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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119030
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ベント装置及びそのベント方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/28 20060101AFI20240826BHJP
   H04R 1/10 20060101ALN20240826BHJP
【FI】
H04R1/28 310C
H04R1/10 104Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218565
(22)【出願日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】63/447,048
(32)【優先日】2023-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/530,235
(32)【優先日】2023-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521287935
【氏名又は名称】エクスメムス ラブズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】陳 文健
(72)【発明者】
【氏名】張 凱傑
(72)【発明者】
【氏名】羅 烱成
(72)【発明者】
【氏名】劉 源双
【テーマコード(参考)】
5D005
【Fターム(参考)】
5D005BA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ウェアラブルサウンド装置のチャンバと外部環境との間の圧力変化を滑らかにし、クリックノイズが低減することにより、リスニング体験を改善するベント装置を提供する。
【解決手段】ウェアラブルサウンド装置10において、ベント装置10vntDは、上昇時間の間に上方に揺動するように作動する第1のフラップ111Faと、第1のフラップの反対側に配置され、降下時間の間に下方に揺動するように作動する第2のフラップ111Fbと、第1のフラップ上に配置される第1の作動部112Caと、第2のフラップ上に配置される第2の作動部112Cbと、を含む。ベント装置はまた、ウェアラブルサウンド装置内に配置されるか又はウェアラブルサウンド装置内に配置され、ベント113vntは、ベント装置がベントを徐々に形成するように、第1の作動部に第1の電圧を印加し、第2の作動部に第2の電圧を印加することによって形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上昇時間の間に上方に揺動するように作動されるよう構成された第1のフラップと、
前記第1のフラップの反対側に配置され、降下時間の間に下方に揺動するように作動されるよう構成された第2のフラップと、
前記第1のフラップ上に配置される第1の作動部と、
前記第2のフラップ上に配置される第2の作動部と、
を含むベント装置であって、
ベントを形成するように構成された当該ベント装置は、ウェアラブルサウンド装置内に配置されるか又はウェアラブルサウンド装置内に配置されるように構成され、
前記ベントは、当該ベント装置が前記ベントを徐々に形成するように、前記第1の作動部に第1の電圧を印加し、前記第2の作動部に第2の電圧を印加することによって形成される、ベント装置。
【請求項2】
前記上昇時間又は前記降下時間は50ミリ秒以上である、請求項1に記載のベント装置。
【請求項3】
前記上昇時間又は前記降下時間は、前記ベント装置が前記ベントを形成したときに、人の聴覚によって顕著な音が知覚されないようにするために閾値よりも長い、請求項1に記載のベント装置。
【請求項4】
前記第1のフラップが徐々に上方に揺動し、前記ベント装置のベントが徐々に開かれるようにするために、前記第1の作動部に印加される前記第1の電圧は、前記上昇時間の間に徐々に増加し、前記第2の作動部に印加される前記第2の電圧は、前記降下時間の間に徐々に低下する、請求項1に記載のベント装置。
【請求項5】
前記上昇時間の開始タイミングと前記降下時間の開始タイミングとの間に遅延が挿入される、請求項1に記載のベント装置。
【請求項6】
前記上昇時間は前記降下時間と重なる、請求項1に記載のベント装置。
【請求項7】
前記上昇時間の開始タイミングと前記降下時間の開始タイミングとの間の遅延は前記上昇時間又は前記降下時間以下である、請求項1に記載のベント装置。
【請求項8】
