IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミマキエンジニアリングの特許一覧

特開2024-118974印刷装置、搬送装置、ピンチローラ、及び、印刷システム
<>
  • 特開-印刷装置、搬送装置、ピンチローラ、及び、印刷システム 図1
  • 特開-印刷装置、搬送装置、ピンチローラ、及び、印刷システム 図2
  • 特開-印刷装置、搬送装置、ピンチローラ、及び、印刷システム 図3
  • 特開-印刷装置、搬送装置、ピンチローラ、及び、印刷システム 図4
  • 特開-印刷装置、搬送装置、ピンチローラ、及び、印刷システム 図5
  • 特開-印刷装置、搬送装置、ピンチローラ、及び、印刷システム 図6
  • 特開-印刷装置、搬送装置、ピンチローラ、及び、印刷システム 図7
  • 特開-印刷装置、搬送装置、ピンチローラ、及び、印刷システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118974
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】印刷装置、搬送装置、ピンチローラ、及び、印刷システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20240826BHJP
   B41J 15/04 20060101ALI20240826BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B65H5/06 C
B41J15/04
B41J2/01 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025602
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】竹花 宗一郎
【テーマコード(参考)】
2C056
2C060
3F049
【Fターム(参考)】
2C056EA30
2C056EB14
2C056EB30
2C056EE18
2C056FA10
2C056FD13
2C056HA46
2C060BC12
2C060BC14
2C060BC22
3F049AA10
3F049CA11
3F049LA06
3F049LA07
3F049LB03
(57)【要約】
【課題】適切な転写印刷を実現する。
【解決手段】搬送ローラ61は、転写用のインクを受け止める受容層と、受容層とフィルム層とを剥離可能に接合する剥離層と、剥離層を介して受容層を支持するフィルム層とを備える転写用シート500におけるフィルム層と接触して回転する。ピンチローラ62は、搬送ローラ61とともに転写用シート500を挟み込み、転写用シート500における受容層と接触して回転する。ピンチローラ62は、受容層と接触する部位が剥離層よりも受容層に粘着しにくい難付着性物質で形成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写用のインクを受け止める受容層と、前記受容層とフィルム層とを剥離可能に接合する剥離層と、前記剥離層を介して前記受容層を支持する前記フィルム層とを備える転写用シートに前記転写用のインクで画像を印刷する印刷装置であって、
前記転写用シートにおける前記フィルム層と接触して回転する搬送ローラと、
前記搬送ローラとともに前記転写用シートを挟み込み、前記転写用シートにおける前記受容層と接触して回転するピンチローラと、
前記搬送ローラと前記ピンチローラとにより搬送された前記転写用シートに前記転写用のインクで画像を印刷する印刷部と、を備え、
前記ピンチローラは、前記受容層と接触する部位が前記剥離層よりも前記受容層に粘着しにくい難付着性物質で形成されている、
印刷装置。
【請求項2】
前記難付着性物質は、フッ素含有化合物、シリコン含有化合物、含油POMから選ばれる少なくとも1つである、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷部は、インクジェットヘッドを備える、
請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
転写用のインクを受け止める受容層と、前記受容層とフィルム層とを剥離可能に接合する剥離層と、前記剥離層を介して前記受容層を支持する前記フィルム層とを備える転写用シートを搬送する搬送装置であって、
前記転写用シートにおける前記フィルム層と接触して回転する搬送ローラと、
前記搬送ローラとともに前記転写用シートを挟み込み、前記転写用シートにおける前記受容層と接触して回転するピンチローラと、を備え、
前記ピンチローラは、前記受容層と接触する部位が前記剥離層よりも前記受容層に粘着しにくい難付着性物質で形成されている、
搬送装置。
【請求項5】
転写用のインクを受け止める受容層と、前記受容層とフィルム層とを剥離可能に接合する剥離層と、前記剥離層を介して前記受容層を支持する前記フィルム層とを備える転写用シートを搬送する搬送装置に用いられるピンチローラであって、
前記搬送装置が備える搬送ローラとともに前記転写用シートを挟み込み、前記転写用シートにおける前記受容層と接触して回転し、
前記受容層と接触する部位が、前記剥離層よりも前記受容層に粘着しにくい難付着性物質で形成されている、
ピンチローラ。
【請求項6】
転写用のインクを受け止める受容層と、前記受容層とフィルム層とを剥離可能に接合する剥離層と、前記剥離層を介して前記受容層を支持する前記フィルム層とを備える転写用シートを用いて転写印刷を実行する印刷システムであって、
前記転写用シートに前記転写用のインクで画像を印刷する印刷装置と、
前記印刷装置により前記画像が印刷された前記転写用シートに接着用のパウダーを塗布するパウダー塗布装置と、
