(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119040
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】電極およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C25B 11/073 20210101AFI20240826BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20240826BHJP
C25B 11/061 20210101ALI20240826BHJP
【FI】
C25B11/073
C25B11/052
C25B11/061
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024013536
(22)【出願日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2023025624
(32)【優先日】2023-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】多田 雅史
【テーマコード(参考)】
4K011
【Fターム(参考)】
4K011AA22
4K011AA69
4K011BA02
4K011DA01
(57)【要約】
【課題】十分低い水素過電圧を有し、水素発生の速度も速く、しかも水素発生電極上の活性物質の失活の無い、電極を提供する。
【解決手段】鉄原子を50mass%以上含む基材の表面に、厚さが10マイクロメートル以上のマッキナワイトの層を有するものとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄原子を50mass%以上含む基材の表面に、厚さが10マイクロメートル以上のマッキナワイトの層を有する電極。
【請求項2】
請求項1に記載の電極の製造方法であって、前記基材を、前記基材の表面積に対する比液量が50mL/cm2以上且つ60℃超に保たれた、濃度が1.0mass%以上のチオシアン酸アンモニウム水溶液中に15時間以上浸漬し、前記基材の表面にマッキナワイトを形成する、電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、KOH水溶液などのアルカリ性の水溶液を用いて該水溶液中の電極間で水酸化物イオン(OH-イオン)を交換する水電解装置に供する、水素を発生させるための水素発生用電極や、触媒用電極などの電極と、該電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的な脱炭素化の潮流を受け、水素ガスの利用が模索されている。それは、水素ガスの利用は環境負荷が低いからである。例えば、燃料電池の場合、発電後の排出物は水であり、環境負荷が低い。また、水素ガスはCO2の再利用にも用いることができる。すなわち、CO2と水素ガスからメタンを合成するメタネーションがその代表例である。このように水素ガスは、これから脱炭素社会を実現するための非常に有用な物質と考えられている。しかし、水素ガスの製造に目を向けると、水素ガスの製造工程が十分に脱炭素化されているとは言えない。
【0003】
現状の水素ガスの製造方法は、化石燃料の改質、製鉄所・化学工場等からの副生ガス、バイオマス、水の電気分解の4種類である。化石燃料の改質や製鉄所・化学工場等からの副生ガスに関しては、元の燃料が石油などの地下資源であり、当然水素ガスの製造過程でのCO2排出が避けられない。バイオマスは地下資源由来ではないが、バイオマスのみによって、これからの脱炭素社会を支えるのに十分な量の水素ガスを得ることは難しい。そもそもバイオマスからの主たる1次生成ガスはメタノールやメタンであり、水素に改質せずそのまま利用する方が効率的である場合の方が多い。
【0004】
ここで、水の電気分解(いわゆる水電解)は、電気を用いて水を酸素ガスと水素ガスに分解する方法である。地下資源由来の燃料を使用した電気を用いる場合は、脱炭素化された製造方法により得られた水素ガスとは言えないが、いわゆる自然エネルギー由来の電気を用いる場合は脱炭素化された製造方法により得られた水素ガスといえる。
【0005】
以上の通り、水素ガスの製造方法を比較すると、自然エネルギーを用いた水電解は、その製造過程においてCO2が発生しない水素の製造方法であり、最も将来性がある。
【0006】
