(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119009
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】垂直軸風力発電機
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20240826BHJP
F03D 13/25 20160101ALI20240826BHJP
F03D 9/25 20160101ALI20240826BHJP
【FI】
F03D3/06 G
F03D13/25
F03D9/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023118928
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】713011201
【氏名又は名称】織田 繁夫
(72)【発明者】
【氏名】織田 繁夫
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA16
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB31
3H178BB41
3H178BB73
3H178BB79
3H178CC05
3H178DD04X
3H178DD12X
3H178DD31X
3H178DD61Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】垂直軸風力発電機のヨー制御が不要となるメリットを活かし同時に大型化を実現するため、実用の発電機として必要な機能を具備した構成を提案する。
【解決手段】タワー3の先端部に設置した支柱4を中心として回転するラウンドフレーム7に対し、水平方向に一定の間隔で水平方向に回転可能な状態にて上下方向に延びるブレード11を取り付け、かつブレード11の水平方向の角度をブレード角度保持装置13により適宜保持、あるいは解放可能とする。発電を行う際はブレード11に風が当たって生じるラウンドフレーム7の回転力を駆動ジャケット5に伝え、駆動ジャケットに取り付けた主軸17の下端を発電機18の駆動軸と連結することで発電機18を回転させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向の支柱を中心として、上下方向に形成された複数のブレードが取り付けられたフレームが水平方向に回転可能な状態で前記支柱に保持され、前記ブレードに風が当たることによって生じる前記フレームの回転力を発電機に伝えて発電する垂直軸風力発電機において、上方から見て円形または多角形のラウンドフレームは、上下方向の支柱を中心として水平方向に回転可能な状態で保持されており、当該ラウンドフレームには水平方向に同じ角度間隔にて複数のブレード軸受けが設置され、前記ブレード軸受けには中心軸が上下方向の回転可能なブレード軸が取り付けられて、前記ブレード軸の上側と下側に上下方向に延びるブレードを取付けることにより、当該ブレードは前記ブレード軸と一体となり回転可能な状態で前記ブレード軸受けに保持された構成となり、かつ前記ブレード軸には当該ブレード軸の水平方向の回転を停止、あるいは解放する機能を有するブレード角度保持装置と、前記ブレードの角度を検出するブレード角度計が取り付けられているものとし、さらに前記支柱に嵌合し水平方向に回転可能な駆動ジャケットを取り付け、当該駆動ジャケットの外周部から水平方向に張り出した複数のラウンドバーによって、前記駆動ジャケットと前記ラウンドフレームが連結されてラウンドフレームの回転力が前記駆動ジャケットに伝えられ、更に当該駆動ジャケットの回転力が発電機の駆動軸に伝えられて前記発電機が回転し発電することを特徴とする、垂直軸風力発電機。
【請求項2】
請求項1に記載のブレード軸を、請求項1に記載のブレードの水平断面における図芯位置よりも当該ブレードの先端側に取り付けることにより、請求項1に記載のブレード角度保持装置を開放した時には、前記ブレードの先端が風上側に向かうことを特徴とする、請求項1に記載の垂直軸風力発電機。
【請求項3】
