IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミマキエンジニアリングの特許一覧

特開2024-118973搬送装置、印刷装置、及び、搬送方法
<>
  • 特開-搬送装置、印刷装置、及び、搬送方法 図1
  • 特開-搬送装置、印刷装置、及び、搬送方法 図2
  • 特開-搬送装置、印刷装置、及び、搬送方法 図3
  • 特開-搬送装置、印刷装置、及び、搬送方法 図4
  • 特開-搬送装置、印刷装置、及び、搬送方法 図5
  • 特開-搬送装置、印刷装置、及び、搬送方法 図6
  • 特開-搬送装置、印刷装置、及び、搬送方法 図7
  • 特開-搬送装置、印刷装置、及び、搬送方法 図8
  • 特開-搬送装置、印刷装置、及び、搬送方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118973
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】搬送装置、印刷装置、及び、搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/182 20060101AFI20240826BHJP
   B65H 16/06 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B65H23/182
B65H16/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025601
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】原山 隆太
(72)【発明者】
【氏名】竹花 宗一郎
【テーマコード(参考)】
3F052
3F105
【Fターム(参考)】
3F052AA01
3F052AB04
3F052BA14
3F105AA01
3F105AB03
3F105BA04
3F105BA18
3F105CA02
3F105CB01
3F105DA08
3F105DB11
3F105DC10
(57)【要約】
【課題】ロール体から媒体を適切に巻き解いて搬送する。
【解決手段】回転機構50は、媒体がロール状に巻かれたロール体をロール体の中心軸が水平になるように支持し、中心軸を中心にしてロール体を回転させる。制御部10は、回転機構50を制御して、媒体がロール体から巻き解かれる方向にロール体を回転させる。搬送機構40は、ロール体から巻き解かれた媒体を搬送経路の下流に向けて搬送する。制御部10は、ロール体から巻き解かれた媒体が自重で弛んだ状態を維持するように回転機構50を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体がロール状に巻かれたロール体を前記ロール体の中心軸が水平になるように支持し、前記中心軸を中心にして前記ロール体を回転させる回転機構と、
前記回転機構を制御して、前記媒体が前記ロール体から巻き解かれる方向に前記ロール体を回転させる制御部と、
前記ロール体から巻き解かれた前記媒体を搬送経路の下流に向けて搬送する搬送機構と、を備え、
前記制御部は、前記ロール体から巻き解かれた前記媒体が自重で弛んだ状態を維持するように前記回転機構を制御する、
搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記搬送機構による前記媒体の搬送中に、前記媒体が前記ロール体から巻き解かれる方向に前記ロール体を回転させる、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
自重で弛んだ前記媒体の弛み量を測定する測定部を備え、
前記制御部は、前記測定部により測定された前記弛み量が基準量よりも少ない場合、前記媒体が前記ロール体から巻き解かれる方向に前記ロール体を回転させる、
請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記媒体は、転写用のインクを受け止める受容層と、前記受容層とフィルム層とを剥離可能に接合する剥離層と、前記剥離層を介して前記受容層を支持する前記フィルム層とを備える転写用シートである、
請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の搬送装置と、
前記搬送装置により搬送された前記媒体にインクを吐出する吐出ヘッドと、を備える、
印刷装置。
【請求項6】
媒体がロール状に巻かれたロール体を前記ロール体の中心軸が水平になるように支持し、
前記媒体が前記ロール体から巻き解かれる方向に前記中心軸を中心にして前記ロール体を回転させ、
前記ロール体から巻き解かれた前記媒体を搬送経路の下流に向けて搬送し、
前記ロール体から巻き解かれた前記媒体が自重で弛んだ状態を維持するように前記ロール体を回転させる、
搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送装置、印刷装置、及び、搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、媒体がロール状に巻かれたロール体から媒体を引き出し、引き出した媒体に対して処理部が各種の処理を施す処理装置が知られている。例えば、印刷媒体がロール状に巻かれたロール体から印刷媒体を引き出し、引き出した印刷媒体に対して印刷部が画像を印刷する印刷装置が知られている。このような処理装置には、ロール体から媒体を引き出し、引き出した媒体を搬送ローラにより処理部まで搬送する搬送装置が組み込まれていることが一般的である。
【0003】
ここで、ロール体が歪んでいたり、媒体の使用によりロール体の直径が変化したりすると、媒体におけるロール体と搬送ローラとの間の部分にかかるテンションが変化することがある。この部分のテンションが変化すると、搬送速度のばらつき、スキュー、プラテン上における媒体の浮き等の不具合が発生し、媒体に対して適切な処理を実行できない可能性がある。このような不具合の発生を抑制するため、媒体の巻き解き方法、媒体の搬送方法等を工夫することが好適である。例えば、特許文献1には、搬送経路上における上流のローラと搬送経路上における下流のローラとを用いて記録媒体を搬送するときに、記録媒体を弛ませる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-105436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、記録媒体における上流のローラと下流のローラとの間の部分を弛ませる技術であり、記録媒体におけるロール体と上流のローラとの間の部分を弛ませる技術ではない。このため、特許文献1に記載された技術では、媒体におけるロール体と搬送ローラとの間の部分にかかるテンションの変化を抑制することが困難であり、上述した不具合の発生を抑制することが困難である。このため、ロール体から媒体を適切に巻き解いて搬送する技術が望まれている。
【0006】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ロール体から媒体を適切に巻き解いて搬送する搬送装置、印刷装置、及び、搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の観点に係る搬送装置は、
