IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧 ▶ 株式会社オプトハブの特許一覧

<>
  • 特開-磁気検出装置 図1
  • 特開-磁気検出装置 図2
  • 特開-磁気検出装置 図3
  • 特開-磁気検出装置 図4
  • 特開-磁気検出装置 図5
  • 特開-磁気検出装置 図6
  • 特開-磁気検出装置 図7
  • 特開-磁気検出装置 図8
  • 特開-磁気検出装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118965
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】磁気検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/04 20060101AFI20240826BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
G01R33/04
G01R33/02 V
G01R33/02 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025587
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(71)【出願人】
【識別番号】502226380
【氏名又は名称】株式会社オプトハブ
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】馬島 八世
(72)【発明者】
【氏名】南雲 章
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 紘
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AC06
2G017AC07
2G017AD42
2G017AD46
2G017AD47
2G017BA03
2G017BA05
(57)【要約】
【課題】装置の大型化を抑制しながら信号コイル部の巻き数を増加させることが可能な磁気検出装置を提供する。
【解決手段】この磁気検出装置100は、基板40に導体パターンとして形成された励磁コイル部および信号コイル部と、基板40に配置されているリングコア(磁性コア層)とを各々が個別に含む複数の磁気センサ部10と、励磁コイル部に交流電流を出力する駆動回路部20と、信号コイル部からの検出信号を取得する検出回路部30と、を備える。そして、複数の磁気センサ部10の各々の信号コイル部は、互いに接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に導体パターンとして形成された励磁コイル部および信号コイル部と、前記基板に配置されている磁性コア層とを各々が個別に含む複数の磁気センサ部と、
前記励磁コイル部に交流電流を出力する駆動回路部と、
前記信号コイル部からの検出信号を取得する検出回路部と、を備え、
前記複数の磁気センサ部の各々の前記信号コイル部は、互いに接続されている、磁気検出装置。
【請求項2】
前記複数の磁気センサ部の各々の前記励磁コイル部は、互いに接続されており、共通の前記駆動回路部から出力された交流電流が流れるように構成されている、請求項1に記載の磁気検出装置。
【請求項3】
前記磁性コア層は、円環形状を有し、前記基板に形成された層として前記基板の主表面に沿うように配置されており、
前記励磁コイル部と前記信号コイル部とは、前記基板において、前記磁性コア層を挟むように前記基板の主表面に交差する方向の一方側に形成された前記導体パターンと、他方側に形成された前記導体パターンとを互いに接続することによって、前記磁性コア層の周りを巻回するように配置されている、請求項1または2に記載の磁気検出装置。
【請求項4】
前記励磁コイル部と前記信号コイル部とは、円環形状の前記磁性コア層の周方向に沿って、前記磁性コア層の周りを交互に巻回するように配置されており、
前記信号コイル部は、前記磁性コア層の半周分ずつ巻回される向きを入れ替えながら配置されており、
前記複数の磁気センサ部は、前記磁性コア層において前記信号コイル部の巻回される向きが入れ替えられる位置の方向である検出方向が、互いに共通の方向となるように向きを揃えて配置されている、請求項3に記載の磁気検出装置。
【請求項5】
前記複数の磁気センサ部の各々は、前記基板の主表面に沿うように並べて配置されている、請求項1または2に記載の磁気検出装置。
【請求項6】
前記複数の磁気センサ部の各々の前記励磁コイル部および前記信号コイル部は、共通の前記基板に前記導体パターンとして形成されている、請求項5に記載の磁気検出装置。
【請求項7】
前記複数の磁気センサ部の各々は、前記基板の主表面に交差する方向に沿って、前記励磁コイル部および前記信号コイル部と前記磁性コア層とを含む前記基板が積層されるように配置されている、請求項1または2に記載の磁気検出装置。
【請求項8】
前記複数の磁気センサ部は、第1磁気センサ部および第2磁気センサ部を含み、
前記第1磁気センサ部および前記第2磁気センサ部は、前記励磁コイル部同士が互いに極性が等しい順方向に直列に接続されているとともに、前記信号コイル部同士が互いに極性が異なる逆方向に直列に接続されている、請求項1または2に記載の磁気検出装置。
【請求項9】
前記複数の磁気センサ部の各々の前記励磁コイル部は、互いに共通の巻き数を有し、
前記複数の磁気センサ部の各々の前記信号コイル部は、互いに共通の巻き数を有する、請求項1または2に記載の磁気検出装置。
【請求項10】
前記複数の磁気センサ部における前記磁性コア層の検出方向側に配置され、前記磁性コア層に対して磁束を収束する磁気収束部をさらに備える、請求項1または2に記載の磁気検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気検出装置に関し、特に、励磁コイル部と信号コイル部とを備える磁気検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、励磁コイル部と信号コイル部とを備える磁気検出装置が知られている(たとえば、非特許文献1および特許文献1)。
【0003】
上記非特許文献1には、基板に形成された薄膜フラックスゲート磁気センサが記載されている。上記非特許文献1に記載の薄膜フラックスゲート磁気センサは、円形のリングコアと、励振コイルおよび受信コイルを備えている。リングコアは、基板においてパーマロイ薄膜により形成されている。そして、リングコアの上下に絶縁層を挟みながら薄膜のパターンメッキの上部配線層および下部配線層が積層されている。この上部配線層と下部配線層とが接続されることによって、リングコアの周りに三次元的に励振コイルおよび受信コイルが形成されている。
【0004】
また、上記特許文献1には、磁性体からなる環状のコアの周りに励磁巻線および検出巻線を巻回したいわゆるバルク型のフラックスゲート磁気センサが開示されている。上記特許文献1では、環状のコアは、柱状の部材を湾曲させるように形成されたリング形状の磁性部材を用いて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-127889号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】吉見、ほか5名、「小型薄膜フラックスゲート磁気センサとその応用」、島津評論、島津評論編集部、1999年8月、第56巻、第1・2号、p.19-28