請求項1に記載の支柱は地上或いは洋上の基礎に設置したタワー上端部の台座上に固定されており、請求項1に記載の駆動ジャケットは前記支柱の上部に設置されたスラスト軸受けと、前記支柱の上部に設置されたラジアル軸受けによって保持されて前記支柱と嵌合し水平方向に回転可能な構成であり、さらに請求項1に記載のラウンドフレームは前記駆動ジャケットの上方に設置したハンガーヘッドと複数の吊りワイヤーまたは吊りバ―につながれた形態で水平方向に回転可能な状態で前記駆動ジャケットと同等の高さに吊り下げられており、同時に駆動ジャケットの外周部と前記ラウンドフレームを、請求項1に記載のラウンドバーでつなぐことにより前記ラウンドフレームの回転力が駆動ジャケットに伝わって回転力が生じ、当該駆動ジャケットの中心に対して駆動ジャケットと一体化された主軸を取り付け、当該主軸は前記支柱の内側の空間を通して下方に伸びる構成であり、かつ前記主軸は前記台座の開口部を通り抜けて当該台座の下方に突き出た形態とし、さらに前記主軸の下部は前記台座に保持されたラジアル軸受けで支持された構成とし、当該主軸に対して直接請求項1に記載の発電機の駆動軸を接続した構成、若しくは前記主軸に対して回転数を増加させる増速機を接続し当該増速機の出力軸に対して請求項1に記載の発電機の駆動軸を接続した構成とすることを特徴とする、請求項1に記載の垂直軸風力発電機。
【請求項4】
請求項1に記載の支柱は地上或いは洋上の基礎に設置したタワー上端部の台座上に固定されており、当該支柱の上端部に対して下向きの荷重と水平方向の荷重を保持し得るピボット軸受け装置を設置し、当該ピボット軸受け装置の外周部に取り付けられた複数の吊りワイヤーまたは吊りバ―によって、請求項1に記載のラウンドフレームが水平方向に回転可能な状態で吊り下げられた構成とし、前記支柱に嵌合し水平方向に回転可能な状態で、請求項1に記載の駆動ジャケットを前記ラウンドフレームと同等の高さに取り付けて、当該駆動ジャケットの外面に取り付けた請求項1に記載のラウンドバーの先端部と、前記ラウンドフレームを複数の駆動ロープによってつなぐことにより、前記ラウンドフレームの回転力が前記駆動ジャケットに伝わって当該駆動ジャケットに回転力が生じ、さらに前記駆動ジャケットの外周部にギアを取り付け、かつ前記ギアと噛み合うピニオンギア、および当該ピニオンギアの回転軸に対して直接請求項1に記載の発電機の駆動軸を接続した構成、あるいは前記ピニオンギアの回転軸に対して回転数を増加させる増速機を接続し、当該増速機の出力軸に対して請求項1に記載の発電機の駆動軸を接続した構成とすることを特徴とする、請求項1に記載の垂直軸風力発電機。
【請求項5】
請求項4に記載のピ二オンギアの回転軸、あるいは請求項3または請求項4のいずれかに記載の発電機の駆動軸に対してブレーキ装置を取り付けて、前記発電機が無負荷状態の時に前記ピニオンギアおよび前記発電機の駆動軸の回転を停止させることにより、請求項3に記載の主軸の回転が停止し、さらに請求項3または請求項4のいずれかに記載の駆動ジャケットの回転が停止して、当該駆動ジャケットにつなげられた請求項3または請求項4のいずれかに記載のラウンドフレームの回転が停止することを特徴とする、請求項3または請求項4のいずれかに記載の垂直軸風力発電機。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載の支柱、および請求項1~請求項5のいずれかに記載の駆動ジャケット、請求項1~請求項5のいずれかに記載のラウンドバー、請求項4に記載の駆動ロープ、および請求項1~請求項5のいずれかに記載のラウンドフレームに対して作業員が歩行可能なタラップを取り付けたことを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれかに記載の垂直軸風力発電機。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれかに記載の垂直軸風力発電機は、請求項1~請求項6のいずれかに記載のブレード角度保持装置、および請求項5に記載のブレーキ装置を制御する制御盤を備え、当該制御盤は前記垂直軸風力発電機の近傍に設置した風速計によって測定した風速の信号と、請求項1~請求項6のいずれかに記載のブレード角度計のブレード角度の信号と、請求項1~請求項6のいずれかに記載の駆動ジャケットに対して取り付けた回転数計の信号と、請求項1~請求項6のいずれかに記載の発電機の発電出力の信号と、電力系統の運用状態の信号等の運転に必要な信号を受信し、それらの信号を用いて前記ブレード角度保持装置および、前記ブレーキ装置を制御することを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれかに記載の垂直軸風力発電機。