水電解の方法の一つにアルカリ形やAEM(Anion Exchange Membrane)形といった、KOHなどのアルカリ性の水溶液を電解する方法がある。これらの電解方法は、PEM(Proton Exchange Membrane。Polymer electrolyte Membrane:固体高分子膜の略とされることもある)形水電解と比較して水素や酸素発生電極に高価な合金を用いる必要が無く、比較的安価な水電解方法として知られている。しかし、これらの水電解は、アルカリ性の水溶液を用いるがための特有の問題がある。すなわち、供給電力の低下や、供給電力の断絶時に、水素発生電極に用いる触媒が変質ないしは電解液に溶出する結果、その触媒活性を失う、いわゆる失活という問題がある。このため、自然エネルギーとして知られている風力発電や太陽光発電のように、その電力の変動幅が大きかったり夜間に電力の供給が断絶したりする電源での水素ガスの製造が難しかった。
【0007】
上記の問題を解決するために、電力の供給が低下したり断絶したりしたときに、貯蔵しておいた水素を用いて発電し水電解を継続することも考えられているが、産業に利用できる水素を得る方法としては効率が悪いことは言うまでもない。また、水素製造のために水電解装置近傍に巨大な水素貯蔵タンクや燃料電池を建設する必要があるため、付帯設備が大掛かりになり、トータルで製造コストを低減できているとは言い難かった。
【0008】
上記の水素発生電極における触媒の失活を解決するために、例えば特許文献1では、ニッケル基材上にニッケル酸化物を形成させた水素発生極およびその製造方法が提案されている。すなわち酸化による変質に強いニッケル酸化物を600℃以下の温度でニッケル基材上に塗布焼結する方法及びそのようにして得られた水素発生電極を開示している。しかし、例え600℃以下の温度であるとはいえ焼結によるニッケル基材の強度の劣化を完全に防止することは難しかった。
【0009】
また、特許文献2では、水素吸着が起きやすい金属と水素が脱離しやすい金属を組み合わせた電極が提案されている。すなわち、物質としての安定性の高い金属において、上記のような特性を有する2種類の金属を組み合わせて、水素触媒活性が高く(これを水素過電圧が低いという)かつ安定性の優れた電極が開示されている。しかし、電極上における水素吸着サイトと水素脱離サイトが異なるため、水素発生の速度が十分に速いとは言えず、水素発生の効率が必ずしも高くなかった。
【0010】
また、特許文献3では、低い水素過電圧を示し且つ耐久性に優れた水素発生用電極としてモリブデンまたはタングステンの炭化物、酸化物、硫化物から選択された1種類以上の化合物からなる担体にニッケルの微粒子を担持した水素発生用電極が提案されている。しかし、同文献3に記載の製造方法には焼結工程が含まれているため、電極基材の強度の劣化を完全に防止することは難しかった。
【0011】
また、特許文献4では、水素過電圧が低くかつ耐久性のある水素発生用電極として、電極基材上に格子定数が3.566Å以下であるニッケルとモリブデンの合金が積層されている、電極が提案されている。しかし、同文献4に記載の製造方法には焼結工程が含まれているため、電極基材の強度の劣化を完全に防止することは難しかった。
【0012】
また、特許文献5には、湿式法(電気メッキ法)によって電極基材上にFe-Co-Ni-C合金を被覆した電極が提案されている。しかし、同文献5に開示されている電極の安定性は、同文献5の詳細な説明にもある通り、電極の使用条件を調整して回避できる範囲にて、電解中断時の電極からのFeの溶液への溶出を抑制するものであるため、その効果は限定的であり、より根本的な解決が望まれる。
【0013】
また、特許文献6には、基材上にFe-Ni-W合金膜を形成させた、カソード電極にもアノード電極にも用いることができる、アルカリ水電解用電極が提案されている。しかし、同文献6に開示されている実施例を見ると、アノード電極としての特性を調査するLSV測定は1回しか実施されておらず、カソード分極側から急激にアノード分極側までのスイープが何度も繰り返された場合においても、当該合金が酸化され失活が発生しないのかは不明であり、より根本的な解決が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001-234379号公報
【特許文献2】特開2001-234380号公報
【特許文献3】特開2002-317289号公報
【特許文献4】特開2003-013271号公報
【特許文献5】特開2015-178666号公報