媒体がロール状に巻かれたロール体を前記ロール体の中心軸が水平になるように支持し、前記中心軸を中心にして前記ロール体を回転させる回転機構と、
前記回転機構を制御して、前記媒体が前記ロール体から巻き解かれる方向に前記ロール体を回転させる制御部と、
前記ロール体から巻き解かれた前記媒体を搬送経路の下流に向けて搬送する搬送機構と、を備え、
前記制御部は、前記ロール体から巻き解かれた前記媒体が自重で弛んだ状態を維持するように前記回転機構を制御する。
【0008】
前記制御部は、前記搬送機構による前記媒体の搬送中に、前記媒体が前記ロール体から巻き解かれる方向に前記ロール体を回転させてもよい。
【0009】
自重で弛んだ前記媒体の弛み量を測定する測定部を備え、
前記制御部は、前記測定部により測定された前記弛み量が基準量よりも少ない場合、前記媒体が前記ロール体から巻き解かれる方向に前記ロール体を回転させてもよい。
【0010】
前記媒体は、転写用のインクを受け止める受容層と、前記受容層とフィルム層とを剥離可能に接合する剥離層と、前記剥離層を介して前記受容層を支持する前記フィルム層とを備える転写用シートであってもよい。
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の第2の観点に係る印刷装置は、
前記搬送装置と、
前記搬送装置により搬送された前記媒体にインクを吐出する吐出ヘッドと、を備える。
【0012】
上記目的を達成するために、本開示の第3の観点に係る搬送方法は、
媒体がロール状に巻かれたロール体を前記ロール体の中心軸が水平になるように支持し、
前記媒体が前記ロール体から巻き解かれる方向に前記中心軸を中心にして前記ロール体を回転させ、
前記ロール体から巻き解かれた前記媒体を搬送経路の下流に向けて搬送し、
前記ロール体から巻き解かれた前記媒体が自重で弛んだ状態を維持するように前記ロール体を回転させる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、ロール体から媒体を適切に巻き解いて搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1に係る印刷システムの構成図
図2】転写印刷の説明図
図3】実施の形態1に係る印刷装置の構成図
図4】実施の形態1に係る印刷装置の外観図
図5】実施の形態1に係る印刷装置の側面図
図6】実施の形態1に係る搬送装置の動作の第1の説明図
図7】実施の形態1に係る搬送装置の動作の第2の説明図
図8】実施の形態1に係る搬送装置が実行する回転制御処理を示すフローチャート
図9】実施の形態2に係る搬送装置の動作の説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
まず、図1を参照して、実施の形態1に係る印刷システム1000の構成について説明する。印刷システム1000は、転写用シートを用いた転写印刷により印刷対象の媒体である被転写媒体上に画像を形成するシステムである。転写印刷は、被転写媒体に直接画像を印刷するのではなく、転写用シートを用いた転写により被転写媒体に画像を付与する印刷方法である。転写印刷では、転写用シートに転写用のインクで予め画像が印刷され、被転写媒体に重ねられた転写用シートに熱と圧力とが加えられて、被転写媒体に画像が貼り付けられる。
【0016】
転写用シートは、被転写媒体に貼り付けられる画像が転写用のインクで印刷されるシート状の媒体である。本実施の形態では、画像の印刷前は、転写用シートはロール状に巻かれた状態であり、画像の印刷時に、引き伸ばされた転写用シート上に画像が印刷される。被転写媒体は、印刷対象の媒体であり、転写印刷により最終的に画像が形成される媒体である。被転写媒体は、通常の印刷では直接印刷することが困難な媒体である。被転写媒体は、例えば、ナイロン製衣服を含む衣服、タオル、エナメルバッグ、雨傘等である。本実施の形態では、被転写媒体は、Tシャツである。図1に示すように、印刷システム1000は、印刷装置100と、パウダー塗布装置200と、転写装置300と、制御装置400とを備える。
【0017】
印刷装置100は、制御装置400による制御に従って、転写用シートに転写用のインクで画像を印刷する。例えば、印刷装置100は、制御装置400から画像データを取得し、画像データに基づいて、転写用シート上において画像が印刷される領域である画像印刷領域を特定する。印刷装置100は、転写用シート上における画像印刷領域上に、画像データが示す画像に対応する転写用のカラーインクを吐出する。その後、印刷装置100は、転写用シート上における画像印刷領域上に、転写用の白色インクを吐出する。
【0018】
なお、転写用のカラーインクに転写用の白色インクを重ねる理由は、被転写媒体の生地の色の影響を抑制するためである。以下、適宜、転写用のカラーインクと転写用の白色インクとを総称して、転写用のインクという。転写用のインクとしては、顔料インク、UV(Ultraviolet)インク、溶剤インク等が採用可能である。本実施の形態では、転写用のインクは、顔料インクである。印刷装置100は、転写用シートを搬送する搬送装置110を備える。
【0019】
パウダー塗布装置200は、印刷装置100により画像が印刷された転写用シートにパウダーを塗布する。具体的には、パウダー塗布装置200は、転写用シート上に塗布された白色インクが乾燥する前に、転写用シート上における白色インクが塗布された領域にパウダーを塗布する。このパウダーは、溶融すると接着性を発現する接着性用のパウダーである。パウダー塗布装置200は、例えば、転写用シートの全面にパウダーをまぶし、転写用シート上における白色インクが塗布された領域のみにパウダーを吸着させてもよい。
【0020】
転写装置300は、パウダー塗布装置200によりパウダーが塗布された転写用シートに描かれた画像を被転写媒体に転写する。転写装置300は、転写用シートに描かれた画像を熱転写により被転写媒体に転写する。つまり、転写装置300は、パウダーが塗布された面が被転写媒体と重なるように被転写媒体に重ねられた転写用シートに対して、熱と圧力とを加える。すると、パウダーが溶融して転写用シートと被転写媒体とが接着する。転写用シートと被転写媒体との冷却後に、被転写媒体から転写用シートが引き剥がされると、被転写媒体上に転写用のインクにより描かれた画像が残る。
【0021】
制御装置400は、印刷装置100を制御する装置である。例えば、制御装置400は、転写用シートに描くべき画像を示す画像データを印刷装置100に送信し、印刷装置100に画像の印刷を指示する。制御装置400は、印刷する画像の個数、印刷する画像のサイズ等を指定する情報を印刷装置100に送信してもよい。制御装置400は、印刷装置100と通信するための通信インターフェース(図示せず)を備える。制御装置400は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等である。
【0022】
なお、印刷システム1000では、ロール状の転写用シートが引き伸ばされて再度ロール状に巻き取られる間に、印刷装置100による転写用インクの塗布とパウダー塗布装置200によるパウダーの塗布とが順番に実行される。また、印刷システム1000では、パウダー塗布装置200によりパウダーが塗布された転写用シートが所望の大きさにカットされ、カットされた転写用シートと被転写媒体とに対して転写装置300による熱転写が実施される。
