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特開2024-118958塗装用ティーチングデータの作成方法及びその方法により作成したティーチングデータを用いた塗装方法
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  • 特開-塗装用ティーチングデータの作成方法及びその方法により作成したティーチングデータを用いた塗装方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118958
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】塗装用ティーチングデータの作成方法及びその方法により作成したティーチングデータを用いた塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/02 20060101AFI20240826BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B05D1/02 Z
B05D3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025579
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】593081224
【氏名又は名称】タクボエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104488
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 良夫
(72)【発明者】
【氏名】西川 俊博
(72)【発明者】
【氏名】小島 光
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA02
4D075AA37
4D075AA76
4D075AA78
4D075AA81
4D075AA83
4D075AA84
4D075AA85
4D075AA86
4D075CA47
4D075CA48
4D075EA05
4D075EA06
4D075EC30
(57)【要約】
【課題】作業工程を増やすことなく、良質な塗装面を得ることが可能な塗装用ティーチングデータの作成方法及び塗装方法を提供する。
【解決手段】塗料種類とワークの周囲温度に対応したスプレー条件を蓄積したデータベースを予め作成し、使用する塗料種類とティーチングデータ作成時のワークの周囲温度を設定し、設定した塗料種類とワークの周囲温度に対応したスプレー条件をデータベースから抽出し、スプレーガンの軌道データを作成し、設定した塗料種類及びワークの周囲温度、抽出したスプレー条件、作成した軌道データをティーチングデータとして保存し、塗装の際は、ワークの周囲温度とスプレーガンから噴霧される塗料温度をティーチングデータの温度に調節し、ティーチングデータの軌道データに従いスプレーガンを移動させながら、ティーチングデータのスプレー条件に従いワークに塗料を噴霧する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの塗装に用いるティーチングデータを作成するための塗装用ティーチングデータの作成方法であって、
予め、塗料の種類及びワークの周囲温度に対応した、噴霧塗料の温度、塗料の噴霧速度、塗料の吐出量、霧化エアー圧及び、パターンエアー圧を含んだスプレー条件を蓄積したスプレー条件データベースを作成しておき、
ティーチングデータを作成する際は、
使用する塗料の種類と、ティーチングデータを作成時のワークの周囲温度と、を設定し、
該設定した塗料の種類とワークの周囲温度に対応したスプレー条件を、前記スプレー条件データベースから抽出し、
スプレーガンの軌道データを作成し、
前記設定した塗料の種類及びワークの周囲温度と、前記抽出したスプレー条件と、前記作成した軌道データを、塗装対象のワークに対するティーチングデータとして保存する、ことを特徴とする塗装用ティーチングデータの作成方法。
【請求項2】
ワークの塗装に用いるティーチングデータを作成する塗装用ティーチングデータの作成方法であって、
予め、塗料の種類及びワークの周囲温度に対応した、噴霧塗料の温度、塗料の噴霧速度、塗料の吐出量、霧化エアー圧及び、パターンエアー圧を含んだスプレー条件を蓄積したスプレー条件データベースを作成しておき、
ティーチングデータを作成する際は、
使用する塗料の種類と、ティーチングデータ作成時のワークの周囲温度を設定し、
該設定した塗料の種類とワークの周囲温度に対応したスプレー条件を、前記スプレー条件データベースから抽出し、
スプレーガンの軌道データを作成し、
前記設定した塗料の種類及びワークの周囲温度と、前記抽出したスプレー条件と、前記作成した軌道データを、塗装対象のワークに対するティーチングデータとして保存し、
該ティーチングデータに従ってワークの塗装を行うことで、軌道データ及びスプレー条件の検証を行い、