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上記非特許文献1に記載の薄膜フラックスゲート磁気センサは、コアおよびコイルが基板に薄膜として形成されているため比較的小型となるものの、上記特許文献1に記載のバルク型のフラックスゲート磁気センサに比べて、受信コイル(検出巻線)の巻き数が少なくなるため、磁気を検出する感度が小さくなる。一方で、上記特許文献1に記載のフラックスゲート磁気センサのように、いわゆるバルク型のフラックスゲート磁気センサでは、コアおよびコイル(巻線)が基板に薄膜として形成されていないので、上記非特許文献1のように基板に構成されたフラックスゲート磁気センサに比べて装置が大型化する。そのため、装置の大型化を抑制しながら受信コイル(信号コイル部)の巻き数を増加させることが望まれている。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、装置の大型化を抑制しながら信号コイル部の巻き数を増加させることが可能な磁気検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一の局面における磁気検出装置は、基板に導体パターンとして形成された励磁コイル部および信号コイル部と、基板に配置されている磁性コア層とを各々が個別に含む複数の磁気センサ部と、励磁コイル部に交流電流を出力する駆動回路部と、信号コイル部からの検出信号を取得する検出回路部と、を備え、複数の磁気センサ部の各々の信号コイル部は、互いに接続されている。
【発明の効果】
【0010】
上記一の局面における磁気検出装置は、上記のように、複数の磁気センサ部の各々の信号コイル部は、互いに接続されている。これにより、励磁コイル部と信号コイル部とを含む磁気センサ部を基板に形成する場合にも、複数の磁気センサ部の各々の信号コイル部同士を接続することによって、信号コイル部の巻き数を増加させることができる。また、励磁コイル部および信号コイル部と磁性コア層とが基板に形成されているため、装置の大型化を抑制することができる。その結果、装置の大型化を抑制しながら信号コイル部の巻き数を増加させることができる。また、複数の磁気センサ部の各々に、励磁コイル部、信号コイル部、および、磁性コア層が設けられているため、複数の磁気センサ部の各々の信号コイル部同士を接続することによって信号コイル部の巻き数を増加させる場合に、複数の磁気センサ部の個数、および、配置を容易に調整することができる。そのため、磁気検出装置全体の感度、検出領域、および、形状を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態による磁気検出装置の全体構成を示したブロック図である。
図2】複数の磁気センサ部のうちの一つの構造を示した模式図である。
図3図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4】第2実施形態による磁気検出装置の全体構成を示した図である。
図5】第2実施形態による磁気検出装置のXZ平面に沿った模式的な断面図である。
図6】第3実施形態による磁気検出装置の全体構成を示した図である。
図7】第4実施形態による磁気検出装置の全体構成を示したブロック図である。
図8】磁気収束部の構成を説明するための模式図である。
図9】本発明の第4実施形態の変形例による磁気収束部の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具現化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
[第1実施形態]
(磁気検出装置の構成)
図1図3を参照して、本発明の第1実施形態による磁気検出装置100の全体構成について説明する。
【0014】
図1に示すように、第1実施形態による磁気検出装置100は、複数の磁気センサ部10と、駆動回路部20と、検出回路部30とを備えている。
【0015】
〈磁気センサ部〉
複数の磁気センサ部10は、たとえば、4つの磁気センサ部10a、磁気センサ部10b、磁気センサ部10c、および、磁気センサ部10dを含む。なお、4つの磁気センサ部10a、磁気センサ部10b、磁気センサ部10c、および、磁気センサ部10dの各々は、互いに共通の構成を有している。以下の説明では、4つの磁気センサ部10a、磁気センサ部10b、磁気センサ部10c、および、磁気センサ部10dに共通の構成を区別せずに、「磁気センサ部10」の構成として説明する。
【0016】
図2に示すように、複数の磁気センサ部10の各々は、リングコア11と、励磁コイル部12と、信号コイル部13とを有する。複数の磁気センサ部10の各々は、フラックスゲート磁気センサである。リングコア11、励磁コイル部12、および、信号コイル部13は、基板40(図1参照)に配置されている。複数の磁気センサ部10の各々は、リングコア11ごとに独立したセンサである。なお、図2では、リングコア11と、励磁コイル部12と、信号コイル部13とを、ハッチングの差異により区別して図示している。また、リングコア11は、特許請求の範囲における「磁性コア層」の一例である。
【0017】
リングコア11は、円環形状を有する。リングコア11は、基板40に形成された層として、基板40の主表面40a(図3参照)に沿うように配置されている。すなわち、リングコア11は、基板40において、薄膜の磁性体層として形成されている。リングコア11は、磁束の経路となる磁路を形成する軟磁性材料によって構成されている。リングコア11は、たとえば、パーマロイ薄膜である。リングコア11は、たとえば、基板40においてスパッタ成膜されてエッチングされることにより円環形状に形成される。なお、リングコア11は、上記のパーマロイ薄膜のほか、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Mo(モリブデン)などを含むスーパーマロイ、Co(コバルト)、Feなどを含むアモルファス材料、または、アモルファス合金を部分的に結晶化させることによってランダムに配向させたナノ結晶材料などによって構成されていてもよい。
【0018】
また、励磁コイル部12と信号コイル部13とは、円環形状のリングコア11の周方向に沿って、リングコア11の周りを交互に巻回するように配置されている。そして、信号コイル部13は、リングコア11の半周分ずつ巻回される向きを入れ替えながら配置されている。信号コイル部13は、リングコア11の中心に対して、X1方向側とX2方向側とで、互いに異なる向きに巻回されている。信号コイル部13の巻き方向(巻回される向き)を、図中において矢印で示している。信号コイル部13では、X1方向側の部分は、Z1方向側においてリングコア11の径方向の内側から外側に向かって巻回されている。一方で、信号コイル部13のX2方向側の部分は、Z1方向側においてリングコア11の径方向の外側のから内側に向かって巻回されている。信号コイル部13は、X1方向側の部分とX2方向側の部分との各々の極性が互いに異なる差動接続された状態となっている。
【0019】
また、励磁コイル部12は、端子部T1および端子部T2を介して駆動回路部20に接続されている。また、信号コイル部13は、端子部T3および端子部T4を介して検出回路部30に接続されている。
【0020】
図3に示すように、励磁コイル部12および信号コイル部13は、基板40に薄膜の導体パターンとして形成されている。なお、図3は、図2のIII-III線に沿った断面図であるため、励磁コイル部12の断面を図示しているが、信号コイル部13の構造も同様である。励磁コイル部12と信号コイル部13とは、基板40において、リングコア11を挟むように基板40の主表面40aに交差する方向(基板40の厚み方向)の一方側(Z1方向側)に形成された導体パターンと、他方側(Z2方向側)に形成された導体パターンとを互いに接続することによって、リングコア11の周りを巻回するように配置されている。
