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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118987
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】チューブ
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/06 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
F16L11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025636
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水田 啓文
(72)【発明者】
【氏名】日置 友哉
(72)【発明者】
【氏名】浅香 茉彩
(72)【発明者】
【氏名】亀野 峻介
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111BA34
3H111CB02
3H111CB14
3H111DA26
3H111EA04
(57)【要約】
【課題】低アウトガス性と振動伝播抑制性とを両立するチューブを提供する。
【解決手段】熱可塑性ポリエステルエラストマーで構成されたチューブ10であって、チューブ10は、チューブ10をU字状に保持してチューブ10の一方の端部に振動を与えたときの、チューブ10における振動の伝播により生じるチューブ10の他方の端部の振幅が、イソフタル酸の含有量が10モル%未満のポリエステルエラストマーで構成された対照チューブよりも小さい構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステルエラストマーで構成されたチューブであって、
前記チューブは、前記チューブをU字状に保持して前記チューブの一方の端部に振動を与えたときの、前記チューブにおける前記振動の伝播により生じる前記チューブの他方の端部の振幅が、イソフタル酸の含有量が10モル%未満のポリエステルエラストマーで構成された対照チューブよりも小さい
チューブ。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリエステルエラストマーは、全ジカルボン酸成分に対してイソフタル酸を10~30モル%含有するジカルボン酸成分とジオール成分とから構成されたポリエステルを含むハードセグメントと、脂肪族ジオールを炭酸エステル化してなる脂肪族ポリカーボネートを含むソフトセグメントとが結合されて構成されている
請求項1に記載のチューブ。
【請求項3】
前記ハードセグメントと前記ソフトセグメントとの質量比は、65:35~95:5である
請求項2に記載のチューブ。
【請求項4】
前記チューブは、外径6mm内径4mmの形状を有するときに、前記チューブの一方の端部に周波数範囲30~80Hzの振動を与えたときの前記チューブの他方の端部の振幅が0.012mm以下である
請求項1に記載のチューブ。
【請求項5】
前記チューブは、外径6mm内径4mm及び長さ234mmの形状を有して曲げ半径30mmで保持されたときに、前記チューブの一方の端部に加速度50m/sで周波数範囲30~80Hzの振動を与えたときの前記チューブの他方の端部の振幅が0.012mm以下である
請求項1に記載のチューブ。
【請求項6】
前記チューブから放出されるアウトガスがシロキサンを含有しない
請求項1に記載のチューブ。
【請求項7】
60分間で前記チューブから放出される前記アウトガスの単位面積当たりの量が、100μg/m以下である
請求項6に記載のチューブ。
【請求項8】
20℃の水中で前記チューブを破壊したときの破壊応力値が8MPa以上である
請求項1に記載のチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造が行われるクリーンルーム内の半導体製造装置において、シリコンウエハへの汚染を防止するために、水分や化学物質(有機ガス状であることが多い)等の汚染物質の発生(以下「アウトガス」という)を極力防止することが要求される。特に、シリコンウエハに吹き付ける純水やクリーンエアを流通させるチューブにおいては、発生するアウトガスの抑制が極めて重要である。
【0003】
半導体製造装置に使用されるチューブとしては、例えばフッ素樹脂製のチューブ、ポリエステル系樹脂製のチューブ、及びウレタン樹脂製のチューブが知られている。フッ素樹脂製やポリエステル系樹脂製のチューブは、低アウトガス性であるが、柔軟性に劣り、折れ等が発生した後に元の形状に戻りにくくなる性質(耐キンク性)に劣っている。ウレタン樹脂製のチューブは、柔軟性や耐キンク性に優れるがアウトガス量が多い。