検証の結果、少なくとも軌道データ又はスプレー条件のいずれかを修正する必要があると判断した場合には、修正が必要と判断した部分を修正し、前記ティーチングデータにおける軌道データ又はスプレー条件を修正後の軌道データ又はスプレー条件に置き換える、ことを特徴とする塗装用ティーチングデータの作成方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の塗装用ティーチングデータの作成方法により作成した塗装用ティーチングデータを用いた塗装方法であって、
スプレーガンを具備した塗装ロボット(3)と、該塗装ロボット(3)の作動を制御するための制御装置(2)と、前記スプレーガンに塗料を供給するための塗料供給装置(8)と、前記スプレーガンにエアーを供給するためのエアー供給装置(14)と、ワークの周囲の温度を測定するための周囲温度センサー(7)と、スプレーガンから噴霧される塗料の温度を測定する塗料温度センサー(13)と、前記スプレーガンに供給する塗料又はエアーの少なくともいずれかの温度を調節するための温度調節装置(12、15)と、ワークの周囲の温度を調節するための空調装置(19)と、を用いて、
ワークの周囲温度をティーチングデータとした温度に調節し、
スプレーガンに供給される塗料又はエアーの温度の少なくともいずれかを調節することで、スプレーガンから噴霧される塗料の温度をティーチングデータとしたスプレー条件における塗料の温度に調節し、
ティーチングデータとした軌道データに従いスプレーガンを移動させながら、ティーチングデータとしたスプレー条件に従いスプレーガンからワークに向けて塗料を噴霧する、ことを特徴とする塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装用ティーチングデータの作成方法及びその方法により作成したティーチングデータを用いた塗装方法に係り、より詳しくは、スプレーガンの軌道データ、スプレー条件及びワークの周囲温度を含んだティーチングデータを作成することを特徴とする塗装用ティーチングデータの作成方法及びその方法により作成したティーチングデータを用いた塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被塗装物(以下「ワーク」という。)を大量に塗装する場合においては、すべてのワークについて、塗装の膜厚を均一にして良質な塗装面を得るために、塗装ロボットを用いて自動的に塗装を行う方法が採用されることが多い。そして、このような塗装ロボットを用いた塗装では、予め、ワークの外形寸法等に基づいて、塗装ロボットにおけるスプレーガンの軌道、塗料の吐出量や噴霧速度、塗料を噴霧するときのエアー圧等のデータを作成しておくことが必要であり、このような、データの作成作業を一般に「ティーチング」といい、ティーチングにより作成されたデータをティーチングデータという。
【0003】
そして、このティーチングデータによって塗装ロボットは、ティーチングされた軌道データに基づいてスプレーガンを移動させながら、ティーチングされた塗料の吐出量や噴霧速度、塗料を噴霧するときのエアー圧等に従ってスプレーガンからワークに向けて塗料を噴霧することができ、これにより自動的にワークを塗装することが可能となるとともに、塗装するワークのすべてについて、膜厚が均一な良質な塗装面を得ることが可能となる。従って、塗装ロボットを用いた塗装では、大量のワークの塗装を行なう場合には、人件費等の経費を削減することができるとともに、すべてのワークに対して正確に同一の塗装を行なうことができるという利点がある。
【0004】
ところで、塗料は、シンナー等の有機溶剤を用いた油性塗料や、水を溶剤として用いた水性塗料があるが、いずれの塗料においても溶剤は、塗料がワークに塗着した後に蒸発してしまうため、塗膜を形成するものではない。しかし、塗料がワークに塗着した後に溶剤が蒸発することで、塗料粒子がワーク上を広がっていき塗料粒子どうしがつながり、それにより、ワーク全体に塗料が均一に塗着して、目的に合わせた良質な塗装面を得ることが可能になるため、塗料における溶剤の存在は極めて重要である。
【0005】
従って、塗料がワークに塗着したときの溶剤の量が最適でなく、また、その後の溶剤の蒸発速度が最適でない場合には、良質な塗装面を得ることができなくなってしまう。例えば、溶剤の蒸発速度が速すぎる場合には、塗料粒子がワーク全体に広がる前に溶剤が蒸発してしまい、塗装面がぼこぼこになり、いわゆる「ゆず肌」になってしまう。また、溶剤の蒸発速度が遅すぎる場合には、塗料がワーク上を流れてしまい、いわゆる「たれ」ができてしまう。
【0006】
従って、良質な塗装面を得るためには、塗料がワークに塗着したときの溶剤の量を最適な量に維持するとともに、塗料がワークに塗着した後の溶剤の蒸発速度を最適な速度に維持する必要がある。
【0007】
しかしながら、その一方、溶剤の蒸発速度は、塗装室内の温度の変化に影響され、塗装室内の温度が変化すると蒸発量が変化してしまうために、塗装室内の温度が変化すると、溶剤の量を最適に維持することができないとともに、ワークに塗着した後の溶剤の蒸発速度等も最適に維持することができず、それにより、塗料粒子を均一に広げることができず、良質な塗装面を得ることが困難になってしまうという問題点がある。
【0008】