【請求項8】
上下方向の支柱を中心として、上下方向に形成された複数のブレードが取り付けられたフレームが水平方向に回転可能な状態で前記支柱に保持され、前記ブレードに風が当たることによって生じる前記フレームの回転力を発電機に伝えて発電する垂直軸風力発電機において、上方から見て円形または多角形のラウンドフレームは、上下方向の支柱を中心として水平方向に回転可能な状態で保持されており、当該ラウンドフレームには水平方向に同じ角度間隔にて複数のブレード軸受けが設置され、前記ブレード軸受けには中心軸が上下方向の回転可能なブレード軸が取り付けられて、前記ブレード軸の上側と下側に上下方向に延びるブレードを取付けることにより、当該ブレードは前記ブレード軸と一体となり回転可能な状態で前記ブレード軸受けに保持された構成となり、かつ前記ブレード軸には当該ブレード軸の水平方向の回転を停止、あるいは解放する機能を有するブレード角度保持装置と、前記ブレードの角度を検出するブレード角度計が取り付けられているものとし、さらに前記支柱に嵌合し水平方向に回転可能な駆動ジャケットを取り付け、当該駆動ジャケットの外周部から水平方向に張り出した複数のラウンドバーによって、前記駆動ジャケットと前記ラウンドフレームが連結されてラウンドフレームの回転力が前記駆動ジャケットに伝えられ、更に当該駆動ジャケットの回転力が発電機の駆動軸に伝えられて前記発電機が回転し発電する垂直軸風力発電機であって、当該垂直軸風力発電機の前記支柱は海底面に設置され海面上に突き出たタワー上に設置されるか、或いは海底面に敷設されたアンカーと係留索により繋がれて海面上の一定の位置に浮かんで係留された浮体基礎上に設置されたタワー上に設置されることを特徴とする、垂直軸風力発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を発電するために適した垂直軸風力発電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の再生可能エネルギー利用増加の機運に伴い、今後陸上や洋上での風力発電機の建設が増えることが予想される。
現在の風力発電機本体は、地上設置、洋上設置を含めてプロペラ式水平軸風車が広く普及している。これは航空機の分野で発展したプロペラや翼の翼形を応用し、風によって翼に作用する揚力を有効に使う風車のブレードが実用化されたことや、風速に応じてブレードの角度を変化させるピッチ制御、風車体の受風面を風に向かわせるヨー制御技術等、現在までの技術開発の成果が背景となっている。しかしながらそれらを実現し製品に適用するためにはブレード製作には特殊技術が必要であり、同時にヨー制御、ピッチ制御に必要となる強力な駆動装置や信頼性の高いギア、ベアリング等、付加価値の高い部品も必要となる。これらの部品は今後の洋上風力発電における大型化に対してはコスト低減を阻害する要因となると思われる。
【0003】
上記に対し上下方向の支柱を中心として水平面の円周上に設置された、上下に延びる複数のブレードが、風を受けて生じる回転力によって発電を行う垂直軸風車は、運転中において風向きの制約を受けないメリットがある。従って、今後の技術開発により垂直軸風車の大型化が実現すれば、風力発電機の低コスト化につながることが期待できる。(非特許文献1参照)
しかしながら垂直軸風車は、水平の円周上に設置された複数のブレードの中央を、支柱によって支持しながら水平方向に回転させる為、スラスト荷重とラジアル荷重を同時に保持する必要があり、発電効率を上げるためには、荷重を効率良く受けてスラスト軸受とラジアル軸受けの摩擦抵抗を出来る限り減らすことが要求される。大型化に際してはこの技術的課題を解決する必要があった。
更に風力発電機実用化のためには、台風等の強風時には風力エネルギーの発電機への伝達を遮断し、発電機を無負荷状態で維持しながらブレードや発電機の破損を防止する、無負荷遊転運転を実現する必要がある。基本的にブレードが固定ピッチである垂直軸型風車においても、この技術的課題を解決する必要があった。
【0004】
以上の背景に対し特許文献1では、ブレードを取り付けた風車体を、水平方向に回転可能な中心軸により支持し、中心軸の下方に風車体の自重を浮力によって支える浮体と、浮体を浮かせる為の浮力室を備える構成が提案されている。特許文献1の構成により、風車体が回転する際のスラスト方向(上下方向)摩擦力低減が図れると考えられるが、スラスト軸受けの他に浮力室と浮体が必要があり、構造が複雑化すると思われる。
