(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118994
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】関節モジュール
(51)【国際特許分類】
B25J 17/00 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
B25J17/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025648
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】592024147
【氏名又は名称】矢継 正信
(72)【発明者】
【氏名】矢継正信
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707CU08
3C707CU09
3C707CY36
(57)【要約】 (修正有)
【課題】全体として軽量で、消費電力が少く部品点数も少なく、人間の手の動作と同じような動作が可能な回動連結アームを構築する。
【解決手段】回転軸により駆動されるアクチュエーターで次段を駆動する同一構造の関節モジュールを、複数個連結して回動自在な多関節ロボットアームを構築する。また、この同一構造の関節モジュールを前後に対向して、XY軸に移相して結合し、前部モジュールで後部モジュールを、後部モジュールで前部モジュールを相互に角度変化させる一対のXY回動関節モジュールとする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸端にユニバーサルジョイントを有する回転軸と、この回転力により駆動されるアクチュエータ―と、このアクチュエータ―に接合した駆動兼保持桿を有し、筐体に被駆動突起を取り付けてなる関節モジュールであって、前記ユニバーサルジョイントで、次段の関節モジュールの回転軸と結合すると共に、前記被駆動突起と前記駆動兼保持桿との接合した際に、前記被駆動突起の取り付け位置に応じた位相角度で結合される事により、回動自在な連結アームが構築される事が特徴である関節モジュール
【請求項2】
回転軸と、この回転力により駆動されるアクチュエータ―と、このアクチュエータ―に接合した駆動兼保持桿を有し、筐体に被駆動突起を取り付けてなる前関節部と、この前関節部と同一構造である後関節部とをアクチュエータを位相してユニバーサルジョイントで結合すると共に、前関節部の駆動兼保持桿を後関節部の被駆動突起と、前関節部の駆動兼保持桿は後関節部の被駆動突起とそれぞれ篏合させ、前関節部で後関節部を、後関節部で前関節部を相互に角度変化させる回動自在な関節モジュール
【請求項3】
筺体内の回転軸から複数の回転軸を並列して取り出して、このそれぞれに請求項1記載の内部構造と同一構造を具備してなる請求項1記載の関節モジュール
【請求項4】
後部筺体内の回転軸から複数の回転軸を並列して取り出して、このそれぞれに請求項1記載の内部構造と同一構造を具備してなる請求項2記載の関節モジュール
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数個の関節モジュールを結合して回動自在な連結回動アームを構築する関節構成素子であり、主に多関節ロボットアームとして利用したり、例えばディスプレイの表示面を、任意位置に能動的に移動し保持する回動自在な位置保持アームとして利用する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアームは現在に於いて、いわゆるユニメーション型ロボットとして多用されているが、用途毎に第一関節、第二関節、第n番目関節等、関節毎に違った構造の関節を都度設計製造していて、大きな非効率があった。また、近年は人間型ロボットアームが普及しているが、この人間型ロボットアームでも、各関節は同一構造と云う訳でではないので、関節毎又はロボットアーム毎に都度設計していた。
【0003】
また、従来に於けるロボットアームは、駆動力源を各関節毎に有していたため、全体の重量が増大すると云う欠点があり、特に多関節になればなるほど、ロボットアームの自重が増大し、例えば、5個の関節を有するロボットアームでは5個の駆動力源があり、この駆動力源の多さが全体重量を増大させ、回転半径モーメントの増大が指数関数的に増大する欠点があった。
【0004】
つまり、従来に於いてはユニメーション型、人間型ロボットを問わず、ロボット機種毎に、都度設計する非効率が行われ、更に関節数の増加に伴う駆動力源を含めた自重増大と回転半径モーメント増大という欠点を有していた。
【0005】
自重の増大が顕著にならないような他形式の機構として、例えばワイヤー駆動や空気圧駆動のロボットアームが存在するが、これらは構造が複雑であり、部品点数も多く、費用が高い欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した様な従来のロボットアームの欠点を解消し、簡素で軽量な同一構造の関節モジュールを、簡単な手順で複数個連結可能にして、これにより多関節ロボットアームを構成する。そして、このロボットアーム内を貫通する回転軸の回転力を、各関節の角度変化の駆動力源とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