そこで従来は、季節や塗装室内の温度に対応させて、沸点の異なる溶剤を用いたり、溶剤の配合を変えて沸点を変更させたりすることで、塗料がワークに塗着したときの溶剤の量と塗料がワークに塗着した後の溶剤の蒸発速度を最適に維持することが行われており、例えば溶剤としてシンナーを用いる場合は、夏場等の温度が高いときには沸点が高いシンナーを用いて、冬場等の温度が低い場合には沸点の低いシンナーを用いることで、シンナーの蒸発量を調整し、塗料がワークに塗着したときのシンナーの量と塗料がワークに塗着した後の溶剤の蒸発速度を最適に維持することが行われていたが、温度に対応させて溶剤を選択したり溶剤の配合を変えたりすることは難しいために、経験によるところが多く、熟練工でないと正確な判断は難しいという問題点が指摘されていた。
【0009】
そこで、本発明者は過去において、ワークの周囲温度を検出し、検出した温度に応じて、スプレーガンから噴霧する塗料の温度を調節するとともに、ワークの周囲温度が変化した場合にはその変化に応じて、スプレーガンから噴霧する塗料の温度を調節して、それにより、ワークに塗着した際の塗料に含まれる溶剤の量、及びワークに塗着した後の溶剤の蒸発速度を一定に維持することを可能にした塗装方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2019-042629号公報
【特許文献2】実開昭64-52567号公報
【特許文献3】特開2010-149331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、この方法では、塗装の都度、塗装室内の基本温度を設定するとともに、設定した基本温度に対応した、塗料がワークに塗着したときの塗料に含まれる溶剤の量が最適でありその後の溶剤の蒸発速度が最適であるための最適状態を達成するためのスプレーガンから噴霧される塗料粒子の温度を達成するためにスプレーガンに供給されるエアーの温度を設定する必要があるため、作業工程が増えてしまうという問題点が指摘できる。
【0012】
また、良質な塗装面を得るためには、ワークの周囲温度に対応させて噴霧する塗料の温度を調節することのほか、塗料の吐出量や、塗料の噴霧速度、及び塗料を所定のパターンで噴霧するためのエアー圧等のスプレー条件も調節する必要があるが、前述の方法では、スプレーガンから噴霧される塗料粒子の温度を所定温度に調節するのみであり、その他のスプレー条件は調節することが無かった。
【0013】
そこで、本発明は、作業工程を増やすことなく、ワークに塗着したときの塗料に含まれる溶剤の量を最適に維持するとともに、ワークに塗着した後の溶剤の蒸発速度を最適に維持して、良質な塗装面を得ることが可能な塗装用ティーチングデータの作成方法及びその方法により作成したティーチングデータを用いた塗装方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の塗装用ティーチングデータの作成方法は、
ワークの塗装に用いるティーチングデータを作成する塗装用ティーチングデータの作成方法であって、
予め、塗料の種類及びワークの周囲温度に対応した、噴霧塗料温度、塗料の噴霧速度、塗料の吐出量、霧化エアー圧及び、パターンエアー圧を含むスプレー条件を蓄積したスプレー条件データベースを作成しておき、
ティーチングデータを作成する際は、
使用する塗料の種類と、ティーチングデータ作成時のワークの周囲温度を設定し、
該設定した塗料の種類とワークの周囲温度に対応したスプレー条件を、前記スプレー条件データベースから抽出し、
スプレーガンの軌道データを作成し、
前記設定した塗料の種類及びワークの周囲温度と、前記抽出したスプレー条件と、前記作成した軌道データを、塗装対象のワークに対するティーチングデータとする、ことを特徴としている。
【0015】
そして、この塗装用ティーチングデータの作成方法により作成した塗装用ティーチングデータを用いた本発明の塗装方法は、
スプレーガンを具備した塗装ロボットと、塗装ロボットの作動を制御するための制御装置と、スプレーガンに塗料を供給するための塗料供給装置と、スプレーガンにエアーを供給するためのエアー供給装置と、スプレーガンに供給する塗料又はエアーの少なくともいずれかの温度を調節するための温度調節手段と、ワークの周囲の温度を調節するための空調装置と、を用いて、
ワークの周囲温度をティーチングデータとした温度に調節し、
スプレーガンに供給される塗料又はエアーの温度の少なくともいずれかを調節することで、スプレーガンから噴霧される塗料の温度をティーチングデータとしたスプレー条件における塗料の温度に調節し、
ティーチングデータとした軌道データに従いスプレーガンを移動させながら、ティーチングデータとしたスプレー条件に従いスプレーガンからワークに向けて塗料を噴霧する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の塗装用ティーチングデータの作成方法は、予め、塗料の種類及びワークの周囲温度に対応した、噴霧塗料温度、塗料の噴霧速度、塗料の吐出量、霧化エアー圧及び、パターンエアー圧を含んだスプレー条件を蓄積したスプレー条件データベースを作成しておく。
そして、ティーチングデータを作成する際は、使用する塗料の種類と、ティーチングデータ作成時のワークの周囲温度を設定し、この設定した塗料の種類とワークの周囲温度を用いて、予め作成してあるスプレー条件データベースから、設定した塗料の種類及びワークの周囲温度に対応したスプレー条件を抽出する。