【0005】
また特許文献2では、変化する自然の風速に対して一定の電気出力を得ることを目的として、風車体の回転数増加とともにブレードの開き角度が自動的に変化し、台風等の強風時には上下方向のブレードが水平になることによって回転数の増加を押え、ブレードや発電機の損傷を防止する構成が提案されている。しかしながら特許文献2の構成では、同心円上に設置されたブレードが水平方向に回転する際、ブレードが風上側の位置の時とブレードが風下側の位置の時では、ブレードが開く角度が異なると考えられるので、安定した回転を得るのが難しくなると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-167479「垂直軸風力発電装置」
【特許文献2】特開2014-219012「浮力構造システムと浮体式洋上風力発電システム」
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「トコトンやさしい風力発電の本」B&Tブックス 日刊工業新聞社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする1つ目の課題は、垂直軸風力発電機において、台風等の暴風時時にブレードの向かい角を固定せずフリーにして風になびかせる(以降パッシブフェザリングと記す)機構により、風車体の過回転を防いでブレードや発電機の損傷リスクを減らすことが可能な、垂直軸風力発電機の構成を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとする2つ目の課題は、強風時に複数のブレードのうち幾つかを(0008)項で述べたパッシブフェザリングにより風になびかせることにより、強風下の条件においても発電機出力を制限値以下に維持するための機構を備えた垂直軸風力発電機の構成を提供することである。
【0010】
本発明が解決しようとする3つ目の課題は、垂直軸風力発電機において、風車体の自重による下向きの荷重や、風車体に作用する風圧による水平方向の荷重を効率良く保持することにより、軸受けの摩擦抵抗が少い構成とし、風力のエネルギーを効率良く回転エネルギーに変換可能な、垂直軸風力発電機の構成を提供することである。
【0011】
本発明が解決しようとする4つ目の課題は、点検・補修時等発電機停止時に、ブレードに風が当たっても風車体が回転せず、作業者が安全に作業を行うことが出来る、垂直軸風力発電機の構成を提供することである。
【0012】
本発明が解決しようとする5つ目の課題は、点検・補修時等に風力発電機の主要部品であるブレードや軸受け、発電機、増速機等に作業員が安全にアクセス可能な垂直軸風力発電機の構成を提供することである。
【0013】
本発明が解決しようとする6つ目の課題は、(0008)項(0009)項で述べた本発明による構成の風力発電機を運転するための、装置の組合せと制御ロジックの実施例を提案することである。
【0014】
本発明が解決しようとする7つ目の課題は、今後増加が予想される風力発電機の洋上設置に対応し、洋上に設置して運用が可能な、垂直軸風力発電機の構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(0008)~(0014)の課題を解決するために、本発明による垂直軸風力発電機は、以下の通り構成される。
本発明が対象とする風力発電機は、垂直方向の支柱を中心とした水平の円周上に上下に延びる複数のブレードが設置され、当該ブレードが風を受けて水平方向の回転力を得て、その回転力を発電機駆動軸に伝えて発電する、一般に垂直軸風力発電機と呼ばれている。
この型式の風力発電機は、(0003)項で述べた通り運転時風向きの制約を受けないメリットがある反面、実用化を目指すためには(0008)~(0014)の技術的課題を解決する必要があった。
【0016】
先ず(0008)で述べた1つ目の課題を解決するために、本発明による垂直軸風力発電機は、以下の通り構成される。
垂直方向の支柱を中心として、水平面上で円形または多角形に構成されて水平に回転可能なラウンドフレームに対し、水平方向に等ピッチにて複数のブレード軸受けを取り付ける。
当該ブレード軸受けには中心軸が上下方向の回転可能なブレード軸が取り付けられ、各ブレード軸の上端と下端に対し上下方向に延びるブレードを取り付ける。さらに各ブレード軸に対して、ブレード軸の回転を止めたり回転を拘束せず解放にしたりするブレード角度保持装置と、ブレード角度計を取り付けた構成とする。