【0021】
たとえば、励磁コイル部12および信号コイル部13は、Z1方向側とZ2方向側との各々に形成された導体パターン同士が、コンタクトホール(図2および図3の部分14)を介して互いに接続されている。励磁コイル部12および信号コイル部13は、たとえば、銅のパターンメッキにより形成されている。複数の磁気センサ部10の各々では、基板40において、励磁コイル部12および信号コイル部13のZ2方向側の導体パターンが形成された後に、絶縁膜が配置された後にリングコア11の層が形成される。その後に、再度絶縁膜が配置された後に励磁コイル部12および信号コイル部13のZ1方向側の導体パターンとコンタクトホールの導体が形成される。このようにして、励磁コイル部12および信号コイル部13は、リングコア11を立体的に巻回するように配置されている。なお、図2では、励磁コイル部12および信号コイル部13のZ1方向側の導体パターンとZ2方向側の導体パターンとを互いに接続する部分14を、Z方向側から見て、ずらした状態で図示しているが、部分14のZ1方向側において接続される部分とZ2方向側において接続される部分とを、Z方向側から見て、互いに重なり合うように配置するように構成してもよい。
【0022】
なお、複数の磁気センサ部10(磁気センサ部10a~磁気センサ部10d)は共通の構成を有しているため、複数の磁気センサ部10(磁気センサ部10a~磁気センサ部10d)の各々の励磁コイル部12は、互いに共通の巻き数を有している。同様に、複数の磁気センサ部10(磁気センサ部10a~10d)の各々の信号コイル部13も、互いに共通の巻き数を有している。また、複数の磁気センサ部10の各々は、基板40の主表面40aに交差する方向(Z方向)の大きさが、基板40の主表面40aに沿う方向(XY平面に沿う方向)の大きさに比べて小さい扁平な形状を有している。
【0023】
図1に示すように、駆動回路部20は、励磁コイル部12に交流電流を出力する。駆動回路部20は、たとえば、発振器を含み、所定の周波数の交流電流である励磁電流を端子部T1および端子部T2を介して励磁コイル部12に出力する。励磁電流は、たとえば、三角波の交流電流である。励磁電流の大きさは、励磁電流によりリングコア11に生じる磁界が十分飽和する大きさである。
【0024】
また、検出回路部30は、信号コイル部13からの検出信号を取得する。検出回路部30は、端子部T3および端子部T4を介して信号コイル部13からの検出信号を取得する。励磁コイル部12に流される交流電流(励磁電流)により、リングコア11は、極性を交互に反転させながら、周期的に磁束が飽和した状態となる。信号コイル部13において、リングコア11の極性が入れ替わるタイミングにおいて、誘導起電力が生じる。そして、信号コイル部13では、リングコア11において磁束が飽和した状態となっているタイミングでは、磁束が変化しないため誘導起電力が生じない。したがって、信号コイル部13では、励磁コイル部12に流される交流電流の2倍の周期で、交互に向き(極性)が入れ替わるパルス状の誘導起電力が生じる。
【0025】
ここで、信号コイル部13では、X1方向側の部分とX2方向側の部分とが互いに逆極性の差動接続となっているため、外部の磁場(磁界)が存在しない場合には、信号コイル部13に発生する誘導起電力は打ち消し合う。この場合には、信号コイル部13から出力される検出信号はゼロとなる。一方で、Y方向に沿った外部磁界が入力された場合には、リングコア11の磁束が飽和するタイミングが、X1方向側の部分とX2方向側の部分とで互いに異なる。具体的には、リングコア11に対して、直流成分の磁界が外部から加えられた状態となるため、信号コイル部13のX1方向側の部分とX2方向側の部分とにおいて誘導起電力が発生するタイミングが、外部からの磁界の大きさに応じて互いに異なるように変化する。信号コイル部13のX1方向側の部分とX2方向側の部分とは互いに極性が異なるものの、タイミングが異なることにより誘導起電力が打ち消し合いきれずに、励磁電流の2倍の周波数を有する電圧信号が検出信号として生じる。
【0026】
検出回路部30は、たとえば、同期整流器および積分器を有する。検出回路部30は、信号コイル部13において生じた検出信号を同期整流した後に積分することによって、Y方向において入力された外部磁界の大きさに応じた検出値を出力する。このように、複数の磁気センサ部10の各々では、リングコア11において信号コイル部13の巻回される向きが入れ替えられる位置の方向であるY方向が検出方向となる。
【0027】
磁気検出装置100では、たとえば、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置を含む図示しない制御部からの信号に基づいて、駆動回路部20から交流電流(励磁電流)が出力され、検出回路部30から検出信号に基づく外部磁界の大きさに応じた検出値を示す信号が制御部に出力される。そして、制御部によって取得された検出値がディスプレイモニタなどの図示しない表示部に表示される。
【0028】
〈複数の磁気センサ部同士の接続〉
図1に示すように、第1実施形態では、複数の磁気センサ部10(磁気センサ部10a~磁気センサ部10d)の各々の信号コイル部13は、互いに接続されている。また、複数の磁気センサ部10の各々の励磁コイル部12は、互いに接続されている。
【0029】
具体的には、複数の磁気センサ部10の各々の励磁コイル部12は、互いに極性が等しい順方向に直列に接続されている。複数の磁気センサ部10において、磁気センサ部10aの端子部T1が駆動回路部20に接続されており、磁気センサ部10aの端子部T2と磁気センサ部10bの端子部T1とが互いに接続されている。そして、磁気センサ部10bの端子部T2と磁気センサ部10cの端子部T1とが互い接続されている。同様に、磁気センサ部10cの端子部T2と磁気センサ部10dの端子部T1とが互いに接続されている。そして、磁気センサ部10dの端子部T2は、駆動回路部20に接続されている。すなわち、複数の磁気センサ部10の各々の励磁コイル部12は、共通の駆動回路部20から出力された交流電流が流れるように構成されている。したがって、複数の磁気センサ部10の各々の励磁コイル部12では、流される交流電流の周期、位相、および、極性の各々が互いに共通となる。したがって、複数の磁気センサ部10の各々において、リングコア11には共通の周期、位相、および、極性を有する振動するような磁束が生じる。
【0030】
同様に、複数の磁気センサ部10の各々の信号コイル部13も、互いに順方向に直列に接続されている。複数の磁気センサ部10において、磁気センサ部10aの端子部T3が検出回路部30に接続されており、磁気センサ部10aの端子部T4と磁気センサ部10bの端子部T3とが互いに接続されている。そして、磁気センサ部10bの端子部T4と磁気センサ部10cの端子部T3とが互い接続されている。同様に、磁気センサ部10cの端子部T4と磁気センサ部10dの端子部T3とが互いに接続されている。そして、磁気センサ部10dの端子部T4は、検出回路部30に接続されている。すなわち、複数の磁気センサ部10の各々の信号コイル部13からの検出信号は、まとめて共通の検出回路部30によって検出される。検出回路部30から見た場合には、複数の磁気センサ部10の各々の信号コイル部13は、まとめて1つのコイルと同様であるとみなされる。
