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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119009
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】垂直軸風力発電機
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/06 20060101AFI20240826BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20240826BHJP
   F03D 9/25 20160101ALI20240826BHJP
【FI】
F03D3/06 G
F03D13/25
F03D9/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023118928
(22)【出願日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】713011201
【氏名又は名称】織田 繁夫
(72)【発明者】
【氏名】織田 繁夫
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA16
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB31
3H178BB41
3H178BB73
3H178BB79
3H178CC05
3H178DD04X
3H178DD12X
3H178DD31X
3H178DD61Z
(57)【要約】      (修正有)
【課題】垂直軸風力発電機のヨー制御が不要となるメリットを活かし同時に大型化を実現するため、実用の発電機として必要な機能を具備した構成を提案する。
【解決手段】タワー3の先端部に設置した支柱4を中心として回転するラウンドフレーム7に対し、水平方向に一定の間隔で水平方向に回転可能な状態にて上下方向に延びるブレード11を取り付け、かつブレード11の水平方向の角度をブレード角度保持装置13により適宜保持、あるいは解放可能とする。発電を行う際はブレード11に風が当たって生じるラウンドフレーム7の回転力を駆動ジャケット5に伝え、駆動ジャケットに取り付けた主軸17の下端を発電機18の駆動軸と連結することで発電機18を回転させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向の支柱を中心として、上下方向に形成された複数のブレードが取り付けられたフレームが水平方向に回転可能な状態で前記支柱に保持され、前記ブレードに風が当たることによって生じる前記フレームの回転力を発電機に伝えて発電する垂直軸風力発電機において、上方から見て円形または多角形のラウンドフレームは、上下方向の支柱を中心として水平方向に回転可能な状態で保持されており、当該ラウンドフレームには水平方向に同じ角度間隔にて複数のブレード軸受けが設置され、前記ブレード軸受けには中心軸が上下方向の回転可能なブレード軸が取り付けられて、前記ブレード軸の上側と下側に上下方向に延びるブレードを取付けることにより、当該ブレードは前記ブレード軸と一体となり回転可能な状態で前記ブレード軸受けに保持された構成となり、かつ前記ブレード軸には当該ブレード軸の水平方向の回転を停止、あるいは解放する機能を有するブレード角度保持装置と、前記ブレードの角度を検出するブレード角度計が取り付けられているものとし、さらに前記支柱に嵌合し水平方向に回転可能な駆動ジャケットを取り付け、当該駆動ジャケットの外周部から水平方向に張り出した複数のラウンドバーによって、前記駆動ジャケットと前記ラウンドフレームが連結されてラウンドフレームの回転力が前記駆動ジャケットに伝えられ、更に当該駆動ジャケットの回転力が発電機の駆動軸に伝えられて前記発電機が回転し発電することを特徴とする、垂直軸風力発電機。
【請求項2】
請求項1に記載のブレード軸を、請求項1に記載のブレードの水平断面における図芯位置よりも当該ブレードの先端側に取り付けることにより、請求項1に記載のブレード角度保持装置を開放した時には、前記ブレードの先端が風上側に向かうことを特徴とする、請求項1に記載の垂直軸風力発電機。
【請求項3】
請求項1に記載の支柱は地上或いは洋上の基礎に設置したタワー上端部の台座上に固定されており、請求項1に記載の駆動ジャケットは前記支柱の上部に設置されたスラスト軸受けと、前記支柱の上部に設置されたラジアル軸受けによって保持されて前記支柱と嵌合し水平方向に回転可能な構成であり、さらに請求項1に記載のラウンドフレームは前記駆動ジャケットの上方に設置したハンガーヘッドと複数の吊りワイヤーまたは吊りバ―につながれた形態で水平方向に回転可能な状態で前記駆動ジャケットと同等の高さに吊り下げられており、同時に駆動ジャケットの外周部と前記ラウンドフレームを、請求項1に記載のラウンドバーでつなぐことにより前記ラウンドフレームの回転力が駆動ジャケットに伝わって回転力が生じ、当該駆動ジャケットの中心に対して駆動ジャケットと一体化された主軸を取り付け、当該主軸は前記支柱の内側の空間を通して下方に伸びる構成であり、かつ前記主軸は前記台座の開口部を通り抜けて当該台座の下方に突き出た形態とし、さらに前記主軸の下部は前記台座に保持されたラジアル軸受けで支持された構成とし、当該主軸に対して直接請求項1に記載の発電機の駆動軸を接続した構成、若しくは前記主軸に対して回転数を増加させる増速機を接続し当該増速機の出力軸に対して請求項1に記載の発電機の駆動軸を接続した構成とすることを特徴とする、請求項1に記載の垂直軸風力発電機。
【請求項4】
請求項1に記載の支柱は地上或いは洋上の基礎に設置したタワー上端部の台座上に固定されており、当該支柱の上端部に対して下向きの荷重と水平方向の荷重を保持し得るピボット軸受け装置を設置し、当該ピボット軸受け装置の外周部に取り付けられた複数の吊りワイヤーまたは吊りバ―によって、請求項1に記載のラウンドフレームが水平方向に回転可能な状態で吊り下げられた構成とし、前記支柱に嵌合し水平方向に回転可能な状態で、請求項1に記載の駆動ジャケットを前記ラウンドフレームと同等の高さに取り付けて、当該駆動ジャケットの外面に取り付けた請求項1に記載のラウンドバーの先端部と、前記ラウンドフレームを複数の駆動ロープによってつなぐことにより、前記ラウンドフレームの回転力が前記駆動ジャケットに伝わって当該駆動ジャケットに回転力が生じ、さらに前記駆動ジャケットの外周部にギアを取り付け、かつ前記ギアと噛み合うピニオンギア、および当該ピニオンギアの回転軸に対して直接請求項1に記載の発電機の駆動軸を接続した構成、あるいは前記ピニオンギアの回転軸に対して回転数を増加させる増速機を接続し、当該増速機の出力軸に対して請求項1に記載の発電機の駆動軸を接続した構成とすることを特徴とする、請求項1に記載の垂直軸風力発電機。
