(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118972
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】水素活用システム
(51)【国際特許分類】
F17D 1/04 20060101AFI20240826BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20240826BHJP
C01B 3/50 20060101ALI20240826BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
F17D1/04
H01M8/0606
C01B3/50
B01D53/22
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025599
(22)【出願日】2023-02-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】516003609
【氏名又は名称】株式会社ハイドロネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100116296
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幹生
(72)【発明者】
【氏名】永井 正章
(72)【発明者】
【氏名】森迫 和宣
【テーマコード(参考)】
3J071
4D006
4G140
5H127
【Fターム(参考)】
3J071AA02
3J071CC11
3J071CC24
3J071DD21
3J071EE03
3J071FF03
4D006GA41
4D006KA15
4D006KA31
4D006KB30
4D006PA01
4D006PB18
4D006PB66
4D006PB68
4D006PC80
4G140FA04
4G140FB05
4G140FC01
4G140FE01
5H127AC02
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA17
5H127BB02
(57)【要約】
【課題】都市ガスパイプラインに混入された水素を分離する水素分離膜の加熱に使用されるエネルギー供給を合理的な手法で行うことができ、ガスの濃度の偏りや減圧、下流側の水素量の低下を防止することができ、安全性に優れ水素脆化の発生を未然に防止することが可能な水素活用システムを提供する。
【解決手段】混合ガスは、水素分離膜11によって水素が分離され、水素分離膜11は、ガス式加熱器12と電気式加熱器13のいずれかによって加熱される。ガス式加熱器12は、都市ガスパイプライン1から供給される混合ガスを燃焼させて加熱し、電気式加熱器13は、混合ガスから分離された水素の一部を用いて発電する燃料電池16による電力が蓄電されたバッテリー14から得られる電力によって加熱する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
都市ガスパイプラインに対して水素が供給され、メタンガスと水素とを含む混合ガスから水素精製装置において水素が分離されて、エネルギー生成に活用される水素活用システムであって、
前記水素精製装置は、前記混合ガスから水素を分離する水素分離膜と、水素分離膜を加熱する加熱手段とを備え、
前記加熱手段は、前記混合ガスを燃焼させて加熱するガス式加熱器と、前記混合ガスから分離された水素の一部を用いて発電する燃料電池による電力が蓄電されたバッテリーから得られる電力によって加熱する電気式加熱器とを備え、
前記加熱手段として前記ガス式加熱器と前記電気式加熱器のいずれが用いられるかは、前記混合ガスを前記ガス式加熱器に供給可能か否かによって決定され、前記ガス式加熱器に混合ガスを供給可能である場合には、前記混合ガスを燃焼させて前記ガス式加熱器によって水素分離膜を加熱し、前記ガス式加熱器に混合ガスを供給可能でない場合には、バッテリー電力を用いて前記電気式加熱器により水素分離膜を加熱することを特徴とする水素活用システム。
【請求項2】
前記水素精製装置から本流の前記都市ガスパイプラインへの戻り流路に取り付けられた混合装置および昇圧機を備えていることを特徴とする請求項1記載の水素活用システム。
【請求項3】
前記都市ガスパイプラインから前記水素精製装置への送り流路に取り付けられた混合装置を備えていることを特徴とする請求項1記載の水素活用システム。
【請求項4】
前記都市ガスパイプラインへの水素の供給路と、前記都市ガスパイプラインから前記水素精製装置への送り流路とに取り付けられた水素量測定器を備えていることを特徴とする請求項1記載の水素活用システム。
【請求項5】