【特許文献6】特開2018-127664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、上記した従来技術が抱える問題を解消し、これらの問題の無い電極、すなわち十分低い水素過電圧を有し、水素発生の速度も速く、しかも電極上の活性物質の失活の無い、電極を提供することにある。また、本発明の別の目的は、かような電極を製造するための方法について提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明者等は、上記の課題を解決できる物質を種々探索した結果、マッキナワイトと呼ばれる硫化鉄を、鉄原子を50mass%以上含む電極基材の表面に10マイクロメートル以上の厚さで形成させた、電極を見出した。まず、発明者等は、マッキナワイトと呼ばれる硫化鉄の表面では水素過電圧が低いことを知見した。すなわち、マッキナワイトは、水素過電圧が低いことという、水電解装置の水素発生電極に求められる特性を満足している。ちなみに、マッキナワイトは、n型半導体である。また、マッキナワイトは、一様な化合物であるため、特許文献2に記載のように、水素吸着が起きやすい金属と水素が脱離しやすい金属を組み合わせる必要が無い。すなわち、マッキナワイトは、水素の吸着と水素の脱離が同一化合物上で起きるため、水素が吸着した場所から水素が脱離する場所まで拡散などで移動する必要が無く、水素発生も十分に速い。
【0017】
ここで、アルカリ形水電解やAEM形水電解などの、溶液にアルカリ性の水溶液を用い、電極間で水酸化物イオンを交換する水電解装置の水素発生電極にマッキナワイトを使用した場合、供給電力の変動または断絶時のマッキナワイトの挙動は、以下のようである。
まず、水素発生時、すなわち水素発生電極がカソード側に分極されているときのマッキナワイトの電極上では、主に水が電気により分解し水素が発生する反応が進行している。一方で僅かではあるが、硫黄原子がイオン化し徐々に電解液に硫黄イオン(S2-)として溶出する反応も進行している。すなわち、マッキナワイトを構成していた硫黄の一部が、イオン化して電解液に溶出する。このようにして電解液に溶けだした硫黄イオン(S2-)は、水素酸化物イオン(OH-)よりもイオンサイズが大きいため、カソードとアノードを隔てるイオン交換膜を透過し得ない。すなわち、マッキナワイトから溶出した硫黄イオン(S2-)は、そのままカソード側に留まる。
【0018】
一方、(上記の各特許文献に記載された)従前の水素発生極(AEM形では一般に導線を接続する主電極とは区別して触媒電極と呼ばれることがある)では、供給電力の変動または断絶時に、アノード側、すなわち水酸化物イオンから電子が奪われ水と酸素が発生する反応が起きる側、電極からすると酸化反応が促進する側、に分極される状態が生じる。このことが、供給電力の変動または断絶時に水素発生極電極が酸化される原因である。かように、水素発生電極がアノード側に分極されたときに電解質中の酸素が電子を放出し、水素発生電極を構成する物質と結びつき、水素発生電極を構成する物質が酸化してしまう。以上が失活のメカニズムである。
【0019】
なお、供給電力の変動や断絶時に水素発生極がアノード側に分極され得る原因は、供給電力の変動や断絶が急であると、水素発生極が対極の酸素発生極ではなく電極を隔てるイオン交換膜や、電解セルを隔てる物質などに対して一時的にアノード側に分極される状態が発生するためである。このため、装置全体としてみれば水素発生極はカソード側に分極しているはずでも、供給電力の急な変動や断絶時に水素発生極が酸化し、これが繰り返されると最終的に失活に至るのである。ちなみに、PEM形水電解装置のような、プロトン(H+イオン)を電極間で交換する方式では、水素発生極がアノード側に分極されてしまっても、水酸化物イオンが存在しないため失活は発生しない。
【0020】
これに対して、水素発生電極がマッキナワイトの場合、水素発生極がアノード側に分極されてしまっても、上記のような酸化は起きず、代わりに硫黄イオン(S2-)が電子を失い酸化して、マッキナワイトが電極上に再度生成する。すなわち、水素発生時に一部失活したマッキナワイトが再生する。このようにマッキナワイトを水素発生電極とした場合、供給電力の変動や断絶に伴う電極の酸化が起きず、これらを原因とした失活はない。
さらに、鉄も硫黄も非常にありふれた元素であり、これまでアルカリ形水電解装置の水素発生電極として検討されてきた物質と比較して、非常に安価であることも利点である。
発明者等は以上のような知見を得て、本発明を完成するに到った。
【0021】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、その要旨は次の通りである。
1.鉄原子を50mass%以上含む基材の表面に、厚さが10マイクロメートル以上のマッキナワイトの層を有する電極。
【0022】
2.前記1に記載の電極の製造方法であって、前記基材を、前記基材の表面積に対する比液量が50mL/cm2以上且つ60℃超に保たれた、濃度が1.0mass%以上のチオシアン酸アンモニウム水溶液中に15時間以上浸漬し、前記基材の表面にマッキナワイトを形成する、電極の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電極は、水素過電圧が従来技術と同等以下であるにもかかわらず、水素の吸着と脱離が同一の化合物上で起きるために水素ガス発生速度が速く、しかも供給電力の変動や断絶時も水素発生電極が酸化せず、かつ失活がないという、顕著な効果を奏する。更に、本発明の電極は、安価な物質の化合物からなることから、製造コストを低減することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】X線スペクトラムからピークが存在する角度を判定する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の水素発生用電極について説明する。
