KD17
4D006KE15R
4D006KE16Q
4D006KE22Q
4D006KE23Q
4D006KE24Q
4D006PA01
4D006PB02
(57)【要約】
【課題】低水温時期においても洗浄効果を適切に維持でき、分離膜の透水性能を効率良く回復させることが可能な逆浸透膜装置の洗浄方法及び逆浸透膜装置の洗浄装置を提供する。
【解決手段】逆浸透膜を備える逆浸透膜装置2の洗浄方法において、逆浸透膜を洗浄する洗浄液を貯留する洗浄液タンク3内の洗浄液の濃度を逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度に調整し、洗浄液をポンプ1、4で加圧し、加圧により発生するポンプ1、4の熱を用いて洗浄液を温め、温められた洗浄液を洗浄液タンク3内に循環させることにより洗浄液タンク3内の洗浄液の温度を逆浸透膜の洗浄処理に適した温度に調整し、逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度及び温度に調整した洗浄液を、ポンプ1、4を用いて逆浸透膜装置2へ供給して洗浄処理することを含む逆浸透膜装置の洗浄方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜を備える逆浸透膜装置の洗浄方法において、
前記逆浸透膜を洗浄する洗浄液を貯留する洗浄液タンク内の前記洗浄液の濃度を前記逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度に調整し、
前記洗浄液をポンプで加圧し、該加圧により発生する前記ポンプの熱を用いて前記洗浄液を温め、温められた前記洗浄液を前記洗浄液タンク内に循環させることにより前記洗浄液タンク内の前記洗浄液の温度を前記逆浸透膜の洗浄処理に適した温度に調整し、
前記逆浸透膜の前記洗浄処理に適した前記濃度及び前記温度に調整した前記洗浄液を、前記ポンプを用いて前記逆浸透膜装置へ供給して洗浄処理すること
を含む逆浸透膜装置の洗浄方法。
【請求項2】
原水を原水ポンプで加圧し、該加圧後の前記原水を前記逆浸透膜装置へ供給することにより、透過水と濃縮水とを得る逆浸透膜処理を行った後に、前記洗浄処理を行うことを含み、
前記逆浸透膜処理を行う間に、前記洗浄液タンク内の前記洗浄液を、前記洗浄液タンクに接続された洗浄液ポンプと、前記洗浄液ポンプと前記洗浄液タンクとの間に接続された循環ラインとを介して、前記洗浄液ポンプと前記洗浄液タンクとの間で循環させることにより一定温度以上に温め、
前記洗浄処理において、前記洗浄液ポンプを介して、前記逆浸透膜の洗浄処理に適した前記濃度及び前記温度に調整した前記洗浄液を前記逆浸透膜装置へ供給すること
を含む請求項1に記載の逆浸透膜装置の洗浄方法。
【請求項3】
前記逆浸透膜装置へ前記原水を供給する原水供給管に接続された第1の弁と、
前記原水供給管に前記洗浄液を供給する洗浄液供給配管に接続された第2の弁と、
前記第2の弁と前記洗浄液ポンプとの間に接続された第3の弁と、
前記循環ラインに接続された第4の弁と、
前記逆浸透膜装置から流出する濃縮水を流す濃縮水配管と前記洗浄液タンクとの間に接続された第5の弁と、
前記濃縮水配管に接続された第6の弁と、
前記逆浸透膜装置から流出する透過水を流す透過水配管に接続された第7の弁と
の開閉をそれぞれ制御することを含み、
前記逆浸透膜処理を行うときには、前記第1の弁、前記第6の弁、前記第7の弁を開き、前記第2の弁及び前記第5の弁を閉じ、
前記洗浄液を温めるときには、前記第3の弁を閉じ、前記第4の弁を開いて、前記洗浄液ポンプを運転し、前記洗浄液タンク内の前記洗浄液を前記循環ラインを介して循環させて前記第4の弁の開度を調整し、前記洗浄液ポンプが発する熱により前記洗浄液を温め、
前記洗浄処理を行うときには、前記第1の弁、前記第4の弁、前記第6の弁、前記第7の弁を閉じ、前記第2の弁、前記第3の弁、前記第5の弁を開いて、前記洗浄液ポンプを運転し、前記洗浄液を前記逆浸透膜装置と前記洗浄液タンクとの間で循環させること
を含む請求項2に記載の逆浸透膜装置の洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄処理を行うときに、前記洗浄液を前記逆浸透膜装置と前記洗浄液タンクとの間で循環させた後に、前記第2の弁、前記第5の弁、前記第7の弁を閉じ、前記第1の弁及び前記第6の弁を開いて前記原水を前記逆浸透膜装置へ送水し、前記洗浄液を前記逆浸透膜装置から排出させることを更に含む請求項3に記載の逆浸透膜装置の洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄液を前記逆浸透膜装置へ供給することが、
前記洗浄液ポンプを停止させて前記洗浄液を前記逆浸透膜装置内で一定期間静置させた後に、前記洗浄液ポンプの運転を再開させることを含む請求項2に記載の逆浸透膜装置の洗浄方法。
【請求項6】
前記逆浸透膜処理の後に、前記第1の弁又は前記第2の弁の開度を絞り、前記逆浸透膜装置に供給される前記原水又は前記洗浄液を前記原水ポンプの熱により温めることを更に含む請求項3に記載の逆浸透膜装置の洗浄方法。
【請求項7】
前記洗浄液のpHを10以上に調整することを含む請求項1~6のいずれか1項に記載の逆浸透膜装置の洗浄方法。
【請求項8】
前記洗浄液に界面活性剤を加えることを含む請求項1~6のいずれか1項に記載の逆浸透膜装置の洗浄方法。
【請求項9】
前記洗浄液のpHを2以下に調整することを含む請求項1~6のいずれか1項に記載の逆浸透膜装置の洗浄方法。
【請求項10】
原水を原水ポンプで加圧して逆浸透膜と接触させ、濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜装置の洗浄装置であって、
前記逆浸透膜を洗浄する洗浄液を貯留する洗浄液タンクと、
前記洗浄液を加圧し、前記逆浸透膜装置内へ送給する洗浄液ポンプと、
前記洗浄液ポンプと前記洗浄液タンクとの間に接続され、前記洗浄液を前記洗浄液ポンプと前記洗浄液タンクとの間で循環させる間に前記洗浄液ポンプから発生する熱で前記逆浸透膜の洗浄処理に適した温度に温める循環ラインと、
前記洗浄液タンク内の前記洗浄液が前記逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度となるように前記洗浄液タンク内に供給水を供給する供給ラインと、
前記逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度及び温度に調整された前記洗浄液を前記逆浸透膜装置の入口側へ供給し、前記逆浸透膜装置から排出された前記洗浄液を前記洗浄液タンクへ返送する洗浄液配管と