前記第1の作動部に印加される第1の電圧は、前記降下時間の一部の間に変化せず、前記第2の作動部に印加される第2の電圧は、前記上昇時間の一部の間に変化しない、請求項1に記載のベント装置。
【請求項9】
前記第1のフラップ及び前記第2のフラップのうちの一方は、前記第1のフラップ及び前記第2のフラップのうちの他方が揺動を既に開始した後に揺動するか、又は
前記ベント装置のベントの中心は、前記上昇時間の大半又は前記降下時間の大半の間に前記ベント装置のベントの中心線から逸れる、請求項1に記載のベント装置。
【請求項10】
前記ベント装置は駆動回路によって駆動され、
前記駆動回路は、前記第1の電圧を前記第1の作動部に出力し、前記第2の電圧を前記第2の作動部に出力するように構成されている、請求項1に記載のベント装置。
【請求項11】
上昇時間の間に第1のフラップが上方に徐々に揺動するように作動させることと、
降下時間の間に第2のフラップが下方に徐々に揺動するように作動させることと、
を含むベント方法であって、
当該ベント方法はベント装置のために適用され、
前記ベント装置はウェアラブルサウンド装置内に配置されるか又は前記ウェアラブルサウンド装置内に配置されるように構成され、
前記ベント装置はベントを形成するように構成され、
前記ベント装置は前記第1のフラップ及び前記第2のフラップを含む、ベント方法。
【請求項12】
前記上昇時間又は前記降下時間は50ミリ秒以上である、請求項11に記載のベント方法。
【請求項13】
前記上昇時間又は前記降下時間は、前記ベント装置が前記ベントを形成したときに、人の聴覚によって顕著な音が知覚されないようにするために閾値よりも長い、請求項11に記載のベント方法。
【請求項14】
前記第1のフラップ上の第1の作動部に第1の電圧を印加することと、
前記第2フラップ上の第2の作動部に第2の電圧を印加することと、
を含み、
前記ベント装置が前記ベントを徐々に開くようにするために、記第1の電圧は、前記上昇時間の間に徐々に増加し、前記第2の電圧は、前記降下時間の間に徐々に低下する、請求項11に記載のベント方法。
【請求項15】
前記上昇時間の開始タイミングと前記降下時間の開始タイミングとの間に遅延を挿入することを含む、請求項11に記載のベント方法。
【請求項16】
前記上昇時間は前記降下時間と重なる、請求項11に記載のベント方法。
【請求項17】
上昇時間の間に上方に揺動するか又は降下時間の間に下方に揺動するように作動されるよう構成された第1のフラップと、
前記第1のフラップに隣接して配置される第2のフラップと、
を含むベント装置であって、
ベントを形成するように構成された当該ベント装置は、ウェアラブルサウンド装置内に配置されるか又はウェアラブルサウンド装置内に配置されるように構成されている、ベント装置。
【請求項18】
前記第2のフラップは、前記上昇時間又は前記降下時間の間は静止した状態で留まるように構成されている、請求項17に記載のベント装置。
【請求項19】
前記上昇時間又は前記降下時間は50ミリ秒以上である、請求項17に記載のベント装置。
【請求項20】
前記第2のフラップは、第2の上昇時間の間に徐々に上方に揺動するように作動されるよう構成され、前記上昇時間の開始タイミングと前記第2のフラップの第2の上昇時間の開始タイミングとの間の遅延は、前記上昇時間又は前記第2の上昇時間以下である、請求項17に記載のベント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベント装置及びそのベント方法に関し、より具体的には閉塞効果を低減し、ユーザ体験を改善するベント装置及びそのベント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞効果は耳道の密閉された体積から生じ、それは聞き手に知覚可能な圧力をもたらす。例えば、耳道にウェアラブルサウンド装置を装着した聞き手が、骨伝導音を発生させる特定の動作(例えば、ジョギング)を行う場合に閉塞効果が起こる。しかしながら、閉鎖電界チャンバ内の圧力を解放した場合にクリックノイズが生じ得る。リスニング体験を向上させるために、閉塞効果に関してはさらなる改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第17/344983号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0211521号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2019/0098390号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2013/0121509号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2016/0176704号