すなわち、本発明の水素発生用電極は、鉄原子を50mass%以上含む基材の表面に、厚さが10マイクロメートル以上のマッキナワイトの層を有することを特徴とする。なお、結晶構造を有する硫化鉄(FeS)には、マッキナワイトの他にも複数の種類が存在する。具体的には、トロイライト、ピューロタイト等が存在するが、マッキナワイトは水素過電圧が低いという特性を有することから、本発明にはマッキナワイトが最適である。以下、上記の各構成について、構成毎に詳しく説明する。
【0026】
[基材]
・鉄原子を50mass%以上含む基材
アルカリ形水電解装置における水素発生電極は、一般に、金属や合金のメッシュ、エキスパンドメタル、または多孔質シート上に水素発生を促す触媒を形成させたものである。この基材に求められる特性としては、電解質中で化学的に安定であり、かつ装置の使用温度で形状を維持するに十分な強度を有することである。さらには、電極の製造工程において焼成などの熱処理工程がある場合、その熱処理工程での変形が装置の設計上有害にならない程度に小さいこと、なども求められる。
【0027】
具体的には、鉄原子を50mass%以上含む鉄系の合金であれば、アルカリ性(pHが7以上の水溶液)中では化学的に安定である。またこのような合金であれば、アルカリ形水電解装置やAEM形水電解装置の使用温度:90℃以下において硬度(すなわち基材としての強度)が変化することはない。この硬度は、ビッカース硬さで150以上であることが好ましい。そして、電極の製造工程で熱処理がある場合において、その熱処理の前後でビッカース硬さの値が±20以上変化しなければ、基材の変形は設計上有害にならない程度に小さい、ということができる。
【0028】
本発明の電極基材の場合、上記に加えて、供給電力の変動や断絶時のマッキナワイトの再生過程において、電極の基材から鉄原子ないしは鉄イオンの供給があることが好ましい。なぜなら、水素発生時の硫黄イオンの溶出に伴い、もともとは硫黄とともにマッキナワイトを形成していた鉄原子が一部失われることから、この消失分の鉄原子を供給するためである。供給電力の変動や断絶は頻繁に繰り返されるため、たとえ鉄原子の溶出が極めて微量であるとしても、累積の装置使用時間が長くなる場合は、鉄原子の溶出量は無視できない。そこで、マッキナワイトの再生時に電極基材から鉄の供給があることが好ましい。そのためには、基材自体が鉄原子を50mass%以上含んでいる必要がある。より好ましくは60mass%以上、更に好ましくは70mass%以上である。このような電極基材であれば、実質的には鉄合金であるため、基材の強度も申し分ないものが得られる。
【0029】
[マッキナワイト]
マッキナワイトは、本発明の核心部分となる化合物である。すなわち、マッキナワイトの表層では、電解液からの水素原子の吸着(一般には、これをVolmer過程という)と吸着水素原子の水素ガス分子化(一般には、これをTafel過程という)が起きやすい。特に、水素過電圧が低いと、このTafel過程が進行しやすい。しかも、マッキナワイトは、溶液がアルカリ性のときに安定であるため、アルカリ形水電解やAEM形水電解の電解液中で化学的に安定である。また、マッキナワイトは硫化鉄である。従って、これまで水素発生電極の触媒として検討されてきた、Ni-S合金、ラネーニッケル、白金及びルテニウムなどの貴金属、酸化ニッケルおよび、Ni-Sn合金、上記の特許文献で開示されている、物質や金属、合金、化合物のどれよりも安価である。さらに、マッキナワイトは、後述するように100℃以下の溶液中に浸漬すれば腐食反応の結果として形成されるため、数百度の高温度で焼成する必要が無い。つまり、基材の強度低下を懸念する必要が無い。
【0030】
次に、マッキナワイトの同定方法を詳述する。マッキナワイトは、X線回折により同定することができる。X線回折法(XRD)は、薄膜XRDで行うことが好ましい。すなわち、測定対象物を薄膜XRD装置に設置し、X線の入射角を5°にセットする。X線の線源はCuKα線とする。次に、回折X線のディテクター角度を入射角から90°までに設定する。このような条件で測定したX線強度のスペクトラムにおける回折ピークと、ICDD(International Centre for Diffraction Data)により与えられているマッキナワイトのXRDのピークと、を比較する。その結果、ICDDによるピークと一致する回折ピークが3以上あることが、被測定対象物の表層にマッキナワイトの層が存在する条件となる。