前記パウダー塗布装置により前記接着用のパウダーが塗布された前記転写用シートに描かれた前記画像を被転写媒体に転写する転写装置と、を備え、
前記印刷装置は、
前記転写用シートにおける前記フィルム層と接触して回転する搬送ローラと、
前記搬送ローラとともに前記転写用シートを挟み込み、前記転写用シートにおける前記受容層と接触して回転するピンチローラと、を備え、
前記ピンチローラは、前記受容層と接触する部位が前記剥離層よりも前記受容層に粘着しにくい難付着性物質で形成されている、
印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷装置、搬送装置、ピンチローラ、及び、印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、転写印刷を用いて生地に印刷する技術が知られている。転写印刷は、転写用シートに転写用のインクで画像を描き、転写用シートに描かれた画像を生地に転写する印刷方法である。
【0003】
例えば、特許文献1には、転写用シートである転写フィルムに転写画像を印画し、被転写体と転写画像が印画された転写フィルムとを重ねて転写フィルムを被転写体に貼り付ける印刷装置が記載されている。このような印刷装置では、例えば、搬送ローラとピンチローラとで転写用シートを挟み込み、搬送ローラを回転させることにより、転写用シートを搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-130110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、転写印刷で用いられる転写用シートの表面には、転写用のインクを受け止めるための粘着しやすい受容層が設けられている。このため、例えば、転写用シートを搬送するときに、転写用シートにおける受容層がピンチローラの表面に付着して転写用シートの表面に凹凸が生じ、適切な転写印刷ができないという課題がある。特許文献1には、このような課題を解決するための方法が記載されていない。このため、適切な転写印刷を実現する技術が望まれている。
【0006】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、適切な転写印刷を実現する印刷装置、搬送装置、ピンチローラ、及び、印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の観点に係る印刷装置は、
転写用のインクを受け止める受容層と、前記受容層とフィルム層とを剥離可能に接合する剥離層と、前記剥離層を介して前記受容層を支持する前記フィルム層とを備える転写用シートに前記転写用のインクで画像を印刷する印刷装置であって、
前記転写用シートにおける前記フィルム層と接触して回転する搬送ローラと、
前記搬送ローラとともに前記転写用シートを挟み込み、前記転写用シートにおける前記受容層と接触して回転するピンチローラと、
前記搬送ローラと前記ピンチローラとにより搬送された前記転写用シートに前記転写用のインクで画像を印刷する印刷部と、を備え、
前記ピンチローラは、前記受容層と接触する部位が前記剥離層よりも前記受容層に粘着しにくい難付着性物質で形成されている。
【0008】
前記難付着性物質は、フッ素含有化合物、シリコン含有化合物、含油POMから選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0009】
前記印刷部は、インクジェットヘッドを備えていてもよい。
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の第2の観点に係る搬送装置は、
転写用のインクを受け止める受容層と、前記受容層とフィルム層とを剥離可能に接合する剥離層と、前記剥離層を介して前記受容層を支持する前記フィルム層とを備える転写用シートを搬送する搬送装置であって、
前記転写用シートにおける前記フィルム層と接触して回転する搬送ローラと、
前記搬送ローラとともに前記転写用シートを挟み込み、前記転写用シートにおける前記受容層と接触して回転するピンチローラと、を備え、
前記ピンチローラは、前記受容層と接触する部位が前記剥離層よりも前記受容層に粘着しにくい難付着性物質で形成されている。
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の第3の観点に係るピンチローラは、
転写用のインクを受け止める受容層と、前記受容層とフィルム層とを剥離可能に接合する剥離層と、前記剥離層を介して前記受容層を支持する前記フィルム層とを備える転写用シートを搬送する搬送装置に用いられるピンチローラであって、
前記搬送装置が備える搬送ローラとともに前記転写用シートを挟み込み、前記転写用シートにおける前記受容層と接触して回転し、
前記受容層と接触する部位が、前記剥離層よりも前記受容層に粘着しにくい難付着性物質で形成されている。
【0012】
上記目的を達成するために、本開示の第4の観点に係る印刷システムは、
転写用のインクを受け止める受容層と、前記受容層とフィルム層とを剥離可能に接合する剥離層と、前記剥離層を介して前記受容層を支持する前記フィルム層とを備える転写用シートを用いて転写印刷を実行する印刷システムであって、
前記転写用シートに前記転写用のインクで画像を印刷する印刷装置と、
前記印刷装置により前記画像が印刷された前記転写用シートに接着用のパウダーを塗布するパウダー塗布装置と、
前記パウダー塗布装置により前記接着用のパウダーが塗布された前記転写用シートに描かれた前記画像を被転写媒体に転写する転写装置と、を備え、
前記印刷装置は、
前記転写用シートにおける前記フィルム層と接触して回転する搬送ローラと、
前記搬送ローラとともに前記転写用シートを挟み込み、前記転写用シートにおける前記受容層と接触して回転するピンチローラと、を備え、