更に、スプレーガンの軌道データを作成し、その後に、設定した塗料の種類及びワークの周囲温度、抽出したスプレー条件、及び作成した軌道データを、塗装対象のワークに対するティーチングデータとする。
【0017】
従って、本発明では、ティーチングデータの中に、塗料の種類やワークの周囲温度、及びその温度に対応したスプレー条件が含まれるので、塗装の際に、塗装室内の基本温度や塗料温度やエアー温度を設定する必要がない。また、塗装の際に、ワークの周囲温度に応じてスプレー条件を調節しながら決定して設定する必要がない。そのために、煩雑な作業を行うことなく、良質な塗装面を得ることが可能である。
【0018】
また、本発明の塗装方法では、前述の方法で作成されたティーチングデータを用いて、ワークの周囲温度をティーチングデータとした温度に調節し、スプレーガンに供給される塗料又はエアーの温度の少なくともいずれかを調節することでスプレーガンから噴霧される塗料の温度をティーチングデータとしたスプレー条件における塗料の温度に調節し、ティーチングデータとした軌道データに従いスプレーガンを移動させながら、ティーチングデータとしたスプレー条件に従いスプレーガンからワークに向けて塗料を噴霧する方法としているため、塗装の際には、ワークの周囲温度とスプレーガンから噴霧される塗料の温度をティーチングデータの温度に調節するのみで良質な塗装面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の塗装用ティーチングデータの作成方法の実施例を実施するためのシステムを示すブロック図である。
図2】本発明の塗装用ティーチングデータの作成方法の実施例を説明するためのフローチャートである。
図3】本発明の塗装方法の実施例を実施するためのシステムを示すブロック図である。
図4】本発明の塗装方法の実施例を実施するためのシステムにおける制御系を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の塗装用ティーチングデータの作成方法では、予め、スプレー条件データベースを作成しておく。即ち、塗料の種類及びワークの周囲温度に対応したスプレー条件を蓄積したスプレー条件データベースを作成しておく。そして、スプレー条件としては、少なくとも、噴霧塗料の温度、塗料の噴霧速度、塗料の吐出量、霧化エアー圧及びパターンエアー圧、を含んだ条件としておき、前記ワークの周囲温度の環境下で前記塗料により塗装を行った場合に、最も良質な塗装面を得ることが可能な条件を蓄積しておく。
【0021】
そして、ティーチングデータを作成する際は、まず、使用する塗料の種類を設定するとともに、ティーチングデータ作成時のワークの周囲温度を測定して設定する。
【0022】
次に、設定した塗料の種類及びワークの周囲温度を用いて、その塗料の種類とワークの周囲温度に対応したスプレー条件を、スプレー条件データベースから抽出し、更に、スプレーガンの軌道データを作成する。
【0023】
そしてその後に、設定した塗料の種類及びワークの周囲温度、抽出したスプレー条件、及び作成した軌道データを、塗装対象のワークに対するティーチングデータとする。
【0024】
ここで、設定した塗料の種類及びワークの周囲温度、抽出したスプレー条件、及び作成した軌道データを塗装対象のワークに対するティーチングデータとした後に、ティーチングデータに従って実際にワークの塗装を行い、それによって、塗装のシミュレーションを行い、軌道データ及びスプレー条件の検証を行うとよい。
【0025】
そして、検証の結果、少なくとも軌道データ又はスプレー条件のいずれかを修正する必要があると判断した場合には、修正が必要と判断した部分を修正し、ティーチングデータにおける軌道データ又はスプレー条件を修正後の軌道データ又はスプレー条件に置き換えるとよく、それにより、最適なティーチングデータを作成することができる。
【0026】
次に、このようにして作成された本発明の塗装用ティーチングデータを用いて塗装を行う場合には、スプレーガンを具備した塗装ロボットと、塗装ロボットの作動を制御するための制御装置と、スプレーガンに塗料を供給するための塗料供給装置と、スプレーガンにエアーを供給するためのエアー供給装置と、スプレーガンに供給する塗料又はエアーの少なくともいずれかの温度を調節するための温度調節手段と、ワークの周囲の温度を調節するための空調装置を用いる。そしてまず、空調装置を制御して、ワークの周囲温度を、ティーチングデータとした温度に調節する。
【0027】
またそれとともに、スプレーガンに供給する塗料又はエアーの温度の少なくともいずれかを調節することで、スプレーガンから噴霧される塗料の温度をティーチングデータとして登録されている温度に調節する。
【0028】
そして、ティーチングデータとした軌道に従いスプレーガンを移動させながら、ティーチングデータとしたスプレー条件に従ってスプレーガンからワークに向けて塗料を噴霧し、これによりワークの塗装を行う。
【実施例0029】
本発明の塗装用ティーチングデータの作成方法(以下「ティーチングデータ作成方法」といい、「塗装用ティーチングデータ」を単に「ティーチングデータ」という。)の実施例について説明すると、本実施例のティーチングデータ作成方法では、予めスプレー条件データベースを作成しておく。