を備える逆浸透膜装置の洗浄装置。
【請求項11】
原水を原水ポンプで加圧して逆浸透膜と接触させ、濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜装置の洗浄装置であって、
前記逆浸透膜を洗浄する洗浄液を貯留する洗浄液タンクと、
前記洗浄液を加圧し、前記逆浸透膜装置内へ送給する洗浄液ポンプと、
前記原水ポンプと前記洗浄液タンクとの間に接続され、前記洗浄液を前記原水ポンプと前記洗浄液タンクとの間で循環させる間に前記原水ポンプから発生する熱で前記逆浸透膜の洗浄処理に適した温度に温める循環ラインと、
前記洗浄液タンク内の前記洗浄液が前記逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度になるように前記洗浄液タンク内に供給水を供給する供給ラインと、
前記逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度及び温度に調整された前記洗浄液を前記逆浸透膜装置の入口側へ供給し、前記逆浸透膜装置から排出された前記洗浄液を前記洗浄液タンクへ返送する洗浄液配管と
を備える逆浸透膜装置の洗浄装置。
【請求項12】
前記逆浸透膜装置へ前記原水を供給する原水供給管に接続された第1の弁と、
前記原水供給管に前記洗浄液を供給する洗浄液供給配管に接続された第2の弁と、
前記第2の弁と前記洗浄液ポンプとの間に接続された第3の弁と、
前記循環ラインに接続された第4の弁と、
前記逆浸透膜装置から流出する濃縮水を流す濃縮水配管と前記洗浄液タンクとの間に接続された第5の弁と、
前記濃縮水配管に接続された第6の弁と、
前記逆浸透膜装置から流出する透過水を流す透過水配管に接続された第7の弁と
を備え、
前記逆浸透膜装置において逆浸透膜処理を行うときには、前記第1の弁、前記第6の弁、前記第7の弁を開き、前記第2の弁及び前記第5の弁を閉じ、
前記洗浄液を温めるときには、前記第3の弁を閉じ、前記第4の弁を開いて、前記洗浄液ポンプを運転し、前記洗浄液タンク内の前記洗浄液を前記循環ラインを介して循環させて前記第4の弁の開度を調整し、前記洗浄液ポンプが発する熱により前記洗浄液を温め、
前記洗浄処理を行うときには、前記第1の弁、前記第4の弁、前記第6の弁、前記第7の弁を閉じ、前記第2の弁、前記第3の弁、前記第5の弁を開いて、前記洗浄液ポンプを運転し、前記洗浄液を前記逆浸透膜装置と前記洗浄液タンクとの間で循環させること
を含む請求項10に記載の逆浸透膜装置の洗浄装置。
【請求項13】
前記洗浄液タンク内の前記洗浄液のpHを測定するpH測定手段と、
前記pH測定手段の測定結果に基づいて、前記洗浄液タンク内に酸又はアルカリを供給するpH調整手段と
を備える請求項10~12のいずれか1項に記載の逆浸透膜装置の洗浄装置。
【請求項14】
前記洗浄液タンク内の前記洗浄液の温度を測定する温度測定手段と、
前記洗浄液タンク内の前記洗浄液の温度が前記逆浸透膜の洗浄処理に適した温度となったときを報知可能な報知手段と
を備える請求項10~12のいずれか1項に記載の逆浸透膜装置の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜装置の洗浄方法及び逆浸透膜装置の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜(RO膜)を備えた逆浸透膜装置は、清澄な処理水を得ることができることから食品工業や精密電子分野等の広い分野で利用されている。RO膜処理では、原水をろ過して処理水を得るため、長時間のろ過運転で分離膜表面が汚染されて透水性能が低下する。分離膜の透水性能を回復させるためには定期的な洗浄操作が必要となる。
【0003】
RO膜の洗浄は、汚染物質の性状に応じてアルカリ性の洗浄液や酸性の洗浄液が適宜選択される。これらの洗浄液による洗浄処理は、各洗浄液の性質を利用してRO膜表面の汚染物質を溶解・剥離させるため、液温が低いと洗浄効果が低下することがある。そのため、洗浄液の温度を調整する際に洗浄液タンクに仮設のヒーターを設けて洗浄液を加温して洗浄効果を高めることが行われてきた。しかしながら、ヒーターによる加温は、局所的な加熱による機器の損傷や火災、火傷等の安全対策が必要になる上、設置にあたり大容量の電源が必要になる等の種々の課題がある。
【0004】
特開2016-185520号公報(特許文献1)には、逆浸透膜装置の一次側に洗浄液を供給し、逆浸透膜装置の該一次側から流出した洗浄液を、返送ラインを介して給水ポンプの吸込側に戻す洗浄工程を有し、逆浸透膜装置の一次側に供給される洗浄液中の洗浄剤濃度を徐々に規定濃度まで上昇させる方法が記載されている。特許文献1には、RO膜装置へ原水を導入する給水ポンプの熱を利用して、循環洗浄水の温度を高くすることが記載されている。
【0005】
特開2005-46801号公報(特許文献2)には、鉄または/およびマンガンを含む原水を、直接、内圧型中空糸逆浸透膜または内圧型中空糸ナノフィルトレーション膜からなる内圧型中空糸分離膜に供給して脱塩処理を行う水処理方法が記載されている。特許文献2には、内圧型中空糸分離膜に原水を導入する原水導入管に洗浄用水を供給して少なくとも原水導入管を洗浄するとともに、洗浄後の水を実質的に内圧型中空糸分離膜へは導入させずに原水導入管を通過させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-185520号公報
【特許文献2】特開2005-46801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された方法はヒーターを用いることなく洗浄水を昇温させることが可能である。しかしながら、洗浄開始時点では洗浄液の濃度も温度も低く、洗浄効果が十分に得られないことがある。更に、洗浄液を所定温度まで昇温して濃度を規定濃度まで高めるまでの時間も必要とするため、洗浄工程で所定の効果が得られるまでに時間がかかる。
【0008】