【0004】
特許文献1には、内層および外層の2層を有する樹脂チューブであって、このうち、純水またはクリーンエアと接触する層に、ポリイソシアネートであるハードセグメントとポリカーボネート系ポリオールであるソフトセグメントを共重合させたポリマー材料を用い、他の層にポリエーテル系ポリウレタン樹脂を用いた樹脂チューブが開示されている。当該樹脂チューブは、アウトガス発生量が少なく、クリーンルーム内の半導体製造用ウエハを汚染しにくいものであることが記載されている。
【0005】
特許文献2には、厚さ1.7mmの樹脂シートとしたときの、引張弾性率(引張速度200mm/min)が3.3MPa以下であり、拡散係数が1.00×10-112/s未満であり、ポリイソシアネートに由来する構成単位、長鎖ポリオールに由来する構成単位、及び鎖延長剤に由来する構成単位を含み、ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数と、長鎖ポリオール及び前記鎖延長剤が有するイソシアネート反応性基のモル数との比[イソシアネート基/イソシアネート反応性基]が0.9~1.3であり、長鎖ポリオールに由来する構成単位のモル数と鎖延長剤に由来する構成単位のモル数の比[長鎖ポリオール/鎖延長剤]が0.05~10である熱可塑性ウレタン樹脂を用いたチューブが開示されている。当該熱可塑性ウレタン樹脂を用いたチューブは、低アウトガス性に優れ、柔軟性、耐キンク性に優れたものであることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5367342号公報
【特許文献2】特許第7110064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体装置は、小型化及び高集積化とともに回路の微細化が進められている。半導体製造においては、微細化が進められた半導体装置の製造において、半導体製造装置に使用されているポンプ等で発生する振動がチューブを伝って半導体製造装置に伝播すると、回路の描画に影響を与え、半導体装置の生産性が低下することがある。半導体製造装置に使用されるチューブには、振動の伝播を抑制する振動伝播抑制性が求められる。
【0008】
半導体製造装置において、低アウトガス性を求められる箇所においては、フッ素樹脂製のチューブ及びポリエステル系樹脂製のチューブが用いられるが、これらのチューブの振動伝播抑制性は低い。
【0009】
半導体製造装置において、振動の伝播を抑制したい箇所においては、柔軟なウレタン樹脂製のチューブが用いられるが、アウトガス量は多く、半導体製造装置の中でも厳しい低アウトガス性が求められない箇所にしか適用されない。
【0010】
上記のように、半導体製造装置に用いられるチューブおいて、低アウトガス性と振動伝播抑制性とを両立するのは困難である。
【0011】
そこで本発明は、低アウトガス性と振動伝播抑制性とを両立するチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るチューブは、熱可塑性ポリエステルエラストマーで構成されたチューブであって、前記チューブは、前記チューブをU字状に保持して前記チューブの一方の端部に振動を与えたときの、前記チューブにおける前記振動の伝播により生じる前記チューブの他方の端部の振幅が、イソフタル酸の含有量が10モル%未満のポリエステルエラストマーで構成された対照チューブよりも小さい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低アウトガス性と振動伝播抑制性とを両立するチューブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態のチューブの長手方向に垂直な面での断面図である。
図2】振動伝播試験装置の概略構成を示す図である。
図3】振動伝播試験結果を示すグラフである。
図4】柔軟性試験装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかしながら、以下に説明する形態は、あくまで例示であって、当業者にとって自明な範囲で適宜修正することができる。
【0016】
<実施形態>
(チューブ10の構成)
図1は本実施形態のチューブ10の長手方向に垂直な面での断面図である。本実施形態のチューブ10は、熱可塑性ポリエステルエラストマーで構成された単層の中空のチューブである。
【0017】