【請求項5】
請求項4に記載のピ二オンギアの回転軸、あるいは請求項3または請求項4のいずれかに記載の発電機の駆動軸に対してブレーキ装置を取り付けて、前記発電機が無負荷状態の時に前記ピニオンギアおよび前記発電機の駆動軸の回転を停止させることにより、請求項3に記載の主軸の回転が停止し、さらに請求項3または請求項4のいずれかに記載の駆動ジャケットの回転が停止して、当該駆動ジャケットにつなげられた請求項3または請求項4のいずれかに記載のラウンドフレームの回転が停止することを特徴とする、請求項3または請求項4のいずれかに記載の垂直軸風力発電機。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載の支柱、および請求項1~請求項5のいずれかに記載の駆動ジャケット、請求項1~請求項5のいずれかに記載のラウンドバー、請求項4に記載の駆動ロープ、および請求項1~請求項5のいずれかに記載のラウンドフレームに対して作業員が歩行可能なタラップを取り付けたことを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれかに記載の垂直軸風力発電機。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれかに記載の垂直軸風力発電機は、請求項1~請求項6のいずれかに記載のブレード角度保持装置、および請求項5に記載のブレーキ装置を制御する制御盤を備え、当該制御盤は前記垂直軸風力発電機の近傍に設置した風速計によって測定した風速の信号と、請求項1~請求項6のいずれかに記載のブレード角度計のブレード角度の信号と、請求項1~請求項6のいずれかに記載の駆動ジャケットに対して取り付けた回転数計の信号と、請求項1~請求項6のいずれかに記載の発電機の発電出力の信号と、電力系統の運用状態の信号等の運転に必要な信号を受信し、それらの信号を用いて前記ブレード角度保持装置および、前記ブレーキ装置を制御することを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれかに記載の垂直軸風力発電機。
【請求項8】
上下方向の支柱を中心として、上下方向に形成された複数のブレードが取り付けられたフレームが水平方向に回転可能な状態で前記支柱に保持され、前記ブレードに風が当たることによって生じる前記フレームの回転力を発電機に伝えて発電する垂直軸風力発電機において、上方から見て円形または多角形のラウンドフレームは、上下方向の支柱を中心として水平方向に回転可能な状態で保持されており、当該ラウンドフレームには水平方向に同じ角度間隔にて複数のブレード軸受けが設置され、前記ブレード軸受けには中心軸が上下方向の回転可能なブレード軸が取り付けられて、前記ブレード軸の上側と下側に上下方向に延びるブレードを取付けることにより、当該ブレードは前記ブレード軸と一体となり回転可能な状態で前記ブレード軸受けに保持された構成となり、かつ前記ブレード軸には当該ブレード軸の水平方向の回転を停止、あるいは解放する機能を有するブレード角度保持装置と、前記ブレードの角度を検出するブレード角度計が取り付けられているものとし、さらに前記支柱に嵌合し水平方向に回転可能な駆動ジャケットを取り付け、当該駆動ジャケットの外周部から水平方向に張り出した複数のラウンドバーによって、前記駆動ジャケットと前記ラウンドフレームが連結されてラウンドフレームの回転力が前記駆動ジャケットに伝えられ、更に当該駆動ジャケットの回転力が発電機の駆動軸に伝えられて前記発電機が回転し発電する垂直軸風力発電機であって、当該垂直軸風力発電機の前記支柱は海底面に設置され海面上に突き出たタワー上に設置されるか、或いは海底面に敷設されたアンカーと係留索により繋がれて海面上の一定の位置に浮かんで係留された浮体基礎上に設置されたタワー上に設置されることを特徴とする、垂直軸風力発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を発電するために適した垂直軸風力発電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の再生可能エネルギー利用増加の機運に伴い、今後陸上や洋上での風力発電機の建設が増えることが予想される。
現在の風力発電機本体は、地上設置、洋上設置を含めてプロペラ式水平軸風車が広く普及している。これは航空機の分野で発展したプロペラや翼の翼形を応用し、風によって翼に作用する揚力を有効に使う風車のブレードが実用化されたことや、風速に応じてブレードの角度を変化させるピッチ制御、風車体の受風面を風に向かわせるヨー制御技術等、現在までの技術開発の成果が背景となっている。しかしながらそれらを実現し製品に適用するためにはブレード製作には特殊技術が必要であり、同時にヨー制御、ピッチ制御に必要となる強力な駆動装置や信頼性の高いギア、ベアリング等、付加価値の高い部品も必要となる。これらの部品は今後の洋上風力発電における大型化に対してはコスト低減を阻害する要因となると思われる。
【0003】
上記に対し上下方向の支柱を中心として水平面の円周上に設置された、上下に延びる複数のブレードが、風を受けて生じる回転力によって発電を行う垂直軸風車は、運転中において風向きの制約を受けないメリットがある。従って、今後の技術開発により垂直軸風車の大型化が実現すれば、風力発電機の低コスト化につながることが期待できる。(非特許文献1参照)
しかしながら垂直軸風車は、水平の円周上に設置された複数のブレードの中央を、支柱によって支持しながら水平方向に回転させる為、スラスト荷重とラジアル荷重を同時に保持する必要があり、発電効率を上げるためには、荷重を効率良く受けてスラスト軸受とラジアル軸受けの摩擦抵抗を出来る限り減らすことが要求される。大型化に際してはこの技術的課題を解決する必要があった。