前記ピンチローラは、前記受容層と接触する部位が前記剥離層よりも前記受容層に粘着しにくい難付着性物質で形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、適切な転写印刷を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施の形態に係る印刷システムの構成図
図2】転写印刷の説明図
図3】本開示の実施の形態に係る印刷装置の構成図
図4】本開示の実施の形態に係る印刷装置の外観図
図5】本開示の実施の形態に係る印刷装置の側面図
図6】本開示の実施の形態に係る印刷装置のシート挟持部の側面図
図7】本開示の実施の形態に係る印刷装置のシート挟持部の斜視図
図8】転写用シートの受容層が剥離する様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態)
まず、図1を参照して、本開示の実施の形態に係る印刷システム1000の構成について説明する。印刷システム1000は、転写用シートを用いた転写印刷により被転写媒体上に画像を形成するシステムである。転写印刷は、印刷対象の媒体である被転写媒体に直接画像を印刷するのではなく、転写用シートを用いた転写により被転写媒体に画像を付与する印刷方法である。転写印刷では、転写用シートに転写用のインクで予め画像が印刷され、被転写媒体に重ねられた転写用シートに熱と圧力とが加えられて、被転写媒体に画像が貼り付けられる。
【0016】
転写用シートは、被転写媒体に貼り付けられる画像が転写用のインクで印刷されるシート状の媒体である。本実施の形態では、画像の印刷前は、転写用シートはロール状に巻かれた状態であり、画像の印刷時に、引き伸ばされた転写用シート上に画像が印刷される。被転写媒体は、印刷対象の媒体であり、転写印刷により最終的に画像が形成される媒体である。被転写媒体は、通常の印刷では直接印刷することが困難な媒体である。被転写媒体は、例えば、ナイロン製衣服を含む衣服、タオル、エナメルバッグ、雨傘等である。本実施の形態では、被転写媒体は、Tシャツである。図1に示すように、印刷システム1000は、印刷装置100と、パウダー塗布装置200と、転写装置300と、制御装置400とを備える。
【0017】
印刷装置100は、制御装置400による制御に従って、転写用シートに転写用のインクで画像を印刷する。例えば、印刷装置100は、制御装置400から画像データを取得し、画像データに基づいて、転写用シート上において画像が印刷される領域である画像印刷領域を特定する。印刷装置100は、転写用シート上における画像印刷領域上に、画像データが示す画像に対応する転写用のカラーインクを吐出する。その後、印刷装置100は、転写用シート上における画像印刷領域上に、転写用の白色インクを吐出する。
【0018】
なお、転写用のカラーインクに転写用の白色インクを重ねる理由は、被転写媒体の生地の色の影響を抑制するためである。以下、適宜、転写用のカラーインクと転写用の白色インクとを総称して、転写用のインクという。転写用のインクとしては、顔料インク、UV(Ultraviolet)インク、溶剤インク等が採用可能である。本実施の形態では、転写用のインクは、顔料インクである。印刷装置100は、転写用シートを搬送する機能を有する。従って、印刷装置100は、搬送装置の一例である。
【0019】
パウダー塗布装置200は、印刷装置100により画像が印刷された転写用シートにパウダーを塗布する。具体的には、パウダー塗布装置200は、転写用シート上に塗布された白色インクが乾燥する前に、転写用シート上における白色インクが塗布された領域にパウダーを塗布する。このパウダーは、溶融すると接着性を発現する接着性用のパウダーである。パウダー塗布装置200は、例えば、転写用シートの全面にパウダーをまぶし、転写用シート上における白色インクが塗布された領域のみにパウダーを吸着させてもよい。
【0020】
転写装置300は、パウダー塗布装置200によりパウダーが塗布された転写用シートに描かれた画像を被転写媒体に転写する。転写装置300は、転写用シートに描かれた画像を熱転写により被転写媒体に転写する。つまり、転写装置300は、パウダーが塗布された面が被転写媒体と重なるように被転写媒体に重ねられた転写用シートに対して、熱と圧力とを加える。すると、パウダーが溶融して転写用シートと被転写媒体とが接着する。転写用シートと被転写媒体との冷却後に、被転写媒体から転写用シートが引き剥がされると、被転写媒体上に転写用のインクにより描かれた画像が残る。
【0021】
制御装置400は、印刷装置100を制御する装置である。例えば、制御装置400は、転写用シートに描くべき画像を示す画像データを印刷装置100に送信し、印刷装置100に画像の印刷を指示する。制御装置400は、印刷する画像の個数、印刷する画像のサイズ等を指定する情報を印刷装置100に送信してもよい。制御装置400は、印刷装置100と通信するための通信インターフェース(図示せず)を備える。制御装置400は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等である。
【0022】
なお、印刷システム1000では、ロール状の転写用シートが引き伸ばされて再度ロール状に巻き取られる間に、印刷装置100による転写用インクの塗布とパウダー塗布装置200によるパウダーの塗布とが順番に実行される。また、印刷システム1000では、パウダー塗布装置200によりパウダーが塗布された転写用シートが所望の大きさにカットされ、カットされた転写用シートと被転写媒体とに対して転写装置300による熱転写が実施される。
【0023】