【0030】
即ち、
1.塗装に用いる塗料の種類と、
2.前記1の塗料を用いてワークの塗装を行う場合のワークの周囲温度と、
3.前記2のワークの周囲温度の環境下において前記1の塗料を用いて塗装を行う際に最適なスプレー条件と、
を一組のスプレー条件データとし、そのスプレー条件データを多数蓄積し、それによりスプレー条件データベースを作成する。
【0031】
このスプレー条件データベースについて説明すると、スプレー条件データベースのファイルには、塗料の種類と、ワークの周囲温度と、スプレー条件のそれぞれが記憶される領域が備えられる。そして、塗料の種類の領域には塗装を行うときに用いられる塗料の種類が入力される。塗料の種類としては、塗料に含まれる溶剤の種類、量、又は蒸発速度の相違により種別する方法が考えられる。
【0032】
また、ワークの周囲温度の領域には、塗料の種類の領域に入力された塗料を用いて塗装を行う際に、最も良質な塗装面を得ることができる温度が入力される。
【0033】
次にスプレー条件の領域には、塗料の種類の領域に入力された塗料を、ワークの周囲温度の領域に入力された温度の環境下でワークに噴霧した際に、最も良質な塗装面を得ることができるスプレー条件が入力される。そして、スプレー条件としては、少なくとも、噴霧する塗料の温度、塗料の噴霧速度、塗料の吐出量、塗料を霧化して噴霧するための霧化エアーのエアー圧、及び、噴霧される塗料粒子のパターンを決めるためのパターンエアーのエアー圧があり、塗料の種類とワークの周囲温度に対応したこれらのスプレー条件が蓄積されて、スプレー条件データベースが構成される。
【0034】
なお、塗料の種類に応じたワークの周囲温度や、塗料の種類及ワークの周囲温度に対応したスプレー条件等を決める方法としては、実際の塗装ロボットとワークを用いて、溶剤の蒸発速度や溶剤の配合の割合が異なる塗料を複数用いて、それぞれの塗料で、ワークの周囲温度やスプレー条件を変化させながら実際にワークの塗装を行う。そして、最も良質な塗装面を得ることができたときに、そのときの塗料の種類、ワークの周囲温度、及びスプレー条件をデータベースファイルに記憶させることで行う。
【0035】
次に、前述のようにスプレー条件データベースを予め作成してある条件においてティーチングデータを作成する場合について説明すると、図1は、本実施例のティーチングデータの作成方法を実施するためのティーチングデータ作成システムを説明するためのブロック図であり、図において2が塗装ロボット、3がワークである。
【0036】
なお、図示は省略するが、塗装ロボット2は、一般的にワークの大量塗装に用いられる塗装ロボットと同様に、ティーチングされた軌道を移動するアームにスプレーガンが備えられた構成としている。
【0037】
また、ワーク3は、本実施例では複数個としており、回動軸17を中心に回動自在とした治具18の先端部分に取り付けられ、治具18は、回転軸17から周囲に向けて放射状に複数本が取り付けられ、治具18を回転することでワーク3を回動軸17の周囲で公転させることとしている。
【0038】
次に、図において4は、前記塗装ロボット2の作動を制御するために用いられるロボットコントローラーであり、このロボットコントローラー4は、一般的なコントローラーと同様に、CPU等を備えた構成とされている。
【0039】
そして、このロボットコントローラー4は、前記塗装ロボット2に接続されており、前記塗装ロボット2は、ロボットコントローラー4からの信号に従って稼働することとしている。なお図示は省略するが、塗装ロボット2には一般的な塗装ロボットと同様に、塗料供給装置やエアー供給装置が連結される。
【0040】
次に、図において5はティーチングペンダントである。即ち、本実施例のティーチングデータ作成方法を実施するシステムでは、一般的なロボットティーチングの場合と同様に、ティーチングペンダント5を有している。そして、このティーチングペンダント5は、前記ロボットコントローラー4に接続されており、ティーチングペンダント5の矢印キーを押すと、そのデータがロボットコントローラー4に送られ、ロボットコントローラー4は、送られてきたデータを用いて塗装ロボット位置情報等を演算し、その演算結果に基づいて塗装ロボット2が制御され、それによって、ティーチングペンダント5で操作された通りに、塗装ロボット1が稼働する。
【0041】
そして、スプレーガンの位置がその位置で良いと判断したときに、ティーチングペンダント5によってその位置が登録されると、ロボットコントローラー4が、送られてきたデータの位置を確定し、それを繰り返すことでスプレーガンの軌道データが作成される。なおこの方法は一般的なロボットティーチングの手法である。
【0042】
次に、図において6は制御手段としてのPCであり、このPC6は、一般的なPCと同様にPC本体と表示部及びキーボードやマウス等の操作手段を備えている。そして、PC本体は前記ロボットコントローラー4に接続され、ティーチングペンダント5で登録された軌道データや、この軌道データに基づいて演算された塗装ロボットやワークの位置情報が、ロボットコントローラー4からPC本体へ送られる。但し、PCをロボットコントローラーと兼用してもよい。
【0043】
