(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118957
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】舗装用組成物及び舗装路
(51)【国際特許分類】
E01C 7/08 20060101AFI20240826BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240826BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240826BHJP
E01C 7/10 20060101ALI20240826BHJP
E01C 7/18 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
E01C7/08
C08K3/013
C08L9/00
E01C7/10
E01C7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025578
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(71)【出願人】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】山口 健
(72)【発明者】
【氏名】竹重 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】会田 昭二郎
(72)【発明者】
【氏名】加賀 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】浜谷 悟司
(72)【発明者】
【氏名】橋口 真
(72)【発明者】
【氏名】村田 雷安
(72)【発明者】
【氏名】村上 浩
【テーマコード(参考)】
2D051
4J002
【Fターム(参考)】
2D051AF01
2D051AF02
2D051AG01
2D051AG11
2D051AG15
2D051AH02
2D051AH03
4J002AC021
4J002AG002
4J002BB151
4J002BC051
4J002BC081
4J002BC091
4J002BP011
4J002DJ006
4J002FD012
4J002FD016
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】舗装耐久性を向上させることができる舗装用組成物を提供する。
【解決手段】アスファルト及び/又はセメントと、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含有することを特徴とする、舗装用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト及び/又はセメントと、
共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、
を含有することを特徴とする、舗装用組成物。
【請求項2】
前記共重合体は、融点が50~120℃である、請求項1に記載の舗装用組成物。
【請求項3】
前記共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が0mol%を超え50mol%以下であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が50mol%以上100mol%未満である、請求項1に記載の舗装用組成物。
【請求項4】
前記共重合体が、更に芳香族ビニル単位を有する、請求項1に記載の舗装用組成物。
【請求項5】
前記共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が1~50mol%であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が40~97mol%であり、前記芳香族ビニル単位の含有量が2~35mol%である、請求項4に記載の舗装用組成物。
【請求項6】
前記共重合体の含有量が、前記アスファルト及び/又はセメントの合計100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下である、請求項1に記載の舗装用組成物。
【請求項7】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を更に含有する、請求項1に記載の舗装用組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の舗装用組成物を用いたことを特徴とする、舗装路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装用組成物及び舗装路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車道用舗装では、車両の通行により道路に轍が発生し得る。かかる轍の発生は、車両通行時の安全性及び走行時快適性に悪影響を及ぼすことから、轍の発生を防ぐ又は遅らせるための対策が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、轍が生じ易い舗装部分に剛性の高い材料を締固め固化させて成る、補強帯域を設けたアスファルト舗装について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたような、舗装を部分によって材料を変えて形成する技術は、手間及び時間がかかる。かかる状況下、それ自体で舗装耐久性を向上させ得る材料の開発が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、舗装耐久性を向上させることができる舗装用組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかる舗装用組成物を用いた、舗装耐久性に優れる舗装路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、アスファルトやセメント等の材料に対し、所定の共重合体を配合して得られる組成物が、舗装に対して被覆加工を施した際に舗装耐久性を向上できることを見出し、本発明をするに至った。
【0008】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0009】
[1]アスファルト及び/又はセメントと、