【0031】
ここで、ピーク位置が一致するか否かの判定基準であるが、ICDDが提供するピーク位置に対し±1°以内に測定ピークが存在する場合、ピーク位置が一致すると判断する。なお、測定結果のX線スペクトラムからピークが存在する角度を判定する方法について、
図1を参照して説明する。まず、X線強度のディテクター角度に対するスペクトラムにおける、ある角度(これを「A°」とする)の±5°(A°±5°)に存在するX線強度の最小値(これを「X線強度Y」とする)を得る。A°におけるX線強度がX線強度Yの2倍以上となるA°を収集すると、1つのピークに対しある程度の幅を持ったA°が得られる。この幅の中央値の角度をピークが存在する角度と判定する。
【0032】
・マッキナワイトの層厚:10マイクロメートル以上
電極基板上に形成されるマッキナワイト層の厚さは、10マイクロメートル以上である必要がある。マッキナワイトの層厚が10マイクロメートル未満では、水電解装置を水素発生運転している間にマッキナワイト層が完全に消失する懸念がある。例えば、自然エネルギーを用いる場合は、自然エネルギーからの供給電力の変動や断絶は基本的に24時間周期である。この環境において、マッキナワイトの層厚10マイクロメートルは、2週間水電解装置を一定の水素発生条件で運転し続けたときに、マッキナワイト層が失われ電極基材表面(ないしは硫黄イオン脱離後に電極基材表面に濃縮した鉄原子の層の表面)が溶液に露出する部分が現れる、最小厚さである。これより厚ければなお好ましく、より好ましくは15マイクロメートル以上、更により好ましくは20マイクロメートル以上である。
【0033】
一方、マッキナワイトの層厚は、100マイクロメートル以下であることが好ましい。マッキナワイトの層厚が100マイクロメートルを超すと、マッキナワイト層が基板から剥がれ易くなる、おそれがある。すなわち、マッキナワイトの層厚が厚くなりすぎると、マッキナワイトと基板との結晶構造や結晶格子定数の違いに由来する、不整合が大きくなり、層と基板との間に大きな応力が集中し、層が基板からはがれやすくなる、おそれがある。このため、層厚は100マイクロメートル以下とすることが好ましい。より好ましくは、90マイクロメートル以下である。
【0034】
本発明に従う水素発生用電極の製造方法は、前記基材を、該基材の表面積に対する比液量が50mL/cm2以上且つ60℃超に保たれた、濃度が1.0mass%以上のチオシアン酸アンモニウム水溶液中に15時間以上浸漬し、前記基材の表面にマッキナワイトを形成するものである。各製造条件について、以下に詳述する。
【0035】
[チオシアン酸アンモニウム水溶液]
・基材の表面積に対する比液量:50mL/cm2以上
基材は板状やメッシュ状など様々な形態があるが、マッキナワイトを形成させたい部分の総面積に対する溶液の量、すなわち比液量が50mL/cm2以上でなければ、十分な厚さのマッキナワイトを均一に形成させることができない。なぜなら、比液量が50mL/cm2未満である場合、形成処理中の溶液中のチオシアン酸アンモニウムの減少が著しく、15時間以上浸漬しても所定の厚さの層が得られなくなるからである。より好ましくは55mL/cm2以上である。
【0036】
一方、比液量は、特に上限を規制する必要がない。なぜなら、比液量が多すぎることによる技術的問題が無いためである。すなわち、上述の比液量の下限以上の水溶液中での浸漬処理が実現されれば、比液量自体が基板上に形成される硫化鉄種やその厚さ、マッキナワイトの特性などに影響を与えることは一切ない。よって、比液量は、被膜形成上の経済的コストを勘案して、実施者が適宜決定すればよい。
【0037】
・チオシアン酸アンモニウム水溶液温度:60℃超
基材を浸漬する水溶液の温度が60℃以下では、基材上にマッキナワイトが形成しない。すなわち、浸漬中に基材表面に形成される硫化鉄がアモルファス状ではなく結晶構造をとり、単相のマッキナワイトとなる温度が60℃超である。よって、水溶液の温度は60℃超とする必要がある。好ましくは65℃超であり、より好ましくは70℃超である。
【0038】
なお、水溶液の温度に関しては、特段上限は設けない。なぜなら、水溶液の水分が蒸発しても気相を冷却することで水滴として溶液に還元でき、特に蒸発による比液量の変化や水溶液濃度の変化を懸念する必要がないためである。ただし、水溶液が沸騰すると、溶液の攪拌が著しく促進され、基材の浸漬中に腐食被膜として基材表層に形成される、マッキナワイト被膜の生成が阻害される、おそれがある。また、沸騰していなくても、沸点に近い温度では水溶液の容器内壁や試験片表層に気泡が形成されやすく、これもマッキナワイト形成の阻害要因となりうる。かような事態は、浸漬時間を長くすれば解決することではあるが、かような事態を招かないことが好ましいのはもちろんである。そのためには、水溶液の温度を90℃以下とすることが推奨される。