前記都市ガスパイプラインへの水素の供給路と、前記都市ガスパイプラインから前記水素精製装置への送り流路とに取り付けられた水素検知器を備えるとともに、前記都市ガスパイプラインから前記水素精製装置への送り流路に取り付けられたバルブを備え、前記水素検知器によって水素の漏洩が検知されたときは、前記バルブが閉じられて水素供給が自動的に停止されることを特徴とする請求項1記載の水素活用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ガスパイプラインに混入された水素を分離して活用する水素活用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、脱炭素社会の実現が求められており、水素を用いたエネルギー生成システムに期待が集まっている。特許文献1、特許文献2には、既存の都市ガスパイプラインを利用して、燃料電池等の水素燃料設備の利用を可能とすることを目的とする技術の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-243100号公報
【特許文献2】特開2008-248934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの技術においては、混合ガスから水素を分離する際に、水素分離膜の性能を高めて高濃度の水素を得ることが必要であり、これを実現するために、水素分離膜の温度環境を最適化することが必要となる。水素ガスと他の気体との混合ガスから、水素分離膜を用いて水素を効率的に分離するためには、水素分離膜の温度を、300℃から350℃程度の高温状態にすることが必要であり、このための加熱手段が不可欠である。また、その際の加熱に使用されるエネルギーを極力少なくすることが、合理的なエネルギー生成システムに求められる。
【0005】
メタンと水素との混合ガスを水素精製装置に供給するにあたって、水素比率が不安定であると、水素精製装置の性能を十分に発揮することができない。また、水素精製装置から本流の都市ガスパイプラインに混合ガスを戻す場合に、ガスの濃度の偏りと減圧が生じる可能性もある。さらに、都市ガスパイプラインの下流側の水素量は必然的に低下する。
【0006】
都市ガスパイプラインは、極めて長距離区間に亘って設置されるものであるため、上記のような理由により、ガスの濃度の偏りや減圧、下流側の水素量の低下という事態が発生すると、既存の都市ガスパイプラインを利用して、燃料電池等の水素燃料設備の利用を可能とするという本来の目的を達成することができない。また、水素が配管から漏れると、安全性に問題を生じる。
【0007】
また、ガスの濃度の偏りが発生することにより、局所的に水素濃度が高まると、その部分での水素脆化を無視できなくなる。長距離区間に亘って設置された都市ガスパイプラインにおいて、水素脆化が発生した箇所を検知して補修するためには、多くの手間と費用がかかるため、水素脆化の発生を未然に防止することが求められる。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、既存の都市ガスパイプラインに混入された水素を分離するにあたって、水素分離膜の加熱に使用されるエネルギー供給を合理的な手法で行うことができ、ガスの濃度の偏りや減圧、下流側の水素量の低下という事態の発生を防止することができ、安全性に優れ水素脆化の発生を未然に防止することが可能な水素活用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、本発明の水素活用システムは、都市ガスパイプラインに対して水素が供給され、メタンガスと水素とを含む混合ガスから水素精製装置において水素が分離されて、エネルギー生成に活用される水素活用システムであって、前記水素精製装置は、前記混合ガスから水素を分離する水素分離膜と、水素分離膜を加熱する加熱手段とを備え、前記加熱手段は、前記混合ガスを燃焼させて加熱するガス式加熱器と、前記混合ガスから分離された水素の一部を用いて発電する燃料電池による電力が蓄電されたバッテリーから得られる電力によって加熱する電気式加熱器とを備え、前記加熱手段として前記ガス式加熱器と前記電気式加熱器のいずれが用いられるかは、前記混合ガスを前記ガス式加熱器に供給可能か否かによって決定され、前記ガス式加熱器に混合ガスを供給可能である場合には、前記混合ガスを燃焼させて前記ガス式加熱器によって水素分離膜を加熱し、前記ガス式加熱器に混合ガスを供給可能でない場合には、バッテリー電力を用いて前記電気式加熱器により水素分離膜を加熱することを特徴とする。
【0010】
水素分離膜を用いて水素を効率的に分離するためには、水素分離膜の温度を、300℃から350℃程度の高温状態にすることが必要であり、このための加熱手段が不可欠である。本発明においては、この加熱手段として、混合ガスを燃焼させて加熱するガス式加熱器と、混合ガスから分離された水素の一部を用いて発電する燃料電池による電力が蓄電されたバッテリーから得られる電力によって加熱する電気式加熱器とを備えている。
【0011】