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2017/0021391号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2017/0325030号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2020/0213770号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2020/0178000号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2020/0100033号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2019/0039880号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2012/0053393号明細書
【特許文献13】米国特許8724200号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2019/0349665号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2017/0164115号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2017/0217761号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2007/0007858号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2017/0201192号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2017/0260044号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2013/0223023号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2015/0163599号明細書
【特許文献22】韓国公開特許第10-2015-0030691号公報
【特許文献23】中国特許出願公開第111063790明細書
【特許文献24】特開2020-31444号公報
【特許文献25】特開2009-512375号公報
【特許文献26】韓国公開特許第10-2010-0002351号公報
【特許文献27】特開平11-307441号公報
【特許文献28】米国特許出願公開第2014/0140558
【特許文献29】米国特許出願公開第2011/0051985
【特許文献30】米国特許出願公開第2003/0029705
【特許文献31】米国特許出願公開第2018/0020194
【特許文献32】米国特許出願公開第2019/0215620
【特許文献33】米国特許出願公開第2020/0193973
【特許文献34】米国特許第10367540号明細書
【特許文献35】米国特許出願公開第2006/0131163
【特許文献36】米国特許第11399228号明細書
【特許文献37】米国特許第11323797号明細書
【特許文献38】米国特許出願公開第2018/0120938
【特許文献39】米国特許第5970998号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】HYONSE KIM ET AL, A slim type microvalve driven by PZT films, Sensors and Actuators A: PHYSICAL, 18 January, 2005, pages 162-171, Vol. 121, Elsevier B. V., XP027806904
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本願の第1の目的は、従来技術の欠点を改善するベント装置及びそのベント方法を提供することである。
【0006】
本願の一実施形態はベント装置を開示し、当該ベント装置は、上昇時間(rising time)の間に上方に揺動するように作動されるよう構成された第1のフラップと、前記第1のフラップの反対側に配置され、降下時間(falling time)の間に下方に揺動するように作動されるよう構成された第2のフラップと、前記第1のフラップ上に配置される第1の作動部と、前記第2のフラップ上に配置される第2の作動部と、を含み、ベントを形成するように構成された当該ベント装置は、ウェアラブルサウンド装置内に配置されるか又はウェアラブルサウンド装置内に配置されるように構成され、前記ベントは、当該ベント装置が前記ベントを徐々に形成するように、前記第1の作動部に第1の電圧を印加し、前記第2の作動部に第2の電圧を印加することによって形成される。
