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特開2024-119046ビークルのパワーシステムを制御するためのコンピュータ実装方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119046
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ビークルのパワーシステムを制御するためのコンピュータ実装方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240826BHJP
   H01M 8/04992 20160101ALI20240826BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240826BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240826BHJP
   H01M 8/04955 20160101ALI20240826BHJP
   H01M 8/043 20160101ALI20240826BHJP
   B60L 58/40 20190101ALI20240826BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/00 303E
H01M8/04992
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/04955
H01M8/043
B60L58/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024021145
(22)【出願日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】23157806.3
(32)【優先日】2023-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】フレドリク・ブロムグレン
(72)【発明者】
【氏名】リーナス・ノルドホルム
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・スミーデブラント
(72)【発明者】
【氏名】エヴァ・スクヴォール
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ウィルヘルムソン
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA05
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA07
5G503DA08
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
5H125AA03
5H125AC07
5H125AC12
5H125BC11
5H125BD08
5H125BD10
5H125CD05
5H125EE51
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC05
5H127AC15
5H127DA08
5H127DB69
5H127DC42
5H127DC49
(57)【要約】      (修正有)
【課題】燃料電池システム及びエネルギー貯蔵システムを含む、パワーシステムを制御するためのコンピュータ実装方法コンピュータシステム及びビークルを提供する。
【解決手段】燃料電池システム及び1つ以上のバッテリを有するエネルギー貯蔵システムを含む燃料電池電気トラックのパワーシステムにおける方法は、開始時刻及び持続時間に関連する、運転イベント中、ビークルが負荷条件下で動作されると予想される今後の運転イベントを予測することと、負荷条件及び持続時間に基づいて、予測した今後の運転イベント中の燃料電池システムの好ましい動作条件を決定することと、予測した今後の運転イベントの開始時刻前に燃料電池システムの決定された動作条件に応じて、パワーシステムに関連する準備アクションを実行することによって、パワーシステムを制御することと、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビークル(100)のパワーシステム(130)を制御するように構成されたプロセッサデバイス(402)を含むコンピュータシステム(400)であって、前記パワーシステム(130)は、燃料電池システム(110)と、1つ以上のバッテリを有するエネルギー貯蔵システム(120)とを含み、
前記燃料電池システム(110)及び前記エネルギー貯蔵システム(120)は、前記ビークル(100)の1つ以上のエネルギーコンシューマ(140)用の電力を発生させるように適合され、
前記プロセッサデバイス(402)は、さらに、
開始時刻及び持続時間に関連する今後の運転イベントを予測することであって、前記運転イベントは、該運転イベント中、前記ビークル(100)が負荷条件下で動作されると予想されるイベントであり、前記運転イベントを予測することと、
前記負荷条件及び前記持続時間に基づいて前記予測された今後の運転イベント中に前記燃料電池システム(110)の好ましい動作条件を決定することであって、前記好ましい動作条件は、前記燃料電池システム(110)を作動させ続けること、または前記燃料電池システム(110)をオフにすることのうちの1つに対応し、前記好ましい動作条件を決定することと、
前記燃料電池システム(110)の前記決定された好ましい動作条件に応じて、前記パワーシステム(130)の準備アクションを実行することによって、前記パワーシステム(130)を制御することであって、前記準備アクションは、前記予測された今後の運転イベントの前記開始時刻の前に実行され、前記パワーシステム(130)を制御することと、
を行うように構成される、コンピュータシステム。
【請求項2】
コンピュータシステムのプロセッサデバイス(402)によって、ビークル(100)のパワーシステム(130)を制御するためのコンピュータ実装方法であって、
前記パワーシステム(130)は、燃料電池システム(110)と、1つ以上のバッテリを有するエネルギー貯蔵システム(120)とを含み、
前記燃料電池システム(110)及び前記エネルギー貯蔵システム(120)は、前記ビークル(100)の1つ以上のエネルギーコンシューマ(140)用の電力を発生させるように適合され、
前記方法は、
前記プロセッサデバイス(402)によって、開始時刻及び持続時間に関連する今後の運転イベントを予測する(S1)ことであって、前記運転イベントは、該運転イベント中、前記ビークル(100)が負荷条件下で動作されると予想されるイベントであり、前記運転イベントを予測することと、