また、図において7は温度センサーであり、この温度センサー7は、ワーク3の周囲の温度を測定するために用いられ、その測定されたワークの周囲温度は前記PC6に温度データとして送られる。
【0044】
次に、このように構成されるティーチングデータ作成システムを用いてティーチングデータを作成する場合について、図2のフローチャートを用いて説明すると、本実施例においては、前記PC6を用いてティーチングデータを作成することとしている。
【0045】
即ち、本実施例においては、前述したように予めスプレー条件データベースを作成しておき(S1)、この作成したスプレー条件データベースのファイルをPC6にインストールしておき、更に、ティーチングデータ作成用の機能をPC6にインストールしておき、まず、使用する塗料の種類を、作成するティーチングデータにおける塗料の種類として設定する(S2)。そして更に、温度センサー7によってワークの周囲温度を測定し、測定した結果の温度データをPC6に送信し、それにより、PC6が、送信された温度を作成するティーチングデータにおけるワークの周囲温度として設定する(S3)。
【0046】
次に、PC6は、前記設定した塗料の種類とワークの周囲温度を用いてスプレー条件データベースに蓄積されたデータを検索し、前記スプレー条件データベースに蓄積したデータの中から、前記設定した塗料の種類とワークの周囲温度に対応したスプレー条件を抽出し、その抽出したスプレー条件を、作成するティーチングデータのスプレー条件として設定する(S4)。
【0047】
そして次に、前記ティーチングペンダント5とロボットコントローラー4を用いて、前述の方法で、スプレーガンの軌道データを作成する(S5)。そうすると、作成されたスプレーガンの軌道データは、ロボットコントローラー4を介して、あるいはティーチングペンダント5から直接、PC6に送られ、PC6において、送られてきたスプレーガンの軌道データが、作成するティーチングデータにおける軌道データとして設定される。
【0048】
そしてこれにより、前記設定した、塗料の種類、ワークの周囲温度、スプレー条件、及び軌道データが、塗装対象のワークに対するティーチングデータとされてティーチングデータが作成され、このティーチングデータはPC6に保存される。
【0049】
次に、このようにしてティーチングデータが作成された後に、本実施例においては、ティーチングデータの検証を行う。即ち、ティーチングデータに従って実際にワークを塗装してシミュレーションを行い(S7)、それにより、ティーチングデータとして設定した軌道データ及びスプレー条件の検証を行う。
【0050】
そして、検証の結果、少なくとも、軌道データ又はスプレー条件のいずれかを修正する必要があると判断した場合には、修正が必要と判断した部分を修正し(S8)、作成したティーチングデータにおける軌道データ又はスプレー条件を、修正後の軌道データ又はスプレー条件に置き換える。
【0051】
例えば、軌道データを修正する場合には、再度、ティーチングペンダント5とロボットコントローラー4を用いて、スプレーガンの軌道データの全部または一部の修正を行うとともに修正部分の軌道データがPC6に送られ、修正部分が書き換えられた新たなスプレーガンの軌道データが、ティーチングデータにおける軌道データとして保存される。
【0052】
また、スプレー条件の全部または一部を修正する場合は、スプレー条件を変えながらシミュレーションを繰り返し、最も良質な塗装面を得ることができたときに、そのときのスプレー条件を、設定保存したスプレー条件に置き換え、ティーチングデータにおけるスプレー条件として保存する。従ってこれにより、最適なティーチングデータを作成することができる。
【0053】
なお、ティーチングデータの作成及びシミュレーションは、必ずしも、実際の塗装ロボットやワーク、及びロボットコントローラーやティーチングペンダントを用いて行う必要はなく、PC6の表示部においてバーチャル画面で行ってもよい。
【0054】
そしてこの場合は、予め、ロボットコントローラーと同等の機能を有するソフトと、ティーチングペンダントと同等の機能を有するソフトと、3Dソフトと、塗装ソフトを、PC6にインストールしておく。そして更に、塗装ロボットに関する外形、機構、寸法等の基本データや、ワークに関する外形、寸法等の基本データ、塗装ロボットとワークとの位置情報、及びスプレーガンとワークとの距離等の情報をPC6に入力していく。そして3Dソフトは、塗装ロボットに関する外形、寸法等の基本データ、ワークに関する外形、寸法等の基本データ、塗装ロボットとワークの位置情報、及びスプレーガンとワークとの距離等の情報を用いて、塗装ロボットとワークの3D表示データを生成し、それらの3D表示データに基づいて、前記表示部に、塗装ロボットとワークを3Dで表示する。
【0055】
また、ティーチングペンダントソフトにより、表示部に、少なくともティーチングに必要な矢印キー及び確定キーを具備したティーチングペンダントを表示し、表示された矢印キー及び確定キーを操作することによって、塗装ロボットにおけるスプレーガンの軌道をロボットコントローラーソフトに教示する。そうすると、ロボットコントローラーソフトがその情報を3Dソフトに伝え、3Dソフトは、スプレーガンの表示位置を新たな位置に変更し、それにより、表示部においてスプレーガンの軌道データを作成することができる。