【0031】
また、第1実施形態では、複数の磁気センサ部10(磁気センサ部10a~磁気センサ部10d)の各々は、基板40の主表面40aに沿うように並べて配置されている。そして、複数の磁気センサ部10は、検出方向が互いに共通の方向となるように向きを揃えて配置されている。具体的には、複数の磁気センサ部10の各々は、検出方向がY方向に沿った方向となるように配置されている。4つの磁気センサ部10a~磁気センサ部10dは、格子状に2つずつ並べて配置されている。すなわち、検出方向であるY方向に隣り合うように磁気センサ部10aおよび磁気センサ部10bが並べて配置されている。そして、磁気センサ部10aおよび磁気センサ部10bに対して、それぞれ、磁気センサ部10cおよび磁気センサ部10dがX方向に隣り合うように並べて配置されている。このように、各々の独立した構成の磁気センサ部10が、互いに接続された状態で基板40に並んで配置されている。
【0032】
また、複数の磁気センサ部10の各々の励磁コイル部12および信号コイル部13は、共通の基板40に導体パターンとして配置されている。すなわち、1つの基板40において、複数の磁気センサ部10の各々の励磁コイル部12および信号コイル部13が形成されている。また、複数の磁気センサ部10の各々同士を接続する導体も、基板40における導体パターンとして形成されていてもよい。その場合には、励磁コイル部12および信号コイル部13を形成する導体パターンと、基板40の導体パターンとを一体的に形成してもよいし、基板40の導体パターンと複数の磁気センサ部10の各々の端子部T1~端子部T4とを、導線(リード線)などをはんだ付けすることにより互いに電気的に接続してもよい。そして、複数の磁気センサ部10の各々の励磁コイル部12および信号コイル部13は、それぞれ、基板40に設けられたコネクタ41を介して、駆動回路部20および検出回路部30と接続されている。駆動回路部20および検出回路部30は、たとえば、共通するHIC(ハイブリッドIC)において構成されている。駆動回路部20および検出回路部30は、基板40に配置されていてもよいし、基板40とは異なる位置に配置されていてもよい。
【0033】
なお、複数の信号コイル部13同士を互いに直列に接続することによって、SN比(シグナル-ノイズ比)が向上する。具体的には、1つの信号コイル部13の検出信号の強度をVs、雑音信号の強度をVnとした場合、SN比は、Vs/Vnで表される。複数の信号コイル部13をN個直列に接続した場合には、ファラデーの法則によって、検出信号の強度は、Vs・Nとなる。一方で、雑音信号の強度は、熱雑音の強度(電圧値)によって表され、式(1)によって示される。
【数1】
(k:ボルツマン定数、T:絶対温度、R:抵抗値、B:帯域幅)
ここで、抵抗値Rは巻き数に比例するとともに、ボルツマン定数k、絶対温度T、帯域幅Bは定数となるため、信号コイル部13をN個直列に接続した場合、巻き数がN倍となり抵抗値RもN倍となるので、雑音信号の強度Vnは、√N倍される。したがって、信号コイル部13をN個直列に接続した場合のSN比は式(2)によって表される。
【数2】
このように、信号コイル部13をN個直列に接続した場合には、SN比が√N倍に向上する。
【0034】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0035】
第1実施形態では、上記のように、複数の磁気センサ部10の各々の信号コイル部13は、互いに接続されている。これにより、励磁コイル部12と信号コイル部13とを含む磁気センサ部10を基板40に形成する場合にも、複数の磁気センサ部10の各々の信号コイル部13同士を接続することによって、信号コイル部13の巻き数を増加させることができる。また、励磁コイル部12および信号コイル部13とリングコア11(磁性コア層)とが基板40に形成されているため、装置の大型化を抑制することができる。その結果、装置の大型化を抑制しながら信号コイル部13の巻き数を増加させることができる。また、複数の磁気センサ部10の各々に、励磁コイル部12、信号コイル部13、および、リングコア11(磁性コア層)が設けられているため、複数の磁気センサ部10の各々の信号コイル部13同士を接続することによって信号コイル部13の巻き数を増加させる場合に、複数の磁気センサ部10の個数、および、配置を容易に調整することができる。そのため、磁気検出装置100全体の感度、検出領域、および、形状を容易に調整することができる。
【0036】
また、上記第1実施形態では、以下のように構成したことによって、更なる効果が得られる。
【0037】
すなわち、第1実施形態では、上記のように、複数の磁気センサ部10の各々の励磁コイル部12は、互いに接続されており、共通の駆動回路部20から出力された交流電流が流れるように構成されている。このように構成すれば、複数の磁気センサ部10の各々ごとに別個に駆動回路部20を設ける場合に比べて装置構成が複雑になることを抑制することができるとともに、装置が大型化することをより抑制することができる。
【0038】
また、第1実施形態では、上記のように、リングコア11(磁性コア層)は、円環形状を有し、基板40に形成された層として基板40の主表面40aに沿うように配置されており、励磁コイル部12と信号コイル部13とは、基板40において、リングコア11を挟むように基板40の主表面40aに交差する方向の一方側(Z1方向側)に形成された導体パターンと、他方側(Z2方向側)に形成された導体パターンとを互いに接続することによって、リングコア11の周りを巻回するように配置されている。このように構成すれば、リングコア11を巻回するように励磁コイル部12および信号コイル部13を形成する場合に、基板40の導体パターンとしてコイルを形成することによって、基板40の主表面40aに交差する方向(厚み方向:Z方向)の大きさを小さくすることができる。そのため、磁気センサ部10を複数設ける場合にも、基板40の厚み方向の大きさを抑制することができる。
【0039】
また、第1実施形態では、上記のように、励磁コイル部12と信号コイル部13とは、円環形状のリングコア11(磁性コア層)の周方向に沿って、リングコア11の周りを交互に巻回するように配置されており、信号コイル部13は、リングコア11の半周分ずつ巻回される向きを入れ替えながら配置されており、複数の磁気センサ部10は、リングコア11において信号コイル部13の巻回される向きが入れ替えられる位置の方向である検出方向が、互いに共通の方向(Y方向)となるように向きを揃えて配置されている。このように構成すれば、検出方向が互いに共通の方向となるように揃えられた状態で複数の磁気センサ部10が配置されているため、複数の磁気センサ部10の各々の信号コイル部13同士を接続することによって、効果的に感度を向上させることができる。
【0040】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の磁気センサ部10の各々は、基板40の主表面40aに沿うように並べて配置されている。このように構成すれば、磁気センサ部10が一つだけ設けられている場合に比べて、複数の磁気センサ部10を並べて配置した分だけ、基板40の主表面40aに沿う方向における検出範囲を大きくすることができる。また、複数の磁気センサ部10を基板40の主表面40aに沿うように並べて配置することによって、基板40の主表面40aに交差する方向(厚み方向)の大きさを小さくすることができる。