特許文献2に記載された方法は、分離膜の洗浄前に原水導入管内に付着及び堆積していた濁質等を洗い流して除去することで、分離膜の薬液洗浄に使用される薬液の量を低減できることが記載されている。しかしながら、特許文献2の方法では、洗浄液の液温が低い場合の洗浄効果の低減の問題については、記載も示唆もされていない。また、特許文献2では、原水導入管の洗浄と分離膜の洗浄とを別々の工程で行うために洗浄工程に時間がかかる上、洗浄薬液の希釈水量及び排出量も処理全体として相対的に多い。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、低水温時期においても洗浄効果を維持でき、分離膜の透水性能を効率良く回復させることが可能な逆浸透膜装置の洗浄方法及び逆浸透膜装置の洗浄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、洗浄液の濃度及び温度を調整するための洗浄液タンクを設け、洗浄液の加圧により生じるポンプの熱で洗浄液を温めることが有効であるとの知見を得た。
【0011】
上記課題を解決するために本開示は一側面において、逆浸透膜を備える逆浸透膜装置の洗浄方法において、逆浸透膜を洗浄する洗浄液を貯留する洗浄液タンク内の洗浄液の濃度を逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度に調整し、洗浄液をポンプで加圧し、加圧により発生するポンプの熱を用いて洗浄液を温め、温められた洗浄液を洗浄液タンク内に循環させることにより洗浄液タンク内の洗浄液の温度を逆浸透膜の洗浄処理に適した温度に調整し、逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度及び温度に調整した洗浄液を、ポンプを用いて逆浸透膜装置へ供給して洗浄処理することを含む逆浸透膜装置の洗浄方法である。
【0012】
本発明に係る逆浸透膜装置の洗浄方法は一実施態様において、原水を原水ポンプで加圧し、加圧後の原水を逆浸透膜装置へ供給することにより、透過水と濃縮水とを得る逆浸透膜処理を行った後に、洗浄処理を行うことを含み、逆浸透膜処理を行う間に、洗浄液タンク内の洗浄液を、洗浄液タンクに接続された洗浄液ポンプと、洗浄液ポンプと洗浄液タンクとの間に接続された循環ラインとを介して、洗浄液ポンプと洗浄液タンクとの間で循環させることにより一定温度以上に温め、洗浄処理において、洗浄液ポンプを介して、逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度及び温度に調整した洗浄液を逆浸透膜装置へ供給することを含む。
【0013】
本発明に係る逆浸透膜装置の洗浄方法は別の一実施態様において、逆浸透膜装置へ原水を供給する原水供給管に接続された第1の弁と、原水供給管に洗浄液を供給する洗浄液供給配管に接続された第2の弁と、第2の弁と洗浄液ポンプとの間に接続された第3の弁と、循環ラインに接続された第4の弁と、逆浸透膜装置から流出する濃縮水を流す濃縮水配管と洗浄液タンクとの間に接続された第5の弁と、濃縮水配管に接続された第6の弁と、逆浸透膜装置から流出する透過水を流す透過水配管に接続された第7の弁との開閉をそれぞれ制御することを含み、逆浸透膜処理を行うときには、第1の弁、第6の弁、第7の弁を開き、第2の弁及び第5の弁を閉じ、洗浄液を温めるときには、第3の弁を閉じ、第4の弁を開いて、洗浄液ポンプを運転し、洗浄液タンク内の洗浄液を循環ラインを介して循環させて第4の弁の開度を調整し、洗浄液ポンプが発する熱により洗浄液を温め、洗浄処理を行うときには、第1の弁、第4の弁、第6の弁、第7の弁を閉じ、第2の弁、第3の弁、第5の弁を開いて、洗浄液ポンプを運転し、洗浄液を逆浸透膜装置と洗浄液タンクとの間で循環させることを含む。
【0014】
本発明に係る逆浸透膜装置の洗浄方法は更に別の一実施態様において、洗浄処理を行うときに、洗浄液を逆浸透膜装置と洗浄液タンクとの間で循環させた後に、第2の弁、第5の弁、第7の弁を閉じ、第1の弁及び第6の弁を開いて原水を逆浸透膜装置へ送水し、洗浄液を逆浸透膜装置から排出させることを更に含む。
【0015】
本発明に係る逆浸透膜装置の洗浄方法は更に別の一実施態様において、洗浄液を逆浸透膜装置へ供給することが、洗浄液ポンプを停止させて洗浄液を逆浸透膜装置内で一定期間静置させた後に、洗浄液ポンプの運転を再開させることを含む。
【0016】
本発明に係る逆浸透膜装置の洗浄方法は更に別の一実施態様において、逆浸透膜処理の後に、第1の弁又は第2の弁の開度を絞り、逆浸透膜装置に供給される原水又は洗浄液を原水ポンプの熱により温めることを更に含む。
【0017】
本発明に係る逆浸透膜装置の洗浄方法は更に別の一実施態様において、洗浄液のpHを10以上に調整することを含む。
【0018】
本発明に係る逆浸透膜装置の洗浄方法は更に別の一実施態様において、洗浄液に界面活性剤を加えることを含む。
【0019】
本発明に係る逆浸透膜装置の洗浄方法は更に別の一実施態様において、洗浄液のpHを2以下に調整することを含む。
【0020】
本発明は別の一側面において、原水を原水ポンプで加圧して逆浸透膜と接触させ、濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜装置の洗浄装置であって、逆浸透膜を洗浄する洗浄液を貯留する洗浄液タンクと、洗浄液を加圧し、逆浸透膜装置内へ送給する洗浄液ポンプと、洗浄液ポンプと洗浄液タンクとの間に接続され、洗浄液を洗浄液ポンプと洗浄液タンクとの間で循環させる間に洗浄液ポンプから発生する熱で逆浸透膜の洗浄処理に適した温度に温める循環ラインと、洗浄液タンク内の洗浄液が逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度となるように洗浄液タンク内に供給水を供給する供給ラインと、逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度及び温度に調整された洗浄液を逆浸透膜装置の入口側へ供給し、逆浸透膜装置から排出された洗浄液を洗浄液タンクへ返送する洗浄液配管とを備える逆浸透膜装置の洗浄装置である。
【0021】
本発明は更に別の一側面において、原水を原水ポンプで加圧して逆浸透膜と接触させ、濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜装置の洗浄装置であって、逆浸透膜を洗浄する洗浄液を貯留する洗浄液タンクと、洗浄液を加圧し、逆浸透膜装置内へ送給する洗浄液ポンプと、原水ポンプと洗浄液タンクとの間に接続され、洗浄液を原水ポンプと洗浄液タンクとの間で循環させる間に原水ポンプから発生する熱で逆浸透膜の洗浄処理に適した温度に温める循環ラインと、洗浄液タンク内の洗浄液が逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度になるように洗浄液タンク内に供給水を供給する供給ラインと、逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度及び温度に調整された洗浄液を逆浸透膜装置の入口側へ供給し、逆浸透膜装置から排出された洗浄液を洗浄液タンクへ返送する洗浄液配管とを備える逆浸透膜装置の洗浄装置である。