更に風力発電機実用化のためには、台風等の強風時には風力エネルギーの発電機への伝達を遮断し、発電機を無負荷状態で維持しながらブレードや発電機の破損を防止する、無負荷遊転運転を実現する必要がある。基本的にブレードが固定ピッチである垂直軸型風車においても、この技術的課題を解決する必要があった。
【0004】
以上の背景に対し特許文献1では、ブレードを取り付けた風車体を、水平方向に回転可能な中心軸により支持し、中心軸の下方に風車体の自重を浮力によって支える浮体と、浮体を浮かせる為の浮力室を備える構成が提案されている。特許文献1の構成により、風車体が回転する際のスラスト方向(上下方向)摩擦力低減が図れると考えられるが、スラスト軸受けの他に浮力室と浮体が必要があり、構造が複雑化すると思われる。

【0005】
また特許文献2では、変化する自然の風速に対して一定の電気出力を得ることを目的として、風車体の回転数増加とともにブレードの開き角度が自動的に変化し、台風等の強風時には上下方向のブレードが水平になることによって回転数の増加を押え、ブレードや発電機の損傷を防止する構成が提案されている。しかしながら特許文献2の構成では、同心円上に設置されたブレードが水平方向に回転する際、ブレードが風上側の位置の時とブレードが風下側の位置の時では、ブレードが開く角度が異なると考えられるので、安定した回転を得るのが難しくなると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-167479「垂直軸風力発電装置」
【特許文献2】特開2014-219012「浮力構造システムと浮体式洋上風力発電システム」
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「トコトンやさしい風力発電の本」B&Tブックス 日刊工業新聞社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする1つ目の課題は、垂直軸風力発電機において、台風等の暴風時時にブレードの向かい角を固定せずフリーにして風になびかせる(以降パッシブフェザリングと記す)機構により、風車体の過回転を防いでブレードや発電機の損傷リスクを減らすことが可能な、垂直軸風力発電機の構成を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとする2つ目の課題は、強風時に複数のブレードのうち幾つかを(0008)項で述べたパッシブフェザリングにより風になびかせることにより、強風下の条件においても発電機出力を制限値以下に維持するための機構を備えた垂直軸風力発電機の構成を提供することである。
【0010】
本発明が解決しようとする3つ目の課題は、垂直軸風力発電機において、風車体の自重による下向きの荷重や、風車体に作用する風圧による水平方向の荷重を効率良く保持することにより、軸受けの摩擦抵抗が少い構成とし、風力のエネルギーを効率良く回転エネルギーに変換可能な、垂直軸風力発電機の構成を提供することである。
【0011】
本発明が解決しようとする4つ目の課題は、点検・補修時等発電機停止時に、ブレードに風が当たっても風車体が回転せず、作業者が安全に作業を行うことが出来る、垂直軸風力発電機の構成を提供することである。
【0012】
本発明が解決しようとする5つ目の課題は、点検・補修時等に風力発電機の主要部品であるブレードや軸受け、発電機、増速機等に作業員が安全にアクセス可能な垂直軸風力発電機の構成を提供することである。
【0013】
本発明が解決しようとする6つ目の課題は、(0008)項(0009)項で述べた本発明による構成の風力発電機を運転するための、装置の組合せと制御ロジックの実施例を提案することである。
【0014】
本発明が解決しようとする7つ目の課題は、今後増加が予想される風力発電機の洋上設置に対応し、洋上に設置して運用が可能な、垂直軸風力発電機の構成を提供することである。

【課題を解決するための手段】
【0015】
(0008)~(0014)の課題を解決するために、本発明による垂直軸風力発電機は、以下の通り構成される。
本発明が対象とする風力発電機は、垂直方向の支柱を中心とした水平の円周上に上下に延びる複数のブレードが設置され、当該ブレードが風を受けて水平方向の回転力を得て、その回転力を発電機駆動軸に伝えて発電する、一般に垂直軸風力発電機と呼ばれている。
この型式の風力発電機は、(0003)項で述べた通り運転時風向きの制約を受けないメリットがある反面、実用化を目指すためには(0008)~(0014)の技術的課題を解決する必要があった。
【0016】
先ず(0008)で述べた1つ目の課題を解決するために、本発明による垂直軸風力発電機は、以下の通り構成される。
垂直方向の支柱を中心として、水平面上で円形または多角形に構成されて水平に回転可能なラウンドフレームに対し、水平方向に等ピッチにて複数のブレード軸受けを取り付ける。
当該ブレード軸受けには中心軸が上下方向の回転可能なブレード軸が取り付けられ、各ブレード軸の上端と下端に対し上下方向に延びるブレードを取り付ける。さらに各ブレード軸に対して、ブレード軸の回転を止めたり回転を拘束せず解放にしたりするブレード角度保持装置と、ブレード角度計を取り付けた構成とする。
以上述べた、ラウンドフレームとブレード軸受け、ブレード軸、ブレード、ブレード角度保持装置、ブレード角度計を取り付けて一体化したものを、以降風車体と記す。
【0017】
一定風速以上の風が風車体に当たる時に、前記ラウンドフレームに対する各ブレードの角度を、ブレード角度計とブレード角度保持装置を用いて、予め設定した発電に有効な角度に保持する。この操作により風を受けたブレードには力が生じ、複数のブレードに作用する力の合力によりラウンドフィレームは水平方向に回転する。また台風等の暴風時や定期点検時等、ラウンドフレームの回転を止めて発電機の運転を停止する必要がある時には、ブレードのブレード角度保持装置を全て解放する。ブレード角度保持装置の解放によりブレードが風になびくパッシブフェザリング状態となり、ブレードには力が生じないのでラウンドフレームの回転は止まる。
【0018】
(0009)項で述べた本発明の2つ目の課題である、ブレードを風になびかせるパッシブフェザリングを実現するために、ブレード軸をブレード断面の図芯の位置よりも風上側に取り付ける。この手段によりブレード軸を解放した時には、ブレード軸よりも風下側に当たる風の風圧が大きくなるため、パッシブフェザリングが容易となる効果が期待できる。