共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、
を含有することを特徴とする、舗装用組成物。
かかる本発明の舗装用組成物は、舗装に対して被覆加工を施すことで舗装耐久性を向上させることができる。
【0010】
[2]前記共重合体は、融点が50~120℃である、[1]に記載の舗装用組成物。
この場合、耐久性及び作業性が向上する。
【0011】
[3]前記共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が0mol%を超え50mol%以下であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が50mol%以上100mol%未満である、[1]又は[2]に記載の舗装用組成物。
この場合、舗装耐久性をより効果的に向上させることができる。
【0012】
[4]前記共重合体が、更に芳香族ビニル単位を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の舗装用組成物。
この場合、舗装耐久性をより効果的に向上させることができる。
【0013】
[5]前記共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が1~50mol%であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が40~97mol%であり、前記芳香族ビニル単位の含有量が2~35mol%である、[4]に記載の舗装用組成物。
この場合、舗装耐久性をより効果的に向上させることができる。
【0014】
[6]前記共重合体の含有量が、前記アスファルト及び/又はセメントの合計100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の舗装用組成物。
この場合、舗装耐久性を向上させる効果を十分に発現できるとともに、アスファルト及び/又はセメントとの混合の際に十分な均一性をもたらすことができる。
【0015】
[7]スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を更に含有する、[1]~[6]のいずれかに記載の舗装用組成物。
この場合、舗装耐久性をより向上させることができる。
【0016】
[8][1]~[7]のいずれかに記載の舗装用組成物を用いたことを特徴とする、舗装路。
かかる本発明の舗装路は、舗装耐久性に優れる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、舗装耐久性を向上させることができる舗装用組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、かかる舗装用組成物を用いた、舗装耐久性に優れる舗装路を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の舗装用組成物、及び舗装路を、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0019】
<定義>
本明細書に記載されている化合物は、部分的に、又は全てが化石資源由来であってもよく、植物資源等の生物資源由来であってもよく、使用済タイヤ等の再生資源由来であってもよい。また、化石資源、生物資源、再生資源のいずれか2つ以上の混合物由来であってもよい。
【0020】
本明細書において「舗装」とは、道路を構築するための被覆加工を施すこと又はその構造物を意味する。
また、「道路」とは、屋内外を問わず、人、動物及び/又は車両の交通又は移動に用いられる通路を意味し、具体的には、車道;駐車場;サイクリングコース;歩道;トラックやテニスコート等のスポーツ競技場の地面;等が挙げられる。
本明細書において「舗装路」とは、舗装が施された道路を意味する。
【0021】
(舗装用組成物)
本実施形態の舗装用組成物は、アスファルト及び/又はセメントと、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体と、を含有することを特徴とする。かかる舗装用組成物を用い、道路を構築するための被覆加工を施すことで、舗装耐久性を向上させることができる。
【0022】
<アスファルト及び/又はセメント>
本実施形態の舗装用組成物は、アスファルト及び/又はセメントを含有する。通常、これらアスファルト及び/又はセメントは、舗装に用いる際に、骨材を固めるためのバインダーとしての機能を有する。
なお、本実施形態の舗装用組成物がアスファルトを含有する場合、当該組成物はアスファルト組成物と称することができる。また、本実施形態の舗装用組成物がセメントを含有する場合、当該組成物はコンクリート組成物と称することができる。
【0023】
アスファルトとしては、特に限定されず、例えば、石油精製の際の副産物として得られる石油アスファルト(ストレートアスファルトとも称される。)、天然の産出物として得られるアスファルト(天然アスファルト)等が挙げられ、また、半透明の樹脂バインダーを含む脱色アスファルトが挙げられる。さらに、これらを改質させてなる、ポリマー改質アスファルト、ポリマー改質アスファルトII型、ポリマー改質アスファルトH型、ブローンアスファルト等のアスファルト(改質アスファルト)も挙げられる。これらの中でも、アスファルトとしては、汎用性の観点から、ストレートアスファルトを用いることが好ましい。
【0024】
セメントとしては、特に限定されず、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメント;高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等の混合セメント;エコセメント、アルミナセメント等の特殊セメント;等が挙げられる。これらの中でも、セメントとしては、汎用性の観点から、ポルトランドセメントを用いることが好ましい。
【0025】
<共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体>
本実施形態の舗装用組成物は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体を含有する。驚くべきことに、かかる共重合体は、舗装路の材料に配合させることで改質機能を発揮して、舗装耐久性を向上できることが見出された。
【0026】
前記共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位との2つの単位からなる二元共重合体であってもよいし、更に、芳香族ビニル単位を含む3つの単位からなる三元共重合体であってもよいし、更に、他の単量体単位を含む多元共重合体であってもよい。