【0022】
本発明に係る逆浸透膜装置の洗浄装置は一実施態様において、逆浸透膜装置へ原水を供給する原水供給管に接続された第1の弁と、原水供給管に洗浄液を供給する洗浄液供給配管に接続された第2の弁と、第2の弁と洗浄液ポンプとの間に接続された第3の弁と、循環ラインに接続された第4の弁と、逆浸透膜装置から流出する濃縮水を流す濃縮水配管と洗浄液タンクとの間に接続された第5の弁と、濃縮水配管に接続された第6の弁と、逆浸透膜装置から流出する透過水を流す透過水配管に接続された第7の弁とを備え、逆浸透膜装置において逆浸透膜処理を行うときには、第1の弁、第6の弁、第7の弁を開き、第2の弁及び第5の弁を閉じ、洗浄液を温めるときには、第3の弁を閉じ、第4の弁を開いて、洗浄液ポンプを運転し、洗浄液タンク内の洗浄液を循環ラインを介して循環させて第4の弁の開度を調整し、洗浄液ポンプが発する熱により洗浄液を温め、洗浄処理を行うときには、第1の弁、第4の弁、第6の弁、第7の弁を閉じ、第2の弁、第3の弁、第5の弁を開いて、洗浄液ポンプを運転し、洗浄液を逆浸透膜装置と洗浄液タンクとの間で循環させることを含む。
【0023】
本発明に係る逆浸透膜装置の洗浄装置は別の一実施態様において、洗浄液タンク内の洗浄液のpHを測定するpH測定手段と、pH測定手段の測定結果に基づいて、洗浄液タンク内に酸又はアルカリを供給するpH調整手段とを備える。
【0024】
本発明に係る逆浸透膜装置の洗浄装置は更に別の一実施態様において、洗浄液タンク内の洗浄液の温度を測定する温度測定手段と、洗浄液タンク内の洗浄液の温度が逆浸透膜の洗浄処理に適した温度となったときを報知可能な報知手段とを備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、低水温時期においても洗浄効果を適切に維持でき、分離膜の透水性能を効率良く回復させることが可能な逆浸透膜装置の洗浄方法及び逆浸透膜装置の洗浄装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る逆浸透膜装置の洗浄装置の一例を示す概略図である。
図2】本発明の第2の実施の形態に係る逆浸透膜装置の洗浄装置の一例を示す概略図である。
図3】本発明の第3の実施の形態に係る逆浸透膜装置の洗浄装置の一例を示す概略図である。
図4】本発明の実施例1で使用する実験用逆浸透膜装置の洗浄装置の例を説明する概略図である。
図5】本発明の実施例で使用した逆浸透膜の新品、洗浄処理前、及び洗浄処理後(洗浄1、洗浄2)の膜透過流束の測定結果の例を示すグラフである。
図6】本発明の実施例で使用した逆浸透膜の洗浄後すすぎ時間と膜透過流束との関係の例を示すグラフである。
図7】本発明の実施例3で使用した逆浸透膜装置の洗浄装置の例を示す概略図である。
図8】本発明の実施例3で使用した逆浸透膜の膜透過流束の変化の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を参照しながら本発明の実施の形態を以下に説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0028】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る逆浸透膜装置2の洗浄装置は、図1に示すように、洗浄液を貯留する洗浄液タンク3と、洗浄液を加圧し、逆浸透膜を備える逆浸透膜装置2内へ送給する洗浄液ポンプ4と、洗浄液ポンプ4と洗浄液タンク3との間に接続され洗浄液を洗浄液ポンプと洗浄液タンクとの間で循環させる間に洗浄液ポンプから発生する熱で逆浸透膜の洗浄処理に適した温度に温める循環ライン8と、洗浄液タンク3内の洗浄液が逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度となるように洗浄液タンク3内に供給水を供給する供給ライン(供給水配管12、透過水配管11)と、逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度及び温度に調整された洗浄液を逆浸透膜装置2の入口側へ供給し、逆浸透膜装置2から排出された洗浄液を洗浄液タンク3へ返送する洗浄液配管(洗浄液供給配管9、洗浄液返送配管10)とを備える。
【0029】
原水は原水ポンプ1で加圧された後、逆浸透膜装置2が備える逆浸透膜と接触させて逆浸透膜処理を行うことにより、濃縮水と透過水とが得られる。原水ポンプ1は、原水を逆浸透膜装置2へ供給する原水供給管5に接続されている。逆浸透膜装置2から流出する透過水は、逆浸透膜装置2に接続された透過水配管6を介して外部へ流出される。逆浸透膜装置2から流出する濃縮水は、逆浸透膜装置2に接続された濃縮水配管7を介して外部へ流出される。濃縮水配管7には、洗浄液タンク3に接続された洗浄液返送配管10が接続されている。洗浄液返送配管10を介して返送された洗浄液は、洗浄液タンク3内に収容された後、原水供給管5に接続された洗浄液供給配管9を介して、逆浸透膜装置2の洗浄液として供給できるようになっている。
【0030】
透過水配管6には、洗浄液タンク3に接続された透過水配管11が接続されている。透過水配管11は、洗浄液タンク3内の洗浄液の濃度を調整するための供給水として透過水を供給する供給ラインとして機能する。洗浄液タンク3には、更に、洗浄液タンク3内の洗浄液の濃度を調整するための供給水を外部から洗浄液タンク3内に供給する供給水配管12が接続されている。図1に示す例では、透過水配管11及び供給水配管12は、互いに別々に洗浄液タンク3に接続されているが、透過水配管11及び供給水配管12は、洗浄液タンク3の前段に配置されるバルブ(不図示)等によってお互いに接続されていてもよい。
【0031】
逆浸透膜装置2の洗浄装置は、原水供給管5に接続された第1の弁V11と、原水供給管5に洗浄液を供給する洗浄液供給配管9に接続された第2の弁V12と、第2の弁V12と洗浄液ポンプ4との間に配置された第3の弁V13と、循環ライン8に接続された第4の弁V14と、逆浸透膜装置2から流出する濃縮水を流す濃縮水配管7と洗浄液タンク3との間に接続された第5の弁V15と、濃縮水配管7に接続された第6の弁V16と、逆浸透膜装置2から流出する透過水を流す透過水配管6に接続された第7の弁V17とを備える。
【0032】
図1の例では、第1の弁V11は、原水ポンプ1と逆浸透膜装置2との間に設けられている。第1の弁V11の更に下流側(逆浸透膜装置2側)の原水供給管5には、洗浄液供給配管9が接続されている。
