(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118990
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B26D 7/26 20060101AFI20240826BHJP
B26D 5/00 20060101ALI20240826BHJP
B26D 1/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B26D7/26
B26D5/00 F
B26D1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025643
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】保科 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】篠原 秀章
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 怜
【テーマコード(参考)】
3C021
3C024
3C027
【Fターム(参考)】
3C021JA09
3C024AA07
3C027AA05
(57)【要約】
【課題】加工対象物の加工を適切に行えるようにする。
【解決手段】カッティングプロッタ1は、加工対象物Tの加工用のツール8と、ツール8をY方向に往復動作させる駆動機構5Cと、を有する。ツール8は、刃物10を保持するものであり、ツール8には、刃物10の角度をY方向に対して調整可能とする角度調整機構100が含まれている。角度調整機構10では、刃物10の位置決めを行うと共に位置決めされた位置で固定する位置決定手段としての孔組84(84A~84E)が、複数の角度に応じて設けられている。位置決定手段は、刃物が位置決め及び固定された際に、複数の角度によらず刃物10の刃先10Aの位置が一定になる位置に設けられている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物の加工用のツールと、
前記ツールを一方向に往復動作させる駆動機構と、を有する加工装置であって、
前記ツールは、刃物を保持するものであり、
前記ツールには、前記刃物の角度を前記一方向に対して調整可能とする角度調整機構が含まれており、
前記角度調整機構は、前記刃物の位置決めを行うと共に前記位置決めされた位置で固定する位置決定手段が、複数の前記角度に応じて設けられており、
前記位置決定手段は、前記刃物が位置決め及び固定された際に、前記複数の角度によらず前記刃物の刃先の位置が一定になる位置に設けられている、加工装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記刃物は、前記刃先に向けて板状に延設される形状とされており、
前記位置決定手段と前記刃先との間は、前記刃物の延設方向の途中で屈曲する形状とされている、加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ツールは、
前記刃物を支持する刃物ホルダと、
前記刃物ホルダの取付面を持つ被取付部材と、を有しており、
前記取付面には、前記位置決定手段としての一対の係合点が複数組設定されており、
前記刃物ホルダを、選択した一対の係合点で前記取付面に取り付けると、前記刃物ホルダで保持された刃物が、前記選択した一対の係合点に応じて決まる角度で配置される、加工装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記取付面に対する前記刃物ホルダの取付方向から見て、
前記一対の係合点は、
前記取付面に取り付けた前記刃物ホルダが支持する前記刃物の先端を中心とする第1の仮想円上に位置する第1の係合点と、前記第1の仮想円よりも径が小さく、かつ前記第1の仮想円と同芯の第2の仮想円上に位置する第2の係合点で構成され、
前記取付面において前記複数組の前記一対の係合点は、前記第1の仮想円の周方向に位相をずらして設定されている、加工装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、
前記刃物ホルダは、前記取付面との対向部に、一対の係合点を有しており、
前記刃物ホルダは、当該刃物ホルダ側の一対の係合点を、前記取付面で選択した一対の係合点に一致させて前記取付面に取り付けられる、加工装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記被取付部材は、厚み方向の両面に前記取付面を持つ板状部材である、加工装置。
【請求項7】
請求項3から請求項6の何れか一項において、
前記被取付部材において前記刃物ホルダは、前記取付面側の係合点と、前記刃物ホルダ側の係合点に跨がる係合ピンにより位置決めされる、加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カッティングプロッタは、カッティング用のツール(刃物)を、加工対象物に押しつけつつ、加工対象物に対して相対移動させることで、加工対象物へのカットラインの形成や、加工対象物へのV溝の形成などを行う加工装置である。
例えば、加工対象物が、接着面が離型紙で覆われたラベルシールである場合、カッティングプロッタは、文字や図柄などの情報が印刷されたラベルシールに、文字や図柄の領域を囲むようにカットラインを形成する。
【0003】
カットラインの形成は、テーブルに載置された加工対象物に対して、カッティング用のツールを、テーブル面に沿う水平線方向の2方向(X方向、Y方向)と、鉛直線方向の1方向(Z方向)に相対変位させながら実施される。
【0004】
ここで、インクジェット印刷装置には、インクジェットヘッドが搭載されるキャリッジをY方向に変位させる機構と、X方向に変位させる機構と、有するものがある。
このインクジェット印刷装置では、キャリッジのY方向への変位に伴うインクジェットヘッドのY方向の変位と、媒体のX方向への変位を制御して、インクジェットヘッドと、テーブル上の媒体とを2方向(X方向、Y方向)で相対変位させる。この際に、インクジェット印刷装置では、インクジェットヘッドから媒体に向けてインク滴を吐出させることで、文字や図柄などの情報を媒体に印刷する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
カッティング用のツール(刃物)を、インクジェットヘッドに代えてキャリッジに搭載することで、カッティング用のツールと加工対象物とを、X方向とY方向で相対変位させることができる。
【0007】
ここで、加工装置では、加工対象物の加工方法に応じて決まる専用のツールを用いて、加工対象物の加工を行う。そのため、加工装置では、加工方法に応じてツールを変更する必要がある。
特に、被加工媒体に形成するV溝には、傾きが異なるものが複数ある。そのため、形成するV溝の傾きに応じて、刃先の傾きが異なるツールを複数用意しておき、形成する溝Vが変更される度にツールを交換する必要がある。
V溝の形成に用いるツールは、加工装置に取り付けた際に、刃先位置を精度良く位置決めする必要がある。そのため、ツールの交換に要する作業コストが増大する傾向がある。
そして、位置精度が悪い場合には、加工対象物の加工精度に影響が及ぶ可能性がある。。そこで、加工対象物の加工を適切に行えるようにすることが好ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(1)加工対象物の加工用のツールと、
前記ツールを一方向に往復動作させる駆動機構と、を有する加工装置であって、
前記ツールは、刃物を保持するものであり、
前記ツールには、前記刃物の角度を前記一方向に対して調整可能とする角度調整機構が含まれており、
前記角度調整機構は、前記刃物の位置決めを行うと共に前記位置決めされた位置で固定する位置決定手段が、複数の前記角度に応じて設けられており、
前記位置決定手段は、前記刃物が位置決め及び固定された際に、前記複数の角度によらず前記刃物の刃先の位置が一定になる位置に設けられている、加工装置。
【0009】
このように構成すると、刃物の角度を変更しても、刃先の位置を常に同じ位置に配置できる。これにより、刃物の角度を変更する度に刃先の位置を調整する必要が無いので、加工対象物の加工精度を確保できる。
【0010】
(2)上記(1)において、
前記刃物は、前記刃先に向けて板状に延設される形状とされており、
前記位置決定手段と前記刃先との間は、前記刃物の延設方向の途中で屈曲する形状とされている、加工装置。
【0011】
このように構成することによっても、刃物の角度を変更する度に刃先の位置を調整する必要が無いので、加工対象物の加工精度を確保できる。
【0012】
(3)上記(1)または(2)において、
前記ツールは、
前記刃物を支持する刃物ホルダと、
前記刃物ホルダの取付面を持つ被取付部材と、を有しており、
前記取付面には、前記位置決定手段としての一対の係合点が複数組設定されており、
前記刃物ホルダを、選択した一対の係合点で前記取付面に取り付けると、前記刃物ホルダで保持された刃物が、前記選択した一対の係合点に応じて決まる角度で配置される、加工装置。
【0013】