【0041】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の磁気センサ部10の各々の励磁コイル部12および信号コイル部13は、共通の基板40に導体パターンとして形成されている。このように構成すれば、複数の磁気センサ部10の各々の励磁コイル部12および信号コイル部13が、磁気センサ部10ごとに別個の基板において形成されている場合に比べて、共通の基板40にまとめて処理を行うことによって複数の磁気センサ部10を製造することができるので、製造工程を簡略化することができる。
【0042】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の磁気センサ部10の各々の励磁コイル部12は、互いに共通の巻き数を有し、複数の磁気センサ部10の各々の信号コイル部13は、互いに共通の巻き数を有する。このように構成すれば、互いに異なる巻き数を有する励磁コイル部12および信号コイル部13を用いる場合に比べて共通の工程によって、複数の磁気センサ部10の各々を製造することができる。この点でも、製造工程を簡略化することができる。
【0043】
[第2実施形態]
図4および図5を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、複数の磁気センサ部10が基板40の主表面40aに沿って並んで配置されるように構成した第1実施形態と異なり、複数の磁気センサ部210が積層されて配置されている。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成の部分には、同一の符号を付している。
【0044】
(第2実施形態による磁気検出装置の構成)
図4に示すように、第2実施形態による磁気検出装置200は、複数の磁気センサ部210を備える。複数の磁気センサ部210は、たとえば、3つの磁気センサ部210a、磁気センサ部210b、および、磁気センサ部210cを含む。3つの磁気センサ部210a、磁気センサ部210b、および、磁気センサ部210cの各々は共通の構成を有している。また、3つの磁気センサ部210a、磁気センサ部210b、および、磁気センサ部210cの各々は、基板40に形成されたリングコア11、励磁コイル部12、および、信号コイル部13を含み、第1実施形態の複数の磁気センサ部10と同様の構成を有する。
【0045】
図5に示すように、第2実施形態では、複数の磁気センサ部210の各々は、積層されるように配置されている。具体的には、リングコア11、励磁コイル部12、および、信号コイル部13を含む基板40が、基板40の主表面40aの交差する方向(厚み方向:Z方向)に沿って積層されるように、複数の磁気センサ部210の各々が配置されている。
【0046】
たとえば、各々の磁気センサ部210を構成する基板40とは別個の配置用の基板250に、3つの磁気センサ部210a、磁気センサ部210b、および、磁気センサ部210cが上から(Z1方向側から)この順に配置されている。複数の磁気センサ部210は、配置用の基板250に形成された導体パターンに接続されている。基板250の導体パターンに対して、複数の磁気センサ部210の各々の端子部T1~端子部T4が、導線(リード線)をはんだ付けすることにより電気的に接続されている。なお、ワイヤーボンディング法を用いることによって、基板250の導体パターンに対して、複数の磁気センサ部210の各々の端子部T1~端子部T4を電気的に接続するようにしてもよい。また、駆動回路部20および検出回路部30は、配置用の基板250に設けられたコネクタ251を介して基板250に形成された導体パターンに接続されている。
【0047】
複数の磁気センサ部210の各々は、第1実施形態と同様に互いに直列に接続されている。すなわち、複数の磁気センサ部210の各々の励磁コイル部12同士は直列に接続され、信号コイル部13同士も同様に直列に接続されている。
【0048】
具体的には、図4に示すように、複数の磁気センサ部210において、磁気センサ部210aの端子部T1が基板250の導体パターンおよびコネクタ251を介して駆動回路部20に接続されている。そして、磁気センサ部210aの端子部T2と磁気センサ部210bの端子部T1とが互いに接続されている。そして、磁気センサ部210bの端子部T2と磁気センサ部210cの端子部T1とが互い接続されている。磁気センサ部210cの端子部T2は、基板250の導体パターンおよびコネクタ251を介して駆動回路部20に接続されている。また、磁気センサ部210aの端子部T3が基板250の導体パターンおよびコネクタ251を介して検出回路部30に接続されている。そして、磁気センサ部210aの端子部T4と磁気センサ部210bの端子部T3とが互いに接続されている。そして、磁気センサ部210bの端子部T4と磁気センサ部210cの端子部T3とが互い接続されている。磁気センサ部210cの端子部T4は、基板250の導体パターンおよびコネクタ251を介して検出回路部30に接続されている。なお、複数の磁気センサ部210は、検出方向をY方向に揃えた状態で積層されている。複数の磁気センサ部210は、検出方向をX方向に揃えた状態で積層してもよい。また、複数の磁気センサ部210の各々は、端子部同士を接続するために階段状に配置をずらしながら積層されるように配置されている。
【0049】
なお、第2実施形態による磁気検出装置200のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0050】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0051】
第2実施形態では、上記のように、複数の磁気センサ部210の各々は、基板40の主表面40aに交差する方向(Z方向)に沿って、励磁コイル部12および信号コイル部13とリングコア11(磁性コア層)とを含む基板40が積層されるように配置されている。このように構成すれば、基板40の主表面40aに沿う方向の大きさが大きくなることを抑制しながら、複数の磁気センサ部210を含む磁気検出装置200の感度を向上させることができる。また、基板40により構成されている複数の磁気センサ部210の各々は、基板40の主表面40aに交差する方向(Z方向)の大きさが、基板40の主表面40aに沿う方向(XY平面に沿う方向)の大きさに比べて小さい扁平な形状を有している。したがって、基板40の主表面40aに交差する方向に沿って積層することによって、より小さい範囲に複数の磁気センサ部210を集中させて配置することができるので、より小さい検出範囲における磁気の検出の分解能を向上させることができる。
【0052】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0053】
[第3実施形態]
図6を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、一対の磁気センサ部310aおよび310bの信号コイル部13同士が互いに逆向きの極性となるように接続されている。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成の部分には、同一の符号を付している。
【0054】
(第3実施形態による磁気検出装置の構成)
図6に示すように、第3実施形態による磁気検出装置300は、複数の磁気センサ部310を備えている。複数の磁気センサ部310は、磁気センサ部310aおよび磁気センサ部310bを含む。磁気センサ部310aおよび磁気センサ部310bは、互いに共通の構成を有する。また、複数の磁気センサ部310の各々の構成は、第1実施形態による複数の磁気センサ部10の各々と同様である。なお、磁気センサ部310aは、特許請求の範囲における「第1磁気センサ部」の一例である。また、磁気センサ部310bは、特許請求の範囲における「第2磁気センサ部」の一例である。