印刷装置100とパウダー塗布装置200とは同一の設備内に設置され、印刷装置100と転写装置300とは異なる設備内に設置されてもよい。例えば、印刷装置100とパウダー塗布装置200とは、パウダーが塗布された転写用シートを製造する工場内に設置され、転写装置300は、転写印刷により画像が付与された被転写媒体を製造する工場内に設置されてもよい。なお、印刷装置100とパウダー塗布装置200とは、同期していなくてもよく、互いに通信しなくてもよい。
【0024】
次に、図2を参照して、印刷システム1000が実行する転写印刷について説明する。
【0025】
まず、印刷装置100は、転写用シート500に転写用のインクで画像を印刷する。転写用シート500は、印刷装置100による処理前の転写用シートである。転写用シート500は、フィルム層501と、剥離層502と、受容層503とを備える。
【0026】
フィルム層501は、剥離層502を介して受容層503を支持する層である。フィルム層501は、受容層503の土台となる層である。フィルム層501は、例えば、各種の樹脂により構成される層である。
【0027】
剥離層502は、フィルム層501と受容層503とを剥離可能に接合する層である。剥離層502は、被転写媒体に接着した転写用シート500が被転写媒体から引き剥がされるときに、フィルム層501と受容層503とを分離させるための層である。剥離層502は、例えば、フッ素系の剥離剤又はシリコン系の剥離剤により構成される層である。
【0028】
受容層503は、転写用のインクを受け止める層である。受容層503は、転写用のインクが吸着しやすい素材及び構造により構成されることが好適である。例えば、受容層503は、多孔質の素材により構成されることが好適である。また、受容層503は、例えば、PVA(Poly Vinyl Alcohol)とPVC(Poly Vinyl Cloride)とのうち少なくとも一方を含んで構成されることが好適である。
【0029】
印刷装置100は、転写用シート500における受容層503に転写用のカラーインクで画像を印刷する。その後、印刷装置100は、転写用シート500における転写用のカラーインクで画像が印刷された領域に転写用の白色インクを塗布する。印刷装置100は、転写用シート500に転写用のインクで画像を印刷することにより転写用シート510を生成する。
【0030】
転写用シート510は、フィルム層501と、剥離層502と、受容層503と、インク層504とを備える。インク層504は、転写用のインクを含む層である。インク層504は、受容層503に対して転写用のカラーインクと転写用の白色インクとが順に重ねられることにより、受容層503の表面又は内部に形成される層である。
【0031】
図2では、転写用のカラーインクの層と転写用の白色インクの層とを区別せず、転写用のカラーインクの層と転写用の白色インクの層とをまとめて1つの転写用のインクの層として示している。また、図2では、受容層503とインク層504とが積層された様子を示しているが、受容層503とインク層504とが一体化されていてもよい。
【0032】
パウダー塗布装置200は、転写用シート510におけるインク層504に接着用のパウダーを塗布する。パウダー塗布装置200は、転写用シート510に接着用のパウダーを塗布することにより転写用シート520を生成する。転写用シート520は、フィルム層501と、剥離層502と、受容層503と、インク層504と、パウダー層505とを備える。パウダー層505は、接着用のパウダーにより形成される層である。
【0033】
転写装置300は、転写用シート520に描かれた画像を生地600に熱転写する。具体的には、転写装置300は、パウダー層505が生地600と接するように生地600上に重ねられた転写用シート520に熱と圧力とを加える。すると、パウダー層505における接着用のパウダーが溶融する。溶融した接着用のパウダーが冷却されて固まると、転写用シート520と生地600とが接着する。生地600は、例えば、Tシャツの生地である。
【0034】
ここで、生地600に接着した転写用シート520が生地600から引き剥がされるとき、転写用シート520における剥離層502よりも外側の層であるフィルム層501は、生地600から剥離する。一方、転写用シート520における剥離層502よりも内側の層である受容層503、インク層504及びパウダー層505は、生地600の表面に残る。図2における印刷済み生地610は、生地600の表面にこれらの層が積層されて画像が付与された生地である。
【0035】
次に、図3を参照して、印刷装置100の構成について説明する。図3に示すように、印刷装置100は、制御部10と、記憶部21と、表示部22と、操作受付部23と、通信部24と、粘度調整機構30と、吐出ヘッド40と、ヘッド移動機構50と、シート搬送機構60と、加熱機構70とを備える。
【0036】
制御部10は、印刷装置100全体の動作を制御する。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、RTC(Real Time Clock)等を備える。CPUは、中央処理装置、中央演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)等とも呼び、印刷装置100の制御に係る処理及び演算を実行する中央演算処理部として機能する。制御部10において、CPUは、ROMに格納されているプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いて、印刷装置100を統括制御する。RTCは、例えば、計時機能を有する集積回路である。なお、CPUは、RTCから読み出される時刻情報から現在日時を特定可能である。制御部10は、転写用シート500に転写用のインクで画像を印刷する印刷部の一例である。
【0037】