さらに風速が速い環境条件下では、複数のブレードの中の一部を発電に有効な角度に保持し、残りのブレードを解放することによりラウンドフレームの回転力を調整できるので、発電量を抑制して電力系統のニーズに合わせた部分負荷運転も可能となる。
【0019】
(0010)項で述べた本発明の3つ目の課題である、風車体の下向きの自重や運転中にブレードに作用する水平方向の風圧等、風車体への荷重を効率良く保持し、軸受の摩擦抵抗を減らすことにより発電効率を向上させると同時に、軸受の損傷リスクを低減可能な具体的構成の1実施例を以下に述べる。
風車体の構成部品であるラウンドフレームの回転力を発電機に伝えるために、地上或いは洋上の基礎台上に設置したタワー上端部に台座を取り付け、この台座に対して上方に伸びる支柱を設置する。支柱の先端部に対し、支柱に嵌合し水平方向に回転する駆動ジャケットを取り付け、駆動ジャケットの外周部とラウンドフレームを、複数のラウンドバーで接続する。ラウンドフレーム、ブレード、ラウンドバーを合わせた下向きの荷重(スラスト荷重)と、風によってブレードに作用する水平方向の荷重(ラジアル荷重)を支えるために、前記支柱の上端部にスラスト軸受けとラジアル軸受けを設置する。前記スラスト軸受けとラジアル軸受けは前記駆動ジャケットに内蔵されることにより、摩擦抵抗が少ない状態で回転が可能となる。
【0020】
さらに前記駆動ジャケットの中央部に対し、前記支柱の内側の空洞部を通して下向きに延びる主軸を取り付け、主軸の下方にラジアル軸受けを設置する。このラジアル軸受けは、前記台座の下側に保持された構成とする。ラウンドフレームのブレードが風に煽られて駆動ジャケットに捩じれによるモーメント荷重が生じた場合でも、主軸の上端部と下部に取り付けられた2つのラジアル軸受けにより無理なくモーメント荷重を受け止めるので、軸受への負担が少ない構成であり、損傷リスクを低減可能である。
ラウンドフレームの回転力を発電機の電気出力として利用するために、前記主軸の下端部にカップリングを取り付け、増速機等を介して発電機駆動軸に連結された構成とする。
【0021】
本発明の3つ目の課題である、風車体に作用する荷重を効率良く保持するもう一つの手段として、地上或いは洋上に設置したタワー上端部の台座上に上向きの支柱を取り付け、支柱の先端部にピボット軸受け装置を取り付ける。さらに前記支柱の台座に近い位置に、スラスト軸受けとラジアル軸受けを内蔵して支柱と嵌合し水平方向に回転可能な、下部軸受け装置を設置する。
ブレードを取り付けるラウンドフレームは、前記ピボット軸受け装置の外周部に繋がれた複数の吊りワイヤー又は吊りバ―によって吊り下げられ、同時に前記軸受け装置とも複数の吊りワイヤー又は吊りバーによって繋がれた構成とする。
この構成により、ラウンドフレーム、ブレードを含む風車体の自重が保持されるとともに、運転中に風車体が風に煽られた時にも、支柱上端部に取り付けたピボット軸受け装置と、下側に取り付けた軸受け装置によって、風車体は一定の位置に保持され安定した回転が継続される。
【0022】
ラウンドフレームの回転力を発電機駆動軸に伝えるための手段は、前記ラウンドフレームと同等の高さに、支柱と嵌合し水平方向に回転可能な駆動ジャケットを取り付け、この駆動ジャケットの外面に複数のラウンドバーを取り付けて、ラウンドバーの先端部と、前記ラウンドフレームを複数の駆動ワイヤーで結ぶ。駆動ワイヤーとラウンドバーによりラウンドフレームの回転力が駆動ジャケットに伝わる。
駆動ジャケットに生じる回転力は、駆動ジャケット外周部に取り付けたギアとピ二オンギア、さらに増速機等を介して、支柱等に保持された発電機の駆動軸に伝えられて発電が行われる。
【0023】
本発明の4つ目の課題である、建設時や、点検・補修時等に風車体に風が当たる環境下でも風車体が回転しない手段として、(0019)項~(0022)項で述べた発電機の駆動軸に対し、ブレーキ装置を取り付ける。点検・補修等の風力発電機停止時には、(0016)項~(0017)項で述べたブレード角度保持装置を解放しブレードをパッシブフェザリング状態とした上で、前記ブレーキ装置を用いて発電機駆動軸の回転を止めて固定することで風車体が回転せず、作業員は安全に作業を実施可能となる。
【0024】
本発明の5つ目の課題である、点検・補修時に作業の対象となるブレードやブレード軸受け、発電機、増速機等への作業員のアクセス性については、それらの部品に対して作業員が歩行可能なタラップ等を取り付けることによりアクセスが可能となる。
【0025】
本発明の6つ目の課題である、本発明による垂直軸風力発電機の運転の制御については、風力発電機運転時の環境条件である風向き、風速、および電力系統の運用状況データと、風力発電機の回転数、発電出力、ブレード角度等のデータを制御盤にインプットし、それらのデータを組み合わせて制御盤からブレード角度保持装置、および発電機駆動軸のブレーキ装置を制御する指令信号を発信することにより、実施可能である。
【0026】
本発明の6つ目の課題である、本発明による垂直軸風力発電機の洋上風力発電機としての運用については、海底面の基礎に設置し海面上に突き出したタワー先端の台座上に支柱を設置する、あるいは海底に設置したアンカーに繋がれた海面上の浮体に対し、上方に向かって設置したタワー先端の台座上に支柱を取り付ける、この支柱に対して(0016)項~(0025)項で述べた垂直軸風力発電機を設置することにより実現可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ブレードのパッシブフェザリングにより環境条件に対応した出力調整が可能となり、垂直軸風力発電機の稼働率、および発電効率の向上が可能となる。また、パッシブフェザリングにより台風等暴風時ブレードを風になびかせることでブレード等の損傷リスクが低減し、信頼性向上が期待できる。
【0028】
本発明によれば、ブレードを取り付けたラウンドフレームの自重による下向きの荷重や、風による水平方向の荷重を、支柱に取り付けたスラスト軸受けとラジアル軸受けによって効率良く受けることにより、軸受に生じる摩擦抵抗が少なく、高効率な発電が可能な垂直軸風力発電機を実現可能である。
【0029】
本発明によれば点検・補修等の発電機の運転停止時に、風車体の回転を止めて保持することにより、作業員が安全に作業を行うことが出来る垂直軸風力発電機を実現可能である。
【0030】
本発明によれば、構成部品に対して歩行用のタラップを取り付けることにより、作業員が安全に作業を行うことが出来る垂直軸風力発電機を実現可能である。