【0023】
印刷装置100とパウダー塗布装置200とは同一の設備内に設置され、印刷装置100と転写装置300とは異なる設備内に設置されてもよい。例えば、印刷装置100とパウダー塗布装置200とは、パウダーが塗布された転写用シートを製造する工場内に設置され、転写装置300は、転写印刷により画像が付与された被転写媒体を製造する工場内に設置されてもよい。なお、印刷装置100とパウダー塗布装置200とは、同期していなくてもよく、互いに通信しなくてもよい。
【0024】
次に、図2を参照して、印刷システム1000が実行する転写印刷について説明する。
【0025】
まず、印刷装置100は、転写用シート500に転写用のインクで画像を印刷する。転写用シート500は、印刷装置100による処理前の転写用シートである。転写用シート500は、フィルム層501と、剥離層502と、受容層503とを備える。
【0026】
フィルム層501は、剥離層502を介して受容層503を支持する層である。フィルム層501は、受容層503の土台となる層である。フィルム層501は、例えば、各種の樹脂により構成される層である。
【0027】
剥離層502は、フィルム層501と受容層503とを剥離可能に接合する層である。剥離層502は、被転写媒体に接着した転写用シート500が被転写媒体から引き剥がされるときに、フィルム層501と受容層503とを分離させるための層である。剥離層502は、例えば、フッ素系の剥離剤又はシリコン系の剥離剤により構成される層である。
【0028】
受容層503は、転写用のインクを受け止める層である。受容層503は、転写用のインクが吸着しやすい素材及び構造により構成されることが好適である。例えば、受容層503は、多孔質の素材により構成されることが好適である。また、受容層503は、例えば、PVA(Poly Vinyl Alcohol)とPVC(Poly Vinyl Cloride)とのうち少なくとも一方を含んで構成されることが好適である。
【0029】
印刷装置100は、転写用シート500における受容層503に転写用のカラーインクで画像を印刷する。その後、印刷装置100は、転写用シート500における転写用のカラーインクで画像が印刷された領域に転写用の白色インクを塗布する。印刷装置100は、転写用シート500に転写用のインクで画像を印刷することにより転写用シート510を生成する。
【0030】
転写用シート510は、フィルム層501と、剥離層502と、受容層503と、インク層504とを備える。インク層504は、転写用のインクを含む層である。インク層504は、受容層503に対して転写用のカラーインクと転写用の白色インクとが順に重ねられることにより、受容層503の表面又は内部に形成される層である。
【0031】
図2では、転写用のカラーインクの層と転写用の白色インクの層とを区別せず、転写用のカラーインクの層と転写用の白色インクの層とをまとめて1つの転写用のインクの層として示している。また、図2では、受容層503とインク層504とが積層された様子を示しているが、受容層503とインク層504とが一体化されていてもよい。
【0032】
パウダー塗布装置200は、転写用シート510におけるインク層504に接着用のパウダーを塗布する。パウダー塗布装置200は、転写用シート510に接着用のパウダーを塗布することにより転写用シート520を生成する。転写用シート520は、フィルム層501と、剥離層502と、受容層503と、インク層504と、パウダー層505とを備える。パウダー層505は、接着用のパウダーにより形成される層である。
【0033】
転写装置300は、転写用シート520に描かれた画像を生地600に熱転写する。具体的には、転写装置300は、パウダー層505が生地600と接するように生地600上に重ねられた転写用シート520に熱と圧力とを加える。すると、パウダー層505における接着用のパウダーが溶融する。溶融した接着用のパウダーが冷却されて固まると、転写用シート520と生地600とが接着する。生地600は、例えば、Tシャツの生地である。
【0034】
ここで、生地600に接着した転写用シート520が生地600から引き剥がされるとき、転写用シート520における剥離層502よりも外側の層であるフィルム層501は、生地600から剥離する。一方、転写用シート520における剥離層502よりも内側の層である受容層503、インク層504及びパウダー層505は、生地600の表面に残る。図2における印刷済み生地610は、生地600の表面にこれらの層が積層されて画像が付与された生地である。
【0035】
次に、図3を参照して、印刷装置100の構成について説明する。図3に示すように、印刷装置100は、制御部10と、記憶部21と、表示部22と、操作受付部23と、通信部24と、吐出ヘッド31と、ヘッド移動機構32と、加熱機構33と、搬送機構40と、搬送用モータ駆動回路41と、回転機構50と、回転用モータ駆動回路51とを備える。なお、印刷装置100が備える構成のうちは、制御部10と、搬送機構40と、搬送用モータ駆動回路41と、回転機構50と、回転用モータ駆動回路51とを備える部分が搬送装置110である。
【0036】
制御部10は、印刷装置100全体の動作を制御する。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、RTC(Real Time Clock)等を備える。CPUは、中央処理装置、中央演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)等とも呼び、印刷装置100の制御に係る処理及び演算を実行する中央演算処理部として機能する。制御部10において、CPUは、ROMに格納されているプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いて、印刷装置100を統括制御する。RTCは、例えば、計時機能を有する集積回路である。なお、CPUは、RTCから読み出される時刻情報から現在日時を特定可能である。制御部10は、転写用シート500に転写用のインクで画像を印刷する印刷部の一例である。
【0037】
記憶部21は、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の不揮発性の半導体メモリを備えており、いわゆる二次記憶装置又は補助記憶装置としての役割を担う。記憶部21は、制御部10が各種処理を実行するために使用するプログラム及びデータを記憶する。また、記憶部21は、制御部10が各種処理を実行することにより生成又は取得するデータを記憶する。
【0038】
表示部22は、制御部10による制御に従って、各種の画像を表示する。表示部22は、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ等を備える。操作受付部23は、ユーザから各種の操作を受け付け、受け付けた操作の内容を示す情報を制御部10に供給する。操作受付部23は、タッチスクリーン、ボタン、レバー等を備える。
【0039】
通信部24は、制御部10による制御に従って、各種の装置と通信する。通信部24は、各種の無線通信規格又は各種の有線通信規格に則って、各種の装置と通信する。各種の無線通信規格としては、Wi-Fi(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)等がある。各種の有線通信規格としては、USB(Universal Serial Bus、登録商標)、Thunderbolt(登録商標)等がある。通信部24は、各種の通信規格に準拠した通信インターフェースを備える。