前記プロセッサデバイス(402)によって、前記負荷条件及び前記持続時間に基づいて前記予測された今後の運転イベント中に前記燃料電池システム(110)の好ましい動作条件を決定する(S2)ことであって、前記好ましい動作条件は前記燃料電池システム(110)を作動させ続けること、または前記燃料電池システム(110)をオフにすることのうちの1つに対応し、前記好ましい動作条件を決定することと、
前記プロセッサデバイス(402)によって、前記燃料電池システムの前記決定された好ましい動作条件に応じて、前記パワーシステム(130)の準備アクションを実行することによって、前記パワーシステム(130)を制御する(S3)ことであって、前記準備アクションは前記予測された今後の運転イベントの前記開始時刻の前に実行され、前記パワーシステム(130)を制御することと、
を含む、方法。
【請求項3】
前記方法は、
前記好ましい動作条件が前記燃料電池システム(110)を作動させ続けることに対応すると決定することに応答して、前記プロセッサデバイス(402)によって、前記予測された今後の運転イベントの前記予測された持続時間全体を通して前記燃料電池システム(110)によって生成されると予想される電力量を推定する(S4)ことと、
前記プロセッサデバイス(402)によって、前記エネルギー貯蔵システム(120)のエネルギー状態レベルが前記予測された今後の運転イベントの前記開始時刻の前に第一レベルまで調整されるような方法で、準備アクションを実行することによって、前記パワーシステム(130)を制御する(S3)ことと、
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一レベルは、前記予測された今後の運転イベント中に、前記燃料電池システム(110)からの前記推定された電力の一部によって、前記エネルギー貯蔵システム(120)が標的エネルギー状態レベルまで充電されることを可能にするエネルギー状態レベルに対応する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記標的エネルギー状態レベルは、前記予測された今後の運転イベントの後に続く予想された運転タスクを完了するのに十分なレベルに対応する、または前記標的エネルギー状態レベルは、前記エネルギー貯蔵システム(120)の完全充電レベルに対応する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記エネルギー貯蔵システム(120)のエネルギー状態レベルが前記予測された今後の運転イベントの前記開始時刻の前に第一レベルまで調整されるような方法で準備アクションを実行することは、前記燃料電池システム(110)からの電力出力を減少させることを含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記好ましい動作条件が前記燃料電池システム(110)をオフにすることに対応すると決定することに応答して、準備アクションを実行することによって前記パワーシステム(130)を制御する(S3)ことは、前記燃料電池システム(110)をオフにする前に前記燃料電池システム(110)の冷却アクションを開始する(S6)ことを含む、請求項2~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記燃料電池システム(110)の前記好ましい動作条件を決定することは、前記今後の運転イベントの前記予測された持続時間を参照時間と比較することを含む、請求項2~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記今後の運転イベントの前記予測された持続時間が前記参照時間より短い場合、前記動作条件は、前記燃料電池システム(110)を作動させ続けることに対応すると決定され、
前記今後の運転イベントの前記予測された持続時間が前記参照時間より長い場合、前記動作条件は前記燃料電池システム(110)をオフにすることに対応すると決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記今後の運転イベントはアイドリングのイベントである、請求項2~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記今後の運転イベントの前記予測は、履歴運転統計データまたは予め設定された走行計画に基づいている、請求項2~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記プロセッサデバイス(402)によって実行される場合、請求項2~11のいずれか1項に記載の方法を実行するためのプログラムコードを含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項13】
請求項2~11のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成された1つ以上の制御ユニットを含む、制御システム。
【請求項14】
前記プロセッサデバイス(402)によって実行されると、前記プロセッサデバイス(402)に請求項2~11のいずれか1項に記載の方法を実行させる命令を含む、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
ビークル(100)であって、
前記ビークル(100)の1つ以上のエネルギーコンシューマ(140)用の電力を発生させるように適合されたパワーシステム(130)を含み、請求項1に記載のコンピュータシステム及び/または請求項13に記載の制御システムをさらに含む、ビークル(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ビークル(vehicle)のパワーシステムの制御に関する。特定の態様では、本開示は、燃料電池システム及びエネルギー貯蔵システムを含む、パワーシステムを制御するためのコンピュータ実装方法に関する。また、本開示は、コンピュータシステム、コンピュータプログラム製品、制御システム、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体、及びビークルに関する。本開示は、他のビークルのタイプの中でも、トラック、バス、及び建設機械などの大型車に適用されることができる。本開示が特定のビークルに関して説明され得るが、本開示は、任意の特定のビークルに限定されない。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池システムは、異なる用途、例えば、燃料電池電気自動車では電力を発生するための電源の1つとして考えられてきた。一般的には、燃料電池システムは、燃料電池電気自動車の様々なコンポーネントに電力を供給するためのエネルギー貯蔵システムと共に使用される。電力を、1つまたは複数の電動機に供給して、ビークルに推進力を発生させるために使用し得る。また、ビークルの空気調和システムの補助電源コンシューマ、例えば電動機に電力を供給するために使用されてもよい。電動機及び補助電源コンシューマは、ビークルのエネルギーコンシューマとみなされ得、ビークルの動作中、エネルギーコンシューマからの様々な電力需要が存在し得る。
