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特開2024-119000住宅外壁へのモルタル施工方法およびこの施工方法に使用されるモルタル材
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  • 特開-住宅外壁へのモルタル施工方法およびこの施工方法に使用されるモルタル材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119000
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】住宅外壁へのモルタル施工方法およびこの施工方法に使用されるモルタル材
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/02 20060101AFI20240826BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240826BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20240826BHJP
   C04B 24/24 20060101ALI20240826BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20240826BHJP
   E04F 13/04 20060101ALI20240826BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240826BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20240826BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20240826BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20240826BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
E04F13/02 B
C04B28/02
C04B20/00 A
C04B24/24 A
B28B1/30
E04F13/02 H
E04F13/02 E
E04F13/04 108A
E04F13/02 A
B05D7/00 M
B05D1/36 Z
B05D1/02 Z
B05D1/28
B05D7/24 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023039099
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】520476042
【氏名又は名称】株式会社ライフステージ
(72)【発明者】
【氏名】渡部 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】長尾 陵平
【テーマコード(参考)】
4D075
4G052
4G112
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AC57
4D075AC91
4D075AE03
4D075BB16X
4D075BB60Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB11
4D075DB12
4D075DB13
4D075DB37
4D075DB50
4D075DC02
4D075EA06
4D075EB04
4D075EC07
4D075EC54
4G052DA01
4G052DB12
4G052DB16
4G052DC06
4G112MC00
4G112PA17
4G112PB26
4G112PC03
4G112PE02
(57)【要約】
【課題】住宅外壁にモルタル下地を形成させる方法として、特殊で高価な吹付け器具を用いずに吹付けもしくはローラー塗り施工でき且つ凹凸の少ない吹付け面を作り出す手法とこれに使用するモルタル材を提供する。
【解決手段】住宅外壁の施工工程において行うモルタル施工方法はモルタル材の吹付けもしくはローラー塗りによる少なくとも2以上のモルタル層形成工程により行ない、モルタル層形成工程はメッシュ材3を伏せ込ませて行う1層目形成工程と1層目形成工程後所定の硬化養生期間を経て行う2層目形成工程からなり、また、モルタル層形成工程において使用されるモルタル材は、ポリマーペーストとセメントの混合物に減水剤と水を添加混錬したポリマーセメントモルタル2、4で、このポリマーセメントモルタル2、4はポリマーペーストとセメントの混合比率を重量比で概ね1:1とした混合物に減水剤をセメント重量の0.5%~1.5%さらに水をセメント重量の15%~30%添加混錬したものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅外壁の施工工程において行うモルタル施工方法であって、前記モルタル施工はモルタル材の吹付けもしくはローラー塗りによる少なくとも2以上のモルタル層形成工程により行うことを特徴とするモルタル施工方法。
【請求項2】
前記モルタル層形成工程は、メッシュ材を伏せ込ませて行う1層目形成工程と、前記1層目形成工程後所定の硬化養生期間を経て行う2層目形成工程からなることを特徴とする請求項1記載のモルタル施工方法。
【請求項3】
前記モルタル材の吹付けは汎用吹付けガンを用いて行い、また、前記モルタル材のローラー塗りは砂骨ローラーを用いて行うことを特徴する請求項1記載のモルタル施工方法。
【請求項4】