チューブを構成する熱可塑性ポリエステルエラストマーは、ポリエステルを含むハードセグメントと、脂肪族ポリカーボネートを含むソフトセグメントとが結合されて構成されている。
【0018】
ハードセグメントに含まれるポリエステルは、ジカルボン酸成分とジオール成分とから構成されている。
【0019】
ポリエステルを構成するジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸が挙げられる。ジカルボン酸は、全ジカルボン酸成分に対して、テレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸のいずれか又は両方を70~90モル%含有することが好ましい。ジカルボン酸は、全ジカルボン酸成分に対して、イソフタル酸を10~30モル%含有する。イソフタル酸が10モル%未満では、振動伝播抑制性が低下し、30モル%超では耐熱性が低下するので好ましくない。ジカルボン酸は、ジフェニルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸を含んでいてもよい。
【0020】
ポリエステルを構成するジオールとしては、例えば1,4-ブタンジオールが挙げられ、全ジオール成分に対して80モル%以上含有することが好ましい。ジオールは、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオールを含んでいてもよい。
【0021】
ソフトセグメントに含まれる脂肪族ポリカーボネートは、脂肪族ジオールを炭酸エステル化してなるものである。
【0022】
脂肪族ポリカーボネートを構成する脂肪族ジオールは、炭素数5~12の脂肪族ジオールであることが好ましい。脂肪族ジオールとしては、例えば、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールが挙げられる。脂肪族ジオールは、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールを含んでいてもよい。
【0023】
脂肪族ポリカーボネートは、他のグリコール、ジカルボン酸、エステル化合物あるいはエーテル化合物を少量共重合させたものでもよい。
【0024】
上記のポリエステルを含むハードセグメントと、脂肪族ポリカーボネートを含むソフトセグメントとが結合されて構成されている熱可塑性ポリエステルエラストマーにおいて、ハードセグメントとソフトセグメントとの質量比は、65:35~95:5が好ましく、70:30~88:12が特に好ましい。
【0025】
本実施形態のチューブ10は、チューブ10をU字状に保持してチューブ10の一方の端部に振動を与えたときの、チューブ10における振動の伝播により生じるチューブ10の他方の端部の振幅が、イソフタル酸を含有しないポリエステルエラストマーで構成された対照チューブよりも小さい。チューブ10は、上記のポリエステルを含むハードセグメントと、脂肪族ポリカーボネートを含むソフトセグメントとが結合されて構成されている熱可塑性ポリエステルエラストマーで構成されていることにより、高い振動伝播抑制性を実現できる。
【0026】
チューブ10は、外径、内径及び肉厚について限定はされないが、例えば外径6mm、内径4mm、肉厚1mmである。
【0027】
本実施形態のチューブ10は、単層構成であるが、厚み方向に異なる樹脂材料が積層した多層構成であってもよく、この場合には多層構成のうちの少なくとも1層が、上記のポリエステルを含むハードセグメントと、脂肪族ポリカーボネートを含むソフトセグメントとが結合されて構成されている熱可塑性ポリエステルエラストマーで構成されている。
【0028】
本実施形態のチューブ10は、チューブ10から放出されるアウトガスがシロキサンを含有せず、例えば60分間でチューブ10から放出されるアウトガスの単位面積当たりの量が、100μg/m以下であることが好ましい。チューブ10は、チューブ10の外側表面からのアウトガスと、チューブ10の内側表面から流路へのアウトガスとのいずれか一方または両方が抑制されていることが好ましい。
【0029】
本実施形態のチューブ10は、20℃の水中でチューブ10を破壊したときの破壊応力値が8MPa以上であることが好ましい。
【0030】
本実施形態のチューブ10は、半導体製造装置において純水やクリーンエア等の流体を流通させるチューブとして好ましく適用することができる。
【0031】
(チューブ10の作用・効果)
本実施形態のチューブ10によれば、上記の熱可塑性ポリエステルエラストマーで構成されていることにより、高い振動伝播抑制性を実現でき、また、ポリエステルエラストマーで構成されているので低アウトガス性を実現できる。