【0031】
本発明によれば制御盤を設置して、運転に必要なデータ環境条件等のデータを基にブレード角度保持装置や発電機駆動軸のブレーキ装置に指令を発信して制御することにより、本発明による風力発電機を有効に活用した運転が可能であり、発電効率向上が期待できる。
【0032】
本発明の垂直軸風力発電機は、今後増加が予想される洋上風力発電に対しても適用可能であり、従来のヨー制御が必要な水平軸風力発電機と比較して、建設時、運用時のコスト低減効果が期待できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は本発明の実施例1による垂直軸風力発電機の鳥瞰図および部分拡大図である。
図2図2は本発明の実施例2による、各風速条件によるブレード角度設定を示す図である。
図3図3は本発明の実施例3による垂直軸風力発電機の鳥瞰図である。
図4図4は本発明の実施例3による垂直軸風力発電機の断面図である。
図5図5は本発明の実施例4による垂直軸風力発電機の鳥瞰図および部分拡大図である。
図6図6は本発明の実施例4による垂直軸風力発電機の部分断面図である。
図7図7は本発明の実施例4によるピボット軸受け装置の1実施例を表す断面図である。
図8図8は本発明の実施例4によるピボット軸受け装置の2つ目の実施例を表す断面図である。
図9図9は本発明の実施例3に対して実施例5を適用した鳥瞰図および部分断面図である。
図10図10は本発明の実施例4に対して実施例5を適用した鳥瞰図および部分断面図である
図11図11は本発明の実施例3および実施例4に対して実施例6を適用した鳥瞰図である。
図12図12は本発明に係る垂直軸風力発電機の制御対象の構成図である。
図13図13は本発明に係る垂直軸風力発電機の制御を表すブロック図である。
図14図14は本発明に係る垂直軸風力発電機の制御ロジックのフローを表す図である。
図15図15は本発明に係る垂直軸風力発電機を洋上に設置した例を示す鳥瞰図である。
図16図16は本発明に係る垂直軸風力発電機の設置手順の出港時を示す図である。
図17図17は本発明に係る垂直軸風力発電機の設置手順の洋上でのアンカー敷設時を示す図である。
図18図18は本発明本に係る垂直軸風力発電機の設置手順の洋上でのタワー延長時を示す図である。
図19図19は本発明本に係る垂直軸風力発電機の設置手順の洋上での設置完了時を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
今まで述べた特徴を有する垂直軸風力発電機の実施例について、図面を参照しその内容を以下に説明する。
【実施例0035】
図1は実施例1の垂直軸風力発電機全体を表す図であり、(図1-1)は鳥瞰図、(図1-2)はブレードとブレード取付け部の詳細図を示す。
実施例1の垂直軸風力発電機は、基礎台1上に設置したタワー2の上端部に台座3を取り付け、台座3上に垂直方向の支柱4を設置する。支柱4の先端部に対し支柱4と嵌合し水平方向に回転可能な駆動ジャケット5を取り付け、駆動ジャケット5の上方にハンガーヘッド6を設けて、ハンガーヘッド6の外周部と、水平方向に円形または多角形に構成されたラウンドフレーム7を複数の吊りワイヤー又は吊りバ―8でつなぐことにより、ラウンドフレーム7が駆動ジャケット5と同等の高さに吊り下げた状態となる。
このラウンドフレーム7には、水平方向に同じピッチにて複数のブレード軸受け9が取り付けられており、ブレード軸受け9は中心軸が垂直方向のブレード軸10を回転可能な状態で保持する。さらにブレード軸10の上側と下側に対し、上下方向に延びるブレード11を取り付ける。以上の構成により、ブレード11はブレード軸受け10によって、水平方向に回転可能な状態で保持される。(図1-2参照)
【0036】
各ブレード軸10に対してブレード軸10と一体化したディスク12を取り付け、各ブレード軸受け9に対してディスク12を挟んでブレード軸の回転を止める作用をする、ブレード角度保持装置13が設置される。このブレード角度保持装置13は、ラウンドフレーム7に対するブレード11の角度を固定したり、ディスクを解放してブレード軸の回転を可能とする機能を有している。
同時に各ブレード軸10と一体化したギア14と、ブレードの角度を検出するためのブレード角度計15を取り付ける。
以上の構成により、風速等の環境条件に応じてブレード角度保持装置を制御しブレードを発電に適した角度に保持したり、あるいは解放してブレードを風になびかせる、パッシブフェザリングを行うことが可能となる。
【0037】
ブレード角度保持装置13によりブレードの角度を発電に適した角度に保持すると、ブレード11に風が当たることにより、ラウンドフレーム7に回転力が生じる。この回転力から発電出力を得るための構成を、以下に記す。
駆動ジャケット5の外周部に対して放射状に複数のラウンドバー16を取り付け、ラウンドバー16の先端部をラウンドフレーム7に接続する。同時に駆動ジャケット5の中央部下側に対し、支柱4内側の空洞部分を通して下方に延びる主軸17を取り付け、主軸17は台座3の開口部を通り抜けて台座3の下方に設置した発電機18の駆動軸と連結することにより、発電機が回転し発電出力が得られる。
【実施例0038】
図2は実施例2を表す説明図であり、実施例1による構成の垂直軸風力発電機において、発電時および発電停止時におけるブレード角度設定の概念を示している。
図2の矢印19は、風車に向かって吹く風の方向を表わす。
また図2に記載されているブレード断面20は、図1で示したブレード11に対してブレード角度保持装置13によって角度を固定した状態のブレード断面形状を黒色で示している。同時にブレード断面21は、ブレード角度保持装置13を解放することにより、ブレード11が風になびく状態のブレード断面形状を白色で示している。
また図2-1~図2-4は、6組のブレードを取り付けた風車体のブレードの断面を上方から見た図であり、風車体に対して風19が当たる際の、各風速条件に対するブレード断面20、21の角度設定の例と、ブレード軸10に作用する力の方向22、風車体の回転方向23を表している。
【0039】
図2-1は弱風時に発電を行う場合のブレード20の断面を表している。ブレード角度保持装置によって、6組のブレードを全て発電に有効な角度に保持する。ブレードが風を受け風車体に回転力が生じ、矢印23に示す方向に回転する。