記憶部21は、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の不揮発性の半導体メモリを備えており、いわゆる二次記憶装置又は補助記憶装置としての役割を担う。記憶部21は、制御部10が各種処理を実行するために使用するプログラム及びデータを記憶する。また、記憶部21は、制御部10が各種処理を実行することにより生成又は取得するデータを記憶する。例えば、記憶部21は、印刷装置100が制御装置400から受信した画像データを記憶する。
【0038】
表示部22は、制御部10による制御に従って、各種の画像を表示する。表示部22は、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ等を備える。操作受付部23は、ユーザから各種の操作を受け付け、受け付けた操作の内容を示す情報を制御部10に供給する。操作受付部23は、タッチスクリーン、ボタン、レバー等を備える。
【0039】
通信部24は、制御部10による制御に従って、各種の装置と通信する。通信部24は、各種の無線通信規格又は各種の有線通信規格に則って、各種の装置と通信する。各種の無線通信規格としては、Wi-Fi(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)等がある。各種の有線通信規格としては、USB(Universal Serial Bus、登録商標)、Thunderbolt(登録商標)等がある。通信部24は、各種の通信規格に準拠した通信インターフェースを備える。
【0040】
粘度調整機構30は、制御部10による制御に従って、吐出されるインクの粘度を調整するための機構である。吐出されるインクとしては、転写用のカラーインクと転写用の白色インクとがある。インクの粘度は、インクの温度に応じて変化する。具体的には、インクの温度が高いほどインクの粘度が低く、インクの温度が低いほどインクの粘度が高い。粘度調整機構30は、吐出されるインクの温度を調整することにより、吐出されるインクの粘度を調整する。粘度調整機構30は、インクが流れるインク流路(図示せず)と、制御部10による制御に従ってインク流路を加熱するヒータ(図示せず)と、制御部10による制御に従ってインク流路を冷却するクーラ(図示せず)と、インク又はインク流路の温度を測定する温度センサ(図示せず)とを備える。
【0041】
吐出ヘッド40は、制御部10による制御に従って、インクを吐出する。印刷装置100は、インクの種類毎に吐出ヘッド40を備える。つまり、印刷装置100は、転写用のカラーインクを吐出する吐出ヘッド40と、転写用の白色インクを吐出する吐出ヘッド40とを備える。吐出ヘッド40は、例えば、ピエゾ方式、サーマルヘッド方式等のインクジェット方式によりインクを吐出する。吐出ヘッド40は、インクジェットヘッドの一例である。
【0042】
ヘッド移動機構50は、制御部10による制御に従って、吐出ヘッド40を移動させる機構である。ヘッド移動機構50は、吐出ヘッド40を主走査方向に移動させる。主走査方向は、図4図5図6及び図7において、X軸方向である。なお、図4は、印刷装置100の外観図であり、印刷装置100の斜視図である。また、図5は、印刷装置100の側面図であり、印刷装置100をX軸の正の方向から見たときの図である。図6は、印刷装置100のシート挟持部65の側面図である。図7は、印刷装置100のシート挟持部65の斜視図である。
【0043】
図4図5図6及び図7において、Z軸は鉛直方向に延びる軸であり、X軸はZ軸と直交する軸であり、Y軸はX軸とZ軸とに直交する軸である。X軸の矢印が伸びる方向がX軸の正の方向、X軸の矢印が伸びる方向の反対方向がX軸の負の方向である。Y軸の矢印が伸びる方向がY軸の正の方向、Y軸の矢印が伸びる方向の反対方向がY軸の負の方向である。Z軸の矢印が伸びる方向がZ軸の正の方向、Z軸の矢印が伸びる方向の反対方向がZ軸の負の方向である。
【0044】
ヘッド移動機構50は、例えば、キャリッジ(図示せず)と、ガイドレール(図示せず)と、駆動ベルト(図示せず)と、駆動プーリ(図示せず)と、従動プーリ(図示せず)と、駆動モータ(図示せず)とを備える。キャリッジには、移動対象物である吐出ヘッド40が搭載される。ガイドレールは、キャリッジの規定方向への移動を案内する。駆動ベルトは、キャリッジに固定される。駆動プーリと従動プーリとには駆動ベルトが掛け回される。駆動モータは、駆動プーリを介して駆動ベルトを回転させ、キャリッジをX軸方向に移動させる。
【0045】
シート搬送機構60は、制御部10による制御に従って、転写用シート500を搬送する機構である。シート搬送機構60は、ロール状に巻かれた転写用シート500を引き伸ばし、転写用シート500を搬送方向に搬送する。搬送方向は、基本的に、Y軸の正の方向である。シート搬送機構60は、搬送ローラ61と、ピンチローラ62と、ローラ支持部63と、モータ64とを備える。図6及び図7におけるシート挟持部65は、シート搬送機構60における転写用シート500を挟み込む部分であり、搬送ローラ61とピンチローラ62とを備える。
【0046】
搬送ローラ61は、転写用シート500におけるフィルム層501と接触して回転するローラである。搬送ローラ61は、X軸方向に延びる回転軸を備える。搬送ローラ61は、モータ64による駆動力に従って回転軸を中心にして回転する。搬送ローラ61は、搬送ローラ61上に載せられた転写用シート500がX軸の正の方向に搬送されるように回転する。搬送ローラ61の表面には、格子状に突起が設けられている。搬送ローラ61は、各種の樹脂、ゴム等により構成される。
【0047】
ピンチローラ62は、転写用シート500における受容層503と接触して回転するローラである。ピンチローラ62は、X軸方向に延びる回転軸を備える。ピンチローラ62は、搬送ローラ61とともに転写用シート500を挟み込む。つまり、搬送ローラ61とピンチローラ62とがメディアである転写用シート500を両側から強い力で挟み込み、搬送ローラ61が回転することで転写用シート500が搬送方向に搬送される。