【0040】
吐出ヘッド31は、制御部10による制御に従って、インクを吐出する。印刷装置100は、インクの種類毎に吐出ヘッド31を備える。つまり、印刷装置100は、転写用のカラーインクを吐出する吐出ヘッド31と、転写用の白色インクを吐出する吐出ヘッド31とを備える。吐出ヘッド31は、例えば、ピエゾ方式、サーマルヘッド方式等のインクジェット方式によりインクを吐出する。
【0041】
ヘッド移動機構32は、制御部10による制御に従って、吐出ヘッド31を移動させる機構である。ヘッド移動機構32は、吐出ヘッド31を主走査方向に移動させる。主走査方向は、図4図5図6及び図7において、X軸方向である。なお、図4は、印刷装置100の外観図であり、印刷装置100の斜視図である。また、図5は、印刷装置100の側面図であり、印刷装置100をX軸の正の方向から見たときの図である。図6は、搬送装置110の動作の第1の説明図である。図7は、搬送装置110の動作の第2の説明図である。
【0042】
図4図5図6及び図7において、Z軸は鉛直方向に延びる軸であり、X軸はZ軸と直交する軸であり、Y軸はX軸とZ軸とに直交する軸である。X軸の矢印が伸びる方向がX軸の正の方向、X軸の矢印が伸びる方向の反対方向がX軸の負の方向である。Y軸の矢印が伸びる方向がY軸の正の方向、Y軸の矢印が伸びる方向の反対方向がY軸の負の方向である。Z軸の矢印が伸びる方向がZ軸の正の方向、Z軸の矢印が伸びる方向の反対方向がZ軸の負の方向である。
【0043】
ヘッド移動機構32は、例えば、キャリッジ(図示せず)と、ガイドレール(図示せず)と、駆動ベルト(図示せず)と、駆動プーリ(図示せず)と、従動プーリ(図示せず)と、駆動モータ(図示せず)とを備える。キャリッジには、移動対象物である吐出ヘッド31が搭載される。ガイドレールは、キャリッジの規定方向への移動を案内する。駆動ベルトは、キャリッジに固定される。駆動プーリと従動プーリとには駆動ベルトが掛け回される。駆動モータは、駆動プーリを介して駆動ベルトを回転させ、キャリッジをX軸方向に移動させる。
【0044】
加熱機構33は、制御部10による制御に従って、転写用シート500を加熱する機構である。加熱機構33は、リアヒータ331と、アフターヒータ332とを備える。リアヒータ331は、画像が印刷される前の転写用シートである転写用シート500を加熱するヒータである。アフターヒータ332は、画像が印刷された後の転写用シートである転写用シート510を加熱するヒータである。リアヒータ331は、アフターヒータ332よりも、転写用シート500の搬送経路上における上流側に配置される。
【0045】
リアヒータ331は、例えば、ヒータ333と、被加熱部材335と、温度センサ(図示せず)とを備える。ヒータ333は、制御部10による制御に従って被加熱部材335を加熱するヒータである。被加熱部材335は、ヒータ333により加熱される部材である。転写用シート500は被加熱部材335上で搬送され、被加熱部材335の加熱により転写用シート500が加熱する。温度センサは、被加熱部材335の温度を測定するセンサである。
【0046】
アフターヒータ332は、例えば、ヒータ334と、被加熱部材336と、温度センサ(図示せず)とを備える。ヒータ334は、制御部10による制御に従って被加熱部材336を加熱するヒータである。被加熱部材336は、ヒータ334により加熱される部材である。転写用シート510は被加熱部材336上で搬送され、被加熱部材336の加熱により転写用シート510が加熱する。温度センサは、被加熱部材336の温度を測定するセンサである。
【0047】
搬送機構40は、制御部10による制御に従って、ロール体560から巻き解かれた転写用シート500を搬送経路の下流に向けて搬送する機構である。ロール体560は、幅広で長く薄いシート状の媒体である転写用シート500が、紙管550を中心にして巻かれたものである。搬送経路は、転写用シート500が搬送される経路である。搬送経路は、例えば、ロール体560、被加熱部材335、搬送ローラ43、プラテン90、被加熱部材336等の表面を通過する経路である。搬送機構40は、搬送用モータ42と、搬送ローラ43と、ロータリエンコーダ44と、ピンチローラ45とを備える。
【0048】
搬送用モータ駆動回路41は、制御部10による制御に従って、搬送用モータ42を駆動するための回路である。具体的には、搬送用モータ駆動回路41は、制御部10が備える搬送制御部14による制御に従って、搬送用モータ42を駆動するための駆動信号を生成し、生成した駆動信号により搬送用モータ42を駆動する。
【0049】
搬送用モータ42は、制御部10による制御に従って、搬送ローラ43を回転させる。具体的には、搬送用モータ42は、搬送制御部14により制御される搬送用モータ駆動回路41が出力した駆動信号に従って、搬送用モータ42の回転軸(図示せず)を回転させる。搬送用モータ42の回転軸の回転により、搬送ローラ43は、搬送ローラ43の回転軸(図示せず)を中心にして回転する。搬送用モータ42は、例えば、電源(図示せず)から供給された電気エネルギーを、搬送ローラ43を回転させる力学的エネルギーに変換する。搬送用モータ42は、例えば、ステッピングモータである。
【0050】
搬送ローラ43は、転写用シート500におけるフィルム層501と接触して回転するローラである。搬送ローラ43は、X軸方向に延びる回転軸を備える。搬送ローラ43は、搬送用モータ42による駆動力に従って回転軸を中心にして回転する。搬送ローラ43は、搬送ローラ43上に載せられた転写用シート500がX軸の正の方向に搬送されるように回転する。搬送ローラ43の表面には、格子状に突起が設けられている。搬送ローラ43は、各種の樹脂、ゴム等により構成される。
【0051】
ロータリエンコーダ44は、回転の機械的変位量を電気信号に変換し、この電気信号を処理して位置、速度等を検出するセンサである。例えば、ロータリエンコーダ44は、搬送ローラ43が回転した角度を示す回転角度信号を搬送制御部14に供給する。
【0052】
ピンチローラ45は、転写用シート500における受容層503と接触して回転するローラである。ピンチローラ45は、X軸方向に延びる回転軸(図示せず)を備える。ピンチローラ45は、搬送ローラ43とともに転写用シート500を挟み込む。つまり、搬送ローラ43とピンチローラ45とがメディアである転写用シート500を両側から強い力で挟み込み、搬送ローラ43が回転することで転写用シート500が搬送される。ピンチローラ45は、例えば、ゴムにより構成される。
【0053】
回転機構50は、ロール体560をロール体560の中心軸561が水平になるように支持し、ロール体560を回転させる機構である。具体的には、回転機構50は、制御部10による制御に従って、ロール体560をロール体560の中心軸561を中心にして回転させる。回転機構50は、回転用モータ52と、回転軸53と、ロータリエンコーダ54とを備える。
【0054】
回転用モータ駆動回路51は、制御部10による制御に従って、回転用モータ52を駆動するための回路である。具体的には、回転用モータ駆動回路51は、制御部10が備える回転制御部15による制御に従って、回転用モータ52を駆動するための駆動信号を生成し、生成した駆動信号により回転用モータ52を駆動する。