ガス式加熱器と電気式加熱器のいずれも、このシステム内を流れる混合ガスから得られるエネルギーを用いて加熱するものであるため、外部電源を使用する必要が無く、使用されるエネルギーが当該システムで生成されるエネルギーで完結しており、自己完結型の水素精製装置ということができる。
【0012】
さらに、混合ガスの量は変動することがあり、混合ガスの量が不足しているときに、ガス式加熱器にのみに依存していると、水素分離膜の加熱を自己完結型で行うことができなくなるが、予めバッテリーに充電されている電力を用いる電気式加熱器を併用することにより、自己完結型であっても、混合ガスの量の変動の影響を受けずに、水素分離膜の加熱を実行することができる。このように、加熱手段をガス式加熱器と電気式加熱器とで切り替える方式を採用していることにより、効率的な水素活用が可能となる。
【0013】
本発明の水素活用システムにおいては、前記水素精製装置から本流の前記都市ガスパイプラインへの戻り流路に取り付けられた混合装置および昇圧機を備えている構成とすることができる。
【0014】
水素精製装置から本流の都市ガスパイプラインに混合ガスを戻す場合に、ガスの濃度の偏りと減圧が生じる可能性が生じるが、水素精製装置から本流の都市ガスパイプラインへの戻り流路に取り付けられた混合装置および昇圧機を備えていることにより、都市ガスパイプラインにおけるガス濃度の偏りと減圧を防止することができる。また、ガスの濃度の偏りの発生に起因する局所的な水素濃度の高まりによる水素脆化の発生を未然に防止することができる。
【0015】
本発明の水素活用システムにおいては、前記都市ガスパイプラインから前記水素精製装置への送り流路に取り付けられた混合装置を備えている構成とすることができる。
【0016】
メタンと水素との混合ガスを水素精製装置に供給するにあたって、水素比率が不安定であると、水素精製装置の性能を十分に発揮することができないが、都市ガスパイプラインから水素精製装置への送り流路に取り付けられた混合装置を備えていることにより、水素精製装置に送られる混合ガスにおける水素比率を安定化することができる。また、ガスの濃度の偏りの発生に起因する局所的な水素濃度の高まりによる水素脆化の発生を未然に防止することができる。
【0017】
本発明の水素活用システムにおいては、前記都市ガスパイプラインへの水素の供給路と、前記都市ガスパイプラインから前記水素精製装置への送り流路とに取り付けられた水素量測定器を備えている構成とすることができる。
【0018】
都市ガスパイプラインの下流側の水素量は必然的に低下するが、都市ガスパイプラインへの水素の供給路と、都市ガスパイプラインから水素精製装置への送り流路とに取り付けられた水素量測定器を備えていることにより、都市ガスパイプラインを流れる水素量を測定し、上流の水素量を常時変更することによって、都市ガスパイプライン全体の水素量が最適となるよう制御することができる。そのため、都市ガスパイプラインの下流の水素量の低下を防止することができる。
【0019】
本発明の水素活用システムにおいては、前記都市ガスパイプラインへの水素の供給路と、前記都市ガスパイプラインから前記水素精製装置への送り流路とに取り付けられた水素検知器を備えるとともに、前記都市ガスパイプラインから前記水素精製装置への送り流路に取り付けられたバルブを備え、前記水素検知器によって水素の漏洩が検知されたときは、前記バルブが閉じられて水素供給が自動的に停止される構成とすることができる。
【0020】
このような水素漏洩の検知と、水素供給の自動停止機能を有することにより、水素の漏洩を防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、既存の都市ガスパイプラインに混入された水素を分離するにあたって、水素分離膜の加熱に使用されるエネルギー供給を合理的な手法で行うことができ、ガスの濃度の偏りや減圧、下流側の水素量の低下という事態の発生を防止することができ、安全性に優れ水素脆化の発生を未然に防止することが可能な水素活用システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る水素活用システムの基本構成を示す図である。
【
図2】水素精製装置の構造と機能について説明する図である。
【
図3】ガス濃度の偏りと減圧の発生を防止するための構成を示す図である。
【
図4】水素精製装置に供給される混合ガスの水素比率の安定化を図るための構成を示す図である。
【
図5】都市ガスパイプラインの下流の水素量の低下を防止するための構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の水素活用システムを、その実施形態に基づいて説明する。
本発明は、都市ガスパイプラインに対して水素が供給され、メタンガスと水素とを含む混合ガスから、水素精製装置において水素が分離されて、エネルギー生成に活用される水素活用システムであって、
図1に、本発明の実施形態に係る水素活用システムの基本構成を示す。
【0024】