【0048】
本実施の形態では、ピンチローラ62における受容層503と接触する部分は、剥離層502よりも受容層503に粘着しにくい。従って、転写用シート500が搬送ローラ61とピンチローラ62とにより挟み込まれているとき、受容層503とピンチローラ62の表面との結合力は、受容層503と剥離層502との結合力よりも弱い。このため、本実施の形態では、転写用シート500の搬送時に、受容層503が剥離層502から剥がれてピンチローラ62の表面に付着することが抑制される。ピンチローラ62は、受容層503と接触する部位が剥離層502よりも受容層503に粘着しにくい難付着性物質により形成されている。
【0049】
ローラ支持部63は、ピンチローラ62を回転可能に支持する部材である。モータ64は、制御部10による制御に従って、搬送ローラ61を回転させる。モータ64は、例えば、電源(図示せず)から供給された電気エネルギーを、搬送ローラ61を回転させる力学的エネルギーに変換する。
【0050】
加熱機構70は、制御部10による制御に従って、転写用シート500を加熱する機構である。加熱機構70は、リアヒータ71と、アフターヒータ72とを備える。リアヒータ71は、画像が印刷される前の転写用シートである転写用シート500を加熱するヒータである。アフターヒータ72は、画像が印刷された後の転写用シートである転写用シート510を加熱するヒータである。リアヒータ71は、アフターヒータ72よりも、転写用シート500の搬送経路上における上流側に配置される。
【0051】
リアヒータ71は、例えば、ヒータ711と、被加熱部材712と、温度センサ(図示せず)とを備える。ヒータ711は、制御部10による制御に従って被加熱部材712を加熱するヒータである。被加熱部材712は、ヒータ711により加熱される部材である。転写用シート500は被加熱部材712上で搬送され、被加熱部材712の加熱により転写用シート500が加熱する。温度センサは、被加熱部材712の温度を測定するセンサである。
【0052】
アフターヒータ72は、例えば、ヒータ721と、被加熱部材722と、温度センサ(図示せず)とを備える。ヒータ721は、制御部10による制御に従って被加熱部材722を加熱するヒータである。被加熱部材722は、ヒータ721により加熱される部材である。転写用シート510は被加熱部材722上で搬送され、被加熱部材722の加熱により転写用シート510が加熱する。温度センサは、被加熱部材722の温度を測定するセンサである。
【0053】
次に、制御部10の主な機能について詳細に説明する。制御部10は、機能的には、データ生成部11と、粘度制御部12と、吐出制御部13と、移動制御部14と、搬送制御部15と、加熱制御部16とを備える。これらの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、ROM又は記憶部21に格納される。そして、CPUが、ROM又は記憶部21に記憶されたプログラムを実行することによって、これらの各機能を実現する。
【0054】
データ生成部11は、画像の印刷に必要な印刷制御用データを生成する。例えば、データ生成部11は、記憶部21に記憶された画像データに基づいて、吐出するインクの種類、インクの吐出量、吐出ヘッド40の移動量等を示す印刷制御用データを生成する。データ生成部11は、生成した印刷制御用データを記憶部21に記憶する。
【0055】
吐出制御部13は、吐出ヘッド40によるインクの吐出を制御する。吐出制御部13は、吐出ヘッド40を制御して、吐出ヘッド40にインクを吐出させる。吐出制御部13は、データ生成部11が生成した印刷制御用データに基づいて、吐出ヘッド40にインクを吐出させる。
【0056】
移動制御部14は、吐出ヘッド40の移動を制御する。具体的には、移動制御部14は、ヘッド移動機構50を制御して、吐出ヘッド40を主走査方向に移動させる。例えば、移動制御部14は、吐出ヘッド40によるインクの吐出が完了する毎に、吐出ヘッド40の主走査方向における位置を変化させる。
【0057】
搬送制御部15は、転写用シート500の搬送を制御する。具体的には、搬送制御部15は、シート搬送機構60を制御して、転写用シート500を搬送方向に搬送する。例えば、搬送制御部15は、転写用シート500の搬送方向の特定の位置における画像の印刷が完了する毎に、モータ64を規定角度分回転させて、転写用シート500を規定距離分搬送方向に搬送する。
【0058】
加熱制御部16は、転写用シート500及び転写用シート510の加熱を制御する。具体的には、加熱制御部16は、加熱機構70を制御して、転写用シート500及び転写用シート510を加熱する。例えば、加熱制御部16は、リアヒータ71を制御して、転写用シート500を加熱する。また、加熱制御部16は、アフターヒータ72を制御して、転写用シート510を加熱する。
【0059】
次に、図4図5とを参照して、印刷装置100が、転写用シート500を搬送しながら転写用シート500に画像を印刷する方法について説明する。
【0060】
まず、作業者は、印刷を実施する前に、図4図5とに示すように、紙管550にロール状に巻かれた転写用シート500を、印刷装置100が備えるロールホルダ80にセットする。ロールホルダ80は、紙管550の一端が嵌め込まれる突起部81と、突起部81を支持する支持部82と、紙管550の他端が嵌め込まれる突起部83と、突起部83を支持する支持部84とを備える。作業者は、紙管550の一端を突起部81に嵌め込み、紙管550の他端を突起部83に嵌め込む。これにより、ロールホルダ80が紙管550の両端から紙管550を挟み込み、転写用シート500を保持する。