【0056】
また、塗装ソフトは、表示部において、ティーチングデータに従った塗料噴霧のシミュレーションを行うことができる塗装ソフトで、このソフトをPCにインストールすることで、表示部において塗装のシミュレーションを行い、それにより、作成されたティーチングデータの検証を行うことが可能である。
【0057】
次に、このようにして作成された本実施例のティーチングデータの作成方法により作成した塗装用ティーチングデータを用いた塗装方法について説明すると、図3は、本実施例の塗装方法を実施するための塗装システムを説明するためのブロック図である。そして、図において2が塗装ロボットであり、塗装ロボット2は図示しないスプレーガンを備えている。
【0058】
また、図において3はワークであり、上方から見た状態を示している。そして、本実施例においてワーク3は、図1に示したティーチングデータ作成システムにおけるワークと同様に、複数個としており、回動軸17を中心に回動自在とした治具18の先端部分に取り付けられている。また、治具18は、回転軸17から周囲に向けて放射状に取り付けられ、治具18を回転することでワーク3を回動軸17の周囲で公転させ、公転しているワーク3に向けてスプレーガンから塗料を噴霧することで行うワークの塗装を行うこととしている。
【0059】
更に、図示は省略するが、スプレーガンは、上下方向に移動することとしており、上方から下方に向けて移動し、その後下方から上方に向けて移動し、その後はその移動を繰り返すこととしている。
【0060】
次に、図において4は前記塗装ロボット2の作動を制御するための制御装置であり、本実施例ではロボットコントローラーを用いており、前記塗装ロボット2は、ロボットコントローラー4の制御により稼働することとしている。
【0061】
次に、図において8は、スプレーガンに塗料を供給するための塗料供給装置であり、この塗料供給装置8は、塗料タンク11と、塗料タンク内の塗料をスプレーガンに供給するためのシリンジポンプ9と、塗料タンク11内の塗料をシリンジポンプに充填するためのポンプ10を具備している。
【0062】
また、前記塗料供給装置8には、スプレーガンに供給される塗料の温度を測定するための塗料温度センサー13が接続されるとともに、塗料供給装置8と塗料温度センサー13間には、スプレーガンに供給される塗料の温度を所定温度に調節するための塗料温度調節手段12が配置されている。なお、塗料温度調節手段12の種類は特に限定されず、熱交換器、ヒーター等、いずれを用いても良く、またその他、塗料の温度を上げる場合に、塗料ホースとしてホットホースを用いても良い。
【0063】
次に、図において14は、スプレーガンにエアーを供給するためのエアー供給装置である。即ち、塗料をワークに向けて塗装を行うスプレーガンにおいては、供給された塗料を霧化エアーによって霧状にして噴霧するとともに、その際に、霧状にした塗料をパターンエアーによって所定のパターンにすることが行われている。そのために図3に示すシステムにおいても、エアー供給手段14をスプレーガン2に連結し、このエアー供給手段14によってスプレーガンに霧化エアーやパターンエアーを供給することとしている。なお本実施例において前記エアー供給手段14は、コンプレッサーを用いており、このコンプレッサー14において、外気を取り込むとともに取り込んだ外気を、圧縮してスプレーガン側へ供給することとしている。
【0064】
また、前記エアー供給装置14には、スプレーガンに供給されるエアーの温度を測定するためのエアー温度センサー16が接続されるとともに、エアー供給装置14とエアー温度センサー16間には、スプレーガンに供給されるエアーの温度を所定温度に調節するためのエアー温度調節手段15が配置されている。なお、エアー温度調節手段15の種類は特に限定されず、熱交換器、ヒーター等、いずれを用いても良く、またその他、エアーの温度を上げる場合に、エアーホースとしてホットホースを用いても良い。
【0065】
なお、スプレーガンから噴霧される塗料粒子の温度は、スプレーガンに供給される塗料の温度とエアーの温度によって決まるので、本実施例では、塗料温度センサー13の測定結果とエアー温度センサー16の測定結果を用いて、スプレーガンから噴霧される塗料粒子の温度を演算することとしている。但し、スプレーガンから噴霧される塗料粒子の温度を直接測定してもよい。
【0066】
次に、図において7は、ワーク3の周囲の温度を測定するための周囲温度センサーであり、図において19は、塗装ブース内の空調を行うエアコン等の空調装置であり、この空調装置19により、ワークの周囲の温度を調節することとしている。
【0067】
次に、図において6は、システム全体の制御や各種演算、各種データ保存等を行うための制御装置である。そして、本実施例において前記制御装置としてはPCを用いており、一般的なPCと同様に、制御手段と演算手段を有した中央処理装置としてのCPUと、CPUに接続された、キーボード、マウス、タッチペン等の入力手段としての操作部、モニター等の出力手段としての表示部、記憶手段、及び電源等を備えた構成としており、記憶手段は、RAM等の主記憶手段と、ハードディスク、SSD等の補助記憶装置としてのストレージを有している。またその他、出力手段としてスピーカーを備えてもよく、更に、プリンターや外部機器との接続のためのインターフェースを備えていることは言うまでもない。
