(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001190
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】血管新生眼疾患を処置するためのVEGFアンタゴニストの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20231226BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231226BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231226BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231226BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20231226BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20231226BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20231226BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
A61K38/16 ZNA
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P27/02
C07K19/00
C07K16/28
C07K16/18
C12N15/12
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023174006
(22)【出願日】2023-10-06
(62)【分割の表示】P 2021146749の分割
【原出願日】2012-01-11
(31)【優先権主張番号】61/432,245
(32)【優先日】2011-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/434,836
(32)【優先日】2011-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/561,957
(32)【優先日】2011-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・ディー・ヤンコーポラス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】反復用量のVEGFアンタゴニストを患者に逐次的に投与することによって血管新生眼疾患を処置する方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、反復用量のVEGFアンタゴニストを8週またはそれより多い週に1度の頻度で患者に投与することを含む。本発明の方法は、加齢黄班変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄班浮腫、網膜中心静脈閉塞症、および角膜血管新生のような血管新生眼疾患の処置に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における血管新生眼疾患を処置するための方法であって、単回の初期用量のVEGFアンタゴニスト、続いて1回またはそれより多い第2次用量のVEGFアンタゴニスト、続いて1回またはそれより多い第3次用量のVEGFアンタゴニストを逐次的に患者に投与する工程;を含んでなり、
ここで各第2次用量は、その直前の用量の2~4週後に投与され;そして
各第3次用量は、その直前の用量の少なくとも8週後に投与される、
上記方法。
【請求項2】
単回のみの第2次用量が患者に投与され、かつ該単回の第2次用量が、初期用量のVEGFアンタゴニストの4週後に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2回のみの第2次用量が患者に投与され、各第2次用量が、その直前の用量の4週後に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各第3次用量が、その直前の用量の8週後に投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも5回の第3次用量のVEGFアンタゴニストが患者に投与され、最初の4回の第3次用量がその直前の用量の8週後に投与され、その後の各第3次用量が、その直前の用量の8または12週後に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
血管新生眼疾患が、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞症および角膜血管新生からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
血管新生眼疾患が、加齢黄斑変性である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
VEGFアンタゴニストが、抗VEGF抗体もしくはそのフラグメント、抗VEGF受容体抗体もしくはそのフラグメント、またはVEGF受容体ベースのキメラ分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
VEGFアンタゴニストが、VEGF受容体ベースのキメラ分子である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
VEGF受容体ベースのキメラ分子が、配列番号1の核酸配列によってコードされるVEGFR1R2-FcΔC1(a)を含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
VEGF受容体ベースのキメラ分子が、(1)配列番号2のアミノ酸27~129を含むVEGFR1成分;(2)配列番号2のアミノ酸130~231を含むVEGFR2成分;および(3)配列番号2のアミノ酸232~457を含むマルチマー化成分、を含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
全ての用量のVEGFアンタゴニストが、局所投与または眼内投与によって患者に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
全ての用量のVEGFアンタゴニストが、眼内投与によって患者に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
眼内投与が、硝子体内投与である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
全ての用量のVEGFアンタゴニストが、局所投与または眼内投与によって患者に投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
全ての用量のVEGFアンタゴニストが、眼内投与によって患者に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
眼内投与が、硝子体内投与である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
全ての用量のVEGFアンタゴニストが、約0.5mg~約2mgのVEGFアンタゴニストを含んでなる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
全ての用量のVEGFアンタゴニストが、0.5mgのVEGFアンタゴニストを含んでなる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
全ての用量のVEGFアンタゴニストが、2mgのVEGFアンタゴニストを含んでなる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
患者における血管新生眼疾患の処置方法に使用するためのVEGFアンタゴニストであって、単回の初期用量のVEGFアンタゴニスト、続いて1回またはそれより多い第2次用量のVEGFアンタゴニスト、続いて1回またはそれより多い第3次用量のVEGFアンタゴニストを逐次的に患者に投与する工程;を含んでなり、