【0007】
本願の一実施形態はベント方法を開示し、当該ベント方法は、上昇時間の間に第1のフラップが上方に徐々に揺動するように作動させることと、降下時間の間に第2のフラップが下方に徐々に揺動するように作動させることと、を含み、当該ベント方法はベント装置のために適用され、前記ベント装置はウェアラブルサウンド装置内に配置されるか又は前記ウェアラブルサウンド装置内に配置されるように構成され、前記ベント装置はベントを形成するように構成され、前記ベント装置は前記第1のフラップ及び前記第2のフラップを含む。
【0008】
本願の一実施形態はベント装置を開示し、当該ベント装置は、上昇時間の間に上方に揺動するか又は降下時間の間に下方に揺動するように作動されるよう構成された第1のフラップと、前記第1のフラップに隣接して配置される第2のフラップと、を含み、ベントを形成するように構成された当該ベント装置は、ウェアラブルサウンド装置内に配置されるか又はウェアラブルサウンド装置内に配置されるように構成されている。
【0009】
本発明のこれらの及び他の目的は、様々な図及び図面に示す好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読んだ後に当業者に間違いなく明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本願の実施形態に係るウェアラブルサウンド装置の概略図である。
図2図2は、本願の実施形態に係る電圧のタイミング図である。
図3図3は、本願の実施形態に係る電圧のタイミング図である。
図4図4は、本出願の実施形態に係る二乗平均平方根ノイズ対時間の概略図である。
図5図5は、本願の実施形態に係る電圧のタイミング図である。
図6図6は、本願の実施形態に係る電圧のタイミング図である。
図7図7は、本願の実施形態に係る電圧のタイミング図である。
図8図8は、本願の実施形態に係る図1に示すウェアラブルサウンド装置の概略図である。
図9図9は、本願の実施形態による電圧のタイミング図である。
図10図10は、本願の実施形態による電圧のタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本願の実施形態に係るウェアラブルサウンド装置10の概略図である。ウェアラブルサウンド装置10(例えば、インイヤーデバイス)は、ベント装置10vntD及び駆動回路10dvrCを含み得る。
【0012】
ベント装置10vntDは、膜構造111及びアクチュエータ112を含み得る。スリットは、膜構造111を互いに対向する2つのフラップ111Fa及び111Fbに分割し得る。フラップ111Fa/111Fbは自由端と、基板114に固定される固定端とを含み得る。アクチュエータ112は、それぞれフラップ111Fa及び111Fb上に配置される作動部112Ca及び112Cbを含むことができる。
【0013】
ベント装置10vntDを駆動するように構成された駆動回路10dvrCは、フラップ111Fa/111Fbが作動部112Ca/112Cbによって作動されて、動的ベントを促進にするために上下に揺動/傾斜するように、作動部112Caに電圧1Vo1を出力し、作動部112Cbに電圧1Vo2を出力する。
【0014】
つまり、ウェアラブルサウンド装置10は、ベント113vntを開くために図1(a)に示す第1のモード/開放モードと、ベント113vntを閉じるために図1(b)に示す第2のモード/閉鎖モードとの間で切り替えられ得る。ウェアラブルサウンド装置10を第1のモード/開放モードで動作させるために、フラップ111Faは上方に傾斜し、フラップ111Fbは下方に傾斜し得る。図1(a)に示すように、フラップ111Fa、111Fbの自由端の差が膜構造111の厚さよりも大きい場合、ベント113vntは開放されているかま他は形成されているといえる。そのため、(外耳道に接続されているか又は接続されるべき)容積130chmFと、(外部周囲環境に接続されているか又は接続されるべき)容積130chmBとの間に気流チャネルが形成され、閉塞効果によって生じる圧力を解放/低減する。
【0015】
第2のモード/閉鎖モードでウェアラブルサウンド装置10を動作させるために、フラップ111Fa及び111Fbは反対の方法で移動する。例えば、フラップ111Faは下方に揺動し、フラップ111Fbは上方に揺動し得る。フラップ111Fa及び111Fbが図1(b)に示すように互いに実質的に平行に整列した後、ベント113vntは閉じられているか又は密閉されていると言われ、容積130chmF及び130chmBはほとんど接続されておらず、これにより、低周波における音圧レベル(SPL)の著しい低下を回避できる。