【0003】
例えば、ビークルが低負荷条件(すなわち、アイドリング状態)で動作している場合、エネルギーコンシューマからの電力需要は一般に比較的低く、低負荷動作条件中に燃料電池システムをオフにし、燃料を節約し、燃料電池スタックの摩耗を低減させ得る。エネルギー貯蔵システムが十分な電力を発生させることができない場合、燃料電池システムを再びオンにする必要がある場合がある。しかしながら、燃料電池システムを頻繁にオン及びオフにすることにより、燃料電池システムの燃料電池スタックの経年劣化プロセスが促進される可能性がある。経年劣化プロセスは、燃料電池システムの効率を低下させ得ることによって、燃料消費を直接増加させる可能性がある。また燃料電池システムの耐用年数を低減させることがある。
【0004】
上記に鑑みて、特にある負荷条件中にビークルを動作させる場合、燃料電池システム及びエネルギー貯蔵システムの制御に関する改良された技術を開発する必要があることが認識されてきている。
【発明の概要】
【0005】
本開示の第一態様によれば、請求項1に記載のビークルのパワーシステムを制御するように構成されたプロセッサデバイスを含むコンピュータシステムが提供される。パワーシステムは、燃料電池システムと、1つ以上のバッテリを有するエネルギー貯蔵システムとを含み、燃料電池システム及びエネルギー貯蔵システムは、ビークルの1つ以上のエネルギーコンシューマ用の電力を発生させるように適合される。
プロセッサデバイスは、さらに、
開始時刻及び持続時間に関連する今後の運転イベントを予測することであって、運転イベントは、運転イベント中、ビークルが負荷条件下で動作されると予想されるイベントであり、運転イベントを予測することと、
負荷条件及び持続時間に基づいて予測された今後の運転イベント中に燃料電池システムの好ましい動作条件を決定することであって、好ましい動作条件は、燃料電池システムを作動させ続けること、または、燃料電池システムをオフにすることのうちの1つに対応し、好ましい動作条件を決定することと、
燃料電池システムの決定された好ましい動作条件に応じて、パワーシステムの準備アクションを実行することによって、パワーシステムを制御することであって、準備アクションは予測された今後の運転イベントの開始時刻の前に実行され、前記パワーシステムを制御することと、を行うように構成される。
【0006】
本開示の第一態様は、少なくともいくつかの態様では、パワーシステムを制御するために改善されたコンピュータシステムを見いだそうとするものであり得る。技術的な利点は、好ましい動作条件に応じて準備アクション、すなわち、燃料電池システムを作動させ続けることか、燃料電池システムをオフにすることかいずれかを実行することによって、燃料電池システム及び/またはエネルギー貯蔵システムが今後の運転イベントの準備をより良好にし得ることを含み得る。その結果、例として、燃料電池システムの不要な劣化を回避し得る、及び/または浪費するエネルギーを少なくし得る。
【0007】
好ましい動作条件の決定は、開始時刻及び持続時間に関連する今後の運転イベントの予測に基づいている。例えば、燃料電池システムをオフにすることによって、燃料を節約するだけでなく、システムの摩耗を低減させることが可能であってよい。しかしながら、燃料電池システム自体をオン/オフにするアクションは、経年劣化プロセスを促進し得る。したがって、燃料経済性の利点と経年劣化プロセスの促進の欠点との間のトレードオフを評価することが有利であり得る。このように、いくつかの例では、負荷条件及び持続時間に基づいて、予測された今後の運転イベント中の燃料電池システムの好ましい動作条件を決定することは、燃料経済性と燃料電池システムの経年劣化プロセスの促進との間のトレードオフを評価することを含み得る。いくつかの例では、短時間の運転イベントでは、節約される燃料は、燃料電池システムの劣化ほど大きくない可能性がある。この場合、燃料電池システムを作動させ続けることが好ましい場合があり、他のシナリオでは、逆である場合がある。これにより、不要な場合に燃料電池システムをオフにする必要がなくなり得、燃料電池システムの劣化をさらに低減させ得る。
【0008】
本明細書の運転イベントは、運転イベント中、ビークルが負荷条件下で動作すると予想されるイベントとして理解されたい。負荷条件の間の負荷は、閾値より低い場合があり、及び/または基準を満たす場合がある。例えば、閾値を下回ること、及び/または基準を満たすことは、ビークルが移動していないこと、またはイグニッションスイッチがオン状態(すなわち、アイドリング状態)でビークルが駐車していることに対応し得る。したがって、運転イベントは、ビークルが移動中である場合のみに限定されない。その代わりに、様々なビークルのサブシステム及びコンポーネントが電源によって駆動され、駆動状態中である全ての状況を包含してもよい。そのような運転イベント中、1つ以上のエネルギーコンシューマから要求される電力は、比較的低い場合があるため、燃料電池システムがオフになると、エネルギー貯蔵システムによってビークルを完全に動作させることが可能であってよい。この場合、駆動イベント中に燃料電池システムをオフ及びオンにする必要があるのは一回だけであり得る。
【0009】
本開示の第二態様によれば、請求項2に記載のプロセッサデバイスによってビークルのパワーシステムを制御するためのコンピュータ実装方法が提供される。パワーシステムは、燃料電池システムと、1つ以上のバッテリを有するエネルギー貯蔵システムとを含み、燃料電池システム及びエネルギー貯蔵システムは、ビークルの1つ以上のエネルギーコンシューマ用の電力を発生させるように適合される。
方法は、
プロセッサデバイスによって、開始時刻及び持続時間に関連する今後の運転イベントを予測することであって、運転イベントは、運転イベント中、ビークルが負荷条件下で動作されると予想されるイベントであり、運転イベントを予測することと、
プロセッサデバイスによって、負荷条件及び持続時間に基づいて予測された今後の運転イベント中に燃料電池システムの好ましい動作条件を決定することであって、動作条件は燃料電池システムを作動させ続けること、または燃料電池システムをオフにすることのうちの1つに対応し、好ましい動作条件を決定することと、
プロセッサデバイスによって、燃料電池システムの決定された動作条件に応じて、パワーシステムの準備アクションを実行することによって、パワーシステムを制御することであって、準備アクションは予測された今後の運転イベントの開始時刻の前に実行され、パワーシステムを制御することと、を含む。
【0010】
本開示の第二態様は、少なくともいくつかの態様では、パワーシステムを制御するために改善された方法を見いだそうとするものであり得る。技術的な利点は、好ましい動作条件に応じて準備アクション、すなわち、燃料電池システムを作動させ続けることか、燃料電池システムをオフにすることかいずれかを実行することによって、燃料電池システム及び/またはエネルギー貯蔵システムが今後の運転イベントの準備をより良好にし得ることを含み得る。その結果、例として、燃料電池システムの不要な劣化を回避し得る、及び/または浪費するエネルギーを少なくし得る。