【0055】
第3実施形態では、磁気センサ部310aおよび磁気センサ部310bは、励磁コイル部12同士が互いに極性が等しい順方向に直列に接続されている。そして、信号コイル部13同士が互いに極性の異なる逆方向に直列に接続されている。
【0056】
すなわち、磁気センサ部310aの端子部T1は駆動回路部20に接続されており、磁気センサ部310aの端子部T2は磁気センサ部310bの端子部T1に接続されている。そして、磁気センサ部310bの端子部T2が、駆動回路部20に接続されている。一方で、磁気センサ部310aの端子部T3は、磁気センサ部310bの端子部T3と接続されている。そして、磁気センサ部310aの端子部T4と磁気センサ部310bの端子部T4とが検出回路部30に接続されている。
【0057】
したがって、磁気センサ部310aと磁気センサ部310bとの各々において、励磁コイル部12には、第1および第2実施形態と同様に、共通の交流電流が順方向に流される。第1および第2実施形態と同様に、磁気センサ部310aと磁気センサ部310bとの各々において、リングコア11には共通の周期、位相、および、極性を有する磁束が生じる。一方で、磁気センサ部310aおよび磁気センサ部310bでは、端子部T3同士が互いに接続されているため、磁気センサ部310aおよび磁気センサ部310bの各々に対して外部から加えられる磁界が共通である場合には、信号コイル部13からの出力は打ち消し合う。そして、磁気センサ部310aおよび磁気センサ部310bの各々に外部から加えられる磁界に差がある場合に、差の大きさを示す検出信号が検出回路部30に対して出力される。磁気検出装置300は、地磁気などの周辺環境からの磁気雑音をキャンセルするとともに、2つの磁気センサ部310aと磁気センサ部310bとの間の磁気勾配を検出するグラジオメータとして構成されている。
【0058】
なお、磁気センサ部310aと磁気センサ部310bとは、基板40の主表面40aに沿って並べて配置するようにしてもよいし、基板40の主表面40aに交差する方向に沿って積層して配置するようにしてもよい。また、第3実施形態による磁気検出装置300のその他の構成は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0059】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0060】
第3実施形態では、上記のように、複数の磁気センサ部310は、磁気センサ部310a(第1磁気センサ部)および磁気センサ部310b(第2磁気センサ部)を含み、磁気センサ部310aおよび磁気センサ部310bは、励磁コイル部12同士が互いに極性が等しい順方向に直列に接続されているとともに、信号コイル部13同士が互いに極性が異なる逆方向に直列に接続されている。このように構成すれば、基板40において形成された2つの磁気センサ部310aおよび磁気センサ部310bを用いて信号コイル部13同士が互いに逆極性に接続されたグラジオメータを構成することができるので、2つの磁気センサ部310を用いてグラジオメータを構成する場合にも装置構成の大型化を抑制することができる。また、基板40において形成された2つの磁気センサ部310aおよび磁気センサ部310bは、基板40の主表面40aに交差する方向の大きさが、基板40の主表面40aに沿う方向の大きさに比べて小さい扁平な形状を有している。そして、検出方向が、基板40の主表面40aに沿う方向(Y方向)であるため、基板40の主表面40aに交差する方向に沿って複数の磁気センサ部310を積層するように配置することによってグラジオメータを構成することができる。このため、複数の磁気センサ部310を狭いピッチで配置することができるので、グラジオメータを構成した場合に空間分解能を向上させることができる。
【0061】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1および第2実施形態と同様である。
【0062】
[第4実施形態]
図7および図8を参照して、第4実施形態について説明する。この第4実施形態では、複数の磁気センサ部410の各々に対して、磁気収束部460が設けられている。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成の部分には、同一の符号を付している。
【0063】
(第4実施形態による磁気検出装置の構成)
図7に示すように、第4実施形態による磁気検出装置400は、複数の磁気センサ部410(磁気センサ部410a、磁気センサ部410b、磁気センサ部410c、および、磁気センサ部410d)を備える。複数の磁気センサ部410の各々は、互いに共通の構成を有している。また、複数の磁気センサ部410の各々は、第1実施形態の複数の磁気センサ部10(磁気センサ部10a~10d)の各々と同様に、リングコア11、励磁コイル部12、および、信号コイル部13を含んでいる。
【0064】
複数の磁気センサ部410(磁気センサ部410a~410d)の各々は、第1実施形態と同様に、互いに直列に接続されている。すなわち、複数の磁気センサ部410の各々は、第1実施形態の複数の磁気センサ部10の各々と同様に、複数の磁気センサ部410の各々の励磁コイル部12同士は直列に接続され、信号コイル部13同士も同様に直列に接続されている。また、複数の磁気センサ部410の各々は、第1実施形態と同様に、検出方向が互いに共通の方向となるように向きを揃えて、基板40の主表面に沿って配置されている。また、複数の磁気センサ部410の各々の励磁コイル部12および信号コイル部13は、共通の基板40に導体パターンとして配置されている。
【0065】
そして、第4実施形態では、磁気検出装置400は、複数の磁気センサ部410(磁気センサ部410a~410d)の各々のリングコア11に対して磁束を収束する磁気収束部460を備えている。磁気収束部460は、複数の磁気センサ部410の各々に対して、2つずつ配置されている。なお、複数の磁気センサ部410の各々ごとにおける磁気収束部460は、同様の構成を有する。以下の説明では、複数の磁気センサ部410のうちの磁気センサ部410aにおける磁気収束部460について図示して説明するとともに、磁気センサ部410b~410fにおける磁気収束部460については、図示を省略する。
【0066】
図8に示すように、第4実施形態では、磁気収束部460は、複数の磁気センサ部410の各々におけるリングコア11(磁性コア層)の検出方向側に配置されている。たとえば、磁気センサ部410aでは、リングコア11に対して、リングコア11の検出方向であるY方向の一方側(Y1方向側)と他方側(Y2方向側)との各々に、検出方向に沿って(リングコア11の中心を通る感度軸に沿って)磁気収束部460が配置されている。磁気収束部460は、たとえば、リングコア11と同様に、基板40の主表面に沿うように形成された薄膜の磁性体層である。磁気収束部460は、磁路を形成する軟磁性材料によって構成されている。たとえば、磁気収束部460は、パーマロイ薄膜である。磁気収束部460は、リングコア11と同様に、基板40においてスパッタ成膜されてエッチングされることにより形成される。なお、磁気収束部460は、基板40の厚み方向において、リングコア11と等しい位置に配置されている。
【0067】