【0027】
-共役ジエン単位-
前記共役ジエン単位は、単量体としての共役ジエン化合物に由来する構成単位である。
ここで、共役ジエン化合物とは、共役系のジエン化合物を指す。共役ジエン化合物は、炭素数が4~8であることが好ましい。かかる共役ジエン化合物として、具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0028】
前記共重合体の単量体としての共役ジエン化合物は、機械的強度を向上させる観点から、1,3-ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、1,3-ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1つのみからなることがより好ましく、1,3-ブタジエンのみからなることが更に好ましい。
別の言い方をすると、前記共重合体における共役ジエン単位は、1,3-ブタジエン単位(以下、単にブタジエン単位と称することがある。)及びイソプレン単位からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、1,3-ブタジエン単位及びイソプレン単位からなる群より選択される少なくとも1つのみからなることがより好ましく、1,3-ブタジエン単位のみからなることが更に好ましい。
【0029】
前記共重合体が二元共重合体の場合、共役ジエン単位の含有量は、0mol%を超え50mol%以下であることが好ましい。この場合、伸び及び耐候性に優れる共重合体を得ることができる。同様の観点から、二元共重合体における共役ジエン単位の割合は、40mol%以下であることがより好ましい。
【0030】
二元共重合体において、共役ジエン単位の1,2付加体(3,4付加体を含む)の割合は、10mol%以下であることが好ましい。上記割合が10mol%以下であると、前記共重合体の耐熱性及び耐屈曲疲労性を向上させることができる。同様の観点から、二元共重合体における共役ジエン単位の1,2付加体(3,4付加体を含む)の割合は、8mol%以下がより好ましく、6mol%以下が更に好ましい。なお、前記共役ジエン単位の1,2付加体(3,4付加体を含む)の割合は、共役ジエン単位全体における割合であって、共重合体全体における割合ではない。また、前記割合は、共役ジエン単位がブタジエン単位である場合には、1,2-ビニル結合量と同じ意味である。
【0031】
前記共重合体が三元共重合体又は多元共重合体の場合、共役ジエン単位の含有量は、0mol%を超え、また、1mol%以上であることが好ましく、3mol%以上であることがより好ましく、5mol%以上であることが更に好ましく、また、50mol%以下であることが好ましく、40mol%以下であることがより好ましく、30mol%以下であることが更に好ましい。
共役ジエン単位の含有量が、共重合体全体の1~50mol%であることで、柔軟性及び機械的強度を向上させることができる。同様の観点から、共役ジエン単位の含有量は、共重合体全体の3~40mol%の範囲が好ましく、5~30mol%の範囲がより好ましい。
【0032】
-非共役オレフィン単位-
前記非共役オレフィン単位は、単量体としての非共役オレフィン化合物に由来する構成単位である。
ここで、非共役オレフィン化合物とは、脂肪族不飽和炭化水素で、炭素-炭素二重結合を1個以上有する化合物を指す。非共役オレフィン化合物は、炭素数が2~10であることが好ましい。かかる非共役オレフィン化合物として、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィン、ピバリン酸ビニル、1-フェニルチオエテン、N-ビニルピロリドン等のヘテロ原子置換アルケン化合物等が挙げられる。非共役オレフィン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0033】
前記共重合体の単量体としての非共役オレフィン化合物は、舗装耐久性をより向上させる観点から、非環状の非共役オレフィン化合物であることが好ましく、また、非環状の非共役オレフィン化合物は、α-オレフィンであることがより好ましく、エチレンを含むα-オレフィンであることが更に好ましく、エチレンのみからなることが特に好ましい。
別の言い方をすると、前記共重合体における非共役オレフィン単位は、非環状の非共役オレフィン単位であることが好ましく、また、当該非環状の非共役オレフィン単位は、α-オレフィン単位であることがより好ましく、エチレン単位を含むα-オレフィン単位であることが更に好ましく、エチレン単位のみからなることが特に好ましい。
【0034】
前記共重合体が二元共重合体の場合、非共役オレフィン単位の含有量は、50mol%以上100mol%未満であることが好ましい。この場合、破壊特性を効果的に向上させることができる。同様の観点から、二元共重合体における非共役オレフィン単位の割合は、60mol%以上であることがより好ましい。
【0035】
前記共重合体が三元共重合体又は多元共重合体の場合、非共役オレフィン単位の含有量は、40mol%以上であることが好ましく、45mol%以上であることがよりに好ましく、55mol%以上であることが更に好ましく、60mol%以上であることが特に好ましく、また、97mol%以下であることが好ましく、95mol%以下であることがより好ましく、90mol%以下であることが更に好ましい。非共役オレフィン単位の含有量が、共重合体全体の40~97mol%であることで、舗装耐久性をより向上させることができる。同様の観点から、非共役オレフィン単位の含有量は、共重合体全体の40~97mol%の範囲が好ましく、45~95mol%の範囲がより好ましく、55~90mol%の範囲がより更に好ましく、60~90mol%の範囲が更に好ましい。
【0036】
-芳香族ビニル単位-
前記共重合体は、更に、芳香族ビニル単位を含むことが好ましい。
芳香族ビニル単位は、単量体としての芳香族ビニル化合物に由来する構成単位である。
前記共重合体が芳香族ビニル単位を含有することで、エチレン結晶成分のような結晶成分を切断し、非共役オレフィン単位由来の過度の結晶化が抑制され、共重合体の剛性を向上させつつも、弾性を損ね難く、舗装耐久性をより向上させることができる。
ここで、芳香族ビニル化合物とは、少なくともビニル基で置換された芳香族化合物を指し、共役ジエン化合物には包含されないものとする。芳香族ビニル化合物は、炭素数が8~10であることが好ましい。かかる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等が挙げられる。芳香族ビニル化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0037】