前記モルタル層形成工程は、外張り付加断熱方式の外壁の施工工程において行うことを特徴とする請求項1又は2記載のモルタル施工方法。
【請求項5】
住宅外壁の施工工程の中で少なくとも2以上のモルタル層形成工程により行われるモルタル吹付け施工もしくはローラー塗り施工において使用されるモルタル材であって、前記モルタル材はポリマーペーストとセメントの混合物に減水剤と水を添加混錬したポリマーセメントモルタルであることを特徴とするモルタル材。
【請求項6】
前記ポリマーセメントモルタルは、ポリマーペーストとセメントの混合比率を重量比で概ね1:1とした混合物に減水剤をセメント重量の0.5%~1.5%、さらに水をセメント重量の15%~30%添加混錬したものであることを特徴とする請求項5記載のモルタル材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅特に一般木造住宅の外壁へのモルタルの施工方法およびこの施工方法に使用されるモルタル材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般木造住宅の外壁へのモルタル下地の形成においては、現場で調整・混練されたモルタルを左官コテで壁に塗り付けることで施工されている。
また、広い外壁面を効率的に施工する上では、ミキサーで混ぜたモルタルを圧送ポンプで作業位置まで運び、専用の吹付けノズルにて壁に直接吹き付ける方法も用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-64068号公報
【特許文献2】特開2019-172494号公報
【特許文献3】特開平4-315656号公報
【特許文献4】特開2020-180440号公報
【特許文献5】特開2011-163023号公報
【特許文献6】特開2013-24030号公報
【特許文献7】特開2014-47544号公報
【特許文献8】特開2022-41542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように一般木造住宅外壁へのモルタル下地の形成は、基本施工手法を左官塗りとしているが、近年の左官職人の減少やこれに伴う左官単価の上昇は本施工手法の実施の妨げとなっていた。
このため、左官塗り作業の代替手法としてモルタルを直接壁面に吹付ける施工手法が開発され実施されるようになってきているが、この吹付け施工手法は例えば特許文献1又は2に示すような大規模なコンクリート構造物、鋼鉄構造物、岩盤、法面等へ吹付けるためのものであり、小規模な住宅建築物への適用は想定されていなかった。
また、住宅建築物への施工に関するものとして例えば特許文献3又は4に示すようなものが公知であるが、使用する器具が特殊かつ高価であるため一般的なモルタルの施工工事としては汎用性に欠けるとともにこの吹付け方法では吹付け面の凹凸が大きくなることが多く、仕上げ面を平滑にするためには左官的なコテ馴らしが必要であった。
更に、モルタル材として使用されるポリマーセメントモルタルは例えば特許文献5~8に示すように公知であるが、コテ塗りを前提として組み立てられているため、実作業では多人数の職人がポリマーセメントモルタル硬化までの短時間に、塗り付け・馴らしを完了させる必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、住宅外壁の施工工程において行うモルタル施工方法であって、前記モルタル施工はモルタル材の吹付けもしくはローラー塗りの施工による少なくとも2以上のモルタル層形成工程により行うことを特徴とし、前記モルタル層形成工程は、メッシュ材を伏せ込ませて行う1層目形成工程と、前記1層目形成工程後所定の硬化養生期間を経て行う2層目形成工程からなることを特徴としている。さらに前記モルタル材の吹付けは汎用吹付けガンを用いて行い、また、ローラー塗りは砂骨ローラーを用いて行うことを特徴としている。
また、上記モルタル層形成工程により行われるモルタル吹付け施工もしくはローラー塗り施工において使用されるモルタル材は、ポリマーペーストとセメントの混合物に減水剤と水を添加混錬したポリマーセメントモルタルであり、前記ポリマーセメントモルタルは、ポリマーペーストとセメントの混合比率を重量比で概ね1:1とした混合物に減水剤をセメント重量の0.5%~1.5%、さらに水をセメント重量の15%~30%添加混錬したものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記した本発明によれば、次の効果が得られる。
即ち、請求項1記載のものによれば、従来の左官モルタル塗り作業に替えてモルタル材を直接壁面に吹付ける方法、もしくはローラー塗りによりモルタル層を形成させる施工方法で実現できるため、左官職人の減少等の工事の妨げ要因を軽減し、かつ単位面積当たりの施工人数(工数)を大幅に削減することができるとともに外壁施工工期も短縮することができる。
請求項2記載のものによれば、2層のモルタル層を所定の塗厚で所定期間経過後に順次形成させていく工法によりモルタル吹付け面もしくはローラー塗り面の凹凸形成を抑えた平滑な面に仕上げることができるため従来必要であったモルタル吹付け後の左官コテによる表面馴らしを不要とすることができる。
請求項3記載のものによれば、モルタル材の適度な粘度と流動性により特殊で高価な吹付け器具を用いることなく汎用の吹付けガンもしくはローラーによりモルタル塗布作業を実現できるため簡便かつ作業性良く行うことができる。
請求項4の発明によれば、外張り付加断熱方式の外壁の施工工程においても行うことができるため断熱性能の優れた外壁を低コストかつ短納期で施工することができる。
請求項5又は6記載の発明によれば、モルタル材として使用されるポリマーペーストセメントは、混合材の最適な配合混練により基材への付着強度を高めるとともに適度な粘度と流動性を長時間にわたり保持することができるため液ダレもなくまたモルタル材の硬化を気にすることなく吹付けもしくはローラー塗り作業を行うことができる。