【0039】
・チオシアン酸アンモニウム水溶液濃度:1.0mass%以上
鉄原子を50mass%以上含む金属(基材)を、濃度1.0mass%以上のチオシアン酸アンモニウム水溶液中に浸漬すると、チオシアン酸(SCN-)が分解して二酸化炭素とアンモニウムとS2-イオンと水素原子を生じる。この腐食反応によりマッキナワイトを得るためには、1.0mass%以上のチオシアン酸を含有する水溶液が必要である。なぜなら、1.0mass%未満の濃度では、チオシアン酸の濃度が低すぎるためチオシアン酸の分解速度が遅くなる結果、十分な厚さのマッキナワイトを得るために要する時間が長く、例えば1週間以上の時間を要するようになる、ためである。より好ましい濃度は2mass%以上であり、さらにより好ましくは5mass%以上である。
【0040】
一方、チオシアン酸アンモニウム水溶液濃度は、特に上限を規制する必要がない。すなわち、水溶液濃度は浸漬によって得られる硫化物種やマッキナワイト層の特性に影響を与えることはないためである。よって、水溶液濃度は、被膜形成上の経済的コストを勘案して、実施者が適宜決定すればよい。
【0041】
・浸漬時間15時間以上
上記の水溶液に浸漬する時間は、15時間以上必要である。すなわち、浸漬時間が15時間未満では、10μm以上の厚さのFeS層が得られない。なぜなら、浸漬時間が15時間未満では、硫化鉄が結晶構造をとれずアモルファス状となってしまうためである。基材上に形成された硫化鉄は最初、基材の結晶構造の影響を大きく受けるため結晶構造をとれずアモルファス状となっている。硫化鉄が結晶構造をとるためには、ある程度の厚さが必要である。この最小厚さは必ずしも明らかではないが、おおよそ3~8μmであると推定している。硫化鉄がアモルファス状である間は硫化鉄自体の化学的安定性も小さいため、新たな硫化鉄の生成に対して一旦生成した硫化鉄の分解の速度も大きく、硫化鉄の厚さはなかなか増大しない。しかし上記のようにその厚さがおおよそ3~8μmを超えて結晶構造をとると、化学的安定性が高まり、分解が抑制されるため、マッキナワイトとしての硫化鉄層の成長が促進される。このように硫化鉄が結晶構造をとりマッキナワイトとなる最小の時間が、15時間以上である。より好ましくは、20時間以上である。
【0042】
一方、浸漬時間は、特に上限を規制する必要がない。本発明で規定の浸漬条件の範囲内であれば、浸漬時間が長すぎるために、浸漬初期に得られたマッキナワイトの特性が劣化したり、他の結晶構造の化合物に変質したりすることは無い。すなわち、浸漬時間は、マッキナワイト層厚さを制御するための実験上の1変数に過ぎない。よって、浸漬時間は被膜形成上の工程的・経済的コストを勘案して、他の浸漬条件に合わせて、適宜好ましい浸漬時間となるように設定すればよい。
【実施例0043】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に記載の範囲には限定されるものではない。
・電極基材および試験片の作製
表1に示す化学成分からなる材料を5kg溶製し、1000℃から1200℃の間の温度で熱間圧延を行い、厚さ約10mmの圧延板を作製した。この厚さ10mmの圧延板から面積が約1.5cm
2および厚さが2mmとなるように正方形の板状の試験片を切り出した。これを以後クーポンと称する。切り出したクーポンの両面を#1000番まで研磨し、片面に導線をはんだ付けした。その後、
図2に示すように、クーポン1は、導線2をはんだ付けした面の反対面が露出し逆に導線2をはんだ付けした面が埋没するように、非導電性のエポキシ樹脂からなる立方体状の樹脂塊3の一側面に埋め込んだ。なお、導線2は樹脂塊3を貫通して樹脂塊3の外側に引き出されている。クーポン1を埋め込み後の樹脂塊3において該クーポン1が露出している面の該クーポン1に対して再度#1000まで樹脂とともに研磨した。次いで、クーポン1とエポキシ樹脂との境界を、クーポン1の外部に露出する部分の面積が約1.0cm
2となるように、シリコンタイプの非導電性シーラントで被覆し、試験片を作製した
【0044】
【0045】
・試験片へのマッキナワイトの形成
上記のようにして作製した試験片の表層に、マッキナワイト層を形成する処理を以下のように実施した。まず、比液量50mL/cm2、つまり上記で準備した約1.0cm2の試験片2個に対して100mLのチオシアン酸アンモニウム水溶液を用意した。チオシアン酸アンモニウム水溶液の濃度は、表2に示すとおりである。次に、準備した水溶液を、表2に示す浸漬温度に温めた恒温槽の中に注入して1時間以上静置し、当該浸漬温度に保持した。
【0046】