【0055】
回転用モータ52は、制御部10による制御に従って、ロール体560を回転させる。具体的には、回転用モータ52は、回転制御部15により制御される回転用モータ駆動回路51が出力した駆動信号に従って、回転用モータ52の回転軸(図示せず)を回転させる。回転用モータ52の回転軸の回転により、ロール体560が装着された回転軸53が回転する。回転用モータ52は、例えば、電源(図示せず)から供給された電気エネルギーを、ロール体560を回転させる力学的エネルギーに変換する。回転用モータ52は、例えば、ステッピングモータである。
【0056】
回転軸53は、回転用モータ52がロール体560を回転させるときの回転軸である。従って、ロール体560は、ロール体560の中心軸561が回転軸53の中心軸(図示せず)と一致するように、回転軸53に固定される。本実施の形態では、図4に示すように、ロール体560は、回転機構50により両端から挟み込まれて回転機構50にセットされる。具体的には、ロール体560が備える紙管550の一端が、回転軸53Aに嵌め込まれて固定される。また、紙管550の他端が、回転軸53Bに嵌め込まれて固定される。これにより、回転機構50にロール体560が回転可能に支持される。
【0057】
なお、回転軸53Aは、水平方向に延びるように支持部55Aに回転可能に固定される。また、回転軸53Bは、水平方向に延びるように支持部55Bに回転可能に固定される。以下、適宜、支持部55Aと支持部55Bとを総称して支持部55という。また、回転軸53Aと回転軸53Bとは連動する。つまり、回転軸53Aの回転方向と回転軸53Bの回転方向とは同じであり、回転軸53Aの回転角度と回転軸53Bの回転角度とは同じである。なお、回転用モータ52は、回転軸53Aと回転軸53Bとのそれぞれに対して設けられる。また、回転用モータ駆動回路51は、回転軸53Aに対して設けられた回転用モータ52と、回転軸53Bに対して設けられた回転用モータ52とのそれぞれに対して、同一の駆動信号を供給する。なお、回転軸53Aと回転軸53Bとを総称して、適宜、回転軸53という。
【0058】
ロータリエンコーダ54は、回転の機械的変位量を電気信号に変換し、この電気信号を処理して位置、速度等を検出するセンサである。ロータリエンコーダ54は、回転軸53が回転した角度を示す回転角度信号を回転制御部15に供給する。
【0059】
センサ60は、ロール体560から巻き解かれて自重で弛んだ転写用シート500の弛み量に対応するデータを取得するセンサである。センサ60は、弛み量に対応するデータを取得可能なセンサであれば、どのような種類のセンサでもよい。センサ60としては、近くに物体が存在するか否かを非接触で検出する近接センサ、物体までの距離を測定する測距センサ、物体から発せられた光の強さを電気信号に変換するイメージセンサ等が考えられる。本実施の形態では、センサ60は近接センサである。近接センサとしては、超音波又は電磁波を放射し、物体の表面で反射した超音波又は電磁波の反射波を検出するセンサがある。
【0060】
次に、制御部10の主な機能について詳細に説明する。制御部10は、機能的には、吐出制御部11と、移動制御部12と、加熱制御部13と、搬送制御部14と、回転制御部15と、測定部16とを備える。これらの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、ROM又は記憶部21に格納される。そして、CPUが、ROM又は記憶部21に記憶されたプログラムを実行することによって、これらの各機能を実現する。
【0061】
吐出制御部11は、吐出ヘッド31によるインクの吐出を制御する。吐出制御部11は、吐出ヘッド31を制御して、吐出ヘッド31にインクを吐出させる。例えば、吐出制御部11は、印刷制御用データに基づいて、吐出ヘッド31にインクを吐出させる。印刷制御用データは、吐出するインクの種類、インクの吐出量、吐出ヘッド31の移動量等を示すデータである。印刷制御用データは、例えば、制御装置400から供給される画像データに基づいて生成される。なお、画像データ、印刷制御用データ等は、例えば、記憶部21に記憶される。
【0062】
移動制御部12は、吐出ヘッド31の移動を制御する。具体的には、移動制御部12は、ヘッド移動機構32を制御して、吐出ヘッド31を主走査方向に移動させる。例えば、移動制御部12は、吐出ヘッド31によるインクの吐出が完了する毎に、吐出ヘッド31の主走査方向における位置を変化させる。
【0063】
加熱制御部13は、転写用シート500及び転写用シート510の加熱を制御する。具体的には、加熱制御部13は、加熱機構33を制御して、転写用シート500及び転写用シート510を加熱する。例えば、加熱制御部13は、リアヒータ331を制御して、転写用シート500を加熱する。また、加熱制御部13は、アフターヒータ332を制御して、転写用シート510を加熱する。
【0064】
搬送制御部14は、転写用シート500の搬送を制御する。具体的には、搬送制御部14は、搬送機構40を制御して、ロール体560から巻き解かれた転写用シート500を搬送経路の下流に向けて搬送する。例えば、搬送制御部14は、転写用シート500の搬送方向の特定の位置における画像の印刷が完了する毎に、搬送ローラ43を規定角度分回転させて、転写用シート500を規定距離分搬送方向に搬送する。
【0065】
回転制御部15は、ロール体560の回転を制御する。具体的には、回転制御部15は、回転機構50を制御して、転写用シート500がロール体560から巻き解かれる方向にロール体560を回転させる。また、回転制御部15は、ロール体560から巻き解かれた転写用シート500が自重で弛んだ状態を維持するように回転機構50を制御する。転写用シート500がロール体560から巻き解かれる方向は、転写用シート500を搬送経路に沿ってプラテン90に向けて送り出す方向であり、図5において時計回りの方向である。
【0066】
なお、本実施の形態では、基本的に、回転制御部15は、転写用シート500がロール体560から巻き解かれる方向のみにロール体560を回転させ、転写用シート500がロール体560に巻き取られる方向にはロール体560を回転させない。転写用シート500がロール体560に巻き取られる方向は、転写用シート500を搬送経路に沿ってプラテン90から引き戻す方向であり、図5において反時計回りの方向である。以下、適宜、転写用シート500がロール体560から巻き解かれる方向を正方向といい、転写用シート500がロール体560に巻き取られる方向を負方向という。
【0067】
搬送機構40による転写用シート500の搬送により転写用シート500の弛みがなくなりそうな場合、回転制御部15は、ロール体560を正方向に回転させる。つまり、回転制御部15は、後述する測定部16により測定された弛み量が基準量よりも少ない場合、ロール体560を正方向に回転させる。また、回転制御部15は、転写用シート500の弛み量が不足している場合、搬送機構40による転写用シート500の搬送状態に拘わらず、ロール体560を正方向に回転させる。
【0068】