図2-2は中風時に発電を行う場合のブレード20とブレード21の断面を表している。ブレード角度保持装置によって、6組のブレードのうち3組のブレード角度を固定し、それ以外の3組のブレードを解放し風になびかせた状態を表す。図2-2に示す手段により、風速が速い場合でも電力系統のニーズに合わせて発電出力を押えることが出来るので、風力発電機としての利用率向上が可能となる。
【0040】
なおブレード断面20、ブレード断面21に対して、ブレード軸10はブレードの図芯よりも上流側に取り付けるものとする。この構成によりブレード断面21に表す通り、ブレード角度保持装置を解放した際にはブレードは容易に風になびく効果(=パッシブフェザリング)が得られるため、図2-2で表す様なブレード角度の設定により部分負荷運転が可能となる。
【0041】
図2-3は強風時に発電を行う場合のブレード20とブレード21の断面を表している。ブレード角度保持装置によって、6組のブレードのうち2組のブレード角度を固定し、それ以外の4組のブレードを解放しパッシブフェザリングとした状態を表す。風速がより速い条件でも、図2-2に示す中風時と同様の運用が可能となり、利用率の向上が期待できる。
【0042】
図2-4は台風等の爆風時のブレード21の断面を表している。暴風時には、発電を停止しブレードの損傷リスクを低減するために、全てのブレードを解放してパッシブフェザリングとする。この手段により風車体の回転が止まり、各ブレードに作用する風力が最小となるので、ブレードや各軸受け、発電機等の構成部品の損傷リスクを低減することが可能となる。
【実施例0043】
図3は実施例3を表す鳥瞰図であり、実施例1および実施例2による構成の垂直軸風力発電機について、駆動ジャケット、ラウンドフレーム、ラウンドバー、増速機、発電機等の主要構成部品を示す。図4図3の(B)-(B)断面図である。
図3および図4のタワー2の上端部に設置された台座3に対し、支柱4を上方に向かって設置し、支柱4の上端部に駆動ジャケット5を、支柱4に嵌合し水平方向に回転可能に取り付ける。補強板24は、駆動ジャケット5に作用する力を、支柱と共に支えるための補強部材である。
(0035)項~(0037)項の実施例1で説明した通り、駆動ジャケット5と一体化した主軸17を駆動ジャケットの中心部に上下方向に向かって取り付け、上方に伸ばした主軸の上部にハンガーヘッド6を設置し、ハンガーヘッドの外周部に取り付けたフック25とラウンドフレーム7を吊りワイヤー又は吊りバ―で8つなぐ。以上の構成により、主にラウンドフレーム7、ブレード11、ラウンドバー16の自重による下向きの荷重は駆動ジャケット5により支えられた構成となる。
同時に駆動ジャケット5の回転力を発電機18に伝えるために、駆動ジャケット5の下方に向かって主軸17を支柱4内の空洞部、および台座3の中央に開口した穴を通して伸ばし、カップリング26を介して増速機27に接続する。増速機27の出力を発電機の駆動軸28につなげることにより、発電機18によって発電が行われる。
【0044】
なお本構成の駆動ジャケットには、主にラウンドフレーム7、ブレード11、ラウンドバー16の自重による下向きの荷重と、ブレードが風を受ける際の水平方向の荷重が作用する。
下向きの荷重はスラスト軸受け29出受けて駆動ジャケット5を下から支えることにより保持する。同時に水平方向の荷重は駆動ジャケット内部に設置したラジアル軸受け30と、主軸17の下部に設置した下部ラジアル軸受け31により保持する。
ラジアル軸受けを主軸17の上部と下部2か所に設置することにより、ブレード11が風に煽られて駆動ジャケットにねじりモーメントが作用した場合でも、この力を安定して保持することが可能となり、運転時の信頼性が向上する。以上の構成により、さらに風力発電機が大型化して荷重が大きくなったとしても荷重を支えることが出来るので、風力発電機の大型化、大出力化が可能となる。
【実施例0045】
図5は実施例4を表す鳥瞰図であり、実施例1および実施例2による構成の垂直軸風力発電機について、駆動ジャケット、ラウンドフレームの吊り方や、発電機への動力の伝達が実施例3とは異なる構成を表す。
また、図6図5の(C)-(C)断面図である。
図5および図6のタワー2の上端部に設置された台座3に対し、支柱4を上方に向かって設置し、支柱4の途中に駆動ジャケット5を、支柱4に嵌合し水平方向に回転可能に取り付ける。
実施例4では、支柱4の頂部にピボット軸受け装置32を取り付け、ピボット軸受け装置32に作用する下向きの荷重をスラスト軸受け33で支え、同時にピボット軸受け装置32に作用する水平方向の荷重をラジアル軸受け34で支える。ピボット軸受け装置32の外周部にフック25を設置し、フック25とラウンドフレーム7を吊りワイヤー又は吊りバ―8でつなぐ。この構成により、ラウンドフレーム7は水平方向に回転可能な状態で吊り下げられた状態となる。
【0046】
さらに支柱4の駆動ジャケット5よりも下側に、下部軸受け装置35を取り付け、下部軸受け装置35に作用する上下方向の荷重をスラスト軸受け36で支え、同時に下部軸受け装置35に作用する水平方向の荷重をラジアル軸受け37で支える。下部軸受け装置35の外周部に対し、ピボット軸受け装置と同様のフック25を設置し、フック25とラウンドフレーム7を吊りワイヤー又は吊りバ―8でつなぐ。
以上の構成により、ブレード11に作用する風力によってラウンドフレーム7回転力が生じる。その回転力を駆動ロープ38を介して駆動ジャケット5に設置したラウンドバー16に伝達することにより、駆動ジャケット5に回転力が発生する。
この組合せによる風車体は、複数の吊りワイヤー又は吊りバ―8によって支えられるので安定した回転が期待でき、同時に駆動ロープ38を介すことでブレードを含むラウンドフレームの自重による下向き荷重や、風によってブレード作用するモーメントが駆動ジャケット5に伝わりにくいため、駆動ジャケット回転時の摩擦抵抗の低減が可能となるため、高効率の発電出力と軸受けの信頼性向上が期待できる。
【0047】
実施例4では駆動ジャケット5の外周部にギア39を取り付け、ギア39に対しピ二オンギア40を噛み合わせて回転数を増速させ、さらにピ二オンギア40の回転軸を増速機27に接続して増速し、増速機の出力軸を発電機駆動軸28に接続して発電機18を駆動し発電する。
以上の構成により、駆動ジャケット5は摩擦抵抗が少ない状態で回転し、かつ増速機により高速回転を得られるので、高効率の発電を行うことが可能となる。
【0048】
実施例4のピボット軸受け装置32について、詳細構造の1例を図7に示す。