【0016】
しかしながら、切り替えの間にクリックノイズが生じ得る。例えば、図2は、本願の実施形態に係る電圧2Vo1、2Vo2のタイミング図である。電圧1Vo1、1Vo2は、電圧2Vo1、2Vo2を用いて実施され得る。
【0017】
ベント113vntを開くために、図2に示すように、作動部112Caに印加される電圧2Vo1は、フラップ111Faが上方に揺動する上昇時間2T1の間に共通電圧Vからハイレベル電圧VHiに瞬時に増加し、作動部112Cbに印加される電圧2Vo2は、フラップ111Fbが下方に揺動する降下時間2T2の間に共通電圧Vからローレベル電圧VLoに急速に低下する。ベント113vntを閉じるために、電圧2Vo1はフラップ111Faが下方に揺動する降下時間2T1の間にハイレベル電圧VHiから共通電圧Vbに瞬時に低下し、電圧2Vo2は、フラップ111Fbが上方に揺動する上昇時間2T2の間にローレベル電圧VLoから共通電圧Vに瞬時に増加する。一実施形態では、ハイレベル電圧VHi、共通電圧V及びローレベル電圧VLoはそれぞれ30、15、0ボルト(V)であり得る。
【0018】
上昇時間2T1、2T2及び降下時間2T1、2T2は短いため(例えば、ほぼ0秒)、ベント113vntは迅速に開閉される。フラップ111Fa及び111Fbは、非常に短い時間内で高速に動くため、高い音響非線形性に起因するクリックノイズをもたらし得る。
【0019】
クリックノイズは、フラップ111Fa及び111Fbの動きを遅くすることによって低減され得る。例えば、図3は、本願の実施形態による電圧3Vo1、3Vo2のタイミング図である。電圧1Vo1、1Vo2は電圧3Vo1、3Vo2を用いて実施され得る。
【0020】
図2とは異なり、(電圧3Vo1が徐々に上昇する時間である)上昇時間3T1、(電圧3Vo1が徐々に下降する時間である)降下時間3T1、(電圧3Vo2が徐々に増加する時間である)上昇時間3T2、(電圧3Vo2が徐々に低下する時間である)降下時間3T2は閾値以上であり得る。フラップ111Faは上昇時間3T1の間は徐々に上方に揺動する一方で、降下時間3T2の間は徐々に下方に揺動する。フラップ111Faは、降下時間3T1の間は下方に揺動する一方で、上昇時間3Tr2の間は徐々に上方に揺動する。上昇時間(例えば、3T1又は3T2)、降下時間(例えば、3T1又は3T2)又はベント113vntの形成/閉鎖時間を長くすることで、ウェアラブルサウンド装置10のチャンバと外部環境との間の圧力変化を滑らかにし、クリックノイズが低減される。
【0021】
つまり、上昇時間3T1、3T2、降下時間3T1及び3T2が閾値(期間)よりも短い場合(すなわち、50ms)、クリックノイズは(通常の)人間の聴覚/耳には可聴/明瞭/知覚可能であり、クリックノイズをある種の顕著な音とみなされ得る。一実施形態では、閾値は50ミリ秒(ms)であり得る。一実施形態では、閾値は、(通常の)人間の耳に聞こえる/明白なクリックノイズのピークの時間の長さであり得る。一実施形態において、上昇時間3T1、3T2、降下時間3T1又は3T2は、フラップ111Fa又は111Fbのサイズの関数であり得る。一実施形態において、上昇時間3T1、3T2、降下時間3T1又は3T2は200ミリ秒以上であり得る。一実施形態において、上昇時間(例えば、3T1又は3T2)は降下時間(例えば、3T1又は3T2)と異なり得る。一実施形態では、フラップ111Faのための上昇時間3T1又は降下時間3T1は、フラップ111Fbのための上昇時間3T2又は降下時間3T2と異なり得る。
【0022】
図4は、本願の実施形態に係る(測定された)二乗平均平方根(RMS)ノイズ対時間の概略図である。図4は、上昇時間(例えば、3T1、3T2)及び降下時間(例えば、3T1、3T2)が100ミリ秒(細い実線)から200ミリ秒(細い破線)に増加すると、RMSノイズが30.9dBCC2から30dBCC2に低下することを示す。ここで、dBCC2は、人間の耳によって知覚される音の相対的なラウドネスを表現するためのCCIR-2Kの重み付けを表す(2キロヘルツでのユニティゲイン)。一般的に、30dBCC2を超えるRMSノイズは(聴覚に特別な才能を持つ人(黄金の耳と呼ばれる))に聞こえ、クリックノイズと見なされ得るのに対して、29dBCCより小さいRMSノイズは(黄金の耳に)聞こえない。29~30dBCC2の範囲のRMSノイズは、(黄金の耳に)ほとんど聞こえないと定義される。図4によれば、立ち上がり/降下時間が長いほど、リスニング体験が良好になる。
【0023】
上昇時間と降下時間との間に遅延を付加/挿入することにより、クリックノイズ減少し得る。例えば、図5は、本願の実施形態に係る電圧5Vo1、5Vo2のタイミング図である。電圧1Vo1、1Vo2は電圧5Vo1、5Vo2を用いて実施され得る。