つまり、回転制御部15は、搬送機構40が転写用シート500を搬送している場合において、自重で弛んだ転写用シート500の弛み量が不足している場合、ロール体560を正方向に回転させる。また、回転制御部15は、搬送機構40が転写用シート500の搬送を停止している場合において、転写用シート500の弛み量が不足している場合、ロール体560を正方向に回転させる。一方、回転制御部15は、転写用シート500の弛み量が不足していない場合、搬送機構40による転写用シート500の搬送状態に拘わらず、ロール体560を回転させない。
【0069】
測定部16は、自重で弛んだ転写用シート500の弛み量を測定する。例えば、測定部16は、センサ60が取得したデータに基づいて、転写用シート500の弛み量を求める。測定部16は、弛み量を示す厳密な数値を算出せず、弛み量が基準量未満であるか否かを判別できる程度に弛み量を求めてもよい。本実施の形態では、ロール体560の中心軸561から自重で弛んだ転写用シート500の最下点までの距離を、転写用シート500の弛み量に対応する距離とみなす。つまり、本実施の形態では、測定部16は、転写用シート500の弛み量として、この距離を測定する。測定部16による弛み量の算出方法は、センサ60の種類、センサ60の配置、センサ60の使用方法等に応じて、適宜、調整される。
【0070】
次に、図4図5とを参照して、印刷装置100が、転写用シート500を搬送しながら転写用シート500に画像を印刷する方法について説明する。
【0071】
まず、作業者は、印刷を実施する前に、図4図5とに示すように、紙管550に転写用シート500がロール状に巻かれたロール体560を、搬送装置110が備える回転機構50にセットする。つまり、作業者は、紙管550の一端を回転軸53Aに嵌め込み、紙管550の他端を回転軸53Bに嵌め込む。これにより、回転機構50は、ロール体560を回転可能に支持する。
【0072】
次に、作業者は、ロール体560から転写用シート500を引き延ばし、転写用シート500を搬送経路に沿って引き伸ばす。具体的には、作業者は、転写用シート500を、被加熱部材335上、プラテン90上、及び、被加熱部材336上を経由させて引き伸ばす。そして、作業者は、制御装置400を操作して、印刷装置100による印刷を開始する。なお、印刷装置100は、転写用シート500におけるプラテン90上の領域に対して画像を印刷する。
【0073】
印刷装置100は、印刷に先立って、リアヒータ331とアフターヒータ332とによる加熱を開始する。印刷装置100は、搬送ローラ43を回転させて、リアヒータ331により加熱された転写用シート500を搬送方向に搬送する。印刷装置100は、加熱された転写用シート500におけるプラテン90上に配置された領域に、転写用のカラーインクで画像を印刷する。
【0074】
また、印刷装置100は、転写用シート500におけるカラーインクで画像が印刷された領域に、白色インクを塗布する。印刷装置100は、搬送ローラ43を回転させて、白色インクが塗布された転写用シート510を、アフターヒータ332が備える被加熱部材336上まで搬送する。印刷装置100は、アフターヒータ332により加熱された転写用シート510をパウダー塗布装置200に供給する。
【0075】
ここで、印刷装置100が転写用シート500に画像を印刷する間、搬送装置110はロール体560から巻き解かれた転写用シート500が自重で弛んだ状態を維持するように回転機構50を制御する。つまり、搬送装置110は、転写用シート500におけるロール体560から搬送ローラ43までの部分に過度のテンションがかからないように、ロール体560の下方において転写用シート500を弛ませる。以下、搬送装置110が転写用シート500を弛ませる理由について説明する。
【0076】
まず、ロール体560は、輸送、梱包等の過程において、変形する可能性がある。例えば、ロール体560の長手方向における一部又は全体において、ロール体560の断面形状が真円形状ではなく、楕円形状に変形することがある。
【0077】
例えば、ロール体560の全体に亘って断面形状が真円形状以外の形状である場合、転写用シート500がロール体560から離れて搬送ローラ43に到達するまでの経路の長さである経路長が、ロール体560の回転角度に伴って周期的に変化する。そして、転写用シート500におけるロール体560から搬送ローラ43までの部分にかかるテンションも、ロール体560の回転角度に伴って周期的に変化する。この場合、プラテン90上における転写用シート500の搬送速度が安定しない、プラテン90上において転写用シート500が浮く等の不具合が発生する可能性がある。
【0078】
また、例えば、ロール体560の一端の断面形状とロール体560の他端の断面形状とが異なる場合、ロール体560の一端から搬送ローラ43の一端までの経路長とロール体560の他端から搬送ローラ43の他端までの経路長とに差違が生じる。そして、転写用シート500におけるロール体560の一端から搬送ローラ43の一端までの部分にかかるテンションと転写用シート500におけるロール体560の他端から搬送ローラ43の他端までの部分にかかるテンションとに差違が生じる。この場合、プラテン90上におけるスキュー、プラテン90上において転写用シート500が浮く等の不具合が発生する可能性がある。
【0079】
また、ロール体560から転写用シート500を引き伸ばして転写用シート500に印刷する処理を進めていくと、ロール体560の直径が次第に短くなる。ロール体560の直径が短くなると、上記経路長も変化し、転写用シート500におけるロール体560から搬送ローラ43までの部分にかかるテンションも変化する。この場合、例えば、転写用シート500と搬送ローラ43との間の滑り量が変化して、プラテン90上における転写用シート500の搬送速度が変化する可能性がある。
【0080】
このように、転写用シート500におけるロール体560から搬送ローラ43までの部分にかかるテンションが変化すると、搬送速度のばらつき、搬送速度の変化、スキュー、転写用シート500の浮き等の不具合が発生する可能性がある。そこで、本実施の形態では、ロール体560から転写用シート500を巻き解いて、ロール体560から巻き解かれた転写用シート500を弛ませる。かかる構成によれば、転写用シート500におけるロール体560から搬送ローラ43までの部分にかかるテンションは、転写用シート500における弛んだ部分の自重程度である。つまり、かかる構成によれば、転写用シート500におけるロール体560から搬送ローラ43までの部分にかかるテンションを小さく、且つ、一定にすることができる。
【0081】
次に、図6図7とを参照して、搬送装置110が、転写用シート500を弛ませる方法について詳細に説明する。なお、図6は、真円形状の断面形状を有するロール体560が装着された搬送装置110の側面図を示している。また、図7は、楕円形状の断面形状を有するロール体560が装着された搬送装置110の側面図を示している。
【0082】
図6に示すように、印刷装置100は、搬送ローラ43とピンチローラ45とで転写用シート500を挟み込んだ状態で、搬送ローラ43を回転させることにより、転写用シート500を搬送方向に搬送する。この時、搬送装置110は、図6に示すように、転写用シート500がロール体560の下方に弛んだ状態を維持するように、ロール体560を回転させる。
【0083】