このように構成すると、取付面に複数ある一対の係合点の中から、刃物の角度が合致する一対の係合点を選択して、選択した一対の係合点を用いて刃物ホルダを被取付部材の取付面に取り付けることで、刃物を所望の角度を向けて配置できる。
これにより、刃物の角度は、選択した一対の係合点に応じて決まるので、一対の係合点を選択するだけで、刃物を所望の角度で精度良く配置できる。よって、刃物の角度の触れに起因する加工精度の低下を好適に防止できる。
【0014】
(4)上記(3)において、
前記取付面に対する前記刃物ホルダの取付方向から見て、
前記一対の係合点は、
前記取付面に取り付けた前記刃物ホルダが支持する前記刃物の先端を中心とする第1の仮想円上に位置する第1の係合点と、前記第1の仮想円よりも径が小さく、かつ前記第1の仮想円と同芯の第2の仮想円上に位置する第2の係合点で構成され、
前記取付面において前記複数組の前記一対の係合点は、前記第1の仮想円の周方向に位相をずらして設定されている、加工装置。
【0015】
このように構成すると、選択する一対の係合点を変更しても、刃先の位置を常に同じ位置に配置できる。これにより、加工方法が変わる度にツールの位置を調整する必要が無いので、加工方法が変わっても、加工対象物の加工精度を確保できる。
【0016】
(5)上記(3)または(4)において、
前記刃物ホルダは、前記取付面との対向部に、一対の係合点を有しており、
前記刃物ホルダは、当該刃物ホルダ側の一対の係合点を、前記取付面で選択した一対の係合点に一致させて前記取付面に取り付けられる、加工装置。
【0017】
(6)上記(5)において、
前記被取付部材は、厚み方向の両面に前記取付面を持つ板状部材である、加工装置。
【0018】
このように構成すると、被取付部材は、2つの取付面を持つことになり、刃物ホルダを介して被取付部材に取り付けられた刃物の傾きの設定の自由度が向上する。
【0019】
(7)上記(3)から(6)の何れか一において、
前記被取付部材において前記刃物ホルダは、前記取付面側の係合点と、前記刃物ホルダ側の係合点に跨がる係合ピンにより位置決めされる、加工装置。
【0020】
このように構成すると、前記取付面側の係合点に設けた穴と、刃物ホルダ側に設けた穴とに跨がって係合ピンを配置するだけで、前記被取付部材における前記刃物ホルダの位置決めを容易に行える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、加工対象物の加工を適切に行える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、カッティングプロッタを説明する図である。
【
図2】
図2は、カッティングプロッタを説明する図である。
【
図3】
図3は、カッティングプロッタの要部断面図である。
【
図4】
図4は、カッティングプロッタの要部断面図である。
【
図5】
図5は、カッティングプロッタの要部断面図である。
【
図6】
図6は、カッティングプロッタにおけるテーブルの連結過程を説明する図である。
【
図7】
図7は、カッティングプロッタにおけるテーブルの連結に関わる部分の要部断面図である。
【
図8】
図8は、カッティングプロッタにおけるテーブルの連結に関わる部分の要部断面図である。
【
図11】
図11は、加工ユニットのスロットの使用例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、カッティングプロッタ1(加工装置)の場合を例に挙げて説明する。
図1は、カッティングプロッタ1を説明する図である。
図1の(a)は、カッティングプロッタ1の斜視図である。
図1の(b)は、カッティングプロッタ1の加工ユニット4周りの拡大図である。
図2は、カッティングプロッタ1を上方から見た平面図である。なお、
図2では、テーブル2Bの紙面の奥側に位置する脚部24やフレーム25、29などの位置を説明するために、これらを仮想線で示している。
図3は、カッティングプロッタ1を
図2におけるA-A線に沿って切断した断面を模式的に示した図である。
図4および
図5は、カッティングプロッタ1の要部断面図である。
図4の(a)は、
図3における領域Aを拡大した断面を示しており、
図5は、
図3における領域Bを拡大した断面を示している。
【0024】
なお、各図面における符号「Y」は、カッティングプロッタ1における主走査方向を意味する。符号「X」は、カッティングプロッタ1における副走査方向を意味する。符号「Z」は、カッティングプロッタ1の設置状態を基準とした鉛直線方向を意味する。
以下の説明においては、カッティングプロッタ1の各構成要素の位置関係を、必要に応じて、
図1におけるX方向、Y方向、Z方向を用いて説明する。
なお、X方向とY方向は、テーブル2の上面に沿う水平線方向で互いに直交する方向である。Z方向は、カッティングプロッタ1の設置状態を基準とした鉛直線方向であり、X方向とY方向の両方に直交する方向である。
【0025】
図1から
図3に示すように、カッティングプロッタ1は、加工対象物Tが載置されるテーブル2と、テーブル2の上方で、Y方向に沿う向きで水平に配置された支持梁3(Yバー)と、支持梁3に支持されると共に、支持梁3の長手方向(Y方向)に移動可能な加工ユニット4と、支持梁3をX方向に移動させる駆動機構5(5A、5B)と、加工ユニット4を支持梁3に沿ってY方向に往復移動させる駆動機構5Cと、を有する。
【0026】
図1に示すテーブル2は、制御パネル11が付設されたテーブル2Aと、制御パネル11が付設されていない拡張用のテーブル2Bを、X方向で連結したものである。
なお、
図1では、拡張用のテーブル2Bが一台である場合を例示している。拡張用のテーブル2Bの総数は、
図1に示す態様にのみ限定されない。カッティングプロッタ1のテーブル2は、連結するテーブル2Bの総数を増やすことで、加工対象物Tの大きさに応じてX方向に拡張可能である。
以下の説明においては、テーブル2A、2Bを特に区別しない場合には、単純にテーブル2と標記する。
【0027】
図2に示すように、上面視においてテーブル2(2A、2B)は、矩形形状を成している。
図3に示すように、テーブル2は、上面が開口するテーブルベース20と、テーブルベース20の開口を塞ぐテーブルトップ21と、を有している。
テーブルベース20は、底壁部201と、底壁部201の外周を囲む周壁部202と、を有している。テーブル2では、テーブルベース20の開口をテーブルトップ21で封止すると、テーブルベース20とテーブルトップ21との間に、内部空間23が形成される。
【0028】
テーブルトップ21の上面は、加工対象物Tの載置面21aとなっている。
加工対象物Tは、段ボール、文字や図柄などの情報が印刷された媒体、アクリルなどの樹脂製の媒体、紙器、看板用のチャンネル材などである。
【0029】
図4および
図5に示すように、載置面21aには、略全面に亘って複数の吸引孔210(連通孔)が設けられている。テーブル2の内部空間23は、テーブルトップ21に設けた吸引孔210を介して、外部と連通している。
【0030】
図4に示すように、テーブルベース20の底壁部201には、接続口201aが設けられている。接続口201aには、配管31の端部に接続されたコネクタ32が内嵌して固定されている。
コネクタ32は、円筒状の基部321と、基部321の外周を全周に亘って囲むフランジ部322と、を有している。
フランジ部322は、基部321における一方の端部321a側の外周から、径方向外側に膨出している。
基部321の端部321aは、開口している。基部321の端部321a側は、底壁部201の外側で、配管31に内嵌している。
【0031】
基部321の他方の端部321bは、円板状のキャップ323で封止されている。そのため、基部321は、有底筒状を成している。
基部321の端部321b側は、接続口201aを貫通して内部空間23内に挿入されている。基部321の端部321bは、内部空間23内で、テーブルトップ21との間にZ方向の隙間をあけて対向している。
【0032】
この状態においてコネクタ32は、基部321の外周に設けたフランジ部322を、底壁部201における接続口201aの周縁部に当接させている。フランジ部322では、底壁部201との対向部に、シールリングSが設けられている。シールリングSは、フランジ部322と底壁部201との間の隙間を封止している。
【0033】
基部321における内部空間23内に位置する領域には、基部321の内部と外部とを連通させる連通孔324(貫通孔)が設けられている。
側面視において連通孔324は、基部321の長手方向(
図4の(a)における上下方向)に沿う長孔である。
図4の(b)に示すように、接続口201aの開口方向から見ると、連通孔324は、基部321の中心軸X321周りの周方向に間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では、連通孔324は、中心軸X321周りの周方向に90°間隔で4つ設けられている。
【0034】
図3に示すように、コネクタ32が接続する配管31には、切替弁33が設けられている。
図3では、2つのコネクタ32、32が、1つの切替弁33を介して、送風機34が設けられた配管35に接続している。
【0035】
送風機34が駆動されると、当該送風機34の一方側から他方側に向かう空気の流れが形成される。本実施形態では、送風機34は、テーブル2の内部空間23から送風機34に向かう空気の流れを配管31の内部に形成し、内部空間23内に、大気圧よりも低い圧力状態(負圧状態)を発生させる。