ここで各第2次用量は、その直前の用量の2~4週後に投与され;そして
各第3次用量は、その直前の用量の少なくとも8週後に投与される、上記VEGFアンタゴニスト。
【請求項22】
単回のみの第2次用量が患者に投与され、そして単回の第2次用量が、初期用量のVEGFアンタゴニストの4週後に投与される、請求項21に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項23】
2回のみの第2次用量が患者に投与され、そして各第2次用量が、その直前の用量の4週後に投与される、請求項21に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項24】
各第3次用量が、その直前の用量の8週後に投与される、請求項21~23のいずれか1項に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項25】
少なくとも5回の第3次用量のVEGFアンタゴニストが患者に投与され、そして最初の4回の第3次用量はその直前の用量の8週後に投与され、その後の各第3次用量は、その直前の用量の8または12週後に投与される、請求項21~23のいずれか1項に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項26】
血管新生眼疾患が、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞症および角膜血管新生からなる群より選択される、請求項21~25のいずれか1項に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項27】
血管新生眼疾患が、加齢黄斑変性である、請求項26に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項28】
VEGFアンタゴニストが、抗VEGF抗体もしくはそのフラグメント、抗VEGF受容体抗体もしくはそのフラグメント、またはVEGF受容体ベースのキメラ分子である、請求項21~27のいずれか1項に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項29】
VEGF抗体が、VEGF受容体ベースのキメラ分子である、請求項28に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項30】
VEGF受容体ベースのキメラ分子が、配列番号1の核酸配列によってコードされたVEGFR1R2-FcΔC1(a)を含む、請求項29に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項31】
VEGF受容体ベースのキメラ分子が、(1)配列番号2のアミノ酸27~129を含むVEGFR1成分;(2)配列番号2のアミノ酸130~231を含むVEGFR2成分;および(3)配列番号2のアミノ酸232~457を含むマルチマー化成分、を含む、請求項29に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項32】
全ての用量のVEGFアンタゴニストが、局所投与または眼内投与によって患者に投与される、請求項21~31のいずれか1項に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項33】
全ての用量のVEGFアンタゴニストが、眼内投与によって患者に投与される、請求項32に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項34】
眼内投与が、硝子体内投与である、請求項33に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項35】
全ての用量のVEGFアンタゴニストが、約0.5mg~約2mgのVEGFアンタゴニストを含んでなる、請求項34に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項36】
全ての用量のVEGFアンタゴニストが、0.5mgのVEGFアンタゴニストを含んでなる、請求項35に記載のVEGFアンタゴニスト。
【請求項37】
全ての用量のVEGFアンタゴニストが、2mgのVEGFアンタゴニストを含んでなる、請求項35に記載のVEGFアンタゴニスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼疾患の治療処置の分野に関連する。さらに詳しくは、本発明は、血管新生によって引き起こされるか、又はこれに関連する眼疾患を処置するためのVEGFアンタゴニストの投与に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの眼疾患は、病的な血管新生と関連する。例えば、加齢黄斑変性(AMD)の発生は、脈絡膜新生血管(CNV)と呼ばれるプロセスと関連する。CNVからの漏出は、黄斑浮腫および黄斑の下の液貯留を引き起こし、視力喪失につながる。糖尿病黄斑浮腫(DME)は、血管新生成分を伴う別の眼疾患である。DMEは、糖尿病患者の中等度視力喪失に最も多く見られる原因であって、糖尿病網膜症の一般的な合併症であり、網膜の血管に影響を及ぼす疾患である。臨床的に有意なDMEは、シャープな直接視を担い網膜の光に敏感な部分である黄斑の中心に、流体が漏出したときに起る。黄斑内の流体は、重篤な視力喪失、または失明を引き起こす可能性がある。異常な血管新生に関連するさらに別の眼疾患は、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)である。CRVOは、網膜の血液および体液のバックアップを導く中心静脈の閉塞によって引き起こされる。また、網膜も虚血状態になる可能性があり、不適切な新生血管の成長を招き、それがさらなる視力喪失およびより重篤な合併症を引き起こす可能性がある。血管内皮増殖因子(VEGF)の遊離は、眼や不適切な新生血管の成長における血管透過性亢進の一因となる。従って、VEGFの血管新生促進特性を阻害することは、血管新生眼疾患を処置するための有効な戦略であると思われる。
【0003】
AMDやCRVOのような血管新生眼障害のFDA認可の処置としては、硝子体内注射による月ごとベースの、ラニビズマブ[ルセンティス(R)(Lucentis(R)),ジェネンテック社( Genentech, Inc.)]と呼ばれる抗VEGF抗体の投与が挙げられる。
【0004】
VEGFアンタゴニストを用いた眼疾患を処置するための方法は、例えば特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4および特許文献5に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,303,746号
【特許文献2】米国特許第7,306,799号
【特許文献3】米国特許第7,300,563号
【特許文献4】米国特許第7,303,748号
【特許文献5】米国特許出願2007/0190058
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それにもかかわらず、血管新生眼疾患の投与計画、特に高レベルの有効性を維持しながらより少ない投与頻度を可能にする投与計画のための技術のニーズが、なお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、血管新生眼疾患を処置するための方法を提供する。本発明の方法は、長時間をかけて患者に対してVEGFアンタゴニストの反復用量を逐次的に投与することを含んでなる。特に、本発明の方法は、単回の初期用量のVEGFアンタゴニスト、続いて1回またはそれより多い第2次用量のVEGFアンタゴニスト、続いて1回またはそれより多
い第3次用量のVEGFアンタゴニストを患者に逐次的に投与する工程を含んでなる。本発明者らは、驚くべきことに、血管新生眼疾患の罹患者に対して、VEGFアンタゴニストの約3回の用量が約2~4週の頻度で該患者に先に投与されている場合には特に、8週またはそれ以上の週に1度の頻度でVEGFアンタゴニストを投与することが、該患者において有益な治療効果を達成し得ることを発見した。従って、本発明の方法によれば、VEGFアンタゴニストの各2次用量はその直前の用量の2~4週後に投与され、そして各第3次用量は、その直前の用量の少なくとも8週後に投与される。本発明の投薬計画の例を