【0033】
逆浸透膜装置2の通常運転時、即ち、逆浸透膜装置2において逆浸透膜処理を行うときには、第1の弁V11、第6の弁V16、第7の弁V17を開き、第2の弁V12及び第5の弁V15を閉じる。これにより、原水は、原水ポンプ1で加圧されて逆浸透膜装置2内に送給され、透過水及び濃縮水が得られる。透過水は、用途に応じて透過水配管6から各使用先に供給できる。濃縮水は、原水の成分が濃縮されているため、濃縮水配管7から典型的には外部へ排出されるが、水質が用途に適合すれば、再利用することも可能である。
【0034】
洗浄液タンク3内では洗浄液の濃度及び温度が調整される。洗浄液タンク3内には、典型的には洗浄液の原液が貯留される。洗浄液の原液を所定の濃度に希釈するための供給水は、透過水配管11又は供給水配管12を介して供給される。供給水の種類は特に限定されない。透過水配管11から供給される透過水は供給水として使用してもよい。濁質が少なく水質性状が比較的良好で清澄であれば、原水の一部を供給水として使用することも可能である。
【0035】
洗浄液は、逆浸透膜装置2が備える逆浸透膜について予想される膜汚染状況に応じて、その濃度が調整される。膜汚染状況は、逆浸透膜装置2の運転状況から、ある程度、判断することが可能である。例えば、有機物汚染による逆浸透膜の透水性能の低下が考えられる場合には、アルカリ性の洗浄液で洗浄すると洗浄効果が高い。また、金属類の付着による逆浸透膜の透水性能の低下が考えられる場合には、酸性の洗浄液で洗浄すると効果が高い。本実施形態によれば、逆浸透膜の汚染状況の予想結果に応じて、逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度及び温度の洗浄液が予め調整される。そして、洗浄開始時から高濃度且つ加温された洗浄液を用いて逆浸透膜を洗浄することにより、分離膜の透水性能を短時間で効率良く回復させることができる。
【0036】
アルカリ性の洗浄液の種類は特に限定されず、逆浸透膜の洗浄に用いられる一般的な洗浄液が利用できる。洗浄液のpHは、10以上、好ましくは11以上、更に好ましくは11~12程度となるように調整される。例えば、後述する洗浄液の加温処理又は循環処理によって、洗浄液のpHが10よりも下がってくることがある。このような場合には、洗浄液の原液に、洗浄剤となる苛性ソーダを添加して洗浄液のpHを調整することが好ましい。更には、洗浄液に界面活性剤を加えることにより、逆浸透膜の洗浄効果をより高めることができる点で好ましい。界面活性剤は、例えば、洗浄液タンク3内に収容される洗浄液に対して0.1~5重量%添加することが好ましく、1~2重量%添加することがより好ましい。
【0037】
酸性の洗浄液の種類は特に限定されず、逆浸透膜の洗浄に用いられる一般的な洗浄液が利用できる。添加する酸としては、塩酸、硫酸、クエン酸等が利用できる。洗浄液のpHは、塩酸や硫酸の場合、2程度更には2以下となるように洗浄液の原液に洗浄剤となる塩酸や硫酸を添加することが好ましい。クエン酸の場合は洗浄液タンク3内に収容される洗浄液に対して例えば2重量%程度となるように調整することが好ましい。逆浸透膜の汚染状況によっては、アルカリ性の洗浄液を収容する洗浄液タンク3と、酸性の洗浄液を収容する洗浄液タンク3とを設け、アルカリ洗浄後に原水等ですすぎ洗浄を行った後に、酸洗浄を実施することにより、逆浸透膜の洗浄効果をより高めることができる。
【0038】
洗浄液タンク3内の洗浄液は、逆浸透膜の洗浄処理に適した温度に調整される。ここで、洗浄液を温めるときには、第3の弁V13を閉じ、第4の弁V14を開いて、洗浄液ポンプ4を運転し、洗浄液タンク3内の洗浄液を循環ライン8を介して循環させて第4の弁V14の開度を調整し、洗浄液ポンプ4が発する熱により洗浄液が温められる。また、洗浄液が循環ライン8を介して洗浄液タンク3と洗浄液ポンプ4との間で循環することにより洗浄液タンク3内で液流が発生するため、洗浄液タンク3内の洗浄液を混合することができ、これにより洗浄液の濃度を均一化できる。
【0039】
循環ライン8の具体的構成は特に限定されないが、洗浄液タンク3内に液流を生じさせて洗浄液の濃度の均一化を促すために、例えば、洗浄液タンク3の底部から洗浄液を抜き出す。そして、洗浄液タンク3の上部又は洗浄液の液面近くから洗浄液を洗浄液タンク3に返送するように循環ライン8を配置できる。これにより、循環ライン8を用いて洗浄液タンク3内の洗浄液を混合することができるため、撹拌に必要な動力を削減できる。また、循環ライン8の途中にラインミキサーを設置して洗浄液の撹拌を促進させることも好ましい。
【0040】
また、循環ライン8での洗浄液の加温を促すために循環ライン8を構成する配管の外周に断熱部材を配置することにより、循環ライン8を流れる際の熱の損失を抑制できる。循環ライン8の配管長が長すぎたり流量が少なすぎたりすると、特に寒冷時においては洗浄液の温度が低い場合もある。
【0041】
循環ライン8は、洗浄液ポンプ4で発生する熱を受けて洗浄液が十分に温められるように、その配管長が調整されることが好ましい。外気温に応じて、循環ライン8に循環させる洗浄液の流量を調整することもまた好ましい。以下に限定されないが、一実施態様では、容積1m3の洗浄液タンク3に対し、洗浄液ポンプ4は、洗浄液を最大650L/分で循環させるほどの能力を備える。洗浄液タンク3の容積に対し、例えば約1.5分で洗浄液が入れ替わるような能力を持つ洗浄液ポンプ4を設置することで、洗浄液を十分混合すると共に、加温が容易になる。
【0042】
洗浄液タンク3には、洗浄液タンク3内の洗浄液の温度を測定する温度測定手段31と、洗浄液タンク3内の洗浄液のpHを測定するpH測定手段32とを備えていてもよい。温度測定手段31としては温度計等が用いられる。pH測定手段32としては洗浄液タンク3内の洗浄液のpHを連続又はバッチで測定可能なpH計等が用いられる。また、洗浄液タンク3内の洗浄液の液温を維持するため、洗浄液タンク3の外側に保温材を設けて、放熱を押さえることも有効である。
【0043】
更に、洗浄液タンク3には、洗浄液タンク3内の洗浄液の温度に応じて、第4の弁V14の開度を調整するための開度調整手段20と、pH測定手段32の測定結果に基づいて、洗浄液タンク3内に酸又はアルカリを供給するpH調整手段21と、洗浄液タンク3内の洗浄液の温度が逆浸透膜の洗浄処理に適した温度となったときを作業者に対して報知可能な報知手段22とを備えることが好ましい。報知手段22の具体的構成は限定されないが、作業者に対して音、光、振動、図や文字等を利用して洗浄液の温度や洗浄液の状態(濃度、保温時間等)を報知することが可能な装置であれば特に限定されない。