そうすると、テーブル2の載置面21aに開口する吸引孔210から、内部空間23に空気が引き込まれる。この空気の流れにより、テーブル2の載置面21aでは、吸引孔210に吸引力(負圧)が発生する。
【0036】
テーブル2に載置された加工対象物Tは、送風機34の駆動により発生する吸引力で、テーブル2の載置面21aに吸い付けられて、水平方向(X方向、Y方向)と、鉛直線方向(Z方向)の移動が規制された状態で保持される。
図2において隠れ線示すように本実施形態では、1つのテーブル2に、コネクタ32が4つ設けられており、各コネクタ32と送風機34との連通/遮断が、切替弁33の操作により切り替えられる。そのため、テーブル2に載置する加工対象物Tの大きさに応じて、テーブル2における負圧を発生させる領域を変更できるようになっている。
【0037】
ここで、
図4に示すように、コネクタ32は、基部321の他方の端部321bが、円板状のキャップ323で封止されている。キャップ323は、基部321の一方の端部321aの開口方向(
図4の(a)における上下方向)の延長上に位置している。
そのため、鉛直線方向から見ると、キャップ323と、一方の端部321aの開口とが重なる位置関係で配置される。
ここで、一方の端部321aの開口は、配管31側に吸引される空気の流入口である。他方の端部321bが開口していると、配管31内に吸引される空気の流れは、基部321の長手方向に沿う方向が最も多くなる。そうすると、テーブルトップ21に発生する吸引力は、Z方向から見たときにコネクタ32に重なる領域が最も大きくなり、この領域から外れるにつれて吸引力が小さくなる。すなわち、テーブルトップ21に生じる吸引力にバラツキが生じる。
【0038】
本実施形態のコネクタ32では、基部321の他方の端部321bは、円板状のキャップ323で封止されている。そのため、内部空間23内の空気は、基部321の側面に開口する長孔状の連通孔324から、基部321の内部に流入したのち、配管31側に吸引されるようになっている。これにより、鉛直線方向から見たときに、コネクタ32の周辺領域から、コネクタ32側に略均等に空気が吸引される。これにより、キャップ323が設けられていない場合に比べて、テーブルトップ21に生じる吸引力のバラツキが抑制されている。
【0039】
カッティングプロッタ1では、テーブル2に発生させた吸引力で、加工対象物Tの水平方向(X方向、Y方向)と鉛直線(Z方向)の移動を規制した状態で、加工対象物Tに対する加工が、後記する加工ユニット4が保持するツールを用いて行われる。
【0040】
図2および
図3に示すように、加工ユニット4を支持する支持梁3は、テーブル2の上方で水平に配置されている。支持梁3は、テーブル2をY方向に横切る長さを有している。
支持梁3には、加工ユニット4が搭載されている。支持梁3において加工ユニット4は、支持梁3の長手方向(Y方向)に移動可能に支持されている。支持梁3には、樹脂性のベルトVと、ベルトVを移動させるモータMaを備える駆動機構5Cが付設されており、加工ユニット4は、駆動機構の駆動によりY方向に進退移動するようになっている。
【0041】
図3に示すように、支持梁3は、一対の支持柱39、39を有している。支持柱39、39は、Y方向におけるテーブル2の両側に位置しており、テーブルベース20の側方をZ方向の下側に横切っている。
支持柱39、39の下端は、駆動機構5(5A、5B)のスライダ55、55に、それぞれ連結されている。
【0042】
カッティングプロッタ1では、テーブルベース20の下部側の両側に設けた駆動機構5A、5Bにより、支持梁3をX方向に移動させる。
ここで、駆動機構5A、5Bは、基本構成が同じである。そのため、以下においては、駆動機構5Bの構成を代表して説明する。
【0043】
図5に示すように、駆動機構5Bは、ホルダ51と、ガイドレール52と、ラックレール53と、スライダ55と、モータMと、を有する。
ホルダ51は、テーブルベース20の下部に固定された柱状の部材である。X方向から見てホルダ51は、テーブルベース20の周壁部202と略同じY方向の幅W51を有している。
【0044】
図6は、駆動機構5Bを
図5のA-A線に沿って切断した断面図であって、駆動機構5Bの主要部の断面図を示した図である。
図7は、カッティングプロッタ1におけるテーブルの連結に関わる部分の要部断面図である。
図7の(a)は、
図2におけるB-B線に沿ってテーブル2Aを切断した断面を示した図である。
図7の(b)は、
図2におけるC-C線に沿ってテーブル2Aを切断した断面を示した図である。
図8は、カッティングプロッタ1におけるテーブルの連結に関わる部分の要部断面図である。
図8の(a)は、
図7の(a)におけるA-A線に沿う断面で、テーブル2Aとテーブル2Bとの連結部分を示した図である。
図8の(b)は、
図7の(a)におけるB-B線に沿う断面で、テーブル2Aとテーブル2Bとの連結部分を示した図である。
図8の(c)は、
図7の(a)におけるC-C線に沿う断面で、テーブル2Aとテーブル2Bとの連結部分を示した図である。
【0045】
図8の(b)に示すようにホルダ51は、テーブル2の一方の側縁2aから他方の側縁2bまで及ぶX方向の長さL51で形成されている。
【0046】
図5に示すように、ホルダ51の下部では、ガイドレール52とラックレール53が、Y方向に間隔を開けて設けられている。Y方向に沿う断面視において、ガイドレール52とラックレール53は、略矩形形状を成している。
ホルダ51の下部には、下方に突出する突出部512が設けられている。X方向から見て、突出部512の側面512c、512dは、鉛直線方向(Z方向)に沿う平坦面となっている。
テーブル2の内側(
図5における左側)に位置する側面512cには、ラックレール53がY方向から当接している。この状態においてラックレール53は、ギア57が噛合する外周部を、ホルダ51よりも内側(図中、左側)に突出させた位置で位置決めされる。
【0047】
ラックレール53には、固定用のレール54がZ方向の下側から当接している。ラックレール53は、レール54とラックレール53を鉛直線方向に貫通する図示しないボルトにより、ホルダ51の下部に固定されている。
【0048】
ガイドレール52は、突出部512よりも外側(図中、右側)で、突出部512との間に隙間をあけて配置されている。ガイドレール52もまた、図示しないボルトにより、ホルダ51の下部に固定されている。
ガイドレール52には、スライダ55の上面に固定された凹状のレール部材56がZ方向の下側から係合している。レール部材56は、ガイドレール52からの脱落が規制された状態で、ガイドレール52の長手方向に移動可能となるように、ガイドレール52に係合している。
【0049】
レール部材56は、板状のスライダ55の上面に固定されている。スライダ55では、レール部材56から見て外側(図中、右側)に、連結用の柱551が設けられている。柱551は、Z方向の上側に向けて突出している。柱551は、前記した支持柱39の下部の係合穴390に、Z方向から係合している。支持柱39は、スライダ55に載置された状態で、スライダ55に連結されている。
【0050】
スライダ55は、ホルダ51の下方を、テーブル2の中心側(図中、左側)に横切るY方向の長さL55を有している。スライダ55の先端55a側には、モータMのシャフトSHを挿通させるための切欠き55cが設けられている。
モータMは、スライダ55の下面に固定されており、シャフトSHは、切欠き55cを上方に貫通している。シャフトSHの上端側はギア57に連結されている。ギア57は、ラックレール53の外周に噛合している。
【0051】
カッティングプロッタ1では、モータMの出力回転でギア57が回転すると、ギア57がラックレール53の長手方向(X方向)に移動する。
ギア57が連結されたモータMは、支持梁3の支持柱39と共に、スライダ55に固定されている。そのため、モータMが駆動されると、モータMの回転方向に応じて決まる一方向(
図5における紙面手前奥方向)に、支持柱39が支持する支持梁3が移動する。
【0052】
図3に示すように、カッティングプロッタ1では、Y方向におけるテーブル2の両側に駆動機構5A、5Bが設けられている。これら駆動機構5A、5Bを同期させて駆動することで、支持梁3が、X方向に移動するようになっている。
【0053】
図6の(a)に示すように、テーブル2をZ方向の下側から見ると、ラックレール53と、ホルダ51の突出部512と、ガイドレール52とが、Y方向に並んでいる。
ラックレール53とガイドレール52は、テーブル2のX方向の全長よりも短い長さで形成されている。
【0054】
そのため、テーブル2Aの側縁2b側では、ラックレール53の端部53bは、テーブル2A(テーブルベース20)の側縁2bからX方向に長さL53だけオフセットした位置に配置される。さらに、ガイドレール52の端部52bは、テーブル2Aの側縁2bからX方向に長さL52だけオフセット位置に設けられている。
テーブル2Bの側縁2a側では、ラックレール53の端部53aとガイドレール52の端部52aは、テーブル2Bの側縁2aからX方向に、それぞれ長さL53、L52オフセットした位置に設けられている。
【0055】