【0011】
好ましい動作条件の決定は、開始時刻及び持続時間に関連する今後の運転イベントの予測に基づいている。例えば、燃料電池システムをオフにすることによって、燃料を節約するだけでなく、システムの摩耗を低減させることが可能であってよい。しかしながら、燃料電池システム自体をオン/オフにするアクションは、経年劣化プロセスを促進し得る。したがって、燃料経済性の利点と経年劣化プロセスの促進の欠点との間のトレードオフを評価することが有利であり得る。このように、いくつかの例では、負荷条件及び持続時間に基づいて、予測された今後の運転イベント中の燃料電池システムの好ましい動作条件を決定することは、燃料経済性と燃料電池システムの経年劣化プロセスの促進との間のトレードオフを評価することを含み得る。いくつかの例では、短時間の運転イベントにおいて、節約される燃料は、燃料電池システムの劣化ほど大きくない可能性がある。この場合、燃料電池システムを作動させ続けることが好ましい場合があり、他のシナリオでは、逆である場合がある。これにより、不要な場合に燃料電池システムをオフにする必要がなくなり得、燃料電池システムの劣化をさらに低減させ得る。
【0012】
本明細書に開示されるコンピュータ実装方法は、1つ以上の電子制御ユニットなどのプロセッサデバイスに実行されてもよい。プロセッサデバイスは、今後の運転イベント及び開始時刻だけでなく、持続時間を予測するように構成される予測ユニットを含み得る。プロセッサデバイスは、準備アクションを様々なシステム、例えば、燃料電池システム、及び/または、燃料電池システム及びエネルギー貯蔵システムと通信するための通信ユニットをさらに含み得る。
【0013】
いくつかの例では、少なくとも1つの好ましい例を含み、任意選択で、方法は、好ましい動作条件が燃料電池システムを作動させ続けることに対応すると決定することに応答して、プロセッサデバイスによって、予測された今後の運転イベントの予測された持続時間全体を通して燃料電池システムによって生成されると予想される電力量を推定することと、プロセッサデバイスによって、エネルギー貯蔵システムのエネルギー状態レベルが予測された今後の運転イベントの開始時刻の前に第一レベルまで調整されるような方法で、準備アクションを実行することによって、パワーシステムを制御することと、をさらに含む。
【0014】
技術的な利点は、予測された今後の運転イベントの開始時刻の前にエネルギー貯蔵システムのエネルギー状態レベルが第一レベルまで調整されるようにパワーシステムを制御することによって、燃料電池システムが発生させる過剰な電力を浪費するリスクが低減し得ることを含み得る。例えば、今後の運転イベントの開始前にエネルギー貯蔵システムのエネルギー状態レベルを第一レベルまで調整することによって、燃料電池システムが発生させるより大量の過剰な電力を使用して、エネルギー貯蔵システムを充電させ得る。
【0015】
いくつかの例では、少なくとも1つの好ましい例を含み、任意選択で、第一レベルは、予測された今後の運転イベント中に、燃料電池システムから推定された電力の一部によって、エネルギー貯蔵システムが標的エネルギー状態レベルまで充電されることを可能にするエネルギー状態レベルに対応する。本明細書では、推定された電力の一部は、過剰電力の量を指し得る。例えば、これは、燃料電池システムが発生させると予想され推定された電力から、1つ以上のエネルギーコンシューマから必要とされる実際の電力を減算することによって決定され得る。
【0016】
いくつかの例では、少なくとも1つの好ましい例を含み、任意選択で、標的エネルギー状態レベルは、予測された今後の運転イベントの後に続く予想された運転タスクを完了するのに十分なレベルに対応する。加えて、または代替として、標的エネルギー状態レベルは、エネルギー貯蔵システムの完全充電レベルに対応する。本明細書では、エネルギー貯蔵システムをその物理的限界まで充電した状態に保つことにより、エネルギー貯蔵システムがより急速に劣化し得るため、完全充電レベルは、必ずしも100%まで充電されることを指すとは限らない。その代わりに、それは、エネルギー貯蔵システムが最大許容レベル、例えば、85%~95%まで充電されるレベルを指す場合もある。
【0017】
いくつかの例では、少なくとも1つの好ましい例を含み、任意選択で、エネルギー貯蔵システムのエネルギー状態レベルが予測された今後の運転イベントの開始時刻の前に第一レベルまで調整されるような方法で準備アクションを実行することは、燃料電池システムからの電力出力を減少させることを含む。燃料電池システムからの電力出力は減少され得ると、エネルギー貯蔵システムによって供給される電力は増加し得る。このようにして、エネルギー貯蔵システムのエネルギー状態レベルは、急速に低下し得、今後の運転イベントの前に第一レベルまで調整されることができてもよい。
【0018】
代替として、または加えて、エネルギー貯蔵システムのエネルギー状態レベルは、エネルギー散逸システムの使用によって調整され得る。エネルギー散逸システムは、ブレーキ抵抗器を含み得る。この場合、電力は熱として散逸され得る。いくつかの例では、熱は、ビークルのセクション/コンポーネントを加熱するために、例えば、車室を加熱するために使用され得る。
【0019】
いくつかの例では、少なくとも1つの好ましい例を含み、任意選択で、方法は、好ましい動作条件が燃料電池システムをオフにすることに対応すると決定することに応答して、準備アクションを実行することによってパワーシステムを制御することは、燃料電池システムをオフにする前に燃料電池システムの冷却アクションを開始することをさらに含む。
【0020】
技術的な利点は、燃料電池システムをオフにする前に燃料電池システムの冷却アクションを開始することによって、燃料電池システムの温度が運転イベントの完了時に望ましい範囲内にあり得ることを含み得る。その後、燃料電池システムは、望ましい動作温度で動作し得る。その結果、システム劣化のリスクがさらに低下し得る。いくつかの例では、プロセッサデバイスは、冷却アクションを開始するために冷却システムと通信し得る。
【0021】
いくつかの例では、少なくとも1つの好ましい例を含み、任意選択で、燃料電池システムの好ましい動作条件を決定することは、今後の運転イベントの予測された持続時間を参照時間と比較することを含む。参照時間は経年劣化要因に関連付けられ得、持続時間が参照時間よりも短い場合、燃料電池システムを作動させ続けることが、再びオフにすること、及びオンにすることよりも経年劣化が少なくなり得る。技術的な利点は、今後の運転イベントの予測された持続時間を参照時間と比較することによって、燃料電池システムにとってシステムの経年劣化に関して最も有益である好ましい条件を決定することが可能になり得ることを含み得る。