上述のように、本発明のモルタル施工方法とこれに使用するモルタル材により後工程の仕上げ塗装の外観意匠への影響を押さえたモルタル下地を高品質で作業性良くかつ低コスト・短工期で作り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】 本発明のポリマーセメントモルタル下地の構成を模式的に示した展開斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において使用するポリマーペーストは、アクリル樹脂(13~15%)、無機質添加剤(85~87%)からなるものである。本ポリマーペーストとセメントとの混合比率は、重量比1:1とする。
【0009】
本発明におけるポリマーセメントモルタルに流動性と施工可能時間(可使時間)の延長を付与するために用いる高性能AE減水剤は、ポリカルボン酸誘導体を主成分とするものである。本高性能AE減水剤の添加量は、セメントに対して0.5~1.5重量%とする。夏期の作業時は、遅延型の高性能AE減水剤の使用が推奨される。
【0010】
本発明においてポリマーセメントモルタルの硬化収縮等に伴う亀裂を防止するために塗布面全面に伏せ込むグラスファイバーメッシュ3は、ガラス繊維表面に樹脂コーティングを施したものである。ポリマーセメントモルタル中への伏せ込みの際は、砂骨ローラーもしくはパテへらで押さえることで良好な付着性が得られる。
【0011】
吹付け工法によりポリマーセメントモルタルの目標塗厚(1.0~2.0mm)を確保し、かつ液ダレを防止しつつ仕上がり面の平滑性を向上させるためには、ノズル形状(リシン用若しくはタイル用)と口径(4.5~6.5mm)の選択及び吹付け圧(0.3~0.8MPa)の組み合わせを施工当日の気象状況により適宜調整することが必要である。吹付けは、1層目のポリマーセメントモルタル2にグラスファイバーメッシュ3を伏せ込み後に硬化養生期間を取り、その後2層目のポリマーセメントモルタル4の施工を行うことが推奨される。
【0012】
ローラー塗り工法によりポリマーセメントモルタルの目標塗厚(1.0~2.0mm)を確保し、かつ液ダレを防止しつつ仕上がり面の平滑性を向上させるためには、標準目の砂骨ローラーを使用し、かつ施工当日の気象状況により添加水量を適宜調整することが必要である。ローラー塗りは、1層目のポリマーセメントモルタル2にグラスファイバーメッシュ3を伏せ込み後に硬化養生期間を取り、その後2層目のポリマーセメントモルタル4の施工を行うことが推奨される。
【実施例0013】
以下に本発明を具体的に説明するために実施例を記載する。
(1)吹付け時の材料及び混合量
ポリマーペースト:ベースコート(20kg)
セメント:普通ポルトランドセメント(20kg)
添加水:水道水(4.0kg若しくは5.0kg)
高性能AE減水剤:ポリカルボン酸誘導体を主成分とするもの
(0.2kg若しくは0.3kg)
(2)吹付け時の調整方法
ポリマーペーストに添加水、高性能AE減水剤を加え、十分に攪拌する。この混合物にセメントを少量ずつ加えながら混ぜ合わせる。5分間静置後に再度混ぜ合わせた後に、施工に供する
[試験体No.2~4]。
(3)吹付け条件
吹付け器具:万能ガン(明治機械製作所製)
ノズル形状・口径:リシン用・口径5.5mm
吹付け圧力:0.6MPa
【0014】
上記実施例における試験体の調整条件を表1に示す。また、吹付け基材1にはモルタルピースを用い、23℃下で3日間、7日間及び14日間の養生を行った後に、インストロン万能試験機にて引張強度(付着強度)の測定を行った結果を表2に示す。なお、強度の大小比較のため、一般的な施工方法である左官塗りにて塗布したもの(試験体No.1)の測定値を基準に示す。
(1)左官塗り時の材料及び混合量
ポリマーペースト:ベースコート(20kg)
セメント:普通ポルトランドセメント(20kg)
添加水:水道水(3.5kg)
(2)左官塗り時の調整方法
ポリマーペーストに添加水を加え、十分に攪拌する。この混合物にセメントを少量ずつ加えながら混ぜ合わせる。5分間静置後に再度混ぜ合わせた後に、施工に供する(試験体No.1)。
(3)左官塗り条件
ステンレス製左官コテにて塗布する。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
表2に示した結果より、試験体No.2~4の付着強度が試験体No.1の数値以上であることから、本吹付け条件が左官塗り条件よりも優れていることを示すものである。
【0018】
ポリマーセメントモルタル塗布作業における標準的な施工人数を表3に示す。なお、塗布目的物しては一般的な住宅(延床面積30~35坪)の外壁とし、施工面積を200mと仮定した数値である。
【0019】
【表3】
【0020】
表3に示すように、本発明の工法は単に左官塗り作業を吹付け作業に変更しただけではなく、作業の容易さにより施工人数の削減にも寄与するものである。
なお、実施例はモルタル層形成工程が2つの場合を示しているが、夏・冬などの施工時期並びに温度・湿度などの施工環境に応じて3以上としてもよい。
【0021】
実施例で使用される基材1は、モルタルピースであるがこれに限定されることはなく、サイディング板、ケイ酸カルシウム板、石こう板、スチレン系断熱材、ウレタン系断熱材、フェノールフォーム系断熱材、繊維系断熱材とすることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 基材
2 ポリマーセメントモルタル(1層目)
3 グラスファイバーメッシュ(メッシュ材)
4 ポリマーセメントモルタル(2層目)
図1