【0032】
さらに、本実施形態のチューブ10によれば、高い柔軟性及び耐圧性を確保できる。
【0033】
(チューブ10の製造方法)
次に上記のように構成されたチューブ10の製造方法を説明する。チューブ10は、原料である熱可塑性ポリエステルエラストマーを用いて押出成形によって形成される。チューブを多層構成とする場合には、例えば内側の層を押出形成した後に内側の層の外周面に外側の層を押出成形により積層する方法、あるいは、内側の層と外側の層とを共押出成形して熱融着する方法により形成され、この場合には、多層構成のうちの少なくとも1層を上記の熱可塑性ポリエステルエラストマーで形成する。
【0034】
<実施例>
上記の製造方法に示した手順で、実施例1~3及び比較例1~3に係るチューブを作製し、評価を行った。実施例1~3及び比較例1~3に係るチューブは、外径が6.0mm、内径が4.0mm、肉厚が1.0mmとした。
【0035】
実施例1は、イソフタル酸を含有するポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリカーボネートを含有するソフトセグメントとが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマーを用いて作製した。
【0036】
実施例2は、イソフタル酸を含有するポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリカーボネートを含有するソフトセグメントとが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマーであり、実施例1とは組成が異なる材料を用いて作製した。
【0037】
実施例3は、イソフタル酸を含有するポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリカーボネートを含有するソフトセグメントとが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマーであり、実施例1及び実施例2とは組成が異なる材料を用いて作製した。
【0038】
比較例1は、テレフタル酸とジオールからなるポリエステルからなるハードセグメントと、ポリエステルからなるソフトセグメントとが結合されてなる熱可塑性ポリエステルエラストマーを用いて作製した。
【0039】
比較例2は、エーテル系ポリウレタンからなる熱可塑性ポリウレタンエラストマーを用いて作製した。
【0040】
比較例3は、四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンの共重合体からなるフッ素樹脂を用いて作製した。
【0041】
作製したチューブの構成を表1に示す。上記のように作製したチューブに対し、以下に示す各種評価を行った。
【0042】
(振動伝播試験)
図2に示す振動伝播試験装置20を用いて実施例1~3及び比較例1~3のチューブの振動伝播特性を評価した。長さ234mmの試験用のチューブ10を準備した。加振台21に固定されたマニホールド22に、継手23を用いてチューブ10の一方の端部を固定した。また、固定用柱24に、継手25を用いてチューブ10の他方の端部を固定した。このとき、チューブ10は、曲げ半径30mmのU字状となるようにして取り付けた。加振台21が加えた振動がチューブ10の一方の端部からどの程度チューブ10の他方の端部に伝播したかをチューブ10の他方の端部の側の継手25に固定された加速度センサー26により測定した。なお、加振台21はy軸方向に振動し、加速度センサー26はy軸方向のみ検知するようにした。また、振幅は加速度/(2π×周波数)にて変換して得た。加振の条件は、周波数範囲を30~80Hz、加速度を50m/s、掃引方向を30Hzから80Hzとした。
【0043】
上記の振動伝播試験による各実施例及び比較例の振幅を求めた。30~80Hzの時の加速度センサー26が感知する最大加速度から算出した振幅について、比較例2のチューブの振幅0.012mmを判定基準とし、判定基準を満たす0.012mm以下の場合を良好な結果として○で示した。結果を表1の「振動伝播試験」の欄に記載した。
【0044】
図3は振動伝播試験結果を示すグラフである。図3は30~80Hzの周波数を掃引したときの振幅を示し、aは実施例1、bは実施例2、cは実施例3、dは比較例1、eは比較例2、fは比較例3を示す。比較例1及び比較例3では、振幅が大きくなる周波数があったが、実施例1~3では30~80Hzの全周波数域において低い振幅を維持していた。
【0045】
(アウトガス試験)