具体的には、回転制御部15は、転写用シート500の弛み量に対応するL1が、弛み量の基準量に対応するLth以上である状態が維持されるように、ロール体560を正方向に回転させる。なお、図6は、L1がLthよりも一時的に小さくなり、ロール体560が正方向に回転している様子を示している。L1は、ロール体560の中心軸561から転写用シート500の最下点である点Pbまでの長さである。Lthは、ロール体560の中心軸561から転写用シート500の最下点である点Pbまでの長さの基準値である。
【0084】
L1とLthとの大小関係を特定する方法は、適宜、調整することができる。本実施の形態では、指向性が強い近接センサであるセンサ60の検出結果に基づいて、L1とLthとの大小関係を特定する。まず、L1がLth以上であるときに、転写用シート500における弛んだ部分がセンサ60により検知されるように、センサ60が配置される。つまり、中心軸561からの距離がLthである地点を含む水平面上におけるロール体560の近傍の位置に、センサ60の検出方向がこの水平面に平行であって弛んだ転写用シート500を通過する方向に向くように、センサ60が配置される。
【0085】
センサ60は、転写用シート500の弛みがセンサ60よりも下方に延び、L1がLth以上である場合、物体が検出されたことを示すデータである物体検出データを出力する。一方、センサ60は、転写用シート500の弛みがセンサ60の上方に留まり、L1がLth未満である場合、物体が検出されなかったことを示すデータである物体非検出データを出力する。
【0086】
測定部16は、センサ60が物体検出データを出力した場合、転写用シート500の弛み量が基準量よりも大きいと判別する。測定部16は、センサ60が物体非検出データを出力した場合、転写用シート500の弛み量が基準量よりも小さいと判別する。回転制御部15は、測定部16により転写用シート500の弛み量が基準量以上であると判別された場合、ロール体560を回転させない。回転制御部15は、測定部16により転写用シート500の弛み量が基準量未満であると判別された場合、ロール体560を正方向に回転させ、転写用シート500の弛み量を増加させる。
【0087】
搬送装置110に楕円形状の断面形状を有するロール体560が装着された場合における搬送装置110の動作も同様である。つまり、搬送装置110は、図7に示すように、転写用シート500がロール体560の下方に弛んだ状態を維持するように、ロール体560を回転させる。具体的には、回転制御部15は、転写用シート500の弛み量に対応するL1が、弛み量の基準量に対応するLth以上である状態が維持されるように、ロール体560を回転させる。なお、図7は、L1がLthよりも一時的に小さくなり、ロール体560が回転している様子を示している。
【0088】
次に、図8に示すフローチャートを参照して、搬送装置110が実行する回転制御処理について説明する。回転制御処理は、回転機構50に対する制御によりロール体560を回転させる制御である。なお、回転制御処理は、搬送制御部14が搬送機構40を制御して、ロール体560から巻き解かれた転写用シート500を搬送経路の下流に向けて搬送する搬送制御処理とは独立して実行される。本実施の形態にかかる搬送方法は、搬送制御処理及び回転制御処理の実行により実現する。
【0089】
まず、制御部10は、転写用シート500の弛み量を測定する(ステップS101)。具体的には、制御部10は、センサ60の検出結果を用いて、弛み量を算出する。なお、本実施の形態では、制御部10は、弛み量が基準値未満であるか否かを判別できる程度に弛み量を測定すればよい。制御部10は、ステップS101の処理を完了すると、弛み量が基準値未満であるか否かを判別する(ステップS102)。
【0090】
制御部10は、弛み量が基準値未満でないと判別すると(ステップS102:NO)、ステップS101に処理を戻す。一方、制御部10は、弛み量が基準値未満であると判別すると(ステップS102:YES)、ロール体560の回転を開始する(ステップS103)。具体的には、制御部10は、回転用モータ駆動回路51を制御して、転写用シート500がロール体560から巻き解かれる方向に回転軸53を回転させる処理を開始する。
【0091】
制御部10は、ステップS103の処理を完了すると、ロータリエンコーダ54からロール体560の回転角度を取得する(ステップS104)。ロール体560の回転角度は、回転軸53の回転角度であり、回転軸53が回転を開始してから現在時刻に至るまでに回転軸53が回転した角度である。制御部10は、ステップS104の処理を完了すると、回転角度が規定角度に到達したか否かを判別する(ステップS105)。規定角度は、一回の回転制御でロール体560を回転させる角度である。
【0092】
制御部10は、回転角度が規定角度に到達していないと判別すると(ステップS105:NO)、ステップS104に処理を戻す。一方、制御部10は、回転角度が規定角度に到達したと判別すると(ステップS105:YES)、ロール体560の回転を停止する(ステップS106)。つまり、制御部10は、回転用モータ駆動回路51を制御して、回転軸53を正方向に回転させる処理を終了する。制御部10は、ステップS106の処理を完了すると、ステップS101に処理を戻す。
【0093】
本実施の形態では、ロール体560から巻き解かれた転写用シート500が自重で弛んだ状態を維持するように回転機構50が制御される。従って、本実施の形態では、転写用シート500におけるロール体560から搬送ローラ43までの部分にかかるテンションを小さく且つ一定にすることができる。従って、本実施の形態によれば、転写用シート500をロール体560から適切に巻き解いて搬送することができる。
【0094】
また、本実施の形態では、搬送機構40が転写用シート500を搬送しているときに、転写用シート500がロール体560から巻き解かれる方向にロール体560が回転可能である。つまり、本実施の形態では、転写用シート500を搬送しながら巻きほぐすことができるため、巻きほぐしを実行しながらスキャンを実行可能である。このように、本実施の形態では、ロール体560の回転のために転写用シート500の搬送を停止する必要がない。従って、本実施の形態によれば、処理速度の低下を抑制しつつ、転写用シート500をロール体560から適切に巻き解いて搬送することができる。
【0095】
また、本実施の形態では、測定された弛み量が基準量よりも少ない場合、転写用シート500がロール体560から巻き解かれる方向にロール体560が回転する。従って、本実施の形態によれば、転写用シート500がロール体560から過度に巻き解かれることが抑制される。
【0096】
また、本実施の形態では、巻き解き及び搬送の対象の媒体が、受容層503と剥離層502とフィルム層501とを備える転写用シート500である。転写用シート500は、テンションの変化、テンションのばらつき等により、搬送速度のばらつき、搬送速度の変化、スキュー、転写用シート500の浮き等の不具合が発生しやすいことがある。本実施の形態によれば、転写用シート500の印刷時に、このような不具合が抑制されることが期待できる。
【0097】
(実施の形態2)
実施の形態1では、転写用シート500の弛み量を近接センサであるセンサ60を用いて測定する例について説明した。転写用シート500の弛み量を測定する方法は、適宜、調整することができる。本実施の形態では、図9を参照して、転写用シート500の弛み量を測距センサであるセンサ61を用いて測定する例について説明する。以下、実施の形態1と同様の構成及び機能については、適宜、説明を省略又は簡略化する。