ピボット軸受け装置32は支柱4の上端部にて支柱4に嵌合して水平方向に回転し、外周部に設置したフック25につないだ吊りワイヤー又は吊りバ―8を介してブレードを含むラウンドフレーム7の自重を保持する機能を有する。同時に回転時の摩擦抵抗を出来るだけ減らすために、自重をスラスト軸受け33で支えるとともに、ブレードに作用する水平方向の力を、ラジアル軸受け34で受けて円柱軸41で保持する構成としている。
【0049】
図8はピボット軸受け装置の異なる詳細構造例を示す。
図8は、固定フランジ42によって支柱4の頂部に取り付けた円錐軸43外周に複数のボールベアリング44を設置し、ボールベアリングをピボット軸受け装置32で保持した構成を示す。図8のピボット軸受け装置外周部にはフック25が取り付けられ、吊りワイヤー又は吊りバ―8を介してラウンドフレームを保持している。
図8に示すピボット軸受け装置は、下向きのスラスト荷重と水平方向のラジアル荷重を、同時に効率良く支えることが可能であることから、装置の軽量化とコスト低減も可能となる。しかしながら、現時点ではこの型式のピボット軸受けは比較的小型のものしか実用化されていない。将来本発明による垂直軸風力発電機の大型化が実現する機会があれば、その際には、図8に示す構成の大型のピボット軸受けが実用化されることを期待したい。
【実施例0050】
図9は実施例5を表す鳥瞰図であり、実施例3による構成の垂直軸風力発電機に対して駆動ジャケットの回転を停止するためのブレーキ装置46を設置した構成の鳥瞰図、および(D)-(D)断面図である。
図9の中に記載の発電機駆動軸28に対し、ブレーキディスク45およびブレーキ装置46を取り付けた構成を示している。ブレード11を解放してパッシブフェザリング状態とし、かつブレーキ装置46を使って風車体の回転を停止することで、点検・補修時等の風力発電機停止時に、作業員は安全な環境での作業実施が可能となる。
【0051】
図10は実施例5のブレーキ装置46を実施例4に対して取り付けた構成を表す鳥瞰図、および(E)-(E)断面図である。図10の中に示す発電機駆動軸28に対し、ブレーキディスク45およびブレーキ装置46を取り付けた構成を示している。ブレード11を解放してパッシブフェザリング状態とし、かつブレーキ装置46を使って風車体の回転を停止することで、点検・補修時等の風力発電機停止時に、作業員は安全な環境での作業実施が可能となる。
【実施例0052】
図11は実施例6として、作業員が歩行可能なタラップ47を実施例3~実施例5に対して取り付けた構成を表す鳥瞰図である。図11の中のラウンドフレーム7および台座3、支柱4等に対してタラップ47を設置することにより、点検、補修の際、作業者が安全に移動し作業を行うことが可能となる。
また、図11の右側に示す鳥瞰図は実施例4の支柱4に対し、支柱4の内部空間を利用し作業者が移動出来るよう、ハッチ48を設けた状態を表している。
【実施例0053】
次に本発明の実施例7として、実施例3~実施例6による垂直軸風力発電機の運転・制御に関する内容を図12図14に示す。
図12は実施例1~実施例6で述べた垂直軸風力発電機の運転・制御を行うための、計測装置、制御対象と信号の流れの例を示す構成図、図13は制御ブロック図である。
図12は実施例としてブレードが6組の垂直軸風力発電機の例を示しており、図12の中のブレードの断面を上方から見た状態を記号(1)~(6)で表している。
計測用タワー50の上端部に設置した風向計52で風向きを計測し、その情報を風向きの信号53として無線信号で発信し、制御装置51が受信する。
同様に風速については、風速計54で風速を計測し、その情報を風速信号55として無線信号で発信し、制御装置51が受信する。
【0054】
(1)~(6)に示す各ブレードの角度については、ブレード軸角度計56により計測し、その情報をブレード角度の信号57として制御盤51が受信する。前記と同様に、風車体の回転数については回転数計58で計測し、その情報を風車体の回転数の信号59として制御盤51が受信する。またその時の発電機出力60を信号61として制御盤51が受信する。
さらに地上の電力系統62で停電等運用上の異常が発生した場合、電力系統の停電信号63として通信ケーブルを経由し制御盤51が受信する構成を示している。
【0055】
図13は実施例3~実施例6において、風向きの信号53、風速の信号55、ブレード(1)~(6)の角度計で計測した各ブレード角度の信号57、風車体の回転数の信号59、発電機出力61、および電力系統停電の信号63を用いて制御盤51内で処理した上で、ブレード(1)~(6)の角度保持装置64、発電機/電動機66、および発電機駆動軸のブレーキ装置68に対してブレード(1)~(6)の角度保持装置のON/OFF指令信号65、発電機を電動機として起動・回転させる指令信号67、発電機駆動軸のブレーキ装置ON/OFF指令信号69を発信し、運転制御を行う場合のブロック図の例を示している。
【0056】
図14は実施例3~実施例6において、制御盤によって行われる運転・制御ロジックのフロー図の例を示している。本図は、フローの起点または終点を示す図形70、前記各信号情報のインプットを示す矢印71、および各信号情報を用いた判断を示す図形72、各装置の動作を表す図形73を用いて、制御フローの例を示している。
【実施例0057】
図15は本発明の実施例8として、本発明の垂直軸風力発電機を洋上設置とした場合の構成例を示す。
実施例8の垂直軸風力発電機は、海面に浮かべた複数の浮体103をトラス104で連結して構成された浮体基礎105と、海底に設置した複数のアンカー101を複数の係留索102でつなぎ、海面上の一定の位置に係留し、浮体基礎105の中央部に上方に向かって設置したタワー106の上端部に台座107を取り付ける。タワー106とトラス104を複数の補強索108等でつなぐことにより、タワー106の強度アップが期待できる。
台座107上に垂直方向の支柱109を設置し、支柱109の先端部に対し支柱109と嵌合し水平方向に回転可能な駆動ジャケット110を取り付け、駆動ジャケット110の上方にハンガーヘッド111を設ける。さらにハンガーヘッド111の外周部と、水平方向に円形または多角形に構成されたラウンドフレーム112を複数の吊りワイヤー又は吊りバ―113でつなぐことにより、ラウンドフレーム112が海面から上方の、駆動ジャケット110と同等の高さに吊り下げた構成を示している。