【0044】
逆浸透膜装置2に供給する洗浄液の温度が低すぎると、所定の洗浄効果が十分に得られない場合がある。洗浄液の温度は、高いほど洗浄液の効果も高くなるが、温度が高すぎると、高温の洗浄液との接触により、逆浸透膜の耐熱性が損なわれ、逆浸透膜の劣化を助長するおそれがある。逆浸透膜及び配管の耐熱温度を考慮すると、洗浄液の温度は、45℃以下、更には40℃以下とすることが好ましい。
【0045】
本実施形態によれば、開度調整手段20により第4の弁V14の開度を調整することで、洗浄液の温度の調整が容易になる。例えば、第4の弁V14の開度を高めることで、洗浄液の温度上昇を早めることが可能となる。更に、報知手段22によって、洗浄液が所定の温度に達したことを作業者に報知できるため、作業者は必要に応じて、洗浄液ポンプ4を停止させるか又は第4の弁V14を閉じて、温度調節を一旦停止させることができる。これにより、洗浄液の過度な温度上昇を抑制することができる。
【0046】
更に、pH調整手段21によってpHが適正に調整されることで、洗浄液の逆浸透膜装置2への供給開始時から十分な洗浄効果を備えた濃度及び温度の洗浄液を、逆浸透膜装置2へ供給できるため、逆浸透膜の洗浄処理を効率良く行うことができる。更に、報知手段22を備えることで、洗浄液の供給準備ができていることを作業者が把握しやすくできるため、より適切なタイミングで洗浄処理を効率良く行うことができる。
【0047】
洗浄液タンク3に収容された洗浄液を用いて逆浸透膜の洗浄処理を行うときには、第1の弁V11、第4の弁V14、第6の弁V16、第7の弁V17を閉じ、第2の弁V12、第3の弁V13、第5の弁V15を開く。更に、洗浄液ポンプ4を運転し、洗浄液を洗浄液供給配管9から逆浸透膜装置2へ供給し、逆浸透膜装置2から洗浄液返送配管10を介して洗浄液タンク3に返送することにより、洗浄液を逆浸透膜装置2と洗浄液タンク3との間で循環させる。
【0048】
逆浸透膜の洗浄処理を行うときに、洗浄液を逆浸透膜装置2と洗浄液タンク3との間で循環させた後に、第2の弁V12、第5の弁V15、第7の弁V17を閉じ、第1の弁V11及び第6の弁V16を開いて原水を逆浸透膜装置2へ送水し、洗浄液を逆浸透膜装置2から排出させる処理を行うことがより好ましい。原水の代わりに透過水の一部を用いても良い。このように、洗浄液を逆浸透膜装置2から排出させた後に、逆浸透膜の一次側に原水を供給してすすぎ処理を行うことによって、逆浸透膜の洗浄効果を高めることができる。また、逆浸透膜装置2に対して酸洗浄とアルカリ洗浄とを行う際には、一方の洗浄処理の終了後に逆浸透膜装置2に原水を供給することにより、性質の異なる洗浄液を供給することによる逆浸透膜装置2内のスケール等の発生が抑制できる。
【0049】
別の一実施態様では、洗浄液を逆浸透膜装置2へ供給する際に、洗浄液ポンプ4を一旦停止させて洗浄液を逆浸透膜装置2内で一定期間静置させた後に、洗浄液ポンプ4の運転を再開させる処理を行うことが好ましい。洗浄液が逆浸透膜装置2内で静置される静置時間が設けられることにより、静置時間の間に逆浸透膜の膜面から汚染物質を剥離させる。そして、洗浄液ポンプ4の運転を再開させて洗浄液の再循環を行うことにより、静置時間に剥離した汚染物質を逆浸透膜装置2外へ押し流すことが可能となる。
【0050】
洗浄液の循環の時間は任意に設定できるが、洗浄液と逆浸透膜の表面が接触している時間が長いほど洗浄効果が高くなることが期待できる。例えば、洗浄液の循環処理を15分実施し、その後循環を停止し、3時間ほど静置した後、再度循環処理を15分程度実施することにより、逆浸透膜を効率良く洗浄することができる。
【0051】
即ち、洗浄処理時は逆浸透膜の一次側にアルカリ性または酸性の洗浄液が存在しており、溶質濃度の高い洗浄液が存在し、二次側(透過水側)は溶質濃度の低い透過水が存在しているため、二次側から一次側への正浸透による透過水の移動が生じる。静置状態では、一次側は加圧されていない状態となるので、正浸透が生じやすい状態となり、正浸透による透過水の流れで膜面から汚染物質が剥離する効果が期待できる。このため、洗浄液を循環させた後、静止時間を設けて、汚染物質の剥離を促進させる。その際、第7の弁V17を閉じていると、透過水が一次側に流れにくいことが考えられる。したがって、逆浸透膜装置2と第7の弁V17との間に、小容量の透過水のバッファータンク(不図示)を設け、正浸透により透過水が逆浸透膜の一次側に透過することを促進させることも可能である。洗浄後は第1の弁V11、第6の弁V16を開き、第2の弁V12、第5の弁V15及び第7の弁V17を閉じて、原水を低圧で供給し、逆浸透膜装置2内をすすいだ後、通常運転に復帰させる。
【0052】
逆浸透膜処理の後、洗浄処理の前に、第1の弁V11の開度を絞り、逆浸透膜装置2に供給される原水を原水ポンプ1の熱により温める予備加熱を行ってもよい。原水ポンプ1で発生した熱により温めた原水を予め逆浸透膜装置2内に導入することにより、逆浸透膜装置2内を洗浄処理前に加温することができるため、寒冷時等においても配管の通液による洗浄液の温度低下の影響を小さくでき、洗浄液の洗浄効果がより有効に得られる。
【0053】
図1に示す逆浸透膜装置2の洗浄装置を用いて本発明の第1の実施の形態に係る逆浸透膜装置2の洗浄方法が実施できる。即ち、第1の実施の形態に係る逆浸透膜装置2の洗浄方法は、逆浸透膜を洗浄する洗浄液を貯留する洗浄液タンク3内の洗浄液を逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度に調整し、洗浄液を洗浄液ポンプ4で加圧し、加圧により発生する洗浄液ポンプ4の熱を用いて洗浄液を温め、温められた洗浄液を洗浄液タンク3内に循環させることにより洗浄液タンク3内の洗浄液の温度を逆浸透膜の洗浄処理に適した温度に調整し、逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度及び温度に調整した洗浄液を、洗浄液ポンプ4を用いて逆浸透膜装置2へ供給して洗浄処理することを含む。
【0054】