【0022】
いくつかの例では、少なくとも1つの好ましい例を含み、任意選択で、今後の運転イベントの予測された持続時間が参照時間より短い場合、動作条件は、燃料電池システムを作動させ続けることに対応すると決定され、今後の運転イベントの予測された持続時間が参照時間より長い場合、動作条件は燃料電池システムをオフにすることに対応すると決定される。
【0023】
いくつかの例では、少なくとも1つの好ましい例を含み、任意選択で、今後の運転イベントの予測は、履歴運転統計データまたは予め設定された走行計画に基づいている。
【0024】
本開示の第三態様によれば、本開示の第二態様による方法を実行するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【0025】
本開示の第四態様によれば、本開示の第二態様による方法を実行するように構成された1つ以上の制御ユニットを含む制御システムが提供される。
【0026】
本開示の第五態様によれば、命令を含む非一時的なコンピュータ可読記憶媒体が提供される。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、プロセッサデバイスによって実行されると、プロセッサデバイスに本開示の第二態様による方法を実行させる命令を含む。
【0027】
本開示の第六態様によれば、ビークルの1つまたは複数のエネルギーコンシューマ用の電力を発生するように適合されたパワーシステムを含むビークルが提供される。ビークルは、本開示の第一態様によるコンピュータシステム及び/または本開示の第四態様による制御システムをさらに含む。
【0028】
本開示の態様、例(いずれかの好ましい例を含む)、及び/または添付の特許請求の範囲は、当業者には明らかなように、互いに適切に組み合わされ得る。さらなる特徴及び利点は、以下の説明、特許請求の範囲、及び図面に開示されており、一部は、それらから当業者にとって容易に明らかであり、または本明細書に記載の本開示を実施することによって認識されよう。
【0029】
また本明細書では、上述の技術的な利点に関連するコンピュータシステム、制御ユニット、コードモジュール、コンピュータ実装方法、コンピュータ可読媒体、及びコンピュータプログラム製品も開示される。
【0030】
以下、添付図面を参照して、例として引用した本開示の態様をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本開示の一態様による、パワーシステムを含む例示的なビークルの概略側面図である。
図2図1に示されるパワーシステムを制御する例示的な方法を示すフローチャートである。
図3】開始時刻及び持続時間に関連する今後の運転イベントを予測するための履歴運転統計データの例示的な使用を示すグラフである。
図4】運転イベントの開始前に、準備アクションが実行された一例を、準備アクションが実行されていない一例と比較して示すグラフである。
図5】一例による、本明細書に開示される例を実装するための例示的なコンピュータシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図面は概略的であり、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。
【0033】
以下に記載の態様は、当業者が本開示を実施することを可能にするために必要な情報を表す。
【0034】
図1は、燃料電池電気トラックによって例示される、ビークル100を示す。燃料電池電気トラックが示されているが、本開示はこのタイプのビークルに限定されず、バス、建設機械、例えばホイールローダまたはショベルなどの他の電気自動車にも使用されてよいことに留意されたい。いくつかの例では、ビークルは、海洋船舶、例えば、船または舟であってもよい。
【0035】
ビークル100は、パワーシステム130を含む。パワーシステム130は、燃料電池システム110と、1つ以上のバッテリを有するエネルギー貯蔵システム120とを含み、それらは、電力を発生させるように適合される。そして、電力は、例えば1つ以上のケーブル(図示せず)を使用して、1つ以上のエネルギーコンシューマ140に供給される。いくつかの例では、1つ以上のエネルギーコンシューマ140は、ビークル100を推進するための、及び/またはビークル100の補助電気デバイスにエネルギーを与えるための推進力を発生するように構成された、1つ以上の電動機(図示せず)を含んでよい。ビークル100の動作中、1つ以上のエネルギーコンシューマ140からの様々な電力需要が存在し得る。ビークル100は、制御システム402をさらに含む。制御システム402は、1つ以上の制御ユニットを含むことができ、1つ以上のプロセッサデバイス402とも称され得る。1つ以上のプロセッサデバイス402は、本開示の一例による方法を使用して、パワーシステム130を制御するように構成され得る。
【0036】
いくつかの例では、ビークル100は、様々な輸送ミッションを実行するように構成される輸送トラックであってもよい。荷積み及び/または荷降ろしタスクを実行する場合、ビークル100は、1つのアイドリングストップと呼ばれるアイドリング状態で荷積みする場所に駐車することがある。アイドリングストップ中、燃料電池システム110はオフにされ得、ビークルを動作させるのに必要なエネルギーは、エネルギー貯蔵システム120、例えばバッテリによって、エネルギー貯蔵システム120のエネルギー状態レベルが閾値より低くなるまで、完全に供給され得る。その後、燃料電池システム110は、例えばエネルギー貯蔵システム120を充電するために、再びオンにされ得る。このサイクルは、燃料電池システムのオン/オフサイクルと呼ばれてもよく、例えば、アイドリングストップ中に、燃料電池システム110は、アイドリングストップが続く時間と、アイドリングストップ全体を通して必要な電力とに応じて、複数回オフ及びオンになることがある。プロセッサデバイス402は、燃料経済性と燃料電池システムの経年劣化プロセスの促進との間のトレードオフを評価し、アイドリングストップ中に好ましいのは、燃料電池システム110を作動させ続けることか、燃料電池システム110をオフにすることかを決定するように構成され得る。したがって、プロセッサデバイス402は、アイドリングストップの開始前に、決定された動作条件に応じて準備アクションを開始し得る。いくつかの他の例では、ビークルは、建設機械(例えば、クレーン)であってもよい。ビークルは、比較的低い負荷条件下で動作する、様々な建設作業を行う建設現場に駐車され得る。
【0037】
図2は、パワーシステム130を制御する例示的な方法を示すフローチャートである。本方法は、任意のタイプの電気自動車、例えば図1に示されるトラック100に適用され得る。本方法は、以下に列挙されるステップを含み、特に明記しない限り、任意の適切な順序で行われ得る。本方法は、プロセッサデバイス402によって実行され得る。
【0038】