ラウンドフレーム112には、水平方向に同じピッチにて複数のブレード軸受け114が取り付けられており、ブラード軸受け114は中心軸が垂直方向のブレード軸115を回転可能な状態で保持する。さらにブレード軸115の上側と下側に対し、上側、下側に延びるブレード116を取り付ける。以上の構成により、ブレード116はブレード軸受け114によって、水平方向に回転可能な状態で保持される。
【0058】
各ブレード軸115に対してブレード軸115と一体化したディスク117を取り付け、各ブレード軸受け114に対してラウンドフレーム112に対するブレード116の角度を固定したり、解放したりする機能を有する、ブレード角度保持装置118を設置する。
同時に各ブレード軸115と一体化したギア119と、ブレードの角度を検出するためのブレード角度計120を取り付ける。
以上の構成により、風速等の環境条件に応じてブレード角度保持装置を制御しブレードを発電に適した角度に保持したり、あるいは解放してブレードを風になびかせる、パッシブフェザリングを行うことが可能となる。
【0059】
ブレード116に風が当たることにより、ラウンドフレーム112回転力が生じる。この回転力から発電出力を得るための構成を、以下に記す。
駆動ジャケット110の外周部に対して放射状に複数のラウンドバー121を取り付け、ラウンドバー121の先端部をラウンドフレーム112につなぐ。同時に駆動ジャケット110の中央部下側に対し、支柱109内部の空洞部分を通して下方に延びる主軸122を取り付け、主軸122を台座107の開口部を介して台座の下方に設置した発電機123の駆動軸と連結することにより、発電機が回転し発電出力を得ることが可能となる。
【0060】
次に図16図19に、実施例8による垂直軸風力発電機の洋上での設置手順の例を示す。
図16は、浮体基礎105上にタワーおよび風車体の一部を組み立てた状態で、風力発電機製作拠点の港を出港する状況を表している。風力発電機出港と同時に、海底に設置するアンカー101と、係留に必要な係留索102が同時に出港する。
図17にて風力発電機が設定海域に到着後、複数のアンカー101を海底の所定の位置に設置し、浮体基礎105と各アンカーを複数の索体でつないで係留する。
【0061】
図18では、タワー106の先端にタワーの延長ポール124を継ぎ足しながら風車体を徐々に上方に上げてゆく状況を示している。風車体を上げる過程で、下側のブレード116をブレード軸に取り付ける。
図19にて風車体が所定の高さまで上がった後、タワー106と浮体基礎のトラス104とを複数の補強索108でつないで、設置完了となる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本願は現在まで発電用として主流であり実用化が進められた水平軸プロペラ式風力発電機に対し、水平軸プロペラ式風力発電機が必要であった受風面を風に向かわせる、ヨー制御が不要となる垂直軸風力発電機について、大型機の実用化を念頭に必要な機能を具備した構成を提案するものである。
水平軸プロペラ式風力発電機は、現在海外大手メーカ製品の買取や、国内での部品単位の受託生産の体制となりつつあるが、垂直軸風力発電機の分野で日本独自の技術を確立出来れば、国内の数多くの機械メーカや部品メーカによる生産が可能となる。
また洋上風力発電に活用出来れば、国内の船舶関係メーカの技術も適用可能となる、と考えられる。
【符号の説明】
【0063】
1 基礎台
2 タワー
3 台座
4 支柱
5 駆動ジャケット
6 ハンガーヘッド
7 ラウンドフレーム
8 吊りワイヤー又は吊りバ―
9 ブレード軸受け
10 ブレード軸
11 ブレード
12 ディスク
13 ブレード角度保持装置
14(ブレード角度計の)ギア
15 ブレード角度計
16 ラウンドバー
17 主軸
18 発電機
19 風向きを表す矢印
20 ブレード断面図(ブレード角度保持状態)
21 ブレード断面図(ブレード角度解放状態=パッシブフェザリング状態)
22 ブレード軸に作用する力の方向を表す矢印
23 風車体の回転方向を表す矢印
24 支柱の補強板
25 フック
26 カップリング
27 増速機
28 発電機の駆動軸
29(駆動ジャケットの)スラスト軸受け
30(駆動ジャケットの)ラジアル軸受け
31(主軸下部の)ラジアル軸受け
32 ピボット軸受け装置
33(ピボット軸受け装置の)スラスト軸受け
34(ピボット軸受け装置の)ラジアル軸受け
35 下部軸受け装置
36(下部軸受け装置の)スラスト軸受け
37(下部軸受け装置の)ラジアル軸受け
38 駆動ロープ
39(駆動ジャケットの)ギア
40 ピ二オンギア
41 円柱軸
42 固定フランジ
43 円錐軸
44(ピボット軸受けの)ボールベアリング
45(発電機駆動軸の)ブレーキディスク
46(発電機駆動軸の)ブレーキ装置
47 タラップ
48 ハッチ
49(欠番)

50 計測用タワー
51 制御盤
52 風向計
53 風向きの信号
54 風速計
55 風速の信号
56 ブレード(1)~(6)の角度計
57 ブレード(1)~(6)の角度信号
58 風車体の回転数計
59 風車体の回転数の信号
60 発電機出力計
61 発電機出力の信号
62 電力系統
63 電力系統信号(停電の信号、電力需要率の信号、等)
64 ブレード(1)~(6)角度保持装置
65 ブレード(1)~(6)角度保持装置NO/OFF指令信号
66 発電機または電動機
67 発電機を電動機として回転させる指令信号
68 発電機駆動軸のブレーキ装置
69 発電機駆動軸のブレーキ装置ON/OFF指令信号
70 フローチャート上の起点又は終点を表す図形
71 フローチャート上の信号情報のインプットを表す矢印
72 フローチャート上の信号情報を用いた判断を表す図形
73 フローチャート上の各装置の動作を表す図形

74~100(欠番)

101 アンカー
102 係留索
103 浮体
104 トラス
105 浮体基礎
106 タワー
107 台座
108 補強索
109 支柱
110 駆動ジャケット
111 ハンガーヘッド
112 ラウンドフレーム
113 吊りワイヤー又は吊りバ―
114 ブレード軸受け
115 ブレード軸
116 ブレード
117 ディスク
118 ブレード角度保持装置
119(ブレード角度計の)ギア
120 ブレード角度計
121 ラウンドバー
122 主軸
123 発電機
124 タワーの延長ポール

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19