磁気収束部460は、台形状の薄膜である。磁気収束部460において、検出方向に沿ってリングコア11から離間している方向側の辺の長さは、リングコア11に対して近接している方向側の辺の長さに比べて大きい。これにより、磁気収束部460において、検出方向に沿ってリングコア11から離間している方向側の辺からの磁束が、検出方向に沿って収束するとともに、リングコア11に対して近接している方向側の辺から出力される。すなわち、磁気収束部460は、磁気のレンズ作用によって複数の磁気センサ部410(磁気センサ部410a~410f)の各々における磁束密度を増加させる。たとえば、磁気収束部460は、磁気センサ部410aのリングコア11に対して入力される磁束を収束させる。磁気収束部460は、リングコア11に向かって、リングコア11の周囲の検出方向(Y方向)に沿う向きの磁界(磁束)を収束させる。すなわち、磁気収束部460は、X方向においてリングコア11よりも外側の位置を通る磁束を、リングコア11を通るように収束させる。
【0068】
なお、第4実施形態による磁気検出装置400のその他の構成は、上記第1~第3施形態と同様である。
【0069】
(第4実施形態の効果)
第4実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0070】
第4実施形態では、上記のように、磁気検出装置400は、複数の磁気センサ部410(磁気センサ部410a~410f)におけるリングコア11(磁性コア層)の検出方向側に配置され、リングコア11に対して磁束を収束する磁気収束部460を備える。このように構成すれば、磁気収束部460によって、リングコア11に対して磁束を収束することができるので、複数の磁気センサ部410a~410fの各々における検出の感度をより向上することができる。そのため、複数の方向の磁界を検出する場合に、感度の低下をより抑制しながら、複数の方向の磁界ごとの検出位置を互いに近づけることができる。
【0071】
なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第1~第3実施形態と同様である。
【0072】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0073】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、複数の磁気センサ部10(210)の各々の信号コイル部13が検出回路部30に対して互いに順方向に直列に接続されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の磁気センサ部の各々の信号コイル部は、検出回路部に対して互いに並列に接続されていてもよい。その場合にも、SN比は向上する。具体的には、1つの信号コイル部の検出信号の強度をVs、雑音信号の強度をVnとした場合、並列接続であるためN個の信号コイル部を接続した場合にも検出信号の強度は変らずVsとなる。一方で、雑音信号の強度は上記式(1)と同様であり、式(1)の抵抗値RはN個の信号コイルを並列にした場合1/N倍となる。したがって、信号コイル部をN個並列に接続した場合、雑音信号の強度Vnは、1/√N倍になる。以上から、信号コイル部をN個並列に接続した場合のSN比は、式(3)によって表される。
【数3】
このように、信号コイル部をN個並列に接続した場合にも、SN比が√N倍に向上する。
【0074】
また、上記第1~第3実施形態では、複数の磁気センサ部10(210、310)の各々の励磁コイル部12は、直列に接続されており、共通の駆動回路部20からの交流電流が流される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の磁気センサ部の各々の励磁コイル部に対して、別個の駆動回路部からの交流電流が流されるようにしてもよい。また、共通の駆動回路部からの交流電流が入力される場合に、励磁コイル部を互いに並列に接続するようにしてもよい。
【0075】
また、上記第1~第3実施形態では、円環形状を有するリングコア11(磁性コア層)に対して、基板40に交差する方向の一方側(Z1方向側)と他方側(Z2方向側)との各々に形成された導体パターンによってリングコア11を巻回する励磁コイル部12と信号コイル部13とを構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、板状(棒状)の磁性コア層に励磁コイル部と信号コイル部とを巻回するように構成してもよい。その場合、励磁コイル部と信号コイル部とを、基板の主表面に沿うように巻回するように構成してもよい。
【0076】
また、上記第1実施形態では、4つの磁気センサ部10(磁気センサ部10a、磁気センサ部10b、磁気センサ部10c、および、磁気センサ部10d)を、2×2の格子状に並べて配置する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、3つ以下、または、5つ以上の複数の磁気センサ部を並べて配置するようにしてもよい。その場合に、縦方向と横方向とに並ぶ個数は、互いに同じ数ではなくてもよい。たとえば、2×3の格子状に並べて合計6つの磁気センサ部を並べて配置するようにしてもよい。
【0077】
また、上記第1実施形態では、複数の磁気センサ部10の各々の励磁コイル部12および信号コイル部13が、共通の基板40に導体パターンとして形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、互いに別個の基板に配置されている複数の磁気センサ部を並べて配置するようにしてもよい。また、上記第2実施形態では、積層されて配置されている複数の磁気センサ部210の各々において、各々が独立した基板40に、リングコア11(磁性コア層)、励磁コイル部12、および、信号コイル部13が配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の磁気センサ部を積層して配置する場合にも、共通の基板に、磁性コア層、励磁コイル部、および、信号コイル部を形成するようにしてもよい。
【0078】
また、上記第2実施形態では、複数の磁気センサ部210の各々は、端子部同士を接続するために階段状に配置をずらしながら積層されるように配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の磁気センサ部同士をずらさずに積層するように配置してもよい。たとえば、複数の磁気センサ部の各々の信号コイル部同士を並列に接続する場合には、複数の磁気センサ部の各々において、端子部の部分をスルーホールなどの構造にすることによって、複数の磁気センサ部同士をずらさずに積層するように配置してもよい。
【0079】
また、上記第1実施形態では、複数の磁気センサ部10を基板40の主表面40aに沿うように並べて配置し、上記第2実施形態では、複数の磁気センサ部210を積層して配置する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の磁気センサ部を基板の主表面に沿って並べて配置することと、積層することとを組み合わせて配置するようにしてもよい。
【0080】
また、上記第1~第3実施形態では、複数の磁気センサ部10(210、310)の各々の励磁コイル部12同士は互いに共通の巻き数を有し、信号コイル部13同士も互いに共通の巻き数を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の磁気センサ部の各々の励磁コイル部同士、および、信号コイル部同士の少なくとも一方を、互いに巻き数が異なるように構成してもよい。たとえば、信号コイル部の巻き数が異なる場合には、複数の磁気センサ部の各々において磁気検出の感度が異なる。したがって、感度が互いに異なる磁気センサ部を選択して組み合わせることによって、磁気検出装置としての検出感度を細かく調整することができる。