以上述べた、ラウンドフレームとブレード軸受け、ブレード軸、ブレード、ブレード角度保持装置、ブレード角度計を取り付けて一体化したものを、以降風車体と記す。
【0017】
一定風速以上の風が風車体に当たる時に、前記ラウンドフレームに対する各ブレードの角度を、ブレード角度計とブレード角度保持装置を用いて、予め設定した発電に有効な角度に保持する。この操作により風を受けたブレードには力が生じ、複数のブレードに作用する力の合力によりラウンドフィレームは水平方向に回転する。また台風等の暴風時や定期点検時等、ラウンドフレームの回転を止めて発電機の運転を停止する必要がある時には、ブレードのブレード角度保持装置を全て解放する。ブレード角度保持装置の解放によりブレードが風になびくパッシブフェザリング状態となり、ブレードには力が生じないのでラウンドフレームの回転は止まる。
【0018】
(0009)項で述べた本発明の2つ目の課題である、ブレードを風になびかせるパッシブフェザリングを実現するために、ブレード軸をブレード断面の図芯の位置よりも風上側に取り付ける。この手段によりブレード軸を解放した時には、ブレード軸よりも風下側に当たる風の風圧が大きくなるため、パッシブフェザリングが容易となる効果が期待できる。
さらに風速が速い環境条件下では、複数のブレードの中の一部を発電に有効な角度に保持し、残りのブレードを解放することによりラウンドフレームの回転力を調整できるので、発電量を抑制して電力系統のニーズに合わせた部分負荷運転も可能となる。
【0019】
(0010)項で述べた本発明の3つ目の課題である、風車体の下向きの自重や運転中にブレードに作用する水平方向の風圧等、風車体への荷重を効率良く保持し、軸受の摩擦抵抗を減らすことにより発電効率を向上させると同時に、軸受の損傷リスクを低減可能な具体的構成の1実施例を以下に述べる。
風車体の構成部品であるラウンドフレームの回転力を発電機に伝えるために、地上或いは洋上の基礎台上に設置したタワー上端部に台座を取り付け、この台座に対して上方に伸びる支柱を設置する。支柱の先端部に対し、支柱に嵌合し水平方向に回転する駆動ジャケットを取り付け、駆動ジャケットの外周部とラウンドフレームを、複数のラウンドバーで接続する。ラウンドフレーム、ブレード、ラウンドバーを合わせた下向きの荷重(スラスト荷重)と、風によってブレードに作用する水平方向の荷重(ラジアル荷重)を支えるために、前記支柱の上端部にスラスト軸受けとラジアル軸受けを設置する。前記スラスト軸受けとラジアル軸受けは前記駆動ジャケットに内蔵されることにより、摩擦抵抗が少ない状態で回転が可能となる。
【0020】
さらに前記駆動ジャケットの中央部に対し、前記支柱の内側の空洞部を通して下向きに延びる主軸を取り付け、主軸の下方にラジアル軸受けを設置する。このラジアル軸受けは、前記台座の下側に保持された構成とする。ラウンドフレームのブレードが風に煽られて駆動ジャケットに捩じれによるモーメント荷重が生じた場合でも、主軸の上端部と下部に取り付けられた2つのラジアル軸受けにより無理なくモーメント荷重を受け止めるので、軸受への負担が少ない構成であり、損傷リスクを低減可能である。
ラウンドフレームの回転力を発電機の電気出力として利用するために、前記主軸の下端部にカップリングを取り付け、増速機等を介して発電機駆動軸に連結された構成とする。
【0021】
本発明の3つ目の課題である、風車体に作用する荷重を効率良く保持するもう一つの手段として、地上或いは洋上に設置したタワー上端部の台座上に上向きの支柱を取り付け、支柱の先端部にピボット軸受け装置を取り付ける。さらに前記支柱の台座に近い位置に、スラスト軸受けとラジアル軸受けを内蔵して支柱と嵌合し水平方向に回転可能な、下部軸受け装置を設置する。
ブレードを取り付けるラウンドフレームは、前記ピボット軸受け装置の外周部に繋がれた複数の吊りワイヤー又は吊りバ―によって吊り下げられ、同時に前記軸受け装置とも複数の吊りワイヤー又は吊りバーによって繋がれた構成とする。
この構成により、ラウンドフレーム、ブレードを含む風車体の自重が保持されるとともに、運転中に風車体が風に煽られた時にも、支柱上端部に取り付けたピボット軸受け装置と、下側に取り付けた軸受け装置によって、風車体は一定の位置に保持され安定した回転が継続される。
【0022】