図1に示す。このような投与計画の利点の1つは、処置の全過程の全体を通して月ごとの投与を必要とする血管新生眼疾患に対する先行技術の投与計画(例えば、ルセンティス
(R)[ラニビズマブ], ジェネンテック社)についての処方情報を参照]と比較して、処
置過程の大半(すなわち第3次用量)にわたって、より少ない頻度での投与(例えば8週ごとに1度)を可能にすることである。
【0008】
本発明の方法は、例えば加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞症、角膜血管新生などを含め、いずれかの血管新生眼疾患の処置に用いることができる。
【0009】
本発明の方法は、任意のVEGFアンタゴニストを患者に投与する工程を含んでなる。一実施態様において、VEGFアンタゴニストは、1つまたはそれ以上のVEGF受容体ベースのキメラ分子(本明細書では、「VEGF-Trap」または「VEGFT」ともいう)を含む。本発明の該文脈において用いることのできる例示的なVEGFアンタゴニストは、本明細書において「VEGFR1R2-FcΔC1(a)」または「アフリベルセプト(aflibercept)」として言及される、2つまたはそれ以上のVEGF受容体ベースのキメラ分子を含むマルチマーVEGF結合タンパク質である。
【0010】
例えば、局所投与または眼内投与(例えば、硝子体内投与)を含め、本発明方法の使用のために種々の投与経路が考えられる。
【0011】
アフリベルセプト[アイリーアTM(EYLEATM), リジェネロン製薬(Regeneron Pharmaceuticals, Inc))は、最初の3ヶ月間は2mgの推奨用量を4週ごとに硝子体内注射により投与し、その後8週ごとに1度硝子体内注射により2mgずつ投与することで、血管新生(滲出型)加齢黄斑変性の患者の処置用に、2011年11月にFDAにより認可された。
【0012】
本発明の他の実施態様は、次の詳細な説明の検討から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の例示的な投与計画を示す図である。この計画において、VEGFアンタゴニスト(「VEGFT」)の単回の「初期用量」は、処置計画の開始時に(すなわち「週0」に)投与され、2回の「第2次用量」は、週4および週8にそれぞれ投与され、少なくとも6回の「第3次用量」は、その後8週ごとに1度(すなわち週16、24、32、40、48、56などに)投与される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の詳細を説明するに先立ち、記載される特定の方法及び実験条件は変動し得るので、本発明がこのような方法及び条件に限定されないことは当然のこととして理解すべきである。また当然ことながら、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものとなるから、本明細書において使用される用語は、特定の実施態様のみを説明する目的のためであり、限定を生じさせるものではない。
【0015】
別段の定めがない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書において、使用される用語「約」は、特定の指定された数値に関して使用される場合、その値が、挙げられた値から1%以下だけ変化し得ることを意味する。例えば、本明細書において使用される表現「約100」は99及び101を含み、そしてその間の全ての数値(例えば99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0016】
本明細書において記載される方法及び材料と類似するか又は等価ないずれの方法及び材料も本発明の実施又は試験において使用され得るが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。
【0017】
投与計画
本発明は、血管新生眼疾患を処置するための方法を提供する。本発明の方法は、患者に対して反復用量のVEGFアンタゴニストを逐次的に投与する工程を含んでなる。本明細書において、用いられる「逐次的に投与」は、VEGFアンタゴニストの各用量を、所定の間隔(例えば、数時間、数日、数週または数月)で区切られた異なる時点(例えば異なる日)に患者に投与することを意味する。本発明は、患者に単回の初期用量のVEGFアンタゴニスト、続いて1回またはそれより多い第2次用量のVEGFアンタゴニスト、続いて1回またはそれより多い第3次用量のVEGFアンタゴニストを逐次的に投与する工程を含んでなる。
【0018】
用語「初期用量」、「第2次用量」および「第3次用量」は、VEGFアンタゴニスト投与の時系列をいう。従って、「初期用量」は、処置計画の開始時に投与される用量(「ベースライン用量」ともいう)であり;「第2次用量」は、初期用量の後に投与される用量であり;そして「第3次用量」は、第2次用量の後に投与される用量である。初期、第2次、および第3次用量は、全て同じ量のVEGFアンタゴニストを含有していてもよいが、投与頻度の観点から一般的に互いに異なる。しかしながら、一定の実施態様では、初期、第2次および/または第3次用量に含まれるVEGFアンタゴニストの量は、処置過程の間互いに変動するものとなる(例えば、必要に応じて上下に調整される)。
【0019】
本発明の例示的な実施態様において、各第2次用量は、その直前の用量の2~4週後(例えば、2、21/2、3、31/2、または4週後)に投与され、各第3次用量は、直前の用量の少なくとも8週後(例えば、8、81/2、9、91/2、10、101/2、11、111/2、12、121/2、13、131/2、14、141/2週後、またはそれより多い週の後)に
投与される。本明細書において、用いられる「直前の用量」という語句は、反復投与の順序において、用量の介入なしに、その順序の次の用量の投与に先立って患者に投与されるVEGFアンタゴニストの用量を意味する。
【0020】
本発明の1つの例示的な実施態様において、VEGFアンタゴニストの単回の初期用量は、その処置計画の最初の日に(すなわち週0に)患者に投与され、続いて2回の第2次用量の各々が、その直前の用量の4週後(すなわち週4に、そして週8に)で投与され、続いて少なくとも5回の第3次用量の各々が、その直前の用量の8週後に(すなわち週16、24、32、40および48に)投与される。第3次用量は、処置計画の過程の間、いつまでも(8週またはよれより多い週の間隔で)継続することができる。この例示的な投与計画を
図1にグラフで示す。
【0021】
本発明の方法は、任意回数の第2次および/または第3次用量のVEGFアンタゴニストを患者に投与する工程を含み得る。例えば、一定の実施態様において、単回のみの第2次用量が患者に投与される。他の実施態様において、2回またはそれより多い(例えば、2、3、4、5、6、7、8回、またはそれより多い回の)第2次用量が患者に投与され
る。同様に、一定の実施態様において、単回のみの第3次用量が患者に投与される。他の実施態様において、2回またはそれ以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8回、またはそれより多い回の)第3次用量が患者に投与される。
【0022】
多回の第2次用量を含む実施態様において、各第2次用量は、それ以外の第2次用量と同一の頻度で投与され得る。例えば、各第2次用量は、直前の用量の4週後患者に投与され得る。同じように、多回の第3次用量を含む実施態様において、各第3次用量は、それ以外の第3次用量と同一の頻度で投与され得る。例えば、各第3次用量は、直前の用量の8週後患者に投与され得る。あるいは、第2次および/または第3次用量が患者に投与される頻度は、処置計画の過程にわたって変動し得る。例えば、本発明は、単回の初期用量のVEGFアンタゴニストを患者に投与し、続いて1回またはそれより多い第2次用量のVEGFアンタゴニストを患者に投与し、そして少なくとも5回の第3次用量のVEGFアンタゴニストを患者に投与する工程を含んでなり、ここで第1回から第4回の第3次用量は、直前の用量の8週後に投与され、それに続く各第3次用量は、直前の用量の8~12(例えば、8、81/2、9、91/2、10、101/2、11、111/2、12)週後に投与される。また、投与の頻度は、臨床検査の後、個々の患者の必要性に応じて、処置の過程の間医師によって調整され得る。
【0023】
VEGFアンタゴニスト