同様に、テーブル2Bの側縁2b側では、ラックレール53の端部53bとガイドレール52の端部52bは、テーブル2Bの側縁2aからX方向に、それぞれ長さL53、L52オフセットした位置に設けられている(
図8の(b)参照)。
【0056】
図6の(a)に示すように、テーブル2Bの側縁2a側には、突起510が設けられいる。突起510は、先端側に球面加工が施された円柱状の部位である。Z方向から見て突起510は、ホルダ51の突出部512の延長上をX方向に延びている。
テーブル2Aの側縁2bには、係合穴511が設けられている。係合穴511は、突起を挿入可能な円柱状の有底穴である。Z方向から見て係合穴511は、ホルダ51の突出部512に沿って、側縁2bから離れる方向に延びている。
テーブル2Bの突起510は、テーブル2Aとテーブル2Bとを連結する際に、テーブル2A側の係合穴511にX方向から挿入される。
【0057】
図8の(b)に示すように、テーブル2Bの側縁2bにも、同一構成の係合穴511が設けられている。テーブル2Bの係合穴511には、テーブル2Aに連結されたテーブル2Bにさらに他のテーブル2Bを連結する際に、他のテーブル2B側の突起510が挿入される。
【0058】
前記したようにテーブル2では、Y方向の両側の下部にホルダ51が取り付けられている。そのため、テーブル2Bの突起510は、Y方向の両側に位置するホルダ51の各々に設けられている。同様に、係合穴511もまた、ホルダ51の各々に設けられている。
ここで、本実施形態では、Y方向で並んだ2つの係合穴のうちの、一方の係合穴511は、突起510の外径と整合する内径Daの断面円形に形成されている(
図7の(a)参照)。他方の係合穴511Aは、Z方向の内径Daが、係合穴511と同じであるものの、Y方向の内径Dbは、係合穴511の内径Dよりも大きい内径Dbとなっている。
X方向から見ると、係合穴511Aは、Y方向の長さがZ方向の長さよりも長い長穴形状を成している。
【0059】
テーブル2Aにテーブル2Bを連結する際には、テーブル2B側の突起510が、テーブル2A側の係合穴511とX方向で対向配置されるように、テーブル2Bを位置決めする。
続いて、テーブル2Bをテーブル2AにX方向から近づけて、テーブル2A側の係合穴511、511Aに、テーブル2B側の突起510、510を挿入する。
この際に、一方の係合穴511に、この係合穴511の内径に整合する外径の突起510が挿入されることで、テーブル2Aにおける係合穴511が設けられている側の側面を基準として、連結したテーブル2BのY方向の位置決めがされる。
なお、係合穴511、511AのZ方向の内径は同じであるので、Z方向の位置精度が確保されるようになっている。
ここで、連結されるテーブル2の一方のテーブル2に設けた突起510と、他方のテーブル2に設けた係合穴511で、発明における連結機構500を構成する。
【0060】
図6の(b)に示すように、テーブル2Aにテーブル2Bを連結すると、テーブル2Aのガイドレール52およびラックレール53は、テーブル2Bのガイドレール52及びラックレール53に対して、それぞれX方向の隙間をあけて対向する。
カッティングプロッタ1は、隣り合うテーブルのガイドレール52、52の隙間を塞ぐ接続用ガイドレール52Aと、隣り合うラックレール53、53の隙間を塞ぐ接続用ラックレール53Aと、を有している。
図6の(b)、(c)に示すように、テーブル2Aにテーブル2Bを連結したのち、接続用ガイドレール52Aと、接続用ラックレール53Aを、テーブル2A、2Bに跨がって配置することで、テーブル2Aとテーブル2Bに跨がって連続するガイドレールと、ラックレールが形成される。
これにより、駆動機構5(5A、5B)のギア57は、テーブル2Aとテーブル2Bの間を移動できることになるので、加工ユニット4を支持する支持梁3もまた、テーブル2Aとテーブル2Bの間を移動できるようになっている。
【0061】
図2に示すようにテーブル2は、当該テーブル2を下方から支持する4つの脚部24を有している。4つの脚部24は、X方向とY方向に互いに間隔をあけて設けられている。これらの脚部24は、駆動機構5(5A、5B)のギア57との干渉を避けるために、テーブル2の側縁2c、dからテーブル2の中央側に離れた位置に配置される(
図3参照)。
Y方向(
図3における左右方向)における一方側の脚部24と他方側の脚部24は、Y方向に延びるフレーム26により連結されている。フレーム26は、テーブル2の設置面Gから上方に離間した位置を水平線に沿う向きで設けられている。
【0062】
さらに、
図2に示すように、側縁2c側の脚部24、24と、側縁2d側の脚部24、24は、それぞれ、X方向に延びるフレーム25、25により互いに連結されている。これらフレーム25、25もまた、テーブル2の設置面Gから上方に離間した位置を水平線に沿う向きで設けられている。
また、本実施形態では、側縁2d側の脚部24、24とに跨がってサイドカバー30が設けられている(
図3参照)。サイドカバー30は、側縁2d側の脚部24、24と、フレーム25と、テーブルベース20との間の開口を塞ぐとと共に、テーブル2の支持強度を向上させるために設けられている。サイドカバー30は、テーブル2の動揺、特にX方向の動揺を抑制する動揺抑制部材として設けられている。
【0063】
フレーム26は、Y方向における中間部に、フレーム29が接続している。
図2に示すように、フレーム29は、テーブルにおける側縁2a側のフレーム26と、側縁2b側のフレーム26とに跨がって設けられている。フレーム26は、フレーム25、25に対して平行に配置されている。
また、フレーム26の上側には、筋交い28、28(
図3参照)が設けられている。筋交い28、28は、脚部24から離れるにつれてテーブルベース20に近づく向きでそれぞれ傾斜している。筋交い28、28の上端は、テーブルベース20の下面に取り付けられた連結部27にそれぞれ連結されている。筋交い28、28は、連結部27を間に挟んで対称となる位置関係で設けられている。
【0064】
図2に示すように、筋交い28、28と連結部27は、テーブル2の側縁2a側と、側縁2b側にそれぞれ設けられている。筋交い28、28と連結部27は、支持梁3の長手方向(Y方向)でのテーブル2の振動を抑えるために設けられており、テーブル2のY方向の動揺を抑制する動揺抑制部材として設けられている。
【0065】
支持梁3で支持された加工ユニット4は、インクジェット印刷装置の場合のキャリッジよりも速い速度で移動する。加工ユニット4が支持するツールで加工対象物に加工を行う場合には、加工ユニット4の変位に伴う振動が、テーブル2に作用する。
そのため、カッティングプロッタ1では、加工対象物Tの加工時に発生する振動に対するテーブル2の耐性を高めるために、脚部24、24に跨がるフレーム25、25、26や、フレーム26、26同士を繋ぐフレーム29や、脚部24とテーブルベース20とに跨がる筋交い28、28や、サイドカバー30を配置して、加工ユニット4の振動に対する耐性を高めている。
特に、インクジェット印刷装置では採用していなかったサイドカバー30を設けることで、カッティングプロッタ1に加工ユニット4の移動に伴う動揺(振動)を好適に抑制できる。
【0066】
図1の(b)に示すように、加工ユニット4は、支持梁3に載置される本体部41を有している。
本体部41の一方側(制御パネル11側)には、固定ユニット42と、3つのスロット44(44a~44c)を持つホルダユニット43が設けられている。
固定ユニット42とホルダユニット43は、Y方向で隣り合っている。ホルダユニット43の上面43aは、固定ユニット42よりもZ方向の下側に位置している。
ホルダユニット43では、スロット44a~44cが、固定ユニット42寄りに設けられており、スロット44a~44cは、Y方向で並んでいる。
【0067】
図9は、固定ユニット42を説明する図である。
図9の(a)は、固定ユニット42におけるペンホルダ6の装着用の治具40周りを拡大して示す斜視図である。
図9の(b)は、ペンホルダ6を治具40に装着した状態を示す斜視図である。
図10は、ペンホルダ6を説明する図である。
図10の(a)は、ペンホルダ6を斜め下方から見た斜視図である。
図10の(b)は、ペンホルダ6の断面図である。
【0068】
図1の(b)に示すように、固定ユニット42は、ホルダユニット43側の領域がX方向に膨出している。この膨出した領域の下部に、カメラ収容部421が付設されている。カメラ収容部421の内部には、図示しないカメラユニットが、Z方向の下側を向いた状態で収容されている。
カメラ収容部421の隣には、治具40を支持する支持ユニット422が設けられている。治具40は、後記するペンホルダ6の装着用の治具である。
【0069】
図9に示すように、治具40は、環状の装着部401と、位置決め用のネジ402と、を有する。装着部401は、板状の基部400の正面に固定されている。装着部401は、当該装着部401の開口をZ方向に向けて設けられている。装着部401の正面には、ネジ402用のホルダ403が取り付けられている。ネジ402の図示しない軸部は、ホルダ403と装着部401を貫通している。ネジ402の回動操作に連動して、ネジ402の軸部の先端が、装着部401の内周から出没可能となっている。
【0070】
装着部401には、ペンホルダ6の筒状の基部61が、Z方向の上側から挿入される。この状態で、ネジ402の軸部の先端を基部61の外周に圧接させることで、ペンホルダ6が装着部401に固定される。