端部にユニバーサルジョイントを有する回転軸と、この回転軸の回転力を駆動源とするアクチュエーターと、このアクチュエータ―に接合して、次段の関節モジュールを角度変化させ、且つ保持する駆動兼保持桿とを内装し、前段との結合のための結合突起とを有する筐体からなるモジュール化された関節を(以下関節モジュールと称する)、任意個数連結し目的の長さにして、前記駆動兼位置保持桿で、各々関節モジュールの結合角度を任意に変化させる。
【0008】
そしてこの関節モジュールの結合の際に、前段の駆動兼位置保持桿と次段の被駆動突起とを位相させて接合、連結する事により、回動自在な連結アームが構築されるのである。(以下回動連結アームと称する)
【0009】
連結された各関節モジュールのアクチュエータ―を動作させるのは、この回動連結アーム内を貫通する回転軸の回転力である事が特徴であり、このアクチュエータ―に接合した駆動桿で、前段の関節モジュールと次段の関節モジュールとの結合角度を変化させ、且つ変化した当該角度の保持を行う。(以下この駆動桿を駆動兼保持桿125と称する)
【0010】
前記説明は、関節モジュールの結合に際して、結合毎に一方向の位相行うものである。(請求項1)
【0011】
また、結合毎に一方向の位相だけではなく、XY軸に位相する事が出来る様にして自由度が高く柔軟性の高い関節モジュールとするために、二個の関節モジュールを前後に対向させて相互に位相結合して一対と成し、前部が後部を角度変化させ、後部が前部を角度変化させることにより、一対の回動自在な関節となる(請求項2)
【0012】
ロボットアームの究極的な利用形態は、人間の腕と同じ様な動きをして、指のように複数本のアームを同時に動作制御して、物を握る等の動作を行う事であるが、関節モジュール内に同一構造を並列して複数個装備して、このそれぞれに関節モジュールを連結した回動関節アームを有する事により、この究極的な利用形態を実現する事が可能となるのである。(請求項3)
【0013】
人間の手足は、関節と骨と筋肉からなる同一構造のモジュールが複数個連結されたフラクタル的構造であると謂えるが、本発明により構成される回動連結アームはこれと同様に、ケーシングされたアクチュエーターとこれに接合された駆動兼位置保持桿およびユニバーサルジョイントを有する回転軸からなる、同一構造の関節モジュールが、複数個連結されるフラクタル的構成であることが特徴である。
【発明の効果】
【0014】
本発明を任意個数結合するだけで、ロボットアームを完成させる事が可能となるので、従来の様に、その都度ロボットアームを設計する不便を解消出来る。 且つ、駆動力源が回転軸なので、全体として軽量で、消費電力が少く部品点数も少なく、人間の手の動作と同じような動作が可能な回動連結アームを容易に構築する事が出来る。
【0015】
フラクタル的構成と云う特徴のため、各関節モジュールの動作を制御するソフトウエアもフラクタル的、階層的に記述する事が出来るので、ロボット動作記述言語として効率的で簡便なプログラミング言語でロボットを制御する事が可能になるのである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】関節モジュールの請求項1の斜視図 (
図1,2,,4,6,7はケーシングを一部剥がした図)
【
図2】前段と次段の関節モジュールが結合角度を変化している図
【
図3】関節モジュールが3段にXY軸に90°位相して結合している図
【
図4】前部と後部を90°移相して結合した一対のXY回動関節モジュールとした請求項2の図
【
図5】一対のXY回動関節の前部と後部が相互にXY軸に角度変化している図。
【
図6】結合部に角度センサーとしてポテンションメータを装備した図
【
図7】関節モジュール内に複数のアクチュエーターと回転軸を並列して内装してなる請求項3の図
【0017】
以下図を使い本発明の実施例を詳細に説明する。図に示す様に、筺体としてのケーシング105で覆われた関節モジュール100の内部には、取り付け具ASにより取り付けられたアクチュエーター120を有する。このアクチュエータ―120は回転軸が貫通していて、この回転力により駆動される。そしてこのアクチュエータ―120に駆動兼位置保持桿125が接合され、ケーシング105から突出していて、次段の関節モジュール100のX軸被駆動突起被130又はY軸被駆動突起被140に嵌合してこれをX軸又はY軸に角度変化させる。
【0018】
この角度変化の駆動力源である回転軸200は、端部にユニバーサルジョイント200を有していて、次段の関節モジュール100と回動自在に結合する。
【0019】
図2は、回転軸200の両端に回転軸カプラKCを有する関節モジュール100を2個結合したもので、駆動兼位置保持桿桿125は、次段に結合された関節モジュール100のX軸用被駆動突起130X軸に嵌合してこれを角度変化させ、目的の角度変化に達すると停止し、当該角度を保持する。アクチュエーター120に配線した信号線Aには関節モジュールを特定する識別情報や、角度変化情報等がパソコン等のコントローラーに送受信されているので、これにより、目的の関節モジュール100のアクチュエーター120を識別し、角度データに基づき、これを動作させて、結合角度を変化させ当該位置を保持するのである。