既存の都市ガスパイプライン1に対して、都市ガス製造所2からメタンガスが供給されるとともに、水素3が供給されている。これにより、都市ガスパイプライン1には、メタンガスと水素とを含む混合ガスが流れる。都市ガスパイプライン1には、ガスホルダー4が取り付けられている。
【0025】
都市ガスパイプライン1に流れる、メタンガスと水素とを含む混合ガスの一部は、分岐して水素精製装置5に流入する。水素精製装置5では、水素分離膜により水素が分離されるが、水素精製装置5の構造と機能については、後に詳述する。
【0026】
水素精製装置5は、都市ガスパイプライン1のいくつかの分岐点から分岐してそれぞれ設けられており、それぞれの水素精製装置5によって分離された水素は、水素ステーション6,工場7、一般家庭8,燃料電池車9に送られ、それぞれの場所に設置された燃料電池等の水素燃料設備で使用される。水素ステーション6には中圧導管で供給され、0.3Mpa以上1.0Mpa未満である。工場7には中圧導管で供給され、0.1Mpa以上0.3Mpa未満である。一般家庭8,燃料電池車9には、低圧導管で供給され、0.1Mpa未満である。ここに示した水素の輸送先とその条件は一例であり、これに限定されない。
【0027】
図2に基づいて、水素精製装置5の構造と機能について説明する。
原料管である都市ガスパイプライン1から原料供給器10を介して供給される、メタンガスと水素とを含む混合ガスは、水素分離膜11によって水素が分離される。水素分離膜11は、ガス式加熱器12と電気式加熱器13のいずれかによって加熱される。ガス式加熱器12は、都市ガスパイプライン1から供給される混合ガスを燃焼させて加熱するものであり、電気式加熱器13は、バッテリー14によるバッテリー電力によって加熱するものである。
【0028】
水素分離膜11により分離された水素量は、スマートメータ15によって計測され管理され、水素を使用する各装置や各設備に分離された水素が送られる。水素分離膜11により分離された水素の一部は燃料電池16に送られ、この水素と空気中の酸素により発電して電力が得られる。この電力は、必要な場合には使用され、その時点で必要でない場合には、バッテリー充電に用いられる。水素精製装置5全体を制御する制御器17にも、この電力が使用される。
【0029】
ガス式加熱器12と電気式加熱器13のいずれを水素分離膜11の加熱に用いるかは、メタンと水素の混合ガスをガス式加熱器12に供給可能か否かによって決定される。ガス式加熱器12に混合ガスを供給可能である場合には、メタンと水素の混合ガスを燃焼させて水素分離膜11を加熱する。ガス式加熱器12に混合ガスを供給可能でない場合には、電気式加熱器13により水素分離膜11を加熱する。このように、水素分離膜11の加熱手段として、ガス式加熱器12と電気式加熱器13のいずれを選択するかは、メタンと水素の混合ガスの供給の状況によって判断されており、これらの制御は制御器17によってなされる。
【0030】
混合ガスの量は変動することがあり、混合ガスの量が不足しているときに、ガス式加熱器12にのみに依存していると、水素分離膜11の加熱を外部エネルギー源に依存しない自己完結型で行うことができなくなるが、予めバッテリー14に充電されている電力を用いる電気式加熱器13を併用することにより、自己完結型であっても、混合ガスの量の変動の影響を受けずに、水素分離膜11の加熱を実行することができる。また、水素量が過剰となったときは、燃料電池16を介してバッテリー14に充電しておけばよく、合理的な運用が可能となる。このように、加熱手段をガス式加熱器12と電気式加熱器13とで切り替える方式を採用していることにより、効率的な水素活用が可能となる。
【0031】
制御器17は、ガス式加熱器12または電気式加熱器13を動作させることによって水素分離膜11を昇温させ、供給開始条件を満たすと、原料供給器10を動作させて、水素分離膜11に原料となる混合ガスを送る。分離された水素を用いて燃料電池16によりバッテリー14が充電され、この電力が水素分離膜11の加熱手段として用いられるとともに、制御器17の動作に必要な電力も、燃料電池16により供給される。そのため、これらの電源として、外部電源を使用する必要が無く、使用されるエネルギーは当該システムで生成されるエネルギーで完結しており、自己完結型の水素精製装置ということができる。
【0032】
図3に、ガス濃度の偏りと減圧の発生を防止するための構成を示す。
図3において、水素精製装置5から本流の都市ガスパイプライン1への戻り流路に、混合装置および昇圧機18が取り付けられている。これにより、都市ガスパイプライン1におけるガス濃度の偏りと減圧を防止することができる。
【0033】
図4に、水素精製装置5に供給される混合ガスの水素比率の安定化を図るための構成を示す。
図4において、都市ガスパイプライン1から水素精製装置5への送り流路には、混合装置19が取り付けられている。これにより、水素精製装置5に送られる混合ガスにおける水素比率を安定化することができる。
【0034】
図5に、都市ガスパイプライン1の下流の水素量の低下を防止するための構成を示す。