【0071】
[ペンホルダ]
図10に示すように、ペンホルダ6は、製図用のペンなどの筆記具を保持する治具である。ペンホルダ6は、筒状の基部61と、ペンPを支持する支持部62と、ロックナット63と、キャップ65と、を有する。
基部61は、筒状の周壁部610を有している。周壁部610は、前記した装着部401の内径に整合する外径D61を有している。
周壁部610の長手方向における一方の端部610a側では、リング状の支持部611が、周壁部610の内周に設けられている。支持部611におけるキャップ65との対向部には、鉄などの磁性材料で形成したプレート612が取り付けられている。
【0072】
ペンホルダ6の端部610aには、キャップ65の筒状の嵌合部653が、ペンホルダ6の中心軸C6方向から内嵌する。嵌合部653の端部には、磁石654が設けられている。磁石654は、中心軸C6周りの周方向に所定間隔で複数設けられている。
【0073】
キャップ65は、底壁部651と、底壁部651の外周を囲む筒状の周壁部652と、から有底円筒状に形成されている。周壁部652の先端は、基部61に内嵌する嵌合部653となっている。嵌合部653は、周壁部652の外径D652よりも大きい外径で形成されている。
嵌合部653の外周には、フランジ部655が設けられている。フランジ部655は、周壁部652の外周から径方向外側に突出している。フランジ部655は、中心軸C6周りの周方向の全周に亘って設けられている。
キャップ65を、ペンホルダ6の基部61に取り付けると、基部61の端部610aが中心軸C6方向からフランジ部655に当接する。さらに、嵌合部653に設けた磁石654が、基部61側のプレート612に磁着することで、キャップ65が基部61に磁着した状態で保持される。
【0074】
基部61では、周壁部610の他方の端部610b側(
図10の(b)における上側)に、係合部613が設けられている。係合部613は、周壁部610の内周から内径側に膨出して形成されている。係合部613は、ペンホルダ6の中心軸C6周りの周方向の全周に亘って同じ厚みで形成されている。係合部613の内周には、ネジ溝613aが設けられている。係合部613のネジ溝613aは、支持部62側のネジ溝621cに螺合している。
【0075】
支持部62は、筒部621と、芯合わせ部622と、ネジ支持部624と、を有する。筒部621は、ペンPを挿入可能な内径D621で形成された円筒状の部位である。筒部621の外周には、長手方向(中心軸C6方向)の全長に亘ってネジ溝621cが設けられている。
筒部621では、中心軸C6方向の一方の端部621aに、芯合わせ部622が接続している。
【0076】
芯合わせ部622は、筒部621から離れるにつれて内径D622が小さくなる先細り形状で形成されている。芯合わせ部622の下端には、底壁部623が設けられている。底壁部623は、ペンホルダ6の中心軸C6に直交する向きで設けられている。底壁部623には、ペンPを挿通可能な内径の貫通孔623aが開口している。
貫通孔623aは、ペンPの外径と整合する内径D633で形成されている。さらに、貫通孔623aは、ペンホルダ6の中心軸C6に対して同芯となる位置で、底壁部623をZ方向に貫通している。
【0077】
この貫通孔623aに、ペンPのペン先P1側を挿通させて、ペンPを貫通孔623aに内嵌させると、ペン先P1が、ペンホルダ6の中心軸C6上に配置されるようになっている。芯合わせ部622の中心軸C6に対する傾きは、ペン先P1側の貫通孔623aへの誘導を容易にするために設けられている。
【0078】
なお、ペンホルダ6における支持部62の部分は、使用するペンPの種類に応じて変更可能である。この場合には、貫通孔623aの開口径が異なる支持部62を複数用意しておき、ペンPの種類に応じて適切な開口径の貫通孔623aを持つ支持部62を選択すれば良い。ペンPの種類毎にペンホルダ6の全体を用意しておく場合に比べて、コストの低減が期待できる。
【0079】
筒部621の他方の端部621bには、ネジ支持部624が接続されている。ネジ支持部624は、中心軸C6を全周に亘って囲む円筒状の部位である。ネジ支持部624は、筒部621よりも大きい外径D624で形成されている。ネジ支持部624は、筒部621に対して同芯に配置されている。
ネジ支持部624では、中心軸C6周りの周方向に所定間隔で、位置決め用のネジNが設けられている。ネジNの軸部N1は、ネジ支持部624を厚み方向(中心軸C6の径方向)に貫通している。軸部N1の先端は、ネジ支持部624の内側に配置された押圧片625に係合している。
本実施形態では、中心軸C6周りの周方向に所定間隔で3つのネジNが配置されている。ネジNを回転操作すると、押圧片625が、ネジNの軸部N1の軸方向に進退移動する。
【0080】
ペンホルダ6では、ネジ支持部624側から、ペンPを筒部621の内部に挿入する。ペンPのペン先P1側が底壁部623の貫通孔623aに内嵌して、ペンPが、中心軸C6に同芯に配置される。
ここで、押圧片625とネジNは、ペンPを中心軸C6に沿わせた向きで保持するために設けられている。ペン先P1側が中心軸C6に配置された状態で、ペンPの基端P2側の外周に、押圧片625と当接させて位置決めすることで、ペンPを、長手方向の全長に亘って中心軸C6に沿わせた向きで配置できるようになっている。
【0081】
筒部621の外周のネジ溝621cには、前記した基部61の係合部613と、ロックナット63が螺入している。
筒部621を持つ支持部62と、基部61およびロックナット63は、中心軸C6回りに相対回転可能である。
そのため、筒部621を持つ支持部62を、基部61に対して中心軸C6回りに相対回転させると、支持部62と基部61とが中心軸C6方向で相対的に変位するようになっている。これにより、支持部62を基部61に対して相対回転させることで、基部61側の周壁部610の端部610aからのペンPのペン先P1の突出量hを調節できるようになっている。
【0082】
ロックナット63は、支持部62の基部61に対する相対回転を規制するために設けられている。ロックナット63により支持部62の筒部621の回転を規制すると、支持部62と基部61との中心軸C6方向での相対変位が規制される。ロックナット63は、周壁部610の端部610aからのペンPのペン先P1の突出量hを保持するために設けられている。
【0083】
なお、前記したようにキャップ65は、周壁部610の端部610a側に、磁石654の磁力を利用して取り付けられている。
ここで、支持部62の基部61に対する相対回転方向を、ペン先P1を周壁部610から突出させる方向とすると、ペン先P1が、周壁部610の端部610aから所定高さhを越えた時点で、キャップ65が周壁部610から僅かに離れることになる。
本実施形態では、ペン先P1が、周壁部610の端部610aから高さhだけ突出した位置にペン先P1が到達した時点で、キャップ65が周壁部610から離れるように、キャップ65の嵌合部653(磁石654)と底壁部651との中心軸C6方向での位置関係が設定されている。そのため、ペン先P1の突出高さの調整を、実測に加えて、目視によっても行えるようにしている。
【0084】
図11は、加工ユニット4のスロット44a~44cの使用例を説明する図である。
【0085】
図1の(b)に示すように、加工ユニット4のホルダユニット43では、未使用のスロット44a~44cが、Y方向で並んでいる。
図11に示すように、スロット44a~44cの各々には、ツールの支持ユニット7が着脱自在である。
図11では、スロット44aに支持ユニット7Aが装着されている。スロット44bに装着される支持ユニット7Bが、加工ユニット4から離間した位置に示されている。
【0086】
支持ユニット7Bは、スロット44bに挿入される挿入脚72を有する。挿入脚72は、本体部71の下部から下方に伸びている。本体部71の内部には、ツールの駆動用のモータなどの駆動機構などが収容されている。
支持ユニット7は、挿入脚72をスロット44に挿入することで、ホルダユニット43に装着されると共に、本体部71の内部の駆動機構が電力供給源に接続される。
本体部71は、挿入脚72の手前側に及ぶZ方向の範囲を有している。本体部71の下部には、支持部材73を介してツールホルダ74が支持されている。
ツールホルダ74は、本体部71の手前側でZ方向に沿う向きで設けられている。ツールホルダ74の下部には、ツール8が装着されている。
ツール8は、ツールホルダ74の下部との対向部に連結部81を有している。連結部81は、ツールホルダ74の内部に収容されたシャフト(図示せず)に相対回転不能に連結される。
【0087】
図11では、支持ユニット7Aに、孔加工用のツール8’が取り付けられている。支持ユニット7Bに、刃物10を支持するツール8が取り付けられている。
このツール8は、支持する刃物10の角度調整機構100を有している。
【0088】
加工ユニット4は、ツールの支持ユニット7(7A、7B)が着脱自在なスロット44(44a~44c)を複数有している。支持ユニット7に支持されるツールには、保持する刃物10の傾きが調整可能なツール8が保持されている。