【0024】
図3とは異なり、1つのフラップ(例えば、111Fb)は別のフラップ(例えば、111Fa)が揺動した後に揺動して、ベント113vntの形成/閉鎖するのに要する時間が延場され得る。図5の丸数字1によって示されるように、フラップ111Fa及び111Fbは定常状態であり、Z方向におけるフラップ111Fa及び111Fbの自由端の差は、ベント113vntを閉鎖するための膜構造111の厚さよりも小さい。一実施形態では、2つの自由端は互いに物理的に接触し得る。そして、上昇時間5T1が開じまる。上昇時間5T1の間、フラップ111Faの電圧5Vo1は、丸数字2によって示されるように立ち上がり、ベント113vntが徐々に形成される。フラップ111Fbは、遅延5DL1が経過するまで(丸数字3によって示されるように、上昇時間5T1の一部の間)静止する。上昇時間5T1の大部分において、ベント113vntの中心が移動し、ベント装置10vntDの中心線からそれ得る。降下時間5T2が始まると、丸数字4によって示されるように、フラップ111Fbのための電圧5Vo2は降下時間5T2の間に低下するため、ベント113vntが最大に開放されて圧力中和が可能になる。その後、フラップ111Fa及び111Fbは定常状態となり、丸数字5によって示されるようにベント113vntが(短時間)開放される。同様に、上昇時間5T2は降下時間5T1と重複し(又は部分的に一致し)、遅延5DL2を受ける。上昇時間(例えば、5T1又は5T2)と降下時間(例えば、5T1又は5T2)とをずらすことで、ウェアラブルサウンド装置10のチャンバと外部環境との間の圧力変化を滑らかになり、クリックノイズが低減され得る。
【0025】
一実施形態では、遅延5DL1は遅延5DL2と等しくても異なっていてもよい。一実施形態では、上昇時間5T1(又は5T2)の開始タイミングと降下時間5T2(又は5T1)の開始タイミングとの間の遅延5DL1(又は5DL2)は上昇時間5T1(又は5T2)又は降下時間5T2(又は5T1)以下であり得る。一実施形態では、遅延5DL1(又は5DL2)は100ミリ秒であり得る。
【0026】
図4は、上昇時間(例えば、3T1、3T2)及び降下時間(例えば、3T1、3T2)が200ミリ秒(太い実線)であり、遅延が100ミリ秒であるため、RMSノイズが30dBCC2から29.5dBCC2にさらに減少したことを示す。図4によれば、上昇時間(例えば、3T1、3T2)及び降下時間(例えば、3T1、3T2)の間の遅延(例えば、5DL1、5DL2)はリスニング体験をさらに改善する。
【0027】
クリックノイズを低減するために、図6は、本願の実施形態に係る電圧6Vo1、6Vo2のタイミング図も示す。電圧1Vo1、1Vo2は、電圧6Vo1、6Vo2を用いて実施され得る。図2と異なり、上昇時間6T1(又は6T2)の開始タイミングは、クリックノイズを低減するために降下時間6T2(又は6T2)の開始タイミングと一致しない。ベント113vntの中心は、遅延6DL1又は6DL2の間に、ベント装置10vntDの中心線から移動し逸れ得る。図6に示すスキームは、ベント113vntを徐々に開閉するものと考えられ得る。
【0028】
電圧は様々な方法で上げられ得る/下げられ得る(例えば、線形的又は非線形的に)。例えば、図7は、本願の一実施形態に係る電圧7Vo1、7Vo2のタイミング図である。電圧1Vo1、1Vo2は、電圧7Vo1、7Vo2を用いて実施され得る。
【0029】
図1及び図8は、本願の実施形態に係るウェアラブルサウンド装置10の概略図である。上述したように、ウェアラブルサウンド装置10が図1(a)に示す第1のモード/開放モードで動作する場合、共通電圧Vよりも高い電圧1Vo1を作動部112Caに印加し、共通電圧Vよりも低い電圧1Vo2を作動部112Cbに印加することにより、フラップ111Fa及び111Fbは互いに反対に傾斜し、ベント113vntは第1の開放幅を有する。ウェアラブルサウンド装置10が図1(b)及び図8(b)に示す第2のモード/閉鎖モードで動作する場合、共通電圧Vbを作動部112Ca及び112Cbに印加することにより、フラップ111Fa及び111Fbは水平/平行で留まり、ベント113vntは第2の開放幅を有する。
【0030】
ウェアラブルサウンド装置10が、図8(a)に示す第3のモード/快適モードで動作する場合、第1のモード/開放モード又は第2のモード/閉鎖モードと異なり、フラップ111Fa及び111Fbは、作動部112Ca、112Cbを接地又は浮上させることにより、中立的に/緩く垂れ下がり、水平面よりも下に傾斜し、ベント113vntは第3の開口幅を有する。第1の開口幅は3つのうちで最も大きく、第2の開口幅は第3の開口幅よりも狭い。第3のモード/快適モードで作られる小さなベント113vntは、快適性を向上させ且つ節電するために、外耳道に蓄積された圧力を緩和し得る。