【0098】
図9に示すように、本実施の形態にかかる搬送装置111は、センサ60に代えてセンサ61を備える。センサ61は、ロール体560から巻き解かれて自重で弛んだ転写用シート500の弛み量に対応するデータを取得するセンサである。センサ61は、物体までの距離を測定する測距センサである。センサ61は、超音波センサでもよいし、レーザセンサでもよい。超音波センサは、超音波を放射してから、物体の表面で反射した超音波の反射波が検出されるまでの時間に基づいて、センサ61から物体までの距離を測定するセンサである。レーザセンサは、レーザを放射してから、物体の表面で反射したレーザの反射波が検出されるまでの時間に基づいて、センサ61から物体までの距離を測定するセンサである。
【0099】
本実施の形態では、転写用シート500の最下点である点Pbの高さが測定可能となるように、センサ61が配置される。つまり、センサ61の検出方向が上を向くように点Pbの下方にセンサ61が配置される。センサ61は、センサ61から点Pbまでの距離であるL2を測定する。ここで、弛み量に対応するL1とL2との和は、中心軸561からセンサ61までの距離であるL0であり、一定値である。
【0100】
測定部16は、L0からセンサ61が測定したL2を減算することにより、弛み量に対応するL1を算出する。回転制御部15は、測定部16が算出したL1が弛み量の基準量に対応するLth以上である場合、ロール体560を回転させない。回転制御部15は、測定部16が算出したL1が弛み量の基準量に対応するLth未満である場合、ロール体560を正方向に回転させ、転写用シート500の弛み量を増加させる。
【0101】
本実施の形態では、転写用シート500の弛み量が測距センサであるセンサ61を用いて測定される。従って、本実施の形態によれば、弛み量が精度よく測定されるため、転写用シート500の弛み量を適切な弛み量に維持することができる。
【0102】
(変形例)
以上、実施の形態を説明したが、種々の形態による変形及び応用が可能である。上記実施の形態において説明した構成、機能、動作のどの部分を採用するのかは任意である。また、上述した構成、機能、動作のほか、更なる構成、機能、動作が採用されてもよい。また、上記実施の形態において説明した構成、機能、動作は、自由に組み合わせることができる。
【0103】
実施の形態1では、回転制御部15は、弛み量が基準量未満である場合、ロール体560を規定角度分だけ正方向に回転させる例について説明した。回転制御部15は、弛み量が基準量未満である場合、弛み量が基準量以上となるまで、ロール体560を正方向に回転させてもよい。
【0104】
実施の形態1では、回転軸53が回転軸53Aと回転軸53Bとの2つに分離されている例について説明した。回転軸53は、ロール体560の紙管550を貫く1本の軸であってもよい。
【0105】
実施の形態1では、弛み量の測定に近接センサであるセンサ60を用い、実施の形態2では、弛み量の測定に測距センサであるセンサ61を用いる例について説明した。弛み量の測定に用いるセンサは、この例に限定されない。例えば、弛み量の測定に、物体から発せられた光の強さを電気信号に変換するイメージセンサが用いられてもよい。この場合、測定部16は、イメージセンサが出力した電気信号に基づく画像上において、転写用シート500の最下点である点Pbの位置を特定し、特定した点Pbの位置から弛み量を求めてもよい。
【0106】
実施の形態1では、巻き解き及び搬送の対象の媒体が、受容層503と剥離層502とフィルム層501とを備える転写用シート500である例について説明した。巻き解き及び搬送の対象の媒体は、転写用シート500に限定されない。巻き解き及び搬送の対象の媒体は、紙、フィルム等の一般的な印刷媒体でもよい。また、巻き解き及び搬送の対象の媒体は、印刷以外の処理対象の媒体でもよい。
【0107】
実施の形態1では、制御部10において、CPUがROM又は記憶部21に記憶されたプログラムを実行することによって、図3に示した各部として機能した。しかしながら、本開示において、制御部10は、専用のハードウェアであってもよい。専用のハードウェアとは、例えば単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらの組み合わせ等である。制御部10が専用のハードウェアである場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現してもよいし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現してもよい。また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現してもよい。このように、制御部10は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は、これらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0108】
本開示に係る印刷装置100の動作を規定する動作プログラムを既存のパーソナルコンピュータ又は情報端末装置等のコンピュータに適用することで、当該コンピュータを、本開示に係る印刷装置100として機能させることも可能である。また、このようなプログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD-ROM(Compact Disk ROM)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、又は、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。
【0109】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。すなわち、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、本開示の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0110】
10 制御部
11 吐出制御部
12 移動制御部
13 加熱制御部
14 搬送制御部
15 回転制御部
16 測定部
21 記憶部
22 表示部
23 操作受付部
24 通信部
31 吐出ヘッド
32 ヘッド移動機構
33 加熱機構
40 搬送機構
41 搬送用モータ駆動回路
42 搬送用モータ
43 搬送ローラ
44,54 ロータリエンコーダ
50 回転機構
51 回転用モータ駆動回路
52 回転用モータ
53,53A,53B 回転軸
55,55A,55B 支持部
60,61 センサ
90 プラテン
100 印刷装置
110,111 搬送装置
200 パウダー塗布装置
300 転写装置
331 リアヒータ
332 アフターヒータ
333,334 ヒータ
335,336 被加熱部材
400 制御装置
500,510,520 転写用シート
501 フィルム層
502 剥離層
503 受容層
504 インク層
505 パウダー層
550 紙管
560 ロール体
561 中心軸
600 生地
610 印刷済み生地
1000 印刷システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9