本発明の方法は、特定の投与計画に従ってVEGFアンタゴニストを患者に投与する工程を含んでなる。本明細書において、使用される表現「VEGFアンタゴニスト」は、VEGFの通常の生物学的活性を遮断する、低減する、または妨害する任意の分子を意味する。
【0024】
VEGFアンタゴニストは、VEGFおよびVEGF受容体間の相互作用を妨害する分子、例えばVEGFまたはVEGF受容体に結合し、VEGFとVEGF受容体間の相互作用を阻害するか、または他の方法で妨げる分子を含む。特定の例示的なVEGFアンタゴニストは、抗-VEGF抗体、抗-VEGF受容体抗体、およびVEGF受容体ベースのキメラ分子[本明細書において以下VEGFトラップ(VEGF-traps)という]を含む
。
【0025】
VEGF受容体ベースのキメラ分子は、VEGF受容体の2つまたはそれより多い免疫グロブリン(Ig)様ドメイン、例えばVEGFR1(以下Flt1ともいう)および/またはVEGFR2(以下Flk1またはKDRともいう)などを含み、またマルチマー化ドメイン[例えば、2つまたはそれ以上のキメラポリペプチドのマルチマー化(例えば二量体化)を促進するFcドメイン]を含むこともできるキメラポリペプチドを含む。例示的なVEGF受容体ベースのキメラ分子は、配列番号1の核酸配列によってコードされるVEGFR1R2-FcΔC1(a)と呼ばれる分子である。VEGFR1R2-FcΔC1(a)は、(1)配列番号2のアミノ酸27~129を含むVEGFR1成分、(2)配列番号2のアミノ酸130~231を含むVEGFR2成分、および(3)配列番号2のアミノ酸232~457を含むマルチマー化成分(「FcΔC1(a)」)を含む3つの成分を含む[配列番号2のC末端
アミノ酸(すなわちK458)は、本発明の方法に使用されるVEGFアンタゴニストに含まれていても、含まれていなくともよい;例えば、米国特許第7,396,664号参照]。配
列番号2のアミノ酸1~26はシグナル配列である。
【0026】
以下の本明細書において示される実施例で使用されたVEGFアンタゴニストは、2つのVEGFR1R2-FcΔC1(a)分子を含む二量体分子であり、本明細書では「VEGFT」とし
て言及される。本発明のこの文脈において使用可能なさらなるVEGF受容体ベースのキメラ分子は、米国特許第7,396,664号、同第7,303,746号、および国際特許出願公開(WO)第00/075319号に記載されている。
【0027】
血管新生眼疾患
本発明の方法は、いずれかの血管新生眼疾患を処置するために使用できる。本明細書において、使用される表現「血管新生眼疾患」は、血管の成長もしくは増殖によって、もしくはそれと関連して、または血管漏出によって、引き起こされる眼のいずれかの疾患を意味する。本発明の方法を使用して処置可能である血管新生眼疾患の非限定的な例としては、脈絡膜新生血管、加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫(DME)、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、角膜血管新生、および網膜血管新生が含まれる。
【0028】
医薬製剤
本発明には、患者に投与されるVEGFアンタゴニストが医薬製剤中に含有される方法が含まれる。医薬製剤は、少なくとも1つの非活性成分、例えば製薬学的に許容される担体などと共に、VEGFアンタゴニストを含み得る。改善された輸送、送達、耐性などを提供するために、医薬組成物中に他の作用物質を組み込むことができる。用語「製薬学的に許容される」とは、動物に、特にヒトに使用するため、連邦または合衆国政府の規制当局により認可されるか、または米国薬局方または他の一般的に承認されている薬局方にリストされることを意味する。用語「担体」は、抗体が共に投与される賦形剤、助剤、添加剤またはビヒクルをいう。全ての製薬化学者に知られた処方集:レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences(第15版、1975年 マック出版社発行、ペ
ンシルバニア州、イーストン(15th ed, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1975)))、特にその中のブラウグ(Blaug)、セイマー(Seymour)による第87章に数多くの適切な製剤を見出すことができる。これらの製剤には、例えば散剤、パスタ剤、軟膏剤、ゼリー剤、ろう剤、油剤、脂質製剤(lipids)、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有リポソーム剤[ lipid (cationic or anionic) containing vesicles][例えば、リポフェクチンTM(LIPOFECTINTM)]、DNA接合体製剤(DNA conjugates)、無水吸収パスタ剤(anhydrous absorption pastes)、水中油型および油中水型乳剤、カーボワックス乳剤
(emulsions carbowax)(カーボワックス;種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル剤、およびカーボワックス含有半固体混合物製剤が挙げられる。本発明の方法の文脈において、前述の混合物製剤のいずれも適切であり得るが、ただしVEGFアンタゴニストが製剤によって不活化されず、かつ製剤が生理学的に適合性で、投与経路に許容可能であることを条件とする。製薬化学者によく知られた添加剤および担体に関連するさらなる情報については、パウエルら、ピー・ディー・エー(1998)、ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンス・テクノロジー, 52:238-311[Powell et al. PDA(1998), J Pharm Sci Technol. 52:238-311]およびその中の引用文献を参照されたい。
【0029】
本発明の文脈において、注射によって投与するために有用な医薬製剤は、VEGFアンタゴニストを注射剤用に常用される滅菌水性媒質または油性媒質中に溶解、懸濁、または乳化することによって調製することができる。注射剤用の水性媒質としては、例えば生理食塩水、グルコースおよびその他の補助剤を含有する等張液などがあり、これはアルコール(例えばエタノール)、多価アルコール(例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えばポリソルベート80、HCO-50(硬化ひまし油のポリオキシエチレン(50モル)付加物)]などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用できる。油性媒質としては、例えばゴマ油、大豆油などが使用でき、これは安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用できる。
【0030】
投与様式
VEGFアンタゴニスト(またはVEGFアンタゴニストを含む医薬製剤)は、任意の知られた送達システムおよび/または投与方法によって患者に投与することができる。一定の実施態様において、VEGFアンタゴニストは、眼球、眼内、硝子体内または結膜下
の注射によって患者に投与され得る。他の実施態様において、VEGFアンタゴニストは、例えば点眼剤または他の液剤、ゲル剤、軟膏剤、またはVEGFアンタゴニストを含有する流体を介する局所投与によって投与でき、眼に直接適用され得る。他の可能性のある投与経路としては、例えば皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口が挙げられる。
【0031】
投与されるVEGFアンタゴニストの量
処置計画の過程にわたって患者に投与されるVEGFアンタゴニストの各用量は、同一または実質的に同一の量のVEGFアンタゴニストを含み得る。あるいは、個々の用量内に含有されるVEGFアンタゴニストの量は、処置計画の過程にわたって変動してもよい。例えば、一定の実施態様において、VEGFアンタゴニストの第1の量が初期用量で投与され、VEGFアンタゴニストの第2の量が第2次用量で投与され、そしてVEGFアンタゴニストの第3の量が第3次用量で投与される。本発明では、個々の用量内に含有されるVEGFアンタゴニストの量が経時的に増加する(例えば各後続の用量が、その前のものよりも多いVEGFアンタゴニストを含有する)、経時的に減少する(例えば各後続の用量が、その前のものよりも少ないVEGFアンタゴニストを含有する)、初期には増加しその後減少する、初期には減少しその後増加する、または投与計画の過程の全体を通して同一のままである、という用量スキームも可能なものとして考慮される。