本発明の第1の実施の形態に係る逆浸透膜装置2の洗浄装置及び洗浄方法によれば、洗浄液タンク3に接続された洗浄液ポンプ4、第4の弁V14及び循環ライン8により、洗浄液を逆浸透膜の洗浄処理に好適な温度に保つと共に洗浄液の濃度を均一に保持することができる。洗浄液の温度及び濃度は、原水を逆浸透膜処理する間に行っておくことができるため、高い洗浄効果を有する洗浄液を最適なタイミングで逆浸透膜装置2内に供給できる。これにより、低水温時においても洗浄液による洗浄効果が効率良く短時間で得られる。また、洗浄液ポンプ4は、洗浄液を洗浄液タンク3間及び逆浸透膜装置2内を循環させる程度の規模のポンプでよいため、原水に逆浸透膜処理のための圧力を印加する必要を要する原水ポンプ1に比べて、装置の小型化を図ることができ、メンテナンスも比較的容易である。その結果、第1の実施の形態に係る逆浸透膜装置2の洗浄装置及び洗浄方法によれば、低水温時期においても洗浄効果を適切に維持でき、分離膜の透水性能を効率良く回復させることが可能となる。
【0055】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る逆浸透膜装置2の洗浄装置は、図2に示すように、洗浄液タンク3内の洗浄液を逆浸透膜装置2へ供給する洗浄液供給配管9が、原水を供給する原水供給管5に接続された第1の弁V21と原水ポンプ1との間に接続されている点が、本発明の第2の実施の形態に係る逆浸透膜装置2と異なる。
【0056】
図2に示すように、第2の実施の形態に係る逆浸透膜装置2の洗浄装置は、第1の弁V21と、原水供給管5に洗浄液を供給する洗浄液供給配管9に接続された第2の弁V22と、第2の弁V22と洗浄液ポンプ4との間に配置された第3の弁V23と、循環ライン8に接続された第4の弁V24と、逆浸透膜装置2から流出する濃縮水を流す濃縮水配管7と洗浄液タンク3との間に接続された第5の弁V25と、濃縮水配管7に接続された第6の弁V26と、逆浸透膜装置2から流出する透過水を流す透過水配管6に接続された第7の弁V27とを備える。第1~第7の弁V21~V27は、図1の第1~第7の弁V11~V17の構成と実質的に同様の構成を有しているため、詳細な説明は省略する。
【0057】
第2の実施の形態に係る逆浸透膜装置2の洗浄装置及び洗浄処理方法においても、逆浸透膜装置2を用いて通常の逆浸透膜処理を行う間に、洗浄液タンク3に接続された洗浄液ポンプ4と洗浄液ポンプ4と洗浄液タンク3との間に接続された循環ライン8を介して洗浄液タンク3内の洗浄液を洗浄液ポンプ4と洗浄液タンク3との間で循環させることにより、一定温度以上に温める。洗浄処理には、洗浄液ポンプ4を介して逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度及び温度に調整した洗浄液を逆浸透膜装置2へ供給することができるため、低水温時期においても洗浄効果を適切に維持できる。
【0058】
第2の実施の形態に係る逆浸透膜装置2においても、逆浸透膜処理の後、洗浄処理の前に、第1の弁V21又は第2の弁V22の開度を絞り、逆浸透膜装置2に供給される原水又は洗浄液を原水ポンプ1の熱により温める処理を更に含んでもよい。洗浄処理において洗浄液が供給される前に原水ポンプ1の熱により逆浸透膜装置2に供給する原水又洗浄液を温めることで、洗浄液の洗浄効果をより高くすることが可能である。
【0059】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る逆浸透膜装置2の洗浄装置は、図3に示すように、原水を原水ポンプ1で加圧して逆浸透膜と接触させ、濃縮水と透過水とを得る逆浸透膜装置2の洗浄装置であって、逆浸透膜装置2を洗浄する洗浄液を貯留する洗浄液タンク3と、洗浄液を加圧し、逆浸透膜装置2内へ送給する洗浄液ポンプ4と、原水を逆浸透膜装置2へ供給する原水供給管5に接続された原水ポンプ1と洗浄液タンク3との間に接続され、洗浄液を原水ポンプ1と洗浄液タンク3との間で循環させる間に原水ポンプ1から発生する熱で逆浸透膜の洗浄処理に適した温度になるように温める循環ライン8と、洗浄液タンク3内の洗浄液が逆浸透膜の洗浄処理に適した濃度になるように洗浄液タンク3内に供給水を供給する供給ライン(供給水配管12、透過水配管11)と、逆浸透膜の洗浄液に適した濃度及び温度に調整された洗浄液を逆浸透膜装置2の入口側へ供給し、逆浸透膜装置2から排出された洗浄液を洗浄液タンク3へ返送する洗浄液配管(洗浄液供給配管9、洗浄液返送配管10)とを備える。
【0060】
第3の実施の形態に係る逆浸透膜装置2の洗浄装置は、原水供給管5に接続された第1の弁V31と、原水供給管5に洗浄液を供給する洗浄液供給配管9に接続された第2の弁V32と、原水ポンプ1と逆浸透膜装置2との間に接続された第3の弁V33と、循環ライン8に接続された第4の弁V34と、逆浸透膜装置2から流出する濃縮水を流す濃縮水配管7と洗浄液タンク3との間に接続された第5の弁V35と、濃縮水配管7に接続された第6の弁V36と、逆浸透膜装置2から流出する透過水を流す透過水配管6に接続された第7の弁V37とを備える。第1~第7の弁V31~V37は、図1の第1~第7の弁V11~V17の構成と実質的に同様の構成を有しているため、詳細な説明は省略する。
【0061】
逆浸透膜装置2において逆浸透膜処理を行うときには、第1の弁V31、第3の弁V33、第6の弁V36、第7の弁V37を開き、第2の弁V32、第4の弁V34、第5の弁V35を閉じる。洗浄液タンク3に収容された洗浄液を用いて逆浸透膜の洗浄処理を行うときには、第1の弁V31、第3の弁V33、第5の弁V35、第6の弁V36、第7の弁V37を閉じ、第4の弁V34の開度を絞って、洗浄液タンク3内の洗浄液を洗浄液供給配管9、原水供給管5、循環ライン8を通して循環させる。この際、原水ポンプ1による熱により、洗浄液供給配管9、原水供給管5、循環ライン8を通る洗浄液が温められる。洗浄液タンク3内の洗浄液が逆浸透膜の洗浄処理に適した温度となった後、原水ポンプ1を一旦停止させ、第1の弁V31、第4の弁V34、第6の弁V36、第7の弁V37を閉じ、第2の弁V32、第3の弁V33、第5の弁V35を開く。再び原水ポンプ1を運転して、洗浄液を逆浸透膜装置2が備える逆浸透膜の一次側に供給し、洗浄液タンク3に戻す循環運転をすることで、逆浸透膜を洗浄する。洗浄液の循環方法は、第1の実施の形態と同様に、循環運転と静置とを組み合わせることで、膜汚染物質の剥離効果を高めることが期待できる点で望ましい。
【0062】
第3の実施の形態においては、原水ポンプ1を用いて洗浄液の均一化と加温操作を行うため、第1及び第2の実施の形態とは異なり、洗浄液ポンプ4を省略でき、設備のイニシャルコストを低減することが可能となる。一方、洗浄液の均一化と加温操作を実施するためには、通常のろ過運転を停止することが必要となるため、操作が煩雑になる場合もある。第3の実施の形態に係る洗浄方法も、膜洗浄の観点では第1及び第2の実施の形態に係る洗浄方法と同等の効果が得られるが、操作やイニシャルコスト等で差があるため、設備の目的に合わせていずれかの構成を採用することが好ましい。