そのため、用途の異なる複数のツールを、加工ユニット4に設置しておくことができる。これにより、加工方法が、加工ユニット4に既に設置されている何れかのツールを用いて行うことができる間は、加工方法が変わる度にツールを交換する必要が無いので、ツールの交換に要する時間を省略できる。また、最初に加工ユニット4に設置する際にツールの位置精度を合わせておくことで、加工方法が、加工ユニット4に既に設置されている何れかのツールを用いて行うことができる間は、加工方法が変わる度にツールの位置を調整する必要が無いので、加工方法が変わっても、加工対象物Tの加工精度を確保できる。
【0089】
図12から
図16は、ツール8を説明する図である。
図12の(a)は、支持ユニット7Bのツールホルダ74に取り付けたツール8を正面側から見た図である。
図12の(a)では、ツール8の部分のみを実線で示しており、その他の部分は仮想線で示している。
図12の(b)は、ツール8の斜視図である。
図12の(c)は、取付プレート82への、刃物ホルダ88の取り付けを説明する図である。
図13は、取付プレート82の正面図である。
図14は、刃物ホルダ88の分解図である。
図15は、取付プレート82の裏面図である。
図16の(a)は、刃物ホルダ88を、孔組84Dに取り付けた際の刃物10の傾きを説明する図である。
図16の(b)は、刃物ホルダ88を、孔組84Aに取り付けた際の刃物10の傾きを説明する図である。
図16の(c)は、刃物ホルダ88を、取付プレート82の正面に取り付けた際の刃物10の傾きと、刃物ホルダ88を、取付プレートの裏面に取り付けた際の刃物10’の傾きを、説明するである。
【0090】
図12に示すように、ツール8は、支持ユニット7B側との連結部81を有する。この連結部81の下部に、取付プレート82が設けられている。取付プレート82は、支持ユニット7Bをホルダユニット43にセットすると、Z方向(鉛直線方向)に沿う向きで配置される板状部材である。
図12の(b)に示すように、取付プレート82の厚み方向の両側面は、刃物ホルダ88側の連結片881の取付面82a、82bとなっている。
【0091】
図13に示すように、取付面82a側から見て取付プレート82は、連結部81側の上辺821が略直線に形成されている。ツール8の連結部81を、支持ユニット7B側に連結すると、取付プレート82の上辺821は、水平線に沿う向きに配置される。
上辺821の長手方向の略中央部に、連結部81が接続している。連結部81は、上辺821に直交する向きで設けられている。
【0092】
取付プレート82の側辺822、823は、上辺821に対して直交している。側辺822、823は、連結部81から離れる方向に直線状に延びている。
一方の側辺823は、他方の側辺822よりも、連結部81から離れた位置まで達している。
取付プレート82の下辺824は、上辺821側に窪んだ円弧状に形成されている。下辺824は、取付プレート82に支持された刃物10の刃先10aを中心Cとする仮想円Im1に沿う円弧形状に形成されている。後記する刃物ホルダ88との干渉を避けるためである。
【0093】
一方の取付面82aには、円形孔841と長孔842とからなる孔組84(84A~84D)が、複数設けられている。ここで、孔組84の円形孔841と長孔842の組み合わせが、発明における取付面82a側の一対の係合点に相当する。
円形孔841と長孔842は、取付プレート82を厚み方向に貫通しない有底孔である。
各孔組84では、円形孔841と長孔842との間にネジ孔85を有している。ネジ孔85は、取付プレート82を厚み方向に貫通した貫通孔である。ネジ孔85は、仮想円Im1よりも外径の大きい仮想円Im4上で、周方向に間隔を開けて並んでいる。ネジ孔85は、刃物ホルダ88を、取付プレート82に固定する際に利用される。
【0094】
孔組84は、刃先10aの水平線に対する傾きを所望の角度にしつつ、刃物ホルダ88側の連結片881(
図12の(c)参照)を取付面82aに取り付ける際に利用される位置決め孔である。
本実施形態では、刃物ホルダ88を取付プレート82に取り付ける際に利用する孔組84(84A~84D)を変更することで、刃先10aの水平線HLに対する傾きが、予め決められた傾きとなるようにできるようになっている。
【0095】
円形孔841は、長孔842よりも上辺821側に位置している。取付面82a側から見て、円形孔841は、下辺824側の外周が仮想円Im2の外周に略接する位置で、周方向に間隔を開けて設けられている。長孔842は、上辺821側の外周が仮想円Im3の内周に略接する位置で、周方向に間隔を開けて設けられている。長孔842は、円形孔841からDxだけ下辺824側に離間した位置に配置されている。
孔組84は、刃先10aの位置を中心Cとして、周方向に間隔を開けて複数設けられている。
図13の(a)では、合計4組の孔組84(84A~84d)が、一方の取付面82aに設けられている。
【0096】
孔組84Aの場合、円形孔841の中心と長孔842の中心を結ぶ直線Laは、長孔842の長手方向に沿って延びている。この直線Laは、刃物ホルダ88で保持された刃物10と所定の角度θで交差している。
他の孔組84B、84C、84Dは、円形孔841と長孔842とを結ぶ直線Lb、Lc、Ldが、直線Laに対して角度θb、θc、θdで交差するように設定されている。
【0097】
本実施形態では、刃物ホルダ88を孔組84Aに取り付けた場合に、刃先10aが水平線HLに対して所定角度、例えば45°となるように、角度θが設定されている。
そして、他の孔組84B、84C、84Dは、刃先10aが水平線HL(Y方向)に対して所望の角度となるように、各々の直線Lb、Lc、Ldと、直線Laとの角度θb、θc、θdが設定されている。
【0098】
そのため、刃物ホルダ88を取付プレート82に取り付ける際に、刃先10aの水平線HLに対する傾きであって、設定したい傾きに応じて決まる1つの孔組84を利用することで、刃先10aを所望の傾きにしつつ、刃物10を取付プレート82に取り付けることができるようになっている。
【0099】
図14に示すように、刃物ホルダ88は、連結片881と、刃物10の一方の面を支持する支持部882と、刃物10を支持部882との間に把持する把持部883と、を有する。
支持部882と把持部883は、互いに平行な支持面882a、883aを有しており、これら支持面882a、883aの間に、刃物10の板状の基部101が把持される。この状態において一対の固定用のネジN、Nの軸部(図示せず)が、把持部883と刃物10とを貫通して支持部882に螺入されることで、刃物10が刃物ホルダ88に支持される。
【0100】
図12の(c)に示すように、支持部882と把持部883は、それぞれ、連結片881の厚み方向に所定の幅W882、883を有している。支持部882は、支持面882a(
図14参照)とは反対側に平坦面882bを有している。連結片881は、平坦面882bの幅方向の中央部から、支持部882から離れる方向に延びている。
【0101】
図14に示すように、連結片881の先端881c側には、貫通孔861、862が設けられている。ここで、貫通孔861、862が、発明における刃物ホルダ88側の一対の係合点に相当する。
貫通孔861、862は、連結片881の幅方向の中心を通る直線L88上で、間隔を開けて並んでいる。貫通孔861と貫通孔862の離間距離Dx’は、前記した取付プレート82側の円形孔841と長孔842との離間距離Dxよりも大きい間隔に設定されている。
具体的には、貫通孔861、862を貫通したピンPN(
図12の(c)参照)が、円形孔841と長孔842に挿入可能となる長さに設定されている。
【0102】
貫通孔861と貫通孔862の間には、直線L88の一方側にネジ孔87が設けられている。
図14に示すように、刃物ホルダ88の取り付け方向から見ると、貫通孔861、862を結ぶ直線L88は、前記した刃物10の支持面882aに対して所定角度θで交差している。
【0103】
刃物ホルダ88は、支持部882と把持部883との間に刃物10を把持させた後、連結片811を、取付プレート82上の任意の孔組84を選択して取り付けられる。
例えば、孔組84Aを選択した場合、連結片811側の貫通孔861と貫通孔862が、取付プレート82側の孔組84Aの円形孔841と長孔842に重なるように配置する。そして、
図12の(c)に示す一対のピンPNのうちの一方のピンPNを、貫通孔861から挿入して円形孔841に嵌入すると共に、他方のピンPNを、貫通孔862から挿入して長孔842に嵌入する。そして、ネジNの軸部N1を、連結片881側のネジ孔87と、取付プレート82側のネジ孔85に螺入することで、刃物ホルダ88が、ツール8側の取付プレート82に固定される(
図12の(b)参照)。
【0104】
この際に、刃物ホルダ88で保持された刃物10の刃先10aは、取り付けに利用した孔組84に応じて決まる所定の角度を持って、配置される(
図16参照)。
本実施形態では、どの孔組84を利用しても、刃物10の刃先10aが常に同じ位置Cに配置されるように、取付プレート82側の孔組84(84A~84D)の位置関係が設定されている。
そのため、刃物10の角度を変える度に刃先10aの位置調節を行う作業を省略、または簡略化できるようになっている。
【0105】
なお、
図15に示すように、取付プレート82の反対側の取付面82bにも、円形孔841と長孔842から構成される孔組84Eが設けられている。この孔組84Eを利用して刃物ホルダ88を取り付けた場合には、刃物10が、水平線HLに対して直交する向きとなるように設定されている。このときの刃物10の配置は、取付面82b側から見ると、