前記共重合体の単量体としての芳香族ビニル化合物は、舗装耐久性をより向上させる観点から、スチレンを含むことが好ましく、スチレンのみからなることがより好ましい。別の言い方をすると、前記共重合体における芳香族ビニル単位は、スチレン単位を含むことが好ましく、スチレン単位のみからなることがより好ましい。
なお、芳香族ビニル単位における芳香族環は、隣接する単位と結合しない限り、共重合体の主鎖には含まれない。
【0038】
前記共重合体が三元共重合体又は多元共重合体の場合、芳香族ビニル単位の含有量は、2mol%以上であることが好ましく、3mol%以上であることがより好ましく、また、35mol%以下であることが好ましく、30mol%以下であることがより好ましく、25mol%以下であることが更に好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が、共重合体全体の2~35mol%であることで、舗装耐久性をより向上させることができる。同様の観点から、芳香族ビニル単位の含有量は、共重合体全体の2~35mol%の範囲が好ましく、3~30mol%の範囲がより好ましく、3~25mol%の範囲が更に好ましい。
【0039】
共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位以外の、その他の構成単位の含有量は、本発明の所望の効果を得る観点から、共重合体全体の30mol%以下であることが好ましく、20mol%以下であることがより好ましく、10mol%以下であることが更に好ましく、含有しないこと、即ち、含有量が0mol%であることが特に好ましい。つまり、前記共重合体は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位との2つの単位からなる二元共重合体であるか、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位の3つの単位からなる三元共重合体であることが好ましい。
【0040】
また、前記共重合体は、所望の効果を確実に得る観点から、ブチレン単位の含有量が0mol%であることが好ましい。
【0041】
前記共重合体は、所望の効果を確実に得る観点から、単量体として、一種のみの共役ジエン化合物、一種のみの非共役オレフィン化合物、及び一種の芳香族ビニル化合物を少なくとも用いて重合してなる重合体であることが好ましい。
別の言い方をすると、前記共重合体は、一種のみの共役ジエン単位、一種のみの非共役オレフィン単位、及び一種のみの芳香族ビニル単位を含有する共重合体であることが好ましく、一種のみの共役ジエン単位、一種のみの非共役オレフィン単位、及び一種のみの芳香族ビニル単位のみからなる三元共重合体であることがより好ましく、1,3-ブタジエン単位、エチレン単位、及びスチレン単位のみからなる三元共重合体であることが更に好ましい。ここで、「一種のみの共役ジエン単位」には、異なる結合様式の共役ジエン単位が包含される。
【0042】
前記共重合体は、例えば、共役ジエン単位の含有量が0mol%を超え50mol%以下であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が50mol%以上100mol%未満であることが好ましい。この場合、舗装耐久性をより効果的に向上させることができる。また、この場合のかかる共重合体は、二元共重合体であることが好ましい。
【0043】
また、前記共重合体は、例えば、共役ジエン単位の含有量が1~50mol%で、非共役オレフィン単位の含有量が40~97mol%で、且つ、芳香族ビニル単位の含有量が2~35mol%であることが好ましい。この場合、舗装耐久性をより効果的に向上させることができる。また、この場合のかかる共重合体は、三元共重合体であることが好ましい。
【0044】
-共重合体の物性-
前記共重合体は、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が10,000~9,000,000(10~9,000kg/mol)であることが好ましく、100,000~8,000,000(100~8,000kg/mol)であることがより好ましい。前記共重合体のMnが10,000以上であることにより、機械的強度を十分に確保することができ、また、Mnが9,000,000以下であることにより、共重合体を含む組成物の作業性を損ね難い。
【0045】
前記共重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が10,000~10,000,000(10~10,000kg/mol)であることが好ましく、50,000~9,000,000(50~9,000kg/mol)であることがより好ましく、100,000~8,000,000(100~8,000kg/mol)であることが更に好ましい。前記共重合体のMwが10,000以上であることにより、機械的強度を十分に確保することができ、また、Mwが10,000,000以下であることにより、共重合体を含む組成物の作業性を損ね難い。
【0046】
前記共重合体は、分子量分布[Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)]が1.00~4.00であることが好ましく、1.00~3.50であることがより好ましく、1.80~3.00であることが更に好ましい。前記共重合体の分子量分布が4.00以下であれば、当該共重合体の物性に十分な均質性をもたらすことができる。
【0047】
なお、前記共重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として求める。
【0048】
前記共重合体は、0~120℃における示差走査熱量計(DSC)で測定した吸熱ピークエネルギーが10~150J/gであることが好ましく、30~120J/gであることが更に好ましい。前記共重合体の吸熱ピークエネルギーが10J/g以上であれば、共重合体の結晶性が高くなり、耐久性を向上させることができる。また、前記共重合体の吸熱ピークエネルギーが150J/g以下であれば、共重合体を含む組成物の作業性が向上する。
前記共重合体の吸熱ピークエネルギーは、示差走査熱量計を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、例えば、10℃/分の昇温速度で-150℃から150℃まで昇温して測定すればよい。