図5において、都市ガスパイプライン1への水素の供給路と、都市ガスパイプライン1から水素精製装置5への送り流路には、水素量測定器20が取り付けられている。水素量測定器20は、都市ガスパイプライン1を流れる水素量を測定し、上流の水素量を常時変更することにより、都市ガスパイプライン1全体の水素量が最適となるよう制御する。これにより、都市ガスパイプライン1の下流の水素量の低下を防止することができる。
【0035】
図6に、ガス漏洩防止のための構成を示す。
図6において、都市ガスパイプライン1への水素の供給路と、都市ガスパイプライン1から水素精製装置5への送り流路には、水素検知器21が取り付けられており、都市ガスパイプライン1から水素精製装置5への送り流路には、バルブ22が取り付けられている。水素検知器21によって水素の漏洩が検知されたときは、バルブ22が閉じられて水素供給が自動的に停止される。これにより、水素の漏洩を防止できる。なお、
図1から
図6に示した構成を適宜組み合わせて、本発明の水素活用システムを構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、既存の都市ガスパイプラインに混入された水素を分離するにあたって、水素分離膜の加熱に使用されるエネルギー供給を合理的な手法で行うことができ、ガスの濃度の偏りや減圧、下流側の水素量の低下という事態の発生を防止することができ、安全性に優れ水素脆化の発生を未然に防止することが可能な水素活用システムとして、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 都市ガスパイプライン
2 都市ガス製造所
3 水素
4 ガスホルダー
5 水素精製装置
6 水素ステーション
7 工場
8 一般家庭
9 燃料電池車
10 原料供給器
11 水素分離膜
12 ガス式加熱器
13 電気式加熱器
14 バッテリー
15 スマートメータ
16 燃料電池
17 制御器
18 混合装置および昇圧機
19 混合装置
20 水素量測定器
21 水素検知器
22 バルブ
【手続補正書】
【提出日】2023-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
都市ガスパイプラインに対して水素が供給され、メタンガスと水素とを含む混合ガスから水素精製装置において水素が分離されて、エネルギー生成に活用される水素活用システムであって、
前記水素精製装置は、前記混合ガスから水素を分離する水素分離膜と、水素分離膜を加熱する加熱手段とを備え、
前記加熱手段は、前記混合ガスを燃焼させて加熱するガス式加熱器と、前記混合ガスから分離された水素の一部を用いて発電する燃料電池による電力が蓄電されたバッテリーから得られる電力によって加熱する電気式加熱器とを備え、
前記加熱手段として前記ガス式加熱器と前記電気式加熱器のいずれが用いられるかは、前記混合ガスを前記ガス式加熱器に供給可能か否かによって決定され、前記ガス式加熱器に混合ガスを供給可能である場合には、前記混合ガスを燃焼させて前記ガス式加熱器によって水素分離膜を加熱し、前記ガス式加熱器に混合ガスを供給可能でない場合には、バッテリー電力を用いて前記電気式加熱器により水素分離膜を加熱し、
前記水素精製装置から本流の前記都市ガスパイプラインへの戻り流路に取り付けられた混合装置および昇圧機を備えていることを特徴とする水素活用システム。
【請求項2】
前記都市ガスパイプラインから前記水素精製装置への送り流路に取り付けられた混合装置を備えていることを特徴とする請求項1記載の水素活用システム。
【請求項3】
前記都市ガスパイプラインへの水素の供給路と、前記都市ガスパイプラインから前記水素精製装置への送り流路とに取り付けられた水素量測定器を備えていることを特徴とする請求項1記載の水素活用システム。
【請求項4】
前記都市ガスパイプラインへの水素の供給路と、前記都市ガスパイプラインから前記水素精製装置への送り流路とに取り付けられた水素検知器を備えるとともに、前記都市ガスパイプラインから前記水素精製装置への送り流路に取り付けられたバルブを備え、前記水素検知器によって水素の漏洩が検知されたときは、前記バルブが閉じられて水素供給が自動的に停止されることを特徴とする請求項1記載の水素活用システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
水素精製装置5は、都市ガスパイプライン1のいくつかの分岐点から分岐してそれぞれ設けられており、それぞれの水素精製装置5によって分離された水素は、水素ステーション6,工場7、一般家庭8,燃料電池車9に送られ、それぞれの場所に設置された燃料電池等の水素燃料設備で使用される。水素ステーション6には中圧導管で供給され、0.3MPa以上1.0MPa未満である。工場7には中圧導管で供給され、0.1MPa以上0.3MPa未満である。一般家庭8,燃料電池車9には、低圧導管で供給され、0.1MPa未満である。ここに示した水素の輸送先とその条件は一例であり、これに限定されない。