図16の(c)において、符号10’で示す位置になる。
【0106】
このように、ツール8の取付プレート82では、刃物ホルダ88の取り付けに利用する孔組84を変更することで、刃物10の水平線HLに対する傾きを、予め決められた傾きのうちの1つの傾きに、容易に設定できるようになっている。
ここで、取付プレート82の孔組84(84A~84E)と、刃物ホルダ88の連結片811の貫通孔861、862と、一対のピンPNで、発明における刃物10の角度調整機構100を構成する。取付プレート82の孔組84(84A~84E)の配置が、発明における位置決定手段に相当する。
【0107】
なお、実施の形態では、取付面側の係合点が、円形孔841と長孔842であり、刃物ホルダ88側の係合点が、貫通孔861、862であり、これら係合点が係合ピンに相当するピンPNで連結される場合を例示した。
取付面側の係合点と、刃物ホルダ88側の係合点のうちの一方を突起とし、他方を凹孔とすることで、ピンPNを省略しつつ、取付面82a、82bへの刃物ホルダ88を取り付けを行うようにしても良い。
【0108】
以上の通り、実施の形態にかかるカッティングプロッタ1は、以下の構成を有する。
(I)カッティングプロッタ1は、
加工対象物Tが載置されるテーブル2と、
加工対象物Tの加工用のツールを支持し、支持梁3に沿って移動される加工ユニット4(支持部)と、
加工ユニット4をテーブルに対して相対変位させる駆動機構と、を有する加工装置である。
駆動機構は、
加工ユニット4を支持梁に沿ってY方向に移動させる駆動機構5C(Y方向駆動機構)と、
加工ユニット4をY方向と直交する方向であるX方向に移動させる駆動機構5A、5B(X方向駆動機構)と、を有する。
テーブル2は、加工対象物Tを載置するテーブルトップ21を持つテーブルベース20(載置部)を下方から支持する脚部24とを備える。脚部24は、X方向及びY方向に間隔をおいて設けられている。
X方向およびY方向の両方において、駆動機構による加工ユニット4と支持梁3の移動に伴うテーブル2の動揺を抑制する動揺抑止部材(サイドカバー30、筋交い28、28、連結部27、フレーム25、26、29)が、脚部24とテーブルベース20との間に設けられている。
【0109】
このように構成すると、テーブル2の動揺を好適に抑制できる。これにより、加工対象物Tを加工する際に生じる振動が加工対象物Tの加工に影響する程度を抑制でき、加工対象物Tの加工をより適切に行える。
【0110】
(II)テーブル2は、少なくとも2つのテーブルをX方向で連結して構成される。
テーブル2同士を連結する連結機構500は、
一方のテーブル2BからX方向に突出した突起510と、
他方のテーブル2Aに設けられていると共に、突起510が嵌入する係合穴511(凹部)と、から構成される。
連結機構500は、Y方向に間隔を開けて複数設けられている。
【0111】
このように構成すると、互いに連結されたテーブル2A、2Bは、Y方向の相対変位が、連結機構500により抑制される。また、テーブル2A、2Bを連結したテーブル2は、加工用のツールやツールを支持する加工ユニット4よりも質量が大きく、加工ユニット4の移動に起因する振動の影響を受け難く、テーブル2に載置された加工対象物Tの振動を抑制できる。
これにより、ツールを、X方向とY方向で、加工対象物Tに対して相対移動させる際の精度に、ツールの移動に起因する振動が影響する程度を抑制できる。よって、加工対象物Tの加工をより適切に行える。
【0112】
カッティングプロッタ1(加工装置)では、ツールをY方向に変位させるときの加工ユニット4の変位速度が、ツールをX方向に変位させるときの加工ユニット4の変位速度よりも大きく、Y方向の振動のほうが、X方向の振動よりも大きい。
上記のように、連結機構500が、Y方向に間隔を開けて複数設けられていることで、互いに連結されたテーブル2A、2BのY方向での相対移動と振動をより抑制できる。これにより、ツールを加工対象物Tに対して相対移動させる際の精度に、ツールのY方向への移動に起因する振動が影響する程度を抑制でき、加工対象物Tの加工をより適切に行える。
【0113】
(III)カッティングプロッタ1は、
支持梁3のX方向への移動をガイドするガイドレール52を有する。
テーブル2においてガイドレール52は、Y方向の両側で、X方向に沿ってそれぞれ設けられていると共に、連結される他のテーブル2側のガイドレール52に、X方向の間隔をあけて対向配置される。
対向配置されたガイドレール52、52の間に嵌入して、一方のテーブル2側のガイドレール52と、他のテーブル2側のガイドレール52とを接続する接続用ガイドレール52Aを、有する。
【0114】
このように構成すると、連結される2つのテーブル2A、2Bのガイドレール52、52が、接続用ガイドレール52Aを介して接続される。これにより、連結される2つのテーブル2A、2Bに跨がって、支持梁3のX方向への移動をガイドするためのレールが連続して設けられる。
この連続するレールにより、連結された2つのテーブル2A、2Bの相対変位が規制されると共に、連結されたテーブル2A、2B各々の剛性が高められる。これにより、ツールを加工対象物Tに対して相対移動させる際の精度に、ツールのY方向への移動に起因する振動が影響する程度を抑制できる。
【0115】
特に、連結機構500の側方で、ガイドレール52、52が接続用ガイドレール52Aを介して連結されているので、接続用ガイドレール52Aが、互いに連結されたテーブル2A、2Bの連結機構500の部分を支点としたテーブル2A、2BのY方向での相対移動に対する突っ張りとなって、テーブル2A、2Bの相対移動を規制できる。これにより、テーブル2の振動をより抑制できるようになる。
【0116】
(IV)駆動機構は、支持梁3をX方向に移動させる駆動機構5(5A、5B)(X方向駆動機構)を有している。
駆動機構5A、5Bは、モータMにより回転駆動されるギア57と、当該ギア57が噛合するラックレール53と、を有している。
テーブル2Aにおいてラックレール53は、X方向に沿って設けられていると共に、連結される他のテーブル2B側のラックレール53に、X方向の間隔をあけて対向配置されている。
対向配置されたラックレール53、53の間に嵌入して、テーブル2A側のラックレール53と、他のテーブル2B側のラックレール53とを接続する接続用ラックレール53Aを、有する
【0117】
このように構成すると、連結される2つのテーブル2A、2Bのラックレール53、53が、接続用ラックレール53Aを介して接続される。これにより、連結される2つのテーブル2A、2Bに跨がって、支持梁3のX方向への移動に用いるラックレールが連続して設けられる。
この連続するラックレールにより、連結された2つのテーブル2A、2Bの相対変位が規制されると共に、連結されたテーブル2全体としての剛性が高められる。これにより、ツールを加工対象物Tに対して相対移動させる際の精度に、ツールのY方向への移動に起因する振動が影響する程度を抑制できる。
【0118】
(V)テーブル2において前記ガイドレール52とラックレール53は、Y方向の連結機構500(突起510、係合穴511)両側に設けられている。
【0119】
このように構成すると、連結機構50を間に挟んだ一方側と他方側に、ガイドレール52とラックレール53が配置される。
Y方向において連結機構50は、ガイドレール52とラックレール53の間に位置しており、連結された2つのテーブル2A、2Bは、Y方向の一方側への相対変位と、他方側への相対変位が、ガイドレール52とラックレール53により規制される。
これにより、テーブル2A、2Bを連結したテーブル2全体の振動を好適に抑制できる。
【0120】
(VI)テーブル2では、加工対象物Tの載置面21aに、テーブル2の内部(内部空間23)と外部とを連通させる吸引孔210(連通孔)が複数開口している。
テーブル2は、送風機34(負圧発生手段)側のコネクタ32が挿入される接続口201a(挿入口)を、載置面21aと反対側の底壁部201(裏面)に有しており、
コネクタ32は、
長手方向における一方の端部321bがキャップ323で封止された有底筒状の基部321と、
基部321を径方向に貫通して、基部321の内部と外部を連通する連通孔324(貫通孔)を有している。
基部321の一方の端部321bは、テーブル2の内部空間23で、載置面21を持つテーブルトップ21にに対向配置されている。
連通孔324は、基部321におけるテーブル2の内部空間23内に位置する領域に設けられている。
連通孔324は、コネクタ32の接続口201aへの挿入方向に沿う長孔である。基部321において連通孔324は、周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0121】
このように構成すると、送風機34が駆動されると、テーブル2の内部空間23内の空気がコネクタ32を介して送風機34側に吸引されて、テーブル2内に負圧が発生する。
ここで、基部321の一方の端部321aの開口は、配管31側に吸引される空気の流入口である。他方の端部321bが開口していると、配管31内に吸引される空気の流れは、基部321の長手方向に沿う方向が最も多くなる。そうすると、テーブルトップ21に発生する吸引力は、Z方向から見たときにコネクタ32に重なる領域が最も大きくなり、この領域から外れるにつれて吸引力が小さくなる。すなわち、テーブルトップ21に生じる吸引力にバラツキが生じる。