ラウンドフレームの回転力を発電機駆動軸に伝えるための手段は、前記ラウンドフレームと同等の高さに、支柱と嵌合し水平方向に回転可能な駆動ジャケットを取り付け、この駆動ジャケットの外面に複数のラウンドバーを取り付けて、ラウンドバーの先端部と、前記ラウンドフレームを複数の駆動ワイヤーで結ぶ。駆動ワイヤーとラウンドバーによりラウンドフレームの回転力が駆動ジャケットに伝わる。
駆動ジャケットに生じる回転力は、駆動ジャケット外周部に取り付けたギアとピ二オンギア、さらに増速機等を介して、支柱等に保持された発電機の駆動軸に伝えられて発電が行われる。
【0023】
本発明の4つ目の課題である、建設時や、点検・補修時等に風車体に風が当たる環境下でも風車体が回転しない手段として、(0019)項~(0022)項で述べた発電機の駆動軸に対し、ブレーキ装置を取り付ける。点検・補修等の風力発電機停止時には、(0016)項~(0017)項で述べたブレード角度保持装置を解放しブレードをパッシブフェザリング状態とした上で、前記ブレーキ装置を用いて発電機駆動軸の回転を止めて固定することで風車体が回転せず、作業員は安全に作業を実施可能となる。
【0024】
本発明の5つ目の課題である、点検・補修時に作業の対象となるブレードやブレード軸受け、発電機、増速機等への作業員のアクセス性については、それらの部品に対して作業員が歩行可能なタラップ等を取り付けることによりアクセスが可能となる。
【0025】
本発明の6つ目の課題である、本発明による垂直軸風力発電機の運転の制御については、風力発電機運転時の環境条件である風向き、風速、および電力系統の運用状況データと、風力発電機の回転数、発電出力、ブレード角度等のデータを制御盤にインプットし、それらのデータを組み合わせて制御盤からブレード角度保持装置、および発電機駆動軸のブレーキ装置を制御する指令信号を発信することにより、実施可能である。
【0026】
本発明の6つ目の課題である、本発明による垂直軸風力発電機の洋上風力発電機としての運用については、海底面の基礎に設置し海面上に突き出したタワー先端の台座上に支柱を設置する、あるいは海底に設置したアンカーに繋がれた海面上の浮体に対し、上方に向かって設置したタワー先端の台座上に支柱を取り付ける、この支柱に対して(0016)項~(0025)項で述べた垂直軸風力発電機を設置することにより実現可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ブレードのパッシブフェザリングにより環境条件に対応した出力調整が可能となり、垂直軸風力発電機の稼働率、および発電効率の向上が可能となる。また、パッシブフェザリングにより台風等暴風時ブレードを風になびかせることでブレード等の損傷リスクが低減し、信頼性向上が期待できる。
【0028】
本発明によれば、ブレードを取り付けたラウンドフレームの自重による下向きの荷重や、風による水平方向の荷重を、支柱に取り付けたスラスト軸受けとラジアル軸受けによって効率良く受けることにより、軸受に生じる摩擦抵抗が少なく、高効率な発電が可能な垂直軸風力発電機を実現可能である。
【0029】
本発明によれば点検・補修等の発電機の運転停止時に、風車体の回転を止めて保持することにより、作業員が安全に作業を行うことが出来る垂直軸風力発電機を実現可能である。
【0030】
本発明によれば、構成部品に対して歩行用のタラップを取り付けることにより、作業員が安全に作業を行うことが出来る垂直軸風力発電機を実現可能である。
【0031】
本発明によれば制御盤を設置して、運転に必要なデータ環境条件等のデータを基にブレード角度保持装置や発電機駆動軸のブレーキ装置に指令を発信して制御することにより、本発明による風力発電機を有効に活用した運転が可能であり、発電効率向上が期待できる。
【0032】
本発明の垂直軸風力発電機は、今後増加が予想される洋上風力発電に対しても適用可能であり、従来のヨー制御が必要な水平軸風力発電機と比較して、建設時、運用時のコスト低減効果が期待できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は本発明の実施例1による垂直軸風力発電機の鳥瞰図および部分拡大図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例2による、各風速条件によるブレード角度設定を示す図である。
【
図3】
図3は本発明の実施例3による垂直軸風力発電機の鳥瞰図である。