S1において、開始時刻及び持続時間に関連する今後の運転イベントを予測し、運転イベントは、運転イベント中、ビークル100が負荷条件下で動作すると予想されるイベントである。負荷条件は、負荷が閾値より低い場合、及び/または負荷が基準を満たす場合の条件であってもよい。例えば、負荷が閾値及び/または基準を下回ることは、ビークル100が移動していないこと、またはイグニッションスイッチがオン状態(すなわち、アイドリング状態)でビークルが駐車していることに対応し得る。
【0039】
予測は、履歴運転統計データに基づいて行われ得る。図3は、履歴統計データの例を示しており、それは、1日の異なる期間中のビークル速度プロファイルを示している。図3からわかるように、ビークル100は、ビークル速度がゼロである停車を、2回の比較的短時間(それぞれ10:00前後及び16:00前後)に行った。ビークル100は、一例として、これらの時点で荷積み及び荷降ろしタスクを実行し得る。さらに、ビークル100は、12:00から14:00の間に1回の比較的長時間の停車を行った。上述のように、ビークル100は、輸送トラックであってもよく、毎日繰り返される運転スケジュールを有してもよい。したがって、ビークル100が、短時間の停車をそれぞれ10:00前後及び16:00前後に行うと予想されること、ならびに毎日12:00から14:00の間により長時間の停車を行うと予想されることを予測することが可能であり得る。停車ごとの持続時間は、履歴統計データに従って推定されてもよい。
【0040】
代替または追加で、各トリップ(trip)の開始時に走行計画を定義する場合、前述の情報を予測することが可能であり得る。予測はビークルのトリッププランナーによって行われてもよく、関連情報は、プロセッサデバイス402、例えば、プロセッサデバイス402の通信ユニット(図示せず)に送信されてもよい。
【0041】
S2において、本方法は、負荷条件及び持続時間に基づいて予測された今後の運転イベント中に燃料電池システム110の好ましい動作条件を決定することをさらに含み、動作条件は燃料電池システム110を作動させ続けること、または燃料電池システム110をオフにすることのうちの1つに対応する。
【0042】
例えば、プロセッサデバイス402は、燃料節約の利点と、燃料電池システム110をオフ及びオンにしたための経年劣化の促進の欠点との間のトレードオフを評価し得る。プロセッサデバイス402は、燃料電池システム110の劣化と比較して節約された燃料の量を評価し、そこから好ましい動作条件を決定してもよい。いくつかの例では、プロセッサデバイス402は、今後の運転イベントの予測された持続時間を参照時間と比較し得、持続時間が参照時間よりも短い場合、再び燃料電池システム110をオフ及びオンにすることよりも、燃料電池システム110を作動させ続けることが経年劣化を少なくし得る。したがって、今後の運転イベントの予測された持続時間が参照時間より短い場合、動作条件は、燃料電池システム110を作動させ続けることに対応すると決定され、今後の運転イベントの予測された持続時間が参照時間より長い場合、動作条件は、燃料電池システム110をオフにすることに対応すると決定され得る。
【0043】
S3において、本方法は、予測された今後の運転イベントの開始時刻前に燃料電池システム110の決定された動作条件に応じて、パワーシステム130に関連する準備アクションを実行することによって、パワーシステム130を制御することをさらに含む。
【0044】
好ましい動作条件が燃料電池システム110を作動させ続けることに対応すると決定することに応答して、プロセッサデバイスは、S4において、予測された今後の運転イベントの予測された持続時間全体を通して燃料電池システム110によって発生すると予想される電力を推定することを実行し得る。推定に基づいて、エネルギー貯蔵システムのエネルギー状態レベルが予測された今後の運転イベントの開始時刻の前に第一レベルまで調整されるような方法で、準備アクションを実行し得る。
【0045】
これは、アイドリングストップ中に、燃料電池システム110からの最小電力出力が通常、1つ以上のエネルギーコンシューマ140から要求される実際の電力よりも高いという要因によるものである。燃料電池システム110によって発生する過剰な電力は、エネルギー貯蔵システム120のエネルギー状態レベルが閾値レベル、例えば、最大許容値に達するまで、エネルギー貯蔵システム120を充電するために使用されてもよい。燃料電池システム110は、オフになるか、過剰な電力が浪費された状態で電力を発生させ続けるかいずれかであってよい。運転イベントの予測された持続時間全体を通して燃料電池システム110が発生させると予想される電力を推定することによって、過剰な可能性のある電力量を推定し、その後、エネルギー貯蔵システム120のエネルギー状態レベルを事前に適切なレベルまで調整することが可能であり得、その結果、燃料電池システム110は運転イベント中に電力の少なくとも一部をエネルギー貯蔵システム120に伝達することができ、エネルギー貯蔵システム120は運転イベントの終了まで閾値レベルに達し得ない。このようにして、燃料電池システム110をオフにする必要がなく、過剰な電力が全く、またはほとんど浪費されない。
【0046】
次いで、エネルギー貯蔵システム120は、燃料電池システム110が発生させる過剰な電力によって、運転イベントの終了時に標的レベルまで充電され得る。標的エネルギー状態レベルは、予測された今後の運転イベントの後に続く、予想された運転タスクを完了するのに十分であり得る。代替として、または加えて、標的エネルギー状態レベルは、エネルギー貯蔵システム120の完全充電レベルに対応し得る。
【0047】
いくつかの例では、準備アクションは、S5において、燃料電池システム110からの電力出力を減少させることを含み得る。燃料電池システム110からの電力出力は減少され得ると、エネルギー貯蔵システム120によって供給される電力は増加し得る。このようにして、エネルギー貯蔵システム120のエネルギー状態レベルは急速に低下し得、運転イベントの前に適切なレベルまで調整されることができてもよい。
【0048】
代替として、または加えて、エネルギー貯蔵システム120のエネルギー状態レベルは、エネルギー散逸システムの使用によって調整され得る。エネルギー散逸システムは、ブレーキ抵抗器を含み得る。この場合、電力は熱として散逸され得る。
【0049】
図4は、予測された今後の運転イベントの開始前に準備アクションが実行された一例を、今後の運転イベントの開始前に準備アクションが実行されていない一例と比較して示す。
【0050】
破線は、準備アクションが実行されていないシナリオを表す。この場合、エネルギー貯蔵システム120の充電状態レベルは、事前に適切なレベルまで低下しない。その結果、エネルギー貯蔵システム120は、運転イベントの中間にある点Bで完全に充電され得る。この時点で、燃料電池システム110は、オフになり得、燃料電池システム110がさらに経年劣化し得るか、過剰な電力が浪費された状態で作動し続け得るかいずれかであってもよい。実線は、準備アクションが実行されたシナリオを表す。エネルギー貯蔵システム120の充電状態レベルは運転イベントの開始前に適切なレベルまで低下し、その結果、エネルギー貯蔵システム120は、運転イベントの終了まで完全に充電されない。したがって、燃料電池システム110は、B点でオフになる必要はなく、電力は浪費されない。