実施例1~3及び比較例1~3のチューブのアウトガス性を評価した。両端にアルミ栓をしたチューブ(有効長10cm)を23℃で1時間加熱し、チューブ外面から発生したガスを-30℃でコールドトラップし、このトラップされたガス成分について、加熱脱着法により注入し、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)による測定を行った。そして、フェノール類のアウトガス量を抽出した。また、キャリアガスとしてヘリウム、カラムはDB-1(1.0μm、0.32mmφ×60m)を使用し、カラム温度は40℃(2min.)→10℃(1min.)→250℃(10min.)と変化させた。カラム圧力は80kPa、イオン源温度は200℃とした。
【0046】
上記のアウトガス試験による各実施例及び比較例のアウトガス量を求めた。アウトガス量について、比較例1の測定結果にばらつきを考慮して100μg/mを判定基準とし、判定基準を満たす100μg/m以下の場合を良好な結果として○で示し、100μg/m超の場合を良好ではない結果として×で示した。結果を表1の「アウトガス試験」の欄に記載した。
【0047】
(耐圧性試験)
実施例1~3及び比較例1~3のチューブの耐圧性を評価した。試験長180mmの各チューブを水中に5分間浸漬させた後、水で加圧することにより破壊させ、破壊時の最高圧力とチューブ寸法から破壊時の最高応力を算出した。算出式は、破壊応力=破壊圧力×(チューブ外径-チューブ肉厚)/(2×チューブ肉厚)とした。試験条件は、昇圧速度を0.12MPa/s、加圧媒体を水、試験温度を20℃とした。
【0048】
上記の耐圧性試験による各実施例及び比較例の破壊応力を求めた。破壊応力について、半導体製造装置に採用実績のある比較例1のチューブで必要な耐圧強度は3.2MPaであり、この時の破壊応力は8.0MPaであることから、8.0MPaを判定基準とした。判定基準を満たす8.0MPa以上の場合を良好な結果として○で示し、8.0MPa未満の場合を良好ではない結果として×で示した。結果を表1の「破壊応力」の欄に記載した。
【0049】
(柔軟性試験)
図4に示す柔軟性試験装置31を用いて、柔軟性を評価した。まずチューブ10を恒温恒湿室(23℃、50%RH)で24時間以上静置させた後、柔軟性試験装置31の固定部32及び可動部33の間に取り付けた。なお、チューブ10は、長さ(mm)=π((R+OD)/2)+(2×OD)(ODはチューブ外径)で求めた長さに切断した。ここで、R:試験開始時のチューブ曲げ半径(mm)、OD:チューブ外径(mm)であり、本試験では336mmとした。レール上に設けられた可動部33を100mm/分の速度で固定部32に向かって移動させることにより、チューブ10を徐々に曲げていき、R40(曲げ半径40mm)時の曲げ荷重をロードセルの荷重により読み取った。
【0050】
試験数を5とし、各実施例及び比較例のR40時曲げ荷重の平均を求めた。曲げ荷重について、比較例3のチューブのR40曲げ荷重4.2Nを判定基準とし、判定基準を満たす4.2N以下の場合を良好な結果として○で示した。結果を表1の「柔軟性試験」の欄に記載した。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示すとおり、実施例1~3のチューブは、高い振動伝播抑制性を実現でき、低アウトガス性を実現できた。さらに、柔軟性及び耐圧性は良好であった。
【0053】
比較例1及び比較例3のチューブは、振動伝播抑制性が十分ではなかった。比較例2のチューブは、アウトガス性及び耐圧性が十分ではなかった。
【符号の説明】
【0054】
10 チューブ
20 振動伝播試験装置
21 加振台
22 マニホールド
23、25 継手
24 固定用柱
26 加速度センサー
31 柔軟性試験装置
32 固定部
33 可動部
R 曲げ半径
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
(柔軟性試験)
図4に示す柔軟性試験装置31を用いて、柔軟性を評価した。まずチューブ10を恒温恒湿室(23℃、50%RH)で24時間以上静置させた後、柔軟性試験装置31の固定部32及び可動部33の間に取り付けた。なお、チューブ10は、長さ(mm)=π(R+OD/2)+(2×OD)(ODはチューブ外径)で求めた長さに切断した。ここで、R:試験開始時のチューブ曲げ半径(mm)、OD:チューブ外径(mm)であり、本試験では336mmとした。レール上に設けられた可動部33を100mm/分の速度で固定部32に向かって移動させることにより、チューブ10を徐々に曲げていき、R40(曲げ半径40mm)時の曲げ荷重をロードセルの荷重により読み取った。