【0049】
前記共重合体は、融点が50~120℃であることが好ましく、50~110℃であることがより好ましい。前記共重合体の融点が50℃以上であれば、共重合体の結晶性が高くなり、耐久性を向上させることができる。また、前記共重合体の融点が120℃以下であれば、共重合体を含む組成物の作業性が向上する。
前記共重合体の融点は、示差走査熱量計(DSC)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して測定すればよい。
【0050】
前記共重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)が0℃以下であることが好ましく、-100℃~-10℃であることが更に好ましい。前記共重合体のガラス転移温度が0℃以下であれば、機械的強度を向上させることができる。
前記共重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量計を用い、JIS K 7121-1987に準拠して測定すればよい。
【0051】
前記共重合体は、結晶化度が0.5~50%であることが好ましく、3~45%であることが更に好ましく、5~45%であることがより一層好ましい。前記共重合体の結晶化度が0.5%以上であれば、非共役オレフィン単位に起因する共重合体の結晶性を十分に確保して、機械的強度を更に向上させることができる。また、前記共重合体の結晶化度が50%以下であれば、共重合体を含む組成物の混練の際の作業性、及び押出加工性が向上する。
前記共重合体の結晶化度は、100%結晶成分のポリエチレンの結晶融解エネルギーと、当該共重合体の融解ピークエネルギーとを測定し、ポリエチレンと共重合体とのエネルギー比率から、結晶化度を算出すればよい。また、融解ピークエネルギーは、示差走査熱量計で測定することができる。
【0052】
前記共重合体は、主鎖が非環状構造のみからなることが好ましい。これにより、機械的強度を更に向上させることができる。
なお、前記共重合体の主鎖が環状構造を有するか否かの確認には、NMRが主要な測定手段として用いられる。具体的には、主鎖に存在する環状構造に由来するピーク(例えば、三員環~五員環については、10~24ppmに現れるピーク)が観測されない場合、その共重合体の主鎖は、非環状構造のみからなることを示す。
なお、本明細書において、重合体の主鎖とは、それ以外のすべての分子鎖(長分子鎖又は短分子鎖、或いはその両方)が、ペンダントのように連なる線状分子鎖を意味する[「Glossary of Basic Terms in Polymer Science IUPAC Recommendations 1996」, Pure Appl. Chem., 68, 2287-2311(1996)のセクション1.34参照]。
また、前記共重合体は、直鎖状構造又は分岐状構造のいずれであってもよいが、直鎖状構造であることが好ましい。
【0053】
-共重合体の製法-
前記共重合体として、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位との2つの単位からなる二元共重合体を製造する場合、共役ジエン化合物及び非共役オレフィン化合物を単量体として用いる重合工程を経て、当該共重合体を製造することができる。
また、前記共重合体として、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位の3つの単位からなる三元共重合体を製造する場合、共役ジエン化合物と、非共役オレフィン化合物と、芳香族ビニル化合物とを単量体として用いる重合工程を経て、当該共重合体を製造することができる。
【0054】
前記共重合体の製造方法は、更に、必要に応じ、カップリング工程、洗浄工程、及びその他の工程を経てもよい。
以下、三元共重合体を製造する場合を代表して、共重合体の製造方法について説明する。
【0055】
共重合体の製造においては、重合触媒の存在下で、共役ジエン化合物を添加せずに非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物のみを添加し、これらをまず重合させることが好ましい。特に後述の触媒組成物を使用する場合には、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物より共役ジエン化合物の方が、反応性が高いことから、共役ジエン化合物の存在下で非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物のいずれか一方又は両方を重合させ難い。また、先に共役ジエン化合物を重合させ、後に非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物を付加的に重合させることも、触媒の特性上、困難となり易い。
【0056】
重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン等が挙げられる。
【0057】
重合工程は、一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。
一段階の重合工程とは、重合させる全ての種類の単量体、即ち、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、芳香族ビニル化合物、及びその他の単量体、好ましくは、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、及び芳香族ビニル化合物を一斉に反応させて重合させる工程である。
また、多段階の重合工程とは、1種類又は2種類の単量体の一部又は全部を最初に反応させて重合体を形成し(第1重合段階)、次いで、第1重合段階で添加しなかった種類の単量体、第1重合段階で添加した単量体の残部等を添加して重合させる1以上の段階(第2重合段階~最終重合段階)を行って重合させる工程である。特に、前記共重合体の製造では、重合工程を多段階で行うことが好ましい。
【0058】
重合工程において、重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスの雰囲気下で行われることが好ましい。重合反応の温度は、特に制限されないが、例えば、-100℃~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。また、上記重合反応の圧力は、共役ジエン化合物を十分に重合反応系中に取り込むため、0.1~10.0MPaの範囲が好ましい。