【0051】
好ましい動作条件が燃料電池システム110をオフにすることに対応すると決定することに応答して、準備アクションを実行することによってパワーシステムを制御することは、S6において、燃料電池システム110をオフにする前に燃料電池システム110の冷却アクションを開始することを含み得る。
【0052】
プロセッサデバイス402は、冷却システム(図示せず)と通信して、冷却アクションを開始し得る。このようにして、燃料電池システムの温度は、運転イベントの完了時に望ましい範囲内にあり得る。燃料電池システム110は、その後、望ましい動作温度で動作し得るため、システム劣化のリスクはさらに低減し得る。
【0053】
燃料電池システム110をオフにする場合、できる限り長くエネルギー貯蔵システム120によってビークル100を動作させることが好ましい場合があるため、運転イベントの終了前に燃料電池システム110をオンにする必要はない。したがって、燃料電池システム110をオフにする前に、エネルギー貯蔵システム120を完全充電レベルまで充電することが有利であり得る。この場合、ビークル100は、エネルギー貯蔵システム120によって運転イベント全体を通して動作し得る。
【0054】
S4、S5及びS6は、これらのアクションが任意選択であることを意味する、破線のボックスによって図2に示される。
【0055】
本開示は、また、例えば、図5に示されるような、コンピュータシステム400に関する。コンピュータシステムは、ビークルのパワーシステムを制御するように構成されたプロセッサデバイス402を含む。パワーシステム130は、燃料電池システム110と、1つ以上のバッテリを有するエネルギー貯蔵システム120とを含み、燃料電池システム110及びエネルギー貯蔵システム120は、ビークル100の1つ以上のエネルギーコンシューマ140用の電力を発生させるように適合される。プロセッサデバイス402は、さらに、
開始時刻及び持続時間に関連する今後の運転イベントを予測することであって、運転イベントはイベント中、ビークル100が負荷条件下で動作すると予想されるイベントである、予測することと、
負荷条件及び持続時間に基づいて予測された今後の運転イベント中に燃料電池システム110の好ましい動作条件を決定することであって、好ましい動作条件は燃料電池システム110を作動させ続けること、または燃料電池システム110をオフにすることのうちの1つに対応する、決定することと、
燃料電池システム110の決定された好ましい動作条件に応じて、パワーシステム130の準備アクションを実行することによって、パワーシステム130を制御することであって、準備アクションは予測された今後の運転イベントの開始時刻の前に実行される、制御することと、を行うように構成される。
【0056】
コンピュータシステム400は、少なくとも1つのコンピューティングデバイスまたは電子デバイスを含み得、これは、ファームウェア、ハードウェアを含むこと、及び/または本明細書に記載の機能を実装するためのソフトウェア命令を実行することができる。コンピュータシステム400は、プロセッサデバイスとも呼ばれ得る、図1に示される制御ユニット402のような1つ以上の電子制御ユニット402、メモリ404、及びシステムバス406を含み得る。コンピュータシステム400は、制御ユニット402を有する少なくとも1つのコンピューティングデバイスを含んでもよい。システムバス406は、メモリ404及び制御ユニット402を含むが、それらに限定されない、システムコンポーネントにインタフェースを提供する。制御ユニット402は、データもしくは信号処理を行うための、またはメモリ404に格納されたコンピュータコードを実行するための任意の数のハードウェアコンポーネントを含み得る。制御ユニット402(例えば、プロセッサデバイス)は、例えば、本明細書に記載の機能を実行するように設計された、汎用プロセッサ、特定用途向けプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、処理コンポーネントを含む回路、分散処理コンポーネントの群、処理用に構成された分散コンピュータの群、もしくは他のプログラマブルロジックデバイス、ディスクリートゲートもしくはトランジスタロジック、ディスクリートハードウェアコンポーネント、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。制御ユニットは、プログラム可能なデバイスの動作を制御するコンピュータ実行可能コードをさらに含んでもよい。
【0057】
システムバス406は、メモリバス(メモリコントローラの有り無しで)、ペリフェラルバス、及び/またはローカルバスに、様々なバスアーキテクチャのいずれかを使用して、さらに相互接続し得る、いくつかの種類のバス構造のうちのいずれかであり得る。メモリ404は、本明細書に記載の方法を完了するまたは容易にするためのデータ及び/またはコンピュータコードを格納するための1つまたは複数のデバイスであり得る。メモリ404は、データベースコンポーネント、オブジェクトコードコンポーネント、スクリプトコンポーネント、または本明細書での様々なアクティビティをサポートするための他のタイプの情報構造体を含み得る。任意の分散型またはローカルメモリデバイスは、本明細書のシステム及び方法によって利用され得る。メモリ404は、制御ユニット402に(例えば、回路、または任意の他の有線、無線、もしくはネットワーク接続を介して)通信可能に接続されてもよく、本明細書に記載の1つ以上のプロセスを実行するためのコンピュータコードを含んでもよい。メモリ404は、不揮発性メモリ408(例えば、読み出し専用メモリ(ROM)、消去プログラム可能な読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的に消去プログラム可能な読み出し専用メモリ(EEPROM)など)、及び揮発性メモリ410(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM))、または機械実行可能命令もしくはデータ構造体の形式で所望のプログラムコードを搬送するもしくは格納するために使用されることができ、制御ユニット402を有するコンピュータもしくは他のマシンによってアクセスされることができる任意の他の媒体を含んでもよい。基本入出力システム(BIOS)412は、不揮発性メモリ408に格納され得、コンピュータシステム400内の素子間で情報を転送させるのを助ける基本ルーチンを含むことができる。
【0058】