このようにして用意した恒温槽内の水溶液に、表2に示す浸漬時間に従って2個の試験片を浸漬して、その表面に被膜を形成させた。その後、2個の試験片のうち1個について、XRDおよび被膜厚さの測定を、以下のように行った。
すなわち、得られた被膜のX線回折ピーク群を薄膜XRDにより取得し、マッキナワイトのピークと一致したピーク数を求めた。その結果を、表2にピーク数として示す。さらに、薄膜XRD測定を実施した試験片の断面を切り出し、試験片表層に形成された被膜の厚さを光学顕微鏡により測定した。その結果を、表2に被膜厚さとして示す。
【0047】
表2の各条件で作製した試験片のうち、残りの1個を用いて、水素発生の分極曲線を測定した。分極を実施した溶液は、90℃の30mass%KOH水溶液である。分極測定の掃引速度は5mV/分であり、対極の材質は白金濃度が99.9mass%以上の白金箔(Ag/AgCl電極)である。このようにして実施した水素発生における分極曲線を
図3に示す。
図3は、0.1250A/cm
2の電流密度(絶対値)におけるlog交換電流密度と水素発生過電圧との関係をターフェルプロットにて表したものである。
図3に示したところに従って、以下の要領にて求めた、log交換電流密度と水素発生過電圧を、それぞれlog交換電流密度および過電圧として表2に示す。
【0048】
なお、log交換電流密度および水素発生過電圧を算出するための基準となる電位Vt(Vtvs.Ag/AgCl(Sat.KCl))は、溶液pHから下記式によって与えられる。
Vt=-0.0592pH―0.199
【0049】
まず、log交換電流密度は、ターフェル外挿法によって求めた。すなわち、
図3に示すように、電極上で水素ガスが発生している1250A/m
2の電流密度のときの分極曲線の接線を求め、これをV
tまで外挿し交点の電流密度を求める。この電流密度の単位をA/cm
2に換算し、その換算後の値の底10の対数値が、表2にlog交換電流密度として示す値である。
【0050】
ここで、log交換電流密度とは、水素発生量を示す指標である。交換電流の量は電子の量であり、これは水素発生量に対応する。すなわち、log交換電流密度の値が大きければ大きいほど単位面積あたりからの水素発生量が多いことを意味し、交換電流密度の値が大きい物質が水素活性触媒として優れていることを示している。またlog交換電流密度は、水素発生速度の指標でもある。なぜなら、既述のように水素ガス発生の素過程は、水素原子の物質(触媒)表層への吸着(Volmer過程)とこれの水素ガス化後の脱離(Tafel過程)である。水素原子の吸着は物質(触媒)の表層に露出している原子1個に対して1個と決まっている。すなわち、単位面積当たりに吸着できる水素原子の数の上限は、物質(触媒)が決まれば決まってくる。それにもかかわらず水素ガス発生(水素ガス化後の脱離)量が多い(交換電流密度が大きい)ということは、上記の2つの素過程(Volmer過程とTafel過程)の反応の速度が速いということ、すなわち水素発生速度が速いということである。白金のlog交換電流密度が-1.7~-3.4であるので、これと同等の範囲にあれば水素発生触媒として優れている、ということができる。
【0051】
また、水素発生過電圧は、log交換電流密度のように、水素発生の起こりやすさを示すもう一つの指標である。この水素発生過電圧値が0.150Vより小さければ、アルカリ形水電解装置の水素発生電極に好適な水素過電圧を有する物質であるということができる。
【0052】
表2に示す発明例1から19は、本発明に従う実施例である。すなわち、10マイクロメートル以上の厚さのマッキナワイト層が鉄原子を50mass%以上含む電極基材上に得られているため、log交換電流密度は白金と同等で、水素過電圧も0.150Vより小さい。
【0053】
一方で表2に示す比較例1、5、6、10は、基材は鉄原子を50mass%以上含む電極基材であるが、マッキナワイト層を形成する際のチオシアン酸アンモニウム水溶液の濃度が1mass%未満であったため、マッキナワイト層が得られず、水素発生の分極曲線においてlog交換電流密度および過電圧の両方とも望まし特性が得られなかった。
【0054】
比較例2および7は、基材は鉄原子を50mass%以上含む電極基材であるが、マッキナワイト層を形成する際の比液量が50mL/cm2未満であったため、マッキナワイト層が得られず、水素発生の分極曲線において交換電流密度および過電圧の両方とも望ましい特性が得られなかった。
【0055】
比較例3および8は、基材は鉄原子を50mass%以上含む電極基材であるが、膜を形成する際の溶液の温度が60℃以下であったため、マッキナワイト層が得られず、水素発生の分極曲線において交換電流密度および過電圧の両方とも望ましい特性が得られなかった。
【0056】