また、重合反応の反応時間も特に制限がなく、例えば、1秒~10日の範囲が好ましいが、重合触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。
また、共役ジエン化合物の重合工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
【0059】
重合工程は、多段階で行うことが好ましい。より好ましくは、少なくとも芳香族ビニル化合物を含む第1単量体原料と、重合触媒とを混合して重合混合物を得る第1工程と、前記重合混合物に対し、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む第2単量体原料を導入する第2工程とを実施することが好ましい。更に、第1単量体原料が共役ジエン化合物を含まず、且つ第2単量体原料が共役ジエン化合物を含むことがより好ましい。
【0060】
第1工程で用いる第1単量体原料は、芳香族ビニル化合物と共に、非共役オレフィン化合物を含有してもよい。また、第1単量体原料は、使用する芳香族ビニル化合物の全量を含有してもよく、一部のみを含有してもよい。また、非共役オレフィン化合物は、第1単量体原料及び第2単量体原料の少なくともいずれかに含有される。
【0061】
第1工程は、反応器内で、不活性ガス、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。第1工程における温度(反応温度)は、特に制限はないが、例えば、-100℃~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。また、第1工程における圧力は、特に制限はないが、芳香族ビニル化合物を十分に重合反応系中に取り込むため、0.1~10.0MPaの範囲が好ましい。また、第1工程に費やす時間(反応時間)は、重合触媒の種類、反応温度等の条件によって適宜選択することができるが、例えば、反応温度を25~80℃とした場合には、5分~500分の範囲が好ましい。
【0062】
第1工程において、重合混合物を得るための重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサノン、ノルマルヘキサン等が挙げられる。
【0063】
第2工程で用いる第2単量体原料は、共役ジエン化合物のみ、又は、共役ジエン化合物及び非共役オレフィン化合物、又は、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物、又は、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物であることが好ましい。
なお、第2単量体原料が、共役ジエン化合物以外に非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1つを含む場合には、予めこれらの単量体原料を溶媒等と共に混合した後に重合混合物に導入してもよく、各単量体原料を単独の状態から導入してもよい。また、各単量体原料は、同時に添加してもよく、逐次添加してもよい。
第2工程において、重合混合物に対して第2単量体原料を導入する方法としては、特に制限はないが、各単量体原料の流量を制御して、重合混合物に対して連続的に添加すること(所謂、ミータリング)が好ましい。ここで、重合反応系の条件下で気体である単量体原料(例えば、室温、常圧の条件下における非共役オレフィン化合物としてのエチレン等)を用いる場合には、所定の圧力で重合反応系に導入することができる。
【0064】
第2工程は、反応器内で、不活性ガス、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。第2工程における温度(反応温度)は、特に制限はないが、例えば、-100℃~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、反応温度を上げると、共役ジエン単位におけるシス-1,4結合の選択性が低下することがある。また、第2工程における圧力は、特に制限はないが、共役ジエン化合物等の単量体を十分に重合反応系に取り込むため、0.1~10.0MPaの範囲が好ましい。また、第2工程に費やす時間(反応時間)は、重合触媒の種類、反応温度等の条件によって適宜選択することができるが、例えば、0.1時間~10日の範囲が好ましい。
また、第2工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合反応を停止させてもよい。
【0065】
ここで、上記の共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、芳香族ビニル化合物の重合工程は、触媒成分として、下記(a)~(f)成分の1種以上の存在下で、各種単量体を重合させる工程を含むことが好ましい。なお、重合工程には、下記(a)~(f)成分を1種以上用いることが好ましいが、下記(a)~(f)成分の2種以上を組み合わせて、触媒組成物として用いることが更に好ましい。
(a)成分:希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物
(b)成分:有機金属化合物
(c)成分:アルミノキサン
(d)成分:イオン性化合物
(e)成分:ハロゲン化合物
(f)成分:置換又は無置換のシクロペンタジエン(シクロペンタジエニル基を有する化合物)、置換又は無置換のインデン(インデニル基を有する化合物)、及び、置換又は無置換のフルオレン(フルオレニル基を有する化合物)から選択されるシクロペンタジエン骨格含有化合物
上記(a)~(f)成分については、例えば、国際公開第2018/092733号等を参照することによって、重合工程に用いることができる。
【0066】
カップリング工程は、重合工程において得られた共重合体の高分子鎖の少なくとも一部(例えば、末端)を変性する反応(カップリング反応)を行う工程である。
カップリング工程において、重合反応が100%に達した際にカップリング反応を行うことが好ましい。
カップリング反応に用いるカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)等のスズ含有化合物;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;グリシジルプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)が、反応効率と低ゲル生成の点で、好ましい。
なお、カップリング反応を行うことにより、共重合体の数平均分子量(Mn)を増加させることができる。