【0031】
図3図5図6又は図7に示すように、第1のモード/開放モードと第2のモード/閉鎖モードとの間の切り替えに加えて、第3のモード/快適モードへの/からの切り替えを行うウェアラブルサウンド装置10は大きなクリック音を出さず、静かに動作し得る。例えば、図9は本願の一実施形態に係る電圧9Vo1、9Vo2のタイミング図である。電圧1Vo1、1Vo2は電圧9Vo1、9Vo2を用いて実施され得る。
【0032】
ベント113vntを開くため(すなわち、第3のモード/コンフォートモードから第1のモード/開放モードにする)、図9に示すように、フラップ111Faを上方に揺動させるために、上昇時間9T1の間に、作動部112Caに印加される電圧9Vo1は低レベル電圧VLoから高レベル電圧VHiに徐々に上げられるのに対して、電圧9Vo2及びフラップ111Fbは変化しない。フラップ111Fa及び111Fbを緩めるに(すなわち、第1のモード/開放モードから第3のモード/快適モードにする)、フラップ111Faを下方に揺動させるために、降下時間9T1の間に、電圧9Vo1が高レベル電圧VHiから低レベル電圧VLoに徐々に下げられるのに対して、電圧9Vo2及びフラップ111Fbは変化しない。上昇時間9T1、降下時間9T1又はベント113vntの形成/閉鎖するための時間は、クリックノイズを低減するために長くなり得る。
【0033】
図10は、本願の一実施形態に係る電圧10Vo1、10Vo2のタイミング図である。電圧1Vo1、1Vo2は、電圧10Vo1、10Vo2を用いて実施され得る。
【0034】
ベント113vntを閉じるために(すなわち、第3のモード/快適モードから第2のモード/閉鎖モードにする)、図10に示すように、上昇時間10T2の間に作動部112Cbに印加される電圧10Vo2が低レベル電圧VLoから共通電圧Vに徐々に上げられる前に、上昇時間10T1の間に、作動部112Caに印加される電圧10Vo1が低レベル電圧VLoから共通電圧Vに徐々に上げられ得る。フラップ111Fa、111Fbを緩めるために(すなわち、第2のモード/閉鎖モードから第3のモード/快適モードにする)、降下時間10T2の間に電圧10Vo2が共通電圧Vから低レベル電圧VLoに徐々に下げられる前に、降下時間10T1の間に電圧10Vo1が共通電圧Vから低レベル電圧VLoに徐々に上げられ得る。加えて、フラップ111Fbは、フラップ111Faが既に揺動を開始した後に揺動するため、上昇時間10T1と10T2との間の遅延10DL1又は降下時間10T1と10T2との間の遅延10DL2が生じる。これらは、クリックノイズを低減し得る。
【0035】
一実施形態では、遅延10DL1又は10DL2は、遅延5DL1又は5DL2を用いて実施され得る。一実施形態では、遅延10DL1は遅延10DL2と同じであってもいいし異なっていてもよい。一実施形態では、遅延10DL1(又は10DL2)は、上昇時間10T1、10T2(又は降下時間10T2、10T1)以下である。
【0036】
本発明のウェアラブルサウンド装置10として、ベントを形成又は阻害可能な任意の機構を利用できる。ウェアラブルサウンド装置、ベント装置又は駆動回路の詳細又は変更は、米国特許出願第17/842810号、第17/344980号、第17/344983号、第17/720333号、第18/172346号、第18/303599号及び第18/366637号に開示されており、これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を成す。
【0037】
「第1」及び「第2」等の順序を示す用語の使用は、それ自体がある要素が別の要素に対して優先度、優先順位又は順番が高いことを含意するものでも、ある方法のステップが行われる時系列を含意するものでも又は全ての要素が同時に存在する必要性を含意するものではなく、これらの用語は、ある名前を持つ要素と同じ名前を持つ別の要素から区別するためのラベルとして用いられているにすぎない。以下の実施形態で説明する技術的特徴は、それらの間に矛盾がない限り様々な方法で混合され得るか又は組み合わせられ得る。
【0038】
要約すると、経時的なベントのサイズの変化を小さくして可聴なクリックノイズが低減される。これは、フラップのための上昇時間又は降下時間を延ばしてその動きを遅くするか又は2つの隣接するフラップを非同期/非同時に動かすことで実現される。したがって、本発明はユーザ経験を改善し得る。
【0039】
当業者であれば、本発明の教示を維持しながら、装置及び方法に多数の修正及び変更がなされ得ることを容易に理解するであろう。したがって、上記開示は、添付の特許請求の範囲の制限によってのみ限定されると解釈すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10