コンピュータシステム400は、例えば、内蔵または外付けのハードディスクドライブ(HDD)(例えば、拡張統合ドライブエレクトロニクス(EIDE)またはシリアルアドバンストテクノロジーアタッチメント(SATA))、格納用のHDD(例えば、EIDEまたはSATA)、フラッシュメモリなどを含み得る、ストレージデバイス414などの非一時的なコンピュータ可読記憶媒体をさらに含んでもよく、またはそれに結合されてもよい。ストレージデバイス414、ならびにコンピュータ可読媒体及びコンピュータ使用可能媒体に関連する他のデバイスは、データ、データ構造体、コンピュータ実行可能命令などの不揮発性のストレージを提供し得る。
【0059】
いくつかのモジュールは、本明細書に記載の機能を全体的にまたは部分的に実装するために、ソフトウェアとして実装されること、及び/または回路にハードコーディングされることができる。モジュールは、オペレーティングシステム416及び/または1つ以上のプログラムモジュール418を含み得る、ストレージデバイス414及び/または揮発性メモリ410に格納され得る。本明細書に開示される例の全てまたは一部は、制御ユニット402に本明細書に記載されるステップを実行させるための複雑なプログラミング命令(例えば、複雑なコンピュータ可読プログラムコード)を含む、ストレージデバイス414など、一時的または非一時的なコンピュータ使用可能またはコンピュータ可読記憶媒体(例えば、単一媒体または複数媒体)に格納されるコンピュータプログラム製品420として実装され得る。したがって、コンピュータ可読プログラムコードは、制御ユニット402によって実行される場合、本明細書で説明される例の機能を実装するためのソフトウェア命令を含むことができる。制御ユニット402は、図2に示される制御システム402などに、本明細書に記載の機能を実装するコンピュータシステム400のコントローラまたは制御システムとして機能し得る。
【0060】
またコンピュータシステム400は、入力デバイスインタフェース422(例えば、入力デバイスインタフェース及び/または出力デバイスインタフェース)を含んでもよい。入力デバイスインタフェース422は、キーボード、マウス、タッチセンシティブ面などからの命令を実行する場合、コンピュータシステム400に通信される入力及び選択を受信するように構成され得る。これらのような入力デバイスは、システムバス406に結合された入力デバイスインタフェース422を介してプロセッサデバイス402に接続されてもよいが、パラレルポート、Institute of Electrical and Electronic Engineers(IEEE)1394シリアルポート、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポート、IRインタフェースなどの他のインタフェースを介して接続されることができる。コンピュータシステム400は、ディスプレイ、ビデオディスプレイユニット(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)または陰極線管(CRT))などに、出力を転送するように構成された出力デバイスインタフェース424を含み得る。またコンピュータシステム400は、適宜または要望通り、ネットワークと通信するのに適した通信インタフェース426を含んでもよい。
【0061】
本明細書の例示的な態様のいずれかに記載の動作ステップは、例及び議論を提供するために説明される。ステップは、ハードウェアコンポーネントによって実行されてもよく、プロセッサにステップを実行させるための機械実行可能命令に具現化されてもよく、またはハードウェア及びソフトウェアの組み合わせによって実行されてもよい。方法ステップの特定の順序が示されまたは説明され得るが、ステップの順序は異なり得る。加えて、2つ以上のステップは、並行して、または部分的に並行して実行され得る。
【0062】
本明細書で使用される専門用語は、特定の態様を説明する目的のみであり、本開示を限定するようには意図されていない。本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明らかに示さない限り、複数形も含むことを意図する。本明細書で使用される場合、用語「及び/または」は、関連する列挙された項目の1つ以上のあらゆる全ての組合せを含む。「含む/備える(comprises)」、「含んでいる/備えている(comprising)」、「含む(includes)」及び/または「含んでいる(including)」という用語は、本明細書で使用されているときには、述べられている特徴、完全体、アクション、ステップ、操作、要素、及び/またはコンポーネントの存在を明示するが、1つ以上のその他の特徴、完全体、アクション、ステップ、操作、要素、コンポーネント、及び/またはそれらの群の存在を排除しないことが理解されよう。
【0063】
用語、第1の、第2の等は、種々の要素を説明するために本明細書で使用されてよいが、これらの要素がこれらの用語によって制限されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、ある要素を別の要素と区別するためだけに使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素は第2の要素を称され、同様に第2の要素は第1の要素と称されるであろう。
【0064】
「より下の」または「より上の」または「上部」または「下部」または「水平方向」または「垂直方向」などの用語は、本明細書では、図に示されたある要素に対する別の要素の関係を記述するために使用され得る。これらの用語及び上記で論じたそれらの用語が図に示される向きに加えて、デバイスの異なる向きを包含することを意図したものであることが理解されよう。ある要素が別の要素に「連結されている」または「結合されている」と称される場合、その要素は、他の要素に直接連結されても、もしくは結合されてもよく、または介在する要素が存在してもよい。これとは対照的に、ある要素が別の要素に「直接連結されている」または「直接結合されている」と称される場合、介在する要素は存在しない。
【0065】
特に定義されない限り、本明細書で用いる全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語が、本明細書及び関連技術の文脈でそれらの意味と調和する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書でそのように明示的に定義されない限り、理想化されたまたは過度に形式的な意味では解釈されないことがさらに理解されよう。
【0066】
当然のことながら、本開示は、前述して図面に例示した態様に限定されず、むしろ、当業者であればわかるように、本開示及び添付の請求項の範囲内で多くの変形及び変更を行ってもよい。図面及び本明細書では、限定の目的ではなく、例示の目的のみのための態様が開示されており、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】