【0067】
洗浄工程は、重合工程において得られた共重合体を洗浄する工程である。
なお、洗浄に用いる媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられるが、重合触媒としてルイス酸由来の触媒を使用する際は、特にこれらの溶媒に対して酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸等)を加えて使用することができる。添加する酸の量は溶媒に対して15mol%以下が好ましい。添加量が15mol%以下であることで、酸が共重合体中に残存しにくく、組成物の混練及び加硫時の反応に悪影響を及ぼし難い。
この洗浄工程により、共重合体中の触媒残渣量を好適に低下させることができる。
【0068】
-共重合体の含有量-
舗装用組成物における上記共重合体の含有量は、前記アスファルト及び/又はセメントの合計100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。上記含有量が0.1質量部以上であれば、舗装耐久性を向上させる効果を十分に発現させることができ、また、20質量部以下であれば、アスファルト及び/又はセメントとの混合の際に十分な均一性をもたらすことができる。同様の観点から、舗装用組成物における上記共重合体の含有量は、前記アスファルト及び/又はセメント100質量部に対して、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上が更に好ましく、2.5質量部以上が一層好ましく、また、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましく、5質量部以下が一層好ましい。
【0069】
<スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体>
本実施形態の舗装用組成物は、上述した共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体に加えて、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体を更に含有することが好ましい。この場合、舗装耐久性をより向上させることができる。舗装用組成物におけるスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の含有量は、アスファルト及び/又はセメントの合計100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。この場合、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体との併用に基づいて舗装耐久性をより向上させることができる。
【0070】
<その他の成分>
本実施形態の舗装用組成物は、上述したもの以外のその他の成分を含有することができる。その他の成分としては、例えば、舗装用材料として一般的に用いられる成分が挙げられ、具体的には、性能を向上させる又は付与する各種添加剤等が挙げられる。
【0071】
(舗装路)
本実施形態の舗装路は、上述の舗装用組成物を用いたことを特徴とする。かかる本実施形態の舗装路は、上述の舗装用組成物を用いているので、舗装耐久性に優れる。また、本実施形態の舗装路は、上述の舗装用組成物と骨材とを混合した材料であるアスファルト混合物を用いて形成されたものであることが好ましい。上記骨材としては、特に限定されないが、本実施形態に適した骨材として、例えば、砕石、玉砕、砂利、スラグ、砂、フィラー等が挙げられる。これら骨材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記骨材は、舗装廃材を再利用した再生骨材を含んでもよい。
【0072】
本実施形態の舗装路は、上述の舗装用組成物を用い、舗装に対して被覆加工が施されていればよい。また、舗装に対する被覆加工の対象となる道路も、特に限定されず、また、屋内外を問わない。
更に、上記舗装路の製造方法は、特に限定されず、常法に従って製造することができる。
【実施例0073】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0074】
<共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体の合成>
(共重合体1の合成)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器内に、スチレン75gと、トルエン675gと、を加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、((1-ベンジルジメチルシリル-3-メチル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{(1-BnMe2Si-3-Me]C9H5Gd[N(SiHMe2)2]2}0.075mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C6F5)4]0.083mmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド0.35mmolを加え、更にトルエン30gを加えて、触媒溶液とした。
得られた触媒溶液を、前記耐圧ステンレス反応器内に加えて、60℃に加温した。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaで、前記耐圧ステンレス反応器に投入し、75℃で計3時間共重合を行った。その共重合の際、1,3-ブタジエン20gを含むトルエン溶液80gを0.4~0.6mL/分の速度で連続的に添加した。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを、前記耐圧ステンレス反応器内に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体1を得た。
【0075】
(共重合体2の合成)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器内に、スチレン30gと、1,3-ブタジエン5gを含むトルエン溶液20gと、トルエン430gと、を加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、モノ(1,3-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{1,3-[(t-Bu)Me2Si]2C9H5Gd[N(SiHMe2)2]2}0.075mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C6F5)4]0.075mmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド0.35mmolを加え、更にトルエン20mLを加えて、触媒溶液とした。