比較例4および9は、基材は鉄原子を50mass%以上含む電極基材であるが、膜を形成する際の浸漬時間が15時間未満であったため、マッキナワイト膜は得られたが、その厚さが10マイクロメートル未満となった例である。マッキナワイト膜は得られているので、水素発生の分極曲線においてlog交換電流密度と過電圧の両方とも所定の特性が得られた。
【0057】
さらに、これらの比較例4および9の試験片について、水素発生の分極試験において電流密度が1250A/m2(絶対値)に到達後に、そのまま本電流密度に2週間保持した。2週間保持後に溶液から試験片を取り出し、洗浄後、試験片の断面を切り出して、試験片表層のマッキナワイト層の厚さを光学顕微鏡で測定した。測定した視野は、任意の位置の10視野である。この10視野のうち、1マイクロメートル以上のマッキナワイト層が観察された視野の数は、比較例4で3視野、比較例9で5視野であった。残りの視野において、マッキナワイト層は観察されなかった。つまり、マッキナワイト層の厚さが10マイクロメートル未満の場合、2週間の保持のあいだにマッキナワイト層が溶液に溶け出し基材表面が露出する部分がある。このように基材表面が露出した部分が形成されると、もはや水素発生電極として期待される特性は得られない。
【0058】
なお、発明例1及び10においても同様の試験を実施し、表層のマッキナワイト層厚さを測定したが、これらの発明例では欠如が無いことを確認した。
【0059】
【0060】
次に、表1の比較材1及び2を基材として用いた場合を以下に記す。まず、比較材1及び2から上述した手法に従ってそれぞれ2個ずつの試験片を作製した。これら2個の試験片を比液量50mL/cm2、温度61℃の1.0mass%チオシアン酸アンモニウム水溶液中に15時間浸漬した。その結果、薄膜XRDで得たマッキナワイトのピーク数は比較材1及び2ともに5、マッキナワイト層厚さは、比較材1は25マイクロメートル、比較材2は29マイクロメートルであった。
【0061】
同バッチに浸漬したもう一つの試験片を、90℃の初期濃度30mass%KOH水溶液中でカソード側に分極し、電流密度1250A/m2(絶対値)に1週間保持した。このときのKOH水溶液の試験片に対する比液量は1000mL/cm2である。1週間保持後、今度は同条件で電流密度だけアノード側に分極し、電流密度1250A/m2(絶対値)に6時間保持した。
【0062】
以上の過程を経た、基材が比較材1の試験片を、新たに作製した90℃の30mass%KOH水溶液中で水素発生の分極曲線を測定した。掃引速度は5mV/分である。その結果、このときのlog交換電流密度は-4.92、過電圧は1.38Vと、本発明で所期する条件は満足されないものであった。これは、カソード側での分極状態で1週間保持後、アノード側に分極した際に基材からの鉄原子の供給が少ないため、アノード分極中にマッキナワイト膜が再生しなかったためである。また比較材2の試験に対しても比較材1と同様に分極曲線を測定した結果、log交換電流密度は-4.10、過電圧は1.15Vと本発明で所期する条件は満足されないものであった。この原因も比較材1と同様の原因である
【0063】
なお、表2の発明例2及び11を用いて上記の試験を行った結果、発明例ではアノード側に分極した際に基材からの鉄原子の供給が十分であるため、アノード分極中にマッキナワイト膜が十分再生し、log交換電流密度は白金相当であり、過電圧も0.150V未満であることを確認した。
【0064】
最後に、表1の基材例1の表層に特許文献6の実施例に記載の実験1の方法に従ってFe-Ni-W層を形成した試験片(これを比較例11とする)と、発明例5に対し、以下のような追加試験を実施し、表層の触媒層(比較例11ではFe-Ni-W層、発明例5ではマッキナワイト層)の失活の有無を確認した。
【0065】
追加試験とは、90℃の初期濃度30mass%KOH水溶液中にて、
図4に示す分極のサイクルを同一溶液内で30回繰り返す試験である。なお、浸漬電位とは、電流密度がゼロのときの電位のことである。この浸漬電位を固定値としなかったのは、浸漬電位は溶液の濃度、温度及び浸漬する試験片の組み合わせで変化するためである。つまり浸漬電位は分極試験中に時々刻々変化するものである。しかし、あるサイクルの開始時には浸漬電位を決定しなければならないため、あるサイクルの直前のサイクルの最後尾のアノード側からカソード側への電位のスイープ時の測定結果から、浸漬電位を決定することとした。
【0066】
このようなサイクル試験を経た上記2種類の試験片について、上記したlog交換電流密度の求め方に従って分極測定を行った結果、比較例11では触媒層が失活したためlog交換電流密度は-6.23、過電圧も2.22Vと、本発明で所期する条件は満足されないものであった。一方で、発明例5は、このようなサイクルを経てもその途中でマッキナワイト膜が十分再生したため、log交換電流密度は白金相当であり、過電圧も0.150V未満であることを確認した。