【0032】
各用量において患者に投与されるVEGFアンタゴニストの量は、ほとんどの場合治療的有効量である。本明細書において使用される語句「治療的有効量」は、血管新生眼疾患の1つまたはそれ以上の症状または徴候における検出可能な改善をもたらすVEGFアンタゴニストの用量、または血管新生眼疾患の進行を阻害し、予防し、軽減し、または遅延させるVEGFアンタゴニストの用量を意味する。抗-VEGF抗体、またはVEGFR1R2-FcΔC1(a)のようなVEGF受容体ベースのキメラ分子の場合、治療的有効量は、約0.
05mg~約5mg、例えば約0.05mg、約0.1mg、約0.15mg、約0.2mg、約0.25mg、約0.3mg、約0.35mg、約0.4mg、約0.45mg、約0.5mg、約0.55mg、約0.6mg、約0.65mg、約0.7mg、約0.75mg、約0.8mg、約0.85mg、約0.9mg、約1.0mg、約1.05mg、約1.1mg、約1.15mg、約1.2mg、約1.25mg、約1.3mg、約1.35mg、約1.4mg、約1.45mg、約1.5mg、約1.55mg、約1.6mg、約1.65mg、約1.7mg、約1.75mg、約1.8mg、約1.85mg、約1.9mg、約2.0mg、約2.05mg、約2.1mg、約2.15mg、約2.2mg、約2.25mg、約2.3mg、約2.35mg、約2.4mg、約2.45mg、約2.5mg、約2.55mg、約2.6mg、約2.65mg、約2.7mg、約2.75mg、約2.8mg、約2.85mg、約2.9mg、約3.0mg、約3.5mg、約4.0mg、約4.5mg、約5.0mgの、抗体、または受容体ベースのキメラ分子であり得る。
【0033】
個々の用量に含有されるVEGFアンタゴニストの量は、患者の体重1kg当たりのmg抗体(すなわちmg/kg)を単位として表現され得る。例えば、VEGFアンタゴニストは、約0.0001~10mg/患者体重kgの用量で患者に投与され得る。
【0034】
処置集団と有効性
本発明の方法は、血管新生眼疾患と診断されているか、またはそれに罹患する危険性がある患者における血管新生眼疾患を処置するのに有用である。一般的に、本発明の方法は、処置計画の開始(「週0」に初期用量が投与された状態)の104週以内、例えば週16の終わりまでに、週24の終わりまでに、週32の終わりまでに、週40の終わりまでに、週48の終わりまでに、週56の終わりまでになど、に有効性を示す。AMD、CRVO、およびDMEのような血管新生眼疾患を処置する方法の文脈において、「有効性」
は、処置の開始から、患者が糖尿病網膜症早期治療研究(ETDRS)の視力チャートにおいて15文字またはそれより少ない文字の喪失しか示さないことを意味する。一定の実施態様において、「有効性」は、処置の開始時からETDRDSチャートで1文字またはそれ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11またはそれ以上)の改善を意味する。
【実施例0035】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をどのように作り、どのように使うかの完全なる開示および記載を当業者に提供するために示されるものであり、本発明者らが本発明者らの発明として考慮する範囲の限定を目的とするものではない。使用される数(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保する努力が行われているが、幾分かの実験誤差および偏差によって占められるはずである。別段の指示がない限り、部は質量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度においてであり、そして圧力は大気圧か、またはその付近の圧力である。
【0036】
以下に示される全ての実施例において使用される例示的VEGFアンタゴニストは、2つの機能的VEGF結合単位を有する二量体分子である。各機能的結合単位は、VEGFR2由来のIgドメイン3に融合されるVEGFR1由来のIgドメイン2から構成され、これがさらにヒトIgG1Fcドメインのヒンジ領域に融合される[VEGFR1R2-FcΔC1(a):配列番号1によってコードされる]。このVEGFアンタゴニストを以下の実施例
において「VEGFT」という。以下の実施例において、「月ごと」の投与は、4週に1度の投与と等価である。
【0037】
[実施例1]
血管新生AMDに罹患した被験者における硝子体内投与VEGF受容体ベースキメラ分子(VEGFT)のフェーズI臨床試験
このフェーズI試験では、血管新生AMDに罹患した21例の被験者に、単回硝子体内(IVT)用量のVEGFTを投与した。一群3例5群の被験者の各々に、0.05、0.15、0.5、2または4mgのVEGFTのいずれかを投与し、一群6例6群の被験者に1mgを投与した。治験薬に関連する重篤な有害事象はなく、識別可能な眼内炎症は報告されなかった。予備的結果は、VEGFTの注射後、中心窩網膜厚および黄班体積の急激な減少が観察され、これは6週を通して維持されたことを示した。日43に全ての用量群を横断して、光干渉断層撮影の平均網膜厚増大[網膜厚増大=(網膜厚-179μ)]は、急速黄班スキャン(Fast Macular Scan)で評価して119μから27μに、単回
眼球後極スキャン(single Posterior Pole scan)で評価して、194μから60μに減少した。最高矯正視力(BCVA)における平均改善は4.75文字で、BCVAは被験者の95%において安定であるかまたは改善した。2つの最高用量群(2および4mg)では、BCVAにおける平均改善は、13.5文字であって、6例の被験者中3例が3ライン以上の改善を示した。
【0038】
[実施例2]
血管新生AMDに罹患した被験者における反復用量の硝子体内投与VEGF受容体ベースキメラ分子(VEGFT)のフェーズII臨床試験
この試験は、4週および/または12週の投与間隔で試験した3用量(0.5、2、および4mg)のVEGFTの二重盲検、無作為化試験であった。この試験には、5処置群が存在し、以下の通りであった:1)4週ごとに0.5mg、2)12週ごとに0.5mg、3)4週ごとに2mg、4)12週ごとに2mg、および5)12週ごとに4mg。被験者は第一の12週間定間隔で投与され、その後被験者は9ヶ月間4週ごとに評価され、この間追加の用量が予め設定した基準に基づいて投与された。その後、被験者全員をVEGFTの最終用量を投与した後1年間フォローした。予め計画された中間解析からの予
備的データは、VEGFTがベースラインと比較して12週後の網膜厚における統計的に有意な減少のその主要エンドポイントを満たした(全群統合して、135μの減少、p<
0.0001)ことを示した。視力のベースラインからの平均変化量、試験の重要な副次
的エンドポイントも統計的に有意な改善を示した(全群統合して、5.9文字の改善、p<0.0001)。さらに、単回用量のみを投与した投与群の患者は、平均して、12週で網膜厚増大における減少(p<0.0001)および視力改善(p=0.012)を示した。薬物関連の重篤な有害事象はなく、VEGFアンタゴニストによる処置は、一般的に忍容性が良好であった。最も頻度の高い有害事象は、硝子体内注射に典型的に関連するものであった。
【0039】
[実施例3]
血管新生AMDに罹患した被験者における全身投与VEGF受容体ベースキメラ分子(VEGFT)のフェーズI臨床試験
この試験は、血管新生AMDに罹患した被験者の点滴静注によるVEFDTのプラセボ対照、逐次群、用量漸増の安全性、忍容性、生体効果試験である。AMDに関連する中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)の適格性基準を満たす8被験者の群は、8週の期間にわたって0.3、1、または3mg/kgの用量段階でVEGFTまたはプラセボの4回の点滴静注の投与を受けるように割り付けられた。VEGFTに起因する最も頻度の高い有害事象は、重症度において軽度から中等度であったが、3mg/kgで処置した5例の被験者中2例で用量規定毒性(dose-limiting toxicity)(DLT)を経験した[1例は、重
篤度(Grade)4の高血圧、1例は重篤度2の蛋白尿];従って3mg/kg投与群の全