【0122】
これに対して、コネクタ32では、基部321の他方の端部321bは、円板状のキャップ323で封止されている。そのため、内部空間23内の空気は、基部321の側面に開口する長孔状の連通孔324から、基部321の内部に流入したのち、配管31側に吸引されるようになっている。これにより、鉛直線方向から見たときに、コネクタ32の周辺領域から、コネクタ32側に略均等に空気が吸引される。これにより、キャップ323が設けられていない場合に比べて、テーブルトップ21に生じる吸引力のバラツキが抑制される。これにより、加工対象物Tを載置面21a上で確実に保持できるので、加工対象物Tの加工をより適切に行える。
【0123】
(1)カッティングプロッタ1は、
加工対象物Tの加工用のツール8と、
ツール8をY方向(一方向)に往復動作させる駆動機構5Cと、を有する加工装置である。
ツール8は、刃物10を保持するものである。
ツール8には、刃物10の角度をY方向に対して調整可能とする角度調整機構100が含まれる。
角度調整機構10は、刃物10の位置決めを行うと共に、位置決めされた位置で刃物10を固定する位置決定手段としての孔組84(84A~84E)が、複数の角度に応じて設けられている。
位置決定手段は、刃物10が位置決め及び固定された際に、複数の角度によらず刃物10の刃先10aの位置が一定になる位置に設けられている。
【0124】
このように構成すると、刃物10の角度を変更しても、刃先10aの位置を常に同じ位置に配置できる。これにより、刃物10の角度を変更する度に刃先10aの位置を調整する必要が無いので、加工対象物Tの加工精度を確保できる。
【0125】
(2)刃物10は、刃先10aに向けて板状に延設される形状である。
位置決定手段と刃先10aとの間は、刃物10の延設方向の途中で屈曲する形状とされている。
【0126】
このように構成すると、板状の刃物10の厚み方向の一方側に、位置決定手段が配置される。これにより、加工対象物Tを加工する際に、加工対象物側Tから刃先10aに作用する反力を、位置決定手段により受けることができるので、刃物10に作用する負荷の低減が期待できる。
【0127】
(3)ツール8は、
刃物10を支持する刃物ホルダ88と、
刃物ホルダ88の取付面82aを持つ取付プレート82(被取付部材)と、を有する。
取付面82aには、一対の係合点に相当する孔組84(円形孔841、長孔842)が複数組設定されている。
刃物ホルダ88を、選択した孔組84で取付面82aに取り付けると、刃物ホルダ88で保持された刃物10が、選択した孔組84に応じて決まる角度で配置される。
【0128】
このように構成すると、取付面82aに複数ある一対の係合点に相当する孔組84(円形孔841、長孔842)の中から、刃物10の角度が、設定したい角度を実現する孔組84選択して、選択した孔組84を用いて刃物ホルダ88を取付プレート82の取付面82aに取り付けることで、刃物10を所望の角度で配置できる。
これにより、刃物の角度は、選択した孔組84に応じて決まるので、孔組84を選択するだけで、刃物10を所望の角度で精度良く配置できる。よって、刃物10の角度の触れに起因する加工精度の低下を好適に防止できる。
【0129】
(4)取付面82aに対する刃物ホルダ88の取付方向から見て、
一対の係合点に相当する孔組84は、
取付面82aに取り付けた刃物ホルダ88が支持する刃物10の刃先10aを中心Cとする仮想円Im2(第1の仮想円)上に位置する円形孔841(第1の係合点)と、
仮想円Im2よりも径が小さく、かつ仮想円Im2と同芯の仮想円Im3(第2の仮想円)上に位置する長孔842(第2の係合点)で構成される。
取付面82aにおいて複数組の孔組84(84A~84D)は、仮想円Im2の周方向に位相をずらして設定されている。
【0130】
このように構成すると、選択する孔組84を変更しても、刃先10aの位置を常に同じ位置に配置できる。これにより、加工方法が変わる度にツールの位置を調整する必要が無いので、加工方法が変わっても、加工対象物の加工精度を確保できる。
【0131】
(5)刃物ホルダ88は、取付面82aとの対向部に、一対の係合点となる貫通孔861、862を有している。
刃物ホルダ88は、刃物ホルダ88側の一対の係合点に相当する貫通孔861、862を、取付面82aで選択した孔組84の孔(円形孔841、長孔842)に一致させて取付面82aに取り付けられる。
【0132】
このように構成すると、孔組84Aを構成する孔(円形孔841、長孔842)を結ぶ直線Laに対する各孔組84B~84Dの孔(円形孔841、長孔842)を結ぶ直線Lb~Ldの交差角を予め設定することで、選択した孔組84に応じて決まる角度で、刃物10を配置できる。
また、選択する孔組84を変更しても、刃先10aの位置を常に同じ位置に配置できる。これにより、加工方法が変わる度にツールの位置を調整する必要が無いので、加工方法が変わっても、加工対象物の加工精度を確保できる。
【0133】
(6)取付プレート82(被取付部材)は、厚み方向の両面に取付面82a、82bを持つ板状部材である。
【0134】
このように構成すると、被取付部材は、2つの取付面82a、82bを持つことになり、刃物ホルダ88を介して取付プレート82に取り付けられた刃物の傾きの設定の自由度が向上する。
【0135】
(7)取付プレート82(被取付部材)において刃物ホルダ88は、取付面82a、82b側の係合点である孔組84(84A~84E)と、刃物ホルダ88側の係合点である貫通孔861、862に跨がるピンPN、PN(係合ピン)により位置決めされる。
【0136】
このように構成すると、取付面82a、82b側の係合点に相当する孔組84の孔(円形孔841、長孔842)と、刃物ホルダ88側に設けた貫通孔861、862(穴)とに跨がってピンPN、PNを配置するだけで、取付プレート82における刃物ホルダ88の位置決めを容易に行える。
【0137】
(VI)加工ユニット4(支持部)は、ペンホルダ6を支持する治具40を有する。
ペンホルダ6は、ペンPを支持する支持部62と、支持部62が相対回転可能に螺合する筒状の基部61と、基部61の端部610a側の開口を塞ぐキャップ65と、を有する。
キャップ65は、基部61の端部610aに内嵌する嵌合部653が、基部61側の支持部611に設けたプレート612に、係合部653に設けた磁石654の磁力で保持されている。
支持部62が基部61に対して相対的に回転すると、支持部62の回転方向に応じて決まる一方向にペン先P1が変位する。
支持部62は、当該支持部62で支持するペンPのペン先P1を、基部61の中心に誘導する芯合わせ部622を有する。
ペン先P1が周壁部610の端部610aから高さhだけ突出した位置にペン先P1が到達した時点で、キャップ65が周壁部610から離れるように、キャップ65の係合部653(磁石654)とプレート612との中心軸C6方向での位置関係が設定されている。
【0138】
このように構成すると、ペン先P1の突出高さの調整を、実測に加えて、目視によっても行える。
【0139】
本願発明は、上記した実施の形態の態様に限定されるものではなく、本願発明の技術的な思想の範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0140】
1 :カッティングプロッタ(加工装置)
10 :刃物
10a :刃先
2(2A、2B) :テーブル
20 :テーブルベース
201 :底壁部
201a :接続口
21 :テーブルトップ
21a :載置面
210 :吸引孔
23 :内部空間
24 :脚部
25、26、29 :フレーム
27 :連結部
28 :筋交い
3 :支持梁
32 :コネクタ
321 :基部
322 :フランジ部
323 :キャップ
324 :連通孔
34 :送風機
4 :加工ユニット(支持部)
40 :治具
41 :本体部
42 :固定ユニット
43 :ホルダユニット
44(44a~44c) :スロット
5(5A、5B) :駆動機構
50 :連結機構
51 :ホルダ
500 :連結機構
510 :突起
511、511A :係合穴
512 :突出部
52 :ガイドレール
52A :接続用ガイドレール
53 :ラックレール
53A :接続用ラックレール
55 :スライダ
57 :ギア
6 :ペンホルダ
61 :基部
610 :周壁部
611 :支持部
612 :プレート
613 :係合部
613a :ネジ溝
62 :支持部
621 :筒部
621c :ネジ溝
622 :芯合わせ部
623 :底壁部
623a :貫通孔
624 :ネジ支持部
625 :押圧片
63 :ロックナット
65 :キャップ
651 :底壁部
652 :周壁部
653 :嵌合部
654 :磁石
655 :フランジ部
7(7A、7B) :支持ユニット
74 :ツールホルダ
8 :ツール
81 :連結部
811 :連結片
82 :取付プレート
84(84A~84E) :孔組
841 :円形孔
842 :長孔
85、87 :ネジ孔
861、862 :貫通孔
88 :刃物ホルダ
881 :連結片
882 :支持部
883 :把持部
100 :傾き調整機構
HL :水平線
P :ペン
P1 :ペン先
PN :ピン
T :加工対象物