【0081】
また、上記第1~第3実施形態では、複数の磁気センサ部10(210、310)の各々は、1つの検出方向を有する1軸のセンサである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数の磁気センサ部の各々は、互いに直交する2つの検出方向を有する2軸のセンサであってもよい。たとえば、リングコアの周方向に沿って信号コイル部を4つの部分に4分割するとともに、互いに向かい合う一対の部分同士を組み合わせることによって、複数の磁気センサ部の各々を互いに直交する2つの検出方向を有するように構成してもよい。その場合には、2系統の検出信号が出力されるため、複数の磁気センサ部の各々において、2系統の検出信号の一方を出力する信号コイル部同士と、他方を出力する信号コイル部同士が、互いに接続される。
【0082】
また、上記第1~第3実施形態では、駆動回路部20および検出回路部30は、共通のハイブリッドICに構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、駆動回路部と検出回路部とを、互いに別個のハードウェアに構成するようにしてもよい。また、駆動回路部と検出回路部とを、ハイブリッドIC以外の制御回路などにより構成してもよい。
【0083】
また、上記第1~第3実施形態では、複数の磁気センサ部210の各々の端子部T1~端子部T4に対して、導線(リード線)をはんだ付けすることにより、励磁コイル部12および信号コイル部13が基板40(250)の導体パターンに電気的に接続されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、基板に設けられたコネクタなどの接続部に対して複数の磁気センサ部の各々を接続することにより、励磁コイル部および信号コイル部が基板の導体パターンに電気的に接続されることによって励磁コイル部同士および信号コイル部同士が互いに接続されるようにしてもよい。これにより、複数の磁気センサ部の個数を容易に変更することができるので、磁気を検出する感度を容易に調整することができる。また、基板を用いずに、複数の磁気センサ部の励磁コイル部同士および信号コイル部同士を互いに接続するようにしてもよい。
【0084】
また、上記第4実施形態では、複数の磁気センサ部410の各々において、リングコア11(磁性コア層)の検出方向の両側の各々に台形状の薄膜である磁気収束部460を2つずつ配置する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁気収束部は、複数の磁気センサ部の各々に対して、検出方向の一方側に1つずつ配置するようにしてもよい。また、複数の磁気センサ部に対して、共通の磁気収束部を配置するようにしてもよい。たとえば、検出方向に沿って複数の磁性コア層が感度軸を共通とするように並んで配置されている場合には、並んで配置されている複数の磁性コア層に対して、検出方向の一方側と他方側との各々に、1つずつの磁気収束部を共通して配置するようにしてもよい。また、磁気収束部の形状は、台形でなくともよい。すなわち、磁性コア層から離間している側の辺の長さが、磁性コア層に対して近接している側の辺の長さより長ければ、磁気収束部の形状は台形に限られない。たとえば、磁気収束部を、図9に示す変形例による磁気収束部560のように、五角形の薄膜として形成してもよい。
【0085】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0086】
(項目1)
基板に導体パターンとして形成された励磁コイル部および信号コイル部と、前記基板に配置されている磁性コア層とを各々が個別に含む複数の磁気センサ部と、
前記励磁コイル部に交流電流を出力する駆動回路部と、
前記信号コイル部からの検出信号を取得する検出回路部と、を備え、
前記複数の磁気センサ部の各々の前記信号コイル部は、互いに接続されている、磁気検出装置。
【0087】
(項目2)
前記複数の磁気センサ部の各々の前記励磁コイル部は、互いに接続されており、共通の前記駆動回路部から出力された交流電流が流れるように構成されている、項目1に記載の磁気検出装置。
【0088】
(項目3)
前記磁性コア層は、円環形状を有し、前記基板に形成された層として前記基板の主表面に沿うように配置されており、
前記励磁コイル部と前記信号コイル部とは、前記基板において、前記磁性コア層を挟むように前記基板の主表面に交差する方向の一方側に形成された前記導体パターンと、他方側に形成された前記導体パターンとを互いに接続することによって、前記磁性コア層の周りを巻回するように配置されている、項目1または2に記載の磁気検出装置。
【0089】
(項目4)
前記励磁コイル部と前記信号コイル部とは、円環形状の前記磁性コア層の周方向に沿って、前記磁性コア層の周りを交互に巻回するように配置されており、
前記信号コイル部は、前記磁性コア層の半周分ずつ巻回される向きを入れ替えながら配置されており、
前記複数の磁気センサ部は、前記磁性コア層において前記信号コイル部の巻回される向きが入れ替えられる位置の方向である検出方向が、互いに共通の方向となるように向きを揃えて配置されている、項目3に記載の磁気検出装置。
【0090】
(項目5)
前記複数の磁気センサ部の各々は、前記基板の主表面に沿うように並べて配置されている、項目1~4のいずれか1項に記載の磁気検出装置。
【0091】
(項目6)
前記複数の磁気センサ部の各々の前記励磁コイル部および前記信号コイル部は、共通の前記基板に前記導体パターンとして形成されている、項目5に記載の磁気検出装置。
【0092】
(項目7)
前記複数の磁気センサ部の各々は、前記基板の主表面に交差する方向に沿って、前記励磁コイル部および前記信号コイル部と前記磁性コア層とを含む前記基板が積層されるように配置されている、項目1~6のいずれか1項に記載の磁気検出装置。
【0093】
(項目8)
前記複数の磁気センサ部は、第1磁気センサ部および第2磁気センサ部を含み、
前記第1磁気センサ部および前記第2磁気センサ部は、前記励磁コイル部同士が互いに極性が等しい順方向に直列に接続されているとともに、前記信号コイル部同士が互いに極性が異なる逆方向に直列に接続されている、項目1~7のいずれか1項に記載の磁気検出装置。
【0094】
(項目9)
前記複数の磁気センサ部の各々の前記励磁コイル部は、互いに共通の巻き数を有し、
前記複数の磁気センサ部の各々の前記信号コイル部は、互いに共通の巻き数を有する、項目1~8のいずれか1項に記載の磁気検出装置。
【0095】
(項目10)
前記複数の磁気センサ部における前記磁性コア層の検出方向側に配置され、前記磁性コア層に対して磁束を収束する磁気収束部をさらに備える、項目1~9のいずれか1項に記載の磁気検出装置。
【符号の説明】
【0096】
10、10a、10b、10c、10d、210、210a、210b、210c、310、410、410a、410b、410c、410d 磁気センサ部
11 リングコア(磁性コア層)
12 励磁コイル部
13 信号コイル部
20 駆動回路部
30 検出回路部
40 基板
40a 主表面
100、200、300、400 磁気検出装置
310a 磁気センサ部(第1磁気センサ部)
310b 磁気センサ部(第2磁気センサ部)
460 磁気収束部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9