ての被験者は、試験に入らなかった。網膜厚増大における平均%変化率は:日15で、プラセボ群、0.3、1、および3mg/kg用量群で、-12%、-10%、-66%および-60%(ANOVA p<0.02)、ならびに日71で、プラセボ群、0.3、および1mg/kg投与群で、-5.6%、+47.1%、および-63.3%(ANOVA p<0.02)であった。VEGFTで処置した被験者においてBCVAの数的な改善があった。このような小さな試験では予測されたように、結果は統計的に有意ではなかった。
【0040】
[実施例4]
血管新生加齢黄班変性に罹患した被験者における硝子体内反復投与VEGF受容体ベースキメラ分子(VEGFT)の有効性、安全性および忍容性のフェーズIII臨床試験
A.目的、仮説およびエンドポイント
血管新生型加齢黄班変性の罹患者を処置するためのVEGFTの使用を検討するために二並行群間比較フェーズIII臨床試験を実施した(試験1および試験2)。これらの試験
の主要な目的は、全てのサブタイプの血管新生AMDに罹患した被験者の中等度視力喪失の予防における、ラニビズマブ(ルセンティス(R)、ジェネンテック社)と比較しての非
劣性パラダイムにおいて、IVT投与のVEGFTの有効性を評価することであった。
【0041】
副次的な目的は、(a)全てのサブタイプの血管新生AMDに罹患した被験者に2年までの期間IVT反復投与したVEGFTの安全性および忍容性を評価すること、および(b)全てのサブタイプの血管新生AMDに罹患した被験者の視力関連の生活の質(QOL)に関するIVT反復投与したVEGFTの効果を評価することであった。
【0042】
これらの試験の主要仮説は、安定した、または改善したBCVA(<15文字の視力喪失)を有するVEGFT処置被験者の割合が、安定した、または改善したBCVAを有するラニビズマブ処置の割合と類似し、それにより非劣性を示すことであった。
【0043】
これらの試験の主要エンドポイントは、ベースラインと比較して、52週でETDRSチャートの15文字以上の視力喪失を予防することであった。副次的エンドポイントは、
以下の通りであった:(a)ベースラインから週52までのETDRSチャートの文字スコアにおける変化;(b)ベースラインから週52までのETDRSチャートの15文字以上の改善;(c)ベースラインから週52までの全NEI VFQ-25スコアにおける変化;および(d)ベースラインから週52までのCNV面積における変化。
【0044】
B.試験デザイン
各試験のため、被験者は、4つの投与計画:(1)4週ごとに2mgVEGFT投与(2Q4);(2)4週ごとに0.5mgVEGFT投与(0.5Q4);4週から8週ごとに、その後8週ごとに2mgVEGFT投与(治験薬を投与しない中間の4週の来院時(at interim 4 weeks visits)シャム注射)(2Q8);および(4)4週ごとに0.5mgの
ラニビズマブ投与(R0.5Q4);の1つに、1:1:1:1の割合で無作為に割り付けられた。(2Q8)に割り付けられた被験者は、4週から8週ごとに2mg注射の投与を受け、その後試験の第一の52週の間中間の4週来院時(治験薬の投与予定がないとき)シャム注射した(シャム注射は週52では与えられなかった)。
【0045】
各被験者の治療期間(study duration)は、96週+募集期間となるようにスケジュール化された。第一の52週の間(年1)、被験者は、4週ごとに対象眼(study eye)に
IVTまたはシャム注射の投与を受けた(シャム注射は週52で与えられなかった)。試験の2年目の間、被験者は、4週ごとに評価され、設定された投与基準によって決定された間隔であるが、少なくとも12週ごとに治験薬のIVT投与を受けることになる(試験の2年目の間、シャム注射は与えられないことになる)。この期間中、注射は、4週ごとの頻度で行い得るが、12週ごとの頻度を超えることはなく、以下の基準に従って行われる:(i)光干渉断層撮影(OCT)により測定して投与前の最小数値と比較して≧100μmの中心網膜厚の増加;または(ii)OCTで示される再発滲出液(recurrent fluid)に関連する投与前の最高文字スコアからの少なくとも5ETDRS文字の視力喪失
;または(iii)OCTで示される新たなまたは繰り返して起る滲出液(persistent fluid);または(iv)蛍光眼底血管造影(FA)で典型的(classic)新生血管の新たな発生、または新たなもしくは繰り返して起る漏出;または(v)新たな黄班出血;または(vi)先の注射からの12週の経過。本プロトコルに従って、被験者は、少なくとも12週ごとに注射の投与を受ける必要がある。
【0046】
被験者は、4週隔で4メートルETDRSプロトコルを使用して安全性および最高矯正視力(BCVA)について評価された。生活の質(QOL)は、NEI VFQ-25質問事項を使用して評価された。OCTおよびFA検査は定期的に行った。
【0047】
1処置群当り300例の被験者の目標組み入れで、約1200例の被験者が組み入れられた。
【0048】
本試験に適格であるためには、被験者は、AMDによる中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)を有することを要件とされた。「中心窩下」CNVは、FAで実証して中心窩下新生血管の存在、または血管造影的に中心窩近傍の位置にあるが中心窩に影響を及ぼす病変の存在、として定義された。試験者適格性は無作為化する前に血管造影基準に基づいて確認された。
【0049】
単眼のみを対象眼と指定された。両眼が適格基準を満たす被験者については悪いVAを有する眼が対象眼として選択された。両眼が同等のVAを有する場合には、最も清澄な水晶体および透光体、および最も少ない量の中心窩下の瘢痕または球萎縮(geographic atrophy)を有する眼球が選択された。
【0050】
両者の試験の選択基準は以下の通りであった:(i)署名されたインフォームドコンセ
ント;(ii)少なくとも50歳の年齢; (iii) FAで確認して、対象眼において、中心窩
に影響を及ぼす中心窩近傍病変を含め、AMDによる活動性のある主要中心窩下CNV病変;(iv) CNVが全病変の大きさの少なくとも50%;(v)対象眼における糖尿病網
膜症早期治療研究(ETDRS)の最高矯正視力が20/40~20/320(文字スコア73~25);(vi) 自分の意思で、収容され、そして全ての臨床来院のため戻り、全
ての試験関連手順を完了させることが可能;(vii) 読むこと、理解すること、およびインフォームドコンセントのフォームに自発的に署名すること(または視力障害のため読むことができない場合、インフォームドコンセントを管理する人または家族に読んでもらうこと)が可能。
【0051】
両者の試験の除外基準は以下の通りであった:1.食事サプリメントまたはビタミン類を除いて、血管新生AMDの過去の眼処置(対象眼の)もしくは全身処置、または手術;2.食事サプリメントまたはビタミン類を除いて、対象眼における血管新生AMDを処置するための、過去の他の治験薬による処置または併用療法;3.以下の抗-VEGF剤による過去の処置:(a) 対象眼における抗-VEGF療法による過去の処置は許容されなかった;(b)本試験の第一の用量の3ヶ月前までの僚眼(fellow eye)における治験薬[FDA承認されていない、例えばベバシズマブ(bevacizumab)]による抗-VEGF療法
による過去の処置は許容されたが、そのような処置は、本試験中は許容されなかった。僚眼における認可された抗-VEGF療法による過去の処置は許容された;(c) 治験薬、またはFDA/カナダ保健省承認薬の抗-VEGFの過去の全身療法は、本試験の第一の用量の3ヶ月前までのみ許容されたが、本試験中は許容されなかった;4.FAで評価して対象眼における全病変の大きさが>12の乳頭面積(disc areas)(血液、瘢痕および血管新生を含め30.5mm2);5.全病変面積の50%かそれ以上である網膜下出血、ま
たは出血が中心窩の下である場合でかつ対象眼の大きさが1またはそれ以上の乳頭面積(出血が中心窩の下である場合、中心窩は270度可視CNVで囲まれている必要がある);6.対象眼における瘢痕、線維症で、構成が>全病変の50%;7.中心窩の中心を含む瘢痕、線維症、萎縮;8.対象眼における眼球を含む網膜色素上皮の裂孔または裂け目の存在;9.来院1(Visit 1)前4週以内の対象眼における硝子体出血の既往歴;10