【0061】
次に、作業者は、ロールホルダ80に保持されたロール状の転写用シート500を搬送経路に沿って引き伸ばす。具体的には、作業者は、転写用シート500を、リアヒータ71が備える被加熱部材712上、プラテン90上、及び、アフターヒータ72が備える被加熱部材722上を経由させて引き伸ばす。そして、作業者は、制御装置400を操作して、印刷装置100による印刷を開始する。なお、印刷装置100は、転写用シート500におけるプラテン90上の領域に対して画像を印刷する。
【0062】
印刷装置100は、印刷に先立って、リアヒータ71とアフターヒータ72とによる加熱を開始する。印刷装置100は、搬送ローラ61を回転させて、リアヒータ71により加熱された転写用シート500を搬送方向に搬送する。印刷装置100は、加熱された転写用シート500におけるプラテン90上に配置された領域に、転写用のカラーインクで画像を印刷する。
【0063】
また、印刷装置100は、転写用シート500におけるカラーインクで画像が印刷された領域に、白色インクを塗布する。印刷装置100は、搬送ローラ61を回転させて、白色インクが塗布された転写用シート510を、アフターヒータ72が備える被加熱部材722上まで搬送する。印刷装置100は、アフターヒータ72により加熱された転写用シート510をパウダー塗布装置200に供給する。
【0064】
次に、図6図7とを参照して、印刷装置100が、転写用シート500を搬送する方法について詳細に説明する。
【0065】
図6図7とに示すように、印刷装置100は、搬送ローラ61とピンチローラ62とで転写用シート500を挟み込んだ状態で、搬送ローラ61を回転させることにより、搬送ローラ61を搬送方向に搬送する。このとき、搬送ローラ61の表面が転写用シート500のフィルム層501の表面に押し当てられ、ピンチローラ62の表面が転写用シート500の受容層503の表面に押し当てられる。
【0066】
ここで、ロールホルダ80に装着されたロール状の転写用シート500を引き伸ばして搬送するためには、転写用シート500を強い力で挟み込む必要がある。つまり、転写用シート500を挟み込む力が弱いと、搬送ローラ61の表面と転写用シート500のフィルム層501の表面との間で滑りが生じる。この場合、搬送ローラ61が空回りし、転写用シート500を適切に搬送できない。このため、印刷装置100は、転写用シート500の搬送時、転写用シート500を搬送ローラ61とピンチローラ62とで強い力で挟み込む。
【0067】
ところで、転写用シート500の受容層503は、転写用のインクを受け止める必要があるため、粘着力が強くなるように設計される。例えば、受容層503の素材として粘着力が強い素材が採用され、受容層503の構造としては粘着力が強い多孔質構造が採用される。このため、転写用シート500を搬送ローラ61とピンチローラ62とで強い力で挟み込むと、転写用シート500から受容層503が剥がれ落ち、剥がれた受容層503がピンチローラ62の表面に付着する可能性がある。
【0068】
以下、図8を参照して、比較例に係るピンチローラ62Aを採用した場合に、転写用シート500から受容層503が剥がれ落ちる様子について説明する。なお、ピンチローラ62Aの表面は一般的なゴムにより構成され、ピンチローラ62Aの表面の粘着力は高いものとする。この場合、ピンチローラ62Aにおける受容層503と接触する部分は、剥離層502よりも、受容層に粘着しやすい可能性がある。
【0069】
図8の上段に、搬送ローラ61とピンチローラ62とでメディアである転写用シート500を両側から強い力で挟み込み、搬送ローラ61を回転させることで転写用シート500を搬送方向に搬送する様子を示す。図8の中段に、受容層503の一部が、剥離層502から剥がれ落ち、ピンチローラ62Aの表面に付着した様子を示す。なお、領域503Aは、受容層503が剥離層502から剥がれ落ちていない領域であり、領域503Bは、受容層503が剥離層502から剥がれ落ちた領域である。
【0070】
図8の下段に、ピンチローラ62Aの表面に付着した受容層503の一部が、ピンチローラ62Aの表面から剥がれ落ち、受容層503の表面に付着した様子を示す。なお、領域503Cは、ピンチローラ62Aの表面に付着した受容層503の一部が受容層503の表面に付着した領域である。
【0071】
図8に示すように、比較例に係るピンチローラ62Aを採用すると、転写用シート500の表面に、受容層503の厚みの差違に起因する凹凸が生じる可能性がある。例えば、受容層503が剥がれた領域503Bは周囲の領域よりも窪み、受容層503が付着した領域503Cは周囲の領域よりも突出する。
【0072】
なお、図8には、受容層503の層全体が転写用シート500から剥がれた例を示したが、受容層503の一部の層が転写用シート500から剥がれる可能性もある。例えば、受容層503の上方の層のみが転写用シート500から剥がれ、受容層503の下方の層が転写用シート500に残る可能性もある。
【0073】
転写用シート500の表面に凹凸が生じると、適切な印刷、適切なパウダー塗布、適切な熱転写等が実現できない可能性が高い。つまり、転写用シート500の表面に凹凸が生じると、適切な転写印刷が実現できない可能性が高い。そこで、本実施の形態では、比較例に係るピンチローラ62Aよりも受容層503に粘着しにくいピンチローラ62が採用される。
【0074】
ピンチローラ62は、受容層503に粘着しにくいように構成される。典型的には、ピンチローラ62は、受容層503と接触する部位が剥離層502よりも受容層503に粘着しにくい難付着性物質で形成されている。難付着性物質としては、フッ素含有化合物、シリコン含有化合物、含油POM(Polyoxymethylene)等が考えられる。つまり、ピンチローラ62における受容層503と接触する部位は、フッ素含有化合物、シリコン含有化合物、含油POMから選ばれる少なくとも1つの難付着性物質で形成される。なお、ピンチローラ62における受容層503と接触しない部位は、難付着性物質で形成されていてもよいし、難付着性物質でない物質で形成されていてもよい。難付着性物質でない物質としては、ゴム、スポンジ等が考えられる。