【
図4】
図4は本発明の実施例3による垂直軸風力発電機の断面図である。
【
図5】
図5は本発明の実施例4による垂直軸風力発電機の鳥瞰図および部分拡大図である。
【
図6】
図6は本発明の実施例4による垂直軸風力発電機の部分断面図である。
【
図7】
図7は本発明の実施例4によるピボット軸受け装置の1実施例を表す断面図である。
【
図8】
図8は本発明の実施例4によるピボット軸受け装置の2つ目の実施例を表す断面図である。
【
図9】
図9は本発明の実施例3に対して実施例5を適用した鳥瞰図および部分断面図である。
【
図10】
図10は本発明の実施例4に対して実施例5を適用した鳥瞰図および部分断面図である
【
図11】
図11は本発明の実施例3および実施例4に対して実施例6を適用した鳥瞰図である。
【
図12】
図12は本発明に係る垂直軸風力発電機の制御対象の構成図である。
【
図13】
図13は本発明に係る垂直軸風力発電機の制御を表すブロック図である。
【
図14】
図14は本発明に係る垂直軸風力発電機の制御ロジックのフローを表す図である。
【
図15】
図15は本発明に係る垂直軸風力発電機を洋上に設置した例を示す鳥瞰図である。
【
図16】
図16は本発明に係る垂直軸風力発電機の設置手順の出港時を示す図である。
【
図17】
図17は本発明に係る垂直軸風力発電機の設置手順の洋上でのアンカー敷設時を示す図である。
【
図18】
図18は本発明本に係る垂直軸風力発電機の設置手順の洋上でのタワー延長時を示す図である。
【
図19】
図19は本発明本に係る垂直軸風力発電機の設置手順の洋上での設置完了時を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
今まで述べた特徴を有する垂直軸風力発電機の実施例について、図面を参照しその内容を以下に説明する。
【実施例0035】
図1は実施例1の垂直軸風力発電機全体を表す図であり、(
図1-1)は鳥瞰図、(
図1-2)はブレードとブレード取付け部の詳細図を示す。
実施例1の垂直軸風力発電機は、基礎台1上に設置したタワー2の上端部に台座3を取り付け、台座3上に垂直方向の支柱4を設置する。支柱4の先端部に対し支柱4と嵌合し水平方向に回転可能な駆動ジャケット5を取り付け、駆動ジャケット5の上方にハンガーヘッド6を設けて、ハンガーヘッド6の外周部と、水平方向に円形または多角形に構成されたラウンドフレーム7を複数の吊りワイヤー又は吊りバ―8でつなぐことにより、ラウンドフレーム7が駆動ジャケット5と同等の高さに吊り下げた状態となる。
このラウンドフレーム7には、水平方向に同じピッチにて複数のブレード軸受け9が取り付けられており、ブレード軸受け9は中心軸が垂直方向のブレード軸10を回転可能な状態で保持する。さらにブレード軸10の上側と下側に対し、上下方向に延びるブレード11を取り付ける。以上の構成により、ブレード11はブレード軸受け10によって、水平方向に回転可能な状態で保持される。(
図1-2参照)
【0036】
各ブレード軸10に対してブレード軸10と一体化したディスク12を取り付け、各ブレード軸受け9に対してディスク12を挟んでブレード軸の回転を止める作用をする、ブレード角度保持装置13が設置される。このブレード角度保持装置13は、ラウンドフレーム7に対するブレード11の角度を固定したり、ディスクを解放してブレード軸の回転を可能とする機能を有している。
同時に各ブレード軸10と一体化したギア14と、ブレードの角度を検出するためのブレード角度計15を取り付ける。
以上の構成により、風速等の環境条件に応じてブレード角度保持装置を制御しブレードを発電に適した角度に保持したり、あるいは解放してブレードを風になびかせる、パッシブフェザリングを行うことが可能となる。
【0037】
ブレード角度保持装置13によりブレードの角度を発電に適した角度に保持すると、ブレード11に風が当たることにより、ラウンドフレーム7に回転力が生じる。この回転力から発電出力を得るための構成を、以下に記す。
駆動ジャケット5の外周部に対して放射状に複数のラウンドバー16を取り付け、ラウンドバー16の先端部をラウンドフレーム7に接続する。同時に駆動ジャケット5の中央部下側に対し、支柱4内側の空洞部分を通して下方に延びる主軸17を取り付け、主軸17は台座3の開口部を通り抜けて台座3の下方に設置した発電機18の駆動軸と連結することにより、発電機が回転し発電出力が得られる。