.病的近視(等価球面度数が-8ジオプターまたはそれ以下である,もしくは眼軸長が25mmまたはそれ以上である)、眼ヒストプラズマ症候群、網膜色素線条症、脈絡膜破裂および多病巣性脈絡膜炎を含め、CNVを引き起こす他の原因の存在;11.いずれかの眼における臨床的に顕著な糖尿病網膜症、糖尿病黄班浮腫、またはAMD以外の網膜に影響を及ぼす他の血管疾患の存在または既往歴;12.対象眼における過去の硝子体切除術;13.対象眼における網膜剥離の既往歴、または網膜剥離の処置もしくは手術;14.対象眼における段階2およびそれを超える黄班円孔の既往歴;15.対象眼における日1の3ヶ月前以内の眼内または眼周囲の手術、ただし注射の妨げとならないようである限り、日1の1ヶ月前以内に実施されたわけではないまぶた手術を除く;16.対象眼における過去の線維柱帯切除術または他の濾過手術;17.対象眼におけるコントロール不良の緑内障(抗緑内障薬による処置にもかかわらず25mmHgまたはそれより大の眼圧として定義された);18.いずれかの眼の活動性がある眼炎;19.いずれかの眼の活動性がある眼または眼周囲の感染症;20.いずれかの眼のスクリーニング(Screening)の
直ぐ2週前以内の眼または眼周囲の感染症;21.いずれかの眼のブドウ膜炎の既往歴;22.いずれかの眼の活動性のある強膜炎または上強膜炎;23.いずれかの眼の強膜軟化の存在または既往歴;24.いずれかの眼の無後嚢[イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)レーザー後嚢切開術の結果として生ずる以外の]を伴う無水晶体または偽無水晶体;25.対象眼における領域への過去の放射線治療;26.対象眼における角膜移植または角膜機能不全の既往歴;27.白内障を含めて、視力、安全性評価または眼底撮影を妨げる可能性がある対象眼における有意な中間透光体の混濁;28.治験責任医師の意見で96週試験期間中医療介入または手術介入のいずれかを必要とされる可能性がある対象眼における併発の眼内状態(例えば白内障);29.治験責任医師の意見で、
眼内注射の標準手技から予測すべき危険性を超えて被験者への危険性が増したとされるか、またはさもなければ注射手技または有効性もしくは安全性の評価を妨げる可能性があるかのいずれかの対象眼における併発の眼状態;30.治験薬の使用が禁忌であるか、または試験の結果の解釈に影響を及ぼすか、もしくは処置合併症の高い危険性を与える可能性がある疾患または状態の合理的な疑いを与える、他の疾患の既往歴、代謝機能不全、身体検査所見、または臨床検査所見;31.日1前12週以内のいずれかの臨床試験に被験者として参加;32.日1の過去3ヶ月内の治験薬による全身または眼処置;33.日1前6ヶ月内の長時間作用型ステロイド類の全身または眼内の使用;34.ポビドンヨードに対するアレルギーの既往歴;35.血管造影における注射用のフルオレセインナトリウムに対する知られた重篤なアレルギー;36.ラニビズマブ(ルセンティス(R))のFDA
承認ラベルに指示された禁忌の存在;37.妊娠中、授乳中、または試験の全期間を通して十分な避妊を行うつもりがない、妊娠の可能性がある女性。十分な避妊の手段には、経口避妊薬(スクリーニング前2サイクルまたはそれ以上の安定使用);IUD;デポ-プロベラ(R)(Depo-Provera(R));ノルプラント(R)(Norplant(R))システムインプラント;卵管結紮術;精管切除術;コンドームまたは避妊ペッサリー+避妊用スポンジ、避妊フォーム、または避妊ゼリーのいずれか;が含まれる。
【0052】
被験者は、完了/早期中止来院評価を完了するまで、対象眼におけるAMDを処置するために、プロトコルで特定されたように割り付けられた被験者のVEGFTまたはラニビズマブによる試験処置以外の標準的なまたは治験的な薬剤の投与を受けることを許容されなかった。これには、対象眼および/または僚眼を処置する目的で局所的に投与される投薬(例えばIVT、局所、近傍強膜、または眼窩周囲経路)、および全身的に投与される投薬が含まれる。
【0053】
試験方法を以下に要約する:
【0054】
最高矯正視力:対象眼および僚眼の視覚機能は、ETDRSプロトコル(糖尿病網膜症早期治療試験グループ)を4メートルで使用して評価した。視力診査医は、BCVAの一貫性ある測定を保証する資格を得ていた。VA診査医は、処置割付けをマスクされたままであることが必要であった。
【0055】
光干渉断層撮影:網膜および病変の特性は、対象眼でOCTを用いて評価した。スクリーニング来院(Screen Visit)(来院1)時、両眼について、画像が捕捉され、伝送された。全てのOCT画像は、ザイス・ストレイタスOCTTM(Zeiss Stratus OCTTM)で、バ
ージョン3またはそれ以降のソフトウェアを用いて捕捉された。OCT画像は、独立したリーディングセンターに送信され、そこでOCT画像が必要とされる来院時マスクされたリーダーにより画像が読み出された。全てのOCT画像はソース・ドキュメントの一部としてその現場でアーカイブに保管された。OCT画像のサブセットが読み出された。OCT技術者は、画像取得の一貫性と品質を保証するためリーディングセンターによる認定が必要とされた。その現場のOCT技術者が処置割付けをマスクされたままであることを保証するために十分な努力が払われた。
【0056】
眼底撮影および蛍光眼底血管造影(FA):対象眼の網膜脈管構造の解剖学的状態は、眼底検査、眼底撮影およびFAによって評価された。スクリーニング来院(来院1)時、両眼について眼底検査、眼底撮影およびFAで画像捕捉され、伝送された。眼底画像および血管撮影画像は、独立したリーディングセンターに送信され、そこでマスク化されたリーダーにより画像が読み出された。リーディングセンターが、無作為化の前に血管造影基準に基づいて被験者の適格性を確認した。全てのFA写真および眼底写真は、ソース・ドキュメントの一部としてその現場でアーカイブに保管された。写真撮影者は、画像取得の一貫性と品質を保証するためリーディングセンターによる認定が必要とされた。その現場
の全ての写真撮影者が処置割付けをマスクされたままであることを保証するために十分な努力が払われた。
【0057】
視覚関連の生活の質:視覚関連QOLは、インタビュアー管理フォーマットの米国眼病研究所25項目視覚機能アンケート(NEI VFQ-25)を用いて評価された。NEI VFQ-25は、契約したコールセンターの資格を有する職員により管理された。スクリーニング来院時、その現場が被験者を補助し、コールセンターへの最初の電話を開始させ、全ての被験者の接触情報を集め、そして無作為化およびIVT注射の前に、電話で第一のNEI VFQ-25を完了させた。全てのそれに続く来院の間、コールセンターが被験者に電話をかけ、アンケートを完了させた。
【0058】
眼圧:対象眼における眼圧(IOP)は、圧平眼圧測定またはトノペン(Tonopen)を
用いて測定した。試験中の各被験者にIOP測定の同一の方法を用いた。
【0059】
C.結果の概要(52週データ)
本試験において、三つのVEGFT群(2Q4、0.5Q4、および2Q8)の全てが、主要エンドポイント(先に定義された中等度または重度の視力喪失の予防)を満たした。両者の試験の結果を表1に要約する。
【0060】
【0061】
試験1において、月ごとのラニビズマブ0.5mg(RQ4)と比較して、月ごとにVEGFT2mgの投与を受けた患者(2Q4)は、52週でベースラインに対して統計的に有意なより大の視力平均改善(副次的エンドポイント)を達成した;月ごとのラニビズマブ0.5mg(RQ4)で改善した平均文字数8.1と比較して、月ごとにVEGFT2mgの投与を受けた患者(2Q4)は、平均で10.9文字改善した(p<0.01)
。試験1におけるVEGFTの他の用量群の全て、および試験2における全ての用量群は、この副次的なエンドポイントではラニビズマブと統計的な差はなかった。
【0062】
全般的に好ましい安全性プロファイルが、VEGFTおよびラニビズマブの両者で観察された。眼処置発生有害事象の発現率は、注射手技、基礎疾患および/または老化に関連する最も頻度の高い事象を伴うが、両試験とも4つの処置群の全てで均衡のとれたものであった。最も頻度の高い眼の有害事象は、結膜出血、黄班変性、眼痛、網膜出血、および硝子体浮遊物であった。最も頻度の高い重篤な眼以外の有害事象は、滲出型AMDの硝子体内処置を受けた高齢者集団で報告された典型的なものであった;最も頻度が高いと報告された事象は、転倒、肺炎、心筋梗塞、心房細動、乳がん、および急性冠症候群であった。治療群間で顕著な差はなかった。