【0020】
上記したように、アクチュエーター120の駆動力源は回転軸200の回転力であって、従来の様にモーター等の駆動源を関節毎に有さない事が特徴であり、これにより複数個連結した際の回動連結アームの回転半径モーメントの重量の増大を最小限にする事が出来る。
【0021】
目的の変位角度に達して停止した際には、アクチュエーター120が有する自己停止機能により、自身の回転負荷で停止し当該位置を保持する。例えばウォームギアを使用したアクチュエーター機構ではこれを容易に実現する事が出来るが、負荷が大きい等、停止保持機能が有効に働かない際には、位置保持手段、ブレーキ手段等を必要に応じて別途装備する。
【0022】
図3は関節モジュール100をそれぞれ90°位相して3段に連結した例である。1段目の関節モジュール100は唯一の駆動力源であるモーターMの回転軸200と回転軸カプラKCと結合され、次段、次々次の回転軸に結合され、全ての関節モジュール100のアクチュエータ―120を貫通する。
【0023】
この回転力が、連結された全ての関節モジュール100の回転軸200を回転させ、アクチュエータ―120の駆動力源となるのである。そして1段目が2段目との結合をX軸に角度変化させ、2段目が3段目との結合をY軸に角度変化させつつ、回転軸はユニバーサルジョイント300によりXY軸に回動自在に回転結合される事により、回動連結アームが構築されるのである。
【0024】
上記説明に於いては、各関節モジュールを結合する際、結合の1段目はX軸に、2段目はY軸にそれぞれ一軸だけに位相させる。つまり一組の結合につき一回の位相結合を行うものであり、駆動兼位置保持桿125は必ずアーム伸長方向に結合された次段の関節モジュールを角度変化させるようになっている。(請求項1)
【0025】
図関節モジュールを一段づつ、位相して結合するのではなく、
図4に示す様に、2個の関節モジュールを前後に対向してXY軸に位相結合して、一対の回動自在関節モジュールとする事により、更に自由度の高い本発明が実現できる。(請求項2)
【0026】
関節モジュール100を相互に反対向きに対向して、前部のアクチュエーターと後部のアクチュエーターを90°位相させ、前部の駆動兼位置保持桿125は後部のX軸用被駆動突起130と嵌合し、後部の駆動兼位置保持桿125は前部のY軸用被駆動突起140と嵌合する。
【0027】
そして、前部は後部をX軸に角度変化させ、後部は前部をY軸に角度変化させる。これにより、XY軸に回動自在な関節モジュールとなり、少ない連結で自由度の高い回動連結アームを構築可能となる。
図5はこの前後一対の関節モジュールがXY軸に相互に角度変化している図であり、このユニークな結合手段により新たな機能が発生するのである。
【0028】
図1~
図3に於ける説明では、駆動兼位置保持桿と被駆動突起が、関節モジュールのケーシング105の両側に2箇所で嵌合して角度変化及び位置保持を行っている例であるが、これは、嵌合時の間隙により生じる「ぶれ」を最小限にするためである。
【0029】
また、以上の説明に於いて、結合角度の検出はアクチュエーター内部の角度センサーを用いてなされるが、特に精密な動作が求められる際には、
図5に示す様に、前段と次段の関節モジュール100の結合部に、結合角度の変化量をセンスするためのポテンションメーター180を取り付け、これにより「ぶれ」を含めた結合角度を正確に検出して制御する事により、「ぶれ」による影響を最小限にする事が出来る。
【0030】
図4~
図6の説明図に於いては、前段と次段の関節モジュールの結合及び角度保持を、XY軸共に片側だけの駆動兼位置保持桿と被駆動突起の嵌合で行っている例であり、これにより嵌合時の間隙による「ぶれ」が顕著となるが、この「ぶれ」は各構成要素の精密度や全体の重量により差異が生じ、これを無視乃至吸収できる範囲内では、例えば携帯端末のディスプレイ等の比較的小さくて軽いものを回動自在に保持する場合には、利用するに値する。
【0031】
図6は、関節モジュール内部に、入れ子状に同一構造の関節モジューを複数並列して有する請求項3の例である。関節モジュール100内の回転軸200に主歯車280を取り付け、これに複数の従歯車285を噛合させて回転力を分配し、このそれぞれに、アクチュエータ―120と駆動兼位置保持桿125、ユニバーサルジョイント300を装備する。つまり関節モジュール100の内部に、同一構造を複数個並列して入れ子状に内装した関節モジュールを有して、このそれぞれに関節モジュールを連結する事により、一個の関節モジュールから、複数の連結回動アームが伸長すると云う並列連結構成が可能となる。
【0032】
この様な構成により、複数の連結回動アームが、前段の関節モジュールに対して、それぞれ独自に異なった角度で任意変化する事により、「物を握る」と云う人間の指の様な動作が可能になるのである。
【符号の説明】
【0033】
100 関節モジュール
105 ケーシング
120 アクチュエーター
125 駆動兼位置保持桿
130 X軸被駆動突起
140 Y軸被駆動突起
180 ポテンションメーター
185 ポテンションメーター取り付け桿
200 回転軸
250 ユニバーサルジョイント
A 情報入出力線
AC コネクタ
AS アクチュエーターの取り付け具
B ベアリング
KC 回転軸カプラー