得られた触媒溶液を、前記耐圧ステンレス反応器内に加えて、60℃に加温した。
次いで、エチレンを圧力1.0MPaで、前記耐圧ステンレス反応器内に投入し、75℃で計3時間共重合を行った。その共重合の際、1,3-ブタジエン60gを含むトルエン溶液240gを2.5~2.8mL/分の速度で連続的に添加した。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを、前記耐圧ステンレス反応器内に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体2を得た。
【0076】
<共重合体の物性測定>
合成した共重合体について、以下の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
(1)ブタジエン単位、エチレン単位、スチレン単位の含有量
共重合体中のエチレン単位、ブタジエン単位、スチレン単位の含有量(mol%)を、1H-NMRスペクトル(100℃、d-テトラクロロエタン標準:6ppm)の各ピークの積分比より求めた。
【0078】
(2)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー社製HLC-8121GPC/HT、カラム:東ソー社製GMHHR-H(S)HT×2本、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、共重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、測定温度は40℃である。
【0079】
(3)ブタジエン単位の1,4-結合の含有率
赤外法(モレロ法)により1,2-結合及び3,4-結合(ブタジエン単位においては、1,2-結合及び3,4-結合は同義である)を求め、100%から1,2-結合及び3,4-結合の合計量を算出することで1,4-結合の含有率を算出した。
【0080】
(4)融点(Tm)
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、共重合体の融点(Tm)を測定した。
【0081】
(5)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、共重合体のガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0082】
(6)結晶化度
100%結晶成分のポリエチレンの結晶融解エネルギーと、得られた共重合体の0~120℃の融解ピークエネルギーとを測定し、ポリエチレンと共重合体とのエネルギー比率から、結晶化度を算出した。なお、融解ピークエネルギーは、示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)で測定した。
【0083】
(7)吸熱ピークエネルギー
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、得られた共重合体を、-150℃~150℃まで、10℃/分の昇温速度で昇温した。そして、その時(1st run)の0℃以上100℃未満の範囲における吸熱ピークエネルギー(ΔH1(J/g))と、100℃以上150℃以下の範囲における吸熱ピークエネルギー(ΔH2(J/g))とを測定した。
【0084】
(8)引張強度(Tb)及び破断伸び(Eb)
JIS K 6251(2017年)に基づくダンベル状3号形に成形し、試験片とした。
引張強度(Tb)は、JIS K 6251(2017年)に基づいて、引張試験装置(インストロン社製)を使用し、試験片を25℃で100%伸長し、試験片を破断させるのに要した最大の引張り力として測定した。
破断伸び(Eb)は、試験片を、25℃にて100mm/分の速度で引張り、試験片が破断したときの長さを測定し、引っ張る前の長さ(100%)に対する長さとして求めた。
【0085】
(9)主鎖構造の確認
合成した共重合体について、13C-NMRスペクトルを測定し、13C-NMRスペクトルチャートにおいて、10~24ppmにピークが観測されなかったことから、合成した共重合体は、主鎖が非環状構造のみからなることを確認した。
【0086】
【0087】
<舗装用組成物の調製>
(比較例1)
比較例1では、アスファルト(ENEOS社製、ストレートアスファルト60/80)と、表2に示す粒度分布を有する骨材(東京石灰工業株式会社製)とを混合し、密粒度アスファルト混合物を調製した。密粒度アスファルト混合物は、舗装の表層で一般的に使用されている材料である。なお、上記の密粒度アスファルト混合物は、当該混合物100質量%に占めるアスファルトの量が5.4質量%となるように調製した。
【0088】
【0089】
(実施例1)
比較例1で用いるアスファルトに対し、あらかじめ、上記の共重合体1を添加し、ホモミキサーを用いて混合し、舗装用組成物を調製した。このとき、共重合体の添加量は、アスファルト100質量部に対して3質量部とした。次いで、かかる舗装用組成物と、表2に示す粒度分布を有する骨材(東京石灰工業株式会社製)とを混合し、密粒度アスファルト混合物を調製した。なお、上記の密粒度アスファルト混合物は、当該混合物100質量%に占める舗装用組成物の量が5.4質量%となるように調製した。
【0090】
(実施例2)
実施例1において、共重合体1に代えて、同量の共重合体2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、密粒度アスファルト混合物を調製した。
【0091】
<舗装耐久性の評価>
調製した混合物について、ホイールトラッキング試験を行った。具体的には、「舗装調査・試験法便覧第3分冊(社団法人日本道路協会発行)」のB003(ホイールトラッキング試験方法)に記載の方法により、動的安定度(回/mm)を測定した。結果を表3に示す。動的安定度の値が大きいほど、舗装耐久性に優れることを示す。
【0092】
【0093】
表3より、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体を用いることにより、舗装耐久性の向上を図れることが分かる。