【0063】
このように、本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。即ち、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を相互に組み合わせ、変形して具体化できることは勿論である。
【実施例0064】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0065】
(実施例1:加温の効果)
実施例1では加温によるRO膜の洗浄効果を評価した。食品工場で運転されていたRO膜処理設備より透水性能が低下したRO膜エレメントを回収し、これを解体して、汚染された逆浸透膜の一部を切り出し試験に供した。汚染されたRO膜は、図4に示す実験用逆浸透膜装置2a(有効膜面積60cm2)にセットし、RO膜の一次側に洗浄剤を含む洗浄液を洗浄液ポンプ4aで循環させた。実験用逆浸透膜装置2aの原水側配管と濃縮水側配管を洗浄液タンク3aに接続し、RO膜の一次側で洗浄液を循環できる構成とした。洗浄液タンク3aには、後述する洗浄液を添加し、洗浄液を循環させた。実験用逆浸透膜装置2aの透過水側配管のバルブV47は、循環運転中は閉、静置中は開とした。
【0066】
実施例1では、洗浄液にアルカリ剤と界面活性剤を含む洗浄液を用い、pHを約12になるように調整してから洗浄操作を行った。実施例1での洗浄条件を表1に示す。洗浄1では洗浄液の温度を室温(22~24℃)に設定、洗浄2では洗浄液を加温し、30~33℃に設定した。また、各洗浄条件とも、洗浄液を15分循環後、45分静置する操作を4セット繰り返して、RO膜を洗浄した。その後、イオン交換処理水でRO膜をすすいだ後、イオン交換処理水を原水としてろ過運転を行い膜透過流束を測定した。
【0067】
【表1】
【0068】
標準状態(水温25℃、運転圧力0.6MPa)に補正した膜透過流束の測定結果を図5に示す。洗浄前と洗浄後のRO膜の膜透過流束に加えて、参考として新品の膜での膜透過流束を合わせて示す。洗浄前と比較して、洗浄1と洗浄2のいずれも膜透過流束が増加しており、洗浄効果が認められた。また、洗浄2の膜透過流束は、洗浄1よりも高くなっており、洗浄時の温度を上げることで、洗浄効果をより高めることができた。
【0069】
(実施例2)
実施例2では、洗浄液の循環によるRO膜の洗浄効果を評価した。実施例1と同様の汚染されたRO膜の一部を切り出し、試験に供した。汚染されたRO膜は、実施例1と同じ図4の実験用RO膜処理装置2a(有効膜面積60cm2)にセットし、RO膜の一次側に洗浄剤を含む洗浄液を循環させた。実施例2では、洗浄液は、実施例1と同じく、アルカリ剤と界面活性剤を含む洗浄液を用い、pHを約12になるように調整した。洗浄液は最初の15分循環し、その後、4時間静置した。静置後、水道水をRO膜の一次側で、1度だけ通水を行うワンパスすすぎ操作を行った。
【0070】
標準状態(水温25℃、運転圧力0.6MPa)に補正した膜透過流束の測定結果を図6に示す。水道水によるすすぎ操作を継続することにより、時間に応じて透水性能が回復した。実施例2では、洗浄液の浸漬後にすすぎ時間を十分とることで、RO膜の洗浄効果を高めることができた。
【0071】
(実施例3)
実施例3では、実施例1及び2の結果を踏まえて、実際のRO膜処理設備での洗浄操作を実施した。食品工場で運用中のRO膜処理設備(最大処理水量80m3/hr)の処理設備で膜洗浄を実施した。図7にRO膜処理設備の概略図を示す。供給された原水は高圧ポンプからなる原水ポンプ1で加圧され、RO膜ユニット2(逆浸透膜装置)に送水される。RO膜ユニット2は複数の膜エレメントを収めたベッセルがツリー型に配置されている。本設備には、濃縮水配管7から分岐して洗浄液タンク3に至る配管として洗浄液返送配管10を備え、洗浄液タンク3から洗浄液ポンプ4を経てRO膜ユニット2の入口側へ至る洗浄液供給配管9と、洗浄液ポンプ4の吐出側から分岐し、洗浄液タンク3に戻る循環配管(循環ライン8)と、第1~第7の弁V71~V77が備わっている。
【0072】
通常運転時は第1の弁V71、第6の弁V76、第7の弁V77は開、第2の弁V72と第5の弁V75は閉で、逆浸透膜処理の通常運転を行った。このRO膜処理設備は、透水性能(膜透過流束)が低下し、処理水量が低下したため洗浄操作を実施した。洗浄操作に先立ち、逆浸透膜処理の通常運転の間に、洗浄液タンク3に水道水(遊離塩素を除去済み)を所定量供給し、ここに実施例1と2で使用した洗浄剤を添加し、pHが約12になるように予め調整した。次いで、第3の弁V73を閉、第4の弁V74を開として、洗浄液ポンプ4を運転し、洗浄液を循環して、洗浄液の均一化と加温操作を行った。この時、第4の弁V74の開度を調整し、洗浄液ポンプ4の圧力が高くなるように調整し、洗浄液の温度を上昇させた。循環運転前は、洗浄液の温度は17℃であったが、循環運転後に洗浄液の温度は22℃まで昇温した。
【0073】
洗浄液を昇温後、第1の弁V71、第4の弁V74、第6の弁V76、第7の弁V77を閉、第2の弁V72、第3の弁V73、第5の弁V75を開として、洗浄液を15分間循環させた。次いで、洗浄液ポンプ4を停止し、4時間洗浄液を静置した。静置後、第2の弁V72、第5の弁V75、第7の弁V77を閉、第1の弁V71、第6の弁V76を開として、原水を送水し、洗浄液を押し出し、RO膜ユニット2から排出した。次いで、原水を14時間通水し、すすぎ操作を行って洗浄操作を完了させた。図8に水温20℃、圧力1MPaに換算した膜透過流束の経過を示す。9月以降、膜汚染により膜透過流束が低下し、低いまま推移したが、洗浄後に膜透過流束が増加しており、洗浄の効果が認められた。
【符号の説明】
【0074】
1…原水ポンプ
2…逆浸透膜装置(RO膜ユニット)
3…洗浄液タンク
4…洗浄液ポンプ
5…原水供給管
6…透過水配管
7…濃縮水配管
8…循環ライン
9…洗浄液供給配管
10…洗浄液返送配管
11…透過水配管
12…供給水配管
V11、V21、V31、V71…第1の弁
V12、V22、V32、V72…第2の弁
V13、V23、V33、V73…第3の弁
V14、V24、V34、V74…第4の弁
V15、V25、V35、V75…第5の弁
V16、V26、V36、V76…第6の弁
V17、V27、V37、V77…第7の弁
20…開度調整手段
21…pH調整手段
22…報知手段
31…温度測定手段
32…pH測定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8