【0068】
なお、本実施例の塗装方法を実施するための塗装システムにおける制御系について図4を参照して説明すると、前記制御装置6のCPUには、表示部、操作部、記憶手段、電源、及び外部機器との接続のためのインターフェースの他に、ロボットコントローラー4、塗料供給装置におけるシリンジポンプ9及びシリンジポンプ9に塗料タンク11内の塗料を充填するためのポンプ10、塗料温度調節手段12、エアー供給装置14、エアー温度調節手段15、空調装置19、ワーク取付治具の回転軸17を回転する装置(図示せず)、塗料温度センサー13、エアー温度センサー16、周囲温度センサー7等が接続されており、これらの作動はCPUにより制御される。なお、前記ロボットコントローラー4と制御装置6を兼用し、制御装置6による制御で塗装ロボット2を稼働させてもよい。
【0069】
次に、このように構成される塗装システムを用いて、前述のようにして作成されたティーチングデータを用いた塗装方法について説明すると、予めロボットコントローラー4やPC6に、前記作成したティーチングデータをインストールしておく。そして、まず、前記空調装置を用いて、ワークの周囲温度を、ティーチングデータとした温度に調節する。例えばティーチングデータにあるワークの周囲温度が40度である場合は、周囲温度センサー7でワークの周囲温度を測定しながら、空調装置19を制御してワークの周囲温度が40度にする。
【0070】
次に、スプレーガンから噴霧される塗料の温度を、ティーチングデータとしたスプレー条件における塗料の温度に調節する。前述したように、スプレーガンから噴霧される塗料粒子の温度は、スプレーガンに供給される塗料の温度とエアーの温度によって決まるので、本実施例では、塗料温度センサー13の測定結果とエアー温度センサー16の測定結果を用いて、スプレーガンから噴霧される塗料粒子の温度を演算することとしている。そして、塗料の噴霧温度がティーチングデータとした温度になるように、塗料温度調節装置12とエアー温度調節装置15とを調節することとしている。但し、塗料の噴霧温度を直接測定し、その測定結果がティーチングデータとした温度になるように、塗料温度調節装置12とエアー温度調節装置15とを調節してもよい。なお、噴霧塗料の温度を目標とする温度にするためにはスプレーガンに供給する塗料とエアーの温度を何度にすればよいかについては、予め実験で求めておく。また、噴霧塗料の温度を目標とする温度にする際には、塗料温度調節装置12とエアー温度調節装置15のいずれか一方を調節することとしてもよい。
【0071】
そして、このように、ワークの周囲温度と塗料の噴霧温度をティーチングデータの温度に調節した後に、ティーチングデータとした軌道データに従いスプレーガンを移動させながら、ティーチングデータとしたスプレー条件に従い、スプレーガンからワークに向けて塗料を噴霧し、これによりワークの塗装を行う。
【0072】
このように本実施例のティーチングデータ作成方法では、塗料の種類及びワークの周囲温度に対応させたスプレー条件を蓄積したスプレー条件データベースを作成しておき、ティーチングデータを作成する際には、使用する塗料の種類とティーチングデータ作成時のワークの周囲温度を設定するのみで、塗装に最適なスプレー条件を得ることができるので、塗装の際に、塗装室内の基本温度や塗料温度やエアー温度を設定する必要がなく、また、ワークの周囲温度に応じて、スプレー条件を、調節しながら設定する必要がない。そのために、煩雑な作業を行うことなく、良質な塗装面を得ることが可能である。
【0073】
また、本実施例の塗装方法では、本実施例の方法で作成されたティーチングデータを用いて、ワークの周囲温度をティーチングデータとした温度に調節し、スプレーガンから噴霧される塗料の温度ティーチングデータとした塗料の噴霧温度に調節し、ティーチングデータとした軌道データに従いスプレーガンを移動させながら、ティーチングデータとしたスプレー条件に従いスプレーガンからワークに向けて塗料を噴霧する方法としているため、塗装の際には、ワークの周囲温度とスプレーガンから噴霧される塗料の温度をティーチングデータの温度に調節するのみで良質な塗装面を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の塗装用ティーチングデータの作成方法では、使用する塗料と塗装時のワークの周囲温度と、その環境下における最適なスプレー条件を予めデータベースとして蓄積し、ティーチングデータを作成する際はデータベースの蓄積データを用いることとして作業効率を向上させることを特徴としているため、塗装用ティーチングデータの作成方法の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
2 塗装ロボット
3 ワーク
4 ロボットコントローラー
5 ティーチングペンダント
6 PC
7 ワーク周囲温度センサー
8 塗料供給装置
9 シリンジ
10 塗料充填用ポンプ
11 塗料タンク
12 塗料温度調節装置
13 塗料温度センサー
14 エアー供給装置
15 エアー温度調節装置
16 エアー温度センサー
17 回転軸
18 治具
19 空調装置
図1
図2
図3
図4