【0075】
このように、ピンチローラ62の表面を剥離層502よりも受容層503に粘着しにくくすることで、受容層503が剥離層502から剥離することが抑制される。なお、ピンチローラ62の表面と受容層503との粘着力が、剥離層502と受容層503との粘着力よりも弱い程度の粘着力であれば、受容層503の上部の層のみが転写用シート500から剥がれてピンチローラ62の表面に付着する可能性も低いと考えられる。
【0076】
本実施の形態では、ピンチローラ62における受容層503と接触する部分は、剥離層502よりも、受容層503に粘着しにくい。従って、本実施の形態では、転写用シート500の搬送時に、受容層503が剥離層502から剥離することが抑制される。従って、本実施の形態によれば、適切な転写印刷が期待できる。
【0077】
また、本実施の形態では、ピンチローラ62は、受容層503と接触する部位が剥離層502よりも受容層に粘着しにくい難付着性物質で形成されている。従って、本実施の形態では、転写用シート500の搬送時に、受容層503が剥離層502から剥離することが適切に抑制される。
【0078】
(変形例)
以上、実施の形態を説明したが、種々の形態による変形及び応用が可能である。上記実施の形態において説明した構成、機能、動作のどの部分を採用するのかは任意である。また、上述した構成、機能、動作のほか、更なる構成、機能、動作が採用されてもよい。また、上記実施の形態において説明した構成、機能、動作は、自由に組み合わせることができる。
【0079】
実施の形態では、ロール状に巻かれた転写用シート500が、印刷時に引き伸ばされて搬送される例について説明した。転写用シート500がロール状に巻かれていなくてもよい。この場合であっても、受容層503が剥離層502から剥離することが抑制される効果が期待できる。
【0080】
実施の形態では、被転写媒体の生地の色の影響を抑制するため、転写用のカラーインクに転写用の白色インクを重ねる例について説明した。転写用のカラーインクに転写用の白色インクを重ねられなくてもよい。
【0081】
実施の形態では、制御部10において、CPUがROM又は記憶部21に記憶されたプログラムを実行することによって、図3に示した各部として機能した。しかしながら、本開示において、制御部10は、専用のハードウェアであってもよい。専用のハードウェアとは、例えば単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらの組み合わせ等である。制御部10が専用のハードウェアである場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現してもよいし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現してもよい。また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現してもよい。このように、制御部10は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は、これらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0082】
本開示に係る印刷装置100の動作を規定する動作プログラムを既存のパーソナルコンピュータ又は情報端末装置等のコンピュータに適用することで、当該コンピュータを、本開示に係る印刷装置100として機能させることも可能である。また、このようなプログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD-ROM(Compact Disk ROM)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、又は、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。
【0083】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。すなわち、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、本開示の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0084】
10 制御部
11 データ生成部
12 粘度制御部
13 吐出制御部
14 移動制御部
15 搬送制御部
16 加熱制御部
21 記憶部
22 表示部
23 操作受付部
24 通信部
30 粘度調整機構
40 吐出ヘッド
50 ヘッド移動機構
60 シート搬送機構
61 搬送ローラ
62,62A ピンチローラ
63 ローラ支持部
64 モータ
65 シート挟持部
70 加熱機構
71 リアヒータ
72 アフターヒータ
80 ロールホルダ
81,83 突起部
82,84 支持部
90 プラテン
100 印刷装置
200 パウダー塗布装置
300 転写装置
400 制御装置
500,510,520 転写用シート
501 フィルム層
502 剥離層
503 受容層
503A,503B,503C 領域
504 インク層
505 パウダー層
600 生地
610 印刷済み生地
711,721 ヒータ
712,722 被加熱部材
1000 印刷システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8