【0063】
[実施例5]
糖尿病黄班浮腫(DME)に罹患した被験者におけるVEGFTのフェーズII臨床試験
この試験では、中心黄班を含む臨床的に有意なDMEに罹患した221例の患者を無作為化し、5群に亘って均衡の取れた分布にして219例の患者を処置した。対照群は、ベースラインで黄班レーザー治療を受け、そして患者は反復レーザー処置に適格であったが、16週隔時と同程度の頻度であった。残余の4つの群は、以下のようにVEGFTの硝子体内投与を受けた:二つの群は、12月の投与期間の全体を通して4週に1度の0.5mgまたは2mgのVEGFTの投与を受けた(それぞれ0.5Q4および2Q4)。二つの群は、3回の2mgVEGFTの初期用量を4週に1度投与を受け(すなわち、ベースライン、週4、週8)、その後52週を通して8週に1度の投与(2Q8)か、または非常に厳格な反復投与基準で必要に応じて投与(PRN)のいずれかの投与を受けた。ベースラインに対する視力の平均改善は表2に示される通りである:
【0064】
【0065】
この試験では、隔月ごとの2mg投与を含め、全てのVEGFT試験群で、週24でのVEGFT投与により達成された視力改善が、週52の試験の完了まで維持されたか、または数的に改善した。
【0066】
これまでの実施例で実証されているように、血管新生眼疾患(例えば、AMDおよびDME)の罹患者への、単回の初期用量および4週隔てた2回の第2次用量の投与後の、8週に1度の頻度でのVEGFT投与が、中等度または重度の視力喪失を有意な予防または視力の改善をもたらした。
【0067】
[実施例6]
CRVOに伴う黄班浮腫に罹患した過去に処置歴のない患者の無作為化、多施設、二重盲検臨床試験
この無作為化、二重盲検、フェーズ3試験では、患者は6月ごとの2mgVEGFT硝子体内注射(患者114例)、またはシャム注射(患者73例)のいずれかの投与を受けた。週24から週52まで、全ての患者は、再処置基準に従って、必要に応じて2mgVEGFT(PRN)の投与を受けた。かくして、「シャム処置患者」は、週0から週20までの4週に1度のシャム注射を受け、その後週24から週52まで必要に応じてVEGFTの硝子体内投与を受けた患者を意味する。「VEGFT処置患者」は、週0から週20までの4週に1度のVEGFT硝子体内注射を受け、その後週24から週52まで必要に応じてVEGFTの硝子体内投与を受けた患者を意味する。主要なエンドポイントは、ベースラインから週24で≧15文字の改善した患者の割合であった。週24および週52時の副次的な視力の、解剖学的な、および生活の質NEI VFQ-25のアウトカムも評価した。
【0068】
週24で、シャム処置患者の12.3%に対して56.1%のVEGFT処置患者が、≧15のETDRS文字数を改善した(p<0.0001)。同様に、週52で、シャム処置患者の30.1%に対して55.3%のVEGFT処置患者が、≧15のETDRS文字数を改善した(p<0.01)。週52で、シャム処置患者の3.8文字に対して、VEGFT処置患者は、平均16.2文字改善した(p<0.001)。注射の平均回数は、シャム処置
患者の3.9に対して、VEGFT処置患者は、2.7であった。中心網膜厚の平均変化量は、シャム処置患者の-381.8μmに対して、VEGFT処置患者は、-413.0μmであった。週24で、眼血管新生の罹患者の割合は、それぞれVEGFT処置患者について0%、シャム処置患者について6.8%であった;VEGFT PRNの投与を受けた後の週52で、割合はVEGFT処置およびシャム処置について0%および6.8%であった。週24で、VFQ-25合計スコアにおけるベースラインからの平均変化量はVEGFT処置群およびシャム処置群について、7.2対0.7であった;週52で、そのスコアはVEGFT処置群およびシャム処置群について、7.5対5.1であった。
【0069】
この実施例により、シャムPRN注射と比較して、月ごとの2mgVEGFT硝子体内注射の投与が、週24で視力の統計学的に有意な改善をもたらし、これが週52までPRNで維持されたことが、確認された。
【0070】
[配列表]
配列番号1(1377ヌクレオチドを有するDNA配列):
ATGGTCAGCTACTGGGACACCGGGGTCCTGCTGTGCGCGCTGCTCAGCTGTCTGCTTCTCACAGGATCTAGTTCCGGAAGTGATACCGGTAGACCTTTCGTAGAGATGTACAGTGAAATCCCCGAAATTATACACATGACTGAAGGAAGGGAGCTCGTCATTCCCTGCCGGGTTACGTCACCTAACATCACTGTTACTTTAAAAAAGTTTCCACTTGACACTTTGATCCCTGATGGAAAACGCATAATCTGGGACAGTAGAAAGGGCTTCATCATATCAAATGCAACGTACAAAGAAATAGGGCTTCTGACCTGTGAAGCAACAGTCAATGGGCATTTGTATAAGACAAACTATCTCACACATCGACAAACCAATACAATCATAGATGTGGTTCTGAGTCCGTCTCATGGAATTGAACTATCTGTTGGAGAAAAGCTTGTCTTAAATTGTACAGCAAGAACTGAACTAAATGTGGGGATTGACTTCAACTGGGAATACCCTTCTTCGAAGCATCAGCATAAGAAACTTGTAAACCGAGACCTAAAAACCCAGTCTGGGAGTGAGATGAAGAAATTTTTGAGCACCTTAACTATAGATGGTGTAACCCGGAGTGACCAAGGATTGTACACCTGTGCAGCATCCAGTGGGCTGATGACCAAGAAGAACAGCACATTTGTCAGGGTCCATGAAAAGGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGC
CCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAATGA
【0071】
配列番号2(458アミノ酸を有するポリペプチド):
MVSYWDTGVLLCALLSCLLLTGSSSGSDTGRPFVEMYSEIPEIIHMTEGRELVIPCRVTSPNITVTLKKFPLDTLIPDGKRIIWDSRKGFIISNATYKEIGLLTCEATVNGHLYKTNYLTHRQTNTIIDVVLSPSHGIELSVGEKLVLNCTARTELNVGIDFNWEYPSSKHQHKKLVNRDLKTQSGSEMKKFLSTLTIDGVTRSDQGLYTCAASSGLMTKKNSTFVRVHEKDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0072】
本発明は、本明細書に記載された特定の実施態様によってその範囲が限定されるべきではない。実際のところ、本明細書に記載されたものに加えて本発明の種々の改変が、当業者には前述の開示と添付する図面から明らかになるであろう。このような改変もまた、添付した特許請求の範囲に属するものとする。
患者における血管新生眼疾患の処置に使用するための医薬製剤であって、ここで、前記医薬製剤は、製薬学的に許容される担体およびVEGFアンタゴニストを含み、ここで、前記製剤は、単回の初期用量の製剤、続いて2回またはそれより多い第2次用量の製剤、続いて1回またはそれより多い第3次用量の製剤を逐次的に患者に投与することにより使用され、
ここで、各第2次用量は、その直前の用量の4週後に投与され、そして
ここで、各第3次用量は、その直前の用量の8週後に投与され、
ここで、VEGFアンタゴニストは、以下:
SDTGRPFVEMYSEIPEIIHMTEGRELVIPCRVTSPNITVTLKKFPLDTLIPDGKRIIWDSRKGFIISNATYKEIGLLTCEATVNGHLYKTNYLTHRQTNTIIDVVLSPSHGIELSVGEKLVLNCTARTELNVGIDFNWEYPSSKHQHKKLVNRDLKTQSGSEMKKFLSTLTIDGVTRSDQGLYTCAASSGLMTKKNSTFVRVHEKDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号2のアミノ酸27~457)
のアミノ酸配列を含むVEGF受容体ベースのキメラ分子であり、
ここで、前記製剤は、硝子体内投与